(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円形状の基板の表面に形成されたフォトレジスト膜に対してパターンを描画する直接描画装置用に用いられ、基板内の円弧帯状領域を描画領域または非描画領域として設定するためのGUI装置であって、
画面を有する表示部と、
表示部の画面を操作する操作部と、
表示部の画面表示を制御する表示制御部と、
を備え、
表示制御部は、
円弧帯状領域の円周方向の長さに関連する情報を入力するための入力領域を表示部の画面に表示する周情報入力部と、
基板の径方向における円弧帯状領域の位置情報を入力するための入力領域を表示部の画面に表示する径情報入力部と、
円弧帯状領域の径方向における幅情報を入力するための入力領域を表示部の画面に表示する幅情報入力部と、
径情報入力部、周情報入力部および幅情報入力部により設定された円弧帯状領域が描画領域または非描画領域のいずれであるかを入力するための入力領域を表示部の画面に表示する描画指示入力部と、
基板外形と、径情報入力部、周情報入力部、幅情報入力部および描画指示入力部に操作部によりそれぞれ入力された情報に基づく円弧帯状領域と、を表示部の画面に表示する確認表示部と、
を有することを特徴とする直接描画装置用のGUI装置。
請求項1から請求項4のいずれかに記載されるGUI装置と、前記フォトレジスト膜に空間変調された光ビームを走査してパターンを描画する直接描画装置と、を備える直接描画システム。
表示部および操作部を有するGUI装置により直接描画装置により描画すべき描画領域、または、描画しない非描画領域である円弧帯状領域を設定する描画領域設定方法であって、
表示部の画面に、円弧帯状領域の円周方向の長さに関連する情報を入力するための入力領域、基板の径方向における円弧帯状領域の位置情報を入力するための入力領域、円弧帯状領域の径方向における幅情報を入力するための入力領域、および、円弧帯状領域が描画領域または非描画領域のいずれであるかの情報を入力するための入力領域を表示する入力画面表示工程と、
入力画面表示工程により表示部の画面に表示された各入力領域に操作部により各情報をそれぞれ入力する情報入力工程と、
表示部の画面に、基板外形、および、情報入力工程により入力された各情報に基づく円弧帯状領域を表示する確認表示工程と、
を含む描画領域設定方法。
円形状の基板の表面に形成されたフォトレジスト膜に対してパターンを描画する直接描画装置用に用いられ、基板内の円弧帯状領域を描画領域または非描画領域として設定するためのGUI装置が備えるコンピュータが読み取り可能なプログラムであって、
GUI装置が有する表示部の画面に、
円弧帯状領域の円周方向の長さに関連する情報を入力するための入力領域を表示する周情報入力領域の表示機能と、
基板の径方向における円弧帯状領域の位置情報を入力するための入力領域を表示する径情報入力領域の表示機能と、
円弧帯状領域の径方向における幅情報を入力するための入力領域を表示する幅情報入力領域の表示機能と、
径情報入力領域、周情報入力領域および幅情報入力領域により設定された円弧帯状領域が描画領域または非描画領域のいずれであるかの情報を入力するための入力領域を表示する描画指示入力領域の表示機能と、
基板外形と、径情報入力領域、周情報入力領域、幅情報入力領域および描画指示入力領域にGUI装置が有する操作部によりそれぞれ入力された情報に基づく円弧帯状領域と、を表示する確認表示機能と、
をコンピュータに発揮させることを特徴とするプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
<システムの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態である直接描画システム4を含む図形描画システム400を示す図である。この図形描画システム400は、例えば円形状の半導体基板(以下、単に「基板」と称す)上のフォトレジスト膜を選択的に露光することにより、フォトレジスト膜に回路パターンに相当する図形を直接描画するシステムである。
【0024】
図形描画システム400は、LANなどのネットワークNを介して相互に接続された設計データ作成装置1、画像処理装置3および直接描画装置100を備える。画像処理装置3はGUI装置2を備える。
【0025】
設計データ作成装置1は、描画対象物である基板に描画すべきパターン領域を記述したデータの作成および編集を行う装置である。具体的にデータは、CADによってベクトル形式で記述された図形データとして作成される。以下において、このデータを設計データD0と称する。設計データ作成装置1で作成された設計データD0は、画像処理装置3および直接描画装置100にネットワークNを介してそれぞれ送信される。なお、設計データD0は後述する円弧帯状領域E1乃至E8以外の基板Wの表面に、半導体チップの配線パターンなどを形成するためのデータである。
【0026】
画像処理装置3は、ネットワークNを介して送信された設計データD0を修正し、修正設計データD1を作成する。画像処理装置3により作成された修正設計データD1はネットワークNを介して直接描画装置100に送信される。
【0027】
具体的には、画像処理装置3は設計データD0に対して、露光条件(描画条件)の変更に応じて、露光(描画)すべき回路パターンの線幅寸法を大きくする処理(太らせ処理)、または、線幅寸法を小さくする処理(細らせ処理)を実行して修正設計データD1を得る機能を有する。この太らせ処理および細らせ処理は基板内を区画する複数のブロック単位で実行される。
【0028】
また、画像処理装置3は、設計データD0における各ブロックの露光条件を修正する。例えば、設計データD0が全てのブロックに対して標準パターンを露光するデータである場合に、特定のブロックに対してテストパターンを露光するデータに修正して修正設計データD1を得る機能を有する。ここで、「標準パターン」は半導体素子を形成する回路パターンを露光するためのパターンであり、「テストパターン」は「標準パターン」とは異なり、例えば半導体素子の試作や製造プロセスの検証のための回路パターンを露光するためのパターンである。
【0029】
さらに、画像処理装置3は、GUI装置2を用いて、基板の端部等に、めっき用電極を形成するための円弧帯状領域を設定するためのまたはナンバリング記号などを形成するための円弧帯状領域を設定するための円弧領域用データT1を得る機能を有する。また、円弧領域用データT1は、基板の端部にレーザー刻印等により既に形成されているシリアル番号等が後の工程によって潰されないように、シリアル番号等が形成されているナンバリング領域を円弧帯状領域として設定するデータである場合もある。
