【文献】
Journal of Molecular and Cellular Cardiology, 1995,Volume 27, Issue 9, Pages 1895-1903
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
虚血-再灌流障害が、脳血管性虚血-再灌流障害、腎性虚血-再灌流障害、肝性虚血-再灌流障害、虚血-再灌流心筋症、皮膚虚血-再灌流障害、腸(bowel)虚血-再灌流障害、腸(intestinal)虚血-再灌流障害、胃虚血-再灌流障害、肺性虚血-再灌流障害、膵臓虚血-再灌流障害、骨格筋虚血-再灌流障害、腹筋虚血-再灌流障害、四肢虚血-再灌流障害、虚血-再灌流大腸炎、腸間膜虚血-再灌流障害および無症候性虚血-再灌流障害からなる群より選択される、請求項1〜7いずれか記載の医薬組成物。
虚血性障害が、心臓血管虚血、脳血管性虚血、腎性虚血、肝性虚血、虚血-再灌流心筋症、皮膚虚血、腸(bowel)虚血、腸(intestinal)虚血、胃虚血、肺性虚血、膵臓虚血、骨格筋虚血、腹筋虚血、四肢虚血、虚血-再灌流大腸炎、腸間膜虚血および無症候性虚血からなる群より選択される虚血の結果である、請求項1〜7いずれか記載の医薬組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、新規でより有効な治療法、ならびに心臓血管疾患および他の状態により生じる虚血および虚血-再灌流傷害の治療のための治療剤について、重大な必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本明細書に記載される発明は、虚血、虚血性傷害および虚血-再灌流傷害、例えば心筋性虚血を治療するための必要性を扱う。特に、本発明は、開示される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグを含む組成物、ならびに虚血、虚血性傷害、虚血-再灌流傷害および関連のある状態を治療するための開示される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグの使用に関する。
【0009】
本発明の化合物は、構造式(I):
【化1】
(式中:
Rは、(C
1-C
18)アルキル、(C
6-C
18)アリールまたは(C
6-C
18)アリール(C
1-C
18)アルキルであり、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される少なくとも1つの酸性置換基で置換され、(C
6-C
18)アリールまたは(C
6-C
18)アリール(C
1-C
18)アルキルのアリールは、任意にさらに、ヒドロキシ、ハロ、(C
1-C
3)アルキル、ハロ(C
1-C
3)アルキル、シアノ、ニトロ、(C
1-C
3)アルコキシおよびチオ(C
1C
3)アルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換され;
R'は、水素または(C
1-C
18)アルキルであり、(C
1-C
18)アルキルは、任意に、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される1つ以上の酸性置換基で置換され;
Xは、非存在であるかアミノ酸であり、アミノ酸は、
【化2】
とアミド結合を形成するように配向される)
で表されるか、またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグであり、実質的に(S)-リポイル立体異性体(1つまたは複数)またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグとは区別され、ただし構造式(I)の化合物は、N-(R)-リポイル-グルタミルアラニン、N-(R)-リポイル-アミノエチルホスホン酸または(R)-5-(5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタンアミド)-2-ヒドロキシ安息香酸ではないものとする。
【0010】
本発明はまた、虚血性傷害または虚血-再灌流傷害の治療を必要とする被験体に、構造式(Ia):
【化3】
(式中:
Rは、(C
1-C
18)アルキル、(C
6-C
18)アリールまたは(C
6-C
18)アリール(C
1-C
18)アルキルであり、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される少なくとも1つの酸性置換基で置換され、(C
6-C
18)アリールまたは(C
6-C
18)アリール(C
1-C
18)アルキルのアリールは、任意にさらにヒドロキシ、ハロ、(C
1-C
3)アルキル、ハロ(C
1-C
3)アルキル、シアノ、ニトロ、(C
1-C
3)アルコキシおよびチオ(C
1-C
3)アルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換され;
R'は、水素または(C
1-C
18)アルキルであり、(C
1-C
18)アルキルは、任意に、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される1つ以上の酸性置換基で置換され;
Xは、非存在であるかまたはアミノ酸であり、アミノ酸は、
【化4】
とアミド結合を形成するように配向される)
で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグの有効量を投与する工程を含む、該被験体における虚血性障害または虚血-再灌流傷害の治療方法を提供し、
ただし構造式(Ia)の化合物は、N-リポイル-グルタミルアラニン、N-リポイル-アスパルチルグリシン、N-リポイル-グルタミルグリシンまたは5-(5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタンアミド)-2-ヒドロキシ安息香酸ではないものとする。
【0011】
別の態様において、本発明は、被験体に、構造式(I)および/または(Ia)で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグの有効量を投与する工程を含む、被験体において細胞死を阻害する方法に関する。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、細胞、組織または器官に、構造式(I)および/または(Ia)で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグの有効量を投与する工程を含む、細胞、組織または器官における細胞死を阻害する方法に関し、該細胞、組織または器官は、虚血または過剰な細胞死もしくは望ましくない細胞死を生じる他の状態または障害を経験したものである。
【0013】
また、被験体における虚血性傷害または虚血-再灌流傷害を治療するための構造式(I)および/または(Ia)で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグの使用も本発明に含まれる。
【0014】
別の態様において、本発明は、被験体における細胞死を阻害するための、構造式(I)および/または(Ia)で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグの使用に関する。
【0015】
本発明はまた、被験体における虚血性傷害または虚血-再灌流傷害を治療するための医薬の製造のための構造式(I)および/または(Ia)で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグの使用も含む。
【0016】
本発明はまた、被験体における細胞死を阻害するための医薬の製造のための構造式(I)および/または(Ia)で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグの使用も含む。
【0017】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕(i)構造式(I):
【化5-1】
で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩、
ここで、該化合物またはその薬学的に許容され得る塩のエナンチオマー過剰またはジアステレオマー過剰は、少なくとも約90%である
(式中:
Rは、(C
1-C
18)アルキル、(C
6-C
18)アリールまたは(C
6-C
18)アリール(C
1-C
18)アルキルであり、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される少なくとも1つの酸性置換基で置換され、ここで(C
6-C
18)アリールまたは(C
6-C
18)アリール(C
1-C
18)アルキルのアリールは、ヒドロキシ、ハロ、(C
1-C
3)アルキル、ハロ(C
1-C
3)アルキル、シアノ、ニトロ、(C
1-C
3)アルコキシおよびチオ(C
1-C
3)アルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で任意にさらに置換され;
R'は、水素または(C
1-C
18)アルキルであり、ここで(C
1-C
18)アルキルは、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される1つ以上の酸性置換基で任意に置換され;
Xは、非存在であり、
ただし構造式(I)の化合物が、N-(R)-リポイル-アミノエチルホスホン酸または(R)-5-(5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタンアミド)-2-ヒドロキシ安息香酸ではない);および
(ii)薬学的に許容され得る担体または希釈剤
を含む、組成物、
〔2〕Rが(C
1-C
3)アルキルである、〔1〕記載の組成物、
〔3〕Rが(C
6)アリールである、〔1〕記載の組成物、
〔4〕Rが(C
6)アリール(C
1-C
3)アルキルである、〔1〕記載の組成物、
〔5〕Rが、それぞれ独立して-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つまたは2つの酸性置換基で置換された(C
1-C
3)アルキルである、〔2〕記載の組成物、
〔6〕R'が水素である、〔1〕記載の組成物、
〔7〕Rが、それぞれ独立して-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つまたは2つの酸性置換基で置換された(C
1-C
3)アルキルである、〔6〕記載の組成物、
〔8〕Rが、それぞれ独立して-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つまたは2つの酸性置換基で置換された(C
6)アリール(C
1-C
3)アルキルであり、アリールが、ハロおよびヒドロキシで任意に置換される、〔6〕記載の組成物、
〔9〕Rが、それぞれ独立して-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つまたは2つの酸性置換基で置換された(C
2)アルキルである、〔8〕記載の組成物、
〔10〕Rが、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つの酸性置換基で置換された(C
6)アリールである、〔8〕記載の組成物、
〔11〕R'が(C
1-C
3)アルキルである、〔1〕記載の組成物、
〔12〕RおよびR'が、それぞれ、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つの酸性置換基で置換された(C
1-C
3)アルキルである、〔1〕記載の組成物、
〔13〕薬学的に許容され得る塩が、一価のカチオンまたは二価のカチオンを含む、〔1〕記載の組成物、
〔14〕薬学的に許容され得る塩がアミンを含む、〔1〕記載の組成物、
〔15〕薬学的に許容され得る塩がリジンを含む、〔1〕記載の組成物、
〔16〕化合物が、以下の構造式:
【化5-2-1】
【化5-2-2】
【化5-2-3】
の1つで表されるか、あるいは前記いずれかの薬学的に許容され得る塩である、〔1〕記載の組成物、
〔17〕該化合物またはその薬学的に許容され得る塩のエナンチオマー過剰またはジアステレオマー過剰は、少なくとも約99%である、〔1〕記載の組成物、
〔18〕〔1〕〜〔17〕いずれかに規定される化合物を含む、虚血性障害または虚血-再灌流障害を治療するための医薬組成物、
