特許第6280329号(P6280329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6280329皮膚の老化を防止および/または緩和するのに用いるためのマイクロRNA阻害剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6280329
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】皮膚の老化を防止および/または緩和するのに用いるためのマイクロRNA阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20180205BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20180205BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20180205BHJP
【FI】
   C12Q1/68 AZNA
   C12N15/00 A
   A61Q19/00
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-172867(P2013-172867)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2014-45773(P2014-45773A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2016年6月13日
(31)【優先権主張番号】12306029.5
(32)【優先日】2012年8月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508283406
【氏名又は名称】シャネル パフュームズ ビューテ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】カンディ エレオノーラ
(72)【発明者】
【氏名】メリーノ ジェリー
(72)【発明者】
【氏名】サインティニー ガエル
(72)【発明者】
【氏名】マヘ クリスチャン
【審査官】 千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/154402(WO,A1)
【文献】 特開2009−106283(JP,A)
【文献】 特表2010−537640(JP,A)
【文献】 特表2008−519606(JP,A)
【文献】 AGING, 2012.Nov, Vol. 4, No. 11, pp. 843-853
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の老化を防止および/または緩和するための候補化合物についてスクリーニングするin vitroにおける方法であって、以下のステップ:
a.少なくとも1つの被験化合物を、線維芽細胞試料と接触させるステップと、
b.前記線維芽細胞におけるmiR−134およびmiR−152から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの発現または活性を測定するステップと、
c.ステップa.で処置された線維芽細胞において、処置されていない線維芽細胞と比較して、少なくとも1つのマイクロRNAの発現について少なくとも20%の阻害、または少なくとも1つのマイクロRNAの活性について少なくとも20%の阻害が測定される化合物を選択するステップと、
d.ステップc.で得られた化合物の皮膚の老化に対する効果を試験するステップと
を含む方法。
【請求項2】
ステップb.をステップa.の前後に実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下のステップ:
a’.線維芽細胞の少なくとも2つの試料を調製するステップと、
a.試料のうちの1つを、少なくとも1つの被験化合物と接触させるステップと、次に
b.前記試料におけるmiR−134およびmiR−152から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの発現または活性を測定するステップと、
c.ステップa.で処置された線維芽細胞において、処置されていない線維芽細胞試料と比較して、少なくとも1つのマイクロRNAの発現について少なくとも20%の阻害、または少なくとも1つのマイクロRNAの活性について少なくとも20%の阻害が測定される化合物を選択するステップと
d.ステップc.で得られた化合物の皮膚の老化に対する効果を試験するステップと
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記線維芽細胞が、早期老化線維芽細胞であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
早期老化線維芽細胞が、古典的な培養条件下における70回の集団倍加後に得られることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
古典的な培養条件が、LSGS増殖サプリメントを添加した106培地中で、常にサブコンフルエント状態に保たれる線維芽細胞の培養を含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
被験化合物が、植物性抽出物から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップc.において測定されるマイクロRNAの発現または活性の阻害が、少なくとも50%であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
皮膚の老化を防止および/または緩和するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法に従って得られうる、miR−134およびmiR−152から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの阻害剤の化粧品としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老化を防止および/または緩和するための、マイクロRNAの発現または活性を阻害する化合物の同定および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の老化とは元来、培養の終末期における増殖性細胞について述べられる、増殖の不可逆的な停止の形態であるが、DNAの損傷、酸化ストレス、化学療法、および発がん性の活性化などの有糸分裂性刺激の過剰など、複数の刺激により誘導されることが知られている(Serranoら, 1997; Campisi, 2001; Schmittら, 2002)。細胞は、不可逆的な停止期に入ると、ベータ−ガラクトシダーゼ活性の増強、ならびにp53、前骨髄球性白血病タンパク質(PML)、p16INK4a、およびp19Arfを含めた重要なメディエーターの発現の増大を含め、特有の特徴を示す(Serranoら, 1997; Naritaら, 2003; Sharplessら, 2004)。大半はin vitroにおいて研究されているが、細胞の老化は、動物全身レベルにおける老化過程と相関付けられており、したがって、老化を制御する多くの因子が生物の老化の一因となることが示唆されている(SharplessおよびDePinho, 2004; Campisi, 2005)。
【0003】
全ての老化しつつある細胞(senescing cell)は、遺伝子発現の大きな変化を経る。包括的な遺伝子発現プロファイリングは、細胞周期、インスリン増殖因子、インターフェロン、MAPキナーゼ、および酸化ストレス経路における遺伝子を、細胞老化時において一貫して制御不良となるものとして同定している。遺伝子発現の変化は、老化の表現型をもたらすものであり、細胞における老化プログラムを活性化させる機構および経路の一部として十分に確立されている。しかし、老化時における遺伝子発現の変化の一因となる因子については、依然として明らかでない。