【0030】
<GUI装置の構成>
GUI装置2は画像処理装置3に設けられ、操作者に対するグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface)として機能する。
図2はGUI装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0031】
GUI装置2は例えばコンピュータ5であって、CPU230、ROM231、メモリ232、メディアドライブ233、表示部200、操作部234などを備える。これらのハードウェアは、それぞれバスライン235によって電気的に接続されている。
【0032】
CPU230は、ROM231に記憶されたプログラム(または、メディアドライブ233によって読み込まれたプログラム)Pに基づいて、上記ハードウェア各部を制御し、コンピュータ5(GUI装置2)の機能を実現する。プログラムPはコンピュータ5により読み取り可能であり、各機能をコンピュータ5に発揮させるものである。なお、ハードディスクドライブ(HDD)に保存されたプログラムPを、RAMに読み込んで、各機能をコンピュータ5に発揮させる構成でも良い。
【0033】
ROM231は、GUI装置2の制御に必要なプログラムPやデータを予め格納した読み出し専用の記憶装置である。
【0034】
メモリ232は、読み出しと書き込みとが可能な記憶装置であり、CPU230による演算処理の際に発生するデータなどを一時的に記憶する。メモリ232は、SRAM、DRAMなどで構成される。
【0035】
メディアドライブ233は、記録媒体Mに記憶されている情報を読み出す機能を有する。部である。記録媒体Mは、例えば、CD−ROM、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスクなどの可搬性記録媒体である。
【0036】
表示部200は、カラーLCDのようなディスプレイ等を備え、その画面にGUI操作用の画像、各種のデータおよび動作状態などを可変表示する。
【0037】
操作部234は、キーボードおよびマウスを有する入力デバイスであり、コマンドや各種データの入力といったユーザ操作を受け付ける。この操作部234を用いて、操作者は表示部200に表示されたGUI操作画面に対して各種の情報を入力して、表示部200の画面を操作する。
【0038】
図3はGUI装置2の機能構成を示すブロック図である。この
図3は上記
図2に示されるプログラムPによりGUI装置2のハードウェア構成が発揮する各機能をブロック図で示しているが、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによって様々な形で実現することができる。
【0039】
図3に示すようにGUI装置2は表示制御部240を備える。この表示制御部240は、表示部200の画面表示を制御するものであって、周情報入力部241、径情報入力部242、幅情報入力部243、描画指示入力部244および確認表示部245を有する。表示制御部2は操作者による操作部234の操作により各部の機能を実現させるが、その詳細は動作の説明において後述する。
【0040】
<描画領域設定のフロー>
図4は、描画領域設定の流れを示すフロー図である。この
図4を用いて上記円弧帯状領域を設定する作業の流れについて説明する。まず、ステップS10の入力画面表示工程において、GUI装置2が備える表示部200の画面に初期入力画面を表示する。
図5は初期入力画面の一例であって、画面7に確認表示領域80および入力領域90を表示する。入力領域90は、上述の周情報入力部241、径情報入力部242、幅情報入力部243および描画指示入力部245の各機能により画面7に表示される。入力領域90の詳細については次の工程であるステップS20の情報入力工程において説明する。
【0041】
図4に戻りステップS20の情報入力工程について説明する。この情報入力工程は、周情報入力工程(ステップS21)、径情報入力工程(ステップS22)、幅情報入力工程(ステップS23)および描画指示入力工程(ステップS24)を含む。
【0042】
<第1実施例>
図6を参照しつつ情報入力工程(ステップS20)の一例である第1実施例について説明する。
図6(a)は、第1の円弧帯状領域E1および第2の円弧帯状領域E2が設定される様子を概念的に示す図であり、
図6(b)は入力領域90に各情報が入力されている状態を示している。
【0043】
図6(b)に示すように入力領域90は行列を有するリスト状の入力領域である。第1列目の「No.」欄91にはリストの行番号が表示され、第1行目は初期値(デフォルト値)として「0」が表示されている。第2行目以降は、順に「1,2,3・・・」と表示され、各一行が一つの円弧帯状領域を指定するための一つの組み合わせとなっている。
【0044】
第2列目の「θ」欄92は、周情報入力部241の機能により表示される入力領域であり、角度の数値が入力される入力領域である。なお、後述するよう「Arc Length」欄99が周情報入力部241の機能により表示される入力領域とされる場合は、「θ」欄91は「Arc Length」欄99に入力された円弧の長さ寸法に応じた角度の数値が表示される。「θ」欄92に入力される角度の数値、または、「Arc Length」欄99に入力される円弧の長さ寸法は、円弧帯状領域の周方向の長さに関連する情報である。
【0045】
第3列目の「R0」欄93は、描画対象である円形状の基板の径方向における円弧帯状領域の位置情報の一つである、基板の中心から径方向における円弧帯状領域までの長さ寸法が入力される入力領域であり、径情報入力部242の機能により表示される入力領域である。
【0046】
第4列目の「Inside」欄94および第5列目の「Outside」欄95は「R0」欄93に入力された長さ寸法を半径とする仮想円から内側への長さ寸法をそれぞれ入力するための入力領域である。具体的には、「Inside」欄94および「Outside」欄95は、径方向における円弧帯状領域の幅寸法を2段階で設定入力するための入力領域であり、「Inside」欄94には基板の中心Ct側の幅寸法が入力され、「Outside」欄95には仮想円側の幅寸法が入力される。「Inside」欄94および/または「Outside」欄95の入力領域は幅情報入力部243の機能により表示される入力領域である。
【0047】
