(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抄紙機のウェットパートにおける走行中のワイヤー、フェルト、ワイヤーロール、フェルトロール又はプレスロールである走行部材に対して散布され、ピッチ汚染を防止するための散布用汚染防止剤組成物であって、
アニオン性ポリマー、無機アルカリ剤及び無機塩からなる薬剤、並びに、溶解用水からなる原液と、
該原液を希釈するための希釈用水と、
からなり、
前記アニオン性ポリマーの重量平均分子量が20万以下であり、
前記アニオン性ポリマーの濃度が100重量ppm〜3000重量ppmであり、
前記無機アルカリ剤の濃度が10重量ppm〜1000重量ppmであり、
前記無機塩の濃度が1重量ppm〜100重量ppmであり、
前記アニオン性ポリマー1質量部に対する前記無機アルカリ剤の配合割合が0.1質量部以上であり、
前記アニオン性ポリマー1質量部に対する前記無機塩の配合割合が0.01質量部以上であり、
前記アニオン性ポリマーが、ポリアクリル酸塩及びポリスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、
前記無機アルカリ剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、メタケイ酸ナトリウム及びケイ酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、
前記無機塩が、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、
pHが9.0以上であり、
表面張力が60mN/m以上であり、
粘度が0.5mPa・s〜50mPa・sである散布用汚染防止剤組成物。
【背景技術】
【0002】
紙を製造するための抄紙機は、一般に、ウェットパートと、ドライパートと、リールパートとを有する。
ウェットパートは、水中にパルプが分散された液を抄紙用の網(ワイヤー)に載せ、余分な水を自然落下させることにより湿紙とし、湿紙を一対のプレスロール間に通し、フェルトを介してプレスロールで押圧することにより、湿紙中の水分をフェルトに移行させ、これにより湿紙を脱水するパートである。
ドライパートは、ウェットパートを通過した湿紙を、加熱されたシリンダに接触させることで乾燥させ、紙とするパートである。
リールパートは、紙をスプールと呼ばれる棒に巻き取るパートである。
【0003】
ところで、上記ウェットパートにおいては、湿紙の走行に関連して走行するプレスロール等の走行部材の表面に、湿紙(パルプ)中に混入した接着剤や合成樹脂等による「ピッチ」と呼ばれる汚染物が付着するという問題がある。
なお、走行部材にピッチが付着すると、新たに搬送される湿紙も走行部材に付着したピッチにより汚染され、その結果、歩留まりが大きく低下することになる。
【0004】
これに対し、ウェットパートのピッチによる汚染を防止するための汚染防止剤組成物が種々開発されている。
例えば、プロピレンオキサイド基を中心として、その左右にエチレンオキサイド基を有するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーと、水溶性ポリマーとを含む汚染防止剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、炭素数8〜24のアルキル基またはアルケニル基と、酸化エチレン鎖を有するエーテル化合物、あるいはエステル化合物において、その酸化エチレン鎖に、さらに酸化プロピレンを1〜10モル含む構造を有する界面活性物質を有効成分として含有する抄紙用フェルト洗浄剤が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、ポリオキシアルキレングリコールと、ジヒドロキシル化合物と、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体とを含む単量体成分を重縮合して得られるポリエーテルエステル重縮合体を含有する抄紙ワイヤー汚れ防止剤が知られている(例えば、特許文献3参照)。
ちなみに、従来は、抄紙機のウェットパートにおける汚染防止剤として、ノニオン性又はカチオン性の界面活性剤を用いることが技術常識であった。
【0005】
一方で、数平均分子量が500〜50000の水溶性アニオン性重合体またはそのアルカリ塩、またはこれとカルシウムおよび/またはバリウムに対してキレート力を有するアミノカルボン酸またはそのアルカリ塩とからなる紙・パルプ製造工程用洗浄剤が知られている(例えば、特許文献4参照)。
かかる紙・パルプ製造工程用洗浄剤は、紙・パルプの製造工程の操業を一旦止めた後、スケールが付着・堆積している製造設備内に供給されるものである。そして、製造設備は、紙・パルプ製造工程用洗浄剤が供給された後、洗浄される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の汚染防止剤は、主成分のブロックポリマーがノニオン性であるので、ピッチに対する作用が比較的弱く、ピッチの汚染防止効果が十分に優れるとはいえない。
特許文献2記載の抄紙用フェルト洗浄剤、及び、特許文献3記載の抄紙ワイヤー汚れ防止剤は、いずれも、主成分が界面活性剤であるため、泡立ち易く取り扱い難いという欠点がある。また、これらの剤は、一旦泡立つと、ピッチと接触する部分が少なくなることから、汚染防止効果も不十分となる。
【0008】
一方、特許文献4記載の紙・パルプ製造工程用洗浄剤は、散布用ではなく、製造設備内に供給されるものである。すなわち、紙・パルプ製造工程用洗浄剤は、製造設備の稼働中(例えば、走行部材の走行中)に、製造設備に散布するものではない。このため、稼働中の製造設備にピッチが付着した場合に、それによる湿紙の汚染を防止することができない。