〔19〕虚血-再灌流障害が、脳血管性虚血-再灌流障害、腎性虚血-再灌流障害、肝性虚血-再灌流障害、虚血-再灌流心筋症、皮膚虚血-再灌流障害、腸(bowel)虚血-再灌流障害、腸(intestinal)虚血-再灌流障害、胃虚血-再灌流障害、肺性虚血-再灌流障害、膵臓虚血-再灌流障害、骨格筋虚血-再灌流障害、腹筋虚血-再灌流障害、四肢虚血-再灌流障害、虚血-再灌流大腸炎、腸間膜虚血-再灌流障害および無症候性虚血-再灌流障害からなる群より選択される、〔18〕記載の医薬組成物、
〔20〕虚血性障害が心筋虚血性障害である、〔18〕記載の医薬組成物、
〔21〕虚血性障害が、心臓血管虚血、脳血管性虚血、腎性虚血、肝性虚血、虚血-再灌流心筋症、皮膚虚血、腸(bowel)虚血、腸(intestinal)虚血、胃虚血、肺性虚血、膵臓虚血、骨格筋虚血、腹筋虚血、四肢虚血、虚血-再灌流大腸炎、腸間膜虚血および無症候性虚血からなる群より選択される虚血の結果である、〔18〕記載の医薬組成物、
〔22〕虚血-再灌流障害が心筋虚血-再灌流障害である、〔18〕記載の医薬組成物、
〔23〕心筋虚血-再灌流障害が心筋梗塞の結果である、〔22〕記載の医薬組成物、
〔24〕心筋梗塞が急性心筋梗塞である、〔23〕記載の医薬組成物、
〔25〕虚血-再灌流障害が脳虚血-再灌流障害である、〔18〕記載の医薬組成物、
〔26〕脳虚血-再灌流障害が脳卒中の結果である、〔25〕記載の医薬組成物、
〔27〕虚血性障害または虚血-再灌流障害が手術時の心臓の損傷を含む、〔18〕記載の医薬組成物、
〔28〕虚血-再灌流障害が腎性虚血-再灌流障害である、〔18〕記載の医薬組成物、
〔29〕虚血性障害または虚血-再灌流障害が治療介入の結果である、〔18〕記載の医薬組成物、
〔30〕治療介入が、冠状動脈バイパス移植手術、冠状血管形成手術、移植手術および心肺バイパス手術からなる群より選択される、〔18〕記載の医薬組成物、
〔31〕化合物またはその薬学的に許容され得る塩が被験体に経口投与される、〔18〕記載の医薬組成物、
〔32〕化合物またはその薬学的に許容され得る塩が被験体に静脈内投与される、〔18〕記載の医薬組成物、
〔33〕以下の構造式:
【化5-3】
で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩を含む組成物であって、該化合物または薬学的に許容され得る塩のエナンチオマー過剰は、少なくとも約90%である、組成物、
〔34〕該化合物または薬学的に許容され得る塩のエナンチオマー過剰は、少なくとも約95%である、〔33〕記載の組成物、
〔35〕該化合物または薬学的に許容され得る塩のエナンチオマー過剰は、少なくとも約99%である、〔34〕記載の組成物、
〔36〕薬学的に許容され得る担体または希釈剤をさらに含む、〔33〕〜〔35〕いずれか記載の組成物、
〔37〕経口投与用に適合された、〔36〕記載の組成物、
〔38〕錠剤またはカプセルの形態である、〔37〕記載の組成物、
〔39〕懸濁剤の形態である、〔37〕記載の組成物、
〔40〕液体の形態である、〔37〕記載の組成物、
〔41〕以下の構造式:
【化5-4】
で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩を含む、虚血性障害または虚血−再灌流障害を治療するための医薬組成物であって、該化合物または薬学的に許容され得る塩のエナンチオマー過剰は、少なくとも約90%である、医薬組成物、
〔42〕該化合物またはその薬学的に許容され得る塩が、被験体に経口投与される、〔41〕記載の医薬組成物、
〔43〕虚血性障害が腎性虚血の結果である、〔41〕記載の医薬組成物、
〔44〕虚血−再灌流障害が、腎性虚血−再灌流障害である、〔41〕または〔43〕記載の医薬組成物、
〔45〕虚血性障害または虚血−再灌流障害が、治療介入の結果である、〔41〕または〔44〕記載の医薬組成物、
〔46〕化合物が、治療介入前に投与される、〔45〕記載の医薬組成物、
〔47〕〔33〕〜〔35〕いずれかに規定される化合物またはその薬学的に許容され得る塩を含む、治療介入前にエキソビボで細胞、組織または器官に対する虚血または虚血−再灌流障害を阻害するための医薬組成物、
〔48〕〔33〕〜〔35〕いずれかに規定される化合物またはその薬学的に許容され得る塩を含む、アポトーシス性細胞死を阻害する必要のある被験体においてアポトーシス性細胞死を阻害するための医薬組成物、
〔49〕〔33〕〜〔35〕いずれかに規定される化合物またはその薬学的に許容され得る塩を含む、細胞、組織または器官におけるアポトーシス性細胞死を阻害するための医薬組成物であって、該細胞、組織または器官は、虚血または過剰なもしくは望ましくない細胞死を生じる他の状態もしくは障害を経ている、医薬組成物
に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化合物(本明細書において「開示される化合物」ともいう)、組成物および方法は、虚血および虚血性傷害、例えば虚血-再灌流傷害により生じる組織損傷を治療するために効果的である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
定義
開示される化合物は、特定されなければ、種々の立体異性形態で存在し得る。「立体異性体」は、その空間的配列のみで異なる化合物である。「エナンチオマー」は、ほとんどの場合に共通して、キラル中心として作用する非対称的に置換された炭素原子を含むので、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体の対である。
【0020】
「ジアステレオマー」は、ほとんどの場合に共通して、2つ以上の非対称的に置換された炭素原子を含むので、鏡像として関連のない立体異性体である。「R」および「S」は、1つ以上のキラル炭素原子の周囲の置換基の配置を示す。
【0021】
「ラセミ化合物」または「ラセミ混合物」は、本明細書で使用する場合、化合物の2つのエナンチオマーの等モル量を含む混合物のことをいう。かかる混合物は、光学活性を発揮しない(すなわち、それらは偏光面を回転させない)。
【0022】
パーセントエナンチオマー過剰(enantiomeric excess)(ee)は、それぞれのエナンチオマーのモル画分の間の絶対差に100%をかけたものとして定義され、以下の等式:
【化5-5】
(式中、RおよびSは、R+S=1となるような混合物中のそれぞれのエナンチオマーのそれぞれの画分を示す)で表すことができる。1つのエナンチオマーが命名されるかまたは構造で示される場合、該示されたかまたは命名されたエナンチオマーは、少なくともまたは約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、約99%もしくは約99.9%のeeで存在する。
【0023】
パーセントジアステレオマー過剰(diastereomeric excess)(de)は、それぞれのジアステレオマーのモル画分の間の絶対差に100をかけたものとして定義され、以下の等式:
【化6】
(式中、D1および(D2+D3+D4・・・)は、D1+(D2+D3+D4・・・)=1となるような混合物中のそれぞれのジアステレオマーのそれぞれの画分を示す)で表すことができる。1つのジアステレオマーが命名されるかまたは構造で示される場合、該示されたかまたは命名されたジアステレオマーは、少なくともまたは約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、約99%もしくは約99.9%のdeで存在する。
【0024】
開示される化合物が、立体化学を示さずに命名されるかまたは構造で示され、1つのキラル中心を有する場合、該名称または構造が、対応する光学異性体とは実質的に区別される化合物の1つのエナンチオマー、化合物のラセミ混合物および対応する光学異性体に対して1つのエナンチオマーが富化された混合物を包含することが理解される。
【0025】
開示された化合物が、立体化学を示さずに命名されるかまたは構造で示され、2つ以上のキラル中心を有する場合、名称または構造が、他のジアステレオマーとは実質的に区別されるジアステレオマー、他のジアステレオマー対とは実質的に区別されるジアステレオマーの対、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマーの対の混合物、他のジアステレオマー(1つまたは複数)に対して1つのジアステレオマーが富化されたジアステレオマーの混合物および他のジアステレオマー対(1つまたは複数)に対して1つのジアステレオマー対が富化されたジアステレオマー対の混合物を包含することが理解される。
【0026】
「(R)-リポイル」は、リポイル部分を含む化合物のことをいい、リポイル部分における立体中心は(R)配置にある。(R)-リポイル部分は、以下:
【化7】
で図示される。
【0027】
(R)-リポイル化合物の例は、以下:
【化8】
で示される。
【0028】
「(S)-リポイル」は、リポイル部分を含む化合物のことをいい、リポイル部分における立体中心は(S)配置にある。(S)-リポイル部分は以下:
【化9】
で図示される。
【0029】
(S)-リポイル化合物の例は、以下:
【化10】
で示される。
【0030】
「アルキル」は、特定の数の炭素原子を有する、飽和脂肪族性、分岐もしくは直鎖の一価の炭化水素ラジカルを意味する。したがって、「(C
1-C
6)アルキル」は、直鎖または分岐の配列で1〜6個の炭素原子を有するラジカルを意味する。「(C
1-C
6)アルキル」としては、メチル、エチル、プロピル、i-プロピル、ブチル、i-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、ペンチルおよびヘキシルが挙げられる。典型的に、アルキルは、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜5個または1〜3個の炭素原子を有する。
【0031】
アルキル基の1つ以上の水素原子が置換基で置き換えられ得る。好適な置換基としては、ヒドロキシ、チオ、ハロ、ハロ(C
1-C
3)アルキル、(C
1-C
3)アルコキシおよびチオ(C
1-C
3)アルキルが挙げられる。好ましいアルキル置換基としては、ヒドロキシおよびハロが挙げられる。アルキルはまた、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される1つ以上の酸性置換基で置換され得る。
【0032】
用語「アルコキシ」は、-O-アルキルを意味し、アルキルは、先に定義されたとおりである。
【0033】
用語「ハロゲン」は、F、Cl、BrまたはIを意味する。
【0034】
用語「アリール」は、炭素環式芳香族環を意味する。「(C
6-C
14)アリール」としては、フェニル、ナフチル、インデニルおよびアントラセニルが挙げられる。典型的に、アリールは、6〜20個、6〜14個、6〜10個、6〜9個または6個の炭素原子を有する。
【0035】
本明細書で使用する場合、「実質的に区別される」または「実質的に純粋」は、示されたかまたは命名された化合物のeeまたはdeが少なくとも約50%であることを意味する。例えば、「実質的に区別される」または「実質的に純粋」は、示されたかまたは命名されたエナンチオマーのeeまたはdeが少なくともまたは約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、約99%もしくは約99.9%であることを意味し得る。一態様において、実質的に区別されるまたは実質的に純粋は、示されたかまたは命名された化合物のeeまたはdeが少なくともまたは約75%であることを意味する。具体的な態様において、実質的に区別されるは、示されたかまたは命名された化合物のeeまたはdeが少なくともまたは約90%であることを意味する。より具体的な態様において、実質的に区別されるは、示されたかまたは命名された化合物のeeまたはdeが少なくともまたは約95%であることを意味する。さらにより具体的な態様において、実質的に区別されるは、示されたかまたは命名された化合物のeeまたはdeが少なくともまたは約99%であることを意味する。別の具体的な態様において、実質的に区別されるは、示されたかまたは命名された化合物のeeまたはdeが少なくともまたは約99.9%であることを意味する。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「アミノ酸」は、アミン基、カルボン酸基および異なるアミノ酸間で変化する側鎖を含む分子を意味し、天然に存在するアミノ酸と天然には存在しないアミノ酸の両方が含まれる。一態様において、「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸のことを言うために使用される。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「天然に存在するアミノ酸」は、式NH
