特許第6279961号(P6279961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6279961センサ制御システム、センサ制御装置および端末装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6279961
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】センサ制御システム、センサ制御装置および端末装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/41 20060101AFI20180205BHJP
   G01N 27/419 20060101ALI20180205BHJP
   G01N 27/409 20060101ALI20180205BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20180205BHJP
【FI】
   G01N27/41 325P
   G01N27/419 327P
   G01N27/409 100
   G01N27/416 331
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-79500(P2014-79500)
(22)【出願日】2014年4月8日
(65)【公開番号】特開2015-200574(P2015-200574A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 義規
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 功
(72)【発明者】
【氏名】馬 文静
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−155009(JP,A)
【文献】 特開2005−301835(JP,A)
【文献】 特開2012−002504(JP,A)
【文献】 特開2004−069533(JP,A)
【文献】 特開平06−265191(JP,A)
【文献】 特開2012−037428(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/094362(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/41
G01N 27/409
G01N 27/416
G01N 27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータを有するガスセンサの駆動制御を行うとともに、センサ設定条件およびセンサ信号を外部に送信するセンサ制御装置と、
前記センサ設定条件および前記センサ信号を前記センサ制御装置から受信する端末装置と、
を備えるセンサ制御システムであって、
前記センサ設定条件には、前記ガスセンサを駆動制御する際の制御条件またはセンサ信号を測定する際の測定条件の少なくともいずれかが含まれており、
前記センサ信号は、測定対象ガスに含まれる特定ガスに応じて変化する信号であって、前記ガスセンサを用いて生成される信号であり、
前記センサ制御装置および前記端末装置は、それぞれ、無線通信による双方向の情報送受信を行う無線通信部を備え、
前記端末装置は、
前記無線通信部を介して前記センサ制御装置から受信した前記センサ設定条件および前記センサ信号を表示する表示部と、
前記センサ制御装置に送信する指令信号を選択するために使用者が行う選択操作を受け付ける操作部と、
前記操作部で選択された前記指令信号を前記無線通信部を介して前記センサ制御装置に対して送信する指令信号送信部と、を備え、
前記指令信号には、前記センサ設定条件に関する指令信号が少なくとも含まれており、
前記センサ制御装置は、前記端末装置から受信した前記指令信号に基づいて、前記センサ設定条件を変更し、前記ガスセンサの駆動制御を行うこと、
を特徴とするセンサ制御システム。
【請求項2】
前記センサ制御装置は、少なくとも前記センサ信号を含む複数のセンサ情報を有しており、
前記操作部は、前記複数のセンサ情報のうち前記端末装置で受信するセンサ情報を選択するために使用者が行う選択操作を少なくとも受け付けるよう構成されており、
前記端末装置は、前記操作部で選択された前記センサ情報を示す選択情報信号を前記無線通信部を介して前記センサ制御装置に対して送信する選択信号送信部を備えており、
前記センサ制御装置は、前記端末装置から受信した前記選択情報信号に応じた前記センサ情報を前記無線通信部を介して前記端末装置に送信すること、
を特徴とする請求項1に記載のセンサ制御システム。
【請求項3】
前記操作部は、前記ガスセンサの前記ヒータへの通電状態を選択するために使用者が行う選択操作を少なくとも受け付けるよう構成されており、
前記端末装置は、前記操作部で選択された通電状態を示す通電指令信号を前記無線通信部を介して前記センサ制御装置に対して送信する通電信号送信部を備え、
前記センサ制御装置は、前記端末装置から受信した前記通電指令信号に基づいて、前記ヒータへの通電状態を制御すること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のセンサ制御システム。
【請求項4】
ヒータを有するガスセンサの駆動制御を行うとともに、センサ設定条件およびセンサ信号を外部に送信するセンサ制御装置であって、
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のセンサ制御システムに備えられること、
を特徴とするセンサ制御装置。
【請求項5】
センサ設定条件およびセンサ信号をセンサ制御装置から受信する端末装置であって、
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のセンサ制御システムに備えられること、
を特徴とする端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータを有するガスセンサの駆動制御を行うセンサ制御装置と、ガスセンサを用いて生成されるセンサ信号をセンサ制御装置から受信する端末装置と、センサ制御装置および端末装置を備えるセンサ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒータを有するガスセンサの駆動制御を行うセンサ制御装置と、ガスセンサを用いて生成されるセンサ信号をセンサ制御装置から受信する端末装置と、を備えるセンサ制御システムが知られている。
【0003】
このセンサ制御システムは、センサ制御装置におけるセンサ設定条件を調整する用途などに用いられるものであり、使用者(試験者)は、予め定められた試験条件下で生成されるセンサ信号の実測値に基づいて、センサ信号が適正値(理論値)となるように、センサ制御装置におけるセンサ設定条件を調整する。なお、センサ設定条件とは、ガスセンサを駆動制御する際の制御条件またはセンサ信号を測定する際の測定条件を含む概念である。
【0004】
