(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コラム部材が前記バイアス部材の影響を受けて前記第2の方向に変位すると、前記起動ボタンは、前記コラム部材と一緒に前記第2の方向に変位して用量終了指示機構の役目を果たすことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達システム。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の実施形態の上記の態様および利点ならびに/またはその他の態様および利点は、添付図面に関して書かれた以下の詳細な説明から明白となり、より容易に理解される。
【
図1】本発明の実施形態に基づく薬剤送達装置の上面透視図である。
【
図2】装置の動作を示す
図1の装置の内部の透視図である。
【
図3】装置の動作を示す
図1の装置の内部の透視図である。
【
図4】
図1の装置のコラムベース(column base)の部分透視図である。
【
図5】
図1の装置のコラム部材の下面透視図である。
【
図6】装置の動作を示す
図1の装置の内部の透視図である。
【
図7】装置の動作を示す
図1の装置の内部の透視図である。
【
図8】装置の動作を示す
図1の装置の内部の透視図である。
【
図9】装置の動作を示す
図1の装置の内部の透視図である。
【
図10】代替パレット(pallet)部材を示す
図1の装置の部分透視図である。
【
図11】代替パレット部材を示す
図1の装置の部分透視図である。
【
図12】本発明の他の実施形態に基づく薬剤送達装置の部分透視図である。
【
図13】本発明の他の実施形態に基づく薬剤送達装置の部分透視図である。
【
図14】遅延機構の起動を示す
図12の装置の側面透視図である。
【
図15】遅延機構の起動を示す
図12の装置の側面透視図である。
【
図16】本発明の他の実施形態に基づく薬剤送達装置の部分透視図である。
【
図17】本発明の他の実施形態に基づく薬剤送達装置の部分透視図である。
【
図18】本発明の他の実施形態に基づく薬剤送達装置の部分透視図である。
【
図19】本発明の他の実施形態に基づく薬剤送達装置の部分透視図である。
【
図20】本発明の他の実施形態に基づく薬剤送達装置の部分透視図である。
【
図21】本発明の他の実施形態に基づく遅延機構を示す図である。
【
図22】本発明の他の実施形態に基づく薬剤送達装置の部分透視図である。
【
図23】本発明の他の実施形態に基づく代替コラムアセンブリを示す図である。
【
図24】本発明の他の実施形態に基づく代替コラムアセンブリを示す図である。
【
図25】本発明の他の実施形態に基づくコラムアセンブリを示す図である。
【
図26】本発明の他の実施形態に基づくコラムアセンブリを示す図である。
【
図27】本発明の他の実施形態に基づくコラムアセンブリを示す図である。
【
図28】本発明の他の実施形態に基づくコラムアセンブリを示す図である。
【
図29】本発明の他の実施形態に基づく起動機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態が詳細に参照される。それらの実施形態が添付図面に示されており、その中では、全体を通じて同様の参照符号が同様の要素を指す。本明細書に記載された実施形態は図面を参照することによって本発明を例示するが、本発明を限定することはしない。当業者には理解されるとおり、上方、下方、底部、頂部などの用語は相対的なものであり、例示を助けるために使用され、限定を意図したものではない。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に基づく薬剤送達装置100の上面透視図である。装置100は、本体102、起動ボタン104および安全装置106を含む。装置100を動作させるため、使用者は最初に、起動ボタン104から遠ざかる方向へ安全装置106をスライドさせて、起動ボタン104から安全装置106を外す。この段階で、患者の皮膚の表面に装置100を置くのに続いて、使用者は、起動ボタン104を押し下げて薬剤送達の過程を開始することができる。使用者と患者が別の人物であってもよいし、または使用者と患者が同じ人物であってもよいことは当業者によって理解されるであろう。用語「使用者」と「患者」は以後、相互に交換可能に使用される場合がある。本発明の実施形態が、使用者と患者が同じ人物である実施形態だけ、または使用者と患者が別の人物である実施形態だけに限定されないことは理解されるであろう。
【0011】
図2、3および6〜9は、装置の動作を示す装置100の内部の透視図である。装置100は、ベース108と、中に栓112が移動可能に配置された液体薬剤容器110と、後により詳細に説明される、薬剤送達の完了前に自動的に起動する遅延機構とを含む。遅延機構は、薬剤送達の完了に続いて自動的にサブシステムを起動させまたは操作を開始する。
