(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記注射針の注射深さは、好ましくは、0.5〜5cm、好ましくは、0.5〜4cm、好ましくは、0.5〜3cm、好ましくは、0.5〜2cm、好ましくは、0.5〜1cm、好ましくは、0.5mm〜5.5mm、好ましくは、1.5〜4.0mmの範囲内にあり、より好ましくは、2.0mm〜3.5mmの範囲内にあり、最も好ましくは、3.4mmである、請求項1乃至9のうちのいずれか1項に記載の注射装置。
前記注射針と前記適用素子との間の角度は調節可能であり、該角度は、好ましくは、10度〜70度、好ましくは、10度〜60度、好ましくは、10度〜50度、好ましくは、10度〜40度、好ましくは、15度〜25度の範囲内にあり、より好ましくは、20度である、請求項1乃至11のうちのいずれか1項に記載の注射装置。
【背景技術】
【0002】
典型的な注射器よりも精密に被験者に物質を注射することが望ましいことがある。例えば、人間における、異なる層の存在に鑑みれば、物質を1つだけの別個の組織層内に極めて精密に供給することが必要であり得る。皮膚、粘膜、皮下組織、筋膜、筋肉、神経、又は関節のような、異なる層が区別可能である。例えば、人間の皮膚は、幾つかの異なる層を含む。表皮は、約30〜2000μmの厚さを備える外側の皮膚層である。真皮は、表皮より下に配置され、約500〜1500μmの厚さを備える。皮下組織は、真皮より下に配置され、約500〜30000μmの厚さを備える。特定の用途では、細胞のような物質を皮膚内の特定の場所に特別に供給することが望ましい。
【0003】
細胞のような物質が所望の生理学的な組織内に注射されることを可能にする手段を提供することが必要である。1つの具体的な実施例として、生物学的な毛研究の分野では、毛包(毛嚢)を再生するための潜在性を有する所謂「真皮鞘杯」細胞(「DSC」細胞)の正確な適用の必要がある。更なる注射用途に関して類似の要求が存在する。例えば、美容的な又は審美的な治療中の皮内の注射は、注射のための更なる別個の手段を必要とする。
【0004】
更なる用途は、筋肉組織、関節、筋膜、脂肪組織、軟骨、粘膜組織、又は腱内への注射に関する。そのような用途は、しばしば、スポーツ又は運動中に起こる怪我の後に必要である。簡単且つ確実な方法において外側から組織及び別個の層を治療する必要が常にある。
【0005】
真皮、表皮、又は皮下組織、並びに筋肉組織層又は腱内の物質(例えば、液体、生物製剤、又は細胞懸濁液)の適用は、医師による熟練した取扱いを必要とする。加えて、そのような物質の適用は、別個の要件を含み得る。例えば、細胞に関して、インシトゥのこれらの細胞の生理学的な組織層に似るそれぞれの組織層に可能な限り近接して、それらを供給する必要がある。第2に、細胞を極めて注意深い方法において適用する必要もある。具体的には、幹細胞又は新たに準備された一次細胞のような特定の細胞は、適用中に生じる圧力の観点から敏感である。そのような圧力は、例えば、細胞が狭いカニューレを介して提供されるときに起こり、それは細胞の強い圧縮を招く。そのような圧縮及び細胞に対して作用する結果として生じる剪断応力は有害である。この結果、細胞は酷く傷付けられ、おそらく、それらの生存能力さえも失い得る。
【0006】
別個の大きさ及び長さの針を有する標準的な注射器を用いて被験者の頭皮に細胞を適用することが可能である。しかしながら、針は注射場所が変更される度毎に移動させられるので、これは細胞を一定の方法において適用することが可能でないという不利点を有する。従って、注射針と頭皮表面との間の角度は一定でなく、注射毎に変更される可能性が高い。更に、注射の深さは異なる注射中に異なる可能性が高い。何故ならば、それが手によって案内されるだけの注射針を有する標準的な注射器を用いて行われるならば、注射がどれぐらい深く行われなければならないかの尺度がないからである。
【0007】
WO02/083216A1は、物質の皮内注射のための装置及び方法を記載している。前述の装置は、皮内供給を可能にする所定の深さの進入における注射を可能にし、針は皮膚の平面に対して垂直に注射される。
【0008】
WO94/23777A1は、同様に皮下注射を可能にし且つ真空の適用を見越す皮内注射装置を記載している。
【0009】
しかしながら、いずれの従来技術の装置も、圧力又は剪断応力の適用を伴わずに細胞のような液体物質を供給することを可能にしない。更に、いずれの従来技術の装置も、適用が最適な生理学的な部位において起こることを保証する確実な方法において細胞のような液体物質を適用することを可能にしない。
【0010】
