【実施例1】
【0033】
図1は、実施例1の、所謂キャップ型の鍔付き帽子100の通常時の斜視図であり、概括的には帽体102と鍔部104によって構成されている。一層詳細には、
図3に示すように、帽体102の内側に帯状のスベリ106が縫合されて一体化されている。
【0034】
まず帽体102を
図1〜
図3を参照しつつ説明する。
【0035】
帽体102は、着帽者の頭部を被覆し、又は、挟み込んで頭部に保持される機能を有し、本実施例1においては、6枚の蓮華片108によって半球形状に構成されている。蓮華片108は、シート体から花びら状に切り出して形成される。シート体は、合成繊維、特に、ポリアミド繊維やポリエステル繊維を用いた布帛、ニット、不織布、又は、紙、樹脂、若しくは、皮革によって形成されるが、本実施例1においては、ポリアミド繊維によって製織された布帛が用いられている。本鍔付き帽子100は雨天時の使用が前提であるため、布帛、ニット、不織布、紙、又は、皮革によって構成されるシート体は、表面に防水加工が施されている。防水加工とは、シートに疎水性(撥水性)を持たせる加工である。防水加工としては、不通気加工、及び、通気加工が知られているが、快適性を考慮すると、通気加工による防水加工が好ましい。また、防水加工としては、乾性油又はパラフィン等を付着させる一時的なもの、若しくは、ベランシリコンなどの撥水物質などで繊維を化学的に処理するもので長期使用が可能な永久的なものがあるが、利便性を考慮すると、永久的な防水加工を施すことが好ましい。なお、樹脂製シートは、本来的に不通気であるので、特別な防水加工は不要である。帽体102の頂部には、蓮華片108の縫い目を隠すための天ボタン112が縫合又は接着によって固定されている。
【0036】
次に鍔部104を説明する。
【0037】
鍔部104は、帽体102の全周ではなく、帽体102の一部分に対する鍔部104を構成する機能を有し、先端可動部104Tと、鍔基部104Bとによって構成されている。本実施例1において鍔部104は、
図9に示すように、鍔部形成袋114、先端部弧状片116、先端部弧状片封入結合部118、鍔部芯体122、及び、鍔部芯体封入結合部124によって構成されている。
【0038】
まず先端可動部104Tを説明する。
【0039】
先端可動部104Tは、鍔基部104Bに対し跳ね上げできる機能を有し、本実施例1においては、鍔部形成袋114、先端部弧状片116、及び、先端部弧状片封入結合部118によって構成されている。先端可動部104Tは、鍔基部104Bと一体的に形成されているが、別体的に異なる状態、すなわち、鍔基部104Bに対し跳ね上げ状態にすることができる。また、鍔基部104Bよりも小さい剛性を有している。換言すれば、先端可動部104Tの剛性は、鍔基部104Bの剛性よりも小さい。したがって、先端可動部104Tは後述する鍔基部104Bの上側に凸状の湾曲の影響によって、上側に凸状に変形される。上側とは、着帽した際の鍔部104の上側である。
【0040】
次に鍔基部104Bを説明する。
【0041】
鍔基部104Bは、帽体102に基部を固定され、先端可動部104Tを跳ね上げ可能に支持する機能を有し、本実施例1においては、鍔部形成袋114鍔部芯体122、及び、鍔部芯体封入結合部124によって構成されている。鍔基部104Bは、帽体102に対し一体に設けられ、上側に向かって凸状に弧状に湾曲され、所定の弾性を有している。
【0042】
次に鍔部形成袋114を主に
図5を参照しつつ説明する。
【0043】
鍔部形成袋114は、先端部弧状片116、及び、鍔部芯体122を内包し、鍔部104の外表面を形成する機能を有し、本実施例1においては、帽体102と同一材質で構成された布帛によって袋状に構成されている。しかし、帽体102とは異なる材質や色にすることができる。鍔部形成袋114は、鍔部形成袋114と相似形にやや大きく形成された型紙の外縁に沿って手動、又は、コンピュータ制御の自動裁断機によって切り出された弧帯状の布帛からなる上側鍔部形成袋用布帛126Aと下側鍔部形成袋用布帛126Lの周縁、換言すれば、先端縁114F、左端縁114L、及び、右端縁114Rが結合されて構成されている。