(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6279980
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】液冷式冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20180205BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-122270(P2014-122270)
(22)【出願日】2014年6月13日
(65)【公開番号】特開2016-4806(P2016-4806A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】松島 誠二
【審査官】
多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−176881(JP,A)
【文献】
特開2013−254772(JP,A)
【文献】
特開2014−075385(JP,A)
【文献】
特開平11−017078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34−23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂壁および底壁を有しかつ内部に冷却液流路が設けられたケーシングと、ケーシング内の冷却液流路に配置された放熱器とを備えており、ケーシングの頂壁外面および底壁外面のうちいずれか一方に発熱体取付部が設けられ、放熱器が、基板、および基板に対して突出するように千鳥配置状に設けられた複数のピンフィンを有する液冷式冷却装置であって、
放熱器が高さの異なる高低2種類のピンフィンを有し、高低2種類のピンフィンのうち高ピンフィンの横断面形状が平行四辺形であり、かつ当該平行四辺形における1つの角部が冷却液流路における冷却液流れ方向上流側を向くとともに、当該角部と対角線上に位置する角部が同じく冷却液流れ方向下流側を向いており、高ピンフィンが、冷却液流路における冷却液流れ方向下流側に向かって一方に傾斜した複数の第1直線上、および同じく冷却液流れ方向下流側に向かって他方に傾斜した複数の第2直線上に並んで設けられ、高ピンフィンの横断面形状である平行四辺形の1組の対辺が前記第1直線と平行になるとともに、他の1組の対辺が前記第2直線と平行になっており、高低2種類のピンフィンのうち低ピンフィンが、第1直線および第2直線のうちのいずれか一方の直線上において、隣接する2つ高ピンフィンどうしの間に設けられている液冷式冷却装置。
【請求項2】
放熱器の高ピンフィンの横断面形状が菱形であり、当該菱形における鋭角となっている2つの角部が冷却液流路における冷却液流れ方向上流側および冷却液流れ方向下流側を向いている請求項1記載の液冷式冷却装置。
【請求項3】
放熱器の低ピンフィンが、隣接する2つ高ピンフィンどうしの間に、両隣の高ピンフィンと一体に設けられており、低ピンフィンの横断面形状が平行四辺形であり、当該平行四辺形の1組の対辺が前記第1直線と平行になり、他の1組の対辺が前記第2直線と平行になっている請求項1または2記載の液冷式冷却装置。
【請求項4】
放熱器の基板がケーシングの頂壁および底壁のうちいずかにろう付され、高ピンフィンの先端が同他方にろう付されている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の液冷式冷却装置。
【請求項5】
放熱器の基板がケーシングの頂壁および底壁のうちいずかを兼ねており、高ピンフィンの先端が同他方にろう付されている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の液冷式冷却装置。
【請求項6】
放熱器の高ピンフィンの先端が、ケーシングの頂壁および底壁のうち外面に発熱体取付部が設けられた側にろう付されている請求項4または5記載の液冷式冷却装置。
【請求項7】
請求項3記載の液冷式冷却装置に用いられる放熱器を製造する方法であって、
高ピンフィンの高さよりも厚肉の板状素材に、第1直線および第2直線のうち高低2種類のピンフィンが位置している直線と平行になるように切削加工を施すことによって、高ピンフィンの高さと等しい深さを有する複数の溝を互いに間隔をおいて形成し、ついで高低2種類のピンフィンのうち高ピンフィンのみが位置している直線と平行になるように切削加工を施すことによって、溝の両側の残存部分における上端から高低2種類のピンフィンの高さの差と等しい部分を切除し、これにより基板および高低2種類のピンフィンを形成することを特徴とする液冷式冷却装置用放熱器の製造方法。
【請求項8】
請求項3記載の液冷式冷却装置に用いられる放熱器を製造する方法であって、