【0012】
装置100はさらに、弁114と、スライドするブラケット(bracket)116と、薬剤容器110内で栓112を変位させて薬剤を投与するバイアスされたプランジャ(plunger)118と、プランジャ118を選択的に保持および解放するシャッタ120とを含む。一実施形態によれば、装置100はさらに注入/後退コラムアセンブリ122を有し、注入/後退コラムアセンブリ122は起動ボタン104を含む。
【0013】
起動ボタン104が透明なボタンとして示された
図3に示されているように、コラムアセンブリ122はさらに、その中に患者針126(例えば
図14および15に示されている)が配置された針アーバ(needle arbor)124と、コラムベース128と、針アーバを下方へバイアスする針ばね130と、コラム部材132とを含む。一実施形態によれば、コラムベース128が、一体構造体として、ベース108と一体に形成される。他の実施形態によれば、ベース108にコラムベース128が取り付けられる。
図4に示されているように、コラムベース128は、針アーバ124の回転を案内する案内面134と、使用者に挿入するためにベース108を越えて針126を延ばす針アーバ124の垂直変位を案内する案内部分136とを含む。さらに、コラムベース128の周囲に複数の保持部分138が配置されている。
【0014】
後により詳細に論じられるように、保持部分138は、
図5に示されているコラム部材132の足140と相互作用する。コラム部材132はさらに、遅延機構とインタフェースする歯車部分142を含む。
【0015】
装置100の動作について説明すると、安全装置106を変位させた後、起動ボタン104を押し下げる行為(
図3に示された状態)が、バイアスされたスライドするブラケット116を解放する。スライドするブラケット116のスライド運動が針アーバ124を回転させ、ついには針アーバ124のアームが案内部分136に達し(
図6)、この段階で、針ばね130が、針アーバ124を案内部分136に沿って下方へ変位させて、針126を装置100の外側へ変位させ、使用者に挿入する(
図7)。スライドするブラケット116のこのスライド運動はさらに弁114を開き(
図8)、シャッタ120を起動させ(
図6〜8)、シャッタ120は、バイアスされたプランジャ118を解放して、薬剤容器110内での栓112の変位を開始させる。
【0016】
前述のとおり、薬剤送達装置のさまざまな構成要素の集合的な公差が、全用量を送達するのに必要とされる時間に影響を及ぼすことがある。例えば、栓の長さ、薬剤容器の内径、針の内径および薬剤容器と針の間の接続部分の内径は全て、薬剤の流量、したがって用量の送達を完了するのに必要とされる時間に影響を及ぼす可能性がある。
【0017】
一部の薬剤の費用のため、使用者は、適用量(dosage)の実質的に100%を送達することを望む。用量が送達されたときにそのことが指示されることを欲することもある。しかしながら、さまざまな構成要素の集合的な公差のため、用量完了の確実性を判定することが困難であることがあり、5、10、20、60分など比較的に長い時間にわたって用量が投与される場合には特にそうである。例えば、さまざまな構成要素の集合的な公差が、適用量送達の速度の10%の可変性を与える場合、ターゲット適用量送達時間が60分であるとすると、用量は54分または66分で送達されることがある。したがって、弁閉鎖、用量終了指示、針保護などの1つまたは複数の送達後サブシステムまたは操作を起動させる遅延機構を有することが望ましい。このような遅延機構は、例えば90%または95%の用量完了時に作動させることができ、次いで、用量完了を保証するであろう所定の遅延の後、遅延機構は、サブシステムを起動させまたは操作を開始することができる。
【0018】
一実施形態によれば、プランジャ118は、スプール(spool)146に巻き付けられた尾部144を含み、スプール146はスプールアーム148を含む。プランジャ118が薬剤容器110内の栓112を変位させると、尾部144はスプール146からほどけ、それによってスプール146およびスプールアーム148を回転させる。プランジャ118および栓112の所定の変位および対応する量のスプール146の回転の後、スプールアーム148は遅延アクチュエータ150と係合し、遅延アクチュエータ150は遅延機構を起動させる。一実施形態によれば、スプールアーム148が遅延アクチュエータ150のカム面152(
図11に最もよく示されている)と係合して遅延アクチュエータ150を回転させ、パレット部材との係合を解く。
【0019】
図2、3および6〜9に示されているように遅延機構154はバイアス機構を含む。一実施形態によれば、バイアス機構が、2つのスプール176と178の間に巻かれたばね174(例えば