例えば、使用者(試験者)が端末装置でセンサ信号の実測値を確認したあと、センサ信号を適正値(理論値)に近づけるようにセンサ制御装置でのセンサ設定条件を変更する、という一連の作業を、使用者(試験者)が繰り返し実行することで、センサ制御装置におけるセンサ設定条件の調整作業が行われる。
【0005】
このとき、センサ制御装置と端末装置との接続方法の1つとして、有線ケーブルを用いる接続方法が挙げられるが、センサ制御装置と端末装置とが離れた位置に設置される場合には、有線ケーブルの敷設作業が煩雑となる。
【0006】
これに対して、センサ制御装置から端末装置へのデータ送信を無線通信で行うセンサ制御システムが提案されている(特許文献1)。
【0007】
このセンサ制御システムによれば、使用者(試験者)は、有線ケーブルの敷設作業を行うことなく、センサ制御装置から離れた場所において、端末装置を用いてセンサ信号を確認することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/094362号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記のセンサ制御システムにおいては、センサ制御装置から離れた場所でセンサ信号を確認することは可能となるものの、センサ設定条件を変更する場合には、使用者(試験者)がセンサ制御装置まで移動する必要があり、センサ設定条件の変更作業が煩雑となるという問題がある。
【0010】
本発明は、センサ制御装置におけるセンサ設定条件の調整作業を行うにあたり、調整作業の煩雑さを軽減できるセンサ制御システムを提供し、そのようなセンサ制御システムに備えられるセンサ制御装置、そのようなセンサ制御システムに備えられる端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、センサ制御装置と端末装置とを備えるセンサ制御システムであって、センサ制御装置および端末装置は、それぞれ、無線通信による双方向の情報送受信を行う無線通信部を備える。
【0012】
センサ制御装置は、ヒータを有するガスセンサの駆動制御を行うとともに、センサ設定条件およびセンサ信号を外部に送信する。端末装置は、センサ設定条件およびセンサ信号をセンサ制御装置から受信する。
【0013】
センサ設定条件には、ガスセンサを駆動制御する際の制御条件またはセンサ信号を測定する際の測定条件が少なくとも含まれており、センサ信号は、測定対象ガスに含まれる特定ガスに応じて変化する信号であって、ガスセンサを用いて生成される信号である。
【0014】
端末装置は、表示部と、操作部と、指令信号送信部と、を備える。
【0015】
表示部は、無線通信部を介してセンサ制御装置から受信したセンサ設定条件およびセンサ信号を表示する。操作部は、センサ制御装置に送信する指令信号を選択するために使用者が行う選択操作を受け付ける。指令信号送信部は、操作部で選択された指令信号を無線通信部を介してセンサ制御装置に対して送信する。また、指令信号には、センサ設定条件に関する指令信号が少なくとも含まれている。
【0016】
そして、センサ制御装置は、端末装置から受信した指令信号に基づいて、センサ設定条件を変更し、ガスセンサの駆動制御を行う。
【0017】
このセンサ制御システムにおいては、センサ制御装置および端末装置がそれぞれ無線通信部を備えており、端末装置は、無線通信部を介してセンサ制御装置からセンサ設定条件およびセンサ信号を受信する。
【0018】
このようにセンサ制御装置および端末装置がそれぞれ無線通信部を備えることで、センサ制御装置と端末装置との間に有線ケーブルを配置する手間を掛けることなく、センサ制御装置の設置場所(エンジンルームや車両の床下など)から離れた場所であっても、端末装置の表示部にセンサ設定条件やセンサ信号を表示できる。
【0019】
つまり、このセンサ制御システムの使用者(試験者)は、センサ制御装置から離れた位置であっても、端末装置を利用することで、センサ設定条件やセンサ信号を確認(視認)することができる。
【0020】
また、端末装置が指令信号送信部を備えているため、センサ制御装置は、無線通信部を介して端末装置から指令信号を受信できるとともに、受信した指令信号に基づいてセンサ設定条件を変更し、ガスセンサの駆動制御を行うことができる。つまり、このセンサ制御システムの使用者(試験者)は、センサ制御装置から離れた位置から、センサ設定条件を変更するための指令信号をセンサ制御装置に送信できる。
【0021】
このため、端末装置とセンサ制御装置との間に指令信号を送信するための有線ケーブルを配置する手間を掛けることなく、端末装置からセンサ制御装置に対して指令信号を送信することが可能となる。
【0022】
そして、指令信号にはセンサ設定条件に関する指令信号が少なくとも含まれているため、使用者(試験者)は、端末装置を利用することで、センサ制御装置から離れた位置であっても、表示部を通じてセンサ設定条件を変更するための指令信号を目で確認しながら、センサ設定条件の変更作業を実行できる。
【0023】
よって、本発明のセンサ制御システムによれば、センサ制御装置におけるセンサ設定条件の調整作業(変更)を行うにあたり、使用者(試験者)の移動作業を省略することができ、センサ設定条件の調整作業(変更)の煩雑さを軽減できる。
【0024】
次に、上記のセンサ制御システムにおいては、センサ制御装置は、少なくともセンサ信号を含む複数のセンサ情報を有しており、操作部は、複数のセンサ情報のうち端末装置で受信するセンサ情報を選択するために使用者が行う選択操作を少なくとも受け付けるよう構成されており、端末装置は選択信号送信部を備える、という構成であっても良い。
【0025】
選択信号送信部は、操作部で選択されたセンサ情報を示す選択情報信号を無線通信部を介してセンサ制御装置に対して送信する。
【0026】
そして、センサ制御装置は、端末装置から受信した選択情報信号に応じたセンサ情報を無線通信部を介して端末装置に送信する。
【0027】
このセンサ制御システムにおいては、使用者(試験者)は、センサ制御装置から離れた位置であっても、端末装置を利用することで必要なセンサ情報を選択することができ、複数の中から選択したセンサ情報を端末装置に表示することが可能となる。
【0028】
このため、センサ制御装置のセンサ設定条件の調整作業において、端末装置で受信するセンサ情報を複数のセンサ情報の中から選択するにあたり、使用者(試験者)は、センサ制御装置に近づく必要が無くなる。
【0029】
よって、本発明のセンサ制御システムによれば、センサ制御装置におけるセンサ設定条件の調整作業を行うにあたり、使用者(試験者)の移動作業を省略することができ、センサ設定条件の調整作業の煩雑さを軽減できる。
【0030】
なお、複数のセンサ情報の一例としては、センサ信号(NOx濃度、酸素濃度(O2%)、A/F値、λ値など)、センサ温度(センサ温度と相関関係のあるインピーダンス値であってもよいし、そのインピーダンス値を温度換算した温度換算値であってもよい)、測定対象ガスの湿度などの各情報が挙げられる。
【0031】
次に、上記のセンサ制御システムにおいては、操作部はガスセンサのヒータへの通電状態を選択するために使用者が行う選択操作を少なくとも受け付けるよう構成されており、端末装置は通電信号送信部を備える、という構成であっても良い。
【0032】
