(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6280019
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】薄板保持具
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20180205BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-214297(P2014-214297)
(22)【出願日】2014年10月21日
(65)【公開番号】特開2016-82146(P2016-82146A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】大出 祥子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 信裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 清文
【審査官】
中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−000930(JP,A)
【文献】
特開2012−256666(JP,A)
【文献】
特開2003−315805(JP,A)
【文献】
特開2009−269337(JP,A)
【文献】
特開平05−036817(JP,A)
【文献】
特開2009−248123(JP,A)
【文献】
特開2014−077850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板を保持する薄板保持具であって、
支持基板と、
前記支持基板の表面に形成された複数のスペーサと、
前記複数のスペーサの表面を覆うように少なくとも前記支持基板の周辺に接着された粘着保持層と、を備え、
前記スペーサが弾性を有し、
前記粘着保持層と前記スペーサのデュロメータA硬さの差が、0〜30の範囲にあることを特徴とする薄板保持具。
【請求項2】
前記スペーサのデュロメータA硬さが30〜60の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の薄板保持具。
【請求項3】
前記スペーサがエラストマーで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の薄板保持具。
【請求項4】
前記スペーサの表面が粗面化処理されていることを特徴とする請求項1に記載の薄板保持具。
【請求項5】
前記粘着保持層がシリコーンゴムシートを含み、
前記シリコーンゴムシートの表裏面の少なくとも一方にコーティング層を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の薄板保持具。
【請求項6】
前記コーティング層がシリコーンエラストマーで構成されていることを特徴とする請求項5に記載の薄板保持具。
【請求項7】
前記シリコーンエラストマーが、縮合反応系シリコーンを含むことを特徴とする請求項6に記載の薄板保持具。
【請求項8】
前記コーティング層が耐熱フィラーを含有することを特徴とする請求項5に記載の薄板保持具。
【請求項9】
前記粘着保持層が、表面の少なくとも一部をカットしたカット部を有することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の薄板保持具。
【請求項10】
前記支持基板が2.5ppm/℃〜8.0ppm/℃の線膨張係数を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の薄板保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄板保持具に係り、たとえば、半導体チップ、半導体ウェーハ等の薄板を保持する薄板保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の保持具は、たとえば、下記特許文献1あるいは2に開示されているものが知られている。
【0003】
特許文献1には、支持基板と、該支持基板の表面を覆い該支持基板の周辺に接着された粘着フィルムと、を有し、該粘着フィルムに、ウェーハを貼り付けることができるようにしたウェーハ保持具が記載され、該粘着フィルムの材料として、それ自身が粘着性を有するポリオレフィン系エラストマーやウレタンゴム等、あるいは、それ自身は粘着性を示さないフィルム上にアクリル系粘着剤を塗布したものが用いられている。また、特許文献1は、支持基板と粘着フィルムとの間に複数のスペーサを設け、スペーサ間の領域にスペーサの高さと同じ厚さで接着剤を塗布して粘着フィルムの支持基板からの高さを均一にし、粘着フィルムの上面にはエンボス加工等の非粘着加工部を設けた例が開示されている。
【0004】
特許文献2には、支持基板と、該支持基板の表面を覆い該表面に部分的に形成された接着領域において接着される粘着保持層と、を有し、該粘着保持層に、複数の半導体チップを粘着保持させる半導体チップ用保持具が記載され、該粘着保持層の材料として、たとえば自己粘着性を有するポリオレフィン系エラストマーやウレタンゴム、耐熱性に優れるシリコーン系やフッ素系のエラストマー等が用いられている。
【0005】
特許文献1あるいは2に開示された保持具は、半導体ウェーハあるいは半導体チップ等の薄板を粘着させる粘着フィルムあるいは粘着保持層を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−256666号公報