すなわち、上側鍔部形成袋用布帛126Aと下側鍔部形成袋用布帛126Lはそれぞれ突出する上側先端縁126AF、下側先端縁126LF、それら上側先端縁126AF、下側先端縁126LFに対しそれぞれ左側に位置する左上側縁126AL、左下側縁126LL、右側に位置する右上側縁126AR、右下側縁126LRが、及び、上側先端縁126AF、下側先端縁126LFの対辺を構成する上側凹状縁126AC、下側凹状縁126LCを有する。そして、上側鍔部形成袋用布帛126Aと下側鍔部形成袋用布帛126Lの上側先端縁126AF、下側先端縁126LF、左上側縁126AL、左下側縁126LL、及び、右上側縁126AR、右下側縁126LRの三辺のそれぞれの所定長さ内側を結合されて袋状に構成されている。本実施例1においては、結合はミシンによって
図7(A)に図示するように本縫い縫製されている。しかし、先端縁114F、左端縁114L、及び、右端縁114Rは、溶着又は接着によって結合されても良い。
【0044】
次に先端部弧状片116を主に
図6(A)を参照して説明する。
【0045】
先端部弧状片116は鍔部104の先端可動部104Tの形状を画定すると共に、任意時、特に、雨天時は鍔基部104Bに対し跳ね上げられる機能を有し、本実施例1においては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニール、ナイロン等の合成樹脂によって平面視において三日月型に成形されている。合成樹脂は疎水性であるため、雨水に接しても形状や剛性が変化しない性質を有することから、好ましい材料である。しかしながら、不織布や表面に樹脂フィルムを配置したミルクカートン紙等を用いることができる。また、鍔部形成袋114が完璧に防水される場合、紙製の厚紙を用いることができる。先端部弧状片116は、先端可動部104Tが三日月状を呈するように、所定の剛性を有すると共に、跳ね上げ状態になるための変形が可能な柔軟性を有する。このため、本実施例1においては、厚さ1ミリメートルのPE又はPP材料によって平板状に形成されている。先端部弧状片116は、
図6(A)に示すように、鍔部104の鍔部先端104Pに相対して湾曲形成された弧状片先端縁116Pと、鍔基部104B側、換言すれば帽体102側の弧状の先端部弧状片帽体側端縁116Bによって、三日月形に形成されている。弧状片先端縁116Pは、鍔部形成袋114の先端形状と同一に形成されている。具体的には、弧状に形成されている。先端部弧状片帽体側端縁116Bは
図4に示すように、所定位置を中心C2とし、第2半径R2によって描かれる第2円CR2の一部に、大よそ重なるように形成されている。弧状片先端縁116Pの湾曲形状は鍔付き帽子100全体のデザインを考慮して形成され、円弧の一部、円弧の組み合わせ、直線と円弧の組み合わせ、又は、直線の組み合わせによって全体として弧状に形成されるが、直線であっても良い。さらに換言すれば、先端部弧状片116は、少なくとも先端部弧状片帽体側端縁116Bが弧状に形成されている。しかし、弧状片先端縁116Pは直状にすることができる。
【0046】
次に先端部弧状片封入結合部118を説明する。
【0047】
先端部弧状片封入結合部118は、先端部弧状片116が鍔部形成袋114の先端部から戻らないように規制する機能を有し、本実施例1においては、鍔部形成袋114に先端部弧状片116を挿入し、当該先端部弧状片116の弧状片先端縁116Pが鍔部形成袋114の先端内側に密着した状態において、先端部弧状片116の先端部弧状片帽体側端縁116Bに密接した状態で、上側鍔部形成袋用布帛126A及び下側鍔部形成袋用布帛126Lが先端部弧状片封入結合部118によって接続(結合)されている。本実施例1において、先端部弧状片封入結合部118は、ミシンによって直線的に本縫いされて縫合されている。直線的とは、ジグザグ縫いではなく、実質的に縫い目が伸縮しない縫い方である。本縫いとは、
図8(D)に示すよう、上糸128Aと下糸128Lとが上側鍔部形成袋用布帛126Aと下側鍔部形成袋用布帛126Lとが重ね合わされた中間において、絡み合う縫い方であり、実質的に縫い目が伸縮しない縫い方である。しかし、環縫いであっても良い。ミシン糸は、布帛126と同一材質であって、80〜100番手が好ましい。ミシン糸が太すぎると外観に影響を及ぼすからである。しかし、先端部弧状片封入結合部118は、本縫いの他、前述のように、溶着や接着によって構成できるが、ミシン縫いが柔軟性に優れるため好ましい。
