(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6280328
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】EGRユニット及びエンジンシステム
(51)【国際特許分類】
F02M 26/35 20160101AFI20180205BHJP
F02M 26/22 20160101ALI20180205BHJP
F02M 26/00 20160101ALI20180205BHJP
【FI】
F02M26/35
F02M26/22
F02M26/00
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-170188(P2013-170188)
(22)【出願日】2013年8月20日
(65)【公開番号】特開2015-40475(P2015-40475A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細野 隆道
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 克浩
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 英和
(72)【発明者】
【氏名】西村 元彦
(72)【発明者】
【氏名】東田 正憲
(72)【発明者】
【氏名】野上 哲男
【審査官】
北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−332919(JP,A)
【文献】
特開昭63−036817(JP,A)
【文献】
特開2012−180814(JP,A)
【文献】
特開2011−157959(JP,A)
【文献】
特開平10−252578(JP,A)
【文献】
特開昭54−078364(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/072612(WO,A1)
【文献】
特開2003−033626(JP,A)
【文献】
特開2014−163365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/35
F02M 26/00
F02M 26/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに排気ガスを再循環させるEGRユニットであって、
第1洗浄液を用いて前記排気ガスを洗浄するスクラバと、
前記スクラバで洗浄された前記排気ガスを冷却するガスクーラと、
前記ガスクーラ内の前記排気ガスに第2洗浄液を噴射する噴射部と、を備え、
前記第1洗浄液及び前記第2洗浄液には脱硫用の中和剤が含まれる、EGRユニット。
【請求項2】
前記噴射部から噴射される第2洗浄液は、使用済みの前記第1洗浄液を含んだ貯水洗浄液を浄化処理して再利用したものである、請求項1に記載のEGRユニット。
【請求項3】
前記第1洗浄液は、使用済みの前記第1洗浄液を含んだ貯水洗浄液を浄化処理せずに再利用したものである、請求項1に記載のEGRユニット。
【請求項4】
前記貯水洗浄液を廃水する際に当該貯水洗浄液を浄化処理する浄化処理装置をさらに備え、前記第2洗浄液は前記浄化処理装置で浄化処理した前記貯水洗浄液の一部を再利用したものである、請求項2に記載のEGRユニット。
【請求項5】
前記エンジンの運転状況に応じて、前記噴射部による前記第2洗浄液の噴射及び停止を切り換えできるように構成されている、請求項1乃至4のうちいずれか一の項に記載のEGRユニット。
【請求項6】
前記スクラバは排気ガスに第1洗浄液を噴射する噴射ノズルを有し、
前記噴射部から噴射される第2洗浄液の排気ガスに対する相対噴射速度は、前記スクラバの噴射ノズルから噴射される第1洗浄液の排気ガスに対する相対噴射速度よりも小さい、請求項1乃至5のうちいずれか一の項に記載のEGRユニット。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか一の項に記載のEGRユニットを備えたエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに排気ガスを再循環させるEGRユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