2-CHR-COOHで表される化合物を意味し、式中Rは、下記の表において列挙または命名されるアミノ酸などの天然に存在するアミノ酸の側鎖である。「天然に存在するアミノ酸」は、D-配置およびL-配置の両方を含む。アミノ酸が、立体化学を示さずに命名されるかまたは構造で示され、少なくとも1つのキラル中心を有する場合、名称または構造が、1つのエナンチオマーまたはジアステレオマーが他のエナンチオマーまたはジアステレオマー(1つまたは複数)に対して富化される他のエナンチオマーまたはジアステレオマーとは実質的に区別される1つのエナンチオマーまたはジアステレオマー、エナンチオマーまたはジアステレオマー(1つまたは複数)のラセミ混合物またはジアステレオマー混合物およびその対応する光学異性体または他のジアステレオマー(1つまたは複数)に対して1つのエナンチオマーまたはジアステレオマーが富化される混合物を包含することが理解される。
【0039】
「非天然アミノ酸」は、核酸コドンが存在しないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例としては、非天然側鎖を有する天然のαアミノ酸(例えば、表2の項目6および7);βアミノ酸(例えば、βアラニン);γアミノ酸(例えば、γアミノ酪酸)が挙げられる。
【0040】
本明細書で使用する場合、「有効量」は、投与の条件において、治療または予防を必要とする被験体において所望の治療または予防効果を達成するのに充分な量であり、例えば被験体において、(例えば、被験体における1つ以上の罹患した細胞の細胞死を阻害することにより)虚血および虚血-再灌流傷害を阻害(例えば、予防、遅延)するのに充分な量である。治療の有効性は、当業者に公知の好適な方法により決定し得る。有効量は、被験体において治療される障害または疾患(例えば、虚血または虚血-再灌流傷害)の発症を予防、症状を緩和、または進行を停止する化合物(例えば、構造式(I)および/または(Ia)の化合物)の任意の量を含む。
【0041】
用語「治療」は、治療を必要とする被験体に、治療される障害または疾患の開始を予防、症状を緩和、または進行を停止するのに充分な化合物(例えば、構造式(I)および/または(Ia)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ)の有効量を投与することとして定義される。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「被験体」は、哺乳動物のことを言う。好ましい態様において、被験体はヒトである。
【0043】
本発明の化合物
一態様において、本発明は、構造式(I)および/または(Ia)で表される化合物に関する。
【0044】
Rは、(C
1-C
18)アルキル、(C
6-C
18)アリールまたは(C
6-C
18)アリール(C
1-C
18)アルキルであり、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される少なくとも1つの酸性置換基で置換され、ここで(C
6-C
18)アリールまたは(C
6-C
18)アリール(C
1-C
18)アルキルのアリールは、任意にさらに、ヒドロキシ、ハロ、(C
1-C
3)アルキル、ハロ(C
1-C
3)アルキル、シアノ、ニトロ、(C
1-C
3)アルコキシおよびチオ(C
1-C
3)アルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0045】
一態様において、Rは(C
1-C
18)アルキルである。別の態様において、Rは(C
1-C
3)アルキルである。さらなる態様において、Rは(C
3)アルキルである。さらなる態様において、Rは(C
2)アルキルである。代替的に、Rは(C
1)アルキルである。
【0046】
別の態様において、Rは(C
6-C
18)アリールである。さらなる態様において、Rは(C
6)アリールである。
【0047】
別の態様において、Rは(C
6-C
18)アリール(C
1-C
18)アルキルである。さらなる態様において、Rは(C
6)アリール(C
1-C
3)アルキルである。代替的に、Rは(C
6)アリール(C
1-C
2)アルキルである。
【0048】
別の態様において、Rは(C
6)アリール(C
2)アルキルである。さらなる態様において、Rは(C
6)アリール(C
1)アルキルである。
【0049】
少なくとも1つの酸性置換基は、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される。一態様において、少なくとも1つの酸性置換基は、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2からなる群より選択される。
【0050】
Rは、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される少なくとも1つの酸性置換基で置換される。一態様において、Rは、1つ、2つまたは3つの酸性置換基で置換される。さらなる態様において、Rは、1つまたは2つの酸性置換基で置換される。
【0051】
アリールは、任意にさらに、ヒドロキシ、ハロ、(C
1-C
3)アルキル、ハロ(C
1-C
3)アルキル、シアノ、ニトロ、(C
1-C
3)アルコキシおよびチオ(C
1-C
3)アルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換される。一態様において、アリールはさらに、1つ、2つまたは3つの置換基で置換される。別の態様において、アリールは、1つの置換基で置換される。代替的に、アリールは置換されない。さらなる態様において、アリールはさらに、ヒドロキシルおよびハロからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0052】
R'は、水素または(C
1-C
18)アルキルであり、前記(C
1-C
18)アルキルは、任意に、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される1つ以上の酸性置換基で置換される。一態様において、R'は水素である。
【0053】
一態様において、R'は(C
1-C
18)アルキルである。別の態様において、R'は(C
1-C
3)アルキルである。さらなる態様において、R'は(C
3)アルキルである。さらなる態様において、R'は(C
2)アルキルである。代替的に、R'は(C
1)アルキルである。
【0054】
R'は、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される少なくとも1つの酸性置換基で置換される。一態様において、R'は、1つ、2つまたは3つの酸性置換基で置換される。別の態様において、R'は、1つまたは2つの酸性置換基で置換される。さらなる態様において、R'は1つの酸性置換基で置換される。代替的に、R'は置換されない。
【0055】
Xは非存在またはアミノ酸であり、該アミノ酸は、
【化11】
とアミド結合を形成するように配向される。例えば、N-リポイル-グルタミルアラニン中の部分は、以下の構造式:
【化12】
中に示されるように配向される。
【0056】
一態様において、Xは非存在である。代替的に、Xはアミノ酸である。さらなる態様において、Xは天然に存在するアミノ酸である。なおさらなる態様において、Xはアスパラギン酸、チロシン、グルタミン酸またはアラニンである。
【0057】
構造式(I)および/または(Ia)の化合物は、N-(R)-リポイル-グルタミルアラニン、N-リポイル-アスパルチルグリシン、N-リポイル-グルタミルグリシン、N-(R)-リポイル-アミノエチルホスホン酸または(R)-5-(5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタンアミド)-2-ヒドロキシ安息香酸ではない。
【0058】
構造式(I)および/または(Ia)の化合物は、N-リポイル-グルタミルアラニン、N-リポイル-アスパルチルグリシン、N-リポイル-グルタミルグリシン、N-リポイル-グルタミン、N-リポイル-グリシンまたは5-(5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタンアミド)-2-ヒドロキシ安息香酸ではない。
【0059】
また、具体的な態様において、構造式(I)および/または(Ia)の化合物は、N-リポイル-アスパルチルアラニンではない。
【0060】
第1の具体的な態様において、化合物は構造式(I)および/または(Ia)で表され、式中の値および変数についての代替値は、上述のとおりである。
【0061】
本発明の第1の具体的な態様の第1の局面において、構造式(I)または(Ia)で表される化合物の(R)-リポイル立体異性体またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグは、(S)-リポイル立体異性体(1つまた複数)またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグとは実質的に区別される。値および変数の残りについての代替値は、構造式(I)もしくは(Ia)について、または第1の具体的な態様に記載されるとおりである。
【0062】
本発明の第1の具体的な態様の第2の局面において、R'はHである。値および変数の残りについての代替値は、構造式(I)もしくは(Ia)、または第1の具体的な態様、またはその第1の局面に記載されるとおりである。
【0063】
本発明の第1の具体的な態様の第3の局面において、R'はHであり、Xは天然に存在するアミノ酸である。値および変数の残りについての代替値は、構造式(I)もしくは(Ia)、または第1の具体的な態様、またはその第1もしくは第2の局面に記載のとおりである。
【0064】
本発明の第1の具体的な態様の第4の局面において、RおよびR'は、それぞれ-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から独立して選択された1つまたは2つの酸性置換基で置換された(C
1-C
3)アルキルである。値および変数の残りについての代替値は、構造式(I)もしくは(Ia)、または第1の具体的な態様、またはその第1〜第3の局面に記載されるとおりである。
【0065】
本発明の第1の具体的な態様の第5の局面において、R'はHであり、Xは非存在である。値および変数の残りについての代替値は、構造式(I)もしくは(Ia)、または第1の具体的な態様、またはその第1〜第4の局面に記載されるとおりである。
【0066】
本発明の第1の具体的な態様の第6の局面において、Rは、それぞれ独立して-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つまたは2つの酸性置換基で置換された(C
1-C
3)アルキルである。値および変数の残りについての代替値は、構造式(I)もしくは(Ia)、または第1の具体的な態様、またはその第1〜第5の局面に記載されるとおりである。
【0067】
本発明の第1の具体的な態様の第7の局面において、Rは、それぞれ独立して-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つまたは2つの酸性置換基で置換された(C
6)アリール(C
1-C
3)アルキルである。値および変数の残りについての代替値は、構造式(I)もしくは(Ia)、または第1の具体的な態様、またはその第1〜第6の局面に記載されるとおりである。
【0068】
本発明の第1の具体的な態様の第8の局面において、Rは、それぞれ独立して-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択された1つまたは2つの酸性置換基で置換された(C
2)アルキルである。値および変数の残りについての代替値は、構造式(I)もしくは(Ia)、または第1の具体的な態様、またはその第1〜第7の局面に記載されるとおりである。
【0069】
本発明の第1の具体的な態様の第9の局面において、Rは、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択された1つの酸性置換基で置換された(C
6)アリールである。値および変数の残りについての代替値は、構造式(I)もしくは(Ia)、または第1の具体的な態様、またはその第1〜第8の局面に記載されるとおりである。