高ピンフィンの高さよりも厚肉の板状素材に、第1直線および第2直線のうち高低2種類のピンフィンのうち高ピンフィンのみが位置している直線と平行になるように切削加工を施すことによって、高低2種類のピンフィンの高さの差と等しい深さを有する複数の溝を互いに間隔をおいて形成し、ついで高低2種類のピンフィンが位置している直線と平行になるように切削加工を施すことによって、溝の両側の残存部分における上端から高ピンフィンの高さと等しい部分を切除し、これにより基板および高低2種類のピンフィンを形成することを特徴とする液冷式冷却装置用放熱器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば半導体素子などの電子部品からなる発熱体を冷却する液冷式冷却装置に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、
図2の上下を上下というもとのとする。
【背景技術】
【0003】
たとえば、電気自動車、ハイブリッド自動車、電車などに搭載される電力変換装置に用いられるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワーデバイス(半導体素子)を冷却する液冷式冷却装置として、本出願人は、先に、頂壁および底壁を有しかつ内部に冷却液流路が設けられたケーシングと、ケーシング内の冷却液流路に配置された放熱器とを備えており、ケーシングの頂壁外面および底壁外面のうちいずれか一方に発熱体取付部が設けられ、放熱器が、基板、基板に対して突出するように千鳥配置状に設けられた高さの等しい複数の第1ピンフィン、および冷却液流路における冷却液の流れ方向上流端部および下流端部において基板に対して突出するように設けられかつ第1ピンフィンと高さの等しい複数の第2ピンフィンからなり、放熱器の第1および第2ピンフィンが、冷却液流路における冷却液流れ方向下流側に向かって一方に傾斜した複数の第1直線上、および同じく冷却液流れ方向下流側に向かって他方に傾斜した複数の第2直線上に並んで設けられ、放熱器の第1ピンフィンの横断面形状が菱形であり、かつ当該菱形の1つの鋭角部が冷却液流路における冷却液流れ方向上流側を向くとともに、当該角部と対角線上に位置する角部が同じく冷却液流れ方向下流側を向いており、第2ピンフィンの横断面形状が三角形または五角形であって平坦面が冷却液流れ方向上流側を向いている液冷式冷却装置を提案した(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1記載の液冷式冷却装置においては、冷却液流路内を流体がスムーズに流れるので、冷却性能が優れたものになる。
【0005】
ところで、最近では、液冷式冷却装置のさらなる性能向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−254772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、上記問題を解決し、冷却性能をさらに向上しうる液冷式冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0009】
1)頂壁および底壁を有しかつ内部に冷却液流路が設けられたケーシングと、ケーシング内の冷却液流路に配置された放熱器とを備えており、ケーシングの頂壁外面および底壁外面のうちいずれか一方に発熱体取付部が設けられ、放熱器が、基板、および基板に対して突出するように千鳥配置状に設けられた複数のピンフィンを有する液冷式冷却装置であって、
放熱器が高さの異なる高低2種類のピンフィンを有し、高低2種類のピンフィンのうち高ピンフィンの横断面形状が平行四辺形であり、かつ当該平行四辺形における1つの角部が冷却液流路における冷却液流れ方向上流側を向くとともに、当該角部と対角線上に位置する角部が同じく冷却液流れ方向下流側を向いており、高ピンフィンが、冷却液流路における冷却液流れ方向下流側に向かって一方に傾斜した複数の第1直線上、および同じく冷却液流れ方向下流側に向かって他方に傾斜した複数の第2直線上に並んで設けられ、高ピンフィンの横断面形状である平行四辺形の1組の対辺が前記第1直線と平行になるとともに、他の1組の対辺が前記第2直線と平行になっており、高低2種類のピンフィンのうち低ピンフィンが、第1直線および第2直線のうちのいずれか一方の直線上において、隣接する2つ高ピンフィンどうしの間に設けられている液冷式冷却装置。
【0010】
2)放熱器の高ピンフィンの横断面形状が菱形であり、当該菱形における鋭角となっている2つの角部が冷却液流路における冷却液流れ方向上流側および冷却液流れ方向下流側を向いている上記1)記載の液冷式冷却装置。
【0011】
3)放熱器の低ピンフィンが、隣接する2つ高ピンフィンどうしの間に、両隣の高ピンフィンと一体に設けられており、低ピンフィンの横断面形状が平行四辺形であり、当該平行四辺形の1組の対辺が前記第1直線と平行になり、他の1組の対辺が前記第2直線と平行になっている上記1)または2)記載の液冷式冷却装置。
【0012】
