特許第6280178号(P6280178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6280178外科用安定化プレートおよびそれを埋め込む方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6280178
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】外科用安定化プレートおよびそれを埋め込む方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20180205BHJP
   A61B 17/80 20060101ALI20180205BHJP
   A61B 17/86 20060101ALI20180205BHJP
【FI】
   A61B17/70
   A61B17/80
   A61B17/86
【請求項の数】21
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-191065(P2016-191065)
(22)【出願日】2016年9月29日
(62)【分割の表示】特願2013-530508(P2013-530508)の分割
【原出願日】2011年9月22日
(65)【公開番号】特開2017-60774(P2017-60774A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2016年10月26日
(31)【優先権主張番号】61/394,580
(32)【優先日】2010年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/388,243
(32)【優先日】2010年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511206559
【氏名又は名称】スパインウェルディング・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SPINEWELDING AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ベンガー,アンドレアス
【審査官】 近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−518499(JP,A)
【文献】 特表2011−525377(JP,A)
【文献】 特表2009−504280(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0154310(US,A1)
【文献】 特表2008−543434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用安定化プレート(121)であって、
脊柱の腹側に配置されて、2つ以上の異なる椎体に取付けられることによって人または動物の脊柱を安定させるためのプレート部分(122)を備え、
さまざまな椎体に係止されるよう適合された複数の固定部分(124)をさらに備え、
前記複数の固定部分(124)のうちの少なくとも1つの固定部分(124)プレート部分(122)に堅固に接続され、近位側からアクセス可能な長手方向開口部と、長手方向開口部から外部に達する少なくとも1つの孔(14)とを備え、
外科用安定化プレート(121)はさらに、前記長手方向開口部および前記少なくとも1つの孔(14)を備えた前記少なくとも1つの固定部分(124)ごとに、前記固定部分(124)に挿入されるかまたは挿入可能な熱可塑性要素(21)を含み、熱可塑性要素(21)は、熱可塑性要素(21)に作用するエネルギによって液化可能であり、
孔(14)は、液化された熱可塑性材料を、当該孔(14)を通じて、固定部分(124)を係止すべき椎体の骨組織内へと押込むことができるように、位置決めされ、
少なくとも1つの固定部分(124)が、固定部分本体からの翼状突起(126)を含む非円形の断面を有することにより、外科用安定化プレート(121)に対する機械的負荷を吸収することのできる安定化構造を含み、
固定部分(124)がプレート部分(122)と一体である、外科用安定化プレート。
【請求項2】
翼状突起(124)が、隣接する骨を接続する方向に対して垂直な方向に延在する、請求項1に記載の外科用安定化プレート。
【請求項3】
少なくとも1つの穴(14)が、頭側―尾側方向に沿って方向付けられている、請求項1または2に記載の外科用安定化プレート。
【請求項4】
少なくとも1つの孔(14)は径方向の孔である、請求項1から3のいずれかに記載の外科用安定化プレート。
【請求項5】
前記少なくとも1つの固定部分(124)の前記固定部分本体の直径が、近位側から遠位部側まで減少する、請求項1から4のいずれかに記載の外科用安定化プレート。
【請求項6】
前記少なくとも1つの固定部分(124)の近位側から遠位部側まで、翼状突起(126)の横方向延在部が一定である、請求項5に記載の外科用安定化プレート。
【請求項7】
安定化構造は径方向の孔(14)の遠位側に安定化部分を含む、請求項3に記載の外科用安定化プレート。
【請求項8】
プレート部分(122)と少なくとも1つの径方向の孔(14)との間の距離は、再凝固の後に径方向の孔(14)を通って周囲の骨組織内に押出される液化材料が皮質下の係止をもたらすように、調整される、請求項7に記載の外科用安定化プレート。
【請求項9】
安定化部分の軸方向延在部は、プレート部分(122)と径方向の孔(14)との間の距離の少なくとも3分の2である、請求項7または8に記載の外科用安定化プレート。
【請求項10】
前記少なくとも1つの固定部分(124)の横断方向延在部は、上−下方向への延在部よりも大きい、請求項1から9のいずれかに記載の外科用安定化プレート。
【請求項11】
プレート部分(122)は胴部がくびれた形状を有する、請求項1から10のいずれかに記載の外科用安定化プレート。
【請求項12】
プレート部分(122)は非平面である、請求項1から11のいずれかに記載の外科用安定化プレート。
【請求項13】
プレート部分(122)は、隆起およびビードのうち少なくとも1つを含む、請求項12に記載の外科用安定化プレート。
【請求項14】