【0070】
本発明の第1の具体的な態様の第10の局面において、構造式(I)および/または(Ia)で表される化合物は、N-リポイル-グルタミルアラニン、N-リポイル-アスパルチルグリシン、N-リポイル-グルタミルグリシンまたは5-(5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタンアミド)-2-ヒドロキシ安息香酸ではない。値および変数の残りについての代替値は、構造式(I)もしくは(Ia)、または第1の具体的な態様、またはその第1〜第9の局面に記載されるとおりである。
【0071】
本発明の第1の具体的な態様の第11の局面において、構造式(I)および/または(Ia)で表される化合物は、N-リポイル-グルタミルアラニン、N-リポイル-アスパルチルグリシン、N-リポイル-グルタミルグリシン、N-リポイル-グルタミン酸、N-リポイル-アスパラギン酸、N-リポイル-グリシンまたは5-(5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタンアミド)-2-ヒドロキシ安息香酸ではない。値および変数の残りについての代替値は、構造式(I)もしくは(Ia)、または第1の具体的な態様、またはその第1〜第10の局面に記載されるとおりである。
【0072】
本発明の第1の具体的な態様の第12の局面において、構造式(I)の化合物は、N-(R)-リポイル-グルタミルアラニン、N-(R)-リポイル-アスパルチルグリシン、N-(R)-リポイル-アミノエチルホスホン酸または(R)-5-(5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタンアミド)-2-ヒドロキシ安息香酸ではない。値および変数の残りについての代替値は、構造式(I)もしくは(Ia)、または第1の具体的な態様、またはその第1〜第11の局面に記載されるとおりである。
【0073】
第1の具体的な態様の第13の局面において、化合物は構造式(I)で表され、値および代替値は、構造式(I)もしくは(Ia)、または第1の具体的な態様、またはその第1〜第12の局面に記載されるとおりである。
【0074】
第1の具体的な態様の第14の局面において、化合物は構造式(Ia)で表され、値および代替値は構造式(I)もしくは(Ia)、または第1の具体的な態様、またはその第1〜第13の局面に記載されるとおりである。
【0075】
第2の具体的な態様において、化合物は以下の構造式:
【化13】
【化14】
【化15】
の1つで表される。
【0076】
値および変数の残りについての代替値は、構造式(I)もしくは(Ia)、または第1の具体的な態様、またはその局面に記載されるとおりである。
【0077】
本発明の第2の具体的な態様の第1の局面において、構造式(I)または(Ia)で表される化合物の(R)-リポイル立体異性体またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグは、(S)-リポイル立体異性体(1つまたは複数)またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグとは実質的に区別される。値および変数の残りについての代替値は、構造式(Ia)、第1の具体的な態様もしくはその局面、または第2の具体的な態様に記載されるとおりである。
【0078】
本発明はまた、本発明の開示される化合物の薬学的に許容され得る塩に関する。用語「薬学的に許容され得る塩」は、アルカリ金属塩を形成するためおよび遊離塩基の付加塩を形成するために一般的に使用される塩を包含する。該塩の性質は、薬学的に許容され得るものであれば重要でない。
【0079】
本発明の化合物の薬学的に許容され得る塩は、塩基付加塩を含む。本発明の化合物の好適な薬学的に許容され得る塩基付加塩としては、限定されないが、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛で作製される金属塩、またはN,N'-ジベンジルエチレン-ジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン(glucamine)、リジンおよびプロカインで作製される有機塩が挙げられる。これらの塩の全ては、表1〜5の化合物を好適な酸または塩基で処理することにより、本発明の対応する化合物から従来の手段により調製し得る。
【0080】
一態様において、薬学的に許容され得る塩は、一価または二価のカチオンを含む。本明細書で使用する場合、「カチオン」は、正の電荷を有する原子または分子のことを言う。カチオンは、例えば金属またはアミンであり得る。特定の態様において、カチオンは、ナトリウムカチオンなどの金属カチオンである。
【0081】
本明細書で使用する場合、「アミン塩」は、プロトン付加アミノ基含有カチオンに関する。アミン塩としては、リジン塩などのアミノ酸塩が挙げられる。別の態様において、カチオンはアミンであり、薬学的に許容され得る塩はアミン塩である。特定の態様において、薬学的に許容され得る塩はリジンを含む。
【0082】
塩はキラルであり得る。開示された塩が少なくとも1つのキラル中心を有し、立体化学を示すことなく命名されるかまたは構造で示される場合、該名称または構造が、対応する立体異性体(1つまたは複数)もしくはエナンチオマーを含まない化合物の1つの立体異性体またはエナンチオマー、化合物のラセミ混合物、あるいは対応する立体異性体(1つまたは複数)もしくはエナンチオマーに対して1つの立体異性体またはエナンチオマーが富化された混合物を包含することが理解される。
【0083】
本発明はまた、本発明の開示される化合物の薬学的に許容され得るプロドラッグに関する。
【0084】
一態様において、本発明は、構造式(I)および/または(Ia)の化合物に関し、それぞれの酸性官能基(例えば、-COOH、-SO
3H、-OSO
3H、-PO(OH)
2、-OPO(OH)
2)の水素は、任意におよび独立して、加水分解可能な基で置き換えられる。本発明はまた、前記加水分解可能な基を含む化合物の薬学的に許容され得る塩を包含する。
【0085】
本明細書で使用する場合、用語「加水分解可能な基」は、本発明の分子中に存在する場合、加水分解時にカルボン酸またはその塩を生じる部分のことを言う。例えば、加水分解は、生理学的環境(例えば、血液、代謝的に活性な組織、例えば肝臓、腎臓、肺、脳)において酸性もしくは塩基性条件下で自発的に起こり得るか、または酵素(1つまたは複数)(例えば、エステラーゼ、ペプチダーゼ、ヒドロラーゼ、オキシダーゼ、デヒドロゲナーゼ、リアーゼまたはリガーゼ)により触媒され得る。加水分解可能な基は、インビボで本発明の化合物に、水溶性の向上、血中の循環半減期の向上、取り込みの向上、作用持続時間の向上または作用開始の向上などの有利な特性を付与し得る。
【0086】
一態様において、加水分解可能な基は化合物の生物学的活性を破壊しない。代替的な態様において、加水分解可能な基を有する化合物は、生物学的に不活性であり得るが、インビボで生物学的に活性な化合物に変換され得る。
【0087】
加水分解可能な基を含む本発明の化合物は、プロドラッグとして作用し得る。本明細書で使用する場合、用語「プロドラッグ」は、生物学的条件下で、加水分解、酸化、代謝または他の反応がなされ、本発明の化合物を提供し得る化合物を意味する。生物学的条件下でかかる反応時にプロドラッグは、活性になり得るか、またはその未反応形態において活性を有し得る。プロドラッグは、生理学的条件下(例えば、加水分解可能な基の存在のために)で還元代謝に供され、それにより、プロドラッグの循環(例えば血中)半減期の向上をもたらし得る。典型的に、プロドラッグは、Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery (1995) 172-178, 949-982 (Manfred E. Wolff編、第5版)に記載されるものなどの周知の方法を使用して調製され得る。
【0088】
一態様において、加水分解可能な基は、(C
1-C
10)アルキル、(C
2-C
10)アルケニル、(C
2-C
10)アルキニル、(C
1-C
10)アルコキシ(C
1-C
10)アルキル、(C
1-C
10)アルコキシ(C
1-C
10)アルコキシ(C
1-C
10)アルキル、アリールおよびアリール(C
1-C
10)アルキルからなる群より選択され、それぞれは任意に、ハロ、ニトロ、シアノ、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アミノ、(C
1-C
6)アルキルアミノ、ジ(C
1-C
6)アルキルアミノ、(C
1-C
6)アルキル、ハロ(C
1-C
6)アルキル、(C
1-C
6)アルコキシ、ハロ(C
1-C
6)アルコキシ、モルホリノ、フェニルおよびベンジルからなる群より選択される1〜3個の置換基で置換される。
【0089】
別の態様において、加水分解可能な基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、アリル、エトキシメチル、メトキシエチル、メトキシエトキシメチル、メトキシエトキシエチル、ベンジル、ペンタフルオロフェニル、2-N-(モルホリノ)エチル、ジメチルアミノエチルおよびパラ-メトキシベンジルからなる群より選択される。
【0090】
方法
別の態様において、本発明は、治療を必要とする被験体に、構造式(I)および/または(Ia)の1つ以上の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグの有効量を投与する工程を含む、該被験体において虚血または虚血-再灌流傷害を治療するための方法に関し、ただし構造式(I)の化合物は、N-(R)-リポイル-グルタミルアラニン、N-(R)-リポイル-アミノエチルホスホン酸または(R)-5-(5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタンアミド)-2-ヒドロキシ安息香酸ではなく、構造式(Ia)の化合物は、N-リポイル-グルタミルアラニン、N-リポイル-アスパルチルグリシン、N-リポイル-グルタミルグリシンまたは5-(5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタンアミド)-2-ヒドロキシ安息香酸ではないものとする。いくつかの態様において、薬学的に許容され得る塩はリジン塩である。一態様において、該塩はL-リジン塩である。特定の態様において、虚血または虚血-再灌流傷害は、心筋の虚血または虚血-再灌流傷害である。別の態様において、化合物は、本発明の1つ以上の化合物を含む組成物として投与される。
【0091】
本明細書で使用する場合、「虚血により生じる傷害」、「虚血により引き起こされる傷害」および「虚血性傷害」は、組織または器官の損傷または機能不全を引き起こす、虚血または(例えば動脈がふさがれるための)血液、したがって酸素の不充分な供給により引き起こされる細胞、組織または器官に対する傷害のことを言う(Piper, H. M., Abdallah, C., Schafer, C., Annals of Thoracic Surgery 2003, 75:644; Yellon, D. M., Hausenloy, D. J., New England Journal of Medicine 2007, 357:1121)。虚血により生じる傷害は、種々の組織および器官に影響を及ぼし得る。かかる傷害は、本発明の化合物および方法により治療され得、該傷害としては、例えば心臓血管虚血、脳血管性虚血、腎性虚血、肝性虚血、虚血性心筋症、皮膚虚血、腸(bowel)虚血、腸(intestinal)虚血、胃虚血、肺性虚血、膵臓虚血、骨格筋虚血、腹筋虚血、四肢虚血、虚血性大腸炎、腸間膜虚血および無症候性虚血により引き起こされる傷害が挙げられる。したがって、虚血により生じる傷害は、例えば心臓、腎臓、肝臓、脳、筋肉、腸、胃、肺または皮膚に影響を及ぼし得る。
【0092】
特定の態様において、虚血により生じる傷害は、心筋虚血の結果である。心筋虚血により生じる傷害は、例えば被験体における心筋梗塞(例えば急性心筋梗塞)により生じ得る。
【0093】
別の態様において、虚血により生じる傷害は、被験体における脳虚血(例えば脳卒中)により生じる傷害である。
【0094】
別の態様において、虚血により生じる傷害は、腎性虚血により生じる傷害である。腎性虚血により生じる傷害は、通常、被験体における血管の機能的狭窄または実際の閉塞(例えば急性腎臓梗塞)のために、例えば腎臓の1つ以上もしくはその両方またはネフロンにおける血液の欠乏により生じ得る。