4)放熱器の基板がケーシングの頂壁および底壁のうちいずかにろう付され、高ピンフィンの先端が同他方にろう付されている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の液冷式冷却装置。
【0013】
5)放熱器の基板がケーシングの頂壁および底壁のうちいずかを兼ねており、高ピンフィンの先端が同他方にろう付されている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の液冷式冷却装置。
【0014】
6)放熱器の高ピンフィンの先端が、ケーシングの頂壁および底壁のうち外面に発熱体取付部が設けられた側にろう付されている上記4)または5)記載の液冷式冷却装置。
【0015】
7)上記3)記載の液冷式冷却装置に用いられる放熱器を製造する方法であって、
高ピンフィンの高さよりも厚肉の板状素材に、第1直線および第2直線のうち高低2種類のピンフィンが位置している直線と平行になるように切削加工を施すことによって、高ピンフィンの高さと等しい深さを有する複数の溝を互いに間隔をおいて形成し、ついで高低2種類のピンフィンのうち高ピンフィンのみが位置している直線と平行になるように切削加工を施すことによって、溝の両側の残存部分における上端から高低2種類のピンフィンの高さの差と等しい部分を切除し、これにより基板および高低2種類のピンフィンを形成することを特徴とする液冷式冷却装置用放熱器の製造方法。
【0016】
8)上記3)記載の液冷式冷却装置に用いられる放熱器を製造する方法であって、
高ピンフィンの高さよりも厚肉の板状素材に、第1直線および第2直線のうち高低2種類のピンフィンのうち高ピンフィンのみが位置している直線と平行になるように切削加工を施すことによって、高低2種類のピンフィンの高さの差と等しい深さを有する複数の溝を互いに間隔をおいて形成し、ついで高低2種類のピンフィンが位置している直線と平行になるように切削加工を施すことによって、溝の両側の残存部分における上端から高ピンフィンの高さと等しい部分を切除し、これにより基板および高低2種類のピンフィンを形成することを特徴とする液冷式冷却装置用放熱器の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
上記1)〜6)の液冷式冷却装置によれば、ケーシング内の冷却液流路に配置された放熱器が高さの異なる高低2種類のピンフィンを有し、高低2種類のピンフィンのうち高ピンフィンの横断面形状が平行四辺形であり、かつ当該平行四辺形における1つの角部が冷却液流路における冷却液流れ方向上流側を向くとともに、当該角部と対角線上に位置する角部が同じく冷却液流れ方向下流側を向いており、高ピンフィンが、冷却液流路における冷却液流れ方向下流側に向かって一方に傾斜した複数の第1直線上、および同じく冷却液流れ方向下流側に向かって他方に傾斜した複数の第2直線上に並んで設けられ、高ピンフィンの横断面形状である平行四辺形の1組の対辺が前記第1直線と平行になるとともに、他の1組の対辺が前記第2直線と平行になっており、高低2種類のピンフィンのうち低ピンフィンが、第1直線および第2直線のうちのいずれか一方の直線上において、隣接する2つ高ピンフィンどうしの間に設けられているので、放熱器の高低2種類のピンフィンの全伝熱面積が、特許文献1記載の液冷式冷却装置における放熱器の高さの等しい1種類のピンフィンの全伝熱面積よりも大きくなるとともに、低ピンフィンの働きによって、冷却液流路内の冷却液の流れが乱されて冷却液が攪拌される。したがって、ケーシングの頂壁外面および底壁外面のうちいずれか一方に設けられた発熱体取付部に取り付けられる発熱体から発せられる熱が、放熱器のピンフィンを介して効率よく冷却液流路を流れる冷却液に伝わり、冷却性能が向上する。
【0018】
上記2)および3)の液冷式冷却装置によれば、冷却液流路において、冷却液がスムーズに流れ、圧力損失の増大を抑制することができる。
【0019】
また、上記2)および3)の液冷式冷却装置によれば、上記7)および8)の方法によって、放熱器を比較的簡単に製造することができる。
【0020】
上記4)および5)の液冷式冷却装置によれば、ケーシングの発熱体取付部に取り付けられた発熱体から放熱器への伝熱性能が向上する。
【0021】
上記6)の液冷式冷却装置によれば、放熱器の低ピンフィンの働きによって、冷却液流路を流れる冷却液が、ケーシングの頂壁および底壁のうち外面に発熱体取付部が設けられている側に向かって流れていずれかの壁に衝突する。したがって、冷却液流路を流れる冷却液が攪拌されることになって、発熱体から発せられる熱が放熱器のピンフィンを介して効率よく冷却液流路を流れる冷却液に伝わり、冷却性能が向上する。
【0022】
上記7)および8)の液冷式冷却装置用放熱器の製造方法によれば、上記2)および3)の放熱器を比較的簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明の液冷式冷却装置を示す斜視図である。
