(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程(d)では、前記線状部材の両側を前記キャリア側接着面と平行方向に引っ張るか又は前記平行方向から前記基板キャリア側に傾斜した斜め方向に引っ張ることで前記研磨基板を前記基板キャリアから剥離する、
請求項1又は2に記載の研磨基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の基板キャリアの一実施形態である基板キャリア10の斜視図である。
【0014】
基板キャリア10は、円板状の本体部12と、本体部12の下面中央に設けられたシャフト14と、を備えている。シャフト14は、図示しない駆動モータにより軸回転可能である。この基板キャリア10は、上面の外周縁が面取りされて面取り部16となっている(
図1の拡大部分参照)。面取り部16は、基板キャリア10の上面の外周を一周するようにリング状に形成されている。なお、面取り部16は、C面取りにより形成されていてもよいし、R面取りにより形成されていてもよい。本実施形態では、面取り部16は45°の面でカットしたC面取りにより形成されたものとした。基板キャリア10の上面のうち面取り部16以外の部分は円形の接着面13となっている。基板キャリア10の材質としては、例えばアルミナなどのセラミックス材料が一般的に用いられる。
【0015】
続いて、研磨基板を製造するプロセスについて説明する。
【0016】
まず、工程(a)として、研磨対象となる基板と、上述した基板キャリア10と、を用意する。
図2は、研磨対象の基板である貼り合わせ基板30の斜視図である。貼り合わせ基板30は、圧電基板32と支持基板24とを接合したものである。
【0017】
圧電基板32は、オリエンテーションフラット(OF)33を有する略円板状の基板(ウエハー)である。圧電基板32の材質は、特に限定されないが、例えば、タンタル酸リチウム(LT)、ニオブ酸リチウム(LN)、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶、ホウ酸リチウム、ランガサイト(LGS)、水晶などが挙げられる。圧電基板32の大きさは、特に限定するものではないが、例えば、直径が50〜150mm、厚みが10〜80μmである。なお、本実施形態では、
図2に示すように圧電基板32の直径は支持基板24よりも小さいものとしたが、特にこれに限らず、例えば圧電基板32と支持基板24とが同じ直径であってもよい。また、圧電基板32の外周縁は面取りされていてもよい(例えばR面取り)。
【0018】
支持基板24は、圧電基板32を支持する基板であり、オリエンテーションフラット(OF)25を有する略円板状の基板(ウエハー)である。この支持基板24は、圧電基板32に直接接合により接合されているか有機接着層を介して接合されている。支持基板24は、圧電基板32と中心軸が同軸になり、互いのOF33,OF25の向きが一致する(OF33,OF25のなす角度が0°(平行))ように接合されている。この支持基板24の材質としては、シリコン(Si)、サファイア、窒化アルミニウム、アルミナ、無アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、LT、LN、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶、ホウ酸リチウム、LGS、水晶などが挙げられる。支持基板24の大きさは、特に限定するものではないが、例えば、直径が50〜150mm、厚みが100〜1000μmである。支持基板24の外周縁は面取りされていてもよい(例えばR面取り)。
【0019】
なお、このような貼り合わせ基板30は、例えば以下のようにして製造する。まず、厚みが100〜1000μmの圧電基板32と厚みが100〜1000μmの支持基板24とを用意し、両者を直接接合により接合するか有機接着層を介して接合して貼り合わせ基板30を作製する。直接接合で接合する場合には、まず、圧電基板32と支持基板24とのそれぞれの接合面を活性化した後、両接合面を向かい合わせにした状態で両基板32,24を押圧する。接合面の活性化は、例えば、接合面への不活性ガス(アルゴンなど)のイオンビームの照射のほか、プラズマや中性原子ビームの照射などで行う。一方、有機接着層を介して接合する場合には、有機接着層として、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などを用いる。続いて、貼り合わせ基板30の圧電基板32をグラインダなどで研削して厚みを10〜80μmとする。
【0020】