第6列目の「Expose」欄96には左右に並ぶ2個のラジオボタン97,98が表示される。左側のラジオボタン97が選択された場合は、「Inside」欄94に入力されて設定された領域が描画すべき(露光すべき)描画領域であるとの情報が入力される。右側のラジオボタン98が選択された場合は、「Outside」欄95に入力されて設定された領域が描画すべき(露光すべき)描画領域であるとの情報が入力される。逆にラジオボタン97,98が選択されていない状態は、その領域が描画すべき領域ではない非描画領域であることが入力されている状態である。「Expose」欄96は描画指示入力部244の機能により表示される。
【0048】
第7列目の「Arc Length」欄99には、「R0」欄93に入力された長さ寸法を半径とする仮想円の円周長さの内、「θ」欄92に入力された角度範囲の分の長さを円弧長さの寸法として表示される。なお、「Arc Length」欄99を「Arc Length」欄99が周情報入力部242の機能により表示される入力領域としても良い。この場合、円弧帯状領域の円弧長さに関する情報が「Arc Length」欄99に入力され、この入力値に応じて、上述のように「θ」欄92に角度の数値が表示される。
【0049】
第1行目の「No.0」において「θ」欄92は0度が初期値(デフォルト値)として表示されている。これは概念的には
図6(a)に示す基板の中心Ctから径方向に延びる仮想線R0を示す。
【0050】
図4に戻って、情報入力工程S20について説明する。まず、ステップS21の周情報入力工程において、
図6(b)に示す入力領域90の第2行目の「No.1」において「θ」欄92に例えば「10」度と入力する。次にステップS22の径情報入力工程にて「R0」欄93に例えば「150」mmと入力する。
【0051】
これは概念的には
図6(a)に示す基板の中心Ctから径方向に150mmの長さで延びる仮想線R1が仮想線R0に対して、反時計周りの方向に角度10度の位置に位置することを示す。なお、WOは基板の外形線を示し、この例では基板の半径は150mmであり、この実施例では基板の外形線WOと仮想円L3は一致している。「R0」欄93に入力する値は任意であり、「150」mm以外の数値であれば、外径線WOと仮想円とは一致しない。
【0052】
次にステップS23の幅情報入力工程にて、同じ行(第2行目)の「Inside」欄94には例えば「5」mmと入力する。これは仮想線R0の終端から仮想線R1の終端を結ぶ仮想円L3における円弧から内側(基板の中心Ct側)の上記2段階の領域の内、内側の領域の幅寸法t1を5mmに設定することを示している。そして、「Outside」欄95には「0」mmと入力し、これは、上記2段階の領域内、外側の領域の幅が無いことを示している。この結果、幅寸法t1が5mmである第1の円弧帯状領域E1が設定される。
【0053】
次にステップS24の描画指示入力工程にて、同じ行(第2行目)の「Expose」欄96の左側のラジオボタン97を選択指定する。この選択指定は、「Inside」欄94に入力された幅寸法の領域を描画すべき描画領域であると入力したことに相当し、結果として、第1の円弧帯状領域E1が描画すべき描画領域であるとして入力したことになる。逆に第1の円弧帯状領域E1を描画しない非描画領域に設定する場合は、「Expose」欄96の右側のラジオボタン98を選択指定する。この場合、「Inside」欄94への描画指示に相当する左側のラジオボタン97が選択されないことになるため、「Inside」欄94に入力された幅寸法の領域を非描画領域に設定したことになる。
【0054】
同じ行(第2行目)の「Arc Length」欄99には、「θ」欄92への入力動作と連動して上記円弧の長さとして「26.17」mmが表示されている。なお、「Arc Length」欄99を入力領域として周情報入力工程(ステップS22)を実行する場合には、「Arc Length」欄99に「26.17」mmと入力すれば、同様に第1の円弧帯状領域E1を設定することができる。この場合、「θ」欄92には「Arc Length」欄99への入力動作と連動して「10」度と表示される。
【0055】
なお、情報入力工程における周情報入力工程、径情報入力工程、幅情報入力工程および描画指示工程は上記の順に実行する必要はなく、工程順は任意に設定されても良い。
【0056】
次にステップS30の確認表示工程にて第1の円弧帯状領域E1の形状および基板上での配置位置が画面7の確認表示領域80内に確認表示部245の機能により表示される。
【0057】
次に、ステップS40において基板における円弧帯状領域の設定がすべて完了したか否かが確認表示領域80内の表示内容等に基づいて操作者により判断され、完了していないと判断した場合(Noの場合)は、情報入力工程(ステップS20)に戻り、入力作業を続行する。設定作業が完了したと判断した場合(Yesの場合)は設定作業を完了する。
【0058】
ステップS4において、Noの場合、例えば、
図6(b)の入力領域90に示す3行目の「No.2」の入力作業であるステップS21からステップS24までが操作者により実行される。具体的には、「θ」欄92に「35」度、「R0」欄93に「150」mm、「Inside」欄94に「0」mmおよび「Outside」欄に「0」mmと操作者が操作部234を用いて入力するとともに、「Expose」96欄の左側のラジオボタン97を指定する。このとき「Arc Length」欄99には「91.58」mmと表示される。なお、上述と同様に、「θ」欄92への入力に替えて「Arc Length」欄99への入力作業を行っても良い。
【0059】
3行目の「No.2」の各入力領域に各情報を入力することにより、概念的には
図6(a)に示す仮想線R1から反時計周りの方向に35度、進んだ位置に配置された長さ150mmの仮想線R2が示されることになる。仮想線R1の終端と仮想線R2の終端を結ぶ円弧から内側の2段階の領域がそれぞれ「0」mmの幅を有する領域が円弧帯状領域となるが、この場合、幅寸法が無いので、実質的には円弧帯状領域は設定されないこととなる。
【0060】
次に、
図6(b)の入力領域90に示す4行目の「No.3」の入力作業であるステップS21からステップS24までが操作者により実行される。この入力内容は、第2行目の「No.2」における入力内容と同じであり、「θ」欄92に「10」度、「R0」欄93に「150」mm、「Inside」欄94に「5」mmおよび「Outside」欄に「0」mmと操作者が操作部234を用いて入力するとともに、「Expose」欄の左側のラジオボタン97を指定する。このとき「Arc Length」欄99には「26.17」mmと表示される。なお、上述と同様に、「θ」欄92への入力に替えて「Arc Length」欄99への入力作業を行っても良い。
【0061】
4行目の「No.3」の各入力領域に各情報を入力することにより、概念的には