通電信号送信部は、操作部で選択された通電状態を示す通電指令信号を無線通信部を介してセンサ制御装置に対して送信する。
【0033】
そして、センサ制御装置は、端末装置から受信した通電指令信号に基づいて、ヒータへの通電状態を制御する。
【0034】
このセンサ制御システムにおいては、使用者(試験者)は、センサ制御装置から離れた位置であっても、ヒータへの通電状態を切り替えることができる。
【0035】
このため、センサ制御装置のセンサ設定条件の調整作業において、ガスセンサのヒータへの通電状態を切り替えるにあたり、使用者(試験者)は、センサ制御装置に近づく必要が無くなる。
【0036】
よって、本発明のセンサ制御システムによれば、センサ制御装置におけるセンサ設定条件の調整作業を行うにあたり、使用者(試験者)の移動作業を省略することができ、センサ設定条件の調整作業の煩雑さを軽減できる。
【0037】
次に、本発明は、ヒータを有するガスセンサの駆動制御を行うとともに、センサ設定条件およびセンサ信号を外部に送信するセンサ制御装置であって、上述のセンサ制御システムに備えられるセンサ制御装置である。
【0038】
このセンサ制御装置によれば、センサ制御装置におけるセンサ設定条件の調整作業を行うにあたり、使用者(試験者)の移動作業を省略することができ、センサ設定条件の調整作業の煩雑さを軽減できる。
【0039】
次に、本発明は、センサ設定条件およびセンサ信号をセンサ制御装置から受信する端末装置であって、上述のセンサ制御システムに備えられる端末装置である。
【0040】
この端末装置によれば、センサ制御装置におけるセンサ設定条件の調整作業を行うにあたり、使用者(試験者)の移動作業を省略することができ、センサ設定条件の調整作業の煩雑さを軽減できる。
【発明の効果】
【0041】
本発明のセンサ制御システム、センサ制御装置、端末装置によれば、センサ制御装置におけるセンサ設定条件の調整作業(変更)を行うにあたり、使用者(試験者)の移動作業を省略することができ、センサ設定条件の調整作業(変更)の煩雑さを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】センサ制御システムの全体構成図である。
図2】端末装置の表示部に表示される信号計測時画面の画面内容を表す説明図である。
図3】センサ信号計測処理の実行時におけるセンサ制御システムの動作を示したシーケンス図である。
図4】端末装置の表示部に表示される設定変更画面の画面内容を表す説明図である。
図5】制御温度の設定内容を変更する設定変更処理の実行時におけるセンサ制御システムの動作を示したシーケンス図である。
図6】センサ情報の種類を変更する設定変更処理の実行時におけるセンサ制御システム1の動作を示したシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
【0044】
尚、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0045】
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
第1実施形態として、自動車の内燃機関の排気管に備えられるガスセンサを制御するためのセンサ制御システム1について説明する。
【0046】
図1に、センサ制御システム1の全体構成図を示す。
【0047】
センサ制御システム1は、ヒータを有するガスセンサ3を駆動制御するセンサ制御装置5と、ガスセンサ3を用いて生成したセンサ信号などをセンサ制御装置5から受信する端末装置7と、を備える。
【0048】
なお、ガスセンサ3は、内燃機関(エンジン)の排気管に設けられて、排気ガス中の酸素濃度を広域にわたって測定する酸素センサであり、リニアA/Fセンサとも呼ばれる。
【0049】
ガスセンサ3は、センサ素子11と、ヒータ13と、を備える。
【0050】
ヒータ13は、通電により発熱する発熱抵抗体で構成されており、センサ素子11を加熱するために備えられている。
【0051】
センサ素子11は、ポンプセル(図示省略)および起電力セル(図示省略)を備えており、いわゆる2セル型センサ素子である。ポンプセルおよび起電力セルは、それぞれ、部分安定化ジルコニア(ZrO2)により形成された酸素イオン伝導性の固体電解質体と、その固体電解質体に積層された白金を主体に形成される一対の多孔質電極と、を有している。
【0052】
センサ素子11は、多孔質拡散層を介して測定対象ガス(本実施形態では、排気ガス)が導入される測定室をポンプセルと起電力セルとの間に備えている。起電力セルの一方の電極は測定室内に面しており、他方の電極は基準となる酸素濃度雰囲気に晒されるように構成されており、起電力セルにおいて測定室の酸素濃度(換言すれば、測定対象ガスの酸素濃度)に応じた起電力(検知電圧Vs)が発生する。
【0053】
そして、起電力セルの検知電圧Vsが所定の基準値(例えば、450mV程度)となるように、センサ制御装置5がポンプセルにポンプ電流Ipを流すことで、測定室における酸素の汲み入れまたは汲み出しが行なわれる。このときのポンプ電流Ipは、測定対象ガスの酸素濃度に応じて変化するため、ポンプ電流Ipの通電方向および電流値に基づいて測定対象ガスの酸素濃度を測定することができる。
【0054】
つまり、ガスセンサ3は、センサ制御装置5の駆動制御により、ヒータ13の加熱によりセンサ素子11が活性化状態となることで、測定対象ガスに含まれる酸素濃度に応じて変化するポンプ電流Ipを生成できる。
【0055】
センサ制御装置5は、自動車のエンジンルームに配置されており、ガスセンサ3と接続されている。センサ制御装置5は、センサ駆動部21、制御部23、電源回路25、無線モジュール27を備える。
【0056】
センサ駆動部21は、ガスセンサ3に接続されており、ガスセンサ3に対して駆動指令信号を出力してガスセンサ3の駆動制御を行うとともに、酸素濃度に応じて変化するポンプ電流Ipを生成する。
【0057】
駆動指令信号としては、センサ素子11のポンプセルに通電するポンプ電流Ipや、ガスセンサ3のヒータ13への通電電流(通電信号)、センサ素子11(具体的には、起電力セル)のインピーダンス値を測定するための測定信号などが挙げられる。
【0058】
センサ駆動部21は、センサ素子11の温度を目標温度(活性化温度)に近づけるように、通電信号を制御してヒータ13の発熱量を制御する。センサ駆動部21は、センサ素子11の温度と相関関係のあるインピーダンス値を検出する機能を有しており、具体的には、センサ素子11にインピーダンス値を測定するための測定信号を入力し、その入力に応答して得られる応答信号に基づいてインピーダンス値を算出する機能を有している。
【0059】
センサ駆動部21は、センサ素子11が活性化温度となり活性化状態になった後、起電力セルの検知電圧Vsが所定の基準値となるように、ポンプセルにポンプ電流Ipを流すことで、測定室における酸素の汲み入れまたは汲み出しを行う。
【0060】
制御部23は、各種演算制御処理を実行するマイクロコンピュータ(マイコン)であり、周知の中央演算処理装置(CPU)や、周知の記憶装置(RAM、ROMなど)を備える。この制御部23は、センサ駆動部21と電気的に接続されている。
【0061】