次に、工程(b)として、貼り合わせ基板30のうち支持基板側の面である接着面26(
図2参照)を、接着剤を介して基板キャリア10の接着面13に接着して接着体40とする。
図3は、接着体40の説明図である。なお、
図3の上段は接着体40の上面図であり、
図3の下段は接着体40の正面図である。接着は、例えば、貼り合わせ基板30の接着面26上に接着剤をスピンコートにより塗布し、接着面26と接着面13とを向かい合わせにして加圧することで行う。これにより接着剤は接着層42となる。接着剤の材質としてはエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの有機接着剤や、ワックスなどが挙げられる。接着層42の厚さは、例えば1〜5μmである。なお、接着する際には、接着面26の代わりに接着面13に接着剤を塗布してもよいし、接着面26と接着面13との両方に接着剤を塗布してもよい。また、接着剤を塗布する前に、接着剤を塗布する面を加熱しておいてもよい。
【0021】
なお、本実施形態では、工程(b)において、基板キャリア10と貼り合わせ基板30とを中心軸が同軸になるように接着する。ここで、基板キャリア10の接着面13の直径は、接着面13の一部が貼り合わせ基板30のOF25の一部から外側(径方向外側)にはみ出した状態になるように設定されている。このはみ出した部分における貼り合わせ基板30との接着面側をキャリア側はみ出し面13aと称する。このとき、貼り合わせ基板30(支持基板24)は、OF25の両端(
図3上段における上端及び下端)が接着面13からはみ出しており、接着面26の一部が接着面13よりも外側(径方向外側)にはみ出した状態になる。このはみ出した部分における基板キャリア10との接着面側を基板側はみ出し面26aと称する。基板側はみ出し面26aは、
図3に示すように、接着面26のうちOF25の一部(キャリア側はみ出し面13aが存在する部分)以外の部分の外周端全体に亘って存在している。また、接着体40を接着面13に垂直な方向で且つ基板(貼り合わせ基板30)側から透視すると、基板側はみ出し面26a,キャリア側はみ出し面13a,基板側はみ出し面26aがこの順に隣接して並んでいる。キャリア側はみ出し面13aと基板側はみ出し面26aとは第1,第2接点44a,44bで隣接している(
図3上段の拡大部分参照)。なお、
図3上段の拡大部分では、キャリア側はみ出し面13a及び基板側はみ出し部分をハッチング及び塗りつぶしで図示している。塗りつぶして図示した基板側はみ出し部分のうち基板キャリア10側の面が、基板側はみ出し面26aである。また、
図3上段の拡大部分では、面取り部16も図示している。この第1,第2接点44a,44bは、接着面13に垂直な方向且つ基板(貼り合わせ基板30)側から透視したときの、接着面13のエッジと接着面26のエッジ(ここではOF25)との交点である。
【0022】
続いて、工程(c)として、貼り合わせ基板30のうち基板キャリア10との接着面26とは反対側の面である圧電基板32の表面を研磨する。研磨としては、例えばダイヤモンドスラリーなどを用いたラップ(粗研磨)や、コロイダルシリカなどを用いたCMP(仕上げ研磨)などが挙げられる。ラップとCMPとは、研磨剤が異なる以外は同様に行うことができるため、CMPについて説明する。
図4は、貼り合わせ基板30のCMPの様子を示す説明図である。CMPは、
図4に示す研磨装置50を用いて行う。研磨装置50は、基板キャリア10と、円盤状で基板キャリア10よりも径の大きな定盤52と、研磨剤であるコロイダルシリカを含むスラリーを定盤52上へ供給するパイプ58とを備えている。定盤52は、裏面中央にシャフト54を備えており、図示しない駆動モータでシャフト54が回転駆動されることにより軸回転する。この定盤52は、表面にウレタンパッドなどの研磨布56が取り付けられている。基板キャリア10は、研磨対象の基板の大きさに応じて交換可能に研磨装置50に取り付けられているものとしてもよい。この研磨装置50を用いて、
図4における接着体40の圧電基板32の表面を研磨布56に接触させた状態で、パイプ58から研磨布56にスラリーを供給しつつ定盤52及び基板キャリア10を軸回転させながら研磨を行う。工程(c)では、研磨により、圧電基板32を、例えば0.1〜40μmの厚さまで薄くする。これにより、貼り合わせ基板30は研磨後の貼り合わせ基板30である複合基板20となる(後述する
図5,6参照)。なお、工程(c)では、ラップのあとにCMPを行うなど、複数回の研磨を行ってもよい。
【0023】
続いて、工程(d)として、複合基板20を−15℃以上0℃以下に冷却した状態で、複合基板20を基板キャリア10から剥離する。剥離は、線状部材59を用いて行う。
