(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(D)の工程において、ラベリング処理により粒状材料を検出した後に、検出不要な小径の粒状材料を画像から削除する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載した粒状材料の粒径計測方法。
【背景技術】
【0002】
従来、作業所で、例えばダンプカー等の運搬車両により搬入された粒状材料の粒径の大小は、作業員が目視により定性的に確認していた。搬入時に確認できない場合は、施工場所(例えば盛土工区)まで運搬し、ダンプアップした際に確認を行っていた。
しかし、目視による定性的な確認作業では、粒径の大小を早期に判別することは困難であり、また、人的感覚による判断にバラツキが生じやすい等、精度が低い。加えて、ダンプアップ後の敷き均し作業の直前で過大な粒径(例えば100mm以上)を含む等、使用目的に不適正な粒状材料(不良土)であることが判明した場合、改めてダンプに積み直すことはしない(実質できない)ため、その場で過大な粒状材料を取り除く篩い分け作業を行ったり、不良土を積載したダンプカーを別の場所に移動(2次運搬)させたりする手間が嵩む等、大変煩わしかった。
【0003】
よって、近年、粒状材料の粒径を、目視による定性的な確認作業ではなく、定量的に確認できる技術が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
前記特許文献1には、砂礫(粒状材料)が堆積している観測地域内に設置される撮影手段と、前記撮影手段から所要寸法離れると共に異なる方向から前記観測地域内を照射して、撮影画像に生じる陰影の位置を異ならせる照明手段と、前記照明手段で異なる方向からの照射下で、前記撮影手段で同一方向から撮影した複数枚の画像データを記録し、該画像データの前記陰影に基づいて、前記観測地域内の礫を分離識別すると共に、個々の礫の粒度(半径)を計測し且つ分布を分析する画像処理手段と、を備えた砂礫測定装置を用いて河川の砂礫を観測する砂礫測定方法が開示されている(同文献1の請求項1、請求項8等を参照)。
この特許文献1に係る砂礫測定方法によれば、河川の調査範囲における固定観点で、砂礫を撮影するだけでよく、撮影した画像をコンピューターで画像解析し、其の際、堆積した砂礫から個々の礫の全周に沿った陰を抽出して、礫を分離、識別可として、礫の大きさや分布状態を簡単且つ精度よく測定できる等の効果がある旨の記載が認められる(段落0027等[発明の効果]の項を参照)。
【0005】
前記特許文献2に係る発明には、異なる粒径の粒状材2が積み重なった堆積物1(
図3参照)の一対のステレオ画像GR、GLを撮影し、両画像GR、GLから堆積物1の表面全体に分散した複数の離散対応点S(
図6(B)参照)を選出し且つ各離散対応点Sの二次元座標から三次元座標をステレオ画像法により算出して堆積物表面の三次元曲面モデルF(
図6(C)参照)を作成し、両画像GR、GLから各粒状材2の輪郭2pを抽出し(
図2のステップS103、
図6(A)及び
図7(A)参照)、両画像GR、GLから各輪郭2p上の複数の対応点Tを検出し且つ三次元曲面モデルFにより各対応点Tの二次元座標を三次元座標に変換し(
図2のステップS104〜S105、
図7(A)〜(B)参照)、変換した各輪郭2p上の複数の三次元座標を球状又は楕円状で近似することにより各粒状材2の粒径dを計測してなる堆積粒状材の粒径計測方法が開示されている(
図2のステップS106、
図7(C)〜(D)参照)。
この特許文献2に係る堆積粒状材の粒径計測方法によれば、堆積物中の各粒状材の粒径をスケールなしに短時間で安全に計測でき、ステレオ画像に写り込んだ全ての粒状材の粒径を精度よく計測できる等の効果がある旨の記載が認められる([発明の効果]の項を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に係る技術は、特殊な工夫(装備)を施したデジタルカメラを4台程度用いる等、部材点数が多く、費用が嵩む。また何より、実寸スケール(外枠材)を必要とするので、大変煩わしい。よって、上記特許文献1に係る従来の測定技術は、経済性、効率性の点で改善すべき課題があった。
【0008】