制御部23は、演算制御処理として、例えば、ポンプ電流制御処理、ヒータ通電処理、センサ情報生成処理、無線通信処理などを実行する。
【0062】
ポンプ電流制御処理は、センサ駆動部21を介してガスセンサ3を駆動制御する処理であり、ガスセンサ3の起電力セルに発生する検知電圧Vsが目標制御電圧(本実施形態では、450mV)となるように、ガスセンサ3のポンプセルに通電するポンプ電流Ipを制御する処理である。
【0063】
ヒータ通電処理は、センサ駆動部21を介してガスセンサ3のヒータ13を駆動制御する処理であり、センサ素子11の温度を目標温度(活性化温度)に近づけるように、通電信号を制御してヒータ13の発熱量を制御する処理である。
【0064】
センサ情報生成処理は、ポンプ電流Ipの通電方向および電流値に基づいて、測定対象ガスの酸素濃度を測定するとともに、測定した酸素濃度に基づいてA/F値(空燃比)を演算する処理である。この酸素濃度を表す信号およびA/F値を表す信号はそれぞれ、測定対象ガスに含まれる酸素濃度に応じて変化するセンサ信号の一例である。
【0065】
また、センサ情報生成処理は、ガスセンサ3を用いた公知の手法により、測定対象ガスの湿度を測定する処理も実行する。この湿度を表す信号は、ガスセンサ3を用いて生成されるセンサ情報の一例である。なお、ガスセンサ3を用いて測定対象ガスの湿度を検出する処理については、本出願人により開示された特開2010−281732号や特開2013−250163号公報に記載されているため、本実施形態の詳述は省略する。
【0066】
また、制御部23は、センサ制御装置5の内部に設置された温度検出素子(図示せず)に接続されており、この温度検出素子の出力に基づいて、センサ制御装置5を構成するセンサ駆動部21を含めた回路の温度(回路内温度)を検出する機能をも有している。
【0067】
無線通信処理は、無線モジュール27を介して端末装置7との間で各種データの送受信を行う処理である。送受信される各種データとしては、A/F値信号、センサ温度(センサ素子11のインピーダンス値)といったセンサ情報や、回路内温度の情報などが挙げられる。
【0068】
電源回路25は、内燃機関に備えられるバッテリ15が出力する直流電圧(例えば、12[V])を電圧変換して、センサ駆動部21や制御部23の駆動用電圧(例えば、5[V])を生成する。
【0069】
無線モジュール27は、制御部23の指令に応じて、無線通信によって端末装置7との間で双方向の情報送受信を行う。無線モジュール27は、例えば、赤外線通信、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信技術に基づいて、端末装置7との間で無線通信を行う。
【0070】
端末装置7は、使用者(試験者)が持ち運び可能な携帯情報端末装置であり、本実施形態では、スマートフォンで構成されている。端末装置7は、制御部31,表示部33,操作部35,無線モジュール37を備える。
【0071】
制御部31は、各種演算制御処理を実行するマイクロコンピュータ(マイコン)であり、周知の中央演算処理装置(CPU)や、周知の記憶装置(RAM、ROMなど)を備える。
【0072】
制御部31は、演算制御処理として、例えば、表示制御処理、操作受付処理、無線通信処理などを実行する。
【0073】
表示制御処理は、表示部33における表示内容を制御する処理である。表示制御処理の一例としては、センサ制御装置5から受信したデータを表示部33に表示する処理や、使用者(試験者)から要求された操作画面を表示部33に表示する処理などが挙げられる。
【0074】
操作受付処理は、使用者(試験者)による操作によって操作部35から出力される操作信号を受け付けて、使用者(試験者)からの指令内容を判定する処理である。
【0075】
表示部33は、使用者に提供する各種情報を表示するために備えられており、本実施形態では、液晶パネルで構成されている。
【0076】
操作部35は、使用者(試験者)による操作を受け付けるために備えられており、本実施形態では、表示部33上で操作可能なタッチパネルで構成されている。
【0077】
無線モジュール37は、制御部31の指令に応じて、無線通信によってセンサ制御装置5との間で双方向の情報送受信を行う。無線モジュール37は、例えば、赤外線通信、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線通信技術に基づいて、センサ制御装置5との間で無線通信を行う。
【0078】
[1−2.センサ信号計測処理]
センサ制御システム1において実行されるセンサ信号計測処理について説明する。
【0079】
センサ信号計測処理は、使用者(試験者)による端末装置7の操作により開始される処理である。センサ信号計測処理は、端末装置7から無線通信によって指令信号が送信されるとセンサ制御装置5によるヒータ制御を開始し、センサ制御装置5で生成したセンサ信号を無線通信によって端末装置7に送信し、端末装置7に表示する処理である。
【0080】
図2は、センサ信号計測処理の実行時に端末装置7の表示部33に表示される信号計測時画面33aの画面内容を表す説明図である。
【0081】
信号計測時画面33aには、ヒータ制御ボタン41,制御パラメータ変更ボタン43,センサ状態表示部45,信号有効無効表示部47,受信信号表示部49、波形表示部51が配置されている。
【0082】
ヒータ制御ボタン41は、ガスセンサ3のヒータ13に対する通電制御をON状態またはOFF状態のいずれかに制御するためのボタンである。使用者(試験者)によってヒータ制御ボタン41が押下されるごとに、ヒータ13への通電制御がON状態とOFF状態とに切り替えられる。
【0083】
また、ヒータ制御ボタン41は、「点灯状態」または「消灯状態」に切り替わることで、ヒータ13への通電制御がON状態であるかOFF状態であるかを表示するための表示エリアとしても機能する。ヒータ13への通電制御がON状態である場合には「点灯状態」となり、ヒータ13への通電制御がOFF状態である場合には「消灯状態」となる。
【0084】
制御パラメータ変更ボタン43は、センサ設定条件を変更するための設定変更画面33b(後述する図4参照)を呼び出すためのボタンである。使用者(試験者)によって制御パラメータ変更ボタン43が押下されると、表示部33の表示内容が設定変更画面33bに切り替えられる。
【0085】
センサ状態表示部45は、ガスセンサ3のセンサ素子11が活性化状態であるか非活性化状態であるかを表示するための表示エリアである。センサ素子11が活性化状態である場合には、「活性」エリアが点灯表示されるとともに「非活性」エリアが消灯表示され、センサ素子11が非活性化状態である場合には、「活性」エリアが消灯表示されるとともに「非活性」エリアが点灯表示される。
【0086】
信号有効無効表示部47は、センサ制御装置5から受信したセンサ信号(A/F値信号)が有効であるか無効であるかを表示するための表示エリアである。センサ信号(A/F値信号)が有効である場合には、「有効」エリアが点灯表示されるとともに「無効」エリアが消灯表示され、センサ信号(A/F値信号)が無効である場合には、「有効」エリアが消灯表示されるとともに「無効」エリアが点灯表示される。
【0087】