EGR(Exhaust Gas Recirculation)ユニットは、エンジンシステムに搭載され、エンジンから排出された排気ガスをエンジンに再循環させるユニットである。EGRユニットにより、排気ガスをエンジンに再循環させることで、エンジン内では酸素濃度が低い状態で燃焼が行われ、その結果、燃焼温度が低下してNOxの生成を抑制することができる。
【0003】
また、燃料として残渣油を使用する舶用のディーゼルエンジンなどは、排気ガスに大量の粒子状物質(PM;Particulate Matter)や硫黄酸化物(SOx)が含まれる。そのため、舶用のエンジンシステムなどに搭載するEGRユニットは、排気ガスからPMやSOxを除去する装置を備える必要がある。PM及びSOxを除去する装置としては、洗浄液を用いた湿式ガス洗浄装置(スクラバ)が採用されることが多い。
【0004】
また、エンジンに再循環させる排気ガスが高温であると、エンジンに供給するガスのうち掃気ガス(新気)が占める割合が減ってしまい、エンジンの出力が低下するおそれがある。そのため、EGRユニットに流入する排気ガスが高温である場合には、EGRユニットにガスクーラを設け、排気ガスを掃気ガスの温度まで下げるのが一般的である。
【0005】
特許文献1では、上述したスクラバ(湿式スクラバー15)とガスクーラ(冷却機16)を備えたEGRユニット(排ガス再循環システム)が開示されている(括弧内は特許文献1における名称)。なお、特許文献1のEGRユニットでは、スクラバがガスクーラよりも上流側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−157959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、スクラバで使用する洗浄液には中和剤が含まれており、排気ガスのSOxはこの洗浄液に溶解することで除去(脱硫)される。ただし、スクラバ内における排気ガスの温度が高いとSOxが洗浄液に溶解しにくくなり、脱硫性能が低下する。特許文献1に記載のEGRユニットの場合、排気ガスはガスクーラを通る前にスクラバに流入するため、スクラバ内を流れる排気ガスは高温であり、高い脱硫性能を確保するのは難しい。なお、洗浄液によっても排気ガスは冷却されるが、特許文献1のような構成ではスクラバ内の圧力は高く、洗浄液で冷却できる限界である飽和温度も高くなってしまう。そのため、洗浄液だけでは、脱硫に十分な温度にまで排気ガスを冷却することは難しい。
【0008】
また、洗浄液に含まれる中和剤の量を増やしてpH値を上げ、これにより脱硫性能を高めることもできる。ところが、この場合、エンジンシステムのランニングコストが増加するだけでなく、CO
2が洗浄液に溶解して固形分が析出し、スクラバの故障原因になりかねない。
【0009】
また、ガスクーラをスクラバの上流側に配置することも考えられる。このように配置すると、温度が下がった排気ガスがスクラバに流入するため、高い脱硫性能を確保することができる。しかしながら、この場合には、洗浄されていない排気ガス、すなわち多量のPMを含む排気ガスがガスクーラに流入することになるため、ガスクーラに目詰まりが生じるおそれがある。なお、ガスクーラの上流側と下流側の両方にスクラバを設置することも考えられるが、構造が複雑となってしまう。
【0010】
さらに、特許文献1のように、スクラバがガスクーラの上流側に配置されている場合には、スクラバ内で飽和状態となった排気ガスがガスクーラで冷やされることで、ガスクーラ内で凝縮水が発生する。他方、スクラバを通過した排気ガスでもSOxがある程度残留する。そのため、残留したSOxが凝縮水に溶解することで、凝縮水が強酸となり、ガスクーラを腐食させるおそれがある。
【0011】
本発明では、以上の事情に鑑み、スクラバとガスクーラを備えたEGRユニットであって、高い脱硫性能を確保しつつ故障が発生しにくいEGRユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある形態に係るEGRユニットは、エンジンに排気ガスを再循環させるEGRユニットであって、第1洗浄液を用いて前記排気ガスを洗浄するスクラバと、前記スクラバで洗浄された前記排気ガスを冷却するガスクーラと、前記ガスクーラ内を通過する前記排気ガスに第2洗浄液を噴射する噴射部と、を備え、前記第1洗浄液及び前記第2洗浄液には脱硫用の中和剤が含まれている。
【0013】
かかる構成によれば、スクラバで脱硫が行われた上で、さらにガスクーラによって冷却された排気ガスに対して脱硫が行われる。つまり、排気ガスは低温脱硫を含む二段で脱硫されるため、高い脱硫効率を確保することができる。さらに、上記の構成によれば、中和剤の量を増やす必要もないため、CO