図5は、線状部材59を用いて複合基板20を剥離する様子を示す説明図である。なお、
図5の上段は接着体40の上面図であり、
図5の下段は接着体40の正面図である。線状部材59の太さは、例えば0.1〜0.3mmである。線状部材59は、接着層42より細い方が好ましいが、接着層42より太くてもよい。線状部材59の材質としては、剥離時に自身が切断しない程度の強度を有するものであり、例えばナイロン,フロロカーボンなどが挙げられる。剥離時には、まず、
図5に示すように、キャリア側はみ出し面13a上を横切り、且つその両側において複合基板20の基板側はみ出し面26a側を通るように、線状部材を掛け渡す。そして、この状態から、線状部材59が複合基板20と基板キャリア10との間に挿入される向き(
図5では左方)に、線状部材59の両側を引っ張っていく。引っ張る方向は、線状部材59の両側を接着面13と平行方向(
図5の左方向)とするか、又は平行方向から基板キャリア10側に傾斜した斜め方向(
図5下段における左下方向)とすることが好ましい。本実施形態では、斜め方向に引っ張るものとした。
【0024】
このように線状部材59を引っ張ると、第1,第2接点44a,44bに位置する2箇所の接着剤(接着層42)に対して、集中的に線状部材59からの力が加わる。これにより、線状部材59は、この第1,第2接点44a,44bを起点として複合基板20の接着面26と基板キャリア10の接着面13とを剥離しながら、接着面13と接着面26との間を接着体40の反対側(
図5の左端)まで通過していき、複合基板20は基板キャリア10から剥離される。なお、上述した基板キャリア10の面取り部16の寸法は、線状部材59が接着面13と接着面26との間に挿入されやすくなるような大きさとして、例えば0.3mm以上(C面取りであればC0.3mm以上)とすることが好ましい。
図6は、剥離後の複合基板20と基板キャリア10との状態を示す説明図である。なお、
図6では図示を省略しているが、剥離後の複合基板20の接着面26に付着した接着剤(接着層42の一部)がある場合には、例えば洗浄剤などで洗浄してこれを除去する。
【0025】
基板キャリア10から剥離された複合基板20は、例えば圧電基板32の表面に電極パターンを形成する工程やダイシングによりチップ状に切り出すなどの工程を経て、圧電デバイスや弾性波デバイスなどとして利用される。
【0026】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の基板キャリア10が本発明の基板キャリアに相当し、貼り合わせ基板30が基板に相当し、接着面13がキャリア側接着面に相当し、接着面26が基板側の接着面に相当し、接着体40が接着体に相当し、複合基板20が研磨基板に相当する。また、OF25がオリエンテーションフラットに相当する。
【0027】
以上説明した本実施形態では、複合基板20を基板キャリア10から剥離する工程(d)において、複合基板20と基板キャリア10との接着体40から複合基板20を剥離する際に、複合基板20を0℃以下に冷却している。そのため、接着剤(接着層42)が冷却により剥がれやすくなっているから、加熱により接着剤を熔融しなくても、線状部材59を用いて複合基板20を基板キャリア10から剥離することができる。しかも、剥離する際の複合基板20の温度を−15℃以上としているため、複合基板20が冷却による熱応力で破損することをより抑制できる。これらにより、剥離時に接着剤(接着層42)を加熱する場合と比べて、基板キャリア10から剥離する際の複合基板20の破損(例えば複合基板20の熱膨張や圧電基板32と支持基板24との熱膨張係数差に起因する破損など)をより抑制することができる。
【0028】
また、上述した工程(b),工程(d)を行うことにより、接着体40を接着面13に垂直な方向で且つ基板側から透視したときのキャリア側はみ出し面13aとその両側の基板側はみ出し面26aとの隣接点である第1,第2接点44a,44bに位置する2箇所の接着剤に集中的に線状部材59からの力を加えることができる。これにより、例えば複合基板20の端部などに不要な力が加わることをより抑制でき、剥離する際の複合基板20の破損をより抑制することができる。
【0029】
そして、工程(a)では、接着面13の外周縁が面取りされ面取り部16が形成されている基板キャリア10を用意する。そのため、工程(d)で線状部材59を引っ張ったときに、線状部材59が複合基板20と基板キャリア10との間に入り込み易くなり、より容易に複合基板20を剥離できる。
【0030】
そしてまた、工程(d)では、線状部材59の両側を接着面13と平行な方向から基板キャリア10に傾斜した斜め方向(