【0048】
次に鍔部芯体122を主に
図6を参照して説明する。
【0049】
鍔部芯体122は、鍔部104の鍔基部104Bを構成する機能、換言すれば、鍔基部104Bの大略外形を形成する機能を有し、本実施例1においては、平面視、及び、正面視において、弧状に形成されている。詳述すれば、弧状の鍔部芯体先端縁122P及び鍔部芯体帽体側端縁122Bを有し、先端部弧状片116と同様の材料である、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニール、ナイロン等の合成樹脂によって、所定の剛性と柔軟性を有するように成型されている。しかし、先端部弧状片116と同様に、各種の材料によって構成することができる。鍔部芯体先端縁122Pは、先端部弧状片帽体側端縁116Bと同一の弧状に形成されている。換言すれば、鍔部芯体先端縁122Pは、
図4に示すように、第2円CR2と大凡重なる弧状に形成されている。鍔部芯体帽体側端縁122Bは、
図4に示すように、第1中心C1を中心とする第1円CR1と大凡重なる円弧状に形成されている。しかし、円弧状に限らず、前頭部形状に近づけた楕円形であっても良い。鍔部芯体先端縁122Pは、
図6(C)に示すように、正面視において、上側に凸状を呈するように湾曲されている。換言すれば、常態において、上側に凸形状となるように比較的大きな曲率で円弧状に形成されている。鍔部芯体122の剛性は、先端部弧状片116の剛性よりも高く設定されている。換言すれば、鍔部芯体122の上側に凸形状に倣って、先端部弧状片116も上側に凸形状を呈するように設定されている。換言すれば、鍔部芯体122は、先端部弧状片116が鍔部芯体122の延長上に位置する通常時、及び、先端部弧状片116を跳ね上げた時に、上側に凸形状を維持する剛性が必要である。本実施例1においては、この剛性の関係を設定するため、鍔部芯体122の厚みは、同一の材料の樹脂材料で成型された場合、先端部弧状片116の3倍程度に設定されている。換言すれば、鍔部芯体122は約3ミリメートルの厚みを有する。先端部弧状片116と鍔部芯体122の材質を異ならせれば、両者をほぼ同一の厚さに設定することもできる。
【0050】
次に鍔部芯体封入結合部124を主に
図9を参照して説明する。
【0051】
鍔部芯体封入結合部124は、鍔部芯体122を鍔部形成袋114内に保持する機能を有する。本実施例1においては、鍔部形成袋114に鍔部芯体122を挿入し、鍔部芯体122の鍔部芯体先端縁122Pが先端部弧状片封入結合部118に密着した状態で、鍔部芯体帽体側端縁122Bに沿って、上側鍔部形成袋用布帛126A及び下側鍔部形成袋用布帛126Lが鍔部芯体封入結合部124によって接続されている。本実施例1において、鍔部芯体封入結合部124は、先端部弧状片封入結合部118と同様に、ミシンによって直線的に本縫いされる。しかし、先端部弧状片封入結合部118と同様に、環縫いであっても良い。ミシン糸は、先端部弧状片封入結合部118と同様に決定される。しかし、鍔部芯体封入結合部124は、前述のように、溶着や接着によって構成できるが、ミシン縫いが柔軟性に優れるため好ましい。
【0052】
次にスベリ106を主に
図3を参照して説明する。
【0053】
スベリ106は、公知のように、帽体102の下部内面に配置され、着帽者の頭部周囲と直に接する機能を有し、本実施例1においては、メッシュ状の帯体によって構成され、帽体102の内側下端部の全周にその下端部が縫合されている。
【0054】
次に実施例1に係る鍔付き帽子100の製造方法を主に
図7〜
図12をも参照して説明する。
【0055】
まず、ステップS1において、裏返し袋114RBを作成する。具体的には、裁断した上側鍔部形成袋用布帛126A(
図5(A))及び下側鍔部形成袋用布帛126L(
図5(B))を、