外科用安定化プレート(121)が、プレート部分(122)の角領域から中心に向かって延在し、中心に向かうにつれて低減するビード(131)を含む、請求項13に記載の外科用安定化プレート。
【請求項15】
プレート部分(122)が曲げられている、請求項1から14のいずれかに記載の外科用安定化プレート。
【請求項16】
プレート部分(122)は、横断面における中心領域が背側方向に向かって延在するように曲げられている、請求項15に記載の外科用安定化プレート。
【請求項17】
矢状面に沿う断面において、プレート部分(122)が腹側に向かって曲げられている、請求項15または16に記載の外科用安定化プレート。
【請求項18】
外科用安定化プレート(121)が、前方頚部用プレートである、請求項1に記載の外科用安定化プレート。
【請求項19】
固定部分(124)が互いに平行である、請求項1から18のいずれかに記載の外科用安定化プレート。
【請求項20】
固定部分(124)が、プレート部分(122)から、プレート部分(122)に対して直角以外の角度をなして延びる、請求項19に記載の外科用安定化プレート。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかに記載の外科用安定化プレート(121)をヒトを除く動物の脊椎に埋込む方法であって、
固定部分(124)が椎体の骨組織に突出るように外科用安定化プレート(121)を配置するステップと、
固定部分のうち1つの固定部分(124)の長手方向開口部に熱可塑性要素(21)を挿入するステップと、
熱可塑性要素(21)のうち少なくとも遠位部分を融解させるのに十分な振動時間にわたって、振動力で機械的振動を熱可塑性要素(21)に衝突させ、同時に、熱可塑性要素(21)を遠位側に向かって押して、液化材料を孔(14)から押出して周囲組織に押込んで、再凝固の後に骨組織に係止部を形成するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、医療技術の分野に関し、特に、外科用安定化プレートおよびそれをヒトを除く動物の脊椎に埋め込む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ねじが生体の骨組織に係止される場合、しばしば、骨の安定性が不十分になったり、骨への係止の安定性が不十分になったりするという問題が生じる。特に、骨梁組織においては、ねじに作用する如何なる負荷もほんの数個の骨梁にしか伝わらず、ねじと骨との接続箇所の耐荷重能力と、長期間の安定性とに対して悪影響を及ぼす。これは、特に、骨粗鬆症もしくは骨減少症の骨組織または脆くなった骨組織の場合には深刻である。
【0003】
この問題の一解決策として、ねじが安定しない組織にも適した代替的な係止方法の使用が挙げられる。公報WO02/069817、WO2004/017857、WO2008/034277およびWO2009/055952は、機械的振動を用いたり、機械的振動によって液化可能な熱可塑性材料を用いたりして骨組織にインプラントを係止することに関する。すなわち、熱可塑性材料は、振動していない表面に接触させたままで同時に振動させた場合に液化させることができる。熱可塑性材料は、骨組織に接していると、液化され、骨組織の細孔または空洞に押込まれて、再度凝固したときに骨組織と確実に嵌合して接続される。
【0004】
インプラントおよびインプラント係止プロセスの特別な一群の実施例は、被覆要素の長手方向開口部に挿入された(元の位置で予め組立てられているかまたは挿入された)液化可能な材料に基づいている。被覆要素は、被覆要素の壁に少なくとも1つの孔を含み、液化材料が、この孔を通り、長手方向開口部から、係止が所望される骨組織または他の硬組織もしくは硬組織置換材料の構造(細孔もしくは空洞または他の構造)に押込まれる。側方に開口部のある管またはスリーブ要素から液化材料を押出すこの原理は、たとえば、US7,335,205、US6,921,264、WO2009/055952、WO2009/010247、WO2009/010234およびPCT出願PCT/CH2009/000138に記載されており、そのすべてが引用によってこの明細書中に援用されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、外科用安定化プレートに関する。このようなプレートは、プレート部分および複数の固定部分を含み、固定部分のうちの少なくとも1つ(および、たとえばそれらすべて)は、プレート部分に堅固に接続され、近位側からアクセス可能な長手方向開口部と長手方向開口部から外部に達する少なくとも1つの孔とを備えた被覆要素を含む。安定化プレートはさらに、被覆要素ごとに、被覆要素に挿入されるかまたは挿入可能な熱可塑性要素を含み、熱可塑性要素は、たとえば、熱可塑性要素に作用する機械的エネルギによって液化可能である。
【0006】
一群の実施例においては、少なくとも1つの孔は径方向の孔である。径方向の孔は、それぞれの固定部分の遠位端とは異なる場所に配置されてもよいが、固定部分は、径方向の孔から遠位側に安定化部分を備えていてもよい。
【0007】
安定化部分の軸方向延在部は実質的なものであり得、たとえば、プレート部分と径方向の孔との間の距離の少なくとも3分の2であってもよく、または、プレート部分と径方向の孔との間の距離以上であってもよい。安定化部分は非円形の断面を有し得る。プレート部分と径方向の孔との間の距離は、たとえば、再凝固後に径方向の孔から押出されて周囲の骨組織に到達する液化材料がACPの皮質下の係止をもたらすように、調整される。
【0008】
このような安定化プレートの一例として前方頚部用プレート(ACP:anterior cervical plate)が挙げられる。この場合、プレート部分は、脊柱の前方に(腹側に)配置さ
れて、2つ以上の異なる椎体に取付けられることによって、人または動物の背骨を安定させることができる。このため、この場合の固定部分は、異なる椎体において係止されるよう定められている。
【0009】