【特許文献2】特開2012−209522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えばウェーハのバックグラインド時など薄板の処理時、スペーサと周囲の凹部に対応した粘着保持層にかかる押圧に差が生じ、薄板に部分的な押圧がかかり、薄板が破損してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、薄板が破損する事の無い薄板保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の薄板保持具は、支持基板と、前記支持基板の表面に形成された複数のスペーサと、前記複数のスペーサの表面を覆うように少なくとも前記支持基板の周辺に接着された粘着保持層と、を備え、前記スペーサが弾性を有し、前記粘着保持層と前記スペーサのデュロメータA硬さの差が、0〜30の範囲にある。
【0010】
(2)前記スペーサは、デュロメータA硬さが30〜60の範囲である(1)に記載の薄板保持具を提供する。
(3)前記スペーサがエラストマーで構成されている(1)に記載の薄板保持具を提供する。
(4)前記スペーサの表面が粗面化処理されている(1)に記載の薄板保持具を提供する。
(5)前記粘着保持層がシリコーンゴムシートを含み、前記シリコーンゴムシートの表裏面の少なくとも一方にコーティング層を有する(1)〜(4)のいずれか1に記載の薄板保持具を提供する。
【0011】
(6)前記コーティング層がシリコーンエラストマーで構成されている(5)に記載の薄板保持具を提供する。
(7)前記シリコーンエラストマーが、縮合反応系シリコーンを含む(6)に記載の薄板保持具を提供する。
(8)前記コーティング層が耐熱フィラーを含有する(5)に記載の薄板保持具を提供する。
(9)前記粘着保持層が、表面の少なくとも一部をカットしたカット部を有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1に記載の薄板保持具を提供する。
(10)前記支持基板が、2.5ppm/℃〜8.0ppm/℃の線膨張係数を有する(1)から(9)のいずれか1に記載の薄板保持具を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、薄板が破損する事の無い薄板保持具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明の薄板保持具の実施形態を示す構成図であって、その平面図である。
【
図2】本発明の薄板保持具に用いられる粘着フィルムの断面図である。
【
図3A】本発明の薄板保持具に半導体チップを載置した状態を示す図であって、半導体チップを粘着させた場合を示した図である。
【
図3B】
図3Aの半導体チップを剥離しようとする場合を示した図である。
【
図4】粘着保持層の表面全体にカット部を形成した例を示す図である。
【
図5】粘着保持層のうちのスペーサ上のみにカット部を形成した例を示す図である。
【
図6】
図6は、粘着保持層の表面全体にカット部を形成した場合の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1A及び1Bは、本発明の薄板薄板保持具1の実施形態を示す構成図である。
図1Aは平面図、
図1Bは
図1Aのb−b線の断面図である。薄板保持具1は、半導体チップや薄ウェーハの積層、搬送等に使用する薄板保持具であって、特にウェーハの薄化処理やダイシング時に、処理後は薄ウェーハや薄チップを仮固定し、また当該ワークを容易に剥離可能で、繰り返し使用することができる。
【0015】
図1A及び1Bにおいて、まず、平面視で円形状からなる支持基板10を有する。支持基板10は、たとえばシリコンウェーハ、ガラス基板、アルミナ基板等の基板によって構成されている。支持基板10は、線膨張係数が2.5ppm/℃〜8.0ppm/℃の範囲のものを用いるのが好ましい。例えば、シリコン、炭化ケイ素、アルミナ、サファイア及びガラス等が、線膨張係数が2.5ppm/℃〜8.0ppm/℃の範囲に含まれる。ワークがシリコン製の場合、線膨張係数が同じとなるよう支持基板10にシリコンウェーハを用いるのが好ましい。
支持基板10の表面には、平面視で矩形状からなるスペーサ11が縦横に並設されて形成されている。これにより、支持基板10の表面において、該スペーサ11が形成されていない領域は、格子状の溝12が形成される領域となっている。
【0016】
スペーサ11は、バックグラインド時の応力を緩和するため、粘着保持層と同等の弾性を有し、スペーサ11のデュロメータA硬さが30〜60の範囲である。スペーサ11の材料には、特にエラストマーで構成するのが好ましい。スペーサ11は、粘着保持層と密着しないように、スペーサ11の表面を粗面化処理する。スペーサ11は、支持基板10の表面に厚さを有する材料層を印刷で積層させることによって構成する。
【0017】
そして、スペーサ11が形成された支持基板10の表面には、粘着保持層13が各スペーサ11を覆って配置され、支持基板10の周辺及び該スペーサ11を囲む溝12の内部に接着部14を介して接着されている。接着部14としては、たとえば縮合系シリコーンエラストマーを含む接着剤が用いられ、接着部14は、スペーサ11が形成されていない領域において支持基板10の表面に粘着保持層13を接着し、スペーサ11の高さよりも小さい厚みを有する。
【0018】