図6(a)に示す仮想線R2から反時計周りの方向に10度、進んだ位置に配置された長さ150mmの仮想線R3が示されることになる。仮想線R2の終端と仮想線R3の終端を結ぶ円弧から内側に「5」mmの幅を有する領域が第2の円弧帯状領域E2として設定される。
【0062】
図7は
図6のステップS40にて設定作業が完了した(Yes)と判断されたときの画面7の一例である。この
図7においては
図6に示す作業が繰り返された結果、第1から第8までの8個の円弧帯状領域E1乃至E8が設定されている様子が確認表示領域80に基板の外形WOとともに確認表示部245の機能により表示されている。具体的には、円周方向の長さが10度分で、径方向の寸法が5mmである8個の円弧帯状領域E1乃至E8が基板外形WOに沿って、互いに35度の間隔を空けて配置された状態が確認表示領域80に表示されている。また、入力領域90には第2行目(No.1)から第17行目(No.16)までの入力結果が表示されている。
【0063】
また、ステップS40の設定作業が完了すると、円弧帯状領域E1乃至E8に対応する円弧領域用データT1が画像処理装置3により生成され、ネットワークNを介して直接描画装置100に送信される。画像処理装置3は例えば、円弧帯状領域E1等の外形線を示すベクトルデータとして円弧領域用データT1を生成する。なお、画像処理装置3により円弧領域用データT1を設計データD0または修正設計データD1とベクトルデータ上で合成処理して、合成処理後のベクトルデータを、ネットワークNを介して直接描画装置100に送信しても良い。
【0064】
上述のように円弧帯状領域を「θ」欄92に入力する周情報、「R0」欄に入力する径情報および「Inside」欄94に入力する幅情報の3つの情報により設定するので、
図17に示す円弧帯状領域の4隅の座標を特定するための8つの情報により設定する従来例と比較して、作業量を少なくすることができる。
【0065】
また、上述のように円弧帯状領域の円周方向の長さを角度情報または円弧長さの情報により指定し、その径方向の位置を基板の中心からの距離寸法で指定し、その径方向における幅寸法を円弧からの長さ情報で指定することにより、
図17に示す円弧帯状領域の4隅の座標を指定する方法と比較して、直感的に円弧帯状領域を設定することができる。これは基板が円形状であり、その基板周縁部等に円弧帯状領域を設定する作業であるが故に本実施形態による設定方法が直感的に行えるとも言える。
【0066】
さらに、上述のステップS21からステップS24までの情報入力工程(ステップS20)を一つの組み合わせとして1個の円弧帯状領域を設定し、この設定作業を基板の周方向に順次、繰り返すことによって、周方向の全域における設定作業を容易に行うことができる。
図17に示す従来例のように例えば8個の円弧帯状領域の4隅の座標位置を指定する作業は、円形状の基板における2次元座標位置をその座標ごとに見出す必要があるために容易ではない。
【0067】
<第2実施例>
図8を参照しつつ情報入力工程(ステップS20)の他の例である第2実施例について説明する。
【0068】
ステップS23の幅情報入力工程にて、入力領域90に示される第2行目(No.1)の「Inside」欄94には「0」mmと入力するとともに、「Outside」欄95には「5」mmと入力する点が上記第1実施例と異なる。また、ステップS24の描画指示入力工程にて、同じ行(第2行目)の「Expose」欄96の右側のラジオボタン98を選択指定する点も上記第1実施例と異なる。
【0069】
この第2実施例では仮想線R0の終端から仮想線R1の終端を結ぶ仮想円L3おける円弧から内側の2段階領域の内、外側の領域が5mmの幅寸法に設定され、内側の領域が0mmの幅寸法に設定される。また、5mmの外側領域が描画領域として設定されるので、結果として、第1実施例と同じく、幅寸法t1が5mmである第1の円弧帯状領域E1が描画領域として設定される。なお、第1の円弧帯状領域E1を描画しない非描画領域に設定する場合は、「Expose」欄96の左側のラジオボタン97を選択指定する。この場合、「Outside」欄95への描画指示に相当する右側のラジオボタン98が選択されないことになるため、「Outside」欄95に入力された幅寸法の領域を非描画領域に設定したことになる。
【0070】
入力領域90に示される第3行目(No.2)については、上記第1実施例と同様の情報入力工程(ステップS20)が実行され、第4行目(No.3)については上記第2実施例の第2行目(No.2)と同様の情報入力工程(ステップS20)が実行される。この作業が周方向に亘って実行された結果、この第2実施例によっても、第1実施例と同様に、
図7の確認表示領域80に示される8個の円弧帯状領域E1乃至E8を設定することができる。
【0071】
<第3実施例>
図9を参照しつつ情報入力工程(ステップS20)の他の例である第3実施例について説明する。
【0072】
ステップS23の幅情報入力工程にて、入力領域90に示される第2行目(No.1)の「Inside」欄94には「2」mmと入力するとともに、「Outside」欄95には「3」mmと入力する点が上記第1実施例および第2実施例と異なる。また、ステップS24の描画指示入力工程にて、同じ行(第2行目)の「Expose」欄96の右側のラジオボタン97を選択指定する点も上記第1実施例と異なる。
【0073】
この第3実施例では仮想線R0の終端から仮想線R1の終端を結ぶ仮想円L3おける円弧から内側の2段階領域の内、外側の領域が3mmの幅寸法に設定され、内側の領域が2mmの幅寸法に設定される。また、幅が3mmの外側領域が描画領域として設定されるので、結果として、幅寸法t2が3mmである第1の円弧帯状領域E1aが描画領域として設定される。
【0074】
また、上記円弧から内側の2段階領域の内、内側の幅が2mmの領域が非描画領域k1であるとして設定されている。この非描画領域k1は、円弧帯状領域以外の例えば配線パターン等のパターンも描画されない描画禁止領域k1としての意味合いも有する。このように、第1の円弧帯状領域E1aと配線パターン等の間に描画禁止領域k1を設けることによって、基板上に形成される円弧帯状のめっき用電極等と配線パターンとの間に所望の間隔を確実に設けることができる。
【0075】
入力領域90に示される第3行目(No.2)については、上記第1実施例と同様の情報入力工程(ステップS20)が実行され、第4行目(No.3)については上記第3実施例の第2行目(No.2)と同様の情報入力工程(ステップS20)が実行される。この作業が周方向に亘って実行された結果、8個の円弧帯状領域E1a乃至E8aおよび描画禁止領域k1乃至k8が設定され、この設定結果が、
図7の確認表示領域80に表示される。