上記特許文献2に係る技術は、スケール材を用いないで粒径を計測することができる。しかしながら、この技術は、横方向からの撮影技術に特化しており、そのため、仮置き場や地面上に堆積された粒状材の堆積物(粒状材料の集積物)については対応(計測)できるものの、ダンプカー等の運搬車両の荷台中の堆積物については一切対応できない問題があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、実寸スケール等のスケール材を用いないで、また、粒状材料の集積場所を問わずに、粒状材料の集積物から粒状材料の粒径を、早期(迅速)かつ簡易に計測できる、経済性、効率性に優れた粒状材料の粒径計測方法を提供することにある。
本発明の次の目的は、粒状材料の粒径の計測結果に基づき、集積物の取り扱い(例えば、集積物から過大な粒径の粒状材料を取り除く作業を行う。過大な粒径の粒状材料を積載したダンプカーを別の場所に移動させる。)を、早期かつ簡易に判定(判断)できる粒状材料の粒径計測方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、前記判定結果に従うことで、高品質の土木構造物を構築(実現)できる粒状材料の粒径計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る粒状材料の粒径計測方法は、粒状材料の集積物から当該粒状材料の粒径を計測する方法であって、
(A)前記粒状材料の集積物の三次元計測を行う工程と、
(B)前記取得したデータを、深さ方向に複数の階調の明度のグレースケール画像に変換し、当該グレースケール画像からスライス画像を取得する工程と、
(C)前記複数のスライス画像中、1枚のスライス画像を抽出し、当該スライス画像にノイズ除去処理を行う工程と、
(D)前記ノイズ除去処理後のスライス画像に輪郭を強調する処理を行い、さらにノイズ除去処理を行った後、ラベリング処理により粒状材料を検出する工程と、
(E)前記(C)と(D)の工程を、前記複数のスライス画像の枚数分繰り返し行う工程と、
(F)前記(E)の工程で取得した複数のスライス画像のデータを深さ方向に統合し、領域分割処理を行う工程と、
(G)前記領域分割処理後の粒状材料を同面積の円に近似させ、もって、当該粒状材料の粒径を計測する工程と、からなることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した粒状材料の粒径計測方法において、前記(D)の工程中、ラベリング処理により粒状材料を検出した後に、検出不要な小径の粒状材料を画像から削除する工程を含むことを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した粒状材料の粒径計測方法において、前記(B)の工程中、複数の階調は、256階調であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る粒状材料の粒径計測方法によれば、以下の効果を奏する。
(1)実寸スケール等のスケール材を用いないで、また、粒状材料の集積場所を問わずに、粒状材料の集積物から粒状材料の粒径を、早期かつ簡易に計測できる。よって、経済性、作業効率性に優れている。本出願人の実験結果によると、1回の(例えば1台のタンプカーに対する)計測作業に要する時間は、30秒程度である。
(2)粒状材料の粒径の計測結果に基づき、集積物の取り扱い(例えば、集積物から過大な粒径の粒状材料を取り除く作業を行う。過大な粒径の粒状材料を積載したダンプカーを別の場所に移動させる。)を、早期かつ簡易に判定(判断)できる。計測はどの方向からも可能なので超大型ダンプの場合でもあっても、労せず、早期かつ簡易に判定(判断)できる。
(3)前記判定結果に従うことで、高品質の土木構造物を構築できる。
(4)粒状材料(掘削ズリ)表面の三次元情報を計測し、利用することにより、粒状材料の粒径の計測誤差を極力抑制できる。
(5)プロジェクター、CCDカメラ、PC等、コンパクトに実施できるので、低価格な装置(システム)を実現できる上に、操作が簡単である。また、判定結果は画面表示されるので分かり易く、容易に判定(判断)することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る粒状材料の粒径計測方法の実施例を図面に基づいて説明する。
【0015】
本発明に係る粒状材料の粒径計測方法は、粒状材料の集積物から当該粒状材料の粒径を計測する方法であって、主として次の(A)〜(G)の作業工程の順に行われる(
図1のフロー図も参照)。
(A)前記粒状材料の集積物の三次元計測を行う工程。