2の溶解による固形分が析出しにくく、また、ガスクーラ内のSOxが第2洗浄液で除去されるため、ガスクーラ内で発生する凝縮水は強酸となることもない。よって、ガスクーラに発生し得る故障を防ぐことができる。
【0014】
また、上記のEGRユニットにおいて、前記噴射部から噴射される第2洗浄液は、使用済みの前記第1洗浄液を含んだ貯水洗浄液を浄化処理して再利用したものであってもよい。かかる構成によれば、第2洗浄液は第1洗浄液を含む貯水洗浄液を再利用するものであるが、浄化処理が行われているため、ガスクーラ内で第2洗浄液を噴射してもガスクーラに目詰まりが生じにくい。
【0015】
また、上記のEGRユニットにおいて、前記第1洗浄液は、使用済みの前記第1洗浄液を含んだ貯水洗浄液を浄化処理せずに再利用したものであってもよい。かかる構成によれば、貯水洗浄液を洗浄する浄化処理装置は、第1洗浄液を浄化する必要がないため、浄化処理装置が大きくなるのを抑えることができる。
【0016】
また、上記のEGRユニットにおいて、前記貯水洗浄液を廃水する際に当該貯水洗浄液を浄化処理する浄化処理装置をさらに備え、前記第2洗浄液は前記浄化処理装置で浄化処理した前記貯水洗浄液の一部を再利用したものであってもよい。例えば、舶用のエンジンシステムであれは、使用済みの洗浄液を船外に廃水する際にその洗浄液を浄化するための浄化処理装置を備えている。このような浄化処理装置を備えるエンジンシステムであれば、第2洗浄液を浄化処理するための洗浄液装置を新たに設けなくてもよい。
【0017】
また、上記のEGRユニットにおいて、前記エンジンの運転状況に応じて、前記噴射部による前記第2洗浄液の噴射及び停止を切り換えできるように構成されていてもよい。例えば、エンジンが低負荷のときにはスクラバ内の圧力が低く、第1洗浄液で十分に排気ガスを冷却できれば、スクラバのみで十分な脱硫性能を確保することができる場合がある。上記の構成によれば、このような場合に第2洗浄液の噴射を停止し、第2洗浄液の噴射に使用するエネルギの浪費を抑えることができる。
【0018】
また、上記のEGRユニットにおいて、前記スクラバは排気ガスに第1洗浄液を噴射する噴射ノズルを有し、前記噴射部から噴射される第2洗浄液の排気ガスに対する相対噴射速度は、前記スクラバの噴射ノズルから噴射される第1洗浄液の排気ガスに対する相対噴射速度よりも小さくなるようにしてもよい。PMの除去には高速で気液接触させるのが有効であり、SOxの除去には長い時間気液接触させるのが有効である。そのため、上記構成によれば、スクラバでは高速で気液接触させることで効率よくPMを除去することができる。また、低温脱硫が行われるガスクーラでは、相対噴射速度を抑えて気液接触する時間を十分に確保することで、より効率よくSOxを除去することができる。
【0019】
さらに、本発明のある形態に係るエンジンシステムは、上記のうちのいずれかのEGRユニットを備えている。
【発明の効果】
【0020】
上記のEGRユニットによれば、高い脱硫性能を確保しつつ故障の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るエンジンシステムのブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るEGRユニットの概略図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係るEGRユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0023】
(第1実施形態)
はじめに、
図1及び
図2を参照して、第1実施形態について説明する。
【0024】
<エンジンシステム>
まず、本実施形態に係るエンジンシステム100について説明する。
図1は、エンジンシステム100のブロック図である。
図1に示すように、エンジンシステム100は、エンジン10と、過給器20と、EGRユニット30と、を備えている。
【0025】
本実施形態におけるエンジン10は、船舶の推進用主機であり、2ストロークディーゼルエンジンである。エンジン10には、過給器20から掃気通路11を介して掃気ガス(4ストロークエンジンの場合には「給気ガス」)が供給される。また、エンジン10から排出された排気ガスは排気通路12を介して過給器20に供給される。なお、エンジン10は、4ストロークエンジンであってもよく、ガスエンジンやガソリンエンジンであってもよい。また、エンジン10は船舶に用いられるものに限らず、発電設備に用いられるものであってもよい。