【0004】
マイクロRNA(miRNA)は、多様な生物学的過程および病理学的過程における遺伝子発現の重要な調節因子である。miRNAの発現レベルの変化は、細胞の老化(senescence)および生物の老化(aging)において生じ(Grillariら, 2010;Hacklら, 2010)、特定のmiRNAの推定標的であるmRNAのレベルの変化と連関している(Laffertyら, 2009; Heら, 2007; Maesら, 2009)。複数の研究により、miRNAの特定のセットが、線維芽細胞の複製老化において上方制御されることが確認されている(Faraonioら, 2012;Dhahbiら, 2011; Yong Wangら, 2010)。
【発明の概要】
【0005】
したがって、細胞の老化、特に、線維芽細胞の老化を防止するか、低減するか、または阻害までもする生成物または活性薬剤を提供することが望ましく、そして、重要である。
【0006】
したがって、本発明は、このような有用な薬剤を同定する方法を提供する。
【0007】
したがって、本発明は、皮膚の老化を防止および/または緩和するための候補化合物についてスクリーニングするin vitroにおける方法であって、以下のステップ:
a.少なくとも1つの被験化合物(test compound)を、線維芽細胞試料と接触させるステップと、
b.前記線維芽細胞におけるmiR−134およびmiR−152から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの発現または活性を測定するステップと、
c.a.で処置された線維芽細胞において、処置されていない線維芽細胞と比較して、少なくとも1つのマイクロRNAの発現について少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の阻害、または少なくとも1つのマイクロRNAの活性について少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の阻害が測定される化合物を選択するステップと
を含む方法に関する。
【0008】
線維芽細胞は、早期老化線維芽細胞(pre-senescent fibroblast)であることが好ましい。したがって、本発明は、皮膚の老化を防止および/または緩和するための候補化合物についてスクリーニングするin vitroにおける方法であって、以下のステップ:
a.少なくとも1つの被験化合物を、早期老化線維芽細胞試料と接触させるステップと、
b.前記早期老化線維芽細胞におけるmiR−134およびmiR−152から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの発現または活性を測定するステップと、
c.a.で処置された早期老化線維芽細胞において、処置されていない早期老化線維芽細胞と比較して、少なくとも1つのマイクロRNAの発現について少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の阻害、または少なくとも1つのマイクロRNAの活性について少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の阻害が測定される化合物を選択するステップと
を含む方法に関する。
【0009】
「早期老化線維芽細胞」は、検出可能なレベル(このレベルは、ウェスタンブロットにより決定することができる)でp16を発現する細胞を意味する。これらの細胞は、若齢の線維芽細胞より増殖が緩慢である。
【0010】
第1の実施形態によれば、ステップb.をステップa.の前後に実施する。この場合、ステップa.の前に、線維芽細胞、好ましくは早期老化線維芽細胞において測定されるマイクロRNA(miR−134およびmiR−152から選択される)の発現または活性は、対照値(すなわち、処置されていない線維芽細胞、好ましくは処置されていない早期老化線維芽細胞)に対応する。したがって、ステップc.は、a.で処置された線維芽細胞、好ましくは早期老化線維芽細胞において、ステップa.の前の同じ線維芽細胞、好ましくは早期老化線維芽細胞と比較して、少なくとも1つのマイクロRNAの発現について少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の阻害、または少なくとも1つのマイクロRNAの活性について少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の阻害が測定される化合物の選択を含む。
【0011】
別の実施形態によれば、方法は、線維芽細胞試料、好ましくは早期老化線維芽細胞試料を調製する第1のステップa’.を含む。したがって、本発明は、皮膚の老化を防止および/または緩和するための候補化合物についてスクリーニングするin vitroにおける方法であって、以下のステップ:
a’.線維芽細胞、好ましくは早期老化線維芽細胞の少なくとも2つの試料を調製するステップと、
a.試料のうちの1つを、少なくとも1つの被験化合物と接触させるステップと、次に
b.前記試料におけるmiR−134およびmiR−152から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの発現または活性を測定するステップと、
c.a.で処置された線維芽細胞、好ましくは早期老化線維芽細胞において、処置されていない線維芽細胞試料、好ましくは早期老化線維芽細胞試料と比較して、少なくとも1つのマイクロRNAの発現について少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の阻害、または少なくとも1つのマイクロRNAの活性について少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の阻害が測定される化合物を選択するステップと
を含む方法に関することが好ましい。
【0012】
この第2の実施形態では、ステップa.にかけられていない線維芽細胞試料、好ましくは早期老化線維芽細胞試料において測定される、miR−134およびmiR−152から選択されるマイクロRNAの発現または活性が、対照値(すなわち、処置されていない線維芽細胞、好ましくは処置されていない早期老化線維芽細胞)に対応する。
【0013】
「皮膚の老化」という表現により、これが、例えば、皺および細かい線、皮膚の干からび、皮膚のたるみ、皮膚の薄層化、ならびに弾力性および/もしくは張りを失った皮膚など、時間生物学的な、ならびに/または光誘導性の、老化による皮膚の外観における任意の変化を意図し、および、例えば、紫外性放射に曝露された後における任意の皮膚内部の、特にコラーゲンの、分解など、外観の変化に表れる、系統的ではない、皮膚におけるどのような内的変化も意図する。
【0014】
本発明における対象のmiRは、miR−134およびmiR−152から選択される。
成熟miR−134は配列番号1(ugugacugguugaccagagggg)である。これは、配列HGNC:31519である。
成熟miR−152は、配列番号2(UCAGUGCAUGACAGAACUUGG)である。これは、配列HGNC:31538である。
【0015】
これらの配列は、HGNCデータベースに由来する。
【0016】