(B)前記取得したデータを、深さ方向に複数(256)の階調の明度のグレースケール画像に変換し、当該グレースケール画像からスライス画像を取得する工程。
(C)前記複数のスライス画像中、1枚のスライス画像を抽出し、当該スライス画像にノイズ除去処理を行う工程。
(D)前記ノイズ除去処理後のスライス画像に輪郭を強調する処理を行い、さらにノイズ除去処理を行った後、ラベリング処理により粒状材料を検出する工程。
(E)前記(C)と(D)の工程を、前記複数のスライス画像の枚数分繰り返し行う工程。
(F)前記(E)の工程で取得した複数のスライス画像のデータを深さ方向に統合し、領域分割処理を行う工程。
(G)前記領域分割処理後の粒状材料を同面積の円に近似させ、もって、当該粒状材料の粒径を計測する工程。
以下、前記各工程について分説する。
【0016】
[(A)前記粒状材料の集積物の三次元計測を行う(三次元座標値を算出する)工程についての説明]
【0017】
前記粒状材料は、本実施例では掘削ズリ(トンネル掘削ズリ)を対象とした。
前記粒状材料の集積物の集積場所は問わないが、本実施例では、盛土工区へ運搬するためのダンプカー(運搬車両)の荷台を想定している。
この(A)工程を実施する目的は、次の(B)工程に係るグレースケール画像の素材を取得するためであり、さらにいえば、三次元計測結果を、
図5に示すような、シェーディング表示化するためである。
【0018】
本実施例では、前記三次元計測を実現する手段として、
図2に示したように、プロジェクター(コンパクト・プロジェクター)とCCDカメラを1台ずつ用いて行う空間コード化法を採用した(仕様、型番については
図3参照)。この空間コード化法は、計測現場の環境光の変化に強く、しかもシステム全体を低コストかつコンパクトに抑えられる利点がある。
前記プロジェクターとCCDカメラは、それぞれケーブルを介して計測用パソコンに接続される。この計測用パソコンには三次元計測ソフトウエアがインストールされている。この三次元計測ソフトウエアにより前記プロジェクターとCCDカメラの制御が行われ、撮影対象表面の三次元計測を行うことが可能となる。
また、本実施例では、前記計測用パソコンに、キャリブレーションの煩雑さを軽減するべく、自動キャリブレーションシステムもインストールされている。
【0019】
前記プロジェクターによるパターン投影と、CCDカメラによる画像キャプチャー動作は、前記三次元計測ソフトウエアにより同期コントロールされ、撮影時間は短時間(数秒〜5秒程度)に抑えることができる。
得られたデータは、前記計測用パソコン上に保存される。このデータを基に空間コード化法により、それぞれのピクセルのカメラ座標系における三次元計測(三次元座標値の算出)を行うことができる。
【0020】
より具体的に説明すると、前記空間コード化法は、プロジェクターにより計測対象に複数のスリットを投影し、同時にCCDカメラで対象の撮影を行い、これらの撮影画像を利用して撮影空間上にコードを割り振り、これを利用して三次元計測を行う手法である。この手法は、一般的に確立された三次元計測手法であるため、その原理等の説明は割愛する。ちなみに、
図4に、撮影時にプロジェクターから投影されるパターンのサンプルと、CCDカメラにより実際に撮影された画像のサンプルを示す。
前記各サンプルを組み合わせ、空間コードの割り振りを行い、プロジェクター座標系、カメラ座標系と、測定対象間の三角測量により、撮影された画像上のそれぞれのピクセルにおける三次元位置を計測するのである。
【0021】
また、画像処理を利用した三次元計測での煩雑なキャリブレーション作業を簡略化するために、公知の自動キャリブレーション手法を取り入れ、この三次元計測ソフトウエア上に実装を行った。これにより、プロジェクターとCCDカメラの位置関係の修正、焦点距離の修正時に生じるキャリブレーション作業の負担を軽減することが可能となる。
【0022】
図5に、本実施例に係る掘削ズリの計測結果を示す。本計測結果は、60cm×70cmの撮影エリアに映り込んだダンプカーの荷台上の掘削ズリを撮影し、前記三次元計測ソフトウエアにより自動的に三次元計測処理を行ったものである。さらに、計測により得られた点群データをメッシュ化し、三次元データ編集・変換ソフト、レンダリングソフトによるシェーディング表示を行った。
要するに、本発明に係る粒状材料の粒径計測方法は、ダンプカーの荷台の一部区域(例えば、前記60cm×70cmの範囲)の表面状態に基づき、当該荷台に積載された粒状材料全体(集積物)の性状を早期(30秒程度)かつ簡易に把握(推定)できる発明である。例えば、盛土工区へ運搬するダンプカーは1日数百台といわれるが、1台あたり30秒程度で瞬時に判断できるので、すべての台数を処理しても盛土作業に支障は生じない。