【
図4】
図1の液冷式冷却装置に用いられる放熱器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0025】
この明細書において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0026】
また、以下の説明において、
図2の左右を左右といい、
図3の上側を前、これと反対側を後というものとする。
【0027】
図1〜
図3は液冷式冷却装置を示し、
図4は液冷式冷却装置に用いられる放熱器を示す。また、
図5は放熱器を製造する方法を示す。
【0028】
図1〜
図3において、液冷式冷却装置(1)は、頂壁(2a)、底壁(2b)および周壁(2c)を有するアルミニウム製ケーシング(2)を備えており、ケーシング(2)内に、冷却液がケーシング(2)の長手方向の片側(左側)から他側(右側)に流れる冷却液流路(3)と、冷却液流路(3)よりも上流側(左側)に位置しかつ冷却液が流入する入口ヘッダ部(4)と、冷却液流路(3)よりも下流側(右側)に位置しかつ冷却液が流出する出口ヘッダ部(5)とが設けられ、ケーシング(2)内の冷却液流路(3)に、ケーシング(2)の頂壁(2a)外面および底壁(2b)外面のうちのいずれか一方、図示の例では頂壁(2a)外面に設けられた発熱体取付部(6)に取り付けられた発熱体(P)から発せられる熱を、冷却液流路(3)を流れる冷却液に放熱するアルミニウム製放熱器(7)が配置されている。
【0029】
詳細な図示は省略したが、ケーシング(2)は、頂壁(2a)および周壁(2c)を構成する下方に開口した箱状のアルミニウム製上構成部材を、底壁(2b)を構成する板状のアルミニウム製下構成部材上にろう付することにより形成されている。上構成部材および下構成部材は、少なくとも一面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートを使用して、ろう材層がケーシング(2)内側に位置するように形成されている。
【0030】
ケーシング(2)内の入口ヘッダ部(4)および出口ヘッダ部(5)は、それぞれ冷却液流路(3)の幅方向(前後方向)にのびており、ケーシング(2)の周壁(2c)の左側部分における前後方向中央部に、入口ヘッダ部(4)に通じる冷却液入口(8)が設けられ、ケーシング(2)の周壁(2c)の右側部分における前後方向中央部に、出口ヘッダ部(5)に通じる冷却液出口(9)が設けられている。図示は省略したが、ケーシング(2)の冷却液入口(8)に、入口ヘッダ部(4)内に冷却液を送り込むアルミニウム製入口パイプが接続され、冷却液出口(9)に、出口ヘッダ部(5)内から冷却液を送り出すアルミニウム製出口パイプが接続されている。
【0031】
発熱体(P)は、IGBTなどのパワーデバイスや、IGBTが制御回路と一体化されて同一パッケージに収納されたIGBTモジュールや、IGBTモジュールにさらに保護回路が一体化されて同一パッケージに収納されたインテリジェントパワーモジュールなどからなり、絶縁部材(I)を介してケーシング(2)の頂壁(2a)外面の発熱体取付部(6)に取り付けられる。
【0032】
図2〜
図4に示すように、放熱器(7)は、基板(11)と、基板(11)に対して上方に突出するように千鳥配置状に一体に設けられた複数の高低2種類のピンフィン(12)(13)とからなる。以下、高さの高いピンフィン(12)を第1ピンフィンといい、高さの低いピンフィン(13)を第2ピンフィンというものとする。
【0033】
第1ピンフィン(12)は横断面平行四辺形、ここでは横断面菱形であって、鋭角となっている2つの角部(12a)が冷却液流路(3)における冷却液流れ方向上流側および冷却液流れ方向下流側を向いている。第1ピンフィン(12)は、冷却液流路(3)における冷却液流れ方向下流側(右側)に向かって一方、ここでは後方に傾斜した複数の第1直線(L1)上、および冷却液流れ方向下流側に向かって他方、ここでは前方に傾斜した複数の第2直線(L2)上に並んで設けられている。第1ピンフィン(12)の菱形の横断面形状における1組の対辺は第1直線(L1)と平行になり、他の1組の対辺は第2直線(L2)と平行になっている。
【0034】
第1直線(L1)および第2直線(L2)のうちのいずれか一方の直線上、ここでは第1直線(L1)上に位置する複数の第1ピンフィン(12)のうち隣接する2つの第1ピンフィン(12)どうしの間に、第1ピンフィン(12)よりも低い第2ピンフィン(13)が、両隣の第1ピンフィン(12)と一体に設けられている。第2ピンフィン(13)の横断面形状は平行四辺形であり、平行四辺形の横断面形状における1組の対辺が第1直線(L1)と平行になり、他の1組の対辺が第2直線(L2)と平行になっている。第2ピンフィン(13)の横断面形状である平行四辺形の第1直線(L1)と平行になっている1組の対辺の長さは、第1ピンフィン(12)の菱形の横断面形状の1辺の長さよりも短く、同じく第2直線(L2)と平行になっている1組の対辺の長さは、第1ピンフィン(12)の菱形の横断面形状の1辺の長さと等しい。