図5下段の左下方向)に引っ張るため、例えば線状部材59を平行方向から複合基板20側に傾斜した斜め方向(
図5下段の左上方向)に引っ張る場合と比較して、複合基板20の破損をより抑制できる。
【0031】
そしてまた、工程(a)では、圧電基板32と支持基板24とを接合した貼り合わせ基板30を用意し、工程(b)では、貼り合わせ基板30のうち支持基板24側を接着面13に接着して接着体40とし、工程(c)では、接着体40のうち圧電基板32の表面を研磨している。このとき、工程(c)で圧電基板32の厚さが40μm以下となるまで研磨を行うと、工程(d)での基板キャリア10からの剥離時に圧電基板22が破損しやすいため、本発明を適用する意義が高い。
【0032】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0033】
例えば、上述した実施形態では、基板キャリア10は面取り部16を備えるものとしたが、面取り部16を備えなくてもよい。また、本体部12の上面に溝を設けて、溝の部分に貼り合わせ基板30がはみ出すようにすることで基板側はみ出し面を設けてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、接着面13は円形としたが、これに限られない。
図7は、変形例の基板キャリア210の説明図である。
図7(a)は、変形例の基板キャリア210の上面図である。
図7(a)に示すように、基板キャリア210の接着面213は、円形領域214と、円形領域214から径方向外側に突出した略矩形の突出領域215と、で構成されている。
図7(b)は、突出領域215の少なくとも一部が貼り合わせ基板30の接着面からはみ出すように基板キャリア210と複合基板20とが接着された様子を示す上面図である。
図7(b)では、接着体40を接着面213に垂直な方向で且つ基板(複合基板20)側から透視した様子を示している。また、
図7(b)では、図を見やすくするために複合基板20のうち支持基板24のみを図示している。この状態では、突出領域215の一部がキャリア側はみ出し面213a(図のハッチング部分)となっている。また、支持基板24のうち接着面213からはみ出した部分(図の塗りつぶし部分)のうち基板キャリア210側の面が、基板側はみ出し面226aとなっている。接着面213に垂直な方向で且つ基板側から透視したときに、キャリア側はみ出し面213aは第1,第2接点244a,244bで基板側はみ出し面226aと隣接している。キャリア側はみ出し面213aは
図5のキャリア側はみ出し面13aと同じ役割を担うことにより、同様の効果を得ることができる。すなわち、
図7(b)に示すように、キャリア側はみ出し面213a上を横切り且つその両側において基板側はみ出し面226a側を通るように線状部材59を掛け渡して引っ張ることで、第1,第2接点244a,244bに位置する接着剤に集中的に力を加えることができる。
【0035】
さらに
図8(a)に示す基板キャリア310のように円形領域314から突出した2箇所の突出領域315,316を設けることも可能である。
図8(b)は、突出領域315,316の各々の少なくとも一部が貼り合わせ基板30の接着面からはみ出すように基板キャリア310と複合基板20とが接着された様子を示す上面図である。
図8(b)では、接着体40を接着面313に垂直な方向で且つ基板(複合基板20)側から透視した様子を示している。また、
図8(b)では、図を見やすくするために複合基板20のうち支持基板24のみを図示している。この状態では、突出領域315,316の一部がキャリア側はみ出し面313a,313b(図のハッチング部分)となっている。また、支持基板24のうち接着面313からはみ出した部分(図の濃い塗りつぶし部分)における基板キャリア310側の面(接着面26の一部)が、基板側はみ出し面326aとなっている。同様に、支持基板24のうち接着面313からはみ出した部分(図の薄い塗りつぶし部分)における基板キャリア310側の面が、基板側はみ出し面326bとなっている。基板側はみ出し面326aは、キャリア側はみ出し面313a,313bと第1,第2接点344a,344bで隣接している。また、基板側はみ出し面326bはキャリア側はみ出し面313aと接点344cで隣接し、基板側はみ出し面326bはキャリア側はみ出し面313bと接点344dで隣接している。このように接点が3以上存在する場合でも、掛け渡した線状部材59により少なくとも2つの接点に集中的に力が加わるようにすればよい。例えば、