miR−134の機能は未知であるが、miR−152は、子宮内膜がん(Tsurutaら, 2011)および肝細胞がん(Huangら, 2010)における腫瘍抑制因子として記載されており、肝細胞がんでは、miR−152が、DNAメチル化の異常を引き起こすDNAメチルトランスフェラーゼ1を標的とする。いかなる理論にも束縛されることなく、実施例は、いずれのmiRNAも、インテグリンアルファ9(ITGA9)を標的とするが、miR−152は、ITGA5を標的とすることを示す。インテグリンは、細胞−細胞間接着および細胞−マトリックス間接着を媒介するアルファ鎖およびベータ鎖から構成されるヘテロ二量体の膜内在性糖タンパク質である。ITGA9によりコードされるタンパク質は、ベータ1鎖に結合すると、細胞外マトリックスにおけるVCAM1、サイトタクチン、オステオポンチン、およびフィブロネクチン−EIIIA(FN−EIIIA、また、EDAとも称する)の受容体である、インテグリンを形成する。一般に、インテグリンなど、細胞−マトリックス間接着の受容体は、細胞とそれらを取り巻く細胞外マトリックス(ECM)との緊密な相互作用を伴う発生過程において、本質的な役割を果たす。それらの各々の(1または複数の)ECMリガンドへの接合を媒介するのに加え、インテグリンは、特化したシグナル伝達機能を有し、遺伝子発現、ならびに細胞の形状、遊走、増殖、および生存を制御しうる。さらに、ECMに結合するインテグリンは、マトリックスから細胞へのシグナルを伝達するのに必要とされるだけでなく、この相互作用は、細胞によるマトリックスの構成およびリモデリングを可能とする応答もまた誘発する(Leissら, 2008)が、この特徴は、老化した組織、特に、老化した皮膚では極めて制限される。近年の研究は、α9β1インテグリン(ITAG9)が、老化時には、マトリックス分解プロテアーゼの発現を増大させ(Royら, 2011)、皮膚の結合組織を構成するコラーゲンおよび他の細胞外マトリックスタンパク質を分解することを示している(Quanら, 2009)。
【0017】
試験される被験化合物は、任意の種類でありうる。被験化合物は、天然由来の場合もあり、化学合成により生成させた場合もある。化学合成は、構造的に明確な化合物、特徴づけされていない化合物もしくは物質、または化合物の混合物のライブラリーを含みうる。
【0018】
天然の化合物には、植物および動物など、植物由来の化合物が含まれる。被験化合物は、植物性であることが好ましく、植物抽出物(botanical extract)から選択されることが好ましい。
【0019】
上記のステップa’.およびステップa.において用いられる早期老化線維芽細胞は、複製老化の細胞モデルである。これらの早期老化線維芽細胞は、古典的な培養条件下における70回の集団倍加後に得られる。古典的な培養条件は、LSGS増殖サプリメントを添加した106培地中で、常にサブコンフルエント状態に保たれる線維芽細胞の培養を含む。
【0020】
それらは、以下の工程により得ることが好ましい。
【0021】
ヒト新生児初代皮膚線維芽細胞を、適切な培地中で培養する。前記培地は、LSGS増殖サプリメントを添加した106培地でありうる。細胞は、常にサブコンフルエント状態に保つ。細胞は、適切な時点、通常は毎週1回継代培養する。
【0022】
各継代培養では、細胞の一部を回収および分析して、集団倍加、集団倍加時間、老化についての生化学的マーカー、および細胞周期を測定する。
【0023】
ヒト初代線維芽細胞の集団倍加は、約100日間の培養期間において測定することが好ましい。老化マーカー(p16)の解析から、増殖マーカー(p1)が減少する間には細胞が分化していないことが示唆される。老化時においては、増殖中の細胞(proliferating cells)の百分率が低下する。
【0024】
ステップa.によれば、被験化合物を、線維芽細胞試料、好ましくは早期老化線維芽細胞試料と接触させる。
【0025】
ステップb.によれば、前記線維芽細胞、好ましくは早期老化線維芽細胞において、miR−134およびmiR−152から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの発現および/または活性を測定する。
【0026】
「マイクロRNAの発現」という用語は、生成するマイクロRNAの量を意味することを意図する。
【0027】
「マイクロRNAの活性」という用語は、前記マイクロRNAが、それがハイブリダイズするmRNAのレベルを阻害する能力を意味することを意図する。
【0028】
当業者は、前記マイクロRNAがハイブリダイズするmRNAを定量的または半定量的に検出し、したがって、前記マイクロRNAの活性を決定する技法に精通している。mRNAの、特定のヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションに基づく技法は、ノーザンブロット法、RT−PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)、定量的RT−PCR(qRT−PCR)など、最も一般的な技法である。
【0029】
当業者はまた、マイクロRNA、または前記マイクロRNAがハイブリダイズするmRNAを定量的または半定量的に検出する技法にも精通している。特に、マイクロRNAの発現は、リアルタイムPCRにより測定することができる。マイクロRNAの活性は、mRNA標的についてのリアルタイムPCRにより測定することもでき、ウェスタンブロットによって、標的のタンパク質レベルを評価することにより測定することもできる。代替的に、標的が未知の場合は、ベータ−gal染色または増殖に対する効果など、マイクロRNA自体の生物学的効果を評価することにより、マイクロRNAの活性を調べることもできる。
【0030】
マイクロRNAの発現は、リアルタイムPCRにより測定することが好ましい。
【0031】
次に、被験化合物による処置後におけるマイクロRNAの発現または活性を、対照値と比較する、すなわち、処置前における同じ線維芽細胞(好ましくは早期老化線維芽細胞)において得られた値、または処置されていない別の線維芽細胞(好ましくは早期老化線維芽細胞)試料において得られた値と比較する。
【0032】
ステップc.によれば、有用な化合物は、処置された線維芽細胞、好ましくは早期老化線維芽細胞において、処置されていない線維芽細胞、好ましくは早期老化線維芽細胞と比較して、少なくとも1つのマイクロRNAの発現について少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の阻害、または少なくとも1つのマイクロRNAの活性について少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%の阻害が測定される化合物である。前記マイクロRNAの発現または活性の阻害は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%であることが好ましい。
【0033】
本明細書で規定されるスクリーニング法により選択された化合物は、その後、皮膚の老化に対するそれらの効果について、他のin vitroモデルおよび/またはin vivoモデルにおいて調べることができる。本発明による有用な化合物は、標的とされるマイクロRNA、すなわち、miR−134およびmiR−152から選択されるマイクロRNAの阻害剤である。
【0034】
本発明の対象はまた、miR−134およびmiR−152から選択される少なくとも1つのマイクロRNAの阻害剤の化粧品としての使用(cosmetic use)であり、前記阻害剤は、皮膚の老化を防止および/または緩和するための上記の方法に従って同定される。
【0035】
別の態様によれば、本発明の目的は、少なくとも1つのマイクロRNA阻害剤の使用であり、前記阻害剤は、皮膚の老化を防止および/または緩和するための治療組成物を作製する目的で、上記の方法に従って同定される。したがって、本発明はまた、少なくとも1つのマイクロRNA阻害剤の使用に関し、前記阻害剤は、皮膚の老化を防止および/または緩和するための上記の方法に従って同定される。
【0036】
阻害剤は、miR−134およびmiR−152から選択されるマイクロRNAの発現または活性を消失させるかまたは実質的に低減する化合物を指す。「実質的に」という用語は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%の低減を意味し、より好ましくは少なくとも60%の低減を意味する。
【0037】
マイクロRNA阻害剤は、組成物の0.001〜10重量%の比率で、好ましくは組成物の0.01〜5重量%の比率で用いることができる。
【0038】