【0023】
前記(A)工程を行う計測環境について説明する。
本実施例では、前記ダンプカーの荷台を上方から計測することを考慮し、
図6に示したように、ダンプカーが十分に進入(通行)可能な大掛かりなパイプ構造物を、縦材、横材、斜材等の各種フレーム材を継手等を介して適宜接続し、その上に屋根材を敷設して立体的に構築している。
前記プロジェクターのパターン投影をできるだけクリア化することを考慮し、前記パイプ構造物の全周に沿ってカーテン(幕材)を掛け渡し、遮光(暗室化)可能な構成で実施している。
なお、前記プロジェクター及びCCDカメラ等の機器(
図6の右枠内にパイプ構造物内に設備した機器を抜き出して表示した。)を支持するフレーム材に振動を極力生じないよう筋交いを設ける等、安定した撮影状況を実現するための工夫は適宜行われるところである。
本実施例では、ダンプカーの荷台に積載した集積物を撮影対象としたので比較的大掛かりなパイプ構造物(撮影環境)を構築しているが、パイプ構造物の形態はもちろん図示例に限定されない。地面や仮置き場等の集積物を撮影対象とするときは、小規模な櫓を組むなど、適宜設計変更可能である。
ちなみに、本実施例では、三次元計測手段として空間コード化法を採用しているがこれに限定されず、プロジェクターを用いないステレオ画像法やレーザースキャナ法などでも同様に実施できる。また、撮影手段はもちろんCCDカメラに限定されず、デジタルカメラ等のカメラでも同様に実施可能である。
【0024】
[(B)前記取得したデータを、深さ方向に複数の階調の明度のグレースケール画像に変換し、当該グレースケール画像からスライス画像を取得する工程についての説明]
【0025】
この(B)工程は、前記(A)工程で取得したデータから、深さ方向を複数(本実施例では256)階調の明度のグレースケール画像(深さ画像)に変換し、さらに、グレースケール画像を、任意の深さ(Z値)でX−Y平面のスライスをしたスライス画像(二値画像)を取得することを目的とする。ちなみに、
図7Aがグレースケール画像であり、
図7Bがスライス画像である。
【0026】
本実施例に係るグレースケールは、自然な白黒写真で表現できる256階調(8bit)を採用した。粒状材料の粒径計測は、蓄積された既存の二次元画像処理技術を最大限に活用するために、深さ(Z値)を256階調の輝度情報に変換したグレースケール(二次元)画像として処理を行うこととした。256階調よりも低い階調による画像表現は、明るさや色彩が緩やかに変化する部分に偽輪郭と呼ばれる等高線状の縞が発生するので好ましくない。
【0027】
[(C)前記複数のスライス画像中、1枚のスライス画像を抽出し、当該スライス画像にノイズ除去処理を行う工程についての説明]
【0028】
画像劣化の要因を取り除くこと、画像を見やすくすること、及び有効な情報を抽出しやすく強調することは画像処理技術(解析や認識)の最も重要な役割の1つであるが、これら画像処理技術の役割を容易に遂行するための前処理としてこのノイズ除去処理を行う。
本実施例に係るノイズ除去処理には、粒状材料そのものの形をなるべく侵さない効率のよいノイズ除去を可能とする、モルフォロジー処理(画像収縮、画像膨張)を利用した。
このモルフォロジー処理は、二値画像処理法の1つであり、これによりスライス画像(二値画像)に対しての孤立点除去、または穴埋め処理が可能となる。また、検出された粒状材料の境界の細かな凹凸ノイズの除去も同時に行うことができる
【0029】
[(D)前記ノイズ除去処理後のスライス画像に輪郭を強調する処理を行い、さらにノイズ除去処理を行った後、ラベリング処理により粒状材料を検出する工程についての説明]
【0030】
この(D)の工程は、
図8(
図1の部分拡大図)に段階的に示した工程を行う。
すなわち、前記(C)の工程によるノイズ除去処理を行ったスライス画像について、境界線検出を行い、キャニー法により、エッジ(輪郭)の強調を行う(
図8a参照)。
次に、再びノイズ除去処理(モルフォロジー処理)を行い、粒が小さく、土の領域と判断される領域の除去を行う(
図8b参照)。
次に、ラベリング処理(のアルゴリズム)を行い粒状材料を検出する(
図8c参照)。
この後、必要に応じて、更に検出する必要がないと思われる小径の粒状材料を消去する作業を行ってもよい(
図8d参照)。
【0031】