本発明の局面に従うと、前方頚部用プレート(ACP)が提供される。ACPは、脊柱の腹側に配置されて、2つ以上の異なる椎体に取付けられることによって人または動物の背骨を安定させるためのプレート部分を備え、異なる椎体において係止されるよう適合された複数の固定部分をさらに備える。固定部分のうちの少なくとも1つは、プレート部分に堅固に接続され、近位側からアクセス可能な長手方向開口部と長手方向開口部から外部に達する少なくとも1つの孔とを備えた被覆要素を備える。前方頚部用プレートはさらに、被覆要素ごとに、被覆要素に挿入されるかまたは挿入可能な熱可塑性要素を含み、熱可塑性要素は、たとえば、熱可塑性要素に作用する機械的エネルギによって液化可能である。この場合、孔は、液化された熱可塑性材料を、当該孔を通じて、固定具を係止すべき椎体の骨組織内へと押込むことができるように、位置決めされる。少なくとも1つの固定部分は、前方頚部用プレートに対する機械的負荷を吸収することのできる安定化構造を含む。
【0010】
たとえば特に機械的な振動を受けた後、熱可塑性要素へのエネルギの衝突が停止し、骨組織に押込まれた液化材料が再度凝固し、これにより、固定部分とこれによりACPとに係止をもたらす。
【0011】
一群の実施例においては、少なくとも1つの孔、または複数の孔のうち少なくとも1つは径方向の孔である。
【0012】
安定化構造の安定化効果は、熱可塑性材料の係止効果に追加される効果である。この目的のために、第1のオプションに従った固定部分は、単純回転型シリンダからずれた構造的特徴を備える。たとえば、固定部分は、上/下方向よりも横断方向においてより大きな延在部を備えていてもよい。第1のオプションに加えて、または第1のオプションの代替例として、第2のオプションに従った固定部分は、径方向の孔がそれぞれの固定部分の遠位端には配置されていない点で、孔の遠位側に安定化部分を備え得る。安定化部分は非円形の断面を有してもよく、たとえば、上−下(頭側−尾側)方向よりも横(または横断)方向においてより大きな延在部を有してもよい。
【0013】
径方向の孔は、皮質下の係止を確実にするよう位置決めされ得る。概して、骨組織の外面と細長い空洞から出ていく係止材料を通過させる開口部の近位端との間の距離がたとえば2mm〜7mm、特に3.5mm〜5.5mm(これは、成人に対して該当する分量である)であれば、たとえばさらなる皮質下の係止が達成され得る。したがって、プレート部分の遠位端面と開口部の近位側入口との間の距離は、同じオーダとなるよう、すなわち2mm〜7mm、特に3.5mm〜5.5mmとなるよう選択することができる。
【0014】
係止材料を通過させる開口部の長さ(近位−遠位間の延在部)は1mm〜6mm、特に
2.5mm〜5mmであってもよい。(椎体骨組織内の)皮質下の係止についての実験によれば、複数(たとえば、4つ)の孔が円周寸法に均等に分散されている場合、開口部の一致する延在部に対応する近位−遠位間延在部を備え、4mm直径の管要素を囲む10mmの直径を備えた係止材料リングが得られるだろうことが判明した。
【0015】
脊椎骨間用スペーサを備え、椎体の横方向延在部に関連する脊柱安定化装置に関する実施例においては、係止材料が突出る深さが椎体の延在部の約5%〜20%であれば、皮質下での係止が達成され得る。
【0016】
長手方向開口部を備えた固定部分に加えて、安定化プレートは従来の固定具を備えてもよい。
【0017】
特別な実施例においては、安定化プレート(たとえば、ACP)は、プレート部分に堅固に接続される上述のタイプの4つの固定部分を備える。当該固定部分は、長手方向開口部と、長手方向開口部から外部へと通ずる少なくとも1つの孔(たとえば、ほぼ等しい軸方向位置において2つ、3つまたは4つの径方向開口部)とを備える。安定化プレートがACPであれば、固定部分は2つの隣接する椎骨の椎体に(各々について2つずつ)打込まれるよう位置決めされる。
【0018】
他の特別な実施例においては、安定化プレートは、プレート部分に堅固に接続される上述のタイプの4つ、5つまたは6つの固定部分を備える。当該固定部分は、長手方向開口部と、長手方向開口部から外部へと通ずる少なくとも1つの孔(たとえば、ほぼ等しい軸方向位置において2つ、3つまたは4つの径方向開口部)とを備える。この実施例におけるACPは、3つの隣接する椎骨にわたって延び、次いで、固定部分が、3つの椎骨のうち少なくとも最上部およびの最下部の椎体に、場合によっては3つの椎骨すべての椎体に、打込まれるよう位置決めされる。
【0019】
安定化プレートを埋込むための器具は、固定部分の位置に対応する位置において骨組織に設けられる窪みの位置を規定するテンプレートを含み得る。第1のオプションに従うと、窪みは予め設けられたボアであってもよく、テンプレートはボアを設けるドリルを案内する役割を果たす。第2のオプションに従うと、固定部分が、たとえばテンプレートによって案内されるドリルまたは他の器具によって骨組織に入り込むべき位置においては、皮質骨だけが取除かれるかまたは予め打抜かれる(かまたは準備される)。さらなるオプションに従うと、鋭い先端を有する固定部分は、それら自体が皮質骨を貫通し組織内を進んでいくのに用いられてもよく、テンプレート(もしあれば)は、埋込み中に(叩き込むことよって)安定化プレートを直接案内するのに用いられてもよい。
【0020】
固定部分は、液化された熱可塑性材料が押されて通過し得る複数の径方向の孔を備える場合、液化可能な材料の種々の部分を径方向の孔のうち種々の孔へと方向付けるために、長手方向開口部の長手方向軸に対して角度を付けて構造化された方向付け構造を含むよう構成されてもよい。このような方向付け構造は、WO2011/054122に開示されるタイプのものであってもよい。
【0021】
複数の径方向の孔を備えた実施例においては、埋込み中に液化材料を流れ出させるためのこれら径方向の孔が、同じ軸方向位置にあってもよく、または、異なる軸方向位置にあってもよい。角度位置は、円周にわたって均等に分散されてもよい。特別な実施例においては、角度位置は、特定の要求に適合するようずらして分散されていてもよい。たとえば、インプラントが関節部分を融合させるためのインプラントおよび関節腔に挿入されるインプラントとして企図される場合、孔(3つ以上の場合)が、関節区域に接触するよう対向し合う側に集中して設けられてもよい。
【0022】
プレート部分の全体的な形状は胴部がくびれていてもよい。この場合、胴部は椎体間に形成され、固定具は角部に位置する。この「胴部がくびれている」とは、(たとえば、ACPが係止される椎骨間にある)中央領域におけるプレート部分の横断方向延在部が上方/下方端部における横断方向延在部よりも小さく、たとえば、固定部分の軸間の横断方向距離よりも短いことを意味する。これは、ACPのうち矢状面からの距離が最も長い場所に固定部分が位置することを示唆し得る。これは、横方向の曲げおよび捻りを防ぐ/吸収する能力を最大限に発揮しつつ、横方向のプレート延在部を最小限にするという目的を果たすものである。
