特許第6281015号(P6281015)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6281015
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】免震建物用仮設足場の耐震施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 3/18 20060101AFI20180205BHJP
   E04G 5/04 20060101ALI20180205BHJP
   E04G 5/00 20060101ALI20180205BHJP
【FI】
   E04G3/18 C
   E04G5/04 J
   E04G5/00 301Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-149636(P2017-149636)
(22)【出願日】2017年8月2日
【審査請求日】2017年8月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500182253
【氏名又は名称】藤本 隆
(73)【特許権者】
【識別番号】517211632
【氏名又は名称】小野 展康
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】藤本 隆
【審査官】 坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3164320(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第01854940(EP,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105201198(CN,A)
【文献】 中国実用新案第204456809(CN,U)
【文献】 実開昭57−204348(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 3/00− 5/16
E06C 1/00− 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震構造を有する建物の外壁に沿って立設された仮設足場の地震による崩落や全体座屈を防止するための耐震施工方法であって、
建物の外壁の躯体に設けられた上方凸状部に、所要数の建物側取付金具を、2層2スパンで少なくとも1箇所ずつ垂直方向および水平方向に所定間隔おきに取り付けるとともに、各建物側取付金具に係留ロープの一端部を取り付ける第1の工程と、
仮設足場の建物側支柱における各建物側取付金具よりも所要高さだけ下方の箇所に、足場側取付金具を取り付けるとともに、各足場側取付金具に係留ロープの他端部を取り付ける第2の工程とを含んでおり、
係留ロープとして、両端部にループ部を有するものを使用し、
建物側取付金具として、建物の外壁の躯体の上方凸状部に締付固定されるCクランプ部と、係留ロープの一端部のループ部が掛け止められる外れ止め機構付き掛止部とを備えており、掛止部が、Cクランプ部における側面より見て下方に開口した略C形の本体の前側垂下部と、前側垂下部に前方から貫通状にねじ込まれている締付ボルトの先端側部分と、締付ボルトの先端部に設けられた可動側押さえ部材とによって形成されているものを使用し、
足場側取付金具として、仮設足場の建物側支柱の任意の高さ位置に嵌められて締付固定されるパイプクランプ部と、係留ロープの他端部のループ部が掛け止められる外れ止め機構付き掛止部とを備えたものを使用し、
第1の工程において、建物側取付金具の可動側押さえ部材を上方凸状部の前側面から離間させた状態で、掛止部に係留ロープの一端部のループ部を掛け止めた後、締付ボルトを締付方向にねじ込んで可動側押さえ部材で上方凸状部の前側面を押さえることにより、掛止部を閉じた空間とする、免震建物用仮設足場の耐震施工方法。
【請求項2】
足場側取付金具として、パイプクランプ部の後部に連結されたCクランプ部をさらに備えており、Cクランプ部が、側面より見て下方に開口した略C形の本体と、本体の後側垂下部に後方から貫通状にねじ込まれた締付ボルトと、締付ボルトの先端部に設けられた可動側押さえ部材とを備えており、掛止部が、Cクランプ部の本体によって形成されているものを使用し、
第2の工程において、足場側取付金具におけるCクランプ部の本体の前側垂下部と可動側押さえ部材との間に隙間を設けた状態で、掛止部に係留ロープの他端部のループ部を掛け止めた後、締付ボルトを締付方向にねじ込んで可動側押さえ部材を本体の前側垂下部に当接させることにより、掛止部を閉じた空間とする、請求項1記載の免震建物用仮設足場の耐震施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、免震構造を有する建物の外壁に沿って立設された仮設足場の地震による崩落等を防止するための耐震施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、マンション、学校、病院等の建物の大規模改修・補修工事を行う場合、建物の外壁に沿って仮設足場が立設される。