仮に、紙・パルプ製造工程用洗浄剤を散布用途に転用した場合は、キレート剤が金属イオンを捕捉して結晶化し、散布ノズルの目詰まりを引き起こしたり、それ自体がピッチ汚染の原因となる恐れがある。また、付与方法が異なると、求められる物性が全く異なるので、紙・パルプ製造工程用洗浄剤が散布に適しているとは到底いえない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、抄紙機のウェットパートにおける走行中の走行部材のピッチ汚染を十分に防止することができ、且つ、泡立ち難い散布用汚染防止剤組成物及びその散布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、ウェットパートのピッチ汚染防止には通常用いられないアニオン性ポリマーを主成分とし、これと、無機アルカリ剤及び無機塩とを含む原液を、所定の配合割合となるように希釈用水で希釈することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明は、(1)抄紙機のウェットパートにおける走行中の
ワイヤー、フェルト、ワイヤーロール、フェルトロール又はプレスロールである走行部材に対して散布され、ピッチ汚染を防止するための散布用汚染防止剤組成物であって、アニオン性ポリマー、無機アルカリ剤及び無機塩からなる薬剤
、並びに
、溶解用水からなる原液と、該原液を希釈するための希釈用水と、からなり、
アニオン性ポリマーの重量平均分子量が20万以下であり、アニオン性ポリマーの濃度が100重量ppm〜3000重量ppmであり、無機アルカリ剤の濃度が10重量ppm〜1000重量ppmであり、無機塩の濃度が1重量ppm〜100重量ppmであり、アニオン性ポリマー1質量部に対する無機アルカリ剤の配合割合が0.1質量部以上であり、アニオン性ポリマー1質量部に対する無機塩の配合割合が0.01質量部以上であり、アニオン性ポリマーが、ポリアクリル酸塩及びポリスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、無機アルカリ剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、メタケイ酸ナトリウム及びケイ酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、無機塩が、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、pHが9.0以上であり、表面張力が60mN/m以上であり、粘度が0.5mPa・s〜50mPa・sである散布用汚染防止剤組成物に存する。
【0012】
本発明は、(2)アニオン性ポリマー
の重量平均分子量が5万より大きい上記(1)記載の散布用汚染防止剤組成物に存する。
【0013】
本発明は、(3)
無機塩が、硫酸ナトリウムである上記(1)又は(2)に記載の散布用汚染防止剤組成物に存する。
【0021】
本発明は、(
4)上記(1)〜(
3)のいずれか1つに記載の散布用汚染防止剤組成物を、抄紙機のウェットパートにおける走行中の走行部材に散布する散布方法であって、走行部材がフェルト又はワイヤーであり、該走行部材には、散布用汚染防止剤組成物を散布するための散布装置と、散布された散布用汚染防止剤組成物を吸引除去するためのサクションボックスとが、該走行部材の長さ方向に沿って設けられており、散布装置が該走行部材に対して散布用汚染防止剤組成物を散布量1〜100g/m
2となるように散布した後、少なくとも2秒以内に、サクションボックスが散布用汚染防止剤組成物の散布量の少なくとも50%以上を除去する散布用汚染防止剤組成物の散布方法に存する。
【0022】
本発明は、(
5)上記(1)〜(
3)のいずれか1つに記載の散布用汚染防止剤組成物を、抄紙機のウェットパートにおける走行中の走行部材に散布する散布方法であって、走行部材がワイヤーロール、フェルトロール又はプレスロールであり、該走行部材には、散布用汚染防止剤組成物を散布するための散布装置と、散布された散布用汚染防止剤組成物を掻き取り除去するためのドクターブレードとが、該走行部材の円周方向に沿って設けられており、散布装置が該走行部材に対して散布用汚染防止剤組成物を散布量1〜100g/m
2となるように散布した後、少なくとも2秒以内に、ドクターブレードが散布用汚染防止剤組成物の散布量の少なくとも50%以上を除去する散布用汚染防止剤組成物の散布方法に存する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の散布用汚染防止剤組成物は、アニオン性ポリマーを主成分とし、これと無機アルカリ剤及び無機塩とを含む原液を有しているので、抄紙機のウェットパートにおける走行中の走行部材に散布されることにより、走行部材のピッチ汚染を十分に防止することができる。
ピッチ汚染を十分に防止できる理由については、定かではないが、無機アルカリ剤による剥離効果に基づいて、ピッチが走行部材から剥離され、アニオン性ポリマーによる分散効果に基づいて、油性のピッチの再付着を防止すると共に油性のピッチを運搬し、無機塩による分散効果に基づいて、水性のピッチの再付着を防止すると共に水性のピッチを運搬することにより、ピッチの極性に関わらず、除去することができるものと考えられる。なお、理由はこれに限定されない。
【0024】