[(E)前記(C)と(D)の工程を、前記複数のスライス画像の枚数分繰り返し行う工程についての説明]
【0032】
前記1枚のスライス画像について行った前記(C)と(D)の工程を、前記256階調(256枚)分、繰り返して行う。
【0033】
[(F)前記(E)の工程で取得した複数のスライス画像のデータを深さ方向に統合し、領域分割処理を行う工程についての説明]
【0034】
スライス画像の前後関係(三次元的なつながり)を考慮した粒状材料を統合する処理の後、領域分割処理を行い、最終的な粒状材料の検出を行う。粒状材料の領域分割処理には、Watershedアルゴリズムを利用する。
具体的に、
図9に基づいて説明する。
先ず、前記(C)〜(E)の工程により処理した256枚(複数枚)のスライス画像を、上方向(深さの浅い方向、n−1)から下方向(深さの深い方向、n+1)に向かって整列させる。もっとも、前記(C)〜(E)の工程を上方向から下方向に順に行っている場合は改めて整列させる必要はない。
この段階で、処理対象スライスnに対するスライスn−1と重なり合う領域を検出し、同一粒と仮定してID(番号、記号)を振り分ける(
図9bでは濃淡(実際には赤色と青色)で区別している)。
この作業は、下方向へ向かうにしたがって、特に最下層へ近くなる部位から、検出される領域が接続される共通の粒状材料領域(
図9aの下端の2枚のスライス画像。○印参照)が出現する。ここで、前記Watershedアルゴリズムを利用し、領域分割処理を行う。このように、前記領域分割処理は、その前段階の統合処理を補完する処理ともいえる。
【0035】
[(G)前記領域分割処理後の粒状材料を同面積の円に近似させ、もって、当該粒状材料の粒径を計測する工程についての説明]
【0036】
前記(A)〜(F)の各工程を経た結果、検出された複数の粒状材料を同面積の円に近似させ、D=2×√(A/π)「D=直径(粒径)、A=面積」の式から粒状材料の粒径を計測(推測)する。
必要に応じ、計測された粒径をもとにした粒状材料の分類と判定処理、その他参考パラメーターの算出を行う。実際のスケール(大きさ)の算出は、サイズが既知の基準体を用いて、ソフトウエア上で簡単なキャリブレーションを行うことで行う。
図10に、ソフトウエア上でのキャリブレーション後のスケール表示画面の様子を示す。
前記キャリブレーション処理を自動的に行うソフトウエアは独自開発したものであり、本ソフトウエアにより、粒径の計測、分類、結果の評価を簡単な操作で行うことを可能とした。本ソフトウエアの実行中のスクリーンイメージを
図11に、実行環境(一例)を
図12に示す。
ちなみに、本出願人が行った現場実験結果によると、前記(A)〜(G)に至るまでの作業工程は、30秒程度で遂行できる。
【0037】
前記したソフトウエア(粒径計測・判定ソフトウエア)の主たる特徴を以下に箇条書きにして纏める。
・三次元計測ソフトウエアとの統合により、三次元計測が可能となる。
・カメラスルー画像(ライブビュー)の表示や、プロジェクターによるパターン投影の制御が可能となる。
・カメラの露出時間、シャッタースピード、粒径計測、等の詳細な設定が可能となる。
・処理中の中間画像を参照可能となる。
・拡大、縮小、パン等の基本的な画像閲覧機能を有する。
【0038】
[前記(A)〜(G)の工程を経て、撮影された画像中に検出された粒状材料の粒径を計測した後の取り扱い等についての説明]
本出願人が行った現場実験結果によると、粒径が5mm以上の粒状材料であれば十分正確に(精度良く)検出できることが分かった。
一般的に、粒径100mm以上の粒状材料を含む集積物は盛土材料としては好ましくない(これを不良土という。)。本発明に係る計測方法によれば、不良土を積載したダンプカーであるか否かは、30秒程度で速やかに判断(推測)できる。よって、早期に、不良土を積載したダンプカーを別の場所に移動させる指示を出したり、又は粒径100mm以上の粒状材料をその場で取り除いたりする作業に着手できる。
【0039】
(本出願人による現場実験)
<実験用システム構成(実験概要)>
前記三次元計測ソフトウエア(前記段落0018参照)と前記粒径計測・判定ソフトウエアとの統合を行い、粒径計測・判定システムのプロトタイプの開発と、実際の運用現場での現場実験を行った。
本現場実験では実際の操作環境を考慮し、
図13に示すように、三次元計測システムで利用されていたノート型コンピューターをボックス型コンピューターに変更し、小型化を行い、無線LANによる遠隔操作可能なシステムを構築した。