【0026】
過給器20は、空気を昇圧してエンジン10に供給する装置である。過給器20は、タービン部21と、コンプレッサ部22とを有している。タービン部21にはエンジン10から排出された排気ガスが供給され、排気ガスのエネルギによりタービン部21が回転する。タービン部21とコンプレッサ部22は連結シャフト23により連結されており、タービン部21の回転に伴ってコンプレッサ部22も回転する。コンプレッサ部22が回転すると、外部から取り込んだ空気(大気)が圧縮され、圧縮された空気は掃気ガスとしてエンジン10へ供給される。
【0027】
EGRユニット30は、エンジン10から排出された排気ガスをエンジン10へ戻す(再循環させる)ユニットである。本実施形態のEGRユニット30は、排気通路12のうち過給器20よりも上流側で排気ガスを抽出する、いわゆる高圧EGR型である。過給器20よりも上流側で抽出した排気ガスは高温高圧であることから、排気ガスをスクラバ31で洗浄した後、スクラバ31の下流側に位置するガスクーラ32によって排気ガスを冷却している。ガスクーラ32の下流側にはEGRブロワ(不図示)が設けられており、このEGRブロワによってEGRユニット30内の排気ガスが掃気通路11に排出される。
【0028】
<EGRユニット>
続いて、EGRユニット30の詳細を説明する。
図2は、本実施形態に係るEGRユニット30の概略図である。なお、
図2における黒矢印は排気ガスの流れを示しており、破線は洗浄液等の液体の流れを示している(
図3も同様)。
図2に示すように、EGRユニット30は、スクラバ31と、ガスクーラ32と、噴射部33と、を備えている。なお、本実施形態のEGRユニット30は、スクラバ31とガスクーラ32を一体に形成した一体型である。
【0029】
スクラバ31は、排気ガスを洗浄する部分である。本実施形態のスクラバ31は、スプレー式と溜水式を組み合わせた複合式である。スクラバ31は、排気ガスを内部に導く導入通路34を有しており、導入通路34の入口には噴射ノズル35が設けられている。噴射ノズル35からは脱硫用の中和剤を含む第1洗浄液38が噴射されるが、この第1洗浄液38は後述する貯水洗浄液36を第1循環ポンプ37で汲み上げたものである。排気ガスに第1洗浄液38を噴射することで、排気ガスに含まれるSOxが第1洗浄液38に溶解(脱硫)し、また、PMが第1洗浄液38に捕獲(脱塵)される。スクラバ31とガスクーラ32は、底部分がつながっており、共通する共有貯水部39を有している。上記の貯水洗浄液36は、この共有貯水部39に貯められている。
【0030】
共有貯水部39にはレベル計40が設けられており、共有貯水部39と噴射ノズル35をつなぐ配管41にはpH計42が設けられている。また、共有貯水部39には、中和剤投入装置43から中和剤が投入され、清水供給装置44から清水が供給される。本実施形態に係るEGRユニット30では、レベル計40及びpH計42の測定結果に基づいて、共有貯水部39における貯水洗浄液36のpH値及び水位が所定の範囲内となるように、中和剤投入装置43からの中和剤の投入量、及び清水供給装置44からの清水の供給量等が制御される。なお、中和剤としては、水酸化ナトリウムや水酸化マグネシウム等を使用することができるが、海水(又は海水の成分)を使用してもよい。
【0031】
また、スクラバ31の導入通路34を通過した排気ガスは、共有貯水部39に貯められた貯水洗浄液36内に放出される。これにより、排気ガスは貯水洗浄液36によってさらに洗浄されることになる。なお、噴射ノズル35から噴射された第1洗浄液38は排気ガスによって共有貯水部39に運ばれ、貯水洗浄液36にそのまま取り込まれる。そのため、貯水洗浄液36には使用済の第1洗浄液38が含まれており、当然ながら多くのPMが含まれることになる。また、スクラバ31とガスクーラ32は互いの上方部分が連通口45を介して繋がっており、貯水洗浄液36を出た排気ガスは、連通口45からガスクーラ32に流入する。なお、スクラバ31を通過した排気ガスは飽和温度まで下がっている。
【0032】
ガスクーラ32は、スクラバ31の下流側に位置しており、スクラバ31で洗浄された排気ガスを冷却する部分である。ガスクーラ32は、熱交換器46とミストキャッチャ47を有している。熱交換器46は、内部に冷却媒体が流れており、冷却媒体と排気ガスによって熱交換が行われる。これにより排気ガスは冷却される。ミストキャッチャ47は、熱交換器46の下流側に位置しており、排気ガスによって運ばれた第1洗浄液38、後述する噴射部33から噴射された第2洗浄液48、及び熱交換器46で発生した凝縮水を捕獲する。ミストキャッチャ47により捕獲された液体は、集まってある程度の大きさになると自重で落下し、共有貯水部39で回収される。なお、排気ガスは、ガスクーラ32を通過した後、掃気ガスと混合されてエンジン10に供給される(
