特許第6280863号(P6280863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6280863
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】エンジン始動制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20180205BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20180205BHJP
【FI】
   E05B49/00 J
   B60R25/24
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-260973(P2014-260973)
(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-121463(P2016-121463A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】桂田 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】森 裕史
(72)【発明者】
【氏名】渥美 竜太
(72)【発明者】
【氏名】舟山 友幸
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−076415(JP,A)
【文献】 特開2003−085676(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/139360(WO,A1)
【文献】 特開2010−149565(JP,A)
【文献】 特開2008−087734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00
B60R 25/00−40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンの始動を許可或いは禁止するエンジン始動制御装置において、
ドアロックが解除されないまま予め定めた規定時間に達したとき、エンジンの始動に必要な条件を厳しくする制御手段を備え
前記制御手段は、前記規定時間に達する前のエンジンの始動に必要な通常照合の成立に加え、新たな照合の成立をエンジンの始動に必要な条件とすることで当該条件を厳しくする
ことを特徴とするエンジン始動制御装置。
【請求項2】
前記新たな照合は免許証の照合である
請求項に記載のエンジン始動制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエンジン始動制御装置において、
前記規定時間に達したときのエンジンの始動に必要な対処方法を教示する報知手段を備えた
ことを特徴とするエンジン始動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンの始動を許可或いは禁止するエンジン始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車室内に通信エリアを形成し、このエリアに携帯機を所持したユーザが進入すると、車両と携帯機との間で無線通信が行われ、当該通信を通じてエンジンの始動を許可或いは禁止するエンジン始動制御装置について開示されている。
【0003】
この装置の適用された車両のオーナ(ユーザ)は、自車に適合する携帯機(車両キー)を所持することで、電気的なドアロックの解除を伴って車室内への進入(乗車)が許可される他、車室内においてはエンジンの始動が許可され、運転席のエンジンスイッチを例えば押圧するだけで簡単にエンジンを始動できるようになる。これにより、同装置はユーザにとって利便性の高いものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−170162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
長期間車両を駐車させた場合、盗難のリスクが高まるため、エンジンを始動しづらくする必要がある。
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、セキュリティの向上を可能にしたエンジン始動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するエンジン始動制御装置は、車両のエンジンの始動を許可或いは禁止するエンジン始動制御装置において、ドアロックが解除されないまま予め定めた規定時間に達したとき、エンジンの始動に必要な条件を厳しくする制御手段を備えたことをその要旨としている。
【0007】
この構成によれば、長期間車両を駐車させた場合は、エンジンの始動に必要な条件が厳しくなる。車両を長期間駐車させると盗難のリスクは高くなるが、エンジンの始動に必要な条件を厳しくすることで、自ずと第三者によるエンジンの始動は困難になる。したがって、セキュリティを向上させ、車両の盗難を確実に防止することができる。
【0008】
上記エンジン始動制御装置について、前記制御手段は、複数の照合の成立をエンジンの始動に必要な条件とすることで当該条件を厳しくすることとしてもよい。
この構成によれば、長期間車両を駐車させた場合は、複数の照合の成立が要求される。したがって、単一の照合を経てエンジンの始動を許可するよりもセキュリティを向上できる。
【0009】
上記エンジン始動制御装置について、前記制御手段は、前記規定時間に達する前のエンジンの始動に必要な通常照合の成立に加え、新たな照合の成立をエンジンの始動に必要な条件とすることで当該条件を厳しくすることとしてもよい。
【0010】
この構成によれば、長期間車両を駐車させた場合は、通常照合の成立に加え、新たな照合の成立が要求される。したがって、通常照合のみを経てエンジンの始動を許可するよりもセキュリティを向上できる。
【0011】
上記エンジン始動制御装置について、前記新たな照合は免許証の照合であることとしてもよい。
この構成によれば、長期間車両を駐車させた場合は、通常照合の成立に加え、免許証の照合の成立が要求される。したがって、規定時間の経過後には、通常照合に必要な車両キーの他、車両オーナの免許証を所持する者、つまり車両オーナのみがエンジンを始動できることになるため、セキュリティが向上する。
【0012】
上記エンジン始動制御装置について、前記規定時間に達したときのエンジンの始動に必要な対処方法を教示する報知手段を備えたこととしてもよい。
