特許第6281058号(P6281058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6281058粉末固型化粧料の製造方法及び粉末固型化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281058
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】粉末固型化粧料の製造方法及び粉末固型化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20180208BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 8/88 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20180208BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20180208BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61K8/25
   A61K8/87
   A61K8/88
   A61K8/34
   A61K8/37
   A61K8/891
   A61Q1/00
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-125702(P2013-125702)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-855(P2015-855A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】元木 豊
(72)【発明者】
【氏名】田村 清和
(72)【発明者】
【氏名】市岡 真治
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−074023(JP,A)
【文献】 特開2008−247877(JP,A)
【文献】 特表2004−530694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性成分7〜15質量部と、粉体85〜93質量部と、水60〜120質量部を含む揮発性溶媒と、が含まれるスラリー(ただし、前記油性成分及び前記粉体の合計は100質量部)を調製する工程と、
前記スラリーから前記揮発性溶媒を除去することにより化粧料バルクを得る工程と、
前記化粧料バルクの粉砕物を圧縮成型することにより粉末固型化粧料を得る工程と、を備える、粉末固型化粧料の製造方法。
【請求項2】
前記スラリーが、前記油性成分と、前記粉体と、前記水の一部とを配合した混合物に、前記水の残りを配合することにより得られ、
前記混合物における前記水の配合量が5〜15質量部である、請求項1に記載の粉末固型化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末固型化粧料の製造方法及び粉末固型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末固型化粧料は、その携帯性や化粧方法の簡便性などの点から優れた化粧料剤型として汎用されている。粉末固型化粧料の製造方法としては、粉体と油性成分とを混合し、容器に充填した後、加圧成型する乾式製法と、粉体と油性成分からなる化粧料基材に揮発性溶媒を加え混合してスラリーを調製し、このスラリーを容器に充填後、真空吸引などの方法により揮発性溶媒を吸引若しくは乾燥除去して製造する湿式製法が知られている。
【0003】
乾式製法によって製造される粉末固型化粧料は、粉体が主成分である基材を直接加圧成型するために、粉体の性状に使用性が大きく影響される。そのため、粉っぽさによるざらつき感や乾燥感が大きいことや、硬い使用性が問題となる。
【0004】
湿式製法によって製造される粉末固型化粧料は、球状粉体や薄片状粉体、光輝性粉体、油性成分を多量に配合できることから、粉っぽさが低減され、のび、滑らかさ、柔らかさといった使用性に優れる(例えば、下記特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3434881号
【特許文献2】特開2002−128637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、湿式製法によって製造される粉末固型化粧料は、使用性に優れる一方で、化粧料表面にクラックが生じやすく、耐衝撃性に懸念がある。また、スラリーを調製する際に用いる揮発性溶媒は有機溶剤が主体であるため、油性成分の一部が有機溶剤に溶解し、吸引除去する際に有機溶剤とともに消失してしまう傾向がある。更に、環境面への対応などの観点から最近は揮発性溶媒として水を使用することが求められている。
【0007】