図7(A)及び(B)に示すように、裏面を表側にして、換言すれば、表面を向かい合わせにして上下に重ね合わせた状態において、布端CTから所定長の内側を袋結合部132によって結合し、一体化する。すなわち、突出先端縁126F、下側鍔部形成袋用布帛126L、及び、右側縁126Rが結合されて下側鍔部形成袋用布帛126L側に開口134が形成された裏返し袋114RBが作成される。袋結合部132は、本実施例1においてはミシンによって本縫いされている。しかし、袋結合部132は、溶着や接着によって形成することができる。したがって、袋結合部132の外側には上端縁布126AE、下端縁布126LEが形成される(両者を一体的に説明する場合、「端縁布126E」という)。なお、上側鍔部形成袋用布帛126A及び下側鍔部形成袋用布帛126Lに表裏が存在しない場合、表裏を考慮せずに裏返し袋114RBを作成することができる。
【0056】
次にステップS2において、作成した裏返し袋114RBを、裏返し、
図7(B)に示す鍔部形成袋114を作成する。換言すれば、上側鍔部形成袋用布帛126A及び下側鍔部形成袋用布帛126Lの表面が表面側に位置し、両者によって開口134に連なる収納空間SSが形成され、それらの端縁布126Eが収納空間SS内に位置する。
【0057】
次にステップS3において、鍔部形成袋114に先端部弧状片116を挿入する。
【0058】
すなわち、鍔部形成袋114の開口134から先端部弧状片116を収納空間SSに挿入し、
図8(C)に図示するように、弧状片先端縁116Pを鍔部形成袋114の突出先端縁126Fに密着させる。この場合、端縁布126Eは、
図10(A)に示すように先端部弧状片116の下側に配置され、外見上目立たないようにされている。なお、
図10において、先端部弧状片116と鍔部芯体122との間隔は先端部弧状片封入結合部118の図示の便宜上、誇張して描いてある。
【0059】
次にステップS4において、先端部弧状片116が鍔部形成袋114内において移動しないように先端部弧状片封入結合部118を形成する。本実施例1においては、先端部弧状片116の弧状片先端縁116Pを鍔部形成袋114の突出先端縁126Fに密着させた状態において、先端部弧状片封入結合部118を形成する。本実施例1においては、先端部弧状片116の先端部弧状片帽体側端縁116Bに沿ってミシンによって
図8(D)に示す本縫いをすることによって、上側鍔部形成袋用布帛126A及び下側鍔部形成袋用布帛126Lを先端部弧状片帽体側端縁116Bに沿って結合する。この場合、先端部弧状片116の上側に位置する上側鍔部形成袋用布帛126A、及び、下側に位置する下側鍔部形成袋用布帛126Lに皺が生じないよう、上側鍔部形成袋用布帛126A及び下側鍔部形成袋用布帛126Lがピンと伸長した状態でミシン縫いをする必要がある。上側鍔部形成袋用布帛126A及び下側鍔部形成袋用布帛126Lをピンと伸長した状態にするため、先端部弧状片116の先端片幅W1(
図6(A))を、鍔部形成袋114の鍔部袋幅W2(
図7(B))よりも僅かに大きくすることにより、鍔部形成袋114が幅方向に拡幅され、上側鍔部形成袋用布帛126A及び下側鍔部形成袋用布帛126Lがピンと張られた状態にすることができる。以上の説明から明らかなように、先端可動部104Tは、先端部弧状片116、先端部弧状片封入結合部118、及び、鍔部形成袋114によって構成される。
【0060】
次にステップS5において、
図9(E)に示すように、鍔部芯体122を鍔部形成袋114の開口134から収納空間SSに挿入する。
【0061】
この場合も、鍔部芯体122の上下に配置される上側鍔部形成袋用布帛126A及び下側鍔部形成袋用布帛126Lがピンと張られた状態になるよう、鍔部芯体122の芯体幅W3(
図9(E))を鍔部袋幅W2(
図7(B))よりも僅かに大きくすることが好ましい。
【0062】
次にステップS6において、
図9(F)に示すように、鍔部芯体122が鍔部形成袋114内において移動しないように鍔部芯体封入結合部124を形成する。本実施例1においては、鍔部芯体122の鍔部芯体先端縁122Pを先端部弧状片封入結合部118に密着させた状態において、鍔部芯体封入結合部124を形成する。本実施例1においては、鍔部芯体122の鍔部芯体帽体側端縁122Bに沿ってミシンによって
図8(D)に示す本縫いをすることによって、上側鍔部形成袋用布帛126A及び下側鍔部形成袋用布帛126Lを鍔部芯体帽体側端縁122Bに沿って結合する。鍔部芯体122の上面、又は、下面に対して、上側鍔部形成袋用布帛126A及び下側鍔部形成袋用布帛126Lがピンと張られた状態になるよう、鍔部芯体封入結合部124がミシン縫製によって形成される。これにより、鍔部104の製造が終了する。