本発明の散布用汚染防止剤組成物においては、薬剤として、水に溶解可能なものを採用するため、析出し難く、仮に析出したとしても水に再溶解し易い。このため、散布用汚染防止剤組成物は、散布ノズルの目詰まりを起こり難く、薬剤自体がピッチ汚染の原因となることも防止できる。
【0025】
本発明の散布用汚染防止剤組成物は、原液と希釈用水とからなり、原液中の薬剤1質量部に対する希釈用水の配合割合を100〜10000質量部とすることにより、無機アルカリ剤による作業上の危険性を十分に軽減することができ、且つ、ピッチ汚染を十分に防止することができる。このことにより、上記散布用汚染防止剤組成物は、散布用として用いることが可能となる。
なお、散布装置における散布条件やピッチ汚染の度合い等に応じて原液と希釈用水との配合割合を上記範囲内で適宜調整することも可能である。
【0026】
本発明の散布用汚染防止剤組成物においては、電解質である無機アルカリ剤を含有するため、純水よりも表面張力が低下しない。この場合、純水よりも表面張力が小さい界面活性剤を主成分とする汚染防止剤組成物とは異なり、泡立ちが生じ難い。その結果、散布用汚染防止剤組成物がピッチと接触する量も多くなり、汚染防止効果を十分に発揮することができる。
【0027】
本発明の散布用汚染防止剤組成物においては、アニオン性ポリマー1質量部に対する無機アルカリ剤の配合割合を0.1質量部以上とし、且つ、散布用汚染防止剤組成物のpHを9.0以上とすることにより、比較的散布する量が少ない散布の用途であっても、走行部材のピッチ汚染を十分に防止することができる。
また、アニオン性ポリマー1質量部に対する無機塩の配合割合を0.01質量部以上とし、表面張力を60mN/m以上とし、且つ、粘度を0.5〜50mPa・sとすることにより、安定した散布が可能となる。
【0028】
本発明の散布用汚染防止剤組成物においては、アニオン性ポリマーの重量平均分子量を20万以下とすることにより、水への溶解性が極めて向上する。
また、アニオン性ポリマーと、電解質である無機アルカリ剤とを共存させても、アニオン性ポリマーの凝集等が生じ難くなり、散布用汚染防止剤組成物の保存安定性がより向上する。
【0029】
本発明の散布用汚染防止剤組成物においては、アニオン性ポリマーがポリアクリル酸塩又はポリスルホン酸塩であり、無機アルカリ剤が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、メタケイ酸ナトリウム又はケイ酸ナトリウムであり、無機塩が硫酸塩又はリン酸塩である場合、上述した効果を確実に発揮することができると共に、これらの材料が汎用品であるため、入手し易く、低コストでウェットパートのピッチ汚染を防止することができる。
【0030】
本発明の散布用汚染防止剤組成物は、ウェットパートである、ワイヤー、フェルト、ワイヤーロール、フェルトロール又はプレスロールに好適に用いることができる。
【0031】
本発明の散布用汚染防止剤組成物において、走行部材がナイロン製のワイヤーである場合は散布用汚染防止剤組成物の接触角を65°以下とし、走行部材がウレタン製のワイヤーである場合は散布用汚染防止剤組成物の接触角を90°以下とし、走行部材がポリエステル製のワイヤーである場合は散布用汚染防止剤組成物の接触角を85°以下とすることにより、散布用汚染防止剤組成物をワイヤーの表面に沿って均一に付与することができる。
【0032】
本発明の散布用汚染防止剤組成物において、走行部材がナイロン製のフェルトである場合は散布用汚染防止剤組成物の接触角を65°以下とし、走行部材がポリエステル製のフェルトである場合は散布用汚染防止剤組成物の接触角を85°以下とすることにより、散布用汚染防止剤組成物をフェルトの表面に沿って均一に付与することができる。
【0033】
本発明の散布用汚染防止剤組成物において、走行部材がウレタン製のワイヤーロールである場合は散布用汚染防止剤組成物の接触角を90°以下とすることにより、散布用汚染防止剤組成物をワイヤーロールの表面に沿って均一に付与することができる。
【0034】
本発明の散布用汚染防止剤組成物において、走行部材がウレタン製のフェルトロールである場合は散布用汚染防止剤組成物の接触角を90°以下とすることにより、散布用汚染防止剤組成物をフェルトロールの表面に沿って均一に付与することができる。
【0035】
本発明の散布用汚染防止剤組成物において、走行部材がウレタン製のプレスロールである場合は散布用汚染防止剤組成物の接触角を90°以下とし、走行部材がセラミック製のプレスロールである場合は散布用汚染防止剤組成物の接触角を65°以下とすることにより、散布用汚染防止剤組成物をプレスロールの表面に沿って均一に付与することができる。
【0036】
本発明の散布用汚染防止剤組成物の散布方法においては、上述した散布用汚染防止剤組成物が用いられるので、走行中の走行部材のピッチ汚染を十分に防止することができる。
また、散布装置が走行部材に対して散布用汚染防止剤組成物を散布量1〜100g/m
2となるように散布した後、少なくとも2秒以内に、サクションボックス又はドクターブレードが散布用汚染防止剤組成物の散布量の少なくとも50%以上を除去することにより、走行部材のアルカリによる腐食を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0039】
まず、本発明に係る散布用汚染防止剤組成物について説明する。
本発明に係る散布用汚染防止剤組成物は、抄紙機のウェットパートにおいて、湿紙の走行に関連して走行する走行部材のピッチ汚染を防止するためのものである。
かかる散布用汚染防止剤組成物によれば、抄紙機のウェットパートにおける走行中の走行部材に対して散布することにより、走行中の走行部材へのピッチの付着を防止すること、及び、走行中の走行部材に付着したピッチを取り除くことができる。