【0023】
特別な実施例においては、前方頚部用プレートは、ちょうど4つの固定部分(各々の角に固定部分を1つずつ)を備えた胴部のくびれたプレート部分を含む。この場合、固定部分は上述のタイプであり、プレート部分と一体化している。加えて、前方頚部用プレートは、固定部分ごとに1つの(初めは分離している)熱可塑性要素を備え得る。熱可塑性要素の形状は、熱可塑性要素がそれぞれの固定部分の長手方向開口部に差込まれるよう適合されている。プレート部分は、固定部分を保持する角部において背側の方に曲げられてもよい。
【0024】
プレート部分は平らである必要がなく、たとえば並進対称性などの特定の他の形状を有する必要もない。むしろ、ユーザの要求に従ってプレート部分を形作ることができることは、固定部分とプレート部分との一体型(内蔵)構造が有する特定の利点である。たとえば、所望の態様で機械的負荷を吸収するよう形作ることができる。機械的補強部は、たとえばビード、隆起などの形状を有し得る。加えてまたは代替例として、プレート部分は、骨の幾何学的形状および寸法に適合するよう、かつ椎体からの深さが最小限になるよう形作ることができる。特定の例として、前方頚部用プレートは、食道または知覚可能な軟組織構造に対する刺激を最小限にするよう、矢状面に近接して背側の方向に曲げられてもよい。
【0025】
さらなる局面に従うと、本発明は、脊柱の腹側に配置されて、2つ以上の異なる椎体に取付けられることによって人または動物の脊柱を安定させるためのプレート部分を備えた前方頚部用プレートに関し、前方頚部用プレートはさらに、異なる椎体において係止されるよう適合された複数の固定部分を備える。固定部分はプレート部分に堅固に接続され、近位側からアクセス可能な長手方向開口部と、長手方向開口部から外部に到達する少なくとも1つの孔とを備えた被覆要素を備える。孔は、液化された熱可塑性材料を、当該孔を通じて、固定具を係止すべき椎体の骨組織内へと押込むことができるように位置決めされる。以下の条件のうち1つまたは両方が満たされる。
【0026】
− プレート部分が平面ではない(平坦でない)。
− 固定部分の外側輪郭が回転円筒対称性を有さない。
【0027】
「固定部分」の外側輪郭が回転円筒対称性を有さないという特徴は、この文脈においては、固定部分の形状が(たとえば、径方向の)孔に加えて回転円筒形とは異なっていることを示唆している。特に、固定部分は、非円形の外側輪郭を有してもよく、および/または少なくとも1つのトレンチなどを有していてもよい。
【0028】
特に、少なくとも複数の孔は径方向の孔であってもよく、固定部分は、径方向の孔の遠位側に安定化部分を備えてもよく、安定化部分は、上/下方向よりも横断方向においてより大きな延在部を有し得る。プレート部分は、上述の規定に従って胴部がくびれていてもよい。固定部分はプレート部分の端縁によって保持されてもよく、端縁部分は任意には背側に曲げられてもよい。プレート部分は補強用隆起またはビードを含み得る。
【0029】
また、さらなる局面に従うと、前方頚部用プレートはさらに、被覆要素ごとに、被覆要素に挿入されるかまたは挿入可能な熱可塑性要素を含み得る。熱可塑性要素は、たとえば熱可塑性要素に作用する機械的エネルギによって液化可能である。
【0030】
他の実施例においては、ACPの代わりである安定化プレートは、骨折用または骨切り術後の安定化プレートであってもよい。骨切り術は、骨を短くするか、長くするかまたは、再度位置合わせする目的で切断する外科的処置である。骨切り術は、主として関節における耐荷重面を再度位置合わせし、特に、顔面上顎領域における骨部分を再度位置合わせするための、但し、骨折後に互いに対して不所望な配置で治癒した骨部分を再度位置合わせするために、人および動物の患者に施される。骨切り術によって切離された骨部分は、主として、互いに相対的な所望の位置に再度位置合わせされて、再び一緒に合わさって治癒できるようにこの位置で安定させる必要がある。最先端技術に従うと、骨切り術部は、通常、骨切り術での切断部位にわたる骨表面に位置決めされて骨ねじまたは釘を用いてこの位置で固定されるプレート(たとえば金属板)を用いて安定させる。単純骨折は同じ態様で安定させる。
【0031】
特に、安定化プレートは、骨折部または骨切断部を安定させるために人または動物の関節付近で用いられてもよい。人または動物の関節付近では、従来の外科手術用ねじの係止が弱いため、従来のプレートはしばしば固定するのが容易ではない。たとえば、プレートが関節における骨部分から、関節から離れた骨部分にまで延在する場合、関節により近いプレートのアンカーは、上述のタイプの固定部分であり得るのに対して、関節から離れた骨部分における係止のために、従来の固定用外科手術ねじが用いられてもよい。代替的には、すべての固定部分は、長手方向開口部および熱可塑性材料要素を備えた上述のタイプであってもよい。
【0032】
また、概して、安定化プレートは、プレートをカバーする軟繊維がほとんどない(結果として、従来の金属製外科手術用ねじが刺激をもたらす傾向がある)状況において有利である。
【0033】
安定化プレートの特別な応用例として、特に人、犬または猫の患者用の脛骨プラトーの骨切り術後の安定化が挙げられる。
【0034】
機械的振動によってもたらされる摩擦熱によるポリマーの液化を含む、本発明の実施例に従った装置および方法に適した機械的振動または発振は、好ましくは、2〜200kHz(さらにより好ましくは10〜100kHz、または20〜40kHz)の周波数を有し、活性面の平方ミリメートル当たり0.2〜20Wの振動エネルギを有する。振動要素(ソノトロード)は、たとえば、その接触面が主に要素軸(縦振動)の方向に、1〜100μm、好ましくは約10〜30μmの振幅で振動するように設計される。回転または径方向の発振も可能である。
【0035】