【0076】
上記各実施例におけるステップS23の幅情報入力工程にて、仮想円L3における円弧から内側を2段階の範囲で入力しているが、2段階以上であっても良く、径方向における複数の範囲でそれぞれ幅情報を入力しても良い。また、上記円弧の内側に限らず、外側の領域や内外双方の領域の幅情報を入力しても良い。
【0077】
<直接描画装置の構成>
次に直接描画装置100の構成について
図10および
図11を参照して説明する。
図10は、本発明の一実施形態に係る直接描画装置100の側面図であり、
図11は
図10に示す直接描画装置100の平面図である。
【0078】
この直接描画装置100は、フォトレジスト膜(感光性材料)が表面に付与された半導体基板やガラス基板等の基板Wの表面に空間変調された光ビームを走査して露光パターンを描画する装置である。具体的には、半導体デバイスチップの製造工程において、露光対象基板である支持基板(以下、単に「基板」という。)Wの表面に形成された感光性を有するフォトレジスト膜に、配線パターンを描画するための装置である。基板Wは円形状であり、その外周縁の一部にノッチと呼ばれる切り欠きが形成されている。ノッチに替えて基板Wの外周縁の一部にオリエンテーションフラットが設けられている場合もある。また、直接描画装置100は基板W内を区画するブロック単位で露光処理を施す露光装置である。
【0079】
図10および
図11に示したように、直接描画装置100は、主として、基板Wを保持するステージ10と、ステージ10を移動させるステージ移動機構20と、ステージ10の位置に対応した位置パラメータを計測する位置パラメータ計測機構30と、基板Wの表面にパルス光を照射する光学ヘッド部50と、1つのアライメントカメラ60と、制御部70とを備えている。
【0080】
また、この直接描画装置100では、本体フレーム101に対してカバー102が取り付けられて形成される本体内部に装置各部が配置されて本体部が構成されるとともに、本体部の外側(本実施形態では、
図11に示すように本体部の右手側)に基板収納カセット110が配置されている。この基板収納カセット110には、露光処理を受けるべき未処理基板Wが収納されており、本体内部に配置される搬送ロボット120によって本体部にローディングされる。また、未処理基板Wに対して露光処理(パターン描画処理)が施された後、当該基板Wが搬送ロボット120によって本体部からアンローディングされて基板収納カセット110に戻される。このように、搬送ロボット120が搬送部として機能している。
【0081】
この本体部では、
図11に示すように、カバー102に囲まれた本体内部の右手端部に搬送ロボット120が配置されている。また、この搬送ロボット120の左手側には基台130が配置されている。この基台130の一方端側領域(
図10および
図11の右手側領域)が、搬送ロボット120との間で基板Wの受け渡しを行う基板受渡領域となっているのに対し、他方端側領域(
図10および
図11の左手側領域)が基板Wへのパターン描画を行うパターン描画領域となっている。この基台130上では、基板受渡領域とパターン描画領域の境界位置にヘッド支持部140が設けられている。このヘッド支持部140では、
図10に示すように、基台130から上方に2本の脚部材141、142が立設されるとともに、それらの脚部材141、142の頂部を橋渡しするように梁部材143が横設されている。そして、
図10に示すように、梁部材143のパターン描画領域側の反対側にアライメントカメラ(撮像部)60が固定されて、後述するようにステージ10に保持された基板Wの表面(被描画面、被露光面)上の複数のアライメントマークや下層パターンを撮像可能となっている。
【0082】
基板Wを支持する支持部であるステージ10は基台130上でステージ移動機構20によりX方向、Y方向ならびにθ方向に移動される。すなわち、ステージ移動機構20は、ステージ10を水平面内で2次元的に移動させて位置決めするとともに、θ軸(鉛直軸)周りに回転させて後述する光学ヘッド部50に対する相対角度を調整して位置決めする。
【0083】
また、このように構成されたヘッド支持部140に対して光学ヘッド部50が上下方向に移動自在に取り付けられている。このようにヘッド支持部140に対し、アライメントカメラ60と光学ヘッド部50とが取り付けられており、XY平面内での両者の位置関係は固定化されている。また、この光学ヘッド部50は、基板Wへのパターン描画を行うもので、ヘッド移動機構(図示省略)により上下方向に移動される。そして、ヘッド移動機構が作動することで、光学ヘッド部50が上下方向に移動し、光学ヘッド部50とステージ10に保持される基板Wとの距離を高精度に調整可能となっている。このように、光学ヘッド部50が描画ヘッドとして機能している。
【0084】
また、基台130の基板受渡側と反対側の端部(
図10および
図11の左手側端部)においても、2本の脚部材141,142が立設されている。そして、梁部材143と2本の脚部材141,142の頂部とを橋渡しするように光学ヘッド部50の光学系を収納したボックス172が設けられており、基台130のパターン描画領域を上方から覆っている。
【0085】
ステージ10は、円筒状の外形を有し、その上面に基板Wを水平姿勢に載置して保持するための保持部である。ステージ10の上面には、複数の吸引孔(図示省略)が形成されている。このため、ステージ10上に基板Wが載置されると、基板Wは、複数の吸引孔の吸引圧によりステージ10の上面に吸着固定される。なお、本実施形態において描画処理の対象となる基板Wの表面(主面)には、フォトレジスト(感光性材料)膜がスピンコート法(回転式塗布方法)などにより予め形成されている。
【0086】
ステージ移動機構20は、直接描画装置100の基台130に対してステージ10を主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)、および回転方向(Z軸周りの回転方向)に移動させるための機構である。ステージ移動機構20は、ステージ10を回転させる回転機構21と、ステージ10を回転可能に支持する支持プレート22と、支持プレート22を副走査方向に移動させる副走査機構23と、副走査機構23を介して支持プレート22を支持するベースプレート24と、ベースプレート24を主走査方向に移動させる主走査機構25と、を有している。
【0087】
回転機構21は、ステージ10の内部に取り付けられた回転子により構成されたモータを有している。また、ステージ10の中央部下面側と支持プレート22との間には回転軸受機構が設けられている。このため、モータを動作させると、回転子がθ方向に移動し、回転軸受機構の回転軸を中心としてステージ10が所定角度の範囲内で回転する。
