(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
容器口部の外周に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが設けられたスカート壁と、該スカート壁の下部に環状弱化部を介して連結されたタンパーエビデンスバンドとを具備したキャップであって、
前記タンパーエビデンスバンドの内周側に、前記容器口部の外周に設けられた環状突起に下方から係止可能な係止片が周方向に間隔をおいて複数設けられ、
前記係止片の少なくとも一部は、その先端から先方に突出する突出部を有し、
前記突出部は、該キャップが前記容器口部に装着され、前記係止片の先端が上方を向いた状態において、該係止片の外周側に寄り、かつ、前記係止片の外周側にはみ出すはみ出し部分を有するように構成され、
前記はみ出し部分の基部の少なくとも一部は、前記係止片の先端よりも該係止片の基端側に位置するように伸び、かつ、該係止片に繋がっていて、
前記はみ出し部分の基部の外周面は下方ほど前記係止片に接近し、かつ、この基部全体が前記係止片に一体化されていることを特徴とする合成樹脂製キャップ。
【背景技術】
【0002】
飲料物等の内容物を収容する容器の口部に装着されるキャップとして、一目で開封の有無を確認可能に構成されたものが広く用いられている。斯かる従来のキャップの一例を
図9(A)及び(B)に示す(特許文献1参照)。このキャップは、容器口部Mの雄ねじ52に螺合する雌ねじ53が設けられたスカート壁54を有するキャップ本体55と、スカート壁54の下部に環状弱化部56を介して連結されたタンパーエビデンスバンド57とを具備する。タンパーエビデンスバンド57の内周側には、容器口部Mの外周に設けられた環状突起58に下方から係止可能な係止片59が周方向に間隔をおいて複数設けられ、各係止片59の先端には、容器口部Mにキャップが装着されたときに、環状突起58の外周側に位置する突出部60が設けられている。
【0003】
仮に上記キャップに突出部60が設けられていないとすると、開栓の際に、上向きの係止片59が環状突起58に係止したときにその反力で下向きに反転する恐れがあり、このような反転が生じると、環状突起58に対する係止片59の係止が解除され、環状弱化部56が破断することなく開栓が完了し、環状弱化部56の破断の有無に基づいて開封の有無を判断することができなくなる。すなわち、係止片59の反転が問題となる。
【0004】
この点、
図9(A)及び(B)に示す上記キャップにおいて、開栓の際に係止片59が反転することは、突出部60が環状突起58に当接することにより防止される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0016】
図1〜
図3に示す合成樹脂製キャップ(以下、キャップという)1は、例えばペットボトル等の容器の口部M(
図2参照)に装着されて使用されるものであり、コンプレッション成形又はインジェクション成形によって、ポリエチレンで一体的に成形されている。なお、キャップ1を形成する素材は、特に限定されるものではなく、本実施形態で用いたポリエチレンの他、ポリプロピレン等が好適に用いられる。
【0017】
また、
図1〜
図3に示すように、キャップ1は、平面視において略円形状の天壁2と、この天壁2の外周部から下向きに延びる略円筒状のスカート壁3を有している。ここで、スカート壁3の外周面にはローレット溝4を、内周面には雌ねじ5を設けてあり、この雌ねじ5は容器口部の外周に形成された雄ねじM1に結合可能である。
【0018】
そして、容器口部Mの雄ねじM1にスカート壁3の雌ねじ5が結合するようにキャップ1を回転させて容器口部Mに装着すると、天壁2の内面(下面)に連設された環状の中足(インナーリング)6、環状リブ7及び環状の外足(アウターリング)8が容器口部Mに密着し、これにより、容器口部Mが密封された状態となる(
図2参照)。すなわち、キャップ1が容器口部Mに装着された状態では、中足6は容器口部M内に差し込まれて容器口部Mの内周面に密着し、環状リブ7は容器口部Mの環状の上端面に密着し、外足8は容器口部Mの外周面に密着するように構成されている。なお、
図2では、中足6の元の形状を分かり易く示すために、中足6と容器口部Mとを重ねてあるが、実際の装着状態では、中足6は外径が小さくなるように変形して(縮径して)容器口部Mの内周面に接触することになる。
【0019】