装置の具体的な実施例に関して、機械的振動の代わりに、係止材料の液化に必要とされる特定の摩擦熱を引起すための回転運動を用いることも可能である。このような回転運動の速度は好ましくは10’000〜100’000rpmである。所望の液化のための熱エネルギを生成するためのさらなる方法は、埋込まれるべき装置部品のうちの1つに電磁放射を結合するステップと、装置部品のうちの1つを、電磁放射を吸収できるように設計するステップとを含み、このような吸収は、好ましくは、液化されるべき係止材料内において、またはそのごく近傍で行われる。好ましくは、可視周波数または赤外周波数の範囲で電磁放射が用いられる。好ましい放射源として、対応するレーザが挙げられる。装置部品のうちの1つを電気加熱することも可能であり得る。
【0036】
この明細書においては、「たとえば機械的振動によって液化可能な熱可塑性材料」、または単に「液化可能な熱可塑性材料」もしくは「液化可能な材料」という表現は、少なくとも1つの熱可塑性成分を含む材料を説明するために用いられており、その材料は、加熱された場合、特に摩擦によって加熱された場合、すなわち、互いに接触し相対的に振動により移動するかまたは回転移動する1対の表面(接触面)のうちの一方に配置された場合、液体になるかまたは流動的になる。この場合、振動の周波数は2kHzから200kHzであり、好ましくは20kHz〜40kHzであり、振幅は1μm〜100μm、好ましくは約10μm〜30μmである。このような振動は、たとえば歯科の用途に公知なものとして、たとえば超音波装置によってもたらされる。組織に対する耐荷重接続の構成を可能にするために、材料は0.5GPaよりも高い弾力性係数、好ましくは1GPaよりも高い弾力性係数を有する。少なくとも0.5GPaの弾力性係数によっても、確実に、液化可能な材料が、その内部の液化をこのようにわずかに減衰させつつ超音波振動を伝達することが可能となり、こうして、液化可能な要素が不安定にならないようにする。すなわち、液化可能な材料が停止面に対する液化界面にある場合にのみ液化が起こる。可塑化温度は、好ましくは最大で200℃であり、200℃〜300℃であるか、またはさらには300℃を上回っている。用途に応じて、液化可能な熱可塑性材料は再吸収可能であってもよく、再吸収可能でなくてもよい。
【0037】
好適な再吸収可能ポリマーは、たとえば、乳酸および/またはグリコール酸(PLA、PLLA、PGA、PLGAなど)またはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、多糖類、ポリジオキサノン(PD)、ポリ酸無水物(polyanhydrides)、ポリペプチドまたは対応するコポリマーもしくは混合ポリマーに基づいているか、または、上述のポリマーを成分として含有する複合材料が、再吸収可能な液化可能材料として適している。熱可塑性物質、たとえば、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアリールケトン、ポリイミド、ポリフェニルスルフィドまたは液晶ポリマー(LCPS)、ポリアセタール、ハロゲン化ポリマー、特にハロゲン化ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリプロピレン(PP)、または対応するコポリマーもしくは混合ポリマー、または上述のポリマーを成分として含む複合材料などが、再吸収不可能なポリマーとして適している。好適な熱可塑性材料の例として、ベーリンガーインゲルハイム(Bohringer Ingelheim)社によるポリラクチド生成物LR708(非晶質のポリ−L−DLラクチド70/30)、L209またはL210Sのうちのいずれか1つが含まれる。
【0038】
分解性材料の具体的な実施例として、LR706 PLDLLA 70/30、R208 PLDLA 50/50、L210SおよびPLLA 100%L(すべてBohringerによる)のようなポリラクチドが挙げられる。好適な分解性ポリマー材料の一覧も以下のとおり見出すことができる:Erich Wintermantel und Suk-Woo Haa, "Medizinaltechnik mit biokompatiblen Materialien und Verfahren", 3;Auflage, Springer, Berlin 2002 (以下、"Wintermantel"と称する)、200頁;PGAおよびPLAの情報に
ついては202頁以降、PCLについては207頁、PHB/PHVコポリマーについては206頁;ポリジオキサノンPDSについては209頁を参照されたい。さらなる生体吸収可能(bioresorbable)材料の説明を、たとえば、CA Bailey他によるJ
Hand Surg [Br](2006年4月;31(2):208〜12)において見出すことができる。
【0039】
非分解性材料の具体的な実施例は以下のとおりである:ポリエーテルケトン(PEEK Optima、グレード450および150(Invibio Ltd))、ポリエーテルイミド、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリカーボネート、ポリメチル
メタクリレート、ポリオキシメチレン、またはポリカーボネートウレタン(特に、DSMによるBionate(登録商標)、特にBionate75DおよびBionate65D;対応する情報が、たとえば、Automation Creations,Inc.によるwww.matweb.com上で公にアクセス可能なデータシート上で利用可能である)。ポリマーおよびその応用例の概略的な表がWintermantelの150頁において列挙される。具体的な例は、Wintermantelの161頁以降において見出すことができる(PE,Hostalen Gur 812, Hochst AG)、164頁以降(PET)、169頁以降(PA,すなわちPA6およびPA66)、171頁以降(PTFE)、173頁以降(PMMA)、180頁(PUR,表を参照)、186頁以降(PEEK)、189頁以降(PSU)、191頁以降(POM:Polyacetal(商品名:Delrin;Tenac)は、Protecによる内蔵式人工臓器においても用いられてきた)。
【0040】
熱可塑性の特性を有する液化可能な材料は、さらなる機能を果たす異種の位相または化合物を含有し得る。特に、熱可塑性材料は、混合された充填剤、たとえば、治療または他の所望の効果を有し得る粒状の充填剤、によって強化され得る。熱可塑性材料はまた、元の場所で膨張するかまたは溶解する(細孔を作り出す)成分(たとえば、ポリエステル、多糖類、ヒドロゲル、リン酸ナトリウム)を含有し得るか、または、それ以外の位置で放出されて、治療上の効果、たとえば治癒および再生の促進といった効果(たとえば、酸性分解の悪影響に対抗するリン酸ナトリウムまたは炭酸カルシウムなどの成長因子、抗生物質、炎症抑制剤もしくは緩衝剤)を有する化合物を含有し得る。熱可塑性材料が再吸収可能である場合、このような化合物の放出が遅れる。