例えば、被験者の頭皮への、細胞の適用は、上記で概略を述べたような異なる要件を要求する。更に、細胞が単一層又は単一領域内に分散的な方法において適用されることが必要である。従って、細胞が規則的な形式において注射されるのではなく、好ましくはより分散的な方法において注射されるのが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の第1の主題は、皮膚組織層内への物質の1つの実施例としての細胞の精密で標的付けられた供給を可能にする注射装置の提供に関する。
【0033】
本発明の好適な実施態様では、物質を被験者の体内に導入するための注射装置の提供が予見され、注射装置は、適用素子と、少なくとも1つの注射針と、注射針ハウジングと、注射動作のための駆動システムと、後退システム(引込システム)とを含み、液体は注射針の後退動作中に注射される。
【0034】
本発明の注射装置を用いるならば、物質、例えば、液体溶液内の細胞は、注射針の後退動作中にのみ適用される。後退動作は遅く一定の形態において行われ、それは物質、具体的には、細胞が如何なる圧力又は剪断応力も伴わずに適用されるという利点をもたらす。特に、後退機構及び細胞の注意深い供給は、細胞が適用後に生存し且つ健康な状態にあるという効果を有すること、が記されなければならない。これは本発明の注射装置が細胞供給の状態を向上させ、よって、被験者の治療における成功の期待を向上させるという利点を有する。細胞のこの有益な適用は、駆動機構と後退機構とを含む注射装置の提供で行われる。本発明に従った駆動機構や後退機構も、液体又は細胞の適度な一定の適用を可能にする。その上、注射装置を用いた適用は物質(例えば、細胞)の優しい供給をもたらし、それは所謂「湿式注射」において起こるので、それは注射部位からの望ましくない還流を抑制する。
【0035】
その上、本発明に従った注射装置は、血管の怪我を回避する方法において注射を行い得るという利点を有する。注射装置内での注射針の別個の構造の故に、血管を刺し得ることが抑制される。血管が刺されたという予期しない場合においてさえも、注射針は後退動作中に後退させられる。よって、刺された血管は注射針の後退動作中に解放される。従って、本発明の注射装置を用いた血管内の注射は抑制される。従って、本発明の注射装置は液体物質の安全な供給をもたらす。それにも拘わらず、血管内の直接注射が実際に意図される場合にも、本発明に従った注射装置をそのような適用形態において用い得る。
【0036】
本発明の注射装置を用いるならば、別個の部位が注射で治療されることが予見されるだけではない。その上、定められた分配領域が本発明の注射装置で治療されることも予見される。これは後退動作中の注射針の動作で達成される。後退動作は注射の端位置から注射部位の表面まで戻る所定の距離に亘って行われる。従って、物質は単一の注射地点でボーラスとして堆積されない。むしろ、堆積は単一の注射地点のみで起こるのではなく、針後退の完全な領域において起こる。この完全な注射領域は、後退動作中の注射経路の長さによって定められる。注射経路及びその深さの両方が注射装置によって定められる。
【0037】
本発明の更なる好適な実施態様において、注射装置の駆動システム及び後退システムは「マイクロ直線プッシャ」(“micro liner pusher”)である。マイクロ直線プッシャを手動で或いは電子システムを用いて活性化させ得る。
【0038】
本発明の脈絡において、「マイクロ直線プッシャ」(“micro linear pusher”)という用語は、直線において工具ホルダとしてのスライドの位置決め及び案内のための動作軸として機能する素子として理解されなければならない。本発明に従ったマイクロ直線プッシャは、注射針の前進及び逆進動作を働かせる。従って、マイクロ直線プッシャは注射針を前進方向及び逆進方向において駆動することが予見される。従って、本発明の好適な実施態様において、マイクロ直線プッシャは駆動システムとして並びに後退システムとして機能する。
【0039】
本発明の好適な実施態様によれば、マイクロ直線プッシャは手動で活性化させられることに加えて、電子的に活性化させられることが予見される。
【0040】
本発明の好適な実施態様において、注射装置は、電気によって動力供給されるのではなく完全に手動で操作される注射である。
【0041】
従って、本発明の更なる好適な実施態様では、本発明の駆動システムが、第1のガイドレールと、第2のガイドレールと、第1のスライドとを含むことが予見される。本発明のこの別個の好適な実施態様では、この駆動システムが、電子的な活性化を伴わずに、機械的にのみ機能することが予見される。
【0042】