図10に示すように、鍔部芯体封入結合部124よりも外側(
図10において左側)には、帽体縫付端部126Pが帯状に形成される。以上の説明から明らかなように、鍔基部104Bは、先端部弧状片封入結合部118、鍔部芯体122、鍔部芯体封入結合部124、及び、先端部弧状片封入結合部118と鍔部芯体封入結合部124とによって画定された鍔部形成袋114によって構成される。
【0063】
次いでステップS7において、この鍔部104を帽体102に固定する。すなわち、
図11に示すように、帽体102の帽体下端部102Lとスベリ106の折返したスベリ端部106Lとの間に帽体縫付端部126Pを挟み込んでそれらを帽体結合部136によって結合し、一体化してある。本実施例1において、帽体結合部136は、ミシンによる本縫い(
図8(D))によって形成されている。しかし、帽体結合部136は、融着、接着等によっても構成することができる。これにより、帽体102と鍔部104が一体化され、本発明の実施例1の鍔付き帽子100が製造される。
【0064】
実施例1の鍔付き帽子100は、通常時、
図1に示すように、先端可動部104Tは鍔基部104Bの延長線上に配置され、換言すれば、鍔基部104Bに対し跳ね上げられず用いられる。したがって、先端可動部104Tは、鍔基部104Bにおける鍔部芯体122と同一の鍔部形成袋114に内包されているので、当該鍔部形成袋114を構成する上側鍔部形成袋用布帛126A及び下側鍔部形成袋用布帛126Lを介して鍔部芯体122の上側に凸状を呈する湾曲の影響を受け、僅かに上側に凸状を呈している。
【0065】
着帽者が、雨天時にパッティングをする場合、
図2に示すように、先端可動部104Tを上側に押し上げる(跳ね上げる)。これにより、先端部弧状片帽体側端縁116Bが湾曲しているため、直線状に形成されている場合に対し、抵抗を受けつつ押し上げることができる。すなわち、先端部弧状片帽体側端縁116Bが湾曲しているため、先端部弧状片帽体側端縁116Bが直状にならなければ上方へ押し上げられることができない。しかし、先端部弧状片116は剛性が低く、また、それを内包している鍔部形成袋114も柔軟性を有しているため、押し上げられた部位を起点に短い長さづつ直線状になって上方へ押し上げられ、最終的に先端可動部104T全体が上方へ押し上げられる(跳ね上げられる)。全体が上方へ押し上げられると、元の形態に戻るためには、再び短い長さづつ直線状にならなければならない、換言すれば、先端可動部104Tに対し下方への外力が作用しなければ、元に戻ることができない。したがって、先端可動部104Tが跳ね上げられた場合、意識的に下方へ押し下げられなければ、跳ね上げられた状態を維持する。
【0066】
先端可動部104Tが鍔基部104Bに対し跳ね上げられた場合、鍔基部104Bと先端可動部104Tとは、
図10(B)に示すように、鋭角を呈し、
図13に示すように、それらは鍔部104の先端部に鍔部104を横断するV字状の集水溝138を構成する。この集水溝138は、鍔基部104Bの先端(鍔部芯体122の鍔部芯体先端縁122P)が湾曲していることから、パッティング時には鍔部104の中央部Cが最も深く、左右の端部Eが最も浅くなる深さDの溝である。したがって、パッティングしようとして、下向きとなり、鍔部104が前下がりになった場合、鍔部104の鍔基部104B上の雨水、及び、帽体102から鍔基部104Bに落下した雨水は、集水溝138に流れ込んで貯水される。そして、その貯水量が鍔部104の集水溝138の深さDを上回った場合、鍔部104の左端部LE又は右端部REから滴り落ちることになる。換言すれば、パッティング時に、鍔部104の先端から雨水が滴下することがないので、着帽者が集中力を乱されないという利点がある。
【0067】
ステップS1〜S7によって、鍔付き帽子100を製造する製造方法は、鍔部形成袋114に先端部弧状片116を挿入して、先端部弧状片封入結合部118を形成し、次いで、鍔部芯体122を挿入して後、鍔部芯体封入結合部124を形成するという、きわめて簡単な手順で製造することができる利点がある。これにより、さほど熟練を要せずとも、高品質の鍔付き帽子を製造できることから、安価に製造できる利点がある。