【0041】
液化可能な材料が振動エネルギでは液化せず、電磁放射によって液化する場合、この液化可能な材料は、特定の周波数範囲(特に、可視または赤外線周波数の範囲)のこのような放射を吸収することのできる化合物(微粒子または分子)、たとえば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム、酸化チタン、雲母、飽和脂肪酸、多糖類、グルコースまたはその混合物、を局所的に含有し得る。
【0042】
使用される充填剤は、β−リン酸三カルシウム(TCP)、ハイドロキシアパタイト(HA、<90%の結晶度);またはTCP、HA、DHCP、バイオガラスの混合物(Wintermantelを参照)を含む分解性ポリマーにおいて用いられる分解性の骨刺激性充填剤を含み得る。非分解性ポリマーのための、わずかに部分的にしか分解しないかまたはほとんど分解しないオッセオインテグレーション刺激充填剤は、バイオガラス、ハイドロキシアパタイト(>90%の結晶度)、HAPEX(登録商標)(SM Rea他によるJ Mater Sci Mater Med.(2004年9月;15(9):997〜1005)を参照)を含む。ハイドロキシアパタイトについては、L.Fang他によるBiomaterials(2006年7月;27(20):3701〜7)、M.Huang他によるJ Mater Sci Mater Med(2003年7月;14(7):655〜60)、ならびに、W.BonfieldおよびE.TannerによるMaterials World(1997年1月;5第1号:18〜20)を参照されたい。生物活性充填剤の実施例およびその説明は、たとえば、X.HuangおよびX.MiaoによるJ Biomater App.(2007年4月;21(4):351〜74),JA Juhasz他によるBiomaterials(2004年3月;25(6):949〜55)において見出すことができる。粒状の充填剤タイプとして、粗いタイプ:5〜20μm(含有量が優先的には10〜25容量%)、サブミクロン(析出から得られるナノ充填剤、優先的には、板状アスペクト比>10、10〜50nm、0.5〜5容量%の含有量)が含まれる。
【0043】
実験を行った材料の具体例として、特に有利な液化挙動を示した30%(重量パーセン
ト)の二相Caリン酸塩を含むPLDLA70/30があった。
【0044】
ACPの材料は、液化可能な材料の溶解温度では溶解しない如何なる材料であってもよい。特に、被覆要素は金属、たとえばチタン合金、でできていてもよい。好ましい材料としてチタン等級5が挙げられる。この材料は、一般に埋込み可能な装置に適していることに加えて、比較的低い熱伝導性を有する。この不利な熱伝導性のせいで、液化可能な材料において生じる溶解帯は急速に加熱されるが、周囲が過度に高い温度に加熱されることはない。ACPのための代替的な材料として、他のチタン合金、ステンレス鋼のような他の金属、またはPEEKなどの硬質プラスチックなどが挙げられる。
【0045】
図面の簡単な説明
以下において、本発明および実施例を実行するための方法を、添付の図面を参照して説明する。図面は大部分が概略的に図示される。図面においては、同じ参照番号は同じまたは類似の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】前方頚部用プレート(ACP)の実施例を示す図である。
図2図1の実施例の変形例の部分断面を示す図である。
図3】前方頚部用プレートの実施例の使用を概略的に示す図である。
図4】食道における前方頚部用プレートの概略的な横断面を示す図である。
図5a】補強ビードを備えた前方頚部用プレートの実施例を示す図である。
図5b】補強ビードを備えた前方頚部用プレートの実施例を示す図である。
図5c】補強ビードを備えた前方頚部用プレートの実施例を示す図である。
図5d】補強ビードを備えた前方頚部用プレートの実施例を示す図である。
図6】使用中の非対称的な前方頚部用プレートを示す図である。
図7a】代替的な固定部分の遠位端を示す図である。
図7b】代替的な固定部分の近位端を示す図である。
図8】固定部分のさらなる変形例の遠位端領域を示す図である。
図9】固定部分のさらなる変形例の遠位端領域を示す図である。
図10】前方頚部用プレートの代替的な実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
好ましい実施例の説明
図1および図2においては、前方頚部用プレート(ACP)121が示される。ACPは、脊柱の前方(腹側)に配置されて、2つ(またはそれ以上)のさまざまな椎体に取付けられることによって、人(または動物)の脊柱を安定させるためのプレート部分122を有する。プレート部分は、患者の特別な要求に適合され得る、当該技術において公知のタイプの形状を有し得る。たとえば、図示される実施例とは異なり、プレート部分は、或る動きに対して何らかの弾力性をもたらしつつ他の動きに対抗する所望の剛性をもたらすよう、生体力学的考察に従って形作られた孔を含み得る。
【0048】
図1の実施例においては、プレート部分は、外科手術中にプレートを保持する役割を果たし得る雌ねじを備えた2つの孔123を有し、図2の変形例は、如何なるねじ山も備えない2つの孔123を有する。この相違点以外は、図1および図2の実施例は同一であり得る。
【0049】
ACPは、2つの椎体間に椎体間固定インプラントを用いた場合でも用いない場合でああっても人の脊柱の区域を安定させるのに用いられ得る。特に、ACPは、引用によりこの明細書中に援用されるWO2010/096942に開示されるような椎体間固定インプラントとともに用いられてもよい。
【0050】
熱可塑性要素21は、初めは固定部分から分離されていてもよい。図示される実施例においては、これら熱可塑性要素21は、回転円筒の形状を有しているが、長手方向開口部の形状に適合される他の形状も可能である。
【0051】