更に好ましくは、注射装置は液圧ポンプのような液圧手段によって駆動される。更なる特に好適な実施態様では、液圧手段は注射針ハウジング内に含まれず、注射装置の外側に設けられる。従って、液圧手段が液圧ポンプである場合には、これが床の上に配置され、これを足で操作し得ることが予見される。これは注射装置の大きさ及び重量が減少させられるという利点をもたらす。
【0043】
本発明の手動で操作される注射装置の好適な実施態様において、駆動システム及び後退システムは、ラチェット機構を含む。そのようなラチェット機構は、別個の構成部品で構成されるのが好ましい。従って、ラチェット機構は、第1のガイドレールと、第2のガイドレールとで構成されることが予見され、第1及び第2のガイドレールは、それらの表面に溝を有し、互いに平行に位置付けられる。更に、ラチェット機構は、第1のスライドと、第2のスライドとを含み、第1及び第2のスライドは、第1及び第2のガイドレールの上で案内される。ラチェット機構は、第1及び第2の板バネで更に構成され、それによって、板バネはガイドレールの溝と係合し、後退動作をもたらす。本発明によれば、物質の注射が注射針のこの後退動作中に起こることが予見される。
【0044】
本発明の更なる好適な実施態様では、物質の注射が、モータと、親ネジと、ナットとを含む、注射システムで行われることが予見される。本発明のこの好適な実施態様によれば、注射は、注射装置に含められる注射器のピストンの前進動作を介して行われることが予見される。
【0045】
本発明の更なる好適な実施態様において、駆動システム及び/又は後退システムは、親ネジとナットとを備えるモータを含む。従って、後退動作中の注射針の前進動作並びに物質の注射は、2つの別個のモータを用いて遂行されることが予見される。
【0046】
本発明の更なる好適な実施態様において、物質の注射はマイクロ直線プッシャを用いて遂行される。この好適な実施態様によれば、駆動システム及び注射針の後退動作中の液体の注射は、2つの別個のマイクロ直線プッシャを用いて遂行されることが予見される。
【0047】
従って、本発明の好適な実施態様では、駆動システム及び後退システム並びに注射システムとして2つのマイクロ直線プッシャの組み合わせ又は親ネジとナットとを備える2つのモータの組み合わせが予見される。更に好ましいのは、駆動システム及び後退システムのための並びに後退動作中の注射システムのための作動としての、親ネジとナットとを備える1つのモータとの組み合わせにおける1つのマイクロ直線プッシャの組み合わせである。
【0048】
好ましくは、注射システムがモータを有する場合において、モータが親ネジの回転をもたらすことが予見される。ナットは回転係止された状態にあり、回転動作を直線動作に変換する。それによって、ナットは押しを働かせ、それは注射針を通じた液体の注射をもたらす。
【0049】
本発明によれば、駆動システム及び/又は後退システムがマイクロ直線プッシャ及び/又は電子的に駆動されるモータを含む場合には、マイクロ直線プッシャ及びモータが、ソフトウェア支援プログラムによって液体の注射が注射針の後退動作中にのみ行われるような方法において構成されることが予見される。
【0050】
更に好適な実施態様において、本発明の注射装置は、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれよりも多くの注射針を含む。
【0051】
好ましくは、全ての注射針が同時に注射されることが予見される。
【0052】
本発明の更なる好適な実施態様では、注射装置の全てが同時に注射されるわけではないことが予見される。
【0053】
更に好ましくは、異なる注射針を別個の角度を備える別個の深さにおいて独立して注射し得る。
【0054】
本発明の更なる好適な実施態様において、本発明の適用素子は冷却プレートである。好適な実施態様において、冷却プレートはペルティエ素子である。
【0055】
ペルティエ素子は、熱電気冷却器(TEC)の提供を可能にする。従って、そのような熱電気冷却器は、冷却プレートとして機能する。これは、特に注射が行われる部位で、被験者の組織が冷却されるという利点をもたらす。ペルティエ素子は、冷却が、注射が行われる表面のみならず、下に横たわる組織においても適用されることを有利に可能にする。それによって、注射中の患者の痛み感度の減少が達成される。本発明の更なる好適な実施態様では、冷却が水冷却で達成される。本発明の更なる好適な実施態様では、冷却が本発明の注射装置の上に取り付けられる容器を用いて行われることが予見され、この容器は窒素又はアルコールを含む。更に好適には、凍結スプレーのような表面麻酔薬が容器内に含められ、本発明の注射装置を用いた注射が行われる前に表面に適用されることが予見される。
【0056】