図6参照)を含む。スプール176はシャフト158と同心に配置されてそれと一緒に回転する。遅延機構154はさらに、パレット部材156およびシャフト158を含む。パレット部材156は、ベース部分160、およびベース部分160から延びる対向する一対のパレットアーム162を含む。ベース部分160はベース108に回転可能に接続されている。一実施形態によれば、ベース部分160は中立位置にバイアスされている。この中立バイアスを達成するため、パレット部材156はバイアス部分164を含む(例えば
図2参照)。
【0020】
シャフト158は、コラム部材132の歯車部分142とかみ合うウォームギヤ166を含む。シャフト158はさらに、インパルスホイール(impulse wheel)またはディスク(disc)168を含み、インパルスホイール(impulse wheel)またはディスク(disc)168は、その互いに反対方向を向いた面に円周に沿って配置された、パレットアーム162と相互作用する歯またはコグ(cog)170を有する。
【0021】
スプールアーム148が遅延アクチュエータ150のカム面152と係合して遅延アクチュエータ150を回転させ、パレット部材156との係合を解き、それによって遅延機構154を起動させると、パレット部材156はその回転軸を軸に自由に振動することができる。ばね174のバイアスによりシャフト158が回転し、それによってホイール168の互いに反対方向を向いた面の歯170がパレットアーム162と交互にかみ合う。この相互作用はシャフト158の回転を遅延させる。
【0022】
シャフト158の回転はさらにウォームギヤ166を回転させ、ウォームギヤ166は、それと歯車部分142との相互作用により、
図8に示されているように注入/後退コラムアセンブリ122の回転を引き起こす。薬剤送達の完了に続いて起こるコラムアセンブリ122の所定量の回転の後、コラム部材132の足140はもはやコラムベース128の保持部分138と整列しておらず、コラムばね180が、コラムアセンブリ122を上方へ変位させ使用者から遠ざける(
図9)。このコラムアセンブリ変位は、使用者の皮膚から針を引抜き、装置100内に戻す。このように、一実施形態によれば、遅延機構154は、薬剤送達の完了に続いてサブシステム(針安全機構)を自動的に起動させる。さらに、起動ボタン104がコラムアセンブリ122の上に位置するため、コラムアセンブリ122が上方へ移動すると起動ボタン104も上方へ移動し、それによって視覚的な用量終了指示機構の役目を果たす。さらに、一実施形態によれば、コラムアセンブリ122の上方への移動は、適用量完了(dosage completion)を指示する可聴の触知できるフィードバックの役目も果たす。
【0023】
遅延機構154の全体遅延に影響を及ぼすようにいくつかの因子を設計することができる。例えば尾144の長さ、スプール146の直径およびスプールアーム148の初期角度位置などである。追加の因子は、歯170の数、サイズおよび形状、ディスク168の直径、パレット部材156がどのくらい速く振動するのか(すなわちパレットアーム162の長さおよび/またはバイアス要素164の強さ)、ならびにばね174がどのくらい強力なのかを含む。
【0024】
図10および11は、代替パレット部材を示す
図1の装置の部分透視図である。この実施形態では、パレット部材182が、バイアス部分164ではなく1つまたは複数のばねを中央コラム184の内側に含む。この内部ばねはパレット部材を中立位置にバイアスする。
【0025】
図12は、本発明の他の実施形態に基づく薬剤送達装置200の部分透視図である。多くの点で、装置200は、前述の装置100と実質的に同様に機能する。したがって、簡潔にするために冗長な説明は省略される。装置200は、互いにかみ合った複数の歯車204と、複数のパドル(paddle)またはブレード(blade)をその上に有するロッキングアーム(rocking arm)206とを含む遅延機構202を使用する。この実施形態では、遅延アクチュエータ208が、スプールアーム152と相互作用するカム面210をその第1の端部に有するピボットアーム(pivoting arm)208を含む。ピボットアーム208の反対側の第2の端部は当初、コグ歯車212とかみ合って(
図12〜14)、歯車204の回転を防ぐ。
【0026】
歯車204はさらに、歯車部分142とインタフェースしてコラムアセンブリ122を選択的に回転させるインタフェース歯車214を含む。さらに、
図13に示されているように、歯車204は、クロックスプリング(clock spring)216などのバイアス部材216によってバイアスされている。本発明の範囲を逸脱することなく他のバイアス部材を使用することもできることを当業者は理解するであろう。