阻害剤は、アンチセンスDNAポリヌクレオチドまたはアンチセンスRNAポリヌクレオチドの場合もあり、siRNAの場合もある。マイクロRNA(miR)の阻害剤は、抗miRであることが好ましい。
【0039】
抗miRは、内因性miRを特異的に阻害するmiR阻害剤である。抗miRは、内因性マイクロRNA分子に特異的に結合し、これを阻害するようにデザインされた一本鎖核酸である。抗miRは、標的miRの配列に相補的なヌクレオチド配列を有する。これらの即時使用可能な(ready-to-use)阻害剤は、siRNAに用いられるトランスフェクションパラメータまたは電気穿孔パラメータと同様のトランスフェクションパラメータまたは電気穿孔パラメータを用いて細胞内に導入することができ、miRの生物学的効果についての詳細な研究を可能とする。抗miRの使用は、miR活性の下方制御によるmiRの機能的解析を可能とする。
【0040】
抗miRは市販されており、例えば、AmbionまたはApplied Biosystemsより得ることができる。
【0041】
文献に基づくと、miRの発現を70%阻害すると、ヒト正常細胞における老化の誘導/阻害に影響する(Menghini R, Casagrande V, Cardellini M, Martelli E, Terrinoni A, Amati F, Vasa-Nicotera M, Ippoliti A, Novelli G, Melino G, Lauro R, Federici M., MicroRNA 217 modulates endothelial cell senescence via silent information regulator 1. Circulation. 2009;120(15):1524-32)。
【0042】
上記のスクリーニング法により同定されたmiR阻害剤は、生理学的に許容される担体、好ましくは、美容的に許容される媒体、すなわち、毒性、非適合性、不安定性、またはアレルギー反応の危険性なしにヒトの皮膚と接触させて用いるのに適し、とりわけ、使用者に許容されない不快感(発赤、こわばり、刺痛など)を引き起こすことのない媒体と組み合わせて、組成物中に調合することができる。これらの組成物は、例えば、経口投与することもでき、局所投与することもできる。組成物は、局所適用することが好ましい。経口投与の場合、組成物は、錠剤、ゲル状カプセル、糖衣錠、シロップ、懸濁液、溶液、粉末、顆粒、エマルジョン、制御放出のためのマイクロスフェアもしくはナノスフェアの懸濁液または脂質ベシクルもしくはポリマーベシクルの形態でありうる。局所投与の場合、組成物は、より具体的に、皮膚および粘膜の治療における使用のための組成物であり、軟膏(salve)、クリーム、ミルク、軟膏(ointment)、粉末、含浸パッド、溶液、ゲル、スプレー、ローション、または懸濁液の形態でありうる。組成物はまた、制御放出のためのマイクロスフェアもしくはナノスフェアの懸濁液、または脂質ベシクルもしくはポリマーベシクル、またはポリマーパッチ、またはハイドロゲルの形態でもありうる。この局所適用のための組成物は、無水物形態の場合もあり、水性形態の場合もあり、エマルジョン形態の場合もある。局所適用のための組成物は、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、または多重エマルジョン(W/O/WエマルジョンまたはO/W/Oエマルジョン)の形態の場合もあり(これらは、場合によって、マイクロエマルジョンの場合もあり、ナノエマルジョンの場合もある)、水性分散液、溶液、水性ゲル、または粉末の形態の場合もある。好ましい変化形では、組成物が、ゲル、クリーム、またはローションの形態である。
【0043】
組成物の生理学的に許容される担体は一般に、水を含み、場合によって、エタノールなど、他の溶媒も含む。
【0044】
本組成物は、顔および/または身体の皮膚のためのケア製品および/またはクレンジング製品として用いることが好ましく、とりわけ、例えば、ポンプ式のディスペンサーボトル、エアゾール、またはチューブ内でコンディショニングされた流体、ゲル、またはムースの形態の場合もあり、例えば、ジャー内でコンディショニングされたクリームの形態の場合もある。変化形として、組成物は、メーキャップ製品の形態の場合もあり、特に、ファウンデーションまたはルースパウダーもしくはコンパクトパウダーの形態の場合もある。
【0045】
組成物は、以下から選択される少なくとも1つの化合物など、各種の補助剤を含みうるが、この列挙を限定的とするものではない:
・とりわけ、ポリジメチルシロキサン(ジメチコン)、ポリアルキルシクロシロキサン(シクロメチコン)、およびポリアルキルフェニルシロキサン(フェニルジメチコン)など、直鎖状または環状で揮発性または非揮発性のシリコーン油;フルオロ油、アルキル安息香酸、および、ポリイソブチレンなどの分枝状炭化水素など、合成油;植物油、とりわけ、ダイズ油またはホホバ油;ならびに液体石油ゼリーなどの鉱油から選択されうる油;
・オゾケライト、ポリエチレン蝋、蜜蝋、またはカルナウバ蝋などの蝋;
・とりわけ、触媒の存在下における、少なくとも1つの反応基(とりわけ、水素またはビニル)を含有し、末端位および/または側鎖位において、少なくとも1つのアルキル基(とりわけ、メチル)またはフェニルを保有するポリシロキサンの、有機水素ポリシロキサンなどの有機シリコーンとの反応によって得られるシリコーンエラストマー;
・界面活性剤、好ましくは、非イオン性であれ、アニオン性であれ、カチオン性であれ、両親媒性であれ、乳化性の界面活性剤であり、特に、グリセロールの脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、およびスクロースの脂肪酸エステルなど、ポリオールの脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールの脂肪族アルキルエーテル;アルキルポリグルコシド;ポリシロキサンで修飾されたポリエーテル;ベタインおよびその誘導体;ポリクォタニウム;エトキシル化された脂肪族アルキル硫酸塩;スルホコハク酸;サルコシン酸;リン酸アルキルおよびリン酸ジアルキルならびにこれらの塩;ならびに脂肪酸石鹸;
・直鎖状脂肪族アルコールであり、特に、セチルアルコールおよびステアリルアルコールなどの共界面活性剤;
・増粘剤および/またはゲル化剤であり、特に、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸(AMPS)および/またはアクリルアミドおよび/またはアクリル酸および/またはアクリル酸塩もしくはアクリル酸エステルの、架橋形成されたまたは架橋形成されない、親水性または親油性のホモポリマーおよびコポリマー;キサンタンガムまたはグアーガム;セルロースの誘導体;ならびにシリコーンガム(ジメチコノール);
・ジベンゾイルメタン誘導体(ブチルメトキシジベンゾイルメタンを含めた)、ケイ皮酸誘導体(エチルヘキシルメトキシケイ皮酸を含めた)、サリチル酸、パラアミノ安息香酸、β,β’−ジフェニルアクリル酸、ベンゾフェノン、ベンジリデンカンファー誘導体、フェニルベンズイミダゾール、トリアジン、フェニルベンゾトリアゾール、およびアントラニル酸誘導体などの有機スクリーニング剤;
・コーティングされたもしくはコーティングされない色素またはナノ色素の形態における鉱物酸化物に基づき、特に、二酸化チタンまたは酸化亜鉛に基づく無機スクリーニング剤;
・染料;
・保存剤;
・EDTA塩などの封鎖剤;
・香料;
・ならびにこれらの混合物。
【0046】
このような補助剤の例はとりわけ、限定なしに述べると、皮膚ケア業界で通常用いられる、多種多様な美容成分および医薬成分であって、本発明の組成物中のさらなる成分として用いるのに適する美容成分および医薬成分について記載する、CTFAによる辞典(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook, The Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association刊, 第11版, 2006)において言及されている。