また、キャップ1は、未開封(開栓が一度もされていないこと)を証明する機能を有するピルファープルーフキャップであり、容器口部Mに装着された未開封のキャップ1の開封時(最初の開栓時)に、雄ねじM1と雌ねじ5の結合が解除されるようにキャップ1を回転させると、キャップ1は容器口部Mから離脱するが、スカート壁3の下部に連結されたタンパーエビデンスバンド(以下、単に「バンド」という)9は容器口部Mに残留するように構成されている。
【0020】
すなわち、スカート壁3の下部には、スカート壁3の全周にわたって延びる環状弱化部10を介してバンド9を連結してあり(
図1,
図2参照)、環状弱化部10は、スカート壁3とバンド9とを上下に画するように、スカート壁3及びバンド9の周方向に断続して延びる(ミシン目状の)スリットと、隣り合うスリットの間に存在するブリッジとで構成され、ブリッジは所定の力で引っ張られると破断する。
【0021】
また、バンド9の内周側には、内向きに突出する係止片(フラップ)11を、周方向に間隔をおいて複数(本例では8個)設けてある(
図1〜
図3参照)。各係止片11は、キャップ1が容器口部Mに装着された状態で、容器口部Mの外周において雄ねじM1よりも下方に形成された環状突起(ビード部)M2の略下側へ位置し、開栓操作によって環状突起M2に係止する(
図2参照)。すなわち、係止片11は、環状突起M2に下方から係止可能に構成され、開封の際に、環状弱化部10より上方にあるスカート壁3及び天壁2は容器口部Mから離脱し、環状弱化部10より下方にあるバンド9は容器口部Mに残留し、これに伴って環状弱化部10は破断する。
【0022】
ここで、バンド9はスカート壁3及び天壁2と一体成形され、バンド9に設けられる係止片11は、キャップ1の成形時には下向きに突出しているが、容器口部Mへのキャップ1の装着の際に、環状突起M2に押し上げられて反転し、
図1及び
図2に示すように上向きに突出する状態となる。
【0023】
ところで、仮に、開封時に、上向きに突出している係止片11が大きく倒れてしまうと、環状突起M2に押圧された係止片11が再反転して下向きに突出する状態になり易く、係止片11が環状突起M2に良好に係止しなくなる。そこで、本実施形態では、
図1及び
図3に示すように、少なくとも一部の係止片11の先端に、その先方に突出する突出部12を設けると共に、隣り合う係止片11の先端部どうしを連結部13によって連結し、全ての係止片11を環状に繋げてある。
【0024】
このように構成した本実施形態では、上向きに突出している係止片11が大きく倒れてしまうこと(倒れ込むこと)は、容器口部M(環状突起M2)の外周面に対する突出部12の当接によって防止され(
図2参照)、これにより、環状突起M2に対する係止片11の係止が良好に行われることとなる。すなわち、突出部12は、容器口部Mにキャップ1が装着された状態において、環状突起M2の外周側に位置する。
【0025】
そして、本実施形態では、
図3に示すように、突出部12を除いた構成が同一であり周方向に等間隔で配置された各係止片11に突出部12を設け、各突出部12を偏らせてある。
【0026】
詳述すると、各係止片11は、両隣の係止片11の何れか一方とのみペアを形成し、ペアを形成する係止片11に設けられた突出部12は、ペアの係止片11の突出部12と相互に寄り合った位置に設けられ、反対側の位置には設けられていない。具体的には、
図3において、計八つの係止片11を便宜上11A〜11Hと名付けると、例えば係止片11Aの両隣には係止片11B、11Hが存在するが、係止片11Aは係止片11Bとのみペアを形成し、係止片11Hとはペアを形成しない。そして、係止片11A,11Bの突出部12は、相互に寄り合った位置に設けられ、各係止片11A,11Bにおいてその反対側の位置(相互に離反する位置)に突出部12は設けられていない。
【0027】
すなわち、各突出部12の周方向の幅は、各係止片11A,11Bの周方向の幅よりも狭めてある。なお、突出部12の周方向の幅は、係止片11の周方向の幅の4分の1以上、3分の2以下とするのが好ましい。
【0028】
そして、
図3には、この係止片11A,11Bのペアと同様のペアとして、係止片11C,11Dのペアと、係止片11E,11Fのペアと、係止片11G,11Hのペアと、が設けられている。
【0029】
以上のようにして複数の突出部12を集中的に配置すると、各係止片11が位置する円周上において、突出部12が存在しない複数の領域も集中的に設けることができ、