本発明の目的は、使用性及び耐衝撃性を両立する粉末固型化粧料を、揮発性溶媒として水を使用しながらも作業性を著しく低下させることなく製造することができる粉末固型化粧料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、油性成分7〜15質量部と、粉体85〜93質量部と、水60〜120質量部を含む揮発性溶媒と、が含まれるスラリー(ただし、前記油性成分及び前記粉体の合計は100質量部)を調製する工程と、スラリーから揮発性溶媒を除去することにより化粧料バルクを得る工程と、化粧料バルクの粉砕物を圧縮成型することにより粉末固型化粧料を得る工程とを備える、第1の粉末固型化粧料の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の第1の粉末固型化粧料の製造方法によれば、上記特定のスラリーを調製することにより、使用性及び耐衝撃性を両立する粉末固型化粧料を、揮発性溶媒として水を使用しながらも作業性を著しく低下させることなく製造することができる。
【0010】
このような効果が得られる理由について本発明者らは以下のとおり考えている。すなわち、スラリーにおける粉体、油性成分及び水の配合量を上記特定の範囲内とすることにより、粉体の表面に油性成分を均一に且つ効率よく付着させることができ、耐衝撃性の低下を十分抑制しつつ油性成分による使用性の向上効果を十分に得ることができたと推察される。
【0011】
また、本発明の第1の粉末固型化粧料の製造方法によれば、化粧料バルクの調製及び粉砕を行うことにより、粉体の凝集を抑制でき、使用性及び耐衝撃性を更に高水準で両立する粉末固型化粧料を得ることができる。
【0012】
本発明はまた、油性成分7〜15質量部と、粉体85〜93質量部と、水60〜120質量部を含む揮発性溶媒と、が含まれるスラリー(ただし、前記油性成分及び前記粉体の合計は100質量部)を調製する工程と、スラリーを容器に充填し圧縮成型した後にスラリーから揮発性溶媒を除去することにより粉末固型化粧料を得る工程とを備える、第2の粉末固型化粧料の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の第2の粉末固型化粧料の製造方法は、いわゆる湿式製法であるが、上記特定のスラリーを調製することにより、使用性及び耐衝撃性を両立する粉末固型化粧料を、揮発性溶媒として水を使用しながらも作業性を著しく低下させることなく製造することができる。
【0014】
このような効果が得られる理由については、上述のとおり、スラリーにおける粉体、油性成分及び水の配合量を上記特定の範囲内とすることにより、粉体の表面に油性成分を均一に且つ効率よく付着させることができ、耐衝撃性の低下を十分抑制しつつ油性成分による使用性の向上効果を十分に得ることができたためと推察される。
【0015】
本発明の第1及び第2の粉末固型化粧料の製造方法において、上記スラリーが、油性成分と、粉体と、水の一部とを配合した混合物に、水の残りを配合することにより得られ、混合物における水の配合量が5〜15質量部であることが好ましい。
【0016】
上記の混合物を調製することにより、スラリー調製時における粉飛びを抑制しながら、油性成分と水を含む揮発性溶媒との混合物に粉体を分散させることが容易となり、作業性の向上及び作業時間の短縮化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、使用性及び耐衝撃性を両立する粉末固型化粧料を、揮発性溶媒として水を使用しながらも作業性を著しく低下させることなく製造することができる粉末固型化粧料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の粉末固型化粧料の製造方法の実施形態は、油性成分7〜15質量部と、粉体85〜93質量部と、水60〜120質量部を含む揮発性溶媒と、が含まれるスラリー(ただし、前記油性成分及び前記粉体の合計は100質量部)を調製する工程と、スラリーから揮発性溶媒を除去することにより化粧料バルクを得る工程と、化粧料バルクの粉砕物を圧縮成型することにより粉末固型化粧料を得る工程とを備える。
【0019】
本実施形態で用いられる各成分について説明する。
【0020】
粉体としては、例えば、通常化粧品に使用されるものであれば特に限定されず、具体的にはマイカ、カオリン、セリサイト、タルク、合成雲母、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛、パール顔料(雲母チタン、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス等)、窒化ホウ素、有機顔料(赤色228号、赤色226号、青色404号等)、ポリエチレン末、ウレタンビーズ、ポリメタクリル酸メチル、オルガノポリシロキサンエラストマー等が挙げられる。これらの粉体は、2種以上の粉体を複合化したものを用いてもよい。また、粉体は、シリコーン化合物、金属セッケン類、アミノ酸化合物、フッ素化合物等を用いて公知の方法にて表面処理を施したものを用いることができる。更に、粉体は、多様な使用感触を得る目的、メイクアップ用化粧料とした場合に所望の色調を得る目的などから、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