【0035】
放熱器(7)は、基板(11)がケーシング(2)の頂壁(2a)および底壁(2b)のうちの発熱体取付部(5)が設けられていない側、ここでは底壁(2b)の内面にろう付され、第1ピンフィン(12)の先端が、ケーシング(2)の頂壁(2a)および底壁(2b)のうち外面に発熱体取付部(6)が設けられた側、ここでは頂壁(2a)内面にろう付されている。
【0036】
上記構成の液冷式冷却装置(1)において、入口パイプから冷却液入口(8)を通って入口ヘッダ部(4)内に流入した冷却液は、冷却液流路(3)に配置された放熱器(7)の第1および第2ピンフィン(12)(13)間を通って右方に流れる。冷却液流路(3)を右方に流れた冷却液は、出口ヘッダ部(5)内に入り、冷却液出口(5)を通って出口パイプに送り出される。発熱体(P)から発せられる熱は、絶縁部材(I)、ケーシング(2)の頂壁(2a)および放熱器(7)の各フィンプレート(11)を経て冷却液流路(3)の各分割流路(14)内を流れる冷却液に放熱され、発熱体(P)が冷却される。
【0037】
冷却液が冷却液流路(3)を流れる際に、第2ピンフィン(13)の働きによって、冷却液流路(3)内の冷却液の流れが乱されるとともに、冷却液が外面に発熱体取付部(6)が設けられているケーシング(2)の頂壁(2a)に向かって流れて衝突する。したがって、冷却液流路(3)を流れる冷却液が攪拌されることになって、発熱体(P)から発せられる熱が放熱器(7)の第1および第2ピンフィン(12)(13)を介して効率よく冷却液流路(3)を流れる冷却液に伝わり、冷却性能が向上する。
【0038】
次に、
図5を参照して放熱器(7)の製造方法について説明する。
【0039】
まず、基板(11)の肉厚に第1ピンフィン(12)の高さを加えた肉厚を有する板状素材(20)に、第1直線(L1)および第2直線(L2)のうちの第1および第2ピンフィン(12)(13)が位置している第1直線(L1)と平行になるように切削加工を施すことによって、第1ピンフィン(12)の高さと等しい深さを有する複数の溝(21)を互いに間隔をおいて形成する(
図5(a)参照)。
【0040】
ついで、第1ピンフィン(12)のみが位置している他方の第2直線(L2)と平行になるように切削加工を施すことによって、溝(21)の両側の残存部分(22)における上端から両ピンフィン(12)(13)の高さの差と等しい部分を切除しすることによって、高低2種類のピンフィン(12)(13)を形成する(
図5(b)参照)。その後、残存部分(22)の不要部分を切除する。こうして、基板(11)および高低2種類のピンフィン(12)(13)からなる放熱器(7)が製造される。
【0041】
なお、図示は省略したが、放熱器(7)は以下に述べる方法によっても製造される。
【0042】
まず、基板(11)の肉厚に第1ピンフィン(12)の高さを加えた肉厚を有する板状素材に、第1直線(L1)および第2直線(L2)のうちの第1ピンフィン(12)のみが位置している第2直線(L2)と平行になるように切削加工を施すことによって、第1ピンフィン(12)と第2ピンフィン(13)との高さの差と等しい深さを有する複数の溝を互いに間隔をおいて形成する。ついで、第1および第2ピンフィン(12)(13)が位置している第1直線(L1)と平行になるように切削加工を施すことによって、溝の両側の残存部分における上端から第1ピンフィン(12)の高さと等しい部分を切除することによって、高低2種類のピンフィン(12)(13)を形成する。その後、残存部分の不要部分を切除する。こうして、基板(11)および高低2種類のピンフィン(12)(13)からなる放熱器(7)が製造される。
【0043】
上述した実施形態においては、放熱器(7)の基板(11)がケーシング(2)の底壁(2b)にろう付され、第1ピンフィン(12)の先端が頂壁(2a)にろう付されているが、これに代えて、放熱器(7)の基板(11)がケーシング(2)の底壁(2b)を兼ねており、第1ピンフィン(12)の先端が頂壁(2a)にろう付されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明による液冷式冷却装置は、電気自動車、ハイブリッド自動車、電車などに搭載される電力変換装置に用いられるIGBTなどのパワーデバイスを冷却するのに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0045】
(1):液冷式冷却装置
(2):ケーシング
(2a):頂壁
(2b):底壁
(3):冷却液流路
(6):発熱体取付部
(7):放熱器
(11):基板
(12):第1ピンフィン(高ピンフィン)
(12a):角部
(13):第2ピンフィン(低ピンフィン)
(20):板状素材
(21):溝
(22):残存部分
(L1):第1直線
(L2):第2直線