本発明の更なる好適な実施態様において、適用素子は円形又は馬蹄形の形態を有する。当業者のために更なる形状を適用可能である。好ましくは、適用素子は注射針のための開口を提供するよう構成されることが予見される。本発明の更なる好適な実施態様において、適用素子は注射中に幾つかの注射針の通過を可能にする幾つかの開口を含む。
【0057】
更に好ましくは、適用素子は注射中に注射針を取り囲んでもよい。好ましくは、適用素子はペルティエ素子であり、ペルティエ素子は、筋肉組織又は腱に隣接する組織のような、より深い注射領域における冷却をもたらす。
【0058】
本発明の更に好適な実施態様において、適用素子は、開口を備えるヘッド区画であることが予見される。
【0059】
手動で操作される注射装置の適用素子は、上方部分と下方部分とを有するヘッド区画を有し、ヘッド区画の上方部分は、拡大鏡を含むのが好ましい。拡大鏡の使用は、注射の部位を便利な方法において視覚化し得るという利点を有する。その場合、そのような改良された視覚化は、同じ部位における反復的な注射を可能にする。
【0060】
更なる好適な実施態様において、ヘッド区画の上方部分は、自由開口のみを含む。
【0061】
更なる好適な実施態様では、ヘッド区画が凹面の形状であることが予見される。凹面の形状の提供は、注射装置のヘッド区画を被験者の皮膚表面、例えば、被験者の頭皮に合うよう構成する可能性を提供する。
【0062】
好適な実施態様において、本発明の注射装置は、0.5mm〜5cm、0.5mm〜4cm、0.5mm〜3cm、0.5mm〜2cm、0.5mm〜1cm、0.5mm〜5.5mmの範囲内の注射深さへの、好ましくは、1.5〜4.0mmの深さにおける、より好ましくは、2.0mm〜3.5mmの深さにおける、最も好ましくは、3.4mmの深さにおける、所望の組織層内での注射を達成する。注射深さは別個の適用に依存する。例えば、DSC細胞注射の場合、注射深さは、好ましくは、3.4mmである。繊維芽細胞又は脂肪細胞が注射される場合、注射深さは、好ましくは、約5.0mmである。好ましくは、脂肪細胞を所謂「フィラー」(“filler”)として用い、皮下注射に対応する深さにおいて注射し得る。更に、脂肪細胞を約3〜4mmの深さにおいて注射し得る。好ましくは、約2cm〜3cmの深さ、最大で5cmの深さにおいて、筋肉組織内への又は腱内の注射を行い得る。注射の深さは注射針の長さによって定められ、注射の角度によって更に定められる。
【0063】
別個の種類の物質に依存して並びに所望の適用形態及び達成されるべき効果に依存して夫々の注射の深さを適用することが当業者の経験に含められる。
【0064】
注射容量は後退動作中に一定の方法において適用されるのが好ましい。
【0065】
本発明の更なる好適な実施態様では、注射針の後退動作中に異なる注射容量が異なる注射深さで注射可能であることが予見される。従って、好ましくは、第1の別個の容量が、例えば、5.5mmの深さの第1の部位において注射され、次に、注射針の後退動作中に、第2の容量が、例えば、3.4mmの深さにおいて注射される。従って、好適な実施態様では、注射中に治療される領域における容量は、異なる注射深さに細分され、後退動作中に、別個の容量が各々の注射深さにおいて注射される。
【0066】
本発明の好適な実施態様では、注射装置が異なる注射形態の適用を可能にすることが予見される。好適な注射形態は、ボーラス注射、オタマジャクシ状の形態における注射、後退動作中に同じ容量の適用で注射経路の長さに亘って連続的に分散される注射、又は異なる注射形態の組み合わせである。
【0067】
注射容量は、別個の注射深さの各々の別個の注射部位で異なり得る。
【0068】
注射長の範囲は、注射針の後退動作中の注射経路の長さを定める。従って、注射全長は注射針の長さによって定められることが予見される。好ましくは、注射針の注射全長は、2.0mm〜20mm、好ましくは、5.0mm〜15mmの範囲内にあり、より好ましくは、10mmである。
【0069】
本発明の好適な実施態様において、注射針と適用素子との間の角度は、調節可能である。
【0070】
好ましくは、注射針と適用素子との間の角度は、10度〜90度の、10度〜80度、10度〜70度、10度〜60度、10度〜50度、10度〜40度、好ましくは、15度〜25度の範囲内にあり、より好ましくは、20度である。
【0071】
本発明の好適な実施態様では、注射針と適用素子との間の角度及び/又は注射深さは、液体の皮膚適用を可能にすることが予見される。
【0072】
従って、本発明の注射装置は、各注射部位のために一定の角度及び所定の深さで、好ましくは一定の方法において、液体媒体内の細胞のような、液体のような物質の適用を行うことを可能にする。被験者の頭皮における、物質の、具体的には、DSC細胞のような細胞の適用は、特定の組織層としての皮層内で行われなければならない。筋肉組織内の又は腱内の注射のような、更なる適用形態は、より深い層内の注射を必要とする。これは、各々の単一の注射中に一定なままである所定の角度及び所定の深さでの注射を可能にする本発明の注射装置を用いて達成される。