本実施形態においては、疎水性の粉体を配合することが好ましく、この場合、上記スラリーにおいて油性成分が付着した粉体を良好に分散させることが容易となる。また、球状或いは平板状の機能性粉体を用いることができる。
【0022】
ところで、近年ではタルクの石綿含有可能性が指摘されており、消費者の間ではタルクを配合しない化粧料の需要が高まっている。しかし、タルクを配合しない化粧料は耐衝撃性が悪くなる傾向があった。本願発明によれば、揮発性溶媒として水を用いることで、水の凝集力により化粧料の耐衝撃性を向上させることが可能となり、タルクを配合しなくても耐衝撃性が十分な粉末固型化粧料を製造することができる。
【0023】
油性成分としては、例えば、液状油剤、固形状油剤、半固形状油剤及びペースト状油剤が挙げられる。液状油剤としては、常温で液状の油分で通常化粧品に使用されるものであれば特に限定されず、具体的には流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素油、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリカプリル・カプリン酸グリセリル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル等のエステル油、オリーブ油、ヒマシ油、マカデミアナッツ油、ホホバ油等の植物油、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール、イソステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン油等が挙げられる。これらの液状油剤成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。固形状油剤、半固形状油剤又はペースト状油剤としては、通常化粧品に使用されるものであれば特に限定されず、具体的にはワセリン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン等の炭化水素類、硬化ヒマシ油、水添ホホバ油、カルナウバロウ、ライスワックス等の植物由来油脂、トリベヘン酸グリセリル、コレステロール脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸類、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、アルキル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン等のシリコーン類等が挙げられる。これらの成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
油性成分は、落下強度や使用性、作業性の観点から、油性成分及び粉体の合計を100質量部としたときに7〜15質量部であることが好ましい。
【0025】
本実施形態の粉末固型化粧料には、上記の粉体成分及び油性成分の他に通常化粧品に使用される他の成分、例えば保湿剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、被膜形成剤、防腐剤、ビタミン類、美容成分、酸化防止剤、香料等を必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することが出来る。
【0026】
本実施形態において用いられる揮発性溶剤は、水以外の溶剤を用いることができる。水以外の溶剤としては、例えば、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;イソドデカン、イソパラフィン等の炭化水素系溶剤;オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等のシリコーンなどが挙げられる。
【0027】
本実施形態では、スラリー調製時の作業性の観点から、油性成分と、水を含む揮発性溶媒とを混合した混合物に、粉体を分散させてスラリーを調製することが好ましい。
【0028】
スラリーにおける油性成分及び粉体の配合量はそれぞれ、7〜15質量部及び85〜93質量部であるが、使用性や耐衝撃性、作業性の観点から、9〜13質量部及び87〜91質量部が好ましい。
【0029】
また、スラリーにおける水の配合量は、油性成分及び粉体の合計100質量部に対し60〜120質量部であるが、使用性やスラリー乾燥の作業性の観点から、80〜100質量部がより好ましい。
【0030】
本実施形態においては、上記スラリーの調製を、油性成分と、粉体と、水の一部とを配合した混合物に、水の残りを配合することによって行うことが好ましく、このときの混合物における水の配合量を、粉体及び油性成分の合計配合量100質量部に対し5〜15質量部とすることが好ましい。