この構成によれば、報知手段による対処方法に倣い、適切にエンジンを始動できるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両の盗難を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】電子キーシステムを示す概念図。
図2】エンジン始動制御装置を示すブロック図。
図3】エンジン始動制御装置の作用について、(a)は前提となる長期間の車両放置を示す概念図、(b)は比較例を示すブロック図、(c)は実施例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、エンジン始動制御装置の一実施の形態について説明する。
図1に示すように、電子キーシステム1は、車両2と電子キー3との間で双方向の無線通信が行われ、当該通信を通じて車両2の動作が許可或いは禁止される。
【0016】
上記通信はスマート通信とも呼ばれ、このスマート通信では、車両2から呼び掛け信号(図示略)が発信されることで車両2の周辺に通信エリアが形成され、このエリアに電子キー3を所持したユーザが進入すると、電子キー3から応答信号(図示略)が返信される。電子キー3からの応答信号には、電子キー3に固有のID(identification)が含まれる。車両2は、応答信号を受信すると、その信号を解析し、車両2に登録された基準IDと照合一致するIDの取得を条件に、車両2の動作を許可する。ここで、車両2は、車外の通信エリアに呼び掛け信号を送信してIDが照合一致したことを条件に、ドアの施解錠を許可し、車室内の通信エリアに呼び掛け信号を送信してIDが照合一致したことを条件に、エンジンの始動を許可する。
【0017】
図2に示すように、車両2は、ユーザが車両キーとして所持する電子キー3を対象にIDの照合を行うとともに、ユーザが所持する免許証4を対象に顔情報の照合を行う照合ECU(electronic control unit )5を備える。つまり、照合ECU5は、呼び掛け信号を送信する送信回路部及び応答信号を受信する受信回路部の他、免許証4から顔情報を取得するデータ読取部と、電子キー3の照合に加え免許証4の照合を行う制御回路部とを含む総称である。照合ECU5には、基準IDの他、車両オーナの顔情報が登録されている。
【0018】
照合ECU5は、車外のID照合を経てドアロック制御を行うとともに、ドアロックの解除されていない施錠期間に応じたエンジン始動制御6を行う。詳述すると、照合ECU5は、連続する施錠期間が予め定めた規定時間(例えば、1週間)に達する前には、車室内のID照合のみを経てエンジンの始動を許可する。尚、車室内のID照合を通常照合と規定する。一方、照合ECU5は、連続する施錠期間が規定時間に達したとき、通常照合に加え免許証4の照合を経てエンジンの始動を許可する。照合ECU5は制御手段に相当する。
【0019】
次に、エンジン始動制御装置の作用について説明する。
図3(a)に示すように、長期間に亘って車両2を駐車させた場合を想定する。
図3(b)に示すように、本例に対する比較例では、ドアロックが解除されないまま規定時間に達したとき、規定時間に達する前と同様、照合ECU5Aによる電子キー3Aの照合のみを経てエンジン始動制御6Aが行われる。
【0020】
図3(c)に示すように、本実施例では、ドアロックが解除されないまま規定時間に達したとき、照合ECU5による電子キー3の照合に加え免許証4の照合を経てエンジン始動制御6が行われる。
【0021】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)長期間車両2を駐車させた場合は、エンジンの始動に必要な条件が厳しくなる。車両2を長期間駐車させると盗難のリスクは高くなるが、エンジンの始動に必要な条件を厳しくすることで、自ずと第三者によるエンジンの始動は困難になる。したがって、セキュリティを向上させ、車両2の盗難を確実に防止することができる。
【0022】
(2)長期間車両2を駐車させた場合は、複数の照合の成立が要求される。したがって、単一の照合を経てエンジンの始動を許可するよりもセキュリティを向上できる。
(3)長期間車両2を駐車させた場合は、通常照合の成立に加え、新たな照合の成立が要求される。したがって、通常照合のみを経てエンジンの始動を許可するよりもセキュリティを向上できる。
【0023】
(4)長期間車両2を駐車させた場合は、通常照合の成立に加え、免許証4の照合の成立が要求される。したがって、規定時間の経過後には、通常照合に必要な電子キー3の他、車両オーナの免許証4を所持する者、つまり車両オーナのみがエンジンを始動できることになるため、セキュリティが向上する。
【0024】
尚、上記実施の形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・照合ECU5には、IC(integrated circuit)免許証から情報を読み取るリーダが含まれていてもよい。
【0025】
・照合ECU5には、免許証4を撮像するカメラが含まれていてもよい。
・免許証4の照合は、顔情報の照合に限らず、免許証4に書き込まれた他の情報の照合であってもよい。
【0026】
・免許証4の照合に代えて又は加えて、生体認証を採用してもよい。或いは、カーナビゲーションシステムを用いたパスワードの照合を採用してもよい。
・通常照合が免許証4の照合である場合において、規定時間の経過後には、免許証4の照合に加え電子キー3の照合を要求してもよい。
【0027】
・通常照合が単一の照合である場合において、規定時間の経過後には、3つ以上の照合を要求してもよい。
・通常照合が2つ以上の照合である場合において、規定時間の経過後には、3つ以上の照合を要求してもよい。
【0028】
図2に破線で示すように、規定時間に達したときのエンジンの始動に必要な対処方法を教示する報知手段7を備えてもよい。この構成によれば、報知手段7による対処方法に倣い、適切にエンジンを始動できるようになる。例えば、「IC免許証をリーダに翳して下さい。」、「IC免許証をスロットに挿入して下さい。」、「免許証をカメラに向けて下さい。」といったメッセージを表示又は音声で知らせてもよい。
【0029】
・規定時間は1週間に限定されない。セキュリティ性と利便性を考慮しつつ任意に設定してもよい。
・規定時間をユーザが変更できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…電子キーシステム、2…車両、3…電子キー、4…免許証、5…照合ECU(制御手段)、6…エンジン始動制御、7…報知手段。
図1
図2
図3