受信信号表示部49は、センサ制御装置5から受信した受信信号の現在値を表示するための表示エリアである。図2では、受信信号表示部49において、A/F値、センサ温度(具体的には、センサ温度に相関関係があるインピーダンス値)、回路内温度(具体的には、センサ制御装置5を構成するセンサ駆動部21等の回路内温度)のそれぞれの現在値が表示されている。
【0088】
波形表示部51は、センサ制御装置5から受信した受信信号の波形を表示するための表示エリアである。波形表示部51は、3種類の受信信号の波形表示エリアを備えている。波形表示部51の表示対象の受信信号としては、A/F値、センサ温度、回路内温度が挙げられる。
【0089】
図3に、センサ信号計測処理の実行時におけるセンサ制御システム1の動作を示したシーケンス図を示す。
【0090】
まず、ヒータ13への通電を開始するために、使用者(試験者)によって端末装置7の表示部33に表示された信号計測時画面33aのヒータ制御ボタン41が押下されると、端末装置7からセンサ制御装置5に対してヒータ制御開始指令信号が送信される。
【0091】
具体的には、端末装置7の表示部33に表示された信号計測時画面33aのヒータ制御ボタン41が使用者(試験者)によって押下されると、操作部35から制御部31に対してヒータ制御ボタン41が押下されたことを示す操作信号が送信される。その操作信号を受信した制御部31は、無線モジュール37を介した無線通信によりセンサ制御装置5に対してヒータ制御開始指令信号を送信する(矢印AL11参照)。
【0092】
ヒータ制御開始指令信号を受信したセンサ制御装置5は、ヒータ13への通電を開始する。具体的には、制御部23が無線モジュール27を介した無線通信によりヒータ制御開始指令信号を受信すると、制御部23は、ヒータ通電処理を開始して、センサ駆動部21を介したヒータ13への通電を開始する。
【0093】
このあと、制御部23は、無線モジュール27を介した無線通信により端末装置7に対してヒータ通電信号を送信する(矢印AL12参照)。ヒータ通電信号は、ヒータ13への通電制御がON状態であることを示す信号である。
【0094】
ヒータ通電信号を受信した端末装置7は、信号計測時画面33aのヒータ制御ボタン41を「点灯状態」に切り替える。具体的には、制御部31が無線モジュール37を介した無線通信によりヒータ通電信号を受信すると、制御部31は、表示部33に対して、ヒータ制御ボタン41を「点灯状態」に切り替える指令信号を送信する。この指令信号を受信した表示部33は、ヒータ制御ボタン41を「点灯状態」に切り替える。
【0095】
他方、センサ制御装置5は、ヒータ通電処理を実行しており、ガスセンサ3のセンサ素子11が目標温度(活性化温度)に到達したと判定すると、無線通信によりセンサ活性化信号を端末装置7に対して送信する。具体的には、制御部23にて定期的に検出されるセンサ素子11のインピーダンス値に基づいて、センサ素子11が目標温度(活性化温度)に到達したか否か(センサ素子11が目標インピーダンス値に到達したか否か)を判定しており、目標温度に到達したと判定すると、制御部23は、無線モジュール27を介した無線通信により端末装置7に対してセンサ活性化信号を送信する(矢印AL13参照)。
【0096】
センサ活性化信号を受信した端末装置7は、信号計測時画面33aのセンサ状態表示部45のうち「活性」エリアを点灯表示し、「非活性」エリアを消灯表示する。具体的には、制御部31が無線モジュール37を介した無線通信によりセンサ活性化信号を受信すると、制御部31は、表示部33に対して、センサ状態表示部45のうち「活性」エリアを点灯表示するとともに「非活性」エリアを消灯表示する指令信号を送信する。この指令信号を受信した表示部33は、センサ状態表示部45のうち「活性」エリアを点灯表示し、「非活性」エリアを消灯表示する。
【0097】
さらに、センサ制御装置5は、ガスセンサ3のセンサ素子11が活性化状態となった後、所定の信号有効条件が満たされてセンサ信号(A/F値信号)が有効であると判定すると、無線通信によりセンサ信号有効信号を端末装置7に対して送信する。具体的には、制御部23にてセンサ信号(A/F値信号)を生成できる状態となったか否かを判定しており、センサ信号(A/F値信号)を生成できる状態となったと判定すると、制御部23は、無線モジュール27を介した無線通信により端末装置7に対してセンサ信号有効信号を送信する(矢印AL14参照)。
【0098】
なお、制御部23においては、定期的に検出されるセンサ素子11のインピーダンス値が所定の範囲内を満たし、且つ、起電力セルにて発生する検知電圧Vsが所定の範囲内を満たした状態下で、ポンプ電流制御処理が実行できているか否かを判定する。制御部23は、この判定が肯定判定されると、センサ信号(A/F値信号)が有効に生成できる状態となったと判定し、端末装置7に対してセンサ信号有効信号を送信する。
【0099】
センサ信号有効信号を受信した端末装置7は、信号計測時画面33aの信号有効無効表示部47のうち「有効」エリアを点灯表示し、「無効」エリアを消灯表示する。具体的には、制御部31が無線モジュール37を介した無線通信によりセンサ信号有効信号を受信すると、制御部31は、表示部33に対して、信号有効無効表示部47のうち「有効」エリアを点灯表示するとともに「無効」エリアを消灯表示する指令信号を送信する。この指令信号を受信した表示部33は、信号有効無効表示部47のうち「有効」エリアを点灯表示し、「無効」エリアを消灯表示する。
【0100】
このあと、センサ制御装置5は、ガスセンサ3を用いて生成したセンサ情報を、無線通信により端末装置7に対して送信する処理を開始する。具体的には、制御部23は、ガスセンサ3を用いて生成したセンサ情報を、端末装置7に対して送信する処理を開始する(矢印AL15参照)。なお、センサ情報には、センサ信号(A/F値信号)およびセンサ温度(センサ素子11のインピーダンス値)が含まれる。
【0101】
このあと、制御部23は、センサ情報を端末装置7に対して送信する処理を繰り返し実行することで、最新のセンサ情報を端末装置7に送信する。また、制御部23は、センサ制御装置5の最新の回路内温度の情報を端末装置7に送信する。
【0102】
センサ情報(A/F値信号およびセンサ温度(センサ素子11のインピーダンス値))を受信した端末装置7は、信号計測時画面33aの受信信号表示部49に、センサ情報(A/F値およびセンサ温度)を表示する。具体的には、制御部31が無線モジュール37を介した無線通信によりセンサ信号(A/F値信号)およびセンサ温度を受信すると、制御部31は、表示部33に対して、受信信号表示部49にA/F値およびセンサ温度を表示する指令信号を送信する。この指令信号を受信した表示部33は、受信信号表示部49にA/F値およびセンサ温度を表示する。また、端末装置7は、回路内温度について受信すると、信号計測時画面33aの受信信号表示部49に、この回路内温度についても表示する。
【0103】