図1参照)。
【0033】
噴射部33は、ガスクーラ32内を通過する排気ガスに脱硫用の中和剤を含んだ第2洗浄液48を噴射する部分である。噴射部33で噴射される第2洗浄液48は、共有貯水部39に貯められた貯水洗浄液36を浄化処理装置49によって浄化処理して再利用したものである。浄化処理装置49は、例えば遠心分離機によって主に構成されており、貯水洗浄液36からPMを取り除くことができる。ただし、貯水洗浄液36に含まれる中和剤は除去されない。つまり、第2洗浄液48には、貯水洗浄液36に含まれていた脱硫用の中和剤がそのまま含まれることになる。なお、噴射部33から噴射される第2洗浄液48の排気ガスに対する相対噴射速度は、スクラバ31の噴射ノズル35から噴射される第1洗浄液38の排気ガスに対する相対噴射速度よりも小さい。この相対噴射速度は、排気ガスの流速及び流れる方向を変更することによって調整することもでき、洗浄液38、48の噴射速度及び噴射方向を変更することによって調整することもできる。
【0034】
浄化処理装置49を通過した貯水洗浄液36は、浄化処理装置49の出口側に設けられた第2循環ポンプ50によって一部が噴射部33に供給され、残りが船外へ廃水される。噴射部33と浄化処理装置49をつなぐ配管51には噴射調整バルブ52が設けられており、船外と浄化処理装置49をつなぐ配管53には廃水調整バルブ54が設けられている。本実施形態では、エンジン10の負荷が所定値以下のときには、噴射調整バルブ52を閉じて噴射部33からの第2洗浄液48の噴射を停止する。そして、エンジン10の負荷が所定値を超えると、噴射調整バルブ52を開いて噴射部33からの第2洗浄液48の噴射を行う。さらに、噴射調整バルブ52の開度、廃水調整バルブ54の開度、及び第2循環ポンプ50の出力が調整され、エンジン10の負荷が大きくなるに従って噴射部33から噴射される第2洗浄液48の噴射量が大きくなるように制御される。
【0035】
<本実施形態の効果等>
以上で説明したとおり、本実施形態では、スクラバ31内において脱硫及び脱塵が行われた後、ガスクーラ32内において排気ガスの温度が低い状態で脱硫が行われる。つまり、本実施形態では、低温脱硫を後段に含む二段で脱硫が行われるため、高い脱硫性能を確保することができる。
【0036】
また、本実施形態では、噴射部33から噴射される第2洗浄液48の排気ガスに対する相対噴射速度は、スクラバ31の噴射ノズル35から噴射される第1洗浄液38の排気ガスに対する相対噴射速度よりも小さい。PMの除去には高速で気液接触させるのが有効であり、SOxの除去には長い時間気液接触させるのが有効である。そのため、本実施形によれば、スクラバ31では、第1洗浄液38を高速噴射することでPMを効率よく除去し、ガスクーラ32内では、低温脱硫において気液接触させる時間を十分に確保することで、より効率よくSOxを除去することができる。
【0037】
また、本実施形態では、高い脱硫性能を確保できることから、洗浄液に投入する中和剤の量を増やす必要もない。そのため、洗浄液にCO
2が溶解しにくく、固形分が析出することによる各機器の故障の発生を抑えることができる。さらに、ガスクーラ32内のSOxは第2洗浄液48で除去されるため、ガスクーラ内で発生する凝縮水が強酸となることはない。そのため、ガスクーラ32に発生し得る腐食を防止することができる。また、ガスクーラ32内で噴射される第2洗浄液48は浄化処理されたものであるため、ガスクーラ32に目詰まりが発生しにくい。さらに、本実施形態では二段で脱硫が行われるため、ガスクーラ32内で噴射される第2洗浄液48の量は少なく、ガスクーラ32内で水膜は発生しにくい。このように、本実施形態によれば、EGRユニット30の故障原因を排除することができる。
【0038】
また、本実施形態では、スクラバ31で使用する第1洗浄液38は浄化処理されないため、浄化処理装置49が大きくなりすぎるのを防ぎ、ひいてはEGRユニット30をコンパクトに構成することができる。さらに、本実施形態のような舶用のエンジンシステムでは、船外(海)に廃水する洗浄液を浄化処理するための浄化処理装置を備えている。そのため、本実施形態では、第2洗浄液48を洗浄するための浄化処理装置を新たに設ける必要がない。
【0039】
(第2実施形態)
