特許第6281105号(P6281105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281105
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20180208BHJP
   F04B 27/18 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   F16K31/06 305L
   F04B27/18 A
   F16K31/06 385Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-84846(P2014-84846)
(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-166625(P2015-166625A)
(43)【公開日】2015年9月24日
【審査請求日】2017年1月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-24434(P2014-24434)
(32)【優先日】2014年2月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】特許業務法人インターブレイン
(74)【代理人】
【識別番号】100120536
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】山本 章彦
(72)【発明者】
【氏名】松浦 守崇
(72)【発明者】
【氏名】石部 裕三
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−263524(JP,A)
【文献】 特開2011−137495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11
F04B 25/00−37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象装置を流れる流体の流れを調整するための制御弁であって、
弁孔とガイド孔とが中間圧力室を介して軸線方向に連通するように形成され、前記中間圧力室に流体を導入するための導入ポートと、前記弁孔を通過した流体を導出するための導出ポートとが形成されたボディと、
前記弁孔に接離して弁部を開閉する弁体と、
前記弁体が一体に設けられ、前記ガイド孔に支持される作動ロッドと、
前記作動ロッドに対して前記弁部の開閉方向の駆動力を付与可能なアクチュエータと、
を備え、
前記作動ロッドにおける前記ガイド孔との摺動面に、前記対象装置の流体通路を形成する金属よりも柔らかい材質からなるコーティングが施され、
前記ガイド孔の半径と前記作動ロッドの半径との差をs、コーティング膜の厚みをtとした場合に、s/2≦t<sの関係を有することを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記コーティング膜の材質として、フッ素系樹脂が用いられることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
吸入室に導入される冷媒を圧縮して吐出室から吐出する可変容量圧縮機を前記対象装置として組み込まれ、その可変容量圧縮機の吐出容量を、前記吐出室からクランク室に導入する冷媒の流量を調整することにより変化させる制御弁として構成され、
前記ボディは、前記導入ポートとして前記吐出室に連通する吐出室連通ポートと、前記導出ポートとして前記クランク室に連通するクランク室連通ポートと、前記吸入室に連通する吸入室連通ポートとを有することを特徴とする請求項1または2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記ガイド孔の半径と前記作動ロッドの半径との差をs、コーティング膜の厚みをtとした場合に、2s/3≦t<sの関係を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御弁に関し、特に摺動部への異物の侵入による弁作動のロックを防止するための構造および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、圧縮機、凝縮器、蒸発器等を冷媒循環通路に配置して構成される。この冷媒循環通路の切り替えや冷媒流量の調整等のために、種々の制御弁が設けられている。このような制御弁として、ボディに摺動可能に支持されるシャフトを有し、そのシャフトの一端に弁体が設けられるものがある(例えば特許文献1参照)。シャフトは、ボディに一体に設けられたアクチュエータにより軸線方向に駆動され、弁体を弁部の開閉方向に作動させる。開弁時にはシャフトに向けて冷媒が導入され、その冷媒のほとんどはシャフトの外周に沿って一方向に導かれて弁孔を通過する。
【0003】
しかし、その冷媒の一部は他方向にあるシャフトとボディとの摺動部にも流入するため、それによりシャフトの円滑な摺動が妨げられる可能性がある。すなわち、このような空調装置においては、圧縮機の吐出冷媒に金属粉などの異物が含まれることがある(例えば、圧縮機のピストン周辺の摩耗等により発生することがある)。この異物が制御弁の摺動部に流入すると、その異物の噛み込みによりシャフトひいては弁体の作動をロックさせてしまう可能性がある。そこで、特許文献1に記載の構成では、シャフトとボディとの摺動部にラビリンス構造を設け、その摺動部への冷媒の流入を抑制する手法がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−287354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなラビリンス構造は、シャフトとボディとの摺動部における冷媒の流れを抑制できるものの、一旦摺動部に侵入してしまった異物の噛み込みを回避させるものではなかった。なお、このような問題は自動車用空調装置に限らず、制御弁を搭載する装置においては同様に発生しうる。