信号計測時画面33aの波形表示部51における表示対象の受信信号として、センサ信号(A/F値信号)、センサ温度、回路内温度の3種類が設定されている場合には、それら3種類の情報を受信した端末装置7は、波形表示部51においてA/F値、センサ温度、回路内温度の波形(出力推移を表す波形)をそれぞれ表示する。具体的には、制御部31が無線モジュール37を介した無線通信によりセンサ信号(A/F値信号)、センサ温度、回路内温度を受信すると、制御部31は、表示部33に対して、波形表示部51にこれら情報の波形をそれぞれ表示する指令信号を送信する。この指令信号を受信した表示部33は、波形表示部51にそれぞれの波形を表示する。
【0104】
このあと、センサ信号(A/F値信号)の測定(実測値測定)が完了して、ヒータ13への通電を停止するために、使用者(試験者)によって端末装置7の表示部33に表示された信号計測時画面33aのヒータ制御ボタン41が押下されると、端末装置7からセンサ制御装置5に対してヒータ制御停止指令信号が送信される。
【0105】
具体的には、端末装置7の表示部33に表示された信号計測時画面33aのヒータ制御ボタン41が使用者(試験者)によって押下されると、操作部35から制御部31に対してヒータ制御ボタン41が押下されたことを示す操作信号が送信される。その操作信号を受信した制御部31は、無線モジュール37を介した無線通信によりセンサ制御装置5に対してヒータ制御停止指令信号を送信する(矢印AL16参照)。
【0106】
ヒータ制御停止指令信号を受信したセンサ制御装置5は、ヒータ13への通電を停止する。具体的には、制御部23が無線モジュール27を介した無線通信によりヒータ制御停止指令信号を受信すると、制御部23は、ヒータ通電処理を停止して、センサ駆動部21を介したヒータ13への通電を停止する。
【0107】
このあと、制御部23は、無線モジュール27を介した無線通信により端末装置7に対してヒータ停止信号を送信する(矢印AL17参照)。ヒータ停止信号は、ヒータ13への通電制御がOFF状態であることを示す信号である。
【0108】
ヒータ停止信号を受信した端末装置7は、信号計測時画面33aのヒータ制御ボタン41を「消灯状態」に切り替える。具体的には、制御部31が無線モジュール37を介した無線通信によりヒータ停止信号を受信すると、制御部31は、表示部33に対して、ヒータ制御ボタン41を「消灯状態」に切り替える指令信号を送信する。この指令信号を受信した表示部33は、ヒータ制御ボタン41を「消灯状態」に切り替える。
【0109】
このようなセンサ信号計測処理を実行するセンサ制御システム1は、使用者(試験者)による端末装置7の操作によって、端末装置7からセンサ制御装置5に対して無線通信により指令信号が送信されることで、センサ制御装置5でのヒータ制御の開始・停止を操作できるよう構成されている。
【0110】
また、センサ制御システム1は、ヒータ制御を開始した後、ガスセンサ3のセンサ素子11が目標温度(活性化温度)に到達したと判定すると、センサ制御装置5から端末装置7に対して無線通信によりセンサ活性化信号を送信することで、センサ素子11が活性化状態であるか否かを端末装置7に表示することができる。
【0111】
さらに、センサ制御システム1は、センサ信号(A/F値信号)が有効であると判定すると、センサ制御装置5から端末装置7に対して無線通信によりセンサ信号有効信号を送信することで、センサ信号(A/F値信号)を生成できる状態であるか否かを端末装置7に表示することができる。
【0112】
そして、センサ制御システム1は、センサ制御装置5で生成したセンサ信号(A/F値信号)やセンサ温度を無線通信によって端末装置7に送信し、端末装置7に表示することができる。
【0113】
[1−3.設定変更処理]
センサ制御システム1において実行される設定変更処理について説明する。
【0114】
設定変更処理は、センサ制御システム1における各種設定内容を変更するための処理であり、使用者(試験者)による端末装置7の操作により開始される処理である。
【0115】
端末装置7の表示部33に信号計測時画面33a(図2参照)が表示されている際に、使用者(試験者)により制御パラメータ変更ボタン43が押下されると、表示部33の表示内容が図4に示すような設定変更画面33bに切り替えられる。
【0116】
図4は、設定変更処理の実行時に端末装置7の表示部33に表示される設定変更画面33bの画面内容を表す説明図である。
【0117】
設定変更画面33bには、種別表示エリア61,設定内容表示エリア63,SETボタン65,戻るボタン67が配置されている。
【0118】
種別表示エリア61は、設定項目の種別を表示するための表示エリアである。本実施形態の設定変更画面33bでは、制御温度,測定レンジ,センサ情報,サンプリングの4項目の表示エリアを有する種別表示エリア61が配置されている。
【0119】
なお、制御温度は、ガスセンサ3のヒータ13の目標制御温度(目標インピーダンス)であり、センサ制御装置5で実行されるヒータ通電処理で用いられる各種パラメータのうちの1項目である。温度の単位は「℃」で表されるが、ヒータ13の加熱対象となるセンサ素子11の温度(センサ温度)とインピーダンス値とには相関関係があるため、本実施形態では、制御温度の単位を「Ω」で表している。
【0120】
測定レンジは、ガスセンサ3を用いて生成される情報(ポンプ電流Ipなど)の大きさを検出する際の分解能に相当するパラメータであり、センサ制御装置5で実行される各種制御処理で用いられる各種パラメータのうちの1項目である。
【0121】
センサ情報は、ガスセンサ3を用いて生成される情報であって、センサ制御装置5から端末装置7に送信する情報を意味している。なお、本実施形態では、センサ制御装置5から端末装置7に送信するセンサ情報として、少なくともA/F値、酸素濃度、湿度、λ値のうちいずれかを選択できる。
【0122】
サンプリングは、ガスセンサ3を用いて生成される情報(ポンプ電流Ipなど)のサンプリング周期であり、センサ制御装置5で実行される各種制御処理で用いられる各種パラメータのうちの1項目である。
【0123】
設定内容表示エリア63は、種別表示エリア61に表示された各項目の設定内容であって、センサ制御装置5で設定されている内容を表示するための表示エリアである。設定変更画面33bの表示タイミングで、センサ制御装置5から各項目の設定内容に関する情報を受信し、受信した情報に基づいて設定内容表示エリア63における各項目の設定内容が表示される。
【0124】
図4では、制御温度が「100Ω」,測定レンジが「Wide」,センサ情報が「A/F値」,サンプリングが「100ms」にそれぞれ設定された状態の設定内容表示エリア63が図示されている。
【0125】
なお、使用者(試験者)が設定内容表示エリア63をタッチすると、タッチした項目における設定内容の候補が表示される。使用者(試験者)は、表示された複数の候補の中から設定内容を選択することができる。
【0126】
例えば、制御温度では「100Ω」,「150Ω」,「200Ω」などの候補があり、測定レンジでは「Wide」,「Narrow」などの候補があり、センサ情報では「A/F値」,「酸素濃度」,「湿度」、「λ値」などの候補があり、サンプリングでは「100ms」,「150ms」,「200ms」などの候補がある。
【0127】
使用者(試験者)が複数の候補の中から設定内容を選択した後、使用者(試験者)がSETボタン65を押下すると、対象項目の設定内容を変更するための変更指令が端末装置7からセンサ制御装置5に送信されて、対象項目の設定内容が変更される。