【0047】
組成物はまた、充填剤、色素、ナクレ、伸長剤、およびマッティングポリマー、ならびにこれらの混合物など、光学的効果を伴う少なくとも1つの化合物も含みうる。
【0048】
「充填剤」という用語は、組成物に、実体または剛性および/もしくは柔軟性、マット効果、ならびに、適用直後の均一性を与えるのに適する、無色または白色、鉱物性または合成性、層状または非層状の粒子を意味するものとして理解されたい。とりわけ言及されうる充填剤には、滑石、雲母、シリカ、カオリン、Nylon−12(Atochem社により市販されているOrgasol(登録商標))などのNylon(登録商標)粉末、ポリエチレン粉末、ポリウレタン粉末、ポリスチレン粉末、ポリエステル粉末、場合によって、修飾デンプン、Tospearl(登録商標)の商標名でToshiba社により市販されているシリコーン樹脂製マイクロビーズなどのシリコーン樹脂製マイクロビーズ、ヒドロキシアパタイト、およびシリカ製中空マイクロスフェア(Maprecos社製のSilica Beads(登録商標))が含まれる。
【0049】
「色素」という用語は、媒体中で不溶性の白色もしくは有色、鉱物性もしくは有機性の粒子であって、組成物を着色し、かつ/または不透明化させることを意図する粒子を意味するものとして理解されたい。色素は、標準サイズの場合もあり、ナノメートルサイズの場合もある。言及されうる鉱物性色素には、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、および二酸化セリウムがあり、また、酸化亜鉛、酸化鉄、および酸化クロムもある。
【0050】
「ナクレ」という用語は、光を反射する虹色の粒子を意味するものとして理解されたい。想定されうるナクレの中では、天然の真珠層、酸化チタン、酸化鉄、天然色素、またはオキシ塩化ビスマスでコーティングした雲母について言及することができ、また、着色したチタン雲母についても言及することができる。
【0051】
水性相におけるこれらの充填剤および/または色素および/またはナクレの質量濃度は一般に、組成物の総重量に対する重量比で0.1%〜20%であり、好ましくは0.2%〜7%である。
【0052】
「伸長剤」という用語は、皮膚を伸長させ、この伸長効果により、皮膚を滑らかにし、皺およびこれらに由来する小皺を軽減するか、なおまたはこれらを即時に消失させるのに適する化合物を意味するものとして理解されたい。言及されうる伸長剤には、天然由来のポリマーが含まれる。「天然由来のポリマー」という用語は、植物由来のポリマー、外皮に由来するポリマー、鶏卵タンパク質、および天然由来のラテックスを意味する。これらのポリマーは、親水性であることが好ましい。とりわけ言及されうる植物由来のポリマーには、タンパク質およびタンパク質の加水分解物が含まれ、より具体的には、トウモロコシ抽出物、ライムギ抽出物、コムギ抽出物、ソバ抽出物、ゴマ抽出物、スペルトコムギ抽出物、エンドウ抽出物、マメ抽出物、レンティル抽出物、ダイズ抽出物、およびルピン抽出物など、穀類抽出物、野菜抽出物、および油産生植物の抽出物が含まれる。合成ポリマーは一般に、ラッテクスまたはシュードラテックスの形態にあり、重縮合体型の場合もあり、フリーラジカルの重合化により得られる場合もある。とりわけ、ポリエステル/ポリウレタン分散液、およびポリエーテル/ポリウレタン分散液について言及しうる。伸長剤は、PVP/アクリル酸ジメチコニルおよび親水性ポリウレタンのコポリマー(Hydromer社製のAquamere S−2001(登録商標))であることが好ましい。
【0053】
本明細書における「マッティングポリマー」という用語は、溶液中、分散液中、または粒子形態中の任意のポリマーであって、皮膚のテカリを低減し、肌の色を統一するポリマーを意味する。言及されうる例には、シリコーン製エラストマー、樹脂粒子、およびこれらの混合物が含まれる。言及されうるシリコーン製エラストマーの例には、ShinEtsu社によりKSG(登録商標)の商標名で市販されている製品、Dow Corning社によりTrefil(登録商標)、BY29(登録商標)、もしくはEPSX(登録商標)の商標名で市販されている製品、またはGrant Industries社によりGransil(登録商標)の商標名で市販されている製品が含まれる。
【0054】
本発明において用いられる組成物はまた、マイクロRNA阻害剤以外の活性薬剤も含む場合があり、特に、以下から選択される少なくとも1つの活性薬剤を含む場合があるが、この列挙を限定的とするものではない:増殖因子の生成を刺激する薬剤;抗糖化剤または脱糖化剤;コラーゲンの合成を増大させるか、またはその分解を防止する薬剤(抗コラゲナーゼ剤であり、とりわけ、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤);エラスチンの合成を増大させるか、またはその分解を防止する薬剤(抗エラスターゼ剤);インテグリン、またはテンシンなど、焦点接着成分の合成を刺激する薬剤;グリコサミノグリカンまたはプロテオグリカンの合成を増大させるか、またはそれらの分解を防止する薬剤(抗プロテオグリカナーゼ剤);線維芽細胞の増殖を増大させる薬剤;脱色素沈着剤または抗色素沈着剤;抗酸化剤もしくはフリーラジカルスカベンジャーまたは抗汚染剤;ならびにこれらの混合物。
【0055】
このような薬剤の例は、とりわけ、以下の薬剤である:植物抽出物、特に、コンドルス・クリスプス(Chondrus crispus)抽出物、テルムス・テルモフィラス(Thermus thermophilus)抽出物、エンドウ(Pisum sativum)抽出物(Proteasyl(登録商標)TP LS)、センテラ・アジアチカ(Centella asiatica)抽出物、イカダモ(Scenedesmus)属抽出物、モリンガ・プテリゴスペルマ(Moringa pterygosperma)抽出物、マンサク抽出物、セイヨウグリ(Castanea sativa)抽出物、ローゼル(Hibiscus sabdriffa)抽出物、ゲッカコウ(Polianthes tuberosa)抽出物、アルガンツリー(Argania spinosa)抽出物、アロエ・ベラ(Aloe vera)抽出物、フサザキスイセン(Narcissus tarzetta)抽出物、または甘草抽出物;ダイダイ(Citrus aurantium)のエッセンシャルオイル(ネロリ);グリコール酸、乳酸、およびクエン酸などのα−ヒドロキシ酸、ならびにこれらのエステル;サリチル酸などのβ−ヒドロキシ酸、およびこれらの誘導体;植物タンパク質の加水分解物(とりわけ、ダイズの加水分解物、またはヘーゼルナッツの加水分解物);アクリル化オリゴペプチド(とりわけ、Sederma社によりMaxilip(登録商標)、Matrixyl(登録商標)3000、Biopeptide(登録商標)CL、またはBiopeptide(登録商標)ELの商標名で市販されている);酵母抽出物であり、特に、サッカロマイセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)抽出物;藻類抽出物であり、特に、コンブ抽出物;パルミチン酸レチニル、アスコルビン酸、アスコルビルグルコシド、リン酸アスコルビルマグネシウムまたはリン酸アスコルビルナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル、ソルビン酸アスコルビル、トコフェロール、酢酸トコフェリル、およびソルビン酸トコフェリルなど、ビタミンおよびそれらの誘導体;アルブチン;コウジ酸;エラグ酸;ならびにこれらの混合物。
【0056】
変化形として、または加えて、本発明において用いられる組成物は、Laboratoires Serobiologiques/Cognis France社により、Proteasyl TP LS(登録商標)の商標名で市販されている、エンドウ(Pisum sativum)種子抽出物など、少なくとも1つのエラスターゼ阻害剤(抗エラスターゼ)を含みうる。