ここで、仮設足場は、一般に支柱、布材、手すり付きブレース等の構造材を所定の緊結手段によって緊結することにより組み立てられるが、足場全体の座屈を防止するとともに、朝顔装置等による偏心荷重や風荷重によって倒壊するのを防止するために、例えば下記の特許文献1に示すように、複数の壁つなぎ(足場連結部材)によって、建物の外壁の躯体に垂直方向および水平方向に所定間隔おきに連結されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−129370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、免震構造を有する建物の場合、積層ゴムや油圧ダンパー等を備えた免震装置の上に載っていて、土地とは縁切り状態とされているため、同建物の外壁沿いに仮設足場が立設されて工事が行われているときに大規模な地震が発生したら、上記特許文献1等の壁つなぎによって仮設足場を支えることは不可能であり、仮設足場が崩落したり直下の土地の陥没により全体座屈を起こしたりして、仮設足場での作業者が危険にさらされるおそれがあった。
【0005】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、免震構造を有する建物の外壁に沿って立設された仮設足場が、地震によって崩落等するのを防止して、仮設足場での作業者の安全を確保しうる免震建物用仮設足場の耐震施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0007】
1)免震構造を有する建物の外壁に沿って立接された仮設足場の地震による崩落や全体座屈を防止するための耐震施工方法であって、
建物の外壁の躯体に設けられた上方凸状部に、所要数の建物側取付金具を、2層2スパンで少なくとも1箇所ずつ垂直方向および水平方向に所定間隔おきに取り付けるとともに、各建物側取付金具に係留ロープの一端部を取り付ける第1の工程と、
仮設足場の建物側支柱における各建物側取付金具よりも所要高さだけ下方の箇所に、足場側取付金具を取り付けるとともに、各足場側取付金具に係留ロープの他端部を取り付ける第2の工程とを含んでおり、
係留ロープとして、両端部にループ部を有するものを使用し、
建物側取付金具として、建物の外壁の躯体の上方凸状部に締付固定されるCクランプ部と、係留ロープの一端部のループ部が掛け止められる外れ止め機構付き掛止部とを備えており、掛止部が、Cクランプ部における側面より見て下方に開口した略C形の本体の前側垂下部と、前側垂下部に前方から貫通状にねじ込まれている締付ボルトの先端側部分と、締付ボルトの先端部に設けられた可動側押さえ部材とによって形成されているものを使用し、
足場側取付金具として、仮設足場の建物側支柱の任意の高さ位置に嵌められて締付固定されるパイプクランプ部と、係留ロープの他端部のループ部が掛け止められる外れ止め機構付き掛止部とを備えたものを使用し、
第1の工程において、建物側取付金具の可動側押さえ部材を上方凸状部の前側面から離間させた状態で、掛止部に係留ロープの一端部のループ部を掛け止めた後、締付ボルトを締付方向にねじ込んで可動側押さえ部材で上方凸状部の前側面を押さえることにより、掛止部を閉じた空間とする、免震建物用仮設足場の耐震施工方法。
【0008】
2)足場側取付金具として、パイプクランプ部の後部に連結されたCクランプ部をさらに備えており、Cクランプ部が、側面より見て下方に開口した略C形の本体と、本体の後側垂下部に後方から貫通状にねじ込まれた締付ボルトと、締付ボルトの先端部に設けられた可動側押さえ部材とを備えており、掛止部が、Cクランプ部の本体によって形成されているものを使用し、
第2の工程において、足場側取付金具におけるCクランプ部の本体の前側垂下部と可動側押さえ部材との間に隙間を設けた状態で、掛止部に係留ロープの他端部のループ部を掛け止めた後、締付ボルトを締付方向にねじ込んで可動側押さえ部材を本体の前側垂下部に当接させることにより、掛止部を閉じた空間とする、上記1)の免震建物用仮設足場の耐震施工方法。
【発明の効果】
【0009】
上記1)の免震建物用仮設足場の耐震施工方法によれば、仮設足場は、係留ロープ、建物側取付金具、および足場側取付金具よりなる複数の係留ユニットによって、免震構造を有する建物の外壁の躯体に係留されているので、工事中に比較的大規模な地震が発生した場合でも、上記特許文献1等に記載された壁つなぎでは不可能であった、仮設足場の崩落や直下の土地の陥没による全体座屈等が回避され、作業者の安全が確保される。