【0095】
別の態様において、虚血により生じる傷害は、虚血-再灌流傷害である。本明細書で使用する場合、用語「虚血-再灌流傷害」は、以前に虚血性イベントのための血流の欠乏を経験した組織または器官の領域への血流の回復により生じる傷害のことを言う。再灌流に伴う酸化ストレスは、罹患した組織または器官に損傷を引き起こし得る。虚血-再灌流傷害は、虚血性イベントの間の酸素の枯渇、その後の再灌流の間の再酸素化および反応性酸素種の同時生成により生化学的に特徴づけられる(Piper, H. M., Abdallah, C., Schafer, C., Annals of Thoracic Surgery 2003, 75:644; Yellon, D. M., Hausenloy, D. J., New England Journal of Medicine 2007, 357:1121)。
【0096】
虚血-再灌流傷害は、例えば天然のイベント(例えば心筋梗塞後の血流の回復)、外傷によって、または血液の供給が減少した組織または器官に血流を回復する1つ以上の外科的手法または他の治療介入によって引き起こされ得る。かかる外科的手法としては、例えば、冠状動脈バイパス移植手術、冠状血管形成手術、器官移植手術等が挙げられる。特定の態様において、本発明の化合物および方法は、虚血または虚血-再灌流傷害により引き起こされる手術時の心臓損傷を治療するために有用である。
【0097】
外科的手法などの治療介入により引き起こされる虚血性および虚血-再灌流傷害の治療について、本発明の化合物が、治療介入(例えば、心臓手術、器官移植)の前に、治療を受けている被験体に投与されることが好ましい。例えば、本発明の化合物は、治療介入の例えば約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約12時間、約24時間、または約48時間前に、治療を受けている被験体に投与され得る。本発明の化合物はまた、治療介入の例えば約5分、約10分、約15分、約20分、約30分または約45分前に、治療を受けている被験体に投与され得る。
【0098】
代替的に、または付加的に、本発明の化合物は、治療介入時、または治療介入の間に治療を受けている被験体に投与され得る。例えば、化合物は、一定の間隔(例えば15分間隔)で、治療介入の経過の間に一回以上投与され得る。代替的に、化合物は、治療介入の持続を通じて連続的に投与され得る。
【0099】
さらに、本発明の化合物は、治療介入後に、治療を受けている被験体に投与され得る。例えば、本発明の化合物は、治療介入の例えば約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約12時間、約24時間または約48時間後に、治療を受けている被験体に投与され得る。本発明の化合物はまた、治療介入の例えば約5分、約10分、約15分、約20分、約30分または約45分後に、治療を受けている被験体に投与され得る。
【0100】
本発明の化合物はまた、治療介入前に、エクソビボで、細胞、組織または器官(例えば、移植手順に使用される組織、器官移植手術に使用される器官)に対して虚血または虚血-再灌流傷害を阻害するために使用され得る。例えば、宿主個体への器官の移植前に(例えば器官を滅菌環境下で保存または輸送する間に)、器官は、本発明の化合物と接触されて(例えば、本発明の化合物を含む溶液中で槽に入れて)、虚血または虚血-再灌流傷害を阻害し得る。
【0101】
本明細書に記載されるように、虚血により生じる状態および虚血または虚血-再灌流により引き起こされる傷害は、罹患した細胞、組織または器官において細胞死(例えばアポトーシス性細胞死)を誘導して、損傷および機能不全を引き起こし得る。したがって、本発明の化合物はまた、細胞、組織または器官(例えば、被験体における移植組織もしくは器官、または細胞、組織もしくは器官)において細胞死を阻害する方法において有用性を有し、該細胞、組織または器官は、虚血または過剰なまたは望ましくない細胞死を生じる他の状態もしくは障害を経験している。該方法は、接触を必要とする細胞、組織または器官と、構造式(I)および/または(Ia)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグの有効量とを接触する工程または投与を必要とする被験体に、構造式(I)および/または(Ia)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグの有効量を投与する工程を含む。
【0102】
一態様において、本発明は、被験体に、構造式(I)もしくは(Ia)で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグの有効量を投与する工程を含む、該被験体において細胞死(例えばアポトーシス性細胞死)を阻害する方法に関する。
【0103】
細胞死を評価する方法は当該技術分野で周知である。例えば、細胞死を調べるために、(クロマチン凝集および細胞質収縮など、細胞死に関連する形態学的変化を検出することにより)細胞死を視覚化するための顕微鏡分析(例えば、光学顕微鏡法、電子顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、レーザー走査型顕微鏡法)が典型的に使用される。
【0104】
アガロースゲル中でのDNA断片化を調べることは、アポトーシス性細胞死の指標となるとも考えられる。断片を標識して、アポトーシス細胞の割合を定量化するために、多くの技術でDNA断片化が利用される。それぞれのDNA断片は、3'-OH末端部分を有する。この末端断片は種々の方法で(例えば、改変された末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼの補助により)標識され得、標識速度はDNA断片化の程度に比例する。
【0105】
特に、TdT媒介性dUTPニック末端標識、またはTUNELは、アポトーシスプロセスの最終工程の付近に生じる断片化されたDNAを検出するための技術である。アポトーシス細胞の断片化されたDNAは、TUNELアッセイの原理を使用して重合化テイルを形成する酵素ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)を使用して、DNA末端の3'-OHでフルオレセインdUTPを取り込み得る。標識されたDNAは、次いで蛍光顕微鏡法により直接視覚化され得るかまたはフローサイトメトリーにより定量され得る。
【0106】
現在のいくつかの技術は、アポトーシス細胞の初期に生じる膜リン脂質の変化を利用する。アポトーシス細胞により外部環境に曝露された負に荷電した膜リン脂質は、蛍光色素結合分子により標識され、蛍光細胞の割合は容易に定量され得る。
【0107】
アポトーシスはまた、蛍光結合アネキシンVを使用しても検出され得る。アネキシンVは、複数の負に荷電したリン脂質に優先的に結合する抗凝集タンパク質である。アポトーシスプロセスの初期段階は、膜リン脂質対称性の破壊であり、細胞膜の外部器官上のホスファチジルセリン(PS)を曝露させる。蛍光結合アネキシンVは、無傷な生細胞上のホスファチジルセリンのこの外部化を検出するために使用され得る。しばしばネクローシス細胞を検出するために、ヨウ化プロピジウムが第2の蛍光色素として併用される。アポトーシスの誘導は、プロカスパーゼ3タンパク質分解性切断をもたらし、活性18kDaカスパーゼ3断片を生成し、次いで切断のためにポリADPリボースポリメラーゼおよび他のカスパーゼなどのアポトーシス経路の中心的な調節因子を標的化する。アポトーシス細胞中の他の活性カスパーゼを検出するためのアッセイが当該技術分野で公知である(例えば、カスパーゼ-Glo(登録商標) Assays, Promega)。
【0108】
アポトーシス細胞はまた、マーカーとして活性18kDaカスパーゼ3断片を使用して検出され得る。アポトーシスの誘導により、プロカスパーゼ3タンパク質分解切断を生じ、活性18kDaカスパーゼ3断片を生成し、次いで切断のためのポリADPリボースポリメラーゼおよび他のカスパーゼなどのアポトーシス経路の中心的な調節因子を標的化する。活性18kDa断片のみを認識するいくつかの抗体が市販供給業者から入手可能である(例えば、BD Biosciences, Chemicon, Cell Signaling Technology, Trevigen)。
【0109】
また、アポトーシス細胞に関連する核の変化をモニタリングおよび定量するためにフローサイトメトリーアッセイが使用され得る。
【0110】
本発明の化合物および方法により治療可能な望ましくないおよび/または過剰な細胞死に関連する状態としては、限定されないが、過剰な細胞死に関連する神経変性疾患(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、癲癇)、過剰な細胞死に関連する血液学的疾患(例えば、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、T CD4+リンパ球減少、G6PD欠損)、過剰な細胞死に関連する組織損傷(例えば、心筋梗塞、脳血管障害、虚血性腎臓損傷、多嚢胞性腎疾患)、AIDSおよび子癇前症が挙げられる。
【0111】
本発明はまた、薬学的に許容され得る担体または希釈剤、および開示される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグの1つ以上を含む組成物に関する。本明細書に開示される組成物は、標準的な手順に従って調製され、治療される状態を低減、予防、消失、または治療される状態の進行を遅延もしくは停止するように選択される用量で投与される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、17版、Remington, J. P., Easton, PA, Mack Publishing Company, 2005、およびGoodman and Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics、12版、Brunton, L. et. als., 編、New York, McGraw-Hill, 2010参照(ヒトの治療のための種々の薬剤の投与のための方法の一般的な記載について、その内容は参照により本明細書に援用される)。本発明の組成物は、制御放出送達系または持続放出送達系(例えば、カプセル、生体腐食性(bioerodable)マトリックス)を使用して送達され得る。本発明の組成物の投与に適した薬物送達のための例示的な遅延放出送達系は、米国特許第5,990,092号(Walsh);第5,039,660号(Leonard);第4,452,775号(Kent);および第3,854,480号(Zaffaroni)に記載される。
【0112】
本発明の組成物は、構造式(I)および/または(Ia)の1つ以上の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグと共に、本明細書においてまとめて「担体」物質と称される1つ以上の非毒性で薬学的に許容され得る担体および/または希釈剤および/または補助薬および/または賦形剤、ならびに任意に他の有効成分を含む。該組成物は、投与方法に応じて約0.01重量%〜約99重量%の有効成分を含み得る。
【0113】
本発明の化合物からの組成物の調製のために、薬学的に許容され得る担体は、固体または液体のいずれかであり得る。固形製剤としては、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、カシェ剤、坐剤および分散性顆粒が挙げられる。例えば、本発明の化合物は、送達時の再構成のために粉末形態であり得る。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑剤、懸濁剤、結合剤、保存剤、錠剤分解剤または封入物質としても作用し得る1つ以上の物質であり得る。粉末において、該担体は、微細化された有効成分との混合物中にある微細化された固体である。
【0114】
錠剤において、有効成分は、好適な割合で必要な結合特性を有する担体と混合され、所望の形状およびサイズに成形する(compacted)。
【0115】
粉末および錠剤は、好ましくは約1〜約70%の有効成分を含む。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバター等である。錠剤、粉末、カシェ剤、トローチ剤、高速溶解性ストリップ(fast-melt strip)、カプセルおよび丸薬が、経口投与に適した有効成分を含む固形剤型として使用され得る。