【0006】
本発明の目的は、流体に含まれる異物が摺動部へ侵入することによる弁作動のロックを防止又は抑制可能な制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、対象装置を流れる流体の流れを調整するための制御弁である。この制御弁は、弁孔とガイド孔とが中間圧力室を介して軸線方向に連通するように形成され、中間圧力室に流体を導入するための導入ポートと、弁孔を通過した流体を導出するための導出ポートとが形成されたボディと、弁孔に接離して弁部を開閉する弁体と、弁体が一体に設けられ、ガイド孔に摺動可能に支持された作動ロッドと、作動ロッドに対して弁部の開閉方向の駆動力を付与可能なアクチュエータと、を備える。作動ロッドにおけるガイド孔との摺動面に、対象装置の流体通路を形成する金属よりも柔らかい材質からなるコーティングが施される。ガイド孔の半径と作動ロッドの半径との差をs、コーティング膜の厚みをtとした場合に、s/2≦t<sの関係を有する。
【0008】
この態様によると、対象装置で発生した金属粉が流体とともに作動ロッドとガイド孔との隙間に侵入したとしても、その金属粉が柔らかいコーティング膜に食い込む態様で安定に受け止められ易くなる。そのコーティング膜がクッションとなるため、作動ロッドとガイド孔との間にその金属粉が噛み込む状況を防止又は抑制することが可能となる。その結果、弁体の作動ロックを防止又は抑制することが可能となる。
【0009】
なお、後述する実験結果から、ガイド孔の半径と作動ロッドの半径との差をs、コーティング膜の厚みをtとした場合に、2s/3≦t<sの関係を有するように構成すると、弁体の作動ロックを極めて良好に防止することができる。
【0010】
本発明の別の態様は、弁作動ロック防止方法である。この方法は、制御弁の摺動部への異物の侵入による弁作動のロックを防止するための方法であって、摺動部への侵入可能性がある異物よりも柔らかい材質からなるコーティングを、摺動部の摺動面に所定の膜厚にて施し、摺動部に侵入してきた異物をそのコーティング膜に食い込ませることにより、その異物による弁作動のロックを防止する。
【0011】
この態様によると、仮に制御弁の摺動部に異物が侵入したとしても、その異物をコーティング膜に食い込ませる形で受け止めることが可能となる。このように異物が受け止められると、コーティング膜がクッションとなり、異物がその摺動部に噛み込む状況を防止又は抑制することが可能となる。その結果、弁作動のロックを防止又は抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、流体に含まれる異物が摺動部へ侵入することによる弁作動のロックを防止又は抑制可能な制御弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
図2】弁作動ロック防止構造を表す図である。
図3】本実施形態による作用効果を例示する写真を示す図である。
図4】異物による作動ロックの有無を検証した実験結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
【0015】
図1は、実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
制御弁1は、自動車用空調装置の冷凍サイクルに設置される図示しない可変容量圧縮機(単に「圧縮機」という)を制御する制御弁として構成されている。この圧縮機は、冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する。そのガス冷媒は凝縮器(外部熱交換器)にて凝縮され、さらに膨張装置により断熱膨張されて低温・低圧の霧状の冷媒となる。この低温・低圧の冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内空気を冷却する。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻されて冷凍サイクルを循環する。
【0016】
圧縮機は、圧縮用のピストンが連結された揺動板を備え、その揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより冷媒の吐出量を調整する。制御弁1は、その圧縮機の吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御することで揺動板の角度を変化させる。冷媒には例えば代替フロン(HFC−134a)が使用されるが、他の冷媒(HFO−1234yf等)を使用してもよい。あるいは、二酸化炭素のように作動圧力が高い冷媒を用いてもよい。その場合には、冷凍サイクルに凝縮器に代わってガスクーラなどの外部熱交換器を配置してよい。
【0017】
制御弁1は、圧縮機の吐出室とクランク室とを連通させる冷媒通路に弁部を有し、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御する電磁弁として構成されている。制御弁1は、圧縮機の吸入圧力Psを設定圧力に保つように、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御するいわゆるPs感知弁として構成されている。