また、上記1)の免震建物用仮設足場の耐震施工方法によれば、各係留ユニットが、係留ロープ、建物側取付金具、および足場側取付金具を備えたものであって、比較的単純な構成であるので、その設置作業を容易に行うことができ、コストも抑えられる。従って、免震構造を有する建物の大規模改修・補修工事等を行う際の地震対策として、上記耐震施工方法を広く普及させることにより、仮設足場での作業者の安全性を高めることが可能となる。
さらに、上記1)の免震建物用仮設足場の耐震施工方法によれば、各建物側取付金具が、建物の外壁の躯体に設けられた上方凸状部に締結固定されるため、地震で仮設足場の直下の土地が陥没する等により仮設足場の荷重が係留ロープを介して加わった場合でも、容易に外れるおそれがなく、係留機能を確実に果たすことができる。
ここで、「建物の外壁の躯体に設けられた上方凸状部」には、例えば、ベランダ、ポーチ、廊下等の先端縁から上方に短く伸びた立上り縁部(溝部分)や、上記先端縁から上方に長く伸びた壁の上端縁部(手すり壁上部)が含まれるものとする。
しかも、上記1)の免震建物用仮設足場の耐震施工方法によれば、仮設足場が、所要数の係留ユニットによって、建物の外壁の躯体に2層2スパンで少なくとも1箇所ずつ垂直方向および水平方向に所定間隔おきに係留されるので、地震発生時に、仮設足場の荷重が、係留ユニットを介して建物の外壁の面全体で均等に支持され、従って、係留ユニットの端部が外れたり切断されたりするおそれが少なく、仮設足場を確実に係留して崩落等を防止することができる。
上記1)免震建物用仮設足場の耐震施工方法によれば、係留ロープの両端部に設けられたループ部を建物側取付金具および足場側取付金具の各掛止部に掛け止めるだけで、係留ユニットの設置が完了するので、設置作業を迅速かつ容易に行うことができる。
上記1)の免震建物用仮設足場の耐震施工方法によれば、足場側取付金具が、そのパイプクランプ部を仮設足場の建物側支柱に嵌めて締付固定することによって、同支柱に取り付けられているので、その設置が容易である上、パイプクランプ部は、仮設足場の支柱の任意の高さ位置に取り付けることができるので、建物側取付部の位置や係留ロープの長さ等に応じて、足場側取付金具の位置調整を容易に行いうる。
また、上記1)の免震建物用仮設足場の耐震施工方法によれば、第1の工程において、建物側取付金具の可動側押さえ部材を上方凸状部の前側面から離間させた状態で、掛止部に係留ロープの一端部のループ部を掛け止めた後、締付ボルトを締付方向にねじ込んで可動側押さえ部材で上方凸状部の前側面を押さえることにより、掛止部を閉じた空間とするので、それによってループ部が掛止部から外れるのが防止される。従って、不用意に係留ロープのループ部が外れるおそれがなく、信頼性も高い。
【0010】
上記2)の免震建物用仮設足場の耐震施工方法によれば、第2の工程において、足場側取付金具におけるCクランプ部の本体の前側垂下部と可動側押さえ部材との間に隙間を設けた状態で、掛止部に係留ロープの他端部のループ部を掛け止めた後、締付ボルトを締付方向にねじ込んで可動側押さえ部材を本体の前側垂下部に当接させることにより、掛止部を閉じた空間とするので、それによってループ部が掛止部から外れるのが防止される。従って、不用意に係留ロープのループ部が外れるおそれがなく、信頼性も高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施形態に係る地震対策用仮設足場係留装置の全体概略を示す平面図である。
図2】同装置の要部を示す垂直断面図である。
図3】同装置の建物側取付部の詳細を示す部分拡大垂直断面図である。
図4】同装置の足場側取付部の詳細を示す部分拡大垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施形態を、図1図4を参照して以下に説明する。
なお、以下の説明において、図1の下および図2〜4の右を「前」、図1の上および図2〜4の左を「後」というものとし、また、「左右」は、前から見た場合の左右をいうものとする。
【0013】
図1に示すように、免震構造(図示略)を有するマンション等の建物(1)の前側の外壁(11)に沿って、仮設足場(2)が立設されている。
仮設足場(2)は、建物(1)の外壁(11)の前方の地面に前後左右に所定間隔おきに立てられた複数本の支柱(21)と、隣り合う支柱(21)間に渡し止められた複数本の布材(22)と、布材(22)によって支持された布板(23)とを備えている。支柱(21)と布材(22)とは、支柱(21)の周面に長さ方向所定間隔おきに前後左右4つずつ形成された平面より見て略コ字形のポケット部(211)のうち所要位置のものに、布材(22)の端部に形成された下方凸状の差込部(221)を差し込んだ後、差込部(221)に備えられたくさび(図示略)を叩き込むことによって、強固に緊結されるようになっている。
前面側(反建物側)の支柱(21)の左右に隣り合うものどうしの間には、手すり付きブレース(24)が渡し止められている。仮設足場(2)の前面側(反建物側)には、飛来落下物防止用メッシュシート(25)が張られている。