図1においては、また、(手術後、骨の長手方向(頭側−尾側;上方−下方)軸に対して平行となるよう、このため矢状面に対しても平行となるよう定められた)長手方向軸11と、ACPの(埋込み後、患者の体の横方向(左右/中外側)軸に対して平行となるべき)横断方向軸12とが示される。この文脈においては、概して、「長手方向の」、「横断/横方向」、「背側」および「腹側」という方向は、ACPが所期の態様で体に配置されるときの軸および方向を指す。
【0052】
プレート部分122に加えて、ACPは、複数(図示される実施例においては4つ)の固定部分124を備える。固定部分は各々、プレート部分122に堅固に接続され、たとえばこれと一体化される。各々の固定部分は、近位側からアクセス可能な長手方向開口部と、液化後に、係止のために特に機械的エネルギによって熱可塑性材料を押出すことを可能にするための少なくとも1つの径方向の孔14(図示される構成においては2つの孔)とを備えた被覆要素(管要素)の形状を有する。
【0053】
径方向の孔14は、皮質下での係止を確実にするプレートに距離を空けて配置される。
図示される実施例は、径方向の孔14に加えて、管要素ごとに遠位側の軸方向孔19を備える。遠位側の軸方向孔19の目的は上述の実施例の対応する遠位側の軸方向孔と同じである。以下においていくらかより詳細に記載される代替的な実施例においては、径方向の孔の代わりに遠位孔だけが少なくとも1つの固定部分124に存在している。
【0054】
図示される実施例においては、固定部分124は、径方向開口部14の遠位側に、付加的な安定材としての役割を果たす実質的な延在部を備える。特に、ACPに作用する主負荷は、脊柱の長手方向軸に沿った撓みから引起され、これにより、固定部分の遠位端に対して(図の向きから見て)上下方向に力をもたらすこととなる。遠位側の延在部がより長ければ、このような負荷を吸収するのに役立つ。
【0055】
加えて、または代替例として、固定部分は、横方向に延在する翼状部126を含んでもよい。このような翼状部または円形から変形した他の形状は、特に、これら翼状部または他の形状により、横断方向延在部(隣接する骨を接続する方向に対して垂直な方向の延在部)が上方−下方の延在部(脊柱/頭側−尾側の軸のうち局所的な軸に沿った方向の延在部)よりも大きくなった場合、有利であり得る。これにより、脊柱の湾曲から生じる負荷が理想的に吸収され得るからである。
【0056】
また、ACPとしての応用例以外の他の応用例の場合、付加的な安定材のこのような非円形断面は、固定部分の延在部に対する制限と、安定化プレートが負う負荷とに応じて有利になり得る。
【0057】
さらに、図示される構成の代替例として、固定部分を、たとえばブレード状にすることによって、大抵の場合非常に堅い管形状ほどには堅くせず、より可撓性のあるものにすることが有利であり得る。剛性が高すぎる場合、固定具に作用するすべての運動量を骨梁に完全に伝えることが所望されず、固定具のいくらかの弾力性によっていくらか吸収することが所望される状況においては問題となる可能性がある。ブレード形状は管形状よりも可撓性が高い可能性がある。また、外科手術での挿入中に骨組織に予め開口部が設けられるべきではないブレード形状は、さらに遠位側に到達する管形状の場合よりも骨組織の露出が少なくなる。
【0058】
固定部分または固定部分のうち少なくとも1つは、本発明の第1の局面に従って形作られ得る。すなわち、管要素または管要素のうち少なくとも1つは、液化可能な材料のうち種々の部分を液化可能な要素から孔14のうち種々の孔に方向付けるよう、長手方向開口部の長手方向軸に対して角度を付けて構造化された方向付け構造を含み得る。
【0059】
図示される実施例においては、ACPは4つの固定部分を含み、その各々は液化可能な要素を挿入するための長手方向開口部を備えているが、これは必ずしも必要ではない。たとえば、ACPは、固定孔を通じて挿入されなければならない外科手術用ねじなどの従来の固定具を備えた上述のタイプの固定部分の組合せを含み得る。たとえば、ACPは、より強固でより健康な骨組織に係止するための従来の固定具と、骨組織がより脆いおよび/または低密度である位置における皮質下係止用の上述のタイプの固定部分とを含み得る。
【0060】
他の変形例においては、たとえば、引用によりこの明細書中に援用されるWO2010/096942に記載された態様で別個に差込むことのできる管要素によってプレート部分に堅固に取付けられる固定部分のうちの少なくともいくつかを交換することができる。
【0061】
また、固定部分の総数は4である必要はなく、他の好適な数(たとえば、3、5または6)であってもよい。2つの椎骨だけでなくそれよりも多くの椎骨(たとえば、3つの椎骨)にわたってACPが延在することもさらに可能であるのに対して、ACPは、このACPが延在するすべての椎骨において(たとえば、各椎骨に対して2つの固定部分によって)係止され得るか、または、(たとえば、椎骨が部分的に取除かれている)特別な状況においては、これらの椎骨のうちのいくつかにおいてのみ、たとえば、一連の3つの椎骨のうち最上部の椎骨および最下部の椎骨においてのみ、係止され得る。
【0062】
すべての実施例においては、プレート部分および固定部分は金属、たとえばチタンまたはステンレス鋼で作られていてもよい。代替的な実施例においては、これらプレート部分および固定部分はまた、PEEKなどの再吸収不可能なプラスチックで作られていてもよい。PLAなどの再吸収可能なプラスチックで作ることも可能である。プレート部分および固定部分が加熱可塑性物で作られている場合、軟化温度は、好ましくは、固定部分ではなく熱可塑性要素だけが液化するように、固定部分の被覆要素において挿入可能な熱可塑性要素の軟化温度よりも高くなければならない。多くの場合、これを確実にするのに20℃(以上)の軟化温度差があれば十分である。
【0063】
埋込みのために、外科医は、任意には、第1のステップにおいて、固定部分が椎体に打込まれるべき位置にある皮質骨組織を局所的に取除く可能性がある。その後、ACPが挿入される。必要に応じて、ACPは、プレート部分が皮質骨に当接するまで固定部分を骨組織に十分に打込むよう叩き込まれてもよい。次いで、固定部分がまだ可塑性要素を備えていない場合、このような熱可塑性要素がその近位側から長手方向開口部に差込まれる。(超音波変換器などの)機械的振動発生器およびソノトロードを備えた挿入工具を用いて、その遠位端において、熱可塑性要素の熱可塑性材料を少なくとも部分的に液化して、孔14を通じてこの材料を周囲組織に押込む。この目的のために、ソノトロードは、熱可塑性要素を開口部により深くまで押込めるように、長手方向開口部の断面積よりもわずかに小さい断面積を有してもよい。