図8(b)に示すように、基板側はみ出し面326aを横切り且つその両側においてキャリア側はみ出し面313a,313b(第1接点344a,第2接点344bで基板側はみ出し面326aに隣接する2つの面)を通るように線状部材59を掛け渡すことで、第1接点344a及び第2接点344bに集中的に力を加えることができる。
【0036】
なお、
図8(b)では、キャリア側はみ出し面313aとキャリア側はみ出し面313bとは別の面であるが、これらがつながっているなどキャリア側はみ出し面が1つのみ存在する状態であってもよい。この場合でも、接着面313に垂直な方向で且つ基板側から透視したときに、基板側はみ出し面326aが1つのキャリア側はみ出し面と第1,第2接点344a,344bで隣接した状態となるため、
図8(b)と同様に線状部材59を掛け渡して引っ張ることで、第1,第2接点344a,344bに集中的に力を加えることができる。
【0037】
上述した実施形態では、接着面13に垂直な方向で且つ基板側から透視したときに、キャリア側はみ出し面13aが1つの基板側はみ出し面26aと第1,第2接点44a,44bで隣接している状態となるように、工程(b)の接着を行うものとしたが、これに限られない。キャリア側はみ出し面が2つの基板側はみ出し面と第1,第2接点で隣接している状態であってもよい。すなわち、キャリア側はみ出し面に対して第1接点で隣接する基板側はみ出し面と、キャリア側はみ出し面に対して第2接点で隣接する基板側はみ出し面とが、別の面であってもよい。
【0038】
上述した実施形態では、工程(b)において、基板キャリア10と貼り合わせ基板30とを接着面13と接着面26との中心軸が同軸になるように接着したが、これに限らず中心軸をずらして接着してもよい。
【0039】
上述した実施形態では、工程(b)において、キャリア側はみ出し面13aが接着面26のうちOF25の部分から径方向外側にはみ出しているものとしたが、これに限らず他の位置からはみ出していてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、研磨対象の基板は
図2の貼り合わせ基板30としたが、これに限られない。例えば、貼り合わせ基板30がOF25(及びOF33)を有しなくともよい。貼り合わせ基板30が円板状でないなど、接着面26が円形でなくてもよい。また、研磨対象の基板は圧電基板32と支持基板24とを貼り合わせた基板に限らず、単体の基板としてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、工程(b)において、接着面13に垂直な方向で且つ基板側から透視したときに、キャリア側はみ出し面13aと基板側はみ出し面26aとが第1,第2接点44a,44bで隣接した状態になるように貼り合わせ基板30と基板キャリア10とを接着するものとしたが、これに限られない。第1,第2接点44a,44bの少なくとも一方が存在しなくともよいし、そもそも接着体40にキャリア側はみ出し面13aと基板側はみ出し面26aとの少なくとも一方が存在しなくともよい。例えば、工程(a)で貼り合わせ基板30の接着面26の直径より大きい直径の接着面13を備えた基板キャリア10を用意して、工程(b)でこの接着面13と接着面26との中心軸が同軸になるように基板キャリア10と貼り合わせ基板30とを接着してもよい。この場合、接着体40においてキャリア側はみ出し面13aは存在するが、基板側はみ出し面26aは存在しない。あるいは、工程(a)で貼り合わせ基板30の接着面26と同心且つOF25に接する円の直径よりも小さい直径の接着面13を備えた基板キャリア10を用意して、工程(b)でこの接着面13と接着面26との中心軸が同軸になるように基板キャリア10と貼り合わせ基板30とを接着してもよい。この場合、接着体40において基板側はみ出し面26aは存在するが、キャリア側はみ出し面13aは存在しない。これらのような場合でも、工程(d)において複合基板20を−15℃以上0℃以下に冷却した状態で複合基板20を剥離することで、複合基板20を剥離する際の複合基板20の破損をより抑制することはできる。なお、作業効率は悪くなるが、線状部材59に代えて例えばスクレイパーなどのへら状部材を用いて工程(d)の剥離を行ってもよい。例えば、スクレイパーの先端を接着体40の外周面から複合基板20と基板キャリア10との間(接着層42)に挿入して複合基板20を剥離してもよい。へら状部材を用いることで、2箇所の接着剤に集中的に線状部材59からの力を加えることができない場合でも、複合基板20を剥離できる。
【実施例】
【0042】
[実施例1]