【0116】
液体型製剤としては、溶液、懸濁液、停留浣腸剤およびエマルジョン、例えば水または水プロピレングリコール溶液が挙げられる。非経口注射剤のために、液体製剤は、ポリエチレングリコール水溶液中に調製され得る。
【0117】
経口投与に適した水溶液は、有効成分を水に溶解し、所望の場合好適な着色剤、香味剤、安定化剤および増粘剤を添加することにより調製され得る。経口投与のための水性懸濁物は、微細化された有効成分を、天然ゴムまたは合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび他の周知の懸濁剤などの粘性材料を有する水中に分散することにより調製され得る。
【0118】
代替的に、本発明の化合物または組成物は、送達時の再構成のために粉末形態であり得る。
【0119】
該組成物は、好ましくは単位剤型である。かかる形態において、該組成物は、好適な量の有効成分を含む単位用量に細分化される。単位剤型は、封入された製剤、例えば個別用量となった錠剤、粉末およびカプセルをバイアルまたはアンプル中に含むパッケージであり得る。また、単位剤型は、錠剤、カシェ剤、カプセルまたはトローチ剤自体であり得るか、または好適な量のこれらのパッケージ形態のいずれかであり得る。単位剤型中の有効成分の量は、約0.1mg〜約1000mg、好ましくは(例えば、静脈内投与のために)約0.1mg〜約100mgまたは(例えば経口投与のために)約1.0mg〜約1000mgで変化し得るかまたは調整され得る。しかしながら用量は、被験体の必要性、治療される状態の重症度、使用される化合物および投与経路に応じて変化し得る。特定の状況について好適な用量を決定することは、当該技術分野の範囲内である。一態様において、用量は、約0.01mg/kg〜約100mg/kgである。
【0120】
一般的に、本発明の開示される化合物および医薬組成物をインビボにて送達する方法には、実質的な手順の改変が当該技術分野におけるプロトコルにおける薬物のための開示された化合物のいずれかで表される化合物の置換のみである、当該技術分野における薬剤を送達するプロトコルが利用される。
【0121】
本発明の化合物は、好ましくは任意の経路に適用される組成物の形態で、任意の経路により投与され得、治療される状態に依存する。該化合物および組成物は、例えば、血管内、筋肉内、皮下、腹腔内、心臓内、経口または局所で投与され得る。以下の剤型が、有効成分として、本発明の化合物または対応する化合物の薬学的に許容され得る塩のいずれかを含み得ることが当業者には明らかである。本発明の化合物の投与の好ましい方法としては、静脈内投与および経口投与が挙げられる。
【0122】
経口投与のために、組成物は、例えば錠剤、カプセル、懸濁剤または液体の形態であり得る。該組成物は、好ましくは有効量の有効成分を含む用量単位の形態で作製される。かかる用量単位の例は、錠剤およびカプセルである。治療目的で、錠剤およびカプセルは、有効成分に加えて、結合剤、例えばアカシア、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ソルビトールまたはトラガカント;充填剤、例えばリン酸カルシウム、グリシン、ラクトース、トウモロコシデンプン、ソルビトールまたはスクロース;滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカまたはタルク;崩壊剤、例えばジャガイモデンプン、香味剤もしくは着色剤、または許容され得る湿潤剤などの従来の担体を含み得る。一般的に、水溶液または油性溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップまたはエリクシルの形態の経口液体製剤は、懸濁剤、乳化剤、非水性剤、保存剤、着色剤および香味剤などの従来の添加剤を含み得る。液体製剤のための添加剤の例としては、アカシア、アーモンド油、エチルアルコール、分別(fractionated)ココナッツ油、ゼラチン、グルコースシロップ、グリセリン、硬化食用油、レシチン、メチルセルロース、メチルもしくはプロピルパラ-ヒドロキシ安息香酸、プロピレングリコール、ソルビトールまたはソルビン酸が挙げられる。
【0123】
該組成物は、例えば注射により非経口的にも投与され得る。非経口投与のための製剤は、水性または非水性等張滅菌注射溶液または懸濁液の形態であり得る。これらの溶液または懸濁液は、経口投与のための製剤における使用のための滅菌粉末または1つ以上の上述の担体を有する顆粒から調製され得る。該化合物は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウムおよび/または種々のバッファ中に溶解され得る。
【0124】
送達は、患者の脳もしくは体腔への注射によって、または長時間放出もしくは持続放出マトリックスデリバリーシステムによって、またはミセル、ゲルおよびリポソームを使用したオンサイト(onsite)送達によってもなされ得る。噴霧デバイス、粉末吸入器およびエアゾール溶液は、かかる製剤を気道へと投与するために使用され得る方法の代表例である。送達は、インビトロ、インビボまたはエクソビボであり得る。
【0125】
虚血、虚血性傷害または虚血-再灌流傷害を、本発明の化合物および/または組成物を用いて治療するための投与養生法は、被験体の種類、年齢、体重、性別および医療状態、虚血-再灌流傷害の重症度、投与経路および投与頻度、ならびに使用される具体的な化合物または組成物などの種々の要因に従って選択される。一般的に、用量は、虚血-再灌流傷害関連疾患を治療するための正確な用量を最適化するための標準的な実務に従って決定される。
【0126】
被験体に提供される本発明の化合物の用量は、患者の要件、治療される状態の重症度、投与経路および使用される化合物に応じて変化し得る。特定の状況について好適な用量を決定することは、当該技術分野の範囲内である。例えば、ヒトへの投与のための好適な用量は、動物(例えばラット)モデルにおいて行った実験で得られたデータから推定され得る。ヒト用量に非ヒト動物モデル用量データを外挿するための手引きは、例えばFDA Draft Guidance: Estimating the Safe Starting Dose in Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers (2005)にみられ得る。
【0127】
例えば、本発明の化合物の好適な静脈内用量は、治療1回あたり約0.001mg/体重kg〜約100mg/体重kg、約0.01mg/体重kg〜約100mg/体重kg、約0.01mg/体重kg〜約10mg/体重kg、約0.01mg/体重kg〜約1mg/体重kgであり得る。特定の薬剤、患者および虚血または虚血-再灌流傷害について投与の用量および経路を決定することは、充分に当業者の能力の範囲内である。好ましくは、該用量は、最少の有害副作用すらも引きこさないかまたは生じない。
【0128】
本発明の化合物の有効量は、単独で投与され得、または1つ以上の他の治療剤と併用して投与され得る。本発明の化合物と併用して投与され得る虚血性傷害を治療するために有用な好適な治療剤としては、限定されないが、カルシウムチャネル遮断薬、β遮断薬、ニトログリセリン、アスピリン、抗炎症剤、ナトリウム排泄増加剤、血管拡張剤、血栓崩壊剤および抗トロンビン剤が挙げられる。
【0129】
したがって、本発明の化合物は、併用療法の一部として(例えば1つ以上の他の治療剤と共に)投与され得る。本発明の化合物は、1つ以上の他の治療の前、後または同時に投与され得る。いくつかの態様において、本発明の化合物および他の治療剤は、別々の製剤としてまたは合剤としてのいずれかで同時に(simultaneously)(例えば同時並行に(concurrently))共投与され得る。代替的に、該薬剤は、当該技術分野の臨床医に測定された場合(例えば、治療の薬効の重複を可能にするのに充分な時間で)、好適な時間枠内で、別々の組成物として連続して投与され得る。本発明の化合物および1つ以上の他の治療剤は、単回用量または多数回用量で、ある順序で、所望の治療効果(例えば、複合炎症(joint inflammation)の低減および/または阻害;虚血の低減および/または阻害;虚血性傷害の低減および/または阻害;虚血-再灌流傷害の低減および/または阻害)を達成するのに好適なスケジュールで投与され得る。投与の好適な用量および養生法は、臨床医により決定され得、選択される薬剤(1つまたは複数)、医薬製剤および投与経路、種々の患者要因および他の理由に依存する。
【0130】
当業者は、測定されるパラメータ(1つまたは複数)のための標準的なアッセイを使用して、被験体の治療の前後に被験体の生化学的パラメータまたは生理学的パラメータを測定して、虚血性傷害または虚血-再灌流傷害を治療するための化合物の効力を容易に評価し得る。例えば、本発明の化合物の効力は、虚血性傷害または虚血-再灌流傷害の前後の種々の時点で被験体から得られた血液試料中の特定の心臓の酵素(例えばクレアチン(creatine)キナーゼ(CK-MB)、トロポニンT、トロポニンI)などの代理(surrogate)心臓バイオマーカーのレベルを分析することにより、決定され得、酵素のレベルの統計学的に有意な減少は、傷害の治療において化合物が効力を有することを示す。例示的な評価において、傷害の前(例えば傷害の約6〜約48時間前)に被験体から1つ以上の血液試料を回収し、CK-MBおよびトロポニンTのレベルについて分析する。次いで、傷害後の種々の時点(例えば傷害後の6.0、12.0、18.0および24.0時間)で被験体から血液試料を得て、CK-MBおよびトロポニンTのレベルを1つ以上のこれらの試料中で分析する。
【0131】
本発明の化合物の効力はまた、心電図(ECG)モニタリングによっても決定され得る。例えば、被験体と投与前(例えば投与の約5分前)の電子データ保存する連続12リード(lead)ECGモニタリングデバイスとを適合させた後、標準的な連続12リードECGモニタリングを行い得る。次いで、傷害の前後(例えば傷害後約24時間まで)のECGの記録(reading)を入手し得る。異常ECGトレースから正常ECGトレースへの変化(例えば、上昇したST区分の減少)は、化合物が傷害の治療において効力を有することを示す。
【0132】
また、本発明の化合物の効力は、当該技術分野で公知の方法に従って、リスクのある(at risk)虚血の面積(AR)に対する心筋梗塞の面積(MI)の割合を決定することによっても評価され得、MI/AR比の統計学的に有意な減少は、化合物が傷害の治療において効力を有することを示す。
【実施例】
【0133】
実施例
本発明を一般的に記載してきたが、本発明者らは、以下の実施例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明の特定の態様の単なる例示に過ぎず、例示された態様には限定されない。
【0134】
実施例1. 本発明の選択化合物の代表的な合成
RLip-Tauの合成。Rリポ酸(RLip-OH、10.0g)をアセトンに溶解した(100mL、10mL/g)。反応フラスコをホイルで覆って溶液を直射光から保護した。N,N-ジスクシンイミジルカルボネート(15.5g、1.25等量)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、10.5mL、1.25等量)を順次添加し、反応物を室温で2時間、撹拌して排気し(vented)、インサイチュでLip-OSuを形成した。タウリン(7.0g、1.15等量)を、アセトン中でLip-OSuの溶液に添加し、次いで水(50mL)およびDIEA(19.4mL、2.3等量)を添加した。合わせた溶液を一晩撹拌した。粗製反応混合物の約1/3を回転蒸発器に移し、約半分の体積まで減少させた。残りの反応混合物を、半分取用高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)系に複数回直接注入し、生成物を、水中の上昇アセトニトリル(0.5%酢酸)の勾配(0.5%酢酸)を使用して、YMC Pack Pro C18逆相カラムで単離した。生成物含有画分を分析HPLCで同定して、凍結し、凍結乾燥して、ゴム状固体として>95% HPLC純度(220nmでのパーセント面積)の2.16g Lip-Tauを得た。生成物
1H NMRは割り当てられた構造と矛盾がなく、生成物は観察された質量312(M-1)、計算値313を有した。
【0135】