【0073】
本発明の特に好適な実施態様において、注射装置は、被験者への脂肪細胞の適用のために、1mm未満の注射深さとの組み合わせにおいて、20度の角度を提供する。
【0074】
本発明の更なる特に好適な実施態様において、注射装置は、腱細胞内への物質の適用のために、少なくとも1cmの注射深さとの組み合わせにおいて、一定な90度の角度を提供する。所要の注射深さの決定は、超音波によって監視されるのが好ましい。
【0075】
別個の注射角が別個の注射深さと組み合わせられることが本発明の注射装置で予見される。従って、別個の注射深さとの別個の注射角の所望の組み合わせを本発明の注射装置で調節し得ることが予見される。注射深さとの注射角の好適な組み合わせは、1mm〜1cmと20〜30度、1mm〜1cmと30〜40度、1mm〜1cmと40〜50度、1mm〜1cmと50〜60度、1mm〜1cmと60〜70度、1mm〜1cmと80〜90度である。
【0076】
本発明の好適な実施態様において、注射針の直径は、18〜32G、20〜30Gの範囲にあり、より好ましくは、24、25、又は26Gである。Gは、約0.46mmの直径を有する。
【0077】
更なる好適な実施態様では、1mlの容積を備える注射器が本発明の注射装置内で用いられる。好ましくは、そのような1mlの注射器は、6回の166μlの注射を可能にする。2、5、又は10mlを備える注射器も好ましくあり得る。本発明の好適な実施態様では、注射装置の具体的な使用に依存して、より大きい又はより小さい容積を備える更なる注射器も用い得る。
【0078】
好ましくは、注射針の開口が上向きの方向において調節されることが予見される。本発明によれば、上向きの方向は、注射針の向きが、注射が起こる表面又は領域に向かって方向付けられることを意味する。
【0079】
これは細胞を別個の組織層内に最適な向きにおいて適用し得るという利点をもたらす。注射される細胞が、例えば、DSC細胞である場合には、細胞は頭皮の方向においてより容易に成長し得るので、皮層内の上向き方向における注射が有利である。よって、毛が伸び出ることは、本発明の注射装置を用いた被験者の頭皮内へのDSC細胞の注射で促進される。
【0080】
好ましくは、注射装置は、照明のための手段で更に構成される。そのような照明は、LED(発光ダイオード)又は他の照明器具であり得るが、それらに限定されない。照明器具の提供は、より良好な視覚化及び別個の注射部位のより容易な決定を可能にする。本発明の更に好適な実施態様において、照明のための手段は、注射部位が照明されるように、注射針ハウジング内に含められる。
【0081】
本発明の更に好適な実施態様では、光学装置又はレーザ装置のような更なる器具が注射針ハウジング内に含められることが予見される。好ましくは、光学装置は、ビデオカメラ又は写真撮影装置のような、カメラである。
【0082】
好適な実施態様において、注射装置は、注射装置を被験者に締結するための締結手段を備える適用素子を含む。本発明の好適な実施態様において、締結手段は、真空の適用を含む。
【0083】
本発明の更に好適な実施態様において、締結手段は、接着剤又は固定フレームを含む。
【0084】
更に好適な実施態様では、本発明の注射装置がレーザ装置を含むことが予見される。レーザ装置は、注射が行われるべき表面の別個の部位の上の注射のために印付き部位の投射を可能にする。更に好ましくは、レーザ装置が、注射が行われるべき幾つかの印付き部位の投射をもたらすことが予見される。レーザ装置からの印付き部位は、異なる投射部位の間の距離を一定に維持し得るという利点をもたらす。本発明の更に好適な実施態様では、1つ、2つ、3つ、又はそれよりも多くのレーザ源の使用が予見される。レーザの提供は、このレーザが、注射針と比較すると、代替的な貫通機能を有し得るという利点を更に有する。更に、レーザは注射中の出血が抑制され或いは少なくとも低減されるという利点をもたらす。その上、本発明の好適な実施態様では、レーザが注射針との組み合わせにおいて用いられることが予見される。よって、好ましくは、注射領域がレーザで準備されることが予見される。この準備の故に、注射針を用いた注射を遂行し得る注射通路を形成し得る。
【0085】
更なる好適な実施態様において、適用素子、注射針のためのホルダ、及び注射針は、交換可能である。従って、衛生基準を満足するために、各被験者のために個々に用い得るに過ぎない品目を別個に変更し得る。
【0086】