【0057】
組成物はまた、保湿剤、安定化剤、水分制御剤、pH制御剤、浸透圧調節剤、またはUV−AスクリーンおよびUV−Bスクリーンなど、不活性添加剤またはこれらの添加剤の組合せも含有しうる。
【0058】
以下の例は、本発明を、その範囲を限定することなく例示する。これらの例は、以下に列挙される図面に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】ヒト皮膚線維芽細胞における複製老化の誘導。(A)103日間の培養期間におけるヒト初代線維芽細胞の集団倍加を示す図である。70回の集団倍加後に、増殖曲線がプラトーをなすことから、細胞が、分裂を停止し、老化状態に達しつつあることが示される。(B)ウェスタンブロットが、継代培養1(p1)、p4、p8、およびp16におけるヒト線維芽細胞からのタンパク質抽出物に対して実施され、sirt1およびp16など、一部の老化マーカーについての解析を示す。β−アクチンは、ローディング対照として用いた。(C)p1、p4、p8、およびp16におけるヒト線維芽細胞を3時間にわたるBrdUパルス下に置き、回収し、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、フローサイトメトリーにより解析した。BrdU陽性細胞は、S期の蛍光集団として示され、PI染色によりDNA含量が2nまたは4nであると評価される(プロットでは、250および400の値に定められる)。(DおよびE)p1、p4、p8、およびp12におけるSA−β−ガラクトシダーゼ染色および線維芽細胞のフィールド1つ当たりの青色細胞個数による定量化を示す図である。
図2】線維芽細胞の複製老化におけるmiR−134の発現。リアルタイムPCRによるmiR−134の相対定量化は、p1の増殖中の線維芽細胞、p11の早期老化線維芽細胞、およびp16の老化線維芽細胞から回収した全RNAに対して実施した。
図3】線維芽細胞の複製老化におけるmiR−152の発現。リアルタイムPCRによるmiR−134の相対定量化は、p1の増殖中の線維芽細胞、p11の早期老化線維芽細胞、およびp16の老化線維芽細胞から回収した全RNAに対して実施した。
図4】miR−134およびmiR−152が、増殖中の線維芽細胞/若齢の線維芽細胞へのトランスフェクションにより、線維芽細胞における増殖を抑制する。(A)陰性対照配列、miR−134配列、またはmiR−152配列による線維芽細胞のトランスフェクションの96時間後に、細胞を3時間にわたるBrdUパルス下に置き、回収し、PIで染色し、図1で記載した通りにフローサイトメトリーにより解析した。(B)陰性対照配列、miR−134配列、およびmiR−152配列によるトランスフェクション後における、BrdU陽性線維芽細胞の定量化。
図5】miR−134およびmiR−152が、増殖中の線維芽細胞/若齢の線維芽細胞へのトランスフェクションにより、線維芽細胞における老化を誘導する。(AおよびB)陰性対照配列、miR−134配列、およびmiR−152配列によるトランスフェクションの96時間後における、SA−β−ガラクトシダーゼ染色および線維芽細胞のフィールド1つ当たりの青色細胞個数による定量化。
図6】ITGA9は、miR−134およびmiR−152の推定標的であり、線維芽細胞の複製老化において減少する。(A)リアルタイムPCRによる、p1およびp16におけるITGA9のmRNAレベルの相対定量化。(B)ITGA9の3’UTRにおいて予測されるmiR−134およびmiR−152の標的部位を、TargetScan 6.1ソフトウェアにより同定した。(C)p1およびp16における線維芽細胞からのタンパク質抽出物に対して実施したウェスタンブロットにより、ITGA9のタンパク質レベルが示される。β−アクチンは、ローディング対照として用いた。
図7】ITGA9のmRNAは、線維芽細胞へのmiR−134およびmiR−152のトランスフェクションにより下方制御される。陰性対照配列、miR−134配列、およびmiR−152配列によるトランスフェクションの96時間後における、リアルタイムPCRによる、線維芽細胞のITGA9 mRNAレベルの相対定量化。
図8】ITGA5は、miR−152の推定標的であり、線維芽細胞の複製老化において減少する。(A)リアルタイムPCRによる、p1およびp16におけるITGA5 mRNAレベルの相対定量化。(B)ITGAの3’UTRにおいて予測されるmiR−152の標的部位を、TargetScan 6.1ソフトウェアにより同定した。(C)p1およびp16における線維芽細胞からのタンパク質抽出物に対して実施したウェスタンブロットにより、ITGA5のタンパク質レベルが示される。β−アクチンは、ローディング対照として用いた。
図9】ITGA5は、線維芽細胞へのmiR−152のトランスフェクションにより下方制御される。(A)陰性対照配列およびmiR−152配列によるトランスフェクションの96時間後における、リアルタイムPCRによる、線維芽細胞のITGA5 mRNAレベルの相対定量化。(B)陰性対照配列、miR−152配列、および抗miR 152配列によるトランスフェクションの96時間後において、線維芽細胞からのタンパク質抽出物に対して実施したウェスタンブロットにより、ITGA5のタンパク質レベルが示される。β−アクチンは、ローディング対照として用いた。
図10】線維芽細胞において特異的なアンタゴmiRを用いるmiR−134の阻害。陰性対照配列および抗miR−134配列による線維芽細胞のトランスフェクションの96時間後における、リアルタイムPCRによる、miR−134レベルの相対定量化。
図11】線維芽細胞において特異的なアンタゴmiRを用いるmiR−152の阻害。陰性対照配列および抗miR−152配列による線維芽細胞のトランスフェクションの96時間後における、リアルタイムPCRによる、miR−152レベルの相対定量化。
図12】化合物4および5によるmiR−134の阻害。陰性対照および異なる濃度の化合物4または5による線維芽細胞の処置の48時間後における、リアルタイムPCRによるmiR−134レベルの相対定量化。
図13】化合物2、4、および8によるmiR−152の阻害。陰性対照および異なる濃度の化合物2、4、または8による線維芽細胞の処置の48時間後における、リアルタイムPCRによるmiR−152レベルの相対定量化。
【実施例1】
【0060】
材料および方法
細胞の培養およびトランスフェクション
ヒト新生児初代皮膚線維芽細胞(HDFn、Cascade、Invitrogen、Carlsbad、California、USA)を、LSGS増殖サプリメント(Cascade)を添加した106培地中で培養した。細胞は、通常毎週1回継代培養し、各継代培養では、継代培養間で生じる集団倍加および集団倍加時間を計算するために、採取された細胞の数および播種された細胞の数を記録した。各継代培養では、細胞の異なるアリコートを三連(triplicate)で採取して、RNAおよびタンパク質を抽出し、細胞の老化状態または非老化状態をアッセイするために、アリコートを老化活性化β−ガラクトシダーゼ染色にかけた。
【0061】
ヒト初代線維芽細胞は、製造元のプロトコールに従い、Lipofecatmine RNAimaxトランスフェクション試薬(Invitrogen)を用いて、ヒトpre−miR 134、抗miR−134、pre−miR−152、抗miR−152、および陰性対照としてのスクランブル配列(Ambion、Texas、USA)でトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に、培地を除去し、新鮮な培地で置換した。
【0062】
400,000個のヒト初代線維芽細胞を、LSGS増殖サプリメントを伴う106培地中に播種し、被験化合物で処置した。24時間後および48時間後に、細胞を回収し、標準的な手順に従いmRNAを抽出した。下記の通りにリアルタイムPCRを実施した。
【0063】
RNAの抽出およびリアルタイムPCR解析