また、電解質である無機アルカリ剤及び無機塩を含有するため、純水よりも表面張力が低下しない。この場合、純水よりも表面張力が小さい界面活性剤を主成分とする汚染防止剤組成物とは異なり、泡立ちが生じ難い。その結果、散布用汚染防止剤組成物がピッチと接触する量も多くなり、汚染防止効果を十分に発揮することができる。
【0040】
ここで、本明細書において、「走行部材」とは、湿紙の搬送と共に走行(移動又は回動)する部材を意味し、具体的には、ワイヤー、フェルト、ワイヤーロール、フェルトロール又はプレスロールが挙げられる。なお、これらの詳細については後述する。
【0041】
(
本実施形態)
本実施形態に係る散布用汚染防止剤組成物は、原液と、該原液を希釈するための希釈用水とからなる。
散布用汚染防止剤組成物は、上記原液を含み、当該原液に含まれる成分が、走行部材のピッチ汚染を十分に防止する機能を発揮する。
また、散布用汚染防止剤組成物は、上記希釈用水を含むため、散布時の無機アルカリ剤による作業上の危険性を十分に軽減することができる。
これらのことにより、散布用汚染防止剤組成物は、散布用のピッチ汚染に対する防止剤として用いることが可能となる。
【0042】
まず、散布用汚染防止剤組成物を構成する原液について説明する。
散布用汚染防止剤組成物において、原液は、アニオン性ポリマー、無機アルカリ剤及び無機塩からなる薬剤並びに溶解用水からなる。すなわち、原液は、アニオン性ポリマー、無機アルカリ剤及び無機塩からなる薬剤を溶解用水に溶解させた透明な水溶液となっている。
このように、散布用汚染防止剤組成物においては、薬剤として、水に溶解可能なものを採用するため、析出し難く、仮に析出したとしても水に再溶解し易くなっている。これにより、散布用汚染防止剤組成物は、散布ノズルの目詰まりを起こり難く、それ自体がピッチ汚染の原因となることも防止することができる。
【0043】
上記薬剤において、アニオン性ポリマーとしては、カルボキシル基又はスルホン基を有し、且つ、イオン性がアニオン性を示す水溶性の高分子が挙げられる。
例えば、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、ポリスルホン酸、リグニンスルホン酸、若しくは、これらの塩が挙げられる。
これらの中でも、アニオン性ポリマーは、取り扱い性及び汎用性の観点から、ポリアクリル酸塩及びポリスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、ポリアクリル酸塩であることがより好ましい。
なお、ポリアクリル酸塩としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸カルシウム等が挙げられ、ポリスルホン酸塩としては、ポリスルホン酸カリウム、ポリスルホン酸ナトリウム、ポリスルホン酸カルシウム等が挙げられる。
【0044】
アニ オン性ポリマーの重量平均分子量は、20万以下であることが好ましく、2万〜20万であることがより好ましい。
アニオン性ポリマーの重量平均分子量が20万を超えると、重量平均分子量が上記範囲内にある場合と比較して、水に溶かし難くなる傾向にある。また、電解質である無機アルカリ剤及び無機塩と共存させた場合、アニオン性ポリマーが凝集し易くなる恐れがある。
【0045】
散布用汚染防止剤組成物におけるアニオン性ポリマーの濃度は、10重量ppm以上であることが好ましく、100〜3000重量ppmであることがより好ましく、1000〜3000重量ppmであることが更に好ましい。
アニオン性ポリマーの濃度が、10重量ppm未満であると、濃度が上記範囲内にある場合と比較して、分散効果が不十分となる恐れがある。すなわち、剥離した油性のピッチが、再付着する恐れがある。
【0046】
上記薬剤において、無機アルカリ剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、メタケイ酸ナトリウム及びケイ酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
これらの中でも、無機アルカリ剤は、汎用性の観点から、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであることがより好ましく、水酸化ナトリウムであることが更に好ましい。
【0047】
散布用汚染防止剤組成物における無機アルカリ剤の濃度は、1重量ppm以上であることが好ましく、10〜1000重量ppmであることがより好ましい。
無機アルカリ剤の濃度が、1重量ppm未満であると、濃度が上記範囲内にある場合と比較して、剥離効果が不十分となる恐れがある。なお、ピッチが剥離しない場合、アニオン性ポリマーや無機塩による分散効果も十分に発揮できないことになる。
【0048】
アニオン性ポリマー1質量部に対する無機アルカリ剤の配合割合は0.1質量部以上であることが好ましく、0.1〜1.0質量部であることがより好ましい。
アニオン性ポリマー1質量部に対する無機アルカリ剤の配合割合が0.1質量部未満であると、剥離効果が十分に発揮されない。
なお、上述したように、ピッチは、剥離した後(剥離効果)、分散除去される(分散効果)。このため、剥離効果は、分散効果の前提であり、十分に発揮させる必要がある。ちなみに、無機アルカリ剤は、アニオン性ポリマーに対して、十分に分子量が小さいため、含有される質量が少なくても、モル比は十分に大きくなっている。
【0049】
上記薬剤において、無機塩は、硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、硫酸塩であることがより好ましい。