図9(A)に示すように、各係止片59の左右に突出部60を設ける場合や、各係止片11の中央に一つの突出部12を設ける場合に比べ、突出部12が存在しない領域の集中度合を高めることができる。これに伴い、突出部12が存在しない各領域付近では、環状突起M2に対する係止片11の係止代(係止する面積)を効果的に広げることができ、キャップ1を容器口部Mに装着した状態において、開栓の際に、係止片11が環状突起M2を乗り越えることが防止され、ひいては環状弱化部10が破断せずに開栓が完了することを確実に防止することができる。
【0030】
そして、係止代の拡大あるいは十分な係止代の確保という観点から、突出部12が存在しない各領域の平面視におけるその中心角α(
図3参照)が30°以上、好ましくは45°以上となるように、突出部12を配置・構成してあるのが望ましい。
【0031】
また、係止代の拡大あるいは十分な係止代の確保という観点から、単純に突出部12の数を減らすと、突出部12による係止片11の倒れ込み防止効果が薄れる若しくは損なわれてしまうが、本実施形態は、上記のようにペアを形成する係止片11の突出部12どうしを寄せ合うというものであり、突出部12の数を必ずしも減らすものではないので、係止片11の倒れ込み防止効果が薄れたり損なわれたりすることも防止することができる。
【0032】
さらに、本実施形態の突出部12は、
図2に示すように、キャップ1が容器口部Mに装着され、係止片11の先端が上方を向いた状態において、係止片1の外周側に寄り、かつ、係止片11の外周側にはみ出すはみ出し部分14を有するように構成されている。なお、
図2の下部の円内には、突出部12を有する係止片11の縦断面図を拡大して示してある。
【0033】
図9(B)に示す従来のキャップの突出部60は係止片59の外周側に寄っており、
図2に示す本実施形態の突出部12も係止片11の外周側に寄っているが、より外周側に寄せることができるのは、はみ出し部分14を有する本実施形態の突出部12である。そして、これに伴い、係止片11の先端において突出部12よりも内周側に位置する部分、すなわち、環状突起M2に対する係止片11の係止代(係止する面積)を効果的に広げることができる。従って、この点からも、キャップ1を容器口部Mに装着した状態において、開栓の際に、係止片11が環状突起M2を乗り越えることが防止され、ひいては環状弱化部10が破断せずに開栓が完了することを確実に防止することができる。
【0034】
また、
図2に示すように、はみ出し部分14の基部14aの少なくとも一部は、係止片11の先端よりも係止片11の基端側(
図2では下側)に位置するように伸び、かつ、係止片11に繋がっている。そして、このように突出部12を構成したことにより、環状突起M2に対してその外周側から突出部12が接触した場合に、その反作用によって突出部12が外周側に倒れることを防止することができ、ひいては上向きに突出している係止片11が大きく倒れてしまうこと(倒れ込むこと)も防止することができる。
【0035】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0036】
図3の例では、係止片11を8個としているが、これに限らない。例えば、係止片11の個数は3個以上20個以下とすることが考えられる。これに伴い、中心角αの上限は、例えば120°以下とすることが考えられる。
【0037】
また、
図3の例では、係止片11が計8個、すなわち複数個あるから、係止片11のペアをその半数の4対設けることができる。そして、このときの係止片11と突出部12の位置関係は、
図4(A)のように簡略的に表すことができる。しかし、係止片11が複数個あり、6個以上である場合に、必ずその半数のペアを作成する必要はなく、換言すれば、全ての係止片11がペアを作成するように構成する必要はなく、少なくともその一部がペアを形成すればよく、例えばその半数より一対以上少ないペアを作成するようにしてもよい。このとき、ペアを作成しない係止片11に、突出部12を設けても設けなくてもよく、設ける場合には、係止片11の周方向中央に突出部12を設けるようにすることが考えられる。
【0038】
具体的には、例えば係止片11が8個の場合、
図4(B)に示すように、その半数(4対)より一対少ない3対のペアを作成することができる。図示例では、ペアを作成しない二つの係止片11に、突出部12を設けていない。