RLip-Tauリジン塩の合成。半分取用逆相クロマトグラフィーで単離して、凍結乾燥したRLip-Tau(2.16g)を、70mLエタノールに溶解した。水(3.0mL)をエタノール溶液に添加して、次いでL-リジン(1.33g、1等量)を添加した。溶液を一晩振盪して、ろ過し、15mLエタノールで2回すすいだ。単離された生成物を真空下で乾燥して、>95% HPLC純度(220nmでのパーセント面積)の3.1gのRLip-Tauリジン塩を得た。生成物
1H NMRは割り当てられた構造と矛盾がなかった。
【0136】
本発明の例示的な化合物の化学名および構造を表Aに記載する。表Bは、表Aの化合物についての核磁気共鳴(NMR)データ、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)データおよび質量分光学データを含む。
【0137】
【表A-1】
【表A-2】
【表A-3】
【表A-4】
【0138】
【表B-1】
【表B-2】
【表B-3】
【0139】
実施例2. MI/AR傷害のラットモデルにおける本発明の選択リポイル化合物の効力。
【0140】
材料および方法
MI/AR傷害のラットモデルをインビボスクリーニングとして使用し、表1〜5の化合物が(例えば、心筋虚血-再灌流傷害に対して)心臓保護性(cardio-protective)であるかどうかを決定した。このモデルは、冠動脈閉塞、および冠動脈バイバス移植(CABG)などの心臓外科的手術後の心臓病患者において見られる虚血-再灌流傷害と類似する(Matsui, T., Tao, J., del Monte, F., Lee, K.-H. et al., Akt Activation Preserves Cardiac Function and Prevents Injury After Transient Cardiac Ischemia In vivo, Circulation 2001, 104:330、該文献の教示はその全体において参照により本明細書に援用される)。
【0141】
一般的な手順
左冠状動脈(LCA)の回旋枝を一時的に縛り、左心室塊で局所的な虚血を誘導し、次いで蛍光マイクロスフィアを注射して、虚血領域の輪郭を描いた。結紮の15分前(前閉塞、前虚血症状)、表1〜5の化合物を動物に投与した。表1〜5に記載の化合物の用量は、1〜20mg/kgの範囲であった。再灌流の約24時間後、動物を屠殺して、心臓を摘出し、切片を作製し、トリフェニルテトラゾリウムで染色した。心筋梗塞面積(MI)、リスクのある虚血面積(AR)および左心室面積(LV)を測定して、医薬介入の直接の影響力を決定した。ARに対するMIの減少(MI/AR比)を、ビヒクル対照に対する薬効の主要な基準として使用した。結果を表1〜5に示す。
【0142】
【表1】
【0143】
【表2】
【0144】
【表3】
【0145】
【表4】
【0146】
【表5】
【0147】
詳細な手順
300〜350gの雄Sprague-Dawleyラットをこれらの実験に使用した。誘導チャンバー中で3〜4%イソフルランを用いて麻酔を導入した。誘導後、麻酔は、1.5〜2.0%のイソフルランを用いて外科的水準で維持し、16ゲージの血管カテーテルを介したRodent Ventilatorによって投与し、気管に経口的に導入した。該人工呼吸器は、2.5ccで、1分あたり60〜65呼吸の速度で設定し、手術の間に人工呼吸を維持した。動物のコア温度をモニタリングして、直腸プローブおよび温度調節器に取り付けた加熱ランプを使用して37℃に維持した。
【0148】
左前開胸術を行って、垂直心膜切開術により心臓を露出させた。11mmの針上の心臓血管7.0モノフィラメント縫合糸を使用して、大動脈から約4mmで左冠動脈回旋枝(LCx)を縛って左心室に虚血を誘導した。
【0149】
結紮の10〜20分後に蛍光マイクロスフィア(300μL)を左心室腔に注射して、虚血領域の輪郭を描いた。結紮の30分後に縫合糸を取り除き、虚血領域を再灌流し、再灌流について虚血領域を調べた。
【0150】
次いで筋肉層について吸収性縫合糸(Dexon 5-0)を使用して層中で胸部を閉じ、モノフィラメントナイロン5-0縫合糸を使用して、皮膚層を閉じた。動物を回復させ、その後コロニーに戻した。
【0151】
再灌流の24時間後、塩酸ケタミンを使用して麻酔を誘導し、胸部を開いた。15%塩化カリウム水溶液(w/v)をLV腔に注射して動物を屠殺し、心臓を拡張期において停止させた。大動脈弁の遠位で心臓を摘出し、食塩水で洗浄して血液を取り除いた。心室の基部と尖の間で心臓の矢状切片を得た。心臓組織の5枚の切片はそれぞれ2mmの厚さで得た。該切片を食塩水中の1%の2,3,5-トリフェニル-2H-テトラゾリウムクロライド(TTC)に浸漬し、次いで暗所で30分間保存して染色した。
【0152】
(TTC染色を観察するため)明視野下および(マイクロスフィアを観察するため)蛍光下で切片の画像を得た。リスクのある面積はマイクロスフィアの非存在により決定し、梗塞面積はTTC染色の非存在により決定した。
【0153】
結果
静脈内注射として投与した表1〜5の化合物は、リスクのある面積(AR)に対して心筋梗塞(MI)のサイズを効果的に減少した。心臓損傷の面積の有意な減少は、表1〜5の化合物での処理後に心筋組織切片中で観察された。
【0154】
実施例3. 虚血誘導腎臓傷害のPACラットモデルにおける本発明の選択リポイル化合物の効力。
材料および方法
虚血誘導腎臓傷害の部分大動脈クランプ(PAC)ラットモデルを、RLip-EA-OH(項目1)、RLip-Cya-OH(項目10)、RLip-Tau(項目13)およびRLip-アミノエチルホスホン酸(項目15)が(例えば、腎臓虚血-再灌流傷害に対して)腎臓保護的(renal-protective)であるかどうかを決定するためのインビボスクリーニングとして使用した。このモデルは、虚血誘導腎不全後の腎臓患者において観察される虚血-再灌流傷害を模擬する(Molitoris, B.A., Dagher, P.C., Sandoval, R.M., Campos, S.B., Ashush, H., Fridman, E., Brafman, A. Faerman, A., Atkinson, S.J., Thompson, J.D., Kalinski, H., Skaliter, R., Erlich, S., Feinstein, E. 「siRNA Targeted to p53 Attenuates Ischemic and Cisplatin-Induced Acute Kidney Injury.」 J Am Soc Nephrol, 2009, vol. 20, 1754-1764、該文献の教示はその全体に対して参照により本明細書に援用される)。血清クレアチニン濃度(SCr)は通常、腎臓虚血により上昇し、効果的な治療は血清クレアチニン濃度の減少を示すはずである。腎臓虚血誘導後の血清クレアチニン濃度の減少は、投与された化合物が保護効果を有し、虚血誘導腎臓傷害の低減に効果的であることを示す。
【0155】
一般的な手順
腎臓動脈の直下の腹部大動脈を切り離し、一時的に縛って、大動脈クランプを使用して局所的な虚血を誘導した。最初の血液試料は、ベースラインクレアチニン測定についての試験開始時および腎臓傷害の重症度の機能的評価のための手術の24時間後に抜き取った。再灌流の約24時間後に動物を屠殺した。
【0156】
詳細な手順
200〜250gの雄Sprague-Dawleyラットをこれらの実験に使用した。麻酔は、5%ハロタンを用いて誘導し、酸素濃縮空気中の1〜1.5%ハロタンを用いてフェイスマスクにより維持した。該手順を通してラットを温かいブランケット上で維持し、体温を37℃に維持した。ラットの腹部の毛を剃った後、皮膚および筋系を通って正中切開を行い、腹部腔を露出させ、大動脈血流(ABF)を定量した。
【0157】
腎臓動脈の直下の腹部大動脈を、鈍的切開により下大静脈から切り離し、超音波プローブ(2.0mm直径、Transit Time Perivascular Flowmeter TS420)を配置して固定した。次いで鈍的切開により上部腹部大動脈を切り離し、周囲の構造から離して腹腔動脈と上腸間膜動脈の間の大動脈を露出させた。
【0158】
次いで、2本の4mm長ポリエチレンチューブ(PE-100、0.86mm直径)で構成される大動脈クランプを大動脈の周りに配置して、腎臓虚血を誘導した。1本のクランプを大動脈の周りに配置して、もう1本を、10インチの3.0シルク縫合糸を介して可変性の張力を発揮するように配置した。次いで、シルク糸を結んで糸の2つの端にかかる張力を、超音波プローブ読み取り機で測定した初期の(ABF)速度の90%低下になるまで増加させた。10%ベースライン血流を30分間維持した。
【0159】
RLip-EA-OH(項目1)、10mg/kg;RLip-Cya-OH(項目10)、3mg/kg;RLip-Tau(項目13)、3mg/kg;ならびにRLip-アミノエチルホスホン酸、10mg/kg、3mg/kgおよび1mg/kgを、虚血の15分前にボーラス投与として大腿静脈を介して静脈内投与した。0.15mLの静脈血試料を、ベースラインクレアチニン測定のために試験開始時、および腎臓傷害の重症度の機能的評価のために手術の24時間後に抜き取った。次いでクレアチニン分析器2で血清クレアチニン濃度を測定した。マスク研究におけるビヒクル処理動物の結果に対するRLip-EA-OHおよびRLip-Tauの効力を測定した。2尾部t検定を使用して、処理の間の差を決定した。
【0160】
結果
静脈内投与したRLip-EA-OH(項目1)、RLip-Cya-OH(項目10)、RLip-Tau(項目13)およびRLip-アミノエチルホスホン酸(項目15)は、表6に示すように対照動物と比較して、血清クレアチニン濃度を効果的に低減した。処理後のSCrのこの減少は、RLip-EA-OH、RLip-Cya-OH、RLip-TauおよびRLip-アミノエチルホスホン酸が、保護効果を有し、腎臓虚血性傷害を最小化することを示した。表6の最後の欄に示した心臓傷害の減少についてのデータは、実施例2に記載される手順を使用して得た。
【0161】
【表6】
【0162】
本明細書に引用される全ての特許、公開出願および参考文献の関連のある教示は、その全体において参照により援用される。
【0163】
本発明は、その例示態様に関して具体的に示され、記載されるが、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲を逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が本発明中になされ得ることを当業者は理解しよう。
【0164】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1](S)-リポイル立体異性体(1つまたは複数)またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグとは実質的に区別される、構造式(I):
【化16-1】
(式中:
Rは、(C
1-C
18)アルキル、(C
6-C
18)アリールまたは(C
6-C
18)アリール(C
1-C
18)アルキルであり、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される少なくとも1つの酸性置換基で置換され、ここで(C
6-C
18)アリールまたは(C
6-C
18)アリール(C
1-C
18)アルキルのアリールは、任意にさらに、ヒドロキシ、ハロ、(C
1-C
3)アルキル、ハロ(C
1-C
3)アルキル、シアノ、ニトロ、(C
1-C
3)アルコキシおよびチオ(C
1-C
3)アルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換され;
R'は、水素または(C
1-C
18)アルキルであり、ここで(C
1-C
18)アルキルは、任意に、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される1つ以上の酸性置換基で置換され;
Xは、非存在であるかまたはアミノ酸であり、ここでアミノ酸は、
【化16-2】
とアミド結合を形成するように配向される)
で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグであって、
ただし構造式(I)の化合物が、N-(R)-リポイル-グルタミルアラニン、N-(R)-リポイル-アミノエチルホスホン酸または(R)-5-(5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタンアミド)-2-ヒドロキシ安息香酸ではないものとする、化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[2]Rが(C