粘着保持層13は、複数のスペーサの表面を覆うように少なくとも支持基板の周辺に接着されている。薄化したウェーハを剥離する際に、薄化したウェーハと粘着保持層との接触面積が小さいほど剥離がしやすい。粘着保持層13は、その拡大した断面図である
図2に示すように、基材13Bと、基材13Bの支持基板10と反対側の面に形成される第1コーティング層131と、基材13Bの支持基板10の側の面に形成される第2コーティング層132と、を有する。コーティング層は基材13Bの表裏面の一方又は両方に設けることができる。
【0019】
基材13Bは、シリコーンゴムシートからなる。このコーティング層131,132には、例えばシリコーンペーストゴムを用いることができ、シリコーンエラストマー層を形成する。表面側のコーティング層131に耐熱フィラーを添加し、粘着部と非粘着部の密着力を調整することができる。第2コーティング層132は、支持基板とシリコーンゴムが密着しないために、耐熱フィラーを添加したシリコーンエラストマー層を形成し、非粘着にすることが可能である。
【0020】
さらに第1コーティング層131、第2コーティング層132には、縮合反応系シリコーンを含有させることができる。縮合反応系シリコーンには、脱アセトンタイプ、または、脱アルコールタイプを用いることが好ましい。脱酢酸タイプを使用すると、支持基板やワークのシリコン腐食するためである。
【0021】
第1コーティング層131はフィラーが比較的少なく含有された縮合系シリコーンエラストマーからなり、第2コーティング層132はフィラーが比較的多く含有された縮合系シリコーンエラストマーからなっている。フィラーは、増量作用、補強作用、マット作用等の役割を担っている。
【0022】
フィラーの種類は、特に限定されず、たとえばシリカ、タルク、クレー、マイカ、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、グラファイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸、金属酸化物等の無機フィラー、及び、シリコ―ン樹脂、フェノ―ル樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂等の有機フィラーを、単独又は複数用いることができる。これらのうち、コスト、機械強度の点から、シリカが特に好ましい。また、フィラーの形状は、特に限定されず、使用することができる。
【0023】
ここで、第1コーティング層131のフィラーの含有量は、第1コーティング層131内の前記フィラー以外の固形分(例えば、縮合系シリコーンエラストマー)の重量に対して、1.0重量%〜2.5重量%の範囲に設定することが好ましい。第1コーティング層131は、フィラーを比較的少なく含有させることにより粘着層として機能させることができ、第2コーティング層132は、フィラーを比較的多く含有させることにより粘着抑制層として機能させることができる。
【0024】
また、粘着保持層13は、デュロメータA硬さが50〜60の範囲である。スペーサ11を粘着保持層13と同等の弾性を有するようにするために、粘着保持層13とスペーサ11のデュロメータA硬さの差を、0〜30の範囲にすることが好ましい。従来、ウェーハのバックグラインド時など薄板の処理時、スペーサ11と周囲の凹部に対応した粘着保持層13にかかる押圧に差が生じ、ウェーハに部分的な押圧がかかり、薄板が破損してしまうことがあった。スペーサ11を粘着保持層13と同等の弾性とすることにより、ウェーハの薄化時に研磨による押圧によって、薄化したウェーハを破損することがなくなる。
【0025】
図4は、粘着保持層の表面全体にカット部30を形成した例を示す図である。
図4に示すように、粘着保持層13の表面全体に切り込み状(穿孔)のカット部30を形成する。このカット部30によりワークの剥離性を向上させることができる。また、カット部30は、粘着保持層13の表面全体に形成しなくてもよく、少なくとも一部に形成してもよい。
図5は、粘着保持層のうちのスペーサ11上のみにカット部30aを形成した例を示す図である。
図5に示すように、粘着保持層13の表面全体ではなく、スペーサ11上の領域だけにカット部30aを形成してもよい。このカット部30aによってもワークの剥離性を向上させることができる。
図6には、
図4で示したように、粘着保持層13の表面全体にカット部30を形成した場合の写真を示す。
【0026】
スペーサ11が形成された支持基板10の表面を覆って該支持基板10に形成された溝12内の接着部14によって接着される粘着保持層13は、該溝12(スペーサ11が形成されていない領域)によって反映される凹部に粘着抑制材(粘着抑制部ともいう)15が充填(塗布)されている。これは粘着保持層13の表面の平坦化を図るためである。該粘着抑制材15は、第2コーティング層132のフィラーの含有率とほぼ等しい含有率のフィラーを含有して構成されている。
【0027】
このように構成された薄板保持具1は、
図3Aに示すように、面積の比較的小さな半導体チップ(ワーク)20を粘着保持層13に載置して粘着させることができる。この場合、半導体チップ20は、スペーサ11の上方の粘着保持層13の表面に粘着され、溝12の上方の粘着抑制材15が塗布された部分には粘着されないことになる。
図3Bは、半導体チップ20を剥がそうとして該半導体チップ20を薄板保持具1から上方に持ち上げた場合を示した図である。
【0028】
粘着保持層13のスペーサ11との当接面は粘着抑制面となっているため、この部分における粘着保持層13は半導体チップ20とともに上方に持ち上げられるよう離間する。しかし、粘着保持層13の半導体チップ20との粘着面は、上述したように第1コーティング層131(