【0039】
係止片11が複数個の場合の他の例として、係止片11が6個の場合も同様に、
図4(E)に示すように、ペアをその半数の3対としてもよいし、
図4(F)に示すように、ペアを2対としてもよい。
図4(F)の例では、ペアを作成しない二つの係止片11にそれぞれ突出部12を設けてある。
【0040】
図示しないが、係止片11が4個の場合は、係止片11の倒れ込み防止の観点から、ペアを2対とする(全て(4個)の係止片11がペアを作成するように構成する)のが好ましい。すなわち、ペアは必ず複数(2対以上)設けるのが好ましい。
【0041】
また、係止片11を奇数個設ける場合もあり得るのであって、この場合、必ずペアを形成しない係止片11が存在することになるが、係止片11を複数個とする場合と同様に、ペアを作成しない係止片11に、突出部12を設けても設けなくてもよく、設ける場合には、係止片11の周方向中央に突出部12を設けるようにすることが考えられ、かつ、ペアは必ず複数設けるのが好ましい。そのため、係止片11を3個以下にはしない。
【0042】
係止片11が5個又は7個の場合は、
図4(C)、(D)に示すように、一つの係止片11を除く全ての係止片11がペアを形成するように構成するのが好ましい。すなわち、
図4(C)は係止片11が7個の場合、
図4(D)は係止片11が5個の場合である。図示しないが、係止片11が9個以上の場合は、必ずしも一つの係止片11を除く全ての係止片11がペアを形成するように構成する必要は無く、例えば三つの係止片11を除く全ての係止片11がペアを形成するように構成してもよい。
【0043】
突出部12は、一つの係止片11に対して一つのみ設けるのが好ましいが、複数設けるようにしてもよい。但し、この場合も、上述したように、突出部12が存在しない各領域の平面視におけるその中心角α(
図3参照)が30°以上、好ましくは45°以上となるように、突出部12を配置・構成してあるのが望ましい。
【0044】
上記実施形態では、ペアを形成する係止片11の二つの突出部12を分離してあるが、突出部12どうしを繋げるようにしてもよい。
【0045】
突出部12の設け方は上述した各例に限られず、例えば
図5(A)及び(B)に示すように、各係止片11の先端の中央に突出部12を設けるようにしてもよい。
【0046】
図2の例では、キャップ1が容器口部Mに装着され、係止片11の先端が上方を向いた状態において、係止片11の外周側にはみ出すはみ出し部分14の肉厚と、はみ出さない部分の肉厚とが略同じになっているが、この肉厚比は適宜に変更可能である。
【0047】
また、
図5(A)及び(B)に示すように、係止片11の外周側にはみ出すはみ出し部分14を、係止片11の全体にわたって設けてもよいが、これに限らず、係止片11に対して部分的又は断続的に対応するようにはみ出し部分14を設けてもよいし、はみ出し部分14が、係止片11に対して外周側にはみ出すのみならず、周方向や上方向にはみ出すものであってもよい。
【0048】
具体的には、例えば、
図6(A)及び(B)に示すように、はみ出し部分14を周方向に断続的に設けてもよい。なお、
図6(A)及び(B)には、はみ出し部分14を周方向に三つの領域に隔てて設けているが、この隔て方は三つに限らない。
【0049】
また、
図7(A)及び(B)に示すように、はみ出し部分14の基部14aを周方向に連続して設けつつ、それより上の部分を周方向に断続的に設けてもよいし、逆に、
図8(A)及び(B)に示すように、はみ出し部分14の基部14aを周方向に断続的に設け、それより上の部分を周方向に連続して設けてもよい。なお、
図5(A)、
図6(A)、
図7(A)、
図8(A)は、キャップ1が容器口部Mに装着され、係止片11の先端が真上を向いているときの係止片11及び突出部12を外周側からみたときの正面図であり、
図5(B)、
図6(B)、
図7(B)、
図8(B)は、それぞれのときの平面図である。
【0050】
さらに、係止片11に繋がる基部14aの縦断面形状(外周形状)も、種々に変形可能であり、
図2に示す傾斜状(径方向の幅が下側に向かって一定の割合で狭くなる形状)でもよいし、段差状(径方向の幅が下側に向かって段階的に狭くなる形状)、曲面状(径方向の幅が下側に向かって一定ではない割合で狭くなる形状)等であってもよい。
【0051】
なお、上記変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。