また、後面側(建物側)の支柱(21)には、落下防止用ネット(26)が、ブラケット(27)を介して取り付けられている。
仮設足場(2)と建物(1)の外壁(11)(ベランダ(12)の先端)との間は、通常300〜400mm程度の隙間があけられている。
なお、仮設足場の組立構造は、図示のものには限定されず、その他の組立構造を有する仮設足場に対して、この発明を適用することも勿論可能である。
【0014】
図2および図3に示すように、仮設足場(2)は、複数の壁つなぎ(7)によって、建物(1)の外壁(11)の躯体(12)に、垂直方向および水平方向に所定間隔おきに連結されている。
より詳しく言うと、まず、建物(1)の外壁(11)に前方に張り出すように設けられたベランダ(12)(躯体)の先端縁部から、立上り縁部(121)(上方凸状部)が上方に短くのびている。立上り縁部の上面には、ベランダ柵(122)の支柱(図示略)の下端部が固定されている。
そして、ベランダ(12)の上記立上り縁部(121)に、ブラケット装置(5)が取り付けられている。ブラケット装置(5)は、立上り縁部(121)に締付固定されるCクランプ部(51)を備えている。Cクランプ部(51)は、側面より見て下方に開口した略C形をしている本体(511)と、本体(511)の後側垂下部(511a)の先端部分内面に設けられかつ立上り縁部(121)の後側面を押さえる固定側押さえ部材(512)と、本体(511)の前側垂下部(511b)の下端部分に前後方向に貫通するように形成されたネジ孔または同部分に取り付けられたナット(図示略)に前方からねじ込まれている締付ボルト(513)と、締付ボルト(513)の先端部に設けられかつ立上り縁部(121)の前側面を押さえる可動側押さえ部材(514)とを備えている。また、ブラケット装置(5)には、本体(511)の前側垂下部(511b)の上端部分に前後方向に開口するように設けられたネジ孔またはナット(図示略)よりなる第1の壁つなぎ固定部(53a)と、本体(511)の水平部(511c)の長さ中間に設けられた上方凸部に前後方向に開口するように設けられたネジ孔またはナットよりなる第2の壁つなぎ固定部(53b)とが設けられている。
壁つなぎ(7)は、前後に長い本体ロッド(71)と、本体ロッド(71)の後端部に設けられかつブラケット装置(5)の第1または第2の壁つなぎ固定部(53a)(53b)にねじ止められる雄ネジ部(72)と、本体ロッド(71)の前端部に設けられかつ仮設足場(2)の後側の支柱(21)の任意の高さ位置に嵌められて締付固定されるパイプクランプ部(73)とを備えている。
【0015】
上記の仮設足場(2)は、建物(1)の外壁(11)の躯体(12)に、複数の係留ユニット(3)によって係留されている。
係留ユニット(3)は、仮設足場(2)を建物(1)の外壁(11)の躯体(12)に2層2スパンで1箇所ずつ係留するように、垂直方向および水平方向に所定間隔おきに設けられている。
各係留ユニット(3)は、係留ロープ(4)と、躯体(11)の所定箇所に設けられかつ係留ロープ(4)の一端部が取り付けられている建物側取付部(52)と、仮設足場(2)における建物側取付部(52)よりも下位の所定箇所に設けられかつ係留ロープ(4)の他端部が取り付けられている足場側取付部(621)とを備えている。
【0016】
各係留ユニット(3)の係留ロープ(4)としては、高い強度を有する所要径(通常9mm以上)のワイヤーロープが好適に用いられる。係留ロープ(4)の両端部には、取付用のループ部(41)が形成されている。
【0017】
この実施形態では、各係留ユニット(3)の建物側取付部(52)は、壁つなぎ(7)を取り付けるための上記ブラケット装置(5)(建物側取付金具)の一部によって構成されている。
具体的に言うと、ブラケット装置(5)のCクランプ部(51)における本体(511)の前側垂下部(511b)と、締付ボルト(513)の先端側部分と、可動側押さえ部材(514)とによって、係留ロープ(4)の一端部のループ部(41)が掛け止められる掛止部(52)が形成されており、この掛止部(52)が建物側取付部となされている。
上記の掛止部(52)には、Cクランプ部(51)がベランダ(12)の立上り縁部(121)に締付固定される前に、係留ロープ(4)の一端部のループ部(41)が掛け止められ、その後、Cクランプ部(51)がベランダ(12)の立上り縁部(121)に締付固定される。これにより、掛止部(52)が閉じた空間となされ、ループ部(41)が掛止部(52)から外れるのが防止される。
なお、上記以外の建物側取付部の構成として、例えば、Cクランプ部(51)における本体(511)の水平部(511c)とその長さ中間に設けられた上方凸部とによって形成された掛止部(52X)に、係留ロープ(4)のループ部(41)を掛け止めるようにすることも可能である。
また、建物側取付部を構成する建物側取付金具の構成も、上記には限定されず、その他適宜のものを使用することができる。