【0064】
上述の実施例においては、プレート部分は本質的に平面であるよう示され、固定部分はプレート部分に対して本質的に垂直であるが、これは必ずしもそうである必要はない。プレート部分と一体的に形成されるべき固定部分を含む本発明に従った方策の主な利点は、埋込まれる際に椎体から最小限の距離しか離れずに延在する機械的に安定した構造が実現可能である点である。このような構造は非平面プレート部分を含んでもよい。極めて概略
的に図示される第1の方策が図3に示される。前方頚部用プレートが、2つの隣接する椎体31に係止されることによって埋込まれる。脊椎骨間に椎間板が見えている。場合によっては、天然の椎間板の代わりに、椎体間スペーサ(ケージ)を配置して椎間板を予め交換してACPを係止してもよい。係止プロセス中に孔14を通って周囲組織へと出ていく熱可塑性材料部分22が図3に概略的に示される。場合によっては、如何なる実施例についても、固定部分は椎体における上方−下方軸に対して中心に係止されるよう位置決めされる。本発明の実施例に従った前方頚部用プレートはさまざまなタイプの椎骨(すなわち腰椎、胸椎および頚椎)を安定させるよう設計することができるのに対して、図3の実施例は上部胸骨の椎骨に関するものである。図3には、食道35も概略的に示される。前方頚部用プレートが埋込まれる場合、前方頚部用プレートは、脊柱にやや近接しているにもかかわらず食道への刺激を確実に防止するよう構成および配置されなければならない。図4は、横断面に沿った概略的断面において、(ACPの長手方向軸まわりの/矢状面に近接した)中心領域において、食道35のためにより多くの空間をもたらすよう上記プレートが背側方向に向かって曲げられている実現可能な構成を示す。
【0065】
プレート部分は、同程度に薄くすることができるにもかかわらず、十分な機械的安定性を有することができる。図5a〜図5dは、角領域(この角領域と連続して固定部分が設けられている)から中心に向かって延在し、中心に向かうにつれて低減するビード131が示される構成を示す。図5b、図5cおよび図5dは、それぞれ、図5aにおける線B−B、線C−Cおよび線D−Dに沿った断面を示す。図3に示される特徴(縦断面(矢状面に沿った断面)において腹側の方に曲げられた凹状構成);横断面において背側の方に曲げられた中心領域;ビード;および/または傾斜する角部分)は、任意に組合せることができる。すなわち、これらの特徴はすべて互いに組合わせることができるか、または、これらの特徴のうち2つまたは3つの特徴からなるサブグループを如何なるグループにも組合せることもでき、さらに、前方頚部用プレートは対称的である必要がなく、非対称であってもよい(たとえば、ビーズおよび/または傾斜した角は一方側のみに存在し得る、等である)。
【0066】
図5a〜図5dに関して図示されたプレート部分の形状は単なる一例である。プレート部分が平面構成とは異なっている点は多くの点で変更され得る。たとえば、図示されるビードの代わりに隆起をプレート部分に設けることができるだろう。また、ビードは、反対方向に突出るよう曲げられ得るおよび/または他の場所に配置され得る。ACPのまわりの解剖学的構造に応じて、全体的なプレート3D構造をさまざまな方法で選択することができる。
【0067】
図6は、固定部分124がプレート部分に対して直角ではなく異なる角度をなしている構成をさらに概略的に示す。概して、固定部分(または少なくともプレート部分と一体的な固定部分)は、互いに対してほぼ平行である。
【0068】
図7aおよび図7bは固定部分124の変形例を示す。この変形例においては、固定部分は、径方向の孔ではなく、周囲組織へと出て行く液化材料が通過する遠位孔19しか備えない。腹側方向へのACPの動きに対抗する構成安定性を与えるために、長手方向開口部は、熱可塑性要素21の近位側の広がり部22と協働する肩部128を含む。
【0069】
図8および図9は、さらに、長期にわたる係止の安定性を確実にするよう骨組織がその内部に増殖し得る未拡孔の保持構造を固定具に設ける可能性を示す。
【0070】
図8は、図1および図2の実施例と同様に、翼状部126を備えた固定部分の遠位領域を示す。翼状部には窪み130が設けられている(代替的な構成においては、外側輪郭が波形状を含み得る)。これら窪みは、前方頚部用プレートの固定部分の挿入に対する実質
的な付加的抵抗をもたらさない未拡孔の保持構造を形成する。埋込み後の期間において、骨組織における係止が付加的な安定性を得るように、骨組織が保持構造内に増殖し得る。固定部分に外部保持構造を設ける方策は、再吸収可能な熱可塑性材料の使用と組合わせることができる。
【0071】
未拡孔の保持構造の他の例が図9に示される。固定部分は、保持構造としての役割を果たす円周隆起129を備える。(存在している場合、図8に示されるような)翼状部126の保持構造と(図9に図示されるような)固定部分本体の保持構造との組合せが実現可能である。加えて、または、代替例として、固定部分またはその一部の所期の表面粗さなどの微小な保持構造を用いることができる。このような部分の最大表面粗さは、たとえば1μm〜100μm、特に1μm〜50μmまたは20μm、たとえば2μm〜10μmであり得る。
【0072】
上述の実施例のほとんどの安定化構造は、液化された熱可塑性材料が通過する径方向の孔の遠位端に安定化部分を備える。代替的な構成が実現可能であり、たとえば、特に上/下方向よりも横断方向においてより大きな延在部を備えるよう、楕円形または細長い断面を備えた固定部分が実現可能である。これを極端にした例が図10に示される。図10の実施例は、実質的な横断方向延在部を有するわずかに2つの固定部分24しか備えない。上述の実施例とは対照的に、熱可塑性要素21はピン状ではなく、固定部分124の形状に適合された形状を有する。図示される実施例においては、径方向の孔14が固定部分の遠位端に配置される。しかしながら、図10の構成は、たとえば皮質下での係止のために、より近位側の径方向の孔で実現されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10