【0031】
上記の混合物を調製することにより、スラリー調製時における粉飛びを抑制しながら、油性成分と水を含む揮発性溶媒との混合物に粉体を分散させることが容易となり、作業性の向上及び作業時間の短縮化を図ることができる。
【0032】
なお、上記混合物は適度に湿った状態の粉体であってもよい。
【0033】
スラリーから揮発性溶媒を除去することにより化粧料バルクを得る工程では、例えば、上記のスラリーを平皿上に広げ、自然乾燥、加温乾燥又は温風乾燥などによりスラリー中の揮発性溶媒を除去することにより、化粧料バルクが得られる。
【0034】
化粧料バルクを粉砕する方法としては、例えば、アトマイザー、ハンマーミル、ピンミル等の粉砕機を用いる方法が挙げられる。
【0035】
化粧料バルクの粉砕物の圧縮成型は、例えば、粉砕物を所定の容器に充填し公知の方法で行うことができる。所定の容器としては、例えば、金皿、樹脂皿などの中皿が挙げられる。これらの中皿は、粉末固型化粧料が形成された後にそのままコンパクト容器に装着することが可能である。また、コンパクト容器、ジャー容器に直接充填することも可能である。
【0036】
本実施形態の方法によれば、湿式製法で生じやすい粉体の凝集を防止することができる。
【0037】
また本発明に係る粉末固型化粧料の製造方法の別の実施形態としては、上記と同様にして得られるスラリーを容器に充填し圧縮成型した後にスラリーから揮発性溶媒を除去することにより粉末固型化粧料を得る、いわゆる湿式製法による方法が挙げられる。
【0038】
この場合、上記のスラリーを所定の容器に充填し、公知の方法で圧縮成型及び揮発性溶媒の除去を行うことができる。所定の容器としては、例えば、金皿、樹脂皿などの中皿が挙げられる。これらの中皿は、粉末固型化粧料が形成された後にそのままコンパクト容器に装着することが可能である。また、コンパクト容器、ジャー容器に直接充填することも可能である。
【0039】
上述した方法で得られる本発明に係る粉末固型化粧料は、アイシャドウ、チークカラー、ファンデーション、フェースパウダー、化粧下地、などの化粧料として好適である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1〜3、比較例1〜4)
表1に示される配合量(質量部)で、粉体成分1〜6を、油性成分7〜13と水(成分14)とを予め混合した混合物に、室温にて分散し、スラリーを調製した。なお、成分2及び6の配合量は、成分1〜13の全量が100質量部となるように調整した。また、表に示される水の混合量は、化粧料基材となる成分1〜13の全量を100質量部としたときの質量部を示す。
【0042】
上記で得られたスラリーを平皿上に広げ、温風乾燥により50〜100℃で乾燥し水を除去して粉体バルクを得た。
【0043】
次に、得られた粉体バルクを、アトマイザーで粉砕した。粉砕物を金皿に充填し、通常の乾式製法の条件で圧縮成型することにより粉末固型化粧料を作製した。
【0044】
得られた粉末固型化粧料について、下記の方法にしたがって使用性、耐衝撃性及び粉体の凝集を評価した。また、粉末固型化粧料を作製したときの作業性について、下記の方法にしたがってスラリー乾燥の作業性及び作業時間を評価した。
【0045】
[使用性]
化粧品評価専門パネル10名に粉末固型化粧料を使用してもらい、使用性として「取れ易さ(塗布体への化粧料の取れ)」、「密着感(肌への付き)」、「滑らかな使用性」の観点から使用性を評価し、各自が以下の評価基準に従って5段階の評点を付し、更に得られた各パネルの評点を平均し、この平均点と以下の判定基準とに基づいて各項目をそれぞれ4段階で判定した。
[評価基準]
評点:
5点:非常に良好
4点:良好
3点:どちらともいえない
2点:やや不良
1点:不良
[判定基準]
◎:平均点が4.5点以上
○:平均点が3.5点以上4.5点未満
△:平均点が1.5点以上3.5点未満
×:平均点が1.5点未満
【0046】
[耐衝撃性]
粉末固型化粧料を、50cmの高さから厚さ50mmの合板上に10回落下させた後、粉末固型化粧料の状態を以下の評価基準に基づいて4段階で評価した。
◎:化粧料にヒビ、欠けが全くない
○:化粧料表面に極僅かなヒビ、欠けがある
△:化粧料に部分的なヒビ、欠けがある
×:化粧料全体的にヒビ、欠けがある
【0047】
[粉体の凝集]
粉末固型化粧料の表面状態を確認し、白色ブツの有無を目視で確認した。
◎:白色ブツなし
×:白色ブツあり
【0048】
[スラリー乾燥の作業性]
調製したスラリーが完全に乾燥するまでの時間を計測し、4段階で評価した。
◎:15時間以内
○:15時間を超え、20時間以内
△:20時間を超え、30時間以内
×:30時間を超える
【0049】
[作業時間]
粉体成分と油性成分の混合物20kgのスラリー調製にかかる時間を計測し、4段階で評価した。
◎:15分以内
○:15分を超え、25分以内