なお、硫酸塩としては、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等が挙げられ、リン酸塩としては、リン酸アンモニウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム等が挙げられる。
これらの中でも、無機塩は、汎用性の観点から、硫酸塩であることが好ましく、硫酸ナトリウムであることがより好ましい。
【0050】
散布用汚染防止剤組成物における無機塩の濃度は、0.1重量ppm以上であることが好ましく、1〜100重量ppmであることがより好ましい。
無機塩の濃度が、0.1重量ppm未満であると、濃度が上記範囲内にある場合と比較して、分散効果が不十分となる恐れがある。すなわち、剥離した水性のピッチが、再付着する恐れがある。
【0051】
アニオン性ポリマー1質量部に対する無機塩の配合割合が0.01質量部以上であることが好ましく、0.1〜1質量部であることがより好ましい。
アニオン性ポリマー1質量部に対する無機塩の配合割合が0.01質量部未満であると、アニオン性ポリマーが物理的障害となって、水性のピッチに対する分散効果が十分に発揮されない。
【0052】
上記溶解用水は、上述したアニオン性ポリマー、無機アルカリ剤及び無機塩からなる薬剤を溶解する。
かかる溶解用水は、特に限定されず、工業用水、水道水、井戸水、純水等、適宜採用することができる。
このときの溶解用水の配合割合は、アニオン性ポリマー、無機アルカリ剤及び無機塩からなる薬剤が全て溶解可能であれば、特に限定されない。
【0053】
ここで、溶解用水は、その配合割合を極力少なくすることが好ましい。
これにより、原液の運搬を容易に行うことが可能となる。
また、アニオン性ポリマー、無機アルカリ剤及び無機塩を配合する際のこれらの配合量が比較的多くなるので、ロット間における配合割合のばらつきが生じ難い。
ちなみに、原液の時点でアニオン性ポリマー、無機アルカリ剤及び無機塩の配合関係が確定されるので、原液を希釈した後であっても、その配合関係にばらつきは生じない。
【0054】
次に、散布用汚染防止剤組成物を構成する希釈用水について説明する。
希釈用水は、上述した原液を希釈するためのものである。
かかる希釈用水は、特に限定されず、工業用水、水道水、井戸水、純水等、適宜採用することができる。
【0055】
原液に含まれる薬剤1質量部に対する希釈用水の配合割合は100〜10000質量部であり、100〜1000質量部であることが好ましい。
原液に含まれる薬剤1質量部に対する希釈用水の配合割合が100質量部未満であると、散布用汚染防止剤組成物を散布した場合に、無機アルカリ剤による作業上の危険性が向上する問題があり、原液に含まれる薬剤1質量部に対する希釈用水の配合割合が10000質量部を超えると、ピッチ汚染を防止する効果が不十分となる恐れがある。
【0056】
散布用汚染防止剤組成物においては、原液と希釈用水とを別々に準備し、原液を希釈用水で希釈することにより得られる。
したがって、原液を抄紙機のウェットパートまで運搬し、抄紙機のウェットパートの走行部材に散布する直前に、原液を希釈用水で希釈して散布用汚染防止剤組成物とすることも可能である。
このとき、散布装置における散布条件やピッチ汚染の度合い等に応じて、原液と希釈用水との配合割合を上記範囲内で適宜調整することも可能である。
【0057】
散布用汚染防止剤組成物は、ピッチ汚染防止効果の観点から、pHが9以上であることが好ましく、11以上であることがより好ましい。すなわち、散布用汚染防止剤組成物自体が高アルカリ性になるように、無機アルカリ剤を大量に含有している。
散布用汚染防止剤組成物のpHが9未満であると、剥離効果が十分に発揮されず、ピッチ汚染を十分に防止することができない。
【0058】
散布用汚染防止剤組成物は、表面張力が60mN/m以上であることが好ましく、65〜73mN/mであることがより好ましい。
散布用汚染防止剤組成物の表面張力が60mN/m未満であると、表面張力が上記範囲内にある場合と比較して、泡立ち易くなり、ピッチ汚染を十分に防止できない恐れがある。
【0059】
散布用汚染防止剤組成物は、粘度が0.5〜50mPa・sであることが好ましい。この場合、汎用されている散布装置の散布ノズルを用いた散布用汚染防止剤組成物の散布が可能となる。すなわち、安定した散布のために、散布ノズルを特殊な構造としたり、吐出のための圧力を高くする等の調整を必要としない。
【0060】
散布用汚染防止剤組成物においては、上述したように、アニオン性ポリマー1質量部に対する無機アルカリ剤の配合割合、及び、散布用汚染防止剤組成物のpH、を上記範囲内とすることにより、散布の用途であっても、走行部材のピッチ汚染を十分に防止することができる。
また、アニオン性ポリマー1質量部に対する無機塩の配合割合、散布用汚染防止剤組成物の表面張力、及び、散布用汚染防止剤組成物の粘度、を上記範囲内とすることにより、安定した散布が可能となる。
【0062】
次に、散布用汚染防止剤組成物のウェットパートでの使用例について説明する。
図1は、本発明に係る散布用汚染防止剤組成物が用いられる抄紙機のウェットパートの構造の一例を示す概略図である。
図1に示すように、抄紙機において、ウェットパートは、湿紙Xの走行に、直接的又は間接的に応じて走行するワイヤーW、フェルトF、ワイヤーロールWR、フェルトロールFR、プレスロールP等の走行部材を備えている。
具体的には、ウェットパートは、ワイヤーパートWPとプレスパートPPとからなり、ワイヤーパートには、エンドレス状のワイヤーW及びワイヤーWを案内するワイヤーロールWR、プレスパートPPには、エンドレス状のフェルトF、フェルトFを案内するフェルトロールFR及び湿紙をプレスするプレスロールP、が備えられている。