【0018】
制御弁1は、弁本体2とソレノイド3とを一体に組み付けて構成される。弁本体2は、圧縮機の運転時に吐出冷媒の一部をクランク室へ導入するための冷媒通路を開閉する主弁と、圧縮機の起動時にクランク室の冷媒を吸入室へ逃がすいわゆるブリード弁として機能する副弁とを含む。ソレノイド3は、主弁を開閉方向に駆動してその開度を調整し、クランク室へ導入する冷媒流量を制御する。弁本体2は、段付円筒状のボディ5、ボディ5内に設けられた主弁および副弁を備えている。
【0019】
ボディ5は、本実施形態では真鍮からなるが、アルミニウム合金からなるものとしてもよい。ボディ5の上端開口部にはポート12が設けられ、側部にはポート14が設けられている。ボディ5の下端開口部は、後述する接続部材47との間に設けられたポート16に連通する。ポート12はクランク室に連通する「クランク室連通ポート」として機能し、ポート14は吐出室に連通する「吐出室連通ポート」として機能し、ポート16は吸入室に連通する「吸入室連通ポート」として機能する。ボディ5内には、ポート12とポート14とを連通させる主通路と、ポート12とポート16とを連通させる副通路とが形成されている。主通路には主弁が設けられ、副通路には副弁が設けられている。主通路を構成するボディ5の一部には弁孔18(主弁孔)が設けられ、その上端開口部に弁座20(主弁座)が形成されている。
【0020】
ポート14は、吐出室から吐出圧力Pdの冷媒を導入する「導入ポート」として機能する。ポート12は、圧縮機の定常動作時に主弁を経由したクランク圧力Pcの冷媒をクランク室へ向けて導出する「導出ポート」として機能し、圧縮機の起動時にはクランク室から排出されたクランク圧力Pcの冷媒を導入する「導入ポート」として機能する。このとき導入された冷媒は、副弁に導かれる。ポート16は、圧縮機の定常動作時に吸入圧力Psの冷媒を導入する「導入ポート」として機能し、圧縮機の起動時には副弁を経由した吸入圧力Psの冷媒を吸入室へ向けて導出する「導出ポート」として機能する。
【0021】
弁孔18のポート12とは反対側には中間圧力室24が形成される。中間圧力室24は、ポート14と半径方向に連通している。中間圧力室24の弁孔18とは反対側には、弁孔18と同軸状にガイド孔26が形成されている。ガイド孔26の中間圧力室24とは反対側には作動室28が形成され、ポート16と連通している。
【0022】
ポート14には環状のストレーナ15が取り付けられている。ストレーナ15は、ボディ5の内部への異物の侵入を抑制するためのフィルタを含む。一方、ポート12には有底円筒状のストレーナ13が取り付けられている。ストレーナ13は、ボディ5の内部への異物の侵入を抑制するためのフィルタを含む。
【0023】
ボディ5の軸線に沿って、弁孔18とガイド孔26とが同軸状に設けられている。そして、その弁孔18およびガイド孔26を軸線方向に貫通するように長尺状の作動ロッド50が配設されている。作動ロッド50はステンレス鋼からなる。
【0024】
作動ロッド50は、段付円柱状をなし、ガイド孔26に摺動可能に支持され、その上端部が縮径して弁孔18を貫通し、その先端部に弁体33(主弁体)が一体に設けられている。すなわち、作動ロッド50は、縮径部51を介して弁体33と連設されている。弁体33は、ポート12側から弁座20に着脱して主弁(弁部)を開閉する。作動ロッド50には、軸線方向に貫通する内部通路35が設けられている。作動ロッド50の下端部が弁体38(副弁体)を形成している。作動ロッド50の摺動面には、冷媒の流通を抑制するための複数の環状溝からなるラビリンスシール84が設けられている。
【0025】
ボディ5の上端開口部にはばね受け34が螺着されており、そのばね受け34と作動ロッド50との間には、弁体33を主弁の閉弁方向に付勢するスプリング37(「付勢部材」として機能する)が介装されている。スプリング37の荷重は、ばね受け34のボディ5への螺入量を変化させることにより調整することができる。
【0026】
弁本体2とソレノイド3とは、磁性材料からなる筒状の接続部材47を介して接続されている。すなわち、ボディ5の下端部が接続部材47の上端部に圧入され、ソレノイド3のケース52の上端部に接続部材47の下端部が圧入されている。そして、ボディ5の下端側部にポート16が設けられ、弁本体2とソレノイド3とに囲まれる空間に作動室28が形成されている。
【0027】
一方、ソレノイド3は、ヨークとしても機能する円筒状のケース52と、ケース52内に挿通された円筒状のスリーブ44と、スリーブ44の下端部に固定された段付円筒状のコア42と、コア42と軸線方向に対向配置されたプランジャ46と、コア42およびスリーブ44に外挿された円筒状のボビン48と、ボビン48に巻回され、通電により磁気回路を生成する電磁コイル53と、ケース52の下端開口部を封止するように設けられた端部材54とを備える。なお、本実施形態においては、ボディ5、接続部材47、ケース52および端部材54が制御弁1全体のボディを形成している。
【0028】