△:25分を超え、35分以内
×:35分を超える
【0050】
【表1】

【0051】
表1に示すとおり、油性成分の配合量が油性成分及び粉体の合計100質量部に対し7〜15質量部、粉体の配合量が油性成分及び粉体の合計100質量部に対し85〜93質量部、及び、水の配合量が油性成分及び粉体の合計100質量部に対し60〜120質量部であるスラリーを調製して粉末固型化粧料を作製した実施例1〜3では、スラリー乾燥の作業性及び作業時間を大きく損なうことなく、使用性、耐衝撃性及び粉体の凝集のすべてに良好な結果を示す粉末固型化粧料が得られた。
【0052】
(実施例4〜11、参考例1〜4、比較例5、6)
表2又は表3に示される配合量(質量部)で、粉体成分1〜7を、油性成分8〜14と水の一部(成分15)とを予め混合した混合物に、室温にて分散し、混合物を調製した。なお、成分3及び7の配合量は、成分1〜14の全量が100質量部となるように調整した。また、表に示される水の混合量は、化粧料基材となる成分1〜14の全量を100質量部としたときの質量部を示す。
【0053】
次に、混合物に水の残部(成分16)を加えてスラリーを調製した。
【0054】
上記で得られたスラリーを平皿上に広げ、温風乾燥により50〜100℃で乾燥し水を除去して粉体バルクを得た。
【0055】
次に、得られた粉体バルクを、アトマイザーで粉砕した。粉砕物を金皿に充填し、通常の乾式製法の条件で圧縮成型することにより粉末固型化粧料を作製した。
【0056】
得られた粉末固型化粧料について、上記と同様の方法にしたがって使用性、耐衝撃性及び粉体の凝集を評価した。
【0057】
また、粉末固型化粧料を作製したときの作業性について、下記の方法にしたがってスラリー作製時の粉飛び、粉体の分散性及び作業時間を評価した。
【0058】
[スラリー作製時の粉飛び]
粉体成分と一部の水を含む油性成分の混合物20kgに残りの水を加えてスラリー調製する際の粉飛びがなくなるまでの時間を計測し、4段階で評価した。
◎:5分以内
○:5分を超え、10分以内
△:10分を超え、15分以内
×:15分を超える
【0059】
[粉体の分散性]
粉体成分と一部の水を含む油性成分をスーパーミキサーで撹拌したあとの混合物の状態を観察し、4段階にて評価した。
◎:混合物が完全に粉末状態である。
○:混合物が粉末状態であるが、一部顆粒状態のものがある。
△:混合物が全て顆粒状態である。
×:混合物が顆粒状と大きな塊が混ざった状態である。
【0060】
[作業時間]
粉体成分と油性成分の混合物20kgのスラリー調製にかかる時間を計測し、4段階で評価した。
◎:15分以内
○:15分を超え、25分以内
△:25分を超え、35分以内
×:35分を超える
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
表2及び3に示すとおり、油性成分の配合量が油性成分及び粉体の合計100質量部に対し7〜15質量部、粉体の配合量が油性成分及び粉体の合計100質量部に対し85〜93質量部、及び、水の配合量が油性成分及び粉体の合計100質量部に対し60〜120質量部であるスラリーを調製するに際し、水の配合量が粉体及び油性成分の合計配合量100質量部に対し5〜15質量部である混合物を調製する2段階スラリー調製を行った実施例4〜11では、スラリー作製時の粉飛び、粉体の分散性及び作業時間が良好となり、使用性、耐衝撃性及び粉体の凝集のすべてに良好な結果を示す粉末固型化粧料が更に作業性よく得られた。
【0064】
スラリー調製を1段で行った参考例1及び3では、スラリー作製時の粉飛びが発生しやすく、実施例4〜7に比べて作業時間に劣る結果となった。
【0065】
混合物における水の配合量が粉体及び油性成分の合計配合量100質量部に対し15質量部を超える参考例2及び4では、粉体の分散性が悪く、実施例4〜7に比べて作業時間にやや劣る結果となった。
【0066】
スラリーにおける油性成分の配合量が油性成分及び粉体の合計100質量部に対し5質量部であり、粉体の配合量が油性成分及び粉体の合計100質量部に対し95質量部である比較例5では、粉末固型化粧料の使用性及び耐衝撃性が劣る結果となり、スラリーにおける油性成分の配合量が油性成分及び粉体の合計100質量部に対し17質量部であり、粉体の配合量が油性成分及び粉体の合計100質量部に対し83質量部である比較例6では、粉末固型化粧料の使用性が劣る結果となった。
【0067】
(実施例12〜14)
表4に示される配合量(質量部)で、粉体成分1〜6を、油性成分7〜16と水の一部(成分17)とを予め混合した混合物に、室温にて分散し、混合物を調製した。なお、成分2及び6の配合量は、成分1〜16の全量が100質量部となるように調整した。また、表に示される水の混合量は、化粧料基材となる成分1〜16の全量を100質量部としたときの質量部を示す。
【0068】
次に、混合物に水の残部(成分18)を加えてスラリーを調製した。
【0069】