細胞に由来する全RNAは、全RNA抽出についての製造元のプロトコールに従うことにより、mirVana mirRNA Isolation Kit(Ambion)を用いて単離した。全RNAは、NanoDrop Spectophotometer(Thermo Scientific、Delaware、USA)を用いて定量化し、RNAの品質は、アガロースゲル上で管理した。マイクロRNAを検出するため、RNAは、TaqMan MicroRNA Reverse Transcriptionキットを用いて逆転写させ、TaqMan ユニバーサル マスター ミックス(Applied Biosystem)ならびにmiR−134およびmiR−152に特異的なプライマーによりqRT−PCRを実施した。U18を内部対照として用いた(Applied Biosystem)。各遺伝子およびmiRの発現は、閾値サイクル(Ct)により規定し、相対発現レベルは、ハウスキーピング遺伝子であるU18の発現に対する標準化の後、2−ΔΔCt法を用いることにより計算した。
【0064】
老化に関連するβ−ガラクトシダーゼ染色
細胞を6ウェル培養プレート内で増殖させ、PBSで洗浄し、PBS中に2%のホルムアルデヒド/0.2%のグルタルアルデヒドで5分間にわたり固定した。PBSによるさらなる洗浄ステップの後、細胞を、β−ガラクトシダーゼ染色溶液(1mg/mLの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−Dガラクトシド[X−gal]を含有する、150mmol/LのNaCl、2mmol/LのMgCl2、5mmol/Lのフェリシアン化カリウム、5mmol/Lのフェロシアン化カリウム、40mmol/Lのクエン酸、12mmol/Lのリン酸ナトリウム、pH6.0)と共に、37℃で24時間にわたりインキュベートした。染色溶液を70%のグリセロールで置換することにより、反応を停止させた。
【0065】
細胞増殖および細胞周期の解析
細胞増殖を評価するのに用いられる方法は一般に、DNA合成時における3Hチミジンまたはブロモデオキシウリジン(BrdU)などのチミジン類似体の取込みに基づく。Click−iT(商標)EdUフローサイトメトリーアッセイキットは、BrdUアッセイに対する新規の代替法である(Molecular Probes、Eugene、OR、USA)。この方法は、ヌクレオシド類似体であるBrdUの、抗体に基づく検出を、活発なDNA合成時にDNAへと取り込まれるチミジンのヌクレオシド類似体であるEdU(5−エチニル−2’−デオキシウリジン)で置換する。略述すると、細胞を、EdUと共に4時間にわたりインキュベートした。インキュベーション後、製造元のプロトコールに従い、試料を固定、透過処理、および染色した。細胞周期は、FACS Calibur フロー サイトメーター(BD Biosciences、San Jose、CA、USA)を用いて解析した。Cell Quest(BD)プログラムおよびModfit LT(Verity ソフトウェア、BD)プログラムを用いて、15,000事象を評価した。
【0066】
バイオインフォマティックス
ITGA9の3’UTRにおけるmiR−134およびmiR−152の標的部位についての解析は、http://www.targetscan.org/において入手可能なTargetScan 5.1ソフトウェアを用いて実施した。
【0067】
ウェスタンブロット法
全細胞抽出物を、SDSポリアクリルアミドゲル上で分離し、Hybond P PVDF膜(G&E Healthcare、UK)上でブロッティングした。膜は、PBST中5%の脱脂粉乳でブロッキングし、一次抗体と共に室温で2時間にわたりインキュベートし、洗浄し、適切な西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体(ウサギおよびマウス、BioRad、Hercules、California、USA)を用いて、室温で1時間にわたりハイブリダイズさせた。検出は、ECL化学発光キット(Perkin Elmer、Waltham、Massachusetts、USA)により実施した。抗Sirt1(Abcam;希釈は1:500)、抗βアクチン(Sigma、St Louis、Minnesota、USA;希釈は1:5000)、抗p16(Santa Cruz Biotechnology、California、USA;希釈は1:1000)、抗ITGA9(Sigma、St Louis、Minnesota、USA;希釈は1:400)を用いた。
【0068】
結果
1.ヒト初代線維芽細胞における複製老化についてのモデルの確立:ヒト初代線維芽細胞を培養し、老化状態に達するまで連続継代培養した。図1Aは、103日間の培養期間におけるヒト初代線維芽細胞の集団倍加を示す。70回の集団倍加(継代培養16:p16)後に、増殖曲線がプラトーをなすことから、細胞が、分裂を停止し、老化状態に達しつつあることが示される。p1、p4、p8、およびp16において細胞を回収し、p16/INK4aおよびSirt−1についてのウェスタンブロット解析を実施した。Sirt−1の発現の減衰およびp16/INK4aレベルの上昇は、細胞が複製老化状態に入りつつあることを示す。βアクチンのタンパク質レベルは、ローディング対照として報告される(図1Aおよび1B)。異なる継代培養におけるBrdU陽性ヒト初代線維芽細胞の百分率により示される通り、老化時において、増殖中の細胞の百分率は低下する(図1C)。ヒト初代線維芽細胞は、70回集団倍加した16継代培養後に複製老化を経る。異なる継代培養のヒト初代線維芽細胞におけるSA−β−ガラクトシダーゼ染色についての顕微鏡写真は、老齢細胞における老化マーカーの発現を示す。SA−β−ガラクトシダーゼを発現させる細胞は、濃い青色の染色を示す(図1D)が、染色の定量化は図1Eに示される。
【0069】
2.老化しつつある線維芽細胞におけるmiR−134レベル:p1、p11、およびp16において細胞を回収して、リアルタイムPCRを実施した。p1〜p16のmiR−134レベルの相対定量化は、老化線維芽細胞におけるmiR−134発現の有意な増大を示す:p16において、miR−134の発現は、p1におけるその発現(1.00±0.05に等しい)の約5.35(±0.08)倍である、図2。したがって、線維芽細胞の老化状態は、miR−134発現の増大と関連するが、線維芽細胞の増殖状態は、miR−134発現の増大と関連しない。
【0070】
3.老化しつつある線維芽細胞におけるmiR−152レベル:p1、p11、およびp16において細胞を回収して、リアルタイムPCRを実施した。p1〜p16のmiR−152レベルの相対定量化は、老化線維芽細胞におけるmiR−152発現の有意な増大を示す:p16において、miR−152の発現はp1におけるその発現(1.00±0.07に等しい)の約3.37(±0.09)倍である(図3)。したがって、線維芽細胞の老化状態は、miR−152発現の増大と関連するが、線維芽細胞の増殖状態は、miR−152発現の増大と関連しない。
【0071】
4.miR−134およびmiR−152は、増殖中の線維芽細胞/若齢の線維芽細胞へのトランスフェクションにより、線維芽細胞の増殖を抑制する:陰性対照、miR−134配列、またはmiR−152配列によるヒト皮膚線維芽細胞のトランスフェクションの96時間後に、細胞を3時間にわたるBrdUパルス下に置き、回収し、PIで染色し、方法で記載した通りにフローサイトメトリーにより解析した。陰性対照(26%)、miR−134(19%)、およびmiR−152(18%)でトランスフェクトしたBrdU陽性ヒト初代線維芽細胞の百分率により示される通り、miR−134およびmiR−152をトランスフェクトすると、増殖中の細胞(proliferating cell)の百分率は低下した(図4Aおよび4B)。
【0072】