【0128】
ここで、設定変更処理の一例として、制御温度の設定内容を変更(100[Ω]から200[Ω]に変更)する場合について説明する。
【0129】
図5に、制御温度の設定内容を変更する設定変更処理の実行時におけるセンサ制御システム1の動作を示したシーケンス図を示す。
【0130】
まず、使用者(試験者)によって「制御温度」の設定内容表示エリア63がタッチされて複数の候補の中から変更後の設定内容(ここでは、200[Ω])が選択されると、操作部35から制御部31に対して変更後の設定内容を示す操作信号が送信される。次に、使用者(試験者)によってSETボタン65が押下されると、操作部35から制御部31に対してSETボタン65が押下されたことを示す操作信号が送信される。
【0131】
この操作信号を受信した制御部31は、無線モジュール37を介した無線通信によりセンサ制御装置5に対して、制御温度における変更後の設定内容を表す制御温度変更指令信号を送信する(矢印AL21参照)。
【0132】
制御温度変更指令信号を受信したセンサ制御装置5は、ヒータ13の制御温度(目標温度)を制御温度変更指令信号が示す温度に変更して、変更後の制御温度でのヒータ通電処理を開始する。具体的には、制御部23が無線モジュール27を介した無線通信により制御温度変更指令信号を受信すると、制御部23は、変更後の制御温度でのヒータ通電処理を開始する。
【0133】
制御部23は、変更後の制御温度でのヒータ通電処理を開始すると、無線モジュール27を介した無線通信により端末装置7に対して制御温度変更完了信号を送信する(矢印AL22参照)。制御温度変更完了信号は、ヒータ13の制御温度(目標温度)の変更が完了したことを示す信号である。
【0134】
制御温度変更完了信号を受信した端末装置7は、設定変更画面33bの設定内容表示エリア63のうち「制御温度」の「設定内容」の表示内容を、変更後の設定内容に変更する。具体的には、制御部31が無線モジュール37を介した無線通信により制御温度変更完了信号を受信すると、制御部31は、表示部33に対して、設定内容表示エリア63のうち「制御温度」の「設定内容」の表示内容を変更後の設定内容に変更する指令信号を送信する。この指令信号を受信した表示部33は、設定内容表示エリア63のうち「制御温度」の「設定内容」の表示内容を、変更後の設定内容に変更する。
【0135】
これらのことから、センサ制御システム1においては、センサ制御装置5から離れた場所での使用者(試験者)による端末装置7の操作によって、センサ制御装置5で実行されるヒータ通電処理での制御温度の変更作業が可能となる。
【0136】
次に、設定変更処理の一例として、端末装置7がセンサ制御装置5から受信するセンサ情報の設定内容を変更(A/F値から酸素濃度に変更)する場合について説明する。
【0137】
なお、本実施形態では、センサ制御装置5から受信するセンサ情報として、少なくともA/F値、酸素濃度、湿度、λ値のうちいずれかを選択できる。
【0138】
図6に、センサ情報の設定内容を変更する設定変更処理の実行時におけるセンサ制御システム1の動作を示したシーケンス図を示す。
【0139】
まず、使用者(試験者)によって「センサ情報」の設定内容表示エリア63がタッチされて複数の候補の中から変更後の設定内容(ここでは、酸素濃度)が選択されると、操作部35から制御部31に対して変更後の設定内容を示す操作信号が送信される。次に、使用者(試験者)によってSETボタン65が押下されると、操作部35から制御部31に対してSETボタン65が押下されたことを示す操作信号が送信される。
【0140】
この操作信号を受信した制御部31は、無線モジュール37を介した無線通信によりセンサ制御装置5に対して、センサ情報における変更後の設定内容を表すセンサ情報変更指令信号を送信する(矢印AL31参照)。
【0141】
センサ情報変更指令信号を受信したセンサ制御装置5は、端末装置7に対して送信するセンサ情報をセンサ情報変更指令信号が示すセンサ情報に変更して、変更後のセンサ情報を送信する処理を開始する。具体的には、制御部23が無線モジュール27を介した無線通信によりセンサ情報変更指令信号を受信すると、制御部23は、変更後のセンサ情報を送信する処理を開始する。
【0142】
制御部23は、変更後のセンサ情報を送信する処理を開始すると、無線モジュール27を介した無線通信により端末装置7に対して変更後のセンサ情報を送信する(矢印AL32参照)。この場合のセンサ情報は、測定対象ガスの酸素濃度(O2%)に関する情報である。
【0143】
変更後のセンサ情報を受信した端末装置7は、設定変更画面33bの設定内容表示エリア63のうち「センサ情報」の「設定内容」の表示内容を、変更後の設定内容(ここでは、酸素濃度)に変更する。具体的には、制御部31が無線モジュール37を介した無線通信により変更後のセンサ情報を受信すると、制御部31は、表示部33に対して、設定内容表示エリア63のうち「センサ情報」の「設定内容」の表示内容を変更後の設定内容に変更する指令信号を送信する。この指令信号を受信した表示部33は、設定内容表示エリア63のうち「センサ情報」の「設定内容」の表示内容を、変更後の設定内容に変更する。
【0144】
また、変更後のセンサ情報を受信した端末装置7は、信号計測時画面33aを表示する場合には、受信信号表示部49における「種別」および「現在値」の表示内容を、変更後の設定内容に変更する。
【0145】
これらのことから、センサ制御システム1においては、センサ制御装置5から離れた場所での使用者(試験者)による端末装置7の操作によって、センサ制御装置5が送信するセンサ情報の調整作業(変更作業)が可能となる。
【0146】
[1−4.効果]
以上説明したように、本実施形態のセンサ制御システム1においては、センサ制御装置5および端末装置7は、それぞれ無線モジュール27および無線モジュール37を備えている。
【0147】
端末装置7は、無線モジュール27および無線モジュール37を介してセンサ制御装置5から、センサ設定条件(制御温度,測定レンジ,サンプリングなど)やセンサ情報(A/F値、酸素濃度、センサ温度など)を受信する。
【0148】
このようにセンサ制御装置5および端末装置7がそれぞれ無線モジュール27,37を備えることで、センサ制御装置5と端末装置7との間に有線ケーブルを配置する手間を掛けることなく、センサ制御装置5の設置場所(エンジンルームや車両の床下など)から離れた場所でも、端末装置7の表示部33にセンサ設定条件やセンサ情報を表示できる。
【0149】
つまり、センサ制御システム1の使用者(試験者)は、センサ制御装置5から離れた位置であっても、端末装置7を利用することで、センサ設定条件やセンサ情報を確認(視認)することができる。
【0150】
また、端末装置7は、センサ制御装置5に対して種々の指令信号(ヒータ制御開始指令信号、ヒータ制御停止指令信号、制御温度変更指令信号など)を送信する処理を実行する制御部31を備えている。これにより、センサ制御装置5は、無線通信によって端末装置7から種々の指令信号を受信できるとともに、受信した指令信号に基づいてセンサ設定条件を変更し、ガスセンサ3の駆動制御を行うことができる。