上記で得られたスラリーを平皿上に広げ、温風乾燥により50〜100℃で乾燥し水を除去して粉体バルクを得た。
【0070】
次に、得られた粉体バルクを、アトマイザーで粉砕した。粉砕物を金皿に充填し、通常の乾式製法の条件で圧縮成型することにより粉末固型化粧料を作製した。
【0071】
得られた粉末固型化粧料について、上記と同様の方法にしたがって使用性、耐衝撃性及び粉体の凝集を評価した。また、上記と同様の方法にしたがってスラリー作製時の粉飛び、粉体の分散性及び作業時間を評価した。
【0072】
【表4】

【0073】
(実施例15〜17、比較例7、8)
表5に示される配合量(質量部)で、粉体成分1〜5を、油性成分6〜12と水(成分13)とを予め混合した混合物に、室温にて分散し、スラリーを調製した。なお、成分2、4及び5の配合量は、成分1〜12の全量が100質量部となるように調整した。また、表に示される水の混合量は、化粧料基材となる成分1〜12の全量を100質量部としたときの質量部を示す。
【0074】
上記で得られたスラリーを、金皿に充填し、通常の湿式製法の条件で圧縮成型した後、温風乾燥により50〜100℃で乾燥し水を除去することにより粉末固型化粧料を作製した。
【0075】
得られた粉末固型化粧料について、実施例1で行った評価と同様の方法で、使用性、耐衝撃性及び粉体の凝集を評価した。また、粉末固型化粧料を作製したときの作業性について、実施例1で行った評価と同様の方法で作業時間を評価した。
【0076】
【表5】

【0077】
表5に示すとおり、油性成分の配合量が油性成分及び粉体の合計100質量部に対し7〜15質量部、粉体の配合量が油性成分及び粉体の合計100質量部に対し85〜93質量部、及び、水の配合量が油性成分及び粉体の合計100質量部に対し60〜120質量部であるスラリーを調製して粉末固型化粧料を作製した実施例15〜17では、作業時間を大きく損なうことなく、使用性、耐衝撃性及び粉体の凝集のすべてに良好な結果を示す粉末固型化粧料が得られた。
【0078】
(実施例18〜20、参考例5、6)
表6に示される配合量(質量部)で、粉体成分1〜5を、油性成分6〜12と水の一部(成分13)とを予め混合した混合物に、室温にて分散し、混合物を調製した。なお、成分2、4及び5の配合量は、成分1〜12の全量が100質量部となるように調整した。また、表に示される水の混合量は、化粧料基材となる成分1〜12の全量を100質量部としたときの質量部を示す。
【0079】
次に、混合物に水の残部(成分14)を加えてスラリーを調製した。
【0080】
上記で得られたスラリーを、金皿に充填し、通常の湿式製法の条件で圧縮成型した後、温風乾燥により50〜100℃で乾燥し水を除去することにより粉末固型化粧料を作製した。
【0081】
得られた粉末固型化粧料について、実施例1で行った評価と同様の方法で、使用性、耐衝撃性及び粉体の凝集を評価し、粉末固型化粧料を作製したときの作業性について、実施例4で行った評価と同様の方法でスラリー作製時の粉飛び、粉体の分散性及び作業時間を評価した。
【0082】
【表6】

【0083】
表6に示すとおり、2段階スラリー調製を行った実施例18〜20では、スラリー作製時の粉飛び、粉体の分散性及び作業時間が良好となり、使用性、耐衝撃性及び粉体の凝集のすべてに良好な結果を示す粉末固型化粧料が更に作業性よく得られた。
【0084】
スラリー調製を1段で行った参考例5では、スラリー作製時の粉飛びが発生しやすく、実施例18〜20に比べて作業時間に劣る結果となった。
【0085】
混合物における水の配合量が粉体及び油性成分の合計配合量100質量部に対し15質量部を超える参考例6では、粉体の分散性が悪く、実施例18〜20に比べて作業時間にやや劣る結果となった。
【0086】
(実施例21及び22)
表7に示される配合量(質量部)で、粉体成分1〜8を、油性成分9〜16と水の一部(成分17)とを予め混合した混合物に、室温にて分散し、混合物を調製した。なお、成分3、7及び8の配合量は、成分1〜16の全量が100質量部となるように調整した。また、表に示される水の混合量は、化粧料基材となる成分1〜16の全量を100質量部としたときの質量部を示す。
【0087】
次に、混合物に水の残部(成分18)を加えてスラリーを調製した。
【0088】
上記で得られたスラリーを、金皿に充填し、通常の湿式製法の条件で圧縮成型した後、温風乾燥により50〜100℃で乾燥し水を除去することにより粉末固型化粧料を作製した。
【0089】
得られた粉末固型化粧料について、実施例1で行った評価と同様の方法で、使用性、耐衝撃性及び粉体の凝集を評価し、粉末固型化粧料を作製したときの作業性について、実施例4で行った評価と同様の方法でスラリー作製時の粉飛び、粉体の分散性及び作業時間を評価した。
【0090】
表7に示すとおり、実施例21及び22では、スラリー作製時の粉飛び、粉体の分散性及び作業時間が良好となり、使用性、耐衝撃性及び粉体の凝集のすべてに良好な結果を示す粉末固型化粧料が更に作業性よく得られた。
【0091】
【表7】