工程(a)として、アルミナからなるセラミックス製の基板キャリアと、LT基板とSi基板とをエポキシ樹脂を介して接着した貼り合わせ基板と、を用意した。基板キャリアは、上面であるキャリア側接着面の直径が120mmであり、上面の外周縁にC0.5mmの面取りがなされたものを用いた。貼り合わせ基板は、以下のように作製して用意した。まず、OFを有する直径100mm,厚み350μmのLT基板と、OFを有する直径100mm,厚み230μmのSi基板とをエポキシ樹脂を介して接着した。接着は、Si基板の表面にエポキシ樹脂をスピンコータ(回転数1000rpm)で膜厚1μmとなるように塗布し、Si基板とLT基板とを貼り合わせて150℃のオーブンで樹脂を硬化させることで行った。続いて、グラインダーでLT基板のうちSi基板との接着面とは反対側の面を研削し、LT基板の厚みを12μmとして、貼り合わせ基板とした。
【0043】
工程(b)として、Si基板のうちLT基板との接着面とは反対側の面をワックスで基板キャリアのキャリア側接着面に接着し、接着体とした。接着は、以下のように行った。まず、貼り合わせ基板を90℃に加熱し、貼り合わせ基板側の接着面にワックスをスピンコータ(回転数1000rpm)で膜厚1μmとなるように塗布した。そして、貼り合わせ基板側の接着面とキャリア側接着面とを中心軸が同軸になるように接着し、加圧して接着体とした。なお、キャリア側接着面の直径は貼り合わせ基板側の接着面の直径よりも大きく、しかも接着面を同軸に接着したため、接着体には基板側はみ出し面は存在しなかった。
【0044】
工程(c)として、接着体のうちLT基板の表面を研磨した。具体的には、直径350mmのスズ定盤を備えたラップ研磨機にLT基板側を押しつけ、ダイヤモンドスラリーを供給しながら、定盤と基板キャリアとを回転させてラップ(粗研磨)を1時間行った。これにより、LT基板の厚みは約2μmとなった。続いて、CMP研磨機を用いてコロイダルシリカを供給しながらCMP(仕上げ研磨)を2時間行い、LT基板の厚みを約0.6μmにした。これにより貼り合わせ基板はLT基板が研磨されて複合基板(研磨基板)となった。
【0045】
工程(d)として、ペルチェ冷却プレートの上に接着体を載置して20分放置し、複合基板の表面温度を−5℃になるまで冷却した。スクレイパーを複合基板と基板キャリアとの間に侵入させて複合基板を剥離させた。剥離させる直前の複合基板の表面温度は−0.3℃であった。これにより、複合基板を得た。
【0046】
[実施例2]
実施例2として、工程(d)におけるペルチェ冷却プレートの設定温度及び冷却時間を変更し、剥離させる直前の複合基板の表面温度を−14.5℃とした点以外は、実施例1と同様にして複合基板を作製した。
【0047】
[比較例1〜3]
比較例1〜3として、工程(d)におけるペルチェ冷却プレートの設定温度及び冷却時間を変更し、剥離させる直前の複合基板の表面温度をそれぞれ−18.3℃、5.8℃、10.3℃とした点以外は、実施例1と同様にして複合基板を作製した。
【0048】
[比較例4]
比較例4として、工程(d)において接着体を90℃に加熱し、ワックスを熔融させて複合基板を基板キャリアから剥離した点以外は、実施例1と同様にして複合基板を作製した。
【0049】
実施例1,2、比較例1〜4により複合基板をそれぞれ50枚ずつ作製し、作製した複合基板(剥離後の複合基板)に割れが生じていた枚数を数えて、割れ確率(%)を算出した。実施例1,2、比較例1〜4における割れ確率は、それぞれ4%、2%、8%、16%、32%、84%であった。
【0050】
[実施例3]
以下の点以外は、実施例1と同様にして複合基板を作製した。工程(a)では、キャリア側接着面の直径が97mm(貼り合わせ基板側の接着面の直径よりも小さい値)の基板キャリアを用意した。工程(b)では、貼り合わせ基板側の接着面とキャリア側接着面とを中心軸が同軸になるように接着した。その結果、
図3と同様に、貼り合わせ基板側の接着面のうちSi基板のOF部分の一部からキャリア側接着面の一部がはみ出したキャリア側はみ出し面が存在した。また、
図3と同様、キャリア側接着面に垂直な方向で且つ貼り合わせ基板側から透視したときに、キャリア側はみ出し面が基板側はみ出し面と第1,第2接点で隣接した状態になっていた。工程(d)では、
図5と同様、キャリア側はみ出し面を横切り且つその両側において複合基板の基板側はみ出し面側を通るように線状部材を掛け渡した。そして、線状部材の両側をキャリア側接着面と平行な方向から基板キャリア側に傾斜した斜め方向に引っ張り、複合基板を基板キャリアから剥離した。なお、線状部材としてはナイロン製で太さ0.2mmの糸を用いた。また、工程(d)における剥離前の複合基板の表面の温度は−2℃であった。
【0051】
実施例3により複合基板を50枚作製したところ、複合基板は一切割れず、実施例1よりもさらに割れ確率が小さく(0%)なっていた。