【0027】
コグ歯車212は、ピボットアーム208とロッキングアーム206の両方と相互作用する複数のコグ218を有する。動作について説明すると、薬剤用量(medicament dose)の完了の前に、スプールアーム152がカム面210を越えて回転してピボットアーム208をピボット回転させコグ歯車212のコグ218との接触を解くと(
図15)、バイアス部材216の影響を受けてコグ歯車212(および互いにかみ合った残りの歯車)が回転し始める。コグ歯車が回転すると、連続するコグ218が、ロッキングアーム206のパドル220のうちの交番するパドルとスライドしながらかみ合う。
【0028】
この脱進機構(escapement mechanism)のこの相互作用は歯車204の回転を遅延させ、その結果、薬剤適用量の完了後に、コラムアセンブリ122が回転し、ついにはコラム部材132の足140がもはやコラムベース128の保持部分138と整列しなくなり、コラムばね180がコラムアセンブリ122を上方へ変位させる。このように、遅延機構202は、薬剤送達の完了に続いてサブシステム(針安全機構および/または用量終了指示機構)を自動的に起動させる。
【0029】
図16〜18は、本発明の他の実施形態に基づく薬剤送達装置230の部分透視図である。多くの点で、装置230は、前述の装置100と実質的に同様に機能する。したがって、簡潔にするために冗長な説明は省略される。コラムアセンブリ122を上方へバイアスするコラムばね180に加えて、コラムアセンブリ122は、コラムアセンブリ122を回転可能にバイアスするコラムねじりばね232を含む。
【0030】
この実施形態では、遅延起動機構(delay activator)234が、回転アーム部分236および係合部分238を含む。係合部分238は、スプールアーム152と選択的に係合する第1の端部と、コラムアセンブリ122の切欠き239と選択的に係合する反対側の第2の端部とを有する。
図16に示されているように、係合部分は、切欠き239と係合してコラムアセンブリ122の回転を選択的に防ぐ。
【0031】
装置230はさらに、歯車部分142とかみ合う歯車242をその上に有する制動カートリッジ(dampener cartridge)240を含む遅延機構を含む。一実施形態によれば、制動カートリッジ240は、歯車242が回転したときに開口の中に押し込まれるシリコーンなどの粘性流体を含む。本発明の範囲を逸脱することなく他の粘性流体または非ニュートン流体を使用することもできることを当業者は理解するであろう。
【0032】
薬剤適用量の完了の前に、スプールアーム152が係合部分238と接触し、回転アーム部分236が係合部分238を回転させて切欠き239との係合を解き、それによってコラムアセンブリ122を解放して、コラムアセンブリ122がコラムねじりばね232の影響を受けて回転するようにする。しかしながら、歯車部分142と制動カートリッジ240の歯車242との間のかみ合いが、薬剤送達の完了後までコラムアセンブリ122の回転の完了を遅延させる(
図17)。コラムアセンブリの回転が完了すると(
図18)、コラムばね180がコラムアセンブリを上方へ駆動する。
【0033】
一実施形態によれば、コラムアセンブリ122回転の完了時にコラムねじりばね232のエネルギーが費やされていない場合、ばね232は、コラムアセンブリ122の上方への移動に続いてその残りのエネルギーを自由に消費する。
【0034】
図19および20は、本発明の他の実施形態に基づく薬剤送達装置250の部分透視図である。多くの点で、装置250は、前述の装置100と実質的に同様に機能する。したがって、簡潔にするために冗長な説明は省略される。コラムアセンブリ122を上方へバイアスするコラムばね180に加えて、コラムアセンブリ122は、コラムアセンブリ122を回転可能にバイアスするコラムねじりばね(
図19および20には示されていないがコラムねじりばね232と同様のばねである)を含む。さらに、装置250内のコラムアセンブリ122は、その上に配置された歯車部分142を欠く。
【0035】
装置250は、ソレノイド254と、ソレノイド254に接続され、ベース108に回転可能に接続されたアーム256とを含む遅延機構252を有する。遅延機構252はさらに、プリント回路板(PCB)などのコントローラ258および可搬型電源260を含む。AAAサイズの一対の電池として示されているが、本発明の範囲を逸脱することなく、腕時計電池(watch battery)、ボタン電池などの他の可搬型電源を使用することもできることを当業者は理解するであろう。
【0036】