1-C
3)アルキルである、[1]記載の化合物。
[3]Rが(C
6)アリールである、[1]記載の化合物。
[4]Rが(C
6)アリール(C
1-C
3)アルキルである、[1]記載の化合物。
[5]Xがアミノ酸であり、R'が水素である、[1]〜[4]いずれか記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[6]Xが、アスパラギン酸、チロシン、グルタミン酸またはアラニンである、[1]〜[5]いずれか記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[7]Rが、それぞれ独立して-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つまたは2つの酸性置換基で置換される(C
1-C
3)アルキルである、[1]〜[6]いずれか記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[8]Xが非存在であり、R'が水素である、[1]記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[9]Rが、それぞれ独立して-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つまたは2つの酸性置換基で置換された(C
1-C
3)アルキルである、[8]記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[10]Rが、それぞれ独立して-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つまたは2つの酸性置換基で置換された(C
6)アリール(C
1-C
3)アルキルであり、アリールが、任意にハロおよびヒドロキシで置換される、[8]記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[11]Rが、それぞれ独立して-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つまたは2つの酸性置換基で置換された(C
2)アルキルである、[8]記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[12]Rが、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つの酸性置換基で置換された(C
6)アリールである、[8]記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[13]R'が(C
1-C
3)アルキルである、[1]記載の化合物。
[14]Xが非存在であり、RおよびR'がそれぞれ、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つの酸性置換基で置換された(C
1-C
3)アルキルである、[1]、[2]または[13]記載の化合物。
[15]薬学的に許容され得る塩が、一価のカチオンまたは二価のカチオンを含む、[1]〜[14]いずれか記載の化合物。
[16]薬学的に許容され得る塩がアミンを含む、[1]〜[14]いずれか記載の化合物。
[17]薬学的に許容され得る塩がリジンを含む、[1]〜[14]いずれか記載の化合物。
[18]以下の構造式:
【化16-3-1】
【化16-3-2】
【化16-3-3】
の1つで表される、[1]記載の化合物。
[19]薬学的に許容され得る担体または希釈剤、および[1]〜[18]いずれか記載の1つ以上の化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグを含む組成物。
[20]虚血性傷害または虚血-再灌流傷害の治療を必要とする被験体に、[19]記載の組成物の有効量を投与する工程を含む、該被験体における虚血性傷害または虚血-再灌流傷害の治療方法。
[21]虚血性傷害または虚血-再灌流傷害の治療を必要とする被験体に、構造式(Ia):
【化16-4】
(式中:
Rは、(C
1-C
18)アルキル、(C
6-C
18)アリールまたは(C
6-C
18)アリール(C
1-C
18)アルキルであり、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される少なくとも1つの酸性置換基で置換され、ここで(C
6-C
18)アリールまたは(C
6-C
18)アリール(C
1-C
18)アルキルのアリールは、任意にさらに、ヒドロキシ, ハロ、(C
1-C
3)アルキル、ハロ(C
1-C
3)アルキル、シアノ、ニトロ、(C
1-C
3)アルコキシおよびチオ(C
1-C
3)アルキルからなる群より選択される1つ以上の置換基で置換され;
R'は、水素または(C
1-C
18)アルキルであり、ここで(C
1-C
18)アルキルは、任意に-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3H、-OPO
3H
2、-B(OH)
2および-NHOHからなる群より選択される1つ以上の酸性置換基で置換され;
Xは非存在であるか、またはアミノ酸であり、ここでアミノ酸は、
【化16-5】
とアミド結合を形成するように配向される)
で表される化合物またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグの有効量を投与する工程を含む、該被験体における虚血性傷害または虚血-再灌流傷害の治療方法であって、
ただし構造式(Ia)の化合物が、N-リポイル-グルタミルアラニン、N-リポイル-アスパルチルグリシン、N-リポイル-グルタミルグリシンまたは5-(5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタンアミド)-2-ヒドロキシ安息香酸ではないものとする、方法。
[22]化合物が、構造式(Ia)で表される化合物の(R)-リポイル立体異性体またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグであり、実質的に(S)-リポイル立体異性体(1つまたは複数)またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグとは区別される、[21]記載の方法。
[23]Rが(C
1-C
3)アルキルである、[21]または[22]記載の方法。
[24]Rが(C
6)アリールである、[21]または[22]記載の方法。
[25]Rが(C
6)アリール(C
1-C
3)アルキルである、[21]または[22]記載の方法。
[26]Xがアミノ酸であり、R'が水素である、[21]〜[25]いずれか記載の方法またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[27]Xが、アスパラギン酸、チロシン、グルタミン酸またはアラニンである、[21]〜[26]いずれか記載の方法またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[28]Rが、それぞれ独立して-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つまたは2つの酸性置換基で置換された(C
1-C
3)アルキルである、[21]〜[27]いずれか記載の方法またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[29]Xが非存在であり、R'が水素である、[21]または[22]記載の方法またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[30]Rが、それぞれ独立して-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つまたは2つの酸性置換で置換された(C
1-C
3)アルキルである、[29]記載の方法またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[31]Rが、それぞれ独立して-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つまたは2つの酸性置換基で置換された(C
6)アリール(C
1-C
3)アルキルであり、アリールが、任意にハロまたはヒドロキシで置換される、[29]記載の方法またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[32]Rが、それぞれ独立して-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つまたは2つの酸性置換基で置換された(C
2)アルキルである、[29]記載の方法またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[33]Rが、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つの酸性置換基で置換された(C
6)アリールである、[29]記載の方法またはその薬学的に許容され得る塩もしくはプロドラッグ。
[34]R'が(C
1-C
3)アルキルである、[21]または[22]記載の方法。
[35]Xが非存在であり、RおよびR'がそれぞれ、-CO
2H、-SO
3H、-PO
3H
2、-OSO
3Hおよび-OPO
3H
2から選択される1つの酸性置換基で置換された(C
1-C
3)アルキルである、[21]、[22]、[23]または[34]記載の方法。
[36]薬学的に許容され得る塩が、一価のカチオンまたは二価のカチオンを含む、[21]〜[35]いずれか記載の方法。
[37]薬学的に許容され得る塩がアミンを含む、[21]〜[35]いずれか記載の方法。
[38]薬学的に許容され得る塩がリジンを含む、[21]〜[35]いずれか記載の方法。
[39]化合物が、以下の構造式:
【化16-6-1】
【化16-6-2】
【化16-6-3】
の1つで表される、[21]または[22]記載の方法。
[40]虚血-再灌流傷害が、脳血管性虚血-再灌流傷害、腎性虚血-再灌流傷害、肝性虚血-再灌流傷害、虚血-再灌流心筋症、皮膚虚血-再灌流傷害、腸(bowel)虚血-再灌流傷害、腸(intestinal)虚血-再灌流傷害、胃虚血-再灌流傷害、肺性虚血-再灌流傷害、膵臓虚血-再灌流傷害、骨格筋虚血-再灌流傷害、腹筋虚血-再灌流傷害、四肢虚血-再灌流傷害、虚血-再灌流大腸炎、腸間膜虚血-再灌流傷害および無症候性虚血-再灌流傷害からなる群より選択される、[21]〜[39]いずれか記載の方法。
[41]虚血性傷害が心筋虚血性傷害である、[21]〜[39]いずれか記載の方法。
[42]虚血性傷害が、心臓血管虚血、脳血管性虚血、腎性虚血、肝性虚血、虚血-再灌流心筋症、皮膚虚血、腸(bowel)虚血、腸(intestinal)虚血、胃虚血、肺性虚血、膵臓虚血、骨格筋虚血、腹筋虚血、四肢虚血、虚血-再灌流大腸炎、腸間膜虚血および無症候性虚血からなる群より選択される虚血の結果である、[21]〜[39]いずれか記載の方法。
[43]虚血-再灌流傷害が心筋虚血-再灌流傷害である、[21]〜[39]いずれか記載の方法。
[44]心筋虚血-再灌流傷害が心筋梗塞の結果である、[43]記載の方法。
[45]心筋梗塞が急性心筋梗塞である、[44]記載の方法。
[46]虚血-再灌流傷害が脳虚血-再灌流傷害である、[21]〜[39]いずれか記載の方法。
[47]脳虚血-再灌流傷害が脳卒中の結果である、[46]記載の方法。
[48]虚血性傷害または虚血-再灌流傷害が手術時の心臓の損傷を含む、[21]〜[39]いずれか記載の方法。
[49]虚血-再灌流傷害が腎性虚血-再灌流傷害である、[21]〜[39]いずれか記載の方法。
[50]虚血性傷害または虚血-再灌流傷害が治療介入の結果である、[21]〜[39]いずれか記載の方法。
[51]治療介入が、冠状動脈バイパス移植手術、冠状血管形成手術、移植手術および心肺バイパス手術からなる群より選択される、[21]〜[39]いずれか記載の方法。
[52]被験体がヒトである、[21]〜[39]いずれか記載の方法。
[53]化合物またはその薬学的に許容され得る塩が被験体に経口投与される、[21]〜[39]いずれか記載の方法。
[54]化合物またはその薬学的に許容され得る塩が被験体に静脈内投与される、[21]〜[39]いずれか記載の方法。