【実施例5】
【0074】
次に本発明の実施例5の鍔付き帽子500を
図18を参照しつつ説明する。
【0075】
実施例1と同一部には同一符号を付し、異なる構成を説明する。実施例5の鍔付き帽子500において、先端部弧状片封入結合部118は、中央部の直状結合部118L、直状結合部118Lの左側に形成された左弧状結合部118CL、及び、右側に形成された右弧状結合部118CRによって構成されている。本実施例5においても、先端部弧状片封入結合部118が中央部の直状結合部118Lと、その左弧状結合部118CL、右弧状結合部118CRによって構成されているので、デザインのバリエーションが増える利点がある。
【0076】
次に本発明の実施例6の鍔付き帽子600を
図19〜
図22を参照しつつ説明する。
【0077】
実施例1と同一部には同一符号を付し、異なる構成を説明する。実施例6の鍔付き帽子600において、鍔部104を構成する先端可動部104Tと鍔基部104Bとが外見上異なるように構成された例である。換言すれば、先端可動部104Tと鍔基部104Bとが、異なる色、異なる材質等により構成され、鍔基部104Bと先端可動部104Tとの異なる態様による調和を図ったデザインを採用することができ、デザインのバリエーションが増える利点がある。本実施例6においては、先端可動部104Tと鍔基部104Bとが異なる色の布帛によって構成された例である。
【0078】
次に実施例6に係る鍔付き帽子600の製造手順を
図20〜
図22を参照して説明する。
【0079】
まず、上側鍔部形成袋用布帛126A及び下側鍔部形成袋用布帛126Lを製造する。上側鍔部形成袋用布帛126A及び下側鍔部形成袋用布帛126Lとは同一構成であるので、上側鍔部形成袋用布帛126Aを代表して説明する。具体的には、
図20(A)に示すように、先端部弧状片116に対しやや大型相似形に先端可動部104Tを構成する先端部可動部布帛104TAを大凡三日月型に裁断する。また、鍔部芯体122に対しやや大型相似形に鍔基部布帛104BBを異なる着色の布帛から弧状に裁断する。
【0080】
次に、先端部可動部布帛104TAの先端部基部側104TBと鍔基部布帛104BBの鍔基部先端側104BPとの所定長内側を先端部弧状片116の先端部弧状片帽体側端縁116Bに沿うようミシンによって縫合し、先端部本縫い部602を形成し、同図(B)に示すように、裏側に布端が位置するように一体化して上側鍔部形成袋用布帛126Aを構成する。
【0081】
次に同様に形成した下側鍔部形成袋用布帛126Lと上側鍔部形成袋用布帛126Aを裏面が向かい合う状態において、実施例1において説明したステップS1を実行し、
図21(C)に示すように裏返し袋114RBを作成する。
【0082】
次に、実施例1において説明したステップS2を実行し、裏返し袋114RBを裏返しして
図21(D)に示すように、鍔部形成袋114を作成する。
【0083】
次に実施例1において説明したステップS3を実行し、
図21(D)に示すように、先端部弧状片116を鍔部形成袋114内に挿入する。
【0084】
次に実施例1において説明したステップS4を実行し、
図21(E)に示すように、ミシンによって先端部弧状片帽体側端縁116Bに沿って、縫合して先端部弧状片封入結合部118を形成し、先端部弧状片116を鍔部形成袋114内に内包させる。これによって、先端部弧状片116に相対して先端部可動部布帛104TAが位置する。
【0085】
次に実施例1において説明したステップS5を実行し、
図22(F)に示すように鍔部芯体122を鍔部形成袋114内に挿入する。次いで、実施例1において説明したステップS6を実行し、
図22(G)に示すように、ミシンによって鍔部芯体帽体側端縁122Bに沿って縫合して鍔部芯体封入結合部124を形成し、鍔部芯体122を鍔部形成袋114内に内包させる。次いで、実施例1において説明したステップS7を実行し、帽体102に鍔部104を縫合して鍔付き帽子600を製造する。
これによって、先端可動部104Tが鍔基部104Bと異なる色や材質によって構成することができ、デザインの自由度が高まる効果がある。