動作について説明すると、この遅延機構は、薬剤適用量の完了の前に起動する。起動した後、コントローラ258は遅延タイマを始動させる。遅延タイマが時間切れになったときに、コントローラ258は、コラムアセンブリ122の切欠き262からアーム256を外し、それによってコラムアセンブリ122を解放して、コラムアセンブリ122がコラムねじりばねの影響を受けて回転するように、ソレノイド254を制御する。一実施形態によれば、遅延タイマは、薬剤適用量の完了後(
図20)まで切欠き262からアームを解放せず、コラムアセンブリ122の回転は実質的に妨げられない。
【0037】
さらに、装置250の示された実施形態では、プランジャ118が所定の量だけ変位したときにそのことをコントローラ258に入力するために、スプール146がコントローラ258に接続されている。しかしながら、本発明の範囲を逸脱することなく、他の装置を使用してこの入力を生成することもできることを当業者は理解するであろう。例えば、栓112が光線を遮断したときにコントローラ258が遅延タイマを始動させるような態様で光学センサを使用することができる。他の例として、薬剤容器110内で圧力センサを使用することもできる。他の例として、プランジャ上で磁石またはRFIDチップを使用して、プランジャ118が予定位置を通過したときにそれを検出し、次いで遅延タイマを始動させるようにコントローラ258に信号を送ることもできる。遅延タイマの実際の遅延は、装置250に対して選択された特定のセンサまたは入力に基づいて変動しうることも当業者は理解するであろう。
【0038】
図21は、遅延機構の他の実施形態を示す。この実施形態では、プランジャが所定の変位を経た後にフォロア(follower)302が解放され、細長い経路304をたどるように強制される。すなわち、細長い経路304は、プランジャによってたどられる経路よりも長い。したがって、細長い経路304の終端へのフォロア302の到達がサブシステムを作動させ、プランジャ行程の完了に対する遅延を提供する。
【0039】
図22は、本発明の他の実施形態に基づく薬剤送達装置270の部分透視図である。この実施形態ではプランジャ272がばね式である。さらに、起動ボタン(図示せず)は、コラムアセンブリ274に接続されているのではなく、ばね式の鍵穴プレート276に接続されている。使用者によって起動ボタンが押し下げられると鍵穴プレート276は下方へ移動し、ついにはプランジャが鍵穴プレート276を通り抜けることが可能になる。
【0040】
一実施形態によれば、針保護と用量終了指示機構とが分かれている。例えば、使用者は、用量終了指示機構が見えるようになった後で針保護機構を起動させることができる。
【0041】
図23および24はコラムアセンブリ280の代替的実施形態を示す。
図23に示されているように、使用者が起動ボタン282を押し下げると、斜めに切られた支持体286によってラッチングフィンガ(latching finger)284が半径方向外側へ押し広げられ、それによって内ばね288が針290を駆動して使用者に挿入することを可能にする。続いて、
図24に示されているように、コラムアセンブリ280の回転が、保持フィンガ292を、傾斜した表面294との接触によって半径方向外側へ曲げる。この動作は、外ばね296(
図23参照)がコラムアセンブリ280を上方へ駆動することを可能にする。
【0042】
図25〜28は、本発明の他の実施形態に基づくコラムアセンブリ320を示す。コラムアセンブリ320は、半径方向外側へ突き出た複数のリブ(rib)を有するコラム支持構造体322と、コラム支持構造体322内に配置された針運動コラム324であり、突き出たリブ上に支持された外ばね326によって上方へバイアスされた針運動コラム324とを含む。コラムアセンブリ320はさらに、針運動コラム324内に配置され、内ばね330によって下方へバイアスされた針ハブ(needle hub)328を含む。針ハブ328の下方への変位を保持クリップ332が選択的に防ぐ。コラムアセンブリ320はさらに針コラム保持タブ334を含む(
図28参照)。
【0043】
装置を起動させるときには、保持クリップ332が取り外され、内ばね330が、針ハブ328(したがって針)を下方へ駆動して使用者の皮膚に挿入することを可能にする。針を後退させるためには、針コラム保持タブ334が取り外され、それによって外ばね326が針運動コラム324を上方へ駆動することを可能にし、外ばね326は針ハブ328も上方へ持ち上げる。代替として、内ばね330と外ばね326の機能または配置を逆にすることもできる。
【0044】
図29は、本発明の実施形態に基づく起動機構350を示す。起動機構350は、ロックアウト(lockout)部材352、プランジャ358に接続された回転可能にバイアスされた回転式アクチュエータ356、および隔壁360を含む。ロックアウト部材352はベースに回転可能に接続されている。一実施形態によれば、ロックアウト部材352はピン上でベースに対して回転する。他の実施形態によれば、ロックアウト部材352は、ベースから片持ち梁式に延び、屈曲または変形してベースに対して回転する。ロックアウト部材352は、その一端に配置され、ベースを通り抜けて突き出たロックアウトピン362を含む。ロックアウト部材352はさらに、その別の端部にロックアウトタブ364を含む。ロックアウトタブ364は、回転式アクチュエータ356の切欠き366に選択的にはまる。