図2参照)となっており、フィラーが適当な量(第1コーティング層131内の前記フィラー以外の固形分の重量に対して、1.0重量%〜2.5重量%)で含有されることによって第1コーティング層131自体の粘着性が相対的に低く抑制され、半導体チップ20は該粘着保持層13から容易に剥がれるようになる。
【0029】
薄板保持具1の実施例について説明する。
<実施例>
【0030】
スペーサ11を次のように調製した。まず、フィラーとして、シリカ(マット剤(セイコーアドバンス社製商品名))1gをトルエン7.3gに分散させた。この分散溶液に縮合系シリコーンエラストマー(X−31−2658(信越化学工業社製商品名))を20g添加し、分散させ、スペーサ用インキ溶液を作製した。そして、スクリーン印刷法を用いて、前記スペーサ用インキ溶液を200mmのシリコンウェーハ(750μm厚)の鏡面側に2.5mm角パターン、5mmピッチで印刷し常温下で静置し、硬化させた。硬化したスペーサ上にさらにスペーサ用インキを印刷し、常温で硬化させて、28μm厚のスペーサ11を形成した。
【0031】
第1コーティング層131を次のように調製した。まず、フィラーとして、シリカ(マット剤(セイコーアドバンス社製商品名))0.2gをトルエン7gに分散させた。
この分散溶液に縮合系シリコーンエラストマー(X−31−2658(信越化学工業社製商品名))を20g添加し、分散させ、第1コーティング層用エラストマー溶液を作製した。
そして、350mmφのベタ版を用いて、前記第1コーティング層用エラストマー溶液をシリコーンゴムシートからなる基材13B(KE−151K−U(信越化学工業社製商品名)をシーティングしたもの、200μm厚)にスクリーン印刷し、常温下で硬化させた。
【0032】
第2コーティング層132を次のように調製した。まず、フィラーとして、シリカ(マット剤(セイコーアドバンス社製商品名))1gをトルエン9gに分散させた。この分散溶液に縮合系シリコーンエラストマー(X−31−2658(信越化学工業社製商品名))を20g添加し、分散させ、第2コーティング層用エラストマー溶液を作製した。そして、350mmφのベタ版を用いて、第1コーティング層を印刷したシリコーンゴムシートからなる基材13Bの裏面に前記第2粘着剤層用エラストマー溶液をスクリーン印刷し、常温下で硬化させた。以上により、第1コーティング層131、シリコーンゴムシート13B及び第2コーティング層132を含む粘着保持層13を得た。
【0033】
粘着保持層13の支持基板10への固定を次のように行った。まず、粘着保持層13を200mmのSUSフレームに貼り付け、200mm対応ウェハーエキスパンダー(TEX−218(テクノビジョン社製))で7.2%延伸させ、200mmグリップリングに嵌合した。
そして、グリップリング周囲の粘着保持層13を切り取った。そして、スペーサ11を形成した支持基板10上に縮合系シリコーン系エラストマー(KE3417(信越化学工業社製商品名))を格子状(2mmラインパターン、5mmピッチ、18μm厚)にスクリーン印刷し、10分間静置した。その後、グリップリングで嵌合したフィルムを貼り付け、常温下でフィルム上面から加圧し(24時間)、支持基板10に格子状に接着した。そして、支持基板10の周囲の粘着保持層13の余剰部分を切り取った。
【0034】
粘着抑制材15を次のように調製した。まず、フィラーとして、シリカ(マット剤(セイコーアドバンス社製商品名))1gをトルエン8.3gに分散させた。この分散溶液に縮合系シリコーンエラストマー(X−31−2658(信越化学工業社製商品名))を20g添加し、分散させ、粘着抑制材用エラストマー溶液を作製した。そして、スクリーン印刷法を用いて、支持基板10に固定された粘着保持層13の表面に前記粘着抑制材用エラストマー溶液を格子状(たとえば、2mmラインパターン、5mmピッチ、10μm厚)に印刷し、常温下で硬化させた。印刷の際は支持基板10のノッチを基準にして、位置決めをした。
【0035】
各材料のデュロメータA硬さは、基材13B(シリコーンゴムシート)が50〜57、第1コーティング層131及び第2コーティング層132が30〜35である。基材13Bに比べて、第1コーティング層131及び第2コーティング層132の厚みは薄いため、粘着保持層13全体のデュロメータA硬さは、主に基材13Bに依存すると考えられるため、50〜60の範囲であることが好ましい。
【0036】
以上説明したことから明らかなように、本発明の薄板保持具1によれば、ウェーハの薄化時に研磨による押圧によって、薄化したウェーハを破損することなく、保持することができ、さらに薄化後のウェーハを小さな応力で剥離することができる。剥離の際に、粘着剤を溶解したり、機械的に破壊することなく、剥離することが可能であり、ウェーハに粘着剤が残ることもない。耐熱性を有した粘着保持層を用いた場合、半導体チップやシリコンウェーハを保持したまま、高温処理することもでき、高温処理後も、搭載ワークを剥離することができる。さらに、粘着保持部が位置整合性に優れている。
【0037】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0038】
1……薄板保持具、10……支持基板、11……スペーサ、12……溝、13……粘着保持層、13B……基材(シリコーンゴムシート)、131……第1コーティング層、132……第2コーティング層、14……接着部、15……粘着抑制部、20……半導体チップ、30……カット部