【0088】
副走査機構23は、支持プレート22の下面に取り付けられた移動子とベースプレート24の上面に敷設された固定子とにより副走査方向の推進力を発生させるリニアモータ23aを有している。また、副走査機構23は、ベースプレート24に対して支持プレート22を副走査方向に沿って案内する一対のガイドレール23bを有している。このため、リニアモータ23aを動作させると、ベースプレート24上のガイドレール23bに沿って支持プレート22およびステージ10が副走査方向に移動する。
【0089】
主走査機構25は、ベースプレート24の下面に取り付けられた移動子とヘッド支持部140の上面に敷設された固定子とにより主走査方向の推進力を発生させるリニアモータ25aを有している。また、主走査機構25は、ヘッド支持部140に対してベースプレート24を主走査方向に沿って案内する一対のガイドレール25bを有している。このため、リニアモータ25aを動作させると、基台130上のガイドレール25bに沿ってベースプレート24、支持プレート22、およびステージ10が主走査方向に移動する。なお、このようなステージ移動機構20としては、従来から多用されているX−Y−θ軸移動機構を用いることができる。
【0090】
位置パラメータ計測機構30は、レーザ光の干渉を利用してステージ10についての位置パラメータを計測するための機構である。位置パラメータ計測機構30は、主として、レーザ光出射部31、ビームスプリッタ32、ビームベンダ33、第1の干渉計34および第2の干渉計35を有する。
【0091】
レーザ光出射部31は、計測用のレーザ光を出射するための光源装置である。レーザ光出射部31は、固定位置、すなわち本装置の基台130や光学ヘッド部50に対して固定された位置に設置されている。レーザ光出射部31から出射されたレーザ光は、まず、ビームスプリッタ32に入射し、ビームスプリッタ32からビームベンダ33へ向かう第1の分岐光と、ビームスプリッタ32から第2の干渉計35へ向かう第2の分岐光とに分岐される。
【0092】
第1の分岐光は、ビームベンダ33により反射され、第1の干渉計34に入射するとともに、第1の干渉計34からステージ10の−Y側の端辺の第1の部位(ここでは、−Y側の端辺の中央部)10aに照射される。そして、第1の部位10aにおいて反射した第1の分岐光が、再び第1の干渉計34へ入射する。第1の干渉計34は、ステージ10へ向かう第1の分岐光とステージ10から反射した第1の分岐光との干渉に基づき、ステージ10の第1の部位10aの位置に対応した位置パラメータを計測する。
【0093】
一方、第2の分岐光は、第2の干渉計35に入射するとともに、第2の干渉計35からステージ10の−Y側の端辺の第2の部位(第1の部位10aとは異なる部位)10bに照射される。そして、第2の部位10bにおいて反射した第2の分岐光が、再び第2の干渉計35へ入射する。第2の干渉計35は、ステージ10へ向かう第2の分岐光とステージ10から反射した第2の分岐光との干渉に基づき、ステージ10の第2の部位10bの位置に対応した位置パラメータを計測する。第1の干渉計34および第2の干渉計35は、それぞれの計測により取得された位置パラメータを、制御部70へ送信する。
【0094】
光学ヘッド部50は、ステージ10上に保持された基板Wの表面に向けてパルス光を照射する光照射部である。光学ヘッド部50は、ステージ10およびステージ移動機構20を跨ぐようにして基台130上に架設された梁部材143と、梁部材143上に副走査方向の略中央に設けられた1つの光学ヘッド部50とを有する。光学ヘッド部50は、照明光学系53を介して1つのレーザ発振器54に接続されている。また、光源であるレーザ発振器54には、レーザ発振器54の駆動を行うレーザ駆動部55が接続されている。レーザ駆動部55を動作させると、レーザ発振器54からパルス光が出射され、当該パルス光が照明光学系53を介して光学ヘッド部50の内部に導入される。
【0095】
光学ヘッド部50の内部には、照明光学系53から光学ヘッド部50の内部にパルス光を導入部から導入し、導入されたパルス光は、所定のパターン形状に成形された光束としてパルス光が基板Wの表面に照射され、基板W上のフォトレジスト膜(感光層)を露光することにより、基板Wの表面にパターンが描画される。
【0096】
図10の直接描画装置100では、光源であるレーザ発振器54がボックス172内に設けられ、照明光学系53を介してレーザ発振器54からの光が光学ヘッド部50の内部へと導入される。本実施の形態における基板Wの主面上には紫外線の照射により感光するフォトレジスト(感光性材料)膜が予め形成されており、レーザ発振器54は、波長λが約365nmの紫外線(i線)を出射するレーザ光源である。もちろん、レーザ発振器54は基板Wの感光性材料が感光する波長帯に含まれる他の波長の光を出射するものであっても良い。
【0097】
図12は直接描画装置100の照明光学系53および投影光学系517を示す図である。
図10に示すレーザ発振器54からの光は、
図12に示す照明光学系53およびミラー516を介して、光変調ユニット512の空間光変調器511に照射される。空間光変調器511にて空間変調された光は投影光学系517を介して、ステージ10に支持された基板W上に照射される。
【0098】
照明光学系53は、テレスコープ540、コンデンサレンズ541、アッテネータ542およびフォーカシングレンズ543を備える。テレスコープ540は、光(レーザビーム)のビーム径(断面形状)をXおよびZ方向に広げる機能を有し、3枚のレンズから構成される。コンデンサレンズ541は、レーザビームをX方向に広げる機能を有する。アッテネータ542は、通過するレーザビームのエネルギー量(透過量)を調整する。フォーカシングレンズ543は、レーザビームの断面寸法をZ方向において縮小させる機能を有する。フォーカシングレンズ543から出射した光(レーザビーム)は、ミラー516を介して、X方向に延びるとともに、Y方向には縮小された線状の照明光として空間光変調器511に照射される。なお、照明光学系53は必ずしも
図12に示されるように構成される必要はなく、他の光学素子が追加されても良い。
【0099】
照明光学系53から空間変調器511に照射される光は、空間光変調器511から反射した正反射光(0次光)が後述する投影光学系の遮蔽板521の開口を通過し、空間光変調器511から発生した(±1)次回折光が遮蔽板521にて遮蔽されるために、平行光に近い方が好ましい。このため、照明光学系53の開口数NA1が0(ゼロ)よりも大きく、かつ、0.06以下に設定されている。なお、開口数NA1は、X方向に延びる線状の照明光が貫く、YZ平面における照明光の光軸に対する最大角度をθ1とすると、NA1=n・sinθ1により求められる。但し、nは媒質の屈折率であり、本実施形態の場合、媒質は空気であるので、屈折率nは1である。