【0063】
ワイヤーパートWPにおいては、水中にパルプが分散されたスラリー状の湿紙XがワイヤーWに載せられ、ワイヤーWと共に搬送される。なお、ワイヤーWは、エンドレス状であり、ワイヤーロールWRにより、一定の張力が付与された状態で回転している。
これにより、湿紙に含まれる余分な水分が自然落下する。
【0064】
ワイヤーパートWPにおいて、ワイヤーWには、湿紙Xと接する側に、散布装置の散布ノズルS1により散布用汚染防止剤組成物が吹き付けられる。
また、ワイヤーロールWRには、湿紙Xと接する側のワイヤーWに接するワイヤーロールWRに、散布装置の散布ノズルS2により散布用汚染防止剤組成物が吹き付けられる。すなわち、エンドレス状のワイヤーWに対してアウトサイドに位置するワイヤーロールWRに散布用汚染防止剤組成物が吹き付けられる。
【0065】
上記ワイヤーWの材質としては、ナイロン、ウレタン又はポリエステルが挙げられる。
ワイヤーWの材質がナイロンである場合、当該ワイヤーWに対する散布用汚染防止剤組成物の接触角が65°以下であることが好ましい。
また、ワイヤーWの材質がウレタンである場合、当該ワイヤーWに対する散布用汚染防止剤組成物の接触角が90°以下であることが好ましい。
また、ワイヤーWの材質がポリエステルである場合、当該ワイヤーWに対する散布用汚染防止剤組成物の接触角が85°以下であることが好ましい。
これらの場合、散布用汚染防止剤組成物をワイヤーWの表面に沿って均一に付与することができる。
【0066】
上記ワイヤーロールWRの材質としては、ウレタンが挙げられる。
ワイヤーロールWRの材質がウレタンである場合、当該ワイヤーロールWRに対する散布用汚染防止剤組成物の接触角が90°以下であることが好ましい。
この場合、散布用汚染防止剤組成物をワイヤーロールWRの表面に沿って均一に付与することができる。
【0067】
プレスパートPPにおいては、湿紙が、一対のプレスロールP間で、フェルトFを介して押圧される。これにより、湿紙は、湿紙中の水分が強制的にフェルトFに移行されることにより、脱水される。なお、フェルトFは、エンドレス状であり、フェルトロールFRにより、一定の張力が付与された状態で回転している。
【0068】
プレスパートPPにおいて、プレスロールPには、散布装置の散布ノズルS3により散布用汚染防止剤組成物が吹き付けられる。
また、フェルトFには、湿紙Xと接する側に、散布装置の散布ノズルS41により散布用汚染防止剤組成物が吹き付けられ、湿紙Xと接しない側に、散布装置の散布ノズルS42により散布用汚染防止剤組成物が吹き付けられる。
さらに、フェルトロールFRには、湿紙Xと接する側のフェルトFに接するフェルトロールFRに、散布装置の散布ノズルS5により散布用汚染防止剤組成物が吹き付けられる。すなわち、エンドレス状のフェルトFに対してアウトサイドに位置するフェルトロールFRに散布用汚染防止剤組成物が吹き付けられる。
【0069】
上記フェルトFの材質としては、ナイロン又はポリエステルが挙げられる。
フェルトFの材質がナイロンである場合、当該フェルトFに対する散布用汚染防止剤組成物の接触角が65°以下であることが好ましい。
また、フェルトFの材質がポリエステルである場合、当該フェルトFに対する散布用汚染防止剤組成物の接触角が85°以下であることが好ましい。
これらの場合、散布用汚染防止剤組成物をフェルトFの表面に沿って均一に付与することができる。
【0070】
上記フェルトロールFRの材質としては、ウレタンが挙げられる。
フェルトロールFRの材質がウレタンである場合、当該フェルトロールFRに対する散布用汚染防止剤組成物の接触角が90°以下であることが好ましい。
この場合、散布用汚染防止剤組成物をフェルトロールFRの表面に沿って均一に付与することができる。
【0071】
上記プレスロールPの材質としては、ウレタン又はセラミックが挙げられる。
プレスロールPの材質がウレタンである場合、当該プレスロールPに対する散布用汚染防止剤組成物の接触角が90°以下であることが好ましい。
また、プレスロールPの材質がセラミックである場合、当該プレスロールPに対する散布用汚染防止剤組成物の接触角が65°以下であることが好ましい。
これらの場合、散布用汚染防止剤組成物をプレスロールPの表面に沿って均一に付与することができる。
【0072】
ここで、散布用汚染防止剤組成物の散布量は、1〜100g/m
2であることが好ましい。
散布量が1g/m
2未満であると、散布量が上記範囲内にある場合と比較して、散布用汚染防止剤組成物が各走行部材に十分に付着せず、ピッチ汚染を抑制できない場合があり、散布量が100g/m
2を超えると、散布量が上記範囲内にある場合と比較して、余剰分が紙体(湿紙)に吸収されてしまう恐れがある。
【0073】
散布用汚染防止剤組成物は、抄紙機のウェットパートのワイヤーW、ワイヤーロールWR、フェルトF、フェルトロールFR及びプレスロールPに対して、上述した接触角の条件を満たすものとし、且つ、上述した散布量で散布することにより、ピッチ汚染を確実に防止することができる。
【0074】
次に、本発明に係る散布用汚染防止剤組成物の散布方法について説明する。
なお、本発明に係る散布用汚染防止剤組成物の散布方法において、湿紙の走行速度は、200〜2000m/minであり、ワイヤーW又はフェルトFの移動速度は、湿紙の走行速度と略同じとなっており、ワイヤーロールWR、フェルトロールFR又はプレスロールPの回動速度は、湿紙の走行速度に対応している。
【0075】
図2の(a)及び(b)は、本発明に係る散布用汚染防止剤組成物の散布方法を説明するための説明図である。