本発明の注射装置の別個の構造は、注射針が注射装置の使用者を誤って傷付け得るのを阻止する。何故ならば、針はその開始位置の間に注射針ハウジング内に後退させられるからである。よって、注射針は常時晒されるわけではない。
【0087】
本発明は、特に、液体用のような物質を被験者の組織内に適用するための本発明の注射装置の使用に関する。
【0088】
本発明の好適な実施態様において、物質は、細胞懸濁液、ゲル状材料、治療的物質、美容的物質、及び診断的物質で構成される群から選択される。
【0089】
美容的物質は、フィラー(filler)のような脂肪細胞の適用、ヒアルロン酸の適用、又は皺治療におけるボツリヌス毒素(Botox、Btx)の適用を含み得るが、これらに限定されない。
【0090】
治療的物質は、抗生物質、麻酔薬、鎮痛薬、ワクチン、抗体を含み得るが、これらに限定されない。
【0091】
本発明の好適な実施態様では、細胞懸濁液が発育因子と混合されることが予見される。本発明の更なる好適な実施態様では、細胞懸濁液がゲル状構造に含められることが予見される。そのようなゲル状構造は、別個の組織の細胞外環境を真似る細胞外基質タンパク質の混合を表すのが好ましい。更に好ましいものは、ヒアルロン酸のようなゲル状構造である。
【0092】
従って、懸濁液内の又は液体媒体内の細胞を被験者に適用するために本発明の注射装置が用いられるのが好ましい。
【0093】
本発明の好適な実施態様では、被験者の別個の組織内への物質の適用のために注射装置が用いられることが予見される。特に、好ましくは、抜け毛、円形脱毛症のような脱毛症、又は毛の欠如若しくは少な過ぎる毛に関連する他の症状の治療における、好ましくは細胞懸濁液としての、皮膚内への細胞の適用のために注射装置が用いられることが予見される。更に、本発明の注射装置は、薬剤、サイトカイン、又は発育因子のような、液体を被験者に適用するために用いられるのが好ましい。被験者への液体のこの適用は、抜け毛、円形脱毛症のような脱毛症、又は毛の欠如若しくは少な過ぎる毛に関連する他の症状の治療に関連して行われるのが好ましい。本発明の更なる好適な実施態様において、注射装置は被験者の筋肉への物質の適用のために用いられる。更に好ましくは、注射装置は被験者の腱への物質の適用のために用いられる。
【0094】
一般的には、特段の断りのない限り、本発明及び/又はその構成部品を作製するための材料を、金属、金属合金、セラミクス、プラスチック等のような適切な材料から選択し得る。
【0095】
本発明の別個の好適な実施態様では、被験者の体内に物質を導入するための注射装置の提供が予見され、注射装置は、被験者の体への注射装置の適用のためのヘッド区画の形態の適用素子を含み、ヘッド区画は開口を有する。注射針ハウジングがヘッド区画に結合される。第1のスライドが、注射針のためのホルダを含み、注射針は、注射中にヘッド区画から開口を通じて注射針ハウジングから出て来る中空の注射針と、注射針ハウジング内に適合する注射器のためのホルダとを含む。第2のスライドが、注射器のピストンを保持するための手段と、第2のスライドを解放するための手段を含む解放素子とを含む。第1のガイドレールが、注射針ハウジングに締結される表面に溝を有し、第2のガイドレールが、第1のスライドに締結される表面に溝を有する。第1のスライド及び第2のスライドは、第1のガイドレール及び第2のガイドレールの上で案内される。第1のスライドは、注射器のピストンを越えて第2のスライドと接続可能であり、第2のスライドは、第1のガイドレールの溝と係合する第1の板バネを含み、それによって、第1のスライドと共に、注射動作のための駆動機構を提供し、第2のスライドは、第2のガイドレールの溝と係合する第2の板バネを含み、それによって、第1のスライド及び第1のスライドに含められるバネと共に、注射針がその開始位置に戻るまで注射針を後退させるための後退機構(収縮機構)を提供する。
【0096】
本発明のこの別個の好適な実施態様によれば、第1の板バネが第1のガイドレールの溝と係合し、第2の板バネが第2のガイドレールの溝と係合することが予見される。第1及び第2の板バネとの組み合わせにおける溝の構造の故に、ラチェット機構が設けられる。第1の及び第2のガイドレールの表面にある溝は、第1及び第2の板バネとの組み合わせにおいてラチェットとして機能する。これは駆動機構及び後退機構によって行われる動作を可能にする。
【0097】