【0100】
投影光学系517は、4枚のレンズ518,519,520,522と、遮蔽板(絞り部材)521、ズームレンズ523およびフォーカシングレンズ524を備える。投影光学系517のレンズ518,519,520,522および遮蔽板521は両側テレセントリックとなるシュリーレン(schrieren)光学系を構築しており、レンズ520を通過した光は開口を有する遮蔽板521へと導かれ、一部の光(正反射光(0次光))は開口を通過してレンズ522へと導かれ、残りの光((±1)次回折光)は遮蔽板521にて遮蔽される。レンズ522を通過した光はズームレンズ523へと導かれ、フォーカシングレンズ524を介して所定の倍率にて基板W上のフォトレジスト膜(感光性材料)へと導かれる。なお、投影光学系517は必ずしも
図12に示されるように構成される必要はなく、他の光学素子が追加されても良い。
【0101】
焦点位置(フォーカス位置)に応じた基板W上に照射される光の径(幅)の変化を小さくするために、投影光学系517の被写界深度を長く(深く)設定する必要がある。このため、投影光学系517の開口数NA2は小さい方が好ましく、例えば0.1に設定されている。なお、開口数NA2は、X方向に延びる線状の投影光が貫く、YZ平面における投影光の光軸に対する最大角度をθ2とすると、NA2=n・sinθ2により求められる。但し、nは媒質の屈折率であり、本実施形態の場合、媒質は空気であるので、屈折率nは1である。
【0102】
照明光学系53の開口数NA1を投影光学系517の開口数NA2で除した値(σ値)は、上述のように、空間光変調器511で反射された正反射光を所望の形状で基板W上に照射するために、0に近い方が好ましく、例えば、0より大きく、かつ、0.6以下に設定されている。
【0103】
空間光変調器511には光変調ユニット512の変調制御を行う描画制御部515が電気的に接続されている。描画制御部515および投影光学系517は光学ヘッド部50に内蔵されている。描画制御部515には、露光制御部514と描画信号処理部513がそれぞれ電気的に接続されている。露光制御部514には、描画信号処理部513とステージ移動機構20が電気的に接続されている。露光制御部514および描画信号処理部513は
図10の制御ユニット70内に設けられている。
【0104】
図13は、空間光変調器511を拡大して示す図である。
図13に示す空間光変調器511は半導体装置製造技術を利用して製造され、格子の深さを変更することができる回折格子となっている。空間光変調器511には複数の可動リボン530aおよび固定リボン531bが交互に平行に配列形成され、後述するように、可動リボン530aは背後の基準面に対して個別に昇降移動可能とされ、固定リボン531bは基準面に対して固定される。回折格子型の空間光変調器としては、例えば、GLV(Grating Light Valve:グレーチング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ(サンノゼ、カリフォルニア)の登録商標)が知られている。
【0105】
固定リボン531bの上面には固定反射面が設けられ、可動リボン530aの上面には可動反射面が設けられている。複数の可動リボン530aおよび固定リボン531b上には、光束断面が配列方向に長い線状の光が照射される。空間光変調器511では、隣接する各1本の可動リボン530aおよび固定リボン531bを1つのリボン対を格子要素とすると、互いに隣接する3個以上の格子要素が描画されるパターンの1つの画素に対応する。本実施の形態では、互いに隣接する4個の格子要素の集合が1つの画素に対応する変調素子とされ、
図13では1つの変調素子を構成するリボン対の集合を符号535が付せられた太線の矩形にて囲んでいる。
【0106】
ドライバ回路ユニット536は、可動リボン530aと基準面の間に電圧(電位差)を与えることにより、可動リボン530aを基準面側に撓ませる。この結果、可動リボン530aは基準面から離間した初期位置と、基準面に接触した位置との間で昇降移動して、可動リボン530aの高さ位置が設定される。
【0107】
図10に示す制御部70は、種々の演算処理を実行しつつ、直接描画装置100内の各部の動作を制御するための情報処理部である。
図14は、直接描画装置100の上記各部と制御部70との間の接続構成を示したブロック図である。
図14に示したように、制御部70は、上記の回転機構21、リニアモータ23a,25a、レーザ光出射部31、第1の干渉計34、第2の干渉計35、照明光学系53、レーザ駆動部55、投影光学系517およびアライメントカメラ60と電気的に接続されている。制御部70は、例えば、CPUやメモリを有するコンピュータにより構成され、コンピュータにインストールされたプログラムに従ってコンピュータが動作することにより、上記各部の動作制御を行う。
【0108】
また、上記のように構成された制御部70は描画動作を制御するために
図15に示すように制御部70としてのコンピュータ71はCPUやメモリ72等を有しており、露光制御部514とともに電装ラック(図示省略)内に配置されている。
図15は、描画動作を制御する制御部を示すブロック図である。コンピュータ71内のCPUが所定のプログラムに従って演算処理することにより、ラスタライズ部73およびデータ生成部75が実現される。
【0109】
例えば1つの半導体パッケージに相当するパターンのデータは外部のCAD等により生成されたパターンデータであり、予め描画パターンデータ76としてメモリ72に準備されており、当該描画パターンデータ76とデータ生成部75に基づき後述するようにして半導体パッケージの描画パターンが基板W上に描画される。ここでは、コンピュータ71が
図15に示す描画信号処理部513の役割を担っている。なお、描画パターンデータ76は上述の設計データD0、修正設計データD1および円弧領域用データT1に相当する。また、描画パターンデータ76は上述の設計データD0または修正設計データD1と円弧領域用データT1とが合成されたデータの場合もある。
【0110】
ラスタライズ部73は、データ生成部75によって生成された描画データが示す単位領域を分割してラスタライズし、ラスタデータ77を生成しメモリ72に保存する。こうしてラスタデータ77の準備後、または、ラスタデータ77の準備と並行して、未処理の基板Wが描画される。
【0111】