次に、
図3を参照して、第2実施形態について説明する。
図3は、本実施形態に係るEGRユニット230の概略図である。本実施形態に係るエンジンシステム200は、EGRユニット230がスクラバ31とガスクーラ32を別体とする別体型である点で、第1実施形態に係るエンジンシステム100と構成が異なる。
【0040】
本実施形態に係るEGRユニット230は、スクラバ31と、ガスクーラ32と、噴射部33とを備え、さらにサージタンク60を備えている。
【0041】
スクラバ31は、第1実施形態の場合と同様に、スプレー式と溜水式を組み合わせた複合式である。スクラバ31の入口で排気ガスに向けて噴射した第1洗浄液38は、排気ガスに運ばれてスクラバ31の底部分にあたるスクラバ貯水部61に貯められる。また、導入通路34を通過した排気ガスはスクラバ貯水部61に貯められた第1洗浄液38内に放出される。なお、スクラバ31で噴射される第1洗浄液38は、サージタンク60に貯められた貯水洗浄液36を再利用したものである。スクラバ31には所定の高さ位置にドレンポート62が設けられている。第1洗浄液38の水面がこのドレンポート62の高さ位置にまで達すると、ドレンポート62から空気を通さないドレントラップ63を介して第1洗浄液38がサージタンク60に排出される。
【0042】
ガスクーラ32は、第1実施形態の場合と同様に、熱交換器46とミストキャッチャ47を有している。熱交換器46では排気ガスを冷却し、ミストキャッチャ47では排気ガスによって運ばれた第1洗浄液38、噴射部33から噴射された第2洗浄液48、及び熱交換器46で発生した凝縮水を捕獲する。ミストキャッチャ47で捕獲された液体は自重によって落下し、ガスクーラ32の底面に形成されたドレンポート64からドレントラップ65を介してサージタンク60に排出される。
【0043】
噴射部33は、ガスクーラ32内を通過する排気ガスに第2洗浄液48を噴射する。第2洗浄液48は、貯水洗浄液36を浄化処理装置49によって浄化したしたものである。なお、後述するように貯水洗浄液36には中和剤投入装置43が投入した中和剤が含まれており、浄化処理装置49では貯水洗浄液36から中和剤が除去されないため、第2洗浄液48には脱硫用の中和剤が含まれる。
【0044】
サージタンク60は、スクラバ31から排出された第1洗浄液38とガスクーラ32から排出された液体を貯めておくためのタンクである。つまり、サージタンク60には、第1洗浄液38を含んだ貯水洗浄液36が貯められている。また、サージタンク60には、pH計42が取り付けられており、貯水洗浄液36が所定のpH値となるように中和剤投入装置43からの中和剤の投入、及び、清水供給装置44からの清水の供給が行われる。
【0045】
以上のとおり、本実施形態に係るEGRユニット230においても、スクラバ31内で脱硫及び脱塵が行われた上で、さらにガスクーラ32内で低温脱硫が行われる。つまり、本実施形態では、低温脱硫を後段に含む二段で脱硫が行われるため、排気ガスの脱硫を効率よく行うことができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について図を参照して説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0047】
例えば、以上では、使用済の第1洗浄液38と使用済の第2洗浄液48を混ぜ合わせて貯水洗浄液36とし、この貯水洗浄液36を第1洗浄液38又は第2洗浄液48として再利用する場合について説明したが、第1洗浄液38と第2洗浄液48を別々に循環させてもよい。その場合には、第1洗浄液38のみならず、第2洗浄液48にも所定量の中和剤を投入すれば、ガスクーラ32内で低温脱硫が行われるため、高い脱硫性能を確保することができる。
【0048】
また、以上では、スクラバ31がスプレー式と溜水式を組み合わせた複合式である場合について説明したが、スクラバ31はスプレー式と溜水式の一方のみを採用したものであってもよく、これら以外の方式を採用したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るEGRユニットによれば、高い脱硫性能を確保しつつ故障の発生を抑えることができる。よって、EGRユニットの技術分野において有益である。
【符号の説明】
【0050】
10 エンジン
30、230 EGRユニット
31 スクラバ
32 ガスクーラ
33 噴射部
35 噴射ノズル
36 貯水洗浄液
38 第1洗浄液
48 第2洗浄液
49 浄化処理装置
100、200 エンジンシステム