【0018】
また、この実施形態では、各係留ユニット(3)の足場側取付部(621)は、一般に鉄骨(H型鋼)とパイプとの緊結に用いられる鉄骨用クランプ(6)(足場側取付金具)の一部によって構成されている。
鉄骨用クランプ(6)は、仮設足場(2)の後側の支柱(21)の任意の高さ位置に嵌められて締付固定されるパイプクランプ部(61)と、パイプクランプ部(61)の後部に連結されたCクランプ部(62)とを備えている。Cクランプ部(62)は、側面より見て下方に開口した略C形の本体(621)と、本体(621)の後側垂下部に前後方向に貫通状に設けられたネジ孔またはナット(図示略)に後方からねじ込まれた締付ボルト(622)と、締付ボルト(622)の先端部に設けられた可動側押さえ部材(623)とを備えている。そして、上記Cクランプ部(62)の本体(621)が、係留ロープ(4)の他端部のループ部(41)が掛け止められる掛止部となされ、この掛止部(621)が足場側取付部となされている。上記の掛止部(621)には、Cクランプ部(62)の本体(621)の前側垂下部と可動側押さえ部材(623)との間に隙間が設けられた状態で、係留ロープ(4)の他端部のループ部(41)が掛け止められ、その後、締付ボルト(622)を締付方向にねじ込んで可動押さえ部材(623)を本体(621)の前側垂下部に当接させる。これにより、掛止部(621)が閉じた空間となされ、ループ部(41)が掛止部(621)から外れるのが防止される。
なお、足場側取付部を構成する足場側取付金具は、上記の鉄骨用クランプ(6)には限定されず、その他適宜のものを使用することができる。
【0019】
各係留ユニット(3)の係留ロープ(4)は、建物側取付部(52)から足場側取付部(621)に向かって前下がり状に傾斜するように張られていればよく、その傾斜角度は特に限定されない。
【0020】
上記複数の係留ユニット(3)よりなる地震対策用仮設足場係留装置を使用した免震建物用仮設足場の耐震施工方法によれば、仮設足場(2)が、同係留ユニット(3)によって、免震構造を有する建物(1)の外壁(11)の躯体(12)に係留されているので、工事中に比較的大規模な地震が発生した場合でも、仮設足場(2)が崩落したり直下の土地の陥没により全体座屈を起こしたりするのが回避され、仮設足場(2)での作業者の安全が確保される。
また、上記耐震施工方法によれば、各係留ユニット(3)が、係留ロープ(4)、壁つなぎ用ブラケット装置(5)の一部よりなる建物側取付部(52)、および鉄骨用クランプ(6)の一部よりなる足場側取付部(621)によって構成されているので、その設置作業を容易に行うことができる上、コストも低く抑えられる。
従って、免震構造を有する建物の大規模改修・補修工事等を行う際の地震対策として、上記実施形態の装置を使用した耐震施工方法を広く普及させることにより、地震発生時の仮設足場での作業者の安全性を飛躍的に高めることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明は、免振構造を有する建物の外壁に沿って立設された仮設足場が地震によって崩落等するのを防止するための耐震施工方法として好適に用いられるものである。
【符号の説明】
【0022】
(1):免震構造を有する建物
(11):外壁
(12):ベランダ(躯体)
(121):立上り縁部(上方凸状部)
(2):仮設足場
(21):支柱
(3):係留ユニット
(4):係留ロープ
(41):ループ部
(5):ブラケット装置(建物側取付金具)
(51):Cクランプ部
(52):掛止部
(6):鉄骨用クランプ(足場側取付金具)
(61):パイプクランプ部
(62):Cクランプ部
(621):本体(掛止部、足場側取付部)
【要約】      (修正有)
【課題】免震構造を有する建物の外壁に沿って立設された仮設足場が、地震によって崩落等するのを防止して、仮設足場での作業者の安全を確保する。
【解決手段】免震建物用仮設足場の耐震施工方法は、建物1の外壁11の躯体12に設けられた上方凸状部121に、所要数の建物側取付金具5を、2層2スパンで少なくとも1箇所ずつ垂直方向及び水平方向に所定間隔おきに締付固定するとともに、各建物側取付金具に係留ロープ4の一端部を取り付ける第1の工程と、仮設足場2の建物側支柱21における各建物側取付金具よりも所要高さだけ下方の箇所に足場側取付金具6を締付固定するとともに、各足場側取付金具に係留ロープの他端部を取り付ける第2の工程とを含む。第1の工程において、建物側取付金具の可動側押え部材514を上方凸状部の前側面から離間させた状態で、掛止部52に係留ロープの一端部のループ部41を掛け止めた後、締付ボルト513を締付方向にねじ込んで可動側押え部材で上方凸状部の前側面を押さえることにより、掛止部を閉じた空間とする。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4