特に、駆動機構が注射動作を可能にすることが予見される。この注射動作は、注射方向における第1のガイドレールと一緒の第1のスライドの動作を用いて、本発明の別個の実施態様に従って行われる。それによって、第1の板バネは、第1のガイドレールの溝のうちの1つの溝の位置にクリック止めされる。注射動作の間に、第1のスライドに含められるバネは圧縮される。後退機構は、注射動作の反対の動作、即ち、後退動作を示す。後退動作中、第2の板バネは、第2のガイドレールの溝のうちの1つの溝の位置にクリック止めされる。後退動作は、第1のスライドに含められるバネによって更に支援される。注射動作中に圧縮されるバネはその張力を取り除く。よって、圧縮されたバネは、圧縮の解放中に、第1のスライドが注射針ハウジングから離れる方向に押されることを可能にする。それによって、第1のスライドは、注射方向とは反対の方向において移動させられ、よって、注射針は解放され、その開始位置に戻る。更に、後退動作中、注射器のピストンは圧縮され、それは後退動作中だけの液体溶液の適用を可能にする。バネによって支援される後退動作は、遅い一定の後退動作を可能にし、それは適用中に液体溶液の注意深い供給をもたらす。後退動作中、第1のスライドと第2のスライドとの間の距離は減少させられる。何故ならば、第2のガイドレールの溝及び第2の板バネのラチェット機構に亘って介在する後退動作は、第1のガイドレールの溝及び第1の板バネのラチェット機構の注射動作と比べて反対の方向を示すからである。
【0098】
本発明の脈絡において、バネは変形後に夫々の復元力を示す如何なる構成部品であってもよい。
【0099】
好ましくは、本発明の別個の実施態様によれば、駆動機構が注射器のホルダによって定められる距離に亘る第1のスライドの動作をもたらすことが予見される。好ましくは、その動作は注射器のホルダの別個の形態によって決定される。本発明の好適な実施態様において、ホルダは突出するチューブ形成素子に入る注射器のための切欠きで構成される。この突出するチューブ形成素子は注射針ハウジング内に嵌入する。この好適な実施態様によれば、その動作は突出するチューブ形成素子の大きさによって定められる。これは第1のスライドの動作によって定められる針の注射深さをもたらす。
【0100】
更に好ましくは、本発明の別個の実施態様によれば、注射装置が更なる解放素子を含むことが予見される。本発明の好適な実施態様によれば、解放素子は第2のスライドの一部である。好ましくは、解放素子は第2のスライドを第1及び第2のガイドレール内で自由に移動させ得るのを可能にする別個の幾何学的形態において構成される。その解放は板バネが第1及び第2のガイドレールから分離するのを可能にする解放素子の構造の故に行われる。ひいては、これは第2のスライドを第1及び第2のガイドレールに沿って自由に移動させ得るのを可能にする。
【0101】
更なる実施態様を提供するために上述の様々の実施態様を組み合わせ得る。この明細書において言及し且つ/或いは出願データシート中に列挙する米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許文献の全ての全文をここに参照として援用する。一層更なる実施態様を提供するために、様々の特許、出願、及び文献の着想を利用するのに必要であるならば、実施態様の特徴を変更し得る。
【0103】
本発明の実施態様のこの記述は本質的に例示的であり、本発明又はその用途又はその使用を如何様にも限定することを意図しない。
【0105】
本発明に従った注射装置の1つの明確な好適実施態様を
図1、2、4、及び5に側面図において示し、
図3に縦断面図において示され、
図6及び7に斜視平面図において示す。
図1、3乃至5、及び7は、引込状態における注射装置を示している。
図2及び6は、注射中の状態における注射装置を示している。
図8は、更なる縦断面図を示しており、
図8B及びCに示される断面A−A及びB−Bのための断面平面をもたらしている。
【0106】
図1乃至8から分かるように、注射装置は、被験者の体、例えば、被験者の頭皮への適用のためのヘッド区画の形態の適用素子(10)としてのヘッド区画を含む。ヘッド区画(10)は、上方部分(11)、下方部分(12)とを含み、下方部分(12)は、開口(13)を有し、被験者の体に向けられている。注射針ハウジング(20)がヘッド区画(10)に結合され、上方通路(21)と、下方通路(22)と、更なる下方通路とを含み、それは、ピン、具体的には、シリンダピンのような、安定化素子を含む。注射装置は、注射針(31)のためのホルダを備える第1のスライド(30)を含み、注射針(31)は、開口(13)を備える中空の注射針(32)を含み、それによって、注射針(31)は、ヘッド区画(10)から開口(13)を通じて注射針ハウジング(20)から外に出る。第1のスライド(30)は、それが注射器のための切欠きを含むように構成され、切欠きは突出するチューブ形成素子に入っている。更に、第1のスライド(30)は、前方通路を有し、前方通路は、ピン、具体的には、シリンダピンのような、安定化素子を含み得る。