こうして生成された描画データは、データ生成部75から露光制御部514へと送られ、露光制御部514が光変調ユニット512、ステージ移動機構20の各部を制御することにより1ストライプ分の描画が行われる。なお、露光制御部514による光変調ユニット512の制御は
図15に示すように描画制御部515を介して実行される。そして、1つのストライプに対する露光記録が終了すると、次の分割領域に対して同様の処理が行われ、ストライプごとに描画が繰り返される。本発明の制御部は、本実施形態では制御部70、描画制御部515、露光制御部514およびドライバ回路ユニット536などにより実現されている。
【0112】
また、直接描画装置100は、ストライプごとの描画動作の際に、
図12に示す描画制御部515を介して実行される露光制御部514による光変調ユニット512の制御により、基板Wを区画する複数のブロックごとに設定された露光条件に基づいてブロック単位で露光動作を実行する。
【0113】
また、直接描画装置100は、例えば、上述の第1実施例、第2実施例または第3実施例により設定された第1乃至第8の円弧帯状領域E1乃至E8に対する描画動作を実行する。これらの円弧帯状領域は、例えばめっき用電極が形成される領域であり、後の現像処理工程においてフォトレジスト膜が除去される領域である。フォトレジスト膜がポジ型である場合、直接描画装置100は上記円弧帯状領域を描画領域として、光ビームで走査して当該領域にあるフォトレジスト膜を露光する。フォトレジスト膜がネガ型である場合、直接描画装置100は上記円弧帯状領域を非描画領域として、光ビームで走査せずに当該領域にあるフォトレジスト膜を露光しない。
【0114】
円弧帯状領域が上記ナンバリング領域である場合、ナンバリング領域内にあるレーザー刻印が後の工程において潰されないように、フォトレジスト膜がポジ型かネガ型であるか、後の工程のプロセス処理などを考慮して、円弧帯状領域を描画領域または非描画領域として描画処理が実行される。
【0115】
本実施形態では
図15に示すコンピュータ71が直接描画装置100に設けられているが、このコンピュータ71を
図1に示す画像処理装置3内に設けても良い。
【0116】
<ステージの位置制御>
この直接描画装置100は、上記の第1の干渉計34、第2の干渉計35の各計測結果に基づいてステージ10の位置を制御する機能を有する。以下では、このようなステージ10の位置制御について説明する。
【0117】
既述の通り、第1の干渉計34および第2の干渉計35は、それぞれ、ステージ10の第1の部位10aおよび第2の部位10bの位置に対応した位置パラメータを計測する。第1の干渉計34および第2の干渉計35は、それぞれの計測により取得された位置パラメータP1,P2を、制御部70へ送信する。
図15に示したように、制御部70は、算出部としてのコンピュータ71を有する。このコンピュータ71の機能は、例えば、コンピュータ71のCPUが所定のプログラムに従って動作することにより実現される。
【0118】
一方、制御部70は、第1の干渉計34および第2の干渉計35から送信された位置パラメータに基づいてステージ10の位置(Y軸方向の位置およびZ軸周りの回転角度)を算出する。次に、制御部70は、算出されたステージ10の位置を参照しつつ、ステージ移動機構20を動作させることにより、ステージ10の位置やステージ10の移動速度を正確に制御する。ここでは、制御部70は、ステージ10をZ軸周りに回転させることにより、主走査方向の移動に伴うステージ10の傾き(Z軸周りの回転角度のずれ)も補正する。また、制御部70は、算出されたステージ10の位置を参照しつつ、レーザ駆動部55を動作させることにより、基板Wの表面に対するパルス光の照射位置を正確に制御する。
【0119】
<直接描画装置の動作>
続いて、上記の直接描画装置100の動作の一例について、
図16のフロー図を参照しつつ説明する。
【0120】
直接描画装置100において基板Wの処理を行うときには、まず、光学ヘッド部50から照射されるパルス光の位置や光量を調整するキャリブレーション処理を行う(ステップS1)。キャリブレーション処理においては、まず、ベースプレート24を移動させることにより、図示しないCCDカメラを光学ヘッド部50の下方に配置する。そして、CCDカメラを副走査方向に移動させつつ、光学ヘッド部50からパルス光を照射し、照射されたパルス光をCCDカメラにより撮影する。制御部70は、取得された画像データに基づいて、光学ヘッド部50の照明光学系53を動作させ、これにより、光学ヘッド部50から照射されるパルス光の位置や光量を調整する。
【0121】
キャリブレーション処理が完了すると、次に、搬送ロボット120が基板Wを搬入してステージ10の上面に載置する(ステップS2)。
【0122】
続いて、直接描画装置100は、ステージ10上に載置された基板Wと光学ヘッド部50との相対位置を調整するアライメント処理を行う(ステップS3)。上記のステップS2では、基板Wはステージ10上のほぼ所定の位置に載置されるのであるが、微細なパターンを描画するための位置精度としては十分でない場合が多い。このため、アライメント処理を行うことにより基板Wの位置や傾きを微調整して、後続の描画処理の精度を向上させる。
【0123】
アライメント処理においては、まず、基板Wの上面の四隅に形成されたアライメントマークを、アライメントカメラ60によりそれぞれ撮影する。制御部70は、アライメントカメラ60により取得された画像中の各アライメントマークの位置に基づいて、基板Wの理想位置からのずれ量(X軸方向の位置ずれ量、Y軸方向の位置ずれ量、およびZ軸周りの傾き量)を算出する。そして、算出されたずれ量を低減させる方向にステージ移動機構20を動作させることにより、基板Wの位置を補正する。
【0124】
続いて、直接描画装置100は、アライメント処理後の基板Wに対して描画処理を行う(ステップS4)。すなわち、直接描画装置100は、ステージ10を主走査方向および副走査方向に移動させつつ、光学ヘッド部50から基板Wの上面に向けてパルス光を照射することにより、基板Wの上面に規則性パターンを、基板W内を区画する複数のブロックごとに描画する。また、上記円弧帯状領域E1乃至E8に対する描画動作を実行する。
【0125】
描画処理が完了すると、直接描画装置100は、ステージ移動機構20を動作させてステージ10および基板Wを搬出位置に移動させる。そして、搬送ロボット120がステージ10の上面から基板Wを搬出する(ステップS5)。
【0126】
<変形実施>
上記実施形態の直接描画装置100では光学ヘッド部50等に対して基板Wが移動する構成であるが、固体支持された基板Wに対して光学ヘッド部50等を移動させて、相対移動を実現させても良い。