5.miR−134およびmiR−152は、増殖中の線維芽細胞/若齢の線維芽細胞へのトランスフェクションにより、線維芽細胞における老化を誘導する:miR−134およびmiR−152でトランスフェクトすると、線維芽細胞におけるSA−β−ガラクトシダーゼ染色が有意に増大した。これは、これらの2つのmiRNAは、老化を誘導するのにそれら自体で十分であることを証明する(図5A)。トランスフェクションの96時間後におけるヒト皮膚線維芽細胞のフィールド1つ当たりの青色細胞個数の定量化は、SA−β−ガラクトシダーゼ染色の、陰性対照と比較して4〜4.5倍の増大を示す(図5B)。
【0073】
6.ITGA9は、miR−134およびmiR−152両方の標的である:p1およびp16の細胞を用いて、リアルタイムPCRによるITGA9のmRNAの相対定量化を実施したところ(図6A)、得られたデータは、ITGA9のmRNAが、老化線維芽細胞(p16)において強く低減されることを明確に示す。実際、トランスフェクションの96時間後における、リアルタイムPCRによる、ヒト皮膚線維芽細胞のITGA9 mRNAレベルの相対定量化は、miR−134およびmiR−152のトランスフェクションにより、ITGA9が、それぞれ、20%および40%低減されることを示す。これは、おそらくITGA9タンパク質の安定性が高いために、同じ実験条件下のタンパク質レベルではそれほど明白ではない(図6C)。本発明者らは、ITGA9の3’UTRにおいて、miR−134およびmiR−152について予測される2つの標的部位を、targetScan 6.1ソフトウェアを用いて同定した。図7に示す通り、ITGA9のmRNAは、線維芽細胞へのmiR−134およびmiR−152のトランスフェクションにより下方制御される。
【0074】
7.ITGA5は、miR−152の標的である:p1およびp16の細胞を用いて、リアルタイムPCRによるITGA5のmRNAの相対定量化を実施したところ(図8A)、得られたデータは、ITGA5のmRNAが、老化線維芽細胞(p16)において低減されることを明確に示す。実際、トランスフェクションの96時間後における、ヒト皮膚線維芽細胞のITGA5 mRNAレベルについてのリアルタイムPCRは、miR−152のトランスフェクションにより、ITGA5が30%低減されることを示す。これはまた、同じ実験条件下のタンパク質レベルでも明白である(図8C)。本発明者らは、ITGA5の3’UTRにおいて、miR−152について予測される2つの標的部位を、targetScan 6.1ソフトウェアを用いて同定した。リアルタイムPCRによるヒト線維芽細胞のITGA5 mRNAレベルの相対定量化により示される通り、トランスフェクションすると、ITGA5は、線維芽細胞においてmiR−152により下方制御される。miR−152および抗miR−152のトランスフェクション後におけるヒト線維芽細胞からのタンパク質抽出物に対して実施したウェスタンブロットは、ITGA5の有意な減少を示した。β−アクチンをローディング対照として用いた。
【0075】
8.合成抗miR−134によるmiR−134の調節:抗miRNAは、内因性miRを特異的に阻害するmiRNA阻害剤である。抗miRNAは、内因性マイクロRNA分子に特異的に結合し、これを阻害するようにデザインされた一本鎖核酸である。抗miRNAは、標的miRNAの配列に相補的なヌクレオチド配列を有する。これらの即時使用可能な阻害剤は、siRNAに用いられるトランスフェクションパラメータまたは電気穿孔パラメータと同様のトランスフェクションパラメータまたは電気穿孔パラメータを用いて細胞内に導入することができ、miRNAの生物学的効果についての詳細な研究を可能とする。抗miRNAの使用は、miRNA活性の下方制御によるmiRNAについての機能的解析を可能とする。抗miRNAは市販されており、例えば、AmbionまたはApplied Biosystemsより得ることができる。ヒト初代線維芽細胞を、異なる濃度の抗miR−134で処置した。96時間後に、リアルタイムPCRを用いてmiR−134レベルを相対定量化するために細胞を採取した。抗miR−134は、処置されない細胞に対して、miR−134レベルを有意に下方制御し、処置された細胞におけるmiR−134の発現は、0.184±0.022に過ぎない(これに対し、スクランブルでは、1.00±0.01である)(図10)。
【0076】
9.合成抗miR−152によるmiR−152の調節:抗miRNAは、内因性miRNAを特異的に阻害するmiRNA阻害剤である。抗miRNAは、内因性マイクロRNA分子に特異的に結合し、これを阻害するようにデザインされた一本鎖核酸である。抗miRNAは、標的miRNAの配列に相補的なヌクレオチド配列を有する。これらの即時使用可能な阻害剤は、siRNAに用いられるトランスフェクションパラメータまたは電気穿孔パラメータと同様のトランスフェクションパラメータまたは電気穿孔パラメータを用いて細胞内に導入することができ、miRNAの生物学的効果についての詳細な研究を可能とする。抗miRNAの使用は、miRNA活性の下方制御を介するmiRNAについての機能的解析を可能とする。抗miRNAは市販されており、例えば、AmbionまたはApplied Biosystemsより得ることができる。ヒト初代線維芽細胞を、異なる濃度の抗miR−152で処置した。96時間後に、リアルタイムPCRを用いてmiR−152レベルを相対定量化するために細胞を採取した。抗miR−152は、処置されない細胞に対して、miR−152レベルを有意に下方制御し、処置された細胞におけるmiR−152の発現は、0.325±0.032に過ぎない(これに対し、スクランブルでは、1.00±0.01である)(図11)。
【0077】
10.化合物4および5によるmiR−134の阻害:ヒト初代線維芽細胞を、図12に示す濃度の、それぞれ、没食子酸エピガロカテキン(Epigallocatechine Gallate)およびベルバスコシド(Verbascoside)である化合物4および5で処置した。48時間後に、リアルタイムPCRを用いてmiR−134レベルを相対定量化するために細胞を採取した。化合物4および5は、処置されない細胞に対して、miR−134レベルを有意に下方制御し、処置された細胞におけるmiR−134の発現は、0.603±0.03および0.734±0.05に過ぎない(これに対し、スクランブルでは、1.00±0.01である)(図12)。
【0078】
11.化合物2、4、および8によるmiR−152の阻害:ヒト初代線維芽細胞を、図13に示す濃度の、それぞれ、カテキン水和物(Catechine Hydrate)、没食子酸エピガロカテキン、およびボワダンジュPFA(Bois d’Ange PFA)である化合物2、4、および8で処置した。48時間後に、リアルタイムPCRを用いてmiR−152レベルを相対定量化するために細胞を採取した。化合物2、4、および8は、処置されない細胞に対して、miR−152レベルを有意に下方制御し、処置された細胞におけるmiR−152の発現は、0.769±0.03、0.804±0.05、および0.314±0.04に過ぎない(これに対し、スクランブルでは、1.00±0.01である)(図13)。
【実施例2】
【0079】
化粧組成物(O/Wセラム(serum))
当業者は、以下の組成物を、古典的な方法により調製することができる。
【0080】
活性薬剤は、以下の通りに調製する:
アンディ(Andira coriacea)(すなわち、ボワダンジュ)の木質をエタノールで抽出して、減圧下における蒸発後に386mgの粗抽出物を得た。次に、H2O+0.1%ギ酸およびMeOHの勾配(60mL・分−1で17分間で、70:30から60:40へのH2O+FA/MeOH)を用いて、逆相分取HPLC(C18 Varian Pursuit XRS、250mm×41.1mm×5μm)により粗抽出物を精製し、純粋なCoatline A(12.3mg)およびCoatline B(40.2mg)をもたらした。
【0081】
【表1】
【0082】
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図1
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]