図14に、現場計測用プロトタイプシステムの外観と構成要素、
図15に各構成要素の仕様(一例)を示す。
ボックス型PCと、無線LANアダプター、ノイズフィルター、避雷器、それらに付随するケーブル類は一つのケースにまとめ、無線型基地局とした。
CCDカメラとプロジェクターはそれぞれ防滴型ケースに収め、それぞれを横フレームに固定し、防滴型カメラ・プロジェクターシステムとした。
計測場所に構築されたパイプ構造物(
図6参照)により降雨や降雪等の影響はない。
リモートコントロール用PCは、計測ハウス(
図6参照)での使用を前提としており、通常のノート型コンピューターを利用する。計測ハウス内には同時に無線LANルーターの設置を行い、無線型基地局、リモートコントロール用PCと無線LANにより構成されるプライベートネットワークを利用して、リモートコントロールを行う。
【0040】
<実験方法>
実験方法(計測条件)を
図16に示す。
三次元計測を用いた粒径計測・判定システムのプロトタイプを作成し、これを利用して実際の掘削ズリを利用した計測精度の評価を行う。
また、実際に掘削ズリが持ち込まれる現場にてプロトタイプの設置を行い、環境光の変化、計測面までの距離変化に対するシステムの対応性の評価、測定精度の評価を行う。
現場実験では、ボックス型コンピューターを利用したリモートコントロール可能なシステムを構築し、LAN接続によるリモートコントロールのテストも同時に行う。
検出する粒状材料の粒径は80mm以上に設定した。
各々のテストに対して、粒径計測ソフトウエアにより検出された80mm以上の粒径と、計測時に撮影された表面画像から目視にて観察される80mm以上の粒径とを比較し、検出精度の評価を行った。
誤検出が発見された場合は、その考察を行った。
【0041】
<実験結果>
本現場実験における全ての計測結果(
図16のテストNo.1〜No.14)を
図17〜
図21に示す。なお、図中に表記された「砂利」は、「粒状材料(砂利)」に置き換えるものとする。
三次元計測結果(左側画像)は、測定結果をレンダリングソフトによりシェーディングしたもの、粒径検出結果(右側画像)は測定表面のキャプチャー画像に、粒径測定アルゴリズムにより検出された粒径を円表示により重ねて表示させたものとなる。
粒径検出結果の○印内の数値が粒径(mm)を示す。
計測対象は、三次元画像結果によりカバーされる範囲のみ(左側画像と右側画像の重なる部分)とし、この範囲外に関しては判定を行わない。
ちなみに、符号Xで指した○印の粒状材料は、誤検出(粒状材料が存在しないのに検出したもの)を示している。符号Yで指した○印の粒状材料は、検出漏れ(粒状材料が存在しているのに検出しなかったもの)を示している。符号Zで指した○印の粒状材料は、測定範囲外に跨がるので実験対象外とした。前記符号X、Y、Zで指していない○印は、良好に検出された粒状材料を示している。
【0042】
<考察>
全体的に精度良く粒径80mm以上の粒状材料の検出が可能であった。
特に、カーテンにより遮光された状況において、投影パターン光のコントラストが十分に確保され、三次元計測が一定以上の精度で行われたケースでは誤検出、検出漏れやサイズ誤りが起こることは少なかった。また、距離変化は160〜210cmまでの短い範囲ではあったが、再キャリブレーションやカメラ、プロジェクターとも再度フォーカス調節を行うことなく、精度の良い三次元計測が可能であった。
【0043】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はこの限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【課題】実寸スケール等のスケール材なしに、粒状材料の集積物から粒状材料の粒径を、早期かつ簡易に計測することができ、経済性、効率性に優れた粒状材料の粒径計測方法を提供する。
【解決手段】粒状材料の集積物の三次元計測を行う工程と、取得したデータを深さ方向に複数階調の明度のグレースケール画像に変換してスライス画像を取得する工程と、1枚のスライス画像を抽出し当該スライス画像にノイズ除去処理を行う工程と、続いて輪郭を強調する処理を行い、さらにノイズ除去処理を行った後、ラベリング処理により粒状材料を検出する工程と、これらの工程を前記複数のスライス画像の枚数分繰り返し行う工程と、複数のスライス画像のデータを深さ方向に統合し、領域分割処理を行う工程と、前記領域分割処理後の粒状材料を同面積の円に近似させ、もって、当該粒状材料の粒径を計測する工程とからなる。