本発明に係る散布用汚染防止剤組成物の散布方法においては、ウェットパートのワイヤーW又はフェルトFが走行(移動)している最中に、これらに対し、上述した散布用汚染防止剤組成物を、散布ノズルSを有する散布装置で散布する散布工程と、サクションボックスSBで散布された散布用汚染防止剤組成物を吸引除去する除去工程とを有する。
なお、
図1又は
図2の(a)に示すように、抄紙機においては、ワイヤーW又はフェルトFの長さ方向に沿って、上流側に散布装置の散布ノズルSが設けられ、下流側にサクションボックスSBが設けられている。
【0076】
このとき、本発明に係る散布用汚染防止剤組成物の散布方法においては、散布装置がワイヤーW又はフェルトFに対して散布用汚染防止剤組成物を散布量1〜100g/m
2となるように散布した後、少なくとも2秒以内に、サクションボックスSBが散布用汚染防止剤組成物の散布量の少なくとも50%以上を除去するようになっている。
これにより、ワイヤーW又はフェルトFのアルカリによる腐食を抑制することができる。
【0077】
また、本発明に係る散布用汚染防止剤組成物の散布方法は、ウェットパートのワイヤーロールWR、フェルトロールFR又はプレスロールPが走行(回動)している最中に、これらに対し、上述した散布用汚染防止剤組成物を、散布ノズルSを有する散布装置で散布する散布工程と、ドクターブレードDで散布された散布用汚染防止剤組成物を吸引除去する除去工程とを有する。
なお、
図1又は
図2の(b)に示すように、抄紙機においては、ウェットパートのワイヤーロールWR、フェルトロールFR又はプレスロールPの円周方向に沿って、上流側に散布装置の散布ノズルSが設けられ、下流側にドクターブレードDが設けられている。
【0078】
このとき、本発明に係る散布用汚染防止剤組成物の散布方法においては、散布装置がワイヤーロールWR、フェルトロールFR又はプレスロールPに対して散布用汚染防止剤組成物を散布量1〜100g/m
2となるように散布した後、少なくとも2秒以内に、ドクターブレードDが散布用汚染防止剤組成物の散布量の少なくとも50%以上を除去するようになっている。
これにより、ワイヤーロールWR、フェルトロールFR又はプレスロールPのアルカリによる腐食を抑制することができる。
【0079】
(
参考形態)
参考形態に係る散布用汚染防止剤組成物は、原液と、該原液を希釈するための希釈用水とからなる。
そして、原液は、アニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマーと、無機アルカリ剤及び無機塩からなる薬剤並びに溶解用水からなる。すなわち、
参考形態に係る散布用汚染防止剤組成物は、薬剤がノニオン性ポリマーを更に含むこと以外は、
本実施形態に係る散布用汚染防止剤組成物と同じである。
【0080】
ノニオン性ポリマーとしては、イオン性がノニオン性を示す水溶性の高分子が挙げられる。
例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルエステルが挙げられる。
散布用汚染防止剤組成物は、ノニオン性ポリマーを含有することにより、汚染防止効果をより向上させることができる。
【0081】
散布用汚染防止剤組成物において、アニオン性ポリマー1質量部に対するノニオン性ポリマーの配合割合が0.1質量部以上であることが好ましく、0.1〜1質量部であることがより好ましい。
アニオン性ポリマー1質量部に対するノニオン性ポリマーの配合割合が0.1質量部未満であると、配合割合が上記範囲内にある場合と比較して、ピッチ汚染を防止する効果が十分に向上しない恐れがある。
【0082】
散布用汚染防止剤組成物においては、原液と希釈用水とを別々に準備し、原液を希釈用水で希釈することにより得られる。
なお、散布用汚染防止剤組成物のウェットパートでの使用例は、上述した
本実施形態に係る散布用汚染防止剤組成物の使用例と同じであるので、説明を省略する。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0084】
例えば、本実施形態に係る散布用汚染防止剤組成物においては、抄紙機のウェットパートで用いているが、ドライパートやリールパートで用いることも可能である。
また、ウェットパートの構造は、
図1に示すものに限定されない。
【実施例】
【0085】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
まず、アニオン性ポリマーとして、ポリアクリル酸のナトリウム塩A(分子量2万)、ポリアクリル酸のナトリウム塩B(分子量5万)、ポリアクリル酸のナトリウム塩C(分子量20万)、ポリアクリル酸のナトリウム塩D(分子量50万)を準備した。
また、無機アルカリ剤として、水酸化ナトリウムを準備した。
また、無機塩として、硫酸ナトリウムを準備した。
【0087】
(実施例1〜23及び比較例1〜54)
ポリアクリル酸のナトリウム塩、水酸化ナトリウム及び硫酸ナトリウムからなる薬剤を溶解用水(工業用水)に溶解し、原液を作製した。
そして、その原液を希釈用水で希釈してサンプルを作製した。
得られた各サンプルの成分濃度(単位は重量ppm)と、pH及び表面張力の値とを表1に示す。なお、表1中、「pACR(A)」はポリアクリル酸のナトリウム塩Aを示し、「pACR(B)」はポリアクリル酸のナトリウム塩Bを示し、「pACR(C)」はポリアクリル酸のナトリウム塩Cを示し、「pACR(D)」はポリアクリル酸のナトリウム塩Dを示し「NaOH」は水酸化ナトリウムを示し、「Na
2SO
4」は硫酸ナトリウムを示す。また、「−」は、その化合物を用いなかったことを意味する。