第1のスライド(30)は、更に、後方通路(34)と、連続的な前方から後方への通路(35)とを含む。突出するチューブ形成素子(33)は、注射針ハウジング(20)の上方通路(21)内に嵌入する。注射装置は、突出する形態を備える、注射器のピストンを保持するための手段(41)を含む、第2のスライド(40)を含む。第2のスライド(40)は、2つの連続的な前方から後方への通路(42,43)と、後方通路と、解放素子(44)とを含み、後方通路は、引込機構のための手段を含む。第1のスライド(30)は、注射器(50)のピストンの上で第2のスライド(40)に接続される。注射装置は、第1のスライド(30)の後方通路(34)内に固定され且つ第2のスライド(40)の前方から後方への通路の一方(43)を通じて通る表面にある溝を有する第1のガイドレール(60)と、注射針ハウジング(20)内に固定され且つ第1のスライド(30)の連続的な前方から後方への通路(35)を通じて並びに第2のスライド(40)の前方から後方への通路(42)を通じて通る表面にある溝を有する第2のガイドレール(70)とを更に含み、第2のスライド(40)は、2つの板バネ(46,47)を含み、2つの板バネ(46,47)は、第1のガイドレール(60)の溝及び第2のガイドレール(70)の溝と係合し、よって、ラチェット機構として作用する。ラチェット機構は、第1の板バネ(46)で構成され、第1の板バネ(46)は、第1のガイドレール(60)の溝と係合し、第1のスライド(30)と共に注射動作のための駆動機構として機能する。第2のスライド(40)は、第2の板バネ(47)及び第2のガイドレール(70)で構成されるラチェット機構を更に含み、第2の板バネ(47)は、第2のガイドレール(70)の溝と係合する。このラチェット機構は、第1のスライド(30)及び第1のスライド(30)内に含められるバネ(80)と共に、注射針(32)がその開始位置に戻るまで、注射針(32)の収縮動作のための収縮機構を提供する。開始位置において、注射針(32)は、ヘッド区画の開口(13)を部分的に覆うに過ぎない。従って、注射装置が上方部分内に開口を有し或いはこの上方部分内に拡大鏡を追加的に含む場合には、開始位置において注射針の頂部を見ることができる。これは特定の部位への注射針の適用の制御を可能にする。解放素子(44)は、第2のスライド(40)の自由動作を可能にする。この動作は別個の幾何学的形態の解放素子(44)で達成される。従って、解放素子(44)が突出する素子(48)を有することが予見される。第2のスライド(40)の解放は注射動作の反対方向における解放素子(44)の動作を用いて行われる。それによって、カバー(45)の上に支持される圧力バネ(49)が突出する素子(48)によって圧縮される。この圧縮は解放素子(44)がその開始位置まで再び押されるのを可能にする。カバー(45)はクランプボルト(51)の端でネジ止めされる。このクランプボルト(51)は圧力バネ(49)及び解放素子(44)のための案内として働き、加えて、カバー(45)はこのクランプボルト(51)の端でネジ止めされる。解放動作中、突出する素子(48)は第1及び第2の板バネ(46,47)をガイドレール(60,70)の溝から持ち上げ、それは第2のスライド(40)の自由動作を可能にする。
【0108】
本発明の更なる別個の好適な実施態様を
図9乃至12に示す。これらの
図9乃至12から分かるように、注射装置は、適用素子(10)としてのヘッド区画を含み、適用素子(10)、例えば、被験者の頭皮に適用し得る。注射針ハウジング(20)は注射針(32)を含み、更に、ピストンを備える注射器を含む。注射動作中、マイクロ直線プッシャ(2)が注射針(32)の前進及び逆進動作をもたらす。液体の注射はモータ(3)を用いて行われ、モータ(3)は注射器のピストンが前方に押され、それによって、注射針(32)を介して液体を注射することを可能にする。モータ(3)は親ネジの回転をもたらす。ナットは回転係止されたままであり、回転動作を直線動作に変換する。それによって、ナットは押しを働かせ、それは注射器のピストンの前進動作を通じて液体の注射をもたらす。モータは後退動作中にのみ液体の注射をもたらすように調節される。
図11及び12は、照明のための手段(4)を含む本発明の注射装置の更なる好適な実施態様を例示している。
【0109】
上述の詳細な記述の観点から、これらの及び他の変更を実施態様に行い得る。一般的には、以下の請求項において、使用される用語は請求項を明細書及び請求項中に開示する特定の実施態様に限定するよう解釈されてはならず、そのような請求項が権利として有する均等物の全範囲と共に全ての可能な実施態様を含むよう解釈されるべきである。従って、請求項は本開示によって限定されない。