【0045】
動作について説明すると、使用者の皮膚に装置が置かれたときに、皮膚は、ロックアウトタブ362を押し上げ、それによってロックアウト部材352を回転させる。この回転がロックアウトタブ364を移動させ、回転式アクチュエータ356の切欠き366とのかみ合いを解く。回転式アクチュエータ356の回転がプランジャを回転させ、ついにはプランジャの成形された部分が隔壁の対応する成形された貫通穴と整列し、このときプランジャは、加圧ばねの影響を受けて薬剤容器に対する変位を開始する。
【0046】
本発明の実施形態は、用量終了指示、針保護、弁閉鎖などのサブシステムおよび/または操作を作動させる遅延機構を含む。この遅延機構は薬剤送達の完了前に起動する。薬剤送達が完了した後、この遅延が、次のサブシステムまたは操作を作動させる。遅延機構は事実上、機械式、電気式、電子式および/または化学的機構とすることができる。
【0047】
複数の相互作用を有する薬剤送達システムまたは装置では、全薬剤用量がいつ送達されたかに関して公差窓を生じさせる寸法公差が存在する。薬剤送達後に遅延を与えることが有益な状況が存在する。用量終了指示を正確にしかつ装置の使用者に対して透明にするためには、それが自動的に作動すべきである。しかしながら、公差窓が存在するため、用量終了指示機構の遅延は、この遅延が、全用量が送達され、その後に遅延機構が用量終了指示機構を作動させることを保証するように、用量完了の前に作動する必要がある。
【0048】
さらに、薬剤送達が完了したことの高い確信を与える十分な時間を提供する遅延の後に針保護を開始させることができる。全用量送達の前に針保護が起動することを使用者は望んでいない。これは、皮膚の表面への薬剤の漏れにつながりうる。また、全用量が送達されたかどうかが患者には分からないこともあろう。また、用量をまだ送達している間に針保護装置が皮膚に押しつけられた場合には、それが、故意ではなしに短い針を皮膚から押し出すこともあろう。使用者は追加の行為を一切実行する必要がないため、受動的な針保護が理想的である。家庭環境では、患者が薬剤送達システムを皮膚から取り外し、針が依然として突き出ている場合、遅延された受動的な針保護は、その場合でも使用者入力なしで針を覆うであろう。針保護を遅延させることの他の利点は、薬剤送達が完了した後に針を装置内へ戻すことができることである。
【0049】
薬物送達システムが、遅延機構にリンクされた1つのサブシステムまたは結合されたサブシステムを有することができる状況が存在する。例えば、用量終了指示サブシステムを針保護サブシステムに結合することができる。遅延は、この用量終了指示および針保護サブシステムを作動させることができる。
【0050】
さらに、遅延機構によって作動しない用量終了指示などの(おそらくは電子的な)独立したサブシステムが存在することもある。このような実施形態では、遅延が、用量終了指示が起動した後のある時点で針保護を作動させる。針保護が起動したときには既に装置が体から取り外されていることがある。
【0051】
用量の完了前に起動する遅延機構を実装することによって、下流のサブシステム(例えば用量終了指示および/または弁閉鎖および/または針保護)が用量送達の完了後にだけ起動するように、遅延機構のタイミングを決めることができる。例えば、薬物送達によって起動する第1のトリガ(trigger)が時間遅延を起動させることができる。時間遅延の終了を第2のトリガとすることができ、この第2のトリガが下流のサブシステムを起動させることができる。
【0052】
示され説明された実施形態は、長時間にわたって薬剤を送達する薬剤送達装置に関するが、ペン注射器、オートインジェクタ(autoinjector)などに本発明の実施形態を組み込むこともできることを当業者は理解するであろう。また、ある種の機械式および電気機械式遅延機構だけが説明されているが、本発明を実施する際には、任意のタイプの機械式、電気機械式、電気式、電子式および/または化学式遅延機構を使用することができることが理解されるであろう。
【0053】
本発明の少数の実施形態だけが示され説明されたが、本発明は記載された実施形態だけに限定されない。その代わりに、本発明の原理および趣旨を逸脱することなくこれらの実施形態に変更を加えることができることを当業者は理解するであろう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって規定される。