【0151】
つまり、センサ制御システム1の使用者(試験者)は、センサ制御装置5から離れた位置から、センサ設定条件を変更するための指令信号をセンサ制御装置5に送信できる。
【0152】
このため、端末装置7とセンサ制御装置5との間に指令信号を送信するための有線ケーブルを配置する手間を掛けることなく、端末装置7からセンサ制御装置5に対して指令信号を送信することが可能となる。
【0153】
そして、センサ制御システム1においては、端末装置7がセンサ設定条件(制御温度,測定レンジ,サンプリングなど)に関する指令信号を送信できる構成であるため、使用者(試験者)は、端末装置7を利用することで、センサ制御装置5から離れた位置であっても、表示部33を通じてセンサ設定条件を変更するための指令信号を目で確認しながら、センサ設定条件の変更作業を実行できる。
【0154】
このため、センサ信号の実測値(A/F値、酸素濃度など)に基づいてセンサ設定条件を調整(変更)するにあたり、使用者(試験者)は、センサ制御装置5に近づく必要が無くなる。
【0155】
よって、センサ制御システム1によれば、センサ制御装置5におけるセンサ設定条件の調整作業(変更)を行うにあたり、使用者(試験者)の移動作業を省略することができ、センサ設定条件の調整作業(変更)の煩雑さを軽減できる。
【0156】
次に、センサ制御システム1においては、センサ制御装置5は、少なくともセンサ信号を含む複数のセンサ情報を有している。
【0157】
端末装置7の操作部35は、表示部33に設定変更画面33bが表示されている際に、複数のセンサ情報のうち端末装置7で受信するセンサ情報を選択するために使用者が行う選択操作を少なくとも受け付けるよう構成されている。
【0158】
また、端末装置7は、操作部35で選択されたセンサ情報を示すセンサ情報変更指令信号を無線通信によりセンサ制御装置5に対して送信する処理を実行する制御部31を備えている。そして、センサ制御装置5は、端末装置7から受信したセンサ情報変更指令信号に応じたセンサ情報を無線通信により端末装置7に送信する。
【0159】
つまり、センサ制御システム1においては、使用者(試験者)は、センサ制御装置5から離れた位置であっても、端末装置7を利用することで必要なセンサ情報を選択することができ、複数の中から選択したセンサ情報を端末装置7に表示することが可能となる。
【0160】
このため、センサ制御装置5のセンサ設定条件の調整作業において、端末装置7で受信するセンサ情報を複数のセンサ情報の中から選択するにあたり、使用者(試験者)は、センサ制御装置5に近づく必要が無くなる。
【0161】
次に、センサ制御システム1においては、端末装置7の操作部35は、表示部33に信号計測時画面33aが表示されている際に、ガスセンサ3のヒータ13への通電状態を選択するために使用者が行う選択操作を少なくとも受け付けるよう構成されている。
【0162】
また、端末装置7は、操作部35で選択された通電状態を示す通電指令信号(ヒータ制御開始指令信号、ヒータ制御停止指令信号)を、無線通信によりセンサ制御装置5に対して送信する処理を実行する制御部31を備えている。そして、センサ制御装置5は、端末装置7から受信した通電指令信号(ヒータ制御開始指令信号、ヒータ制御停止指令信号)に基づいて、ヒータへの通電状態を制御する。
【0163】
つまり、センサ制御システム1においては、使用者(試験者)は、センサ制御装置5から離れた位置であっても、ヒータ13への通電状態を切り替えることができる。
【0164】
このため、センサ制御装置5のセンサ設定条件の調整作業において、ガスセンサ3のヒータ13への通電状態を切り替えるにあたり、使用者(試験者)は、センサ制御装置5に近づく必要が無くなる。
【0165】
[1−5.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
【0166】
制御温度,測定レンジ,サンプリングがセンサ設定条件の一例に相当し、制御温度が制御条件の一例に相当し、測定レンジ、サンプリングが測定条件の一例に相当する。また、A/F値,酸素濃度、λ値がセンサ信号の一例に相当し、A/F値、酸素濃度、λ値、湿度、センサ温度がセンサ情報の一例に相当する。
【0167】
無線モジュール27および無線モジュール37が無線通信部の一例に相当し、センサ制御装置5に対して種々の指令信号(ヒータ制御開始指令信号、ヒータ制御停止指令信号、制御温度変更指令信号など)を送信する処理を実行する制御部31が指令信号送信部の一例に相当する。
【0168】
センサ情報変更指令信号が選択情報信号の一例に相当し、センサ制御装置5に対してセンサ情報変更指令信号を送信する処理を実行する制御部31が選択信号送信部の一例に相当する。
【0169】
ヒータ制御開始指令信号およびヒータ制御停止指令信号のそれぞれが通電指令信号の一例に相当し、センサ制御装置5に対して通電指令信号(ヒータ制御開始指令信号、ヒータ制御停止指令信号)を送信する処理を実行する制御部31が通電信号送信部の一例に相当する。
【0170】
[2.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0171】
例えば、上記の実施形態では、端末装置7がスマートフォンで構成された実施形態について説明したが、端末装置は、使用者(試験者)が持ち運び可能な携帯情報端末装置であれば他の装置で構成してもよい。具体的には、ノート型パソコン、タブレット端末などで端末装置を構成してもよい。
【0172】
また、ガスセンサは、2セル構造の酸素センサに限られることはなく、1セル構造の酸素センサであっても良い。
【0173】
さらに、ガスセンサは、酸素センサに限られることはなく、複数セル構造のNOxセンサなどであってもよい。NOxセンサを制御するセンサ制御システムにおいては、センサ制御装置から端末装置に送信するセンサ情報の候補として、少なくともNOx濃度および酸素濃度を選択できるように構成しても良い。
【0174】
次に、端末装置は、センサ制御装置から送信される無線信号の電界強度を検出し、その電界強度を表示部に表示する電界強度表示部を備えても良い。これにより、端末装置を操作する使用者(試験者)は、表示部に表示される電界強度に基づいて、端末装置とセンサ制御装置との間での無線通信状況が良好であるか否かを判断することができる。
【0175】
また、端末装置の操作部は、表示部に積層されるタッチパネルに限られることはなく、表示部とは別に設けられるキーボードなどで構成しても良い。さらに、上記の実施形態では、表示部33の信号計測時画面33aの受信信号表示部49において、センサ温度がインピーダンス値と相関関係を有するため、センサ温度の単位を「Ω」で表示したが、単位を「℃」に代えて、インピーダンス値を温度換算した温度換算値にて表示するようにしても良い。
【符号の説明】
【0176】
1…センサ制御システム、3…ガスセンサ、5…センサ制御装置、7…端末装置、11…センサ素子、13…ヒータ、15…バッテリ、21…センサ駆動部、23…制御部、25…電源回路、27…無線モジュール、31…制御部、33…表示部、35…操作部、37…無線モジュール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6