また、各サンプルの接触角(単位は°)の値を表2に示す。なお、接触角は、液滴法で測定し、角度は、θ/2法で測定した。具体的には、上方向よりサンプル2μlを針先から出し、下方向からナイロン板、ウレタン板、ポリエステル板又はセラミック板を近付け、薬液と板が接触したら針先と板を遠ざける。1秒後、板上に残った薬液の左右の接触角を3回測定し、その平均値を算出した。
【0088】
(表1)
【0089】
(表2)
【0090】
(比較例55〜63)
表3に示す薬剤を溶解用水(工業用水)に溶解し、更に希釈用水で希釈してサンプルを作製した。
得られた各サンプルの薬剤名、成分濃度(単位は重量ppm)、pH及び表面張力の値を表3に示す。また、「−」は、その化合物を用いなかったことを意味する。
【0091】
(表3)
【0092】
(
参考例24〜31及び比較例64〜67)
ポリアクリル酸のナトリウム塩、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム及びポリエチレングリコール(ノニオン性ポリマー、分子量20000)からなる薬剤を溶解用水(工業用水)に溶解し、原液を作製した。
そして、その原液を希釈用水で希釈してサンプルを作製した。
得られた各サンプルの成分濃度(単位は重量ppm)と、pH及び表面張力の値とを表4に示す。なお、表4中、「PEG」はポリエチレングリコールを示す。また、「−」は、その化合物を用いなかったことを意味する。
【0093】
(表4)
【0094】
(実施例32、33及び比較例68〜75)
ポリアクリル酸のナトリウム塩Aの代わりに、ポリスルホン酸のナトリウム塩(アニオン性ポリマー、分子量20000)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
得られた各サンプルの成分濃度(単位は重量ppm)と、pH及び表面張力の値とを表5に示す。なお、表5中、「pSLF」はポリスルホン酸のナトリウム塩を示す。また、「−」は、その化合物を用いなかったことを意味する。
【0095】
(表5)
【0096】
(評価)
1.樹脂分散性評価
実施例1〜
23,32,33、参考例24〜31及び比較例1〜75で得られたサンプルについて樹脂分散性評価を行った。
まず、ポリスチレン容器に10gのサンプルを入れ、それに、実機のウェットパートから採取した固形状のピッチを0.1g投入した。
次に、超音波洗浄機(型番:US−102、株式会社エスエヌディ社製)を用い、ポリスチレン容器内のサンプルに対し、周波数38kHzで15分間超音波を付与した。
そして、超音波を付与した後のサンプル中のピッチの状態を目視にて下記の10段階で評価した。得られた結果を表6に示す。
表6の「樹脂分散性」において、「10」はピッチが完全に溶解した状態(サンプルが黒くなる)であり、「9」はピッチが9割程度溶解した状態、「8」はピッチが8割程度溶解した状態、「7」はピッチが7割程度溶解した状態、「6」はピッチが6割程度溶解した状態、「5」はピッチが半分程度溶解した状態、「4」はピッチが4割程度溶解した状態、「3」はピッチが3割程度溶解した状態、「2」はピッチが2割程度溶解した状態、「1」ピッチが1割程度溶解した状態である。
【0097】
(表6)
【0098】
2.泡立ち性評価
実施例1〜
23,32,33、参考例24〜31及び比較例1〜75で得られたサンプルについて泡立ち性評価を行った。
まず、メスシリンダーに50mlのサンプルを入れ、メスシリンダーの開口部を封止した。
次に、メスシリンダーを、上下50cmの範囲で、約200cm/秒の速度で上下に振り、これを10往復させた。
そして、直後のサンプルの増加量を測定した。なお、増加した分は、発生した泡の体積に相当する。
また、1分間静置した後の増加量も測定した。得られた結果を表7に示す。
【0099】
(表7)
【0100】
表6の結果より、本発明による実施例1〜
23,32,33のサンプル(散布用汚染防止剤組成物)は、樹脂分散性に優れることがわかった。特に、ポリアクリル酸のナトリウム塩と水酸化ナトリウムと硫酸ナトリウムとをそれぞれ1、0.1、0.01質量部以上含み、PEGを1質量部以上含んでいてもよく、pHは10.3以上であり、表面張力が63mN/m以上であり、ナイロン、ウレタン、ポリエステル、セラミックに対する接触角がそれぞれ61°、85°、80°、62°以下であるものの樹脂分散性が優れる結果であった。
また、表7の結果より、本発明による実施例1〜
23,32,33のサンプル(散布用汚染防止剤組成物)は、泡立ち難いことが確認された。中でも、泡立ちの増加量が7ml以下のものが、樹脂分散性が特に優れるといえる。
一方、比較例1〜75のサンプルは、樹脂分散性に劣るものであり、特に、カチオンポリマーを用いた比較例55〜57並びに界面活性剤を用いた比較例61及び比較例62は、泡立ちも極めて多いものであった。
これらのことから、本発明に係る散布用汚染防止剤組成物によれば、ピッチ汚染を十分に防止することができ、且つ、泡立ち難いことがわかった。
【課題】抄紙機のウェットパートにおける走行中の走行部材のピッチ汚染を十分に防止することができ、且つ、泡立ち難い散布用汚染防止剤組成物及びその散布方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、抄紙機のウェットパートにおける走行中の走行部材に対して散布され、ピッチ汚染を防止するための散布用汚染防止剤組成物であって、アニオン性ポリマー、無機アルカリ剤及び無機塩からなる薬剤並びに溶解用水からなる原液と、該原液を希釈するための希釈用水と、からなり、薬剤1質量部に対する希釈用水の配合割合が100〜10000質量部である散布用汚染防止剤組成物である。