プランジャ46は、薄膜状のダイヤフラム65を挟んで分割された2つのプランジャからなり、その一方である第1プランジャ66がスリーブ44の内部に配置され、他方の第2プランジャ68がボディ5と接続部材47とにより囲まれる空間に配置されている。ダイヤフラム65は、スリーブ44の上端開口部を封止し、スリーブ44の内方に基準圧力室を形成する。本実施形態において、この基準圧力室には大気が満たされるが、真空状態としてもよい。ダイヤフラム65は、可撓性を有する感圧部材であり、ポリイミドフィルムを複数枚重ねて構成されている。ダイヤフラム65は、基準圧力室とは反対側面にて吸入圧力Psを感知し、その外周縁部を支点として変位することにより、プランジャ46に対して開弁方向または閉弁方向の駆動力を付与する。なお、変形例においては、ダイヤフラム65として金属ダイヤフラムを採用してもよい。
【0029】
第2プランジャ68の上面中央には凹部70が形成され、その中央のフラットな面に作動ロッド50の下端面が接離可能に支持されている。すなわち、第2プランジャ68の上面中央が弁座36(副弁座)を形成しており、弁体38が弁座36に着脱して副弁を開閉する。第2プランジャ68の側部には、凹部70の内外を連通させる連通孔21が設けられている。
【0030】
また、第2プランジャ68の上端部には、半径方向外向きに延びるフランジ部22が設けられており、そのフランジ部22の下面を接続部材47の上面と対応させるようにしている。これにより、ソレノイド3の通電時にフランジ部22と接続部材47との間に軸線方向の吸引力を発生させ、弁体38が閉弁方向に迅速に移動できるようにしている。第2プランジャ68は、接続部材47内に形成された段差部との間に介装されたスプリング74(「付勢部材」に該当する)によって上方へ付勢されている。このスプリング74は、弁体38を付勢するスプリング37よりも大きな荷重を有する。
【0031】
接続部材47の下端面には、シール用のOリング80が介装されている。スリーブ44の上端開口部には、半径方向外向きに延出するフランジ部25が設けられている。そして、フランジ部25と接続部材47との間にダイヤフラム65の外周縁部およびOリング80を挟むようにしてダイヤフラム65を固定している。接続部材47の下端部には環状のプレート78が圧入され、フランジ部25を下方から支持している。すなわち、スリーブ44は、プレート78の圧入により接続部材47ひいてはボディ5に対して固定されている。
【0032】
スリーブ44とコア42とは、圧入および加締めにより軸線方向に接合されている。スリーブ44の内方には、第1プランジャ66が軸線方向に進退自在に配置されている。第1プランジャ66には、コア42の中心を軸線方向に延びるシャフト58の一端が圧入されている。シャフト58は、その一端部の軸線方向位置が第1プランジャ66におけるスリーブ44との摺動部67の軸線方向位置と重なるように位置決めされている。
【0033】
シャフト58の他端は、コア42の下端部に螺合された軸受部材90によって支持されている。シャフト58の途中には止輪92が嵌合され、その止輪92によって上方への移動が規制されるようにばね受け94が設けられている。ばね受け94と軸受部材90との間には、第1プランジャ66をシャフト58を介してコア42から離れる方向へ付勢するスプリング75が介装されている。このスプリング75の荷重は、軸受部材90のコア42への螺入量を変えることによって調整することができる。
【0034】
以上の構成において、弁体33と弁座20とにより主弁が構成され、その主弁の開度によって吐出室からクランク室へ導入される冷媒流量が調整される。また、弁体38と弁座36とにより副弁が構成され、その副弁の開閉によりクランク室から吸入室への冷媒の導出が許容または遮断される。すなわち、制御弁1は、主弁と副弁のいずれか一方を開弁させることにより冷媒の流れを切り替える三方弁としても機能する。
【0035】
本実施形態においては、作動ロッド50の主弁における有効受圧径A(シール部径)、作動ロッド50の摺動部における有効受圧径B(シール部径)、作動ロッド50の副弁における有効受圧径C(シール部径)が等しく設定されている。このため、作動ロッド50とプランジャ46とが作動連結した状態においては、弁体33に作用する吐出圧力Pdおよびクランク圧力Pcの影響がキャンセルされる。ダイヤフラム65は、その有効受圧面積に吸入圧力Psのみを受けることになる。その結果、主弁の制御状態において、弁体33は、作動室28にて受ける吸入圧力Psに基づいて開閉動作することになる。つまり、制御弁1は、いわゆるPs感知弁として機能する。
【0036】
次に、制御弁1の動作について説明する。
制御弁1において、ソレノイド3が非通電のときには、コア42とプランジャ46との間に吸引力が作用しない。また、吸入圧力Psが高いため、ダイヤフラム65に当接した第1プランジャ66は、スプリング75の荷重に抗して下方へ変位する。一方、第2プランジャ68は、スプリング74によって第1プランジャ66から離れるよう上方へ付勢されているため、作動ロッド50を介して弁体33をその全開位置に付勢する。このとき、作動ロッド50と第2プランジャ68との当接状態、つまり副弁の閉弁状態は維持される。圧縮機の吐出室からポート14に導入された吐出圧力Pdの冷媒は、全開状態の弁部を通過し、ポート12からクランク室へと流れることになる。したがって、クランク圧力Pcが上昇し、圧縮機は最小容量運転を行う。
【0037】
一方、自動車用空調装置が起動されたときのように、ソレノイド3に制御電流が供給されると、第1プランジャ66がダイヤフラム65を介してスプリング74の付勢力に抗して第2プランジャ68を吸引する。このため、第2プランジャ68がダイヤフラム65に当接して下方へ移動し、これに伴って、弁体33がスプリング37により押し下げられて弁座20に着座し、主弁が閉弁状態となる。このとき、作動ロッド50が、第2プランジャ68から離間した状態となる。すなわち、副弁が開弁してブリード機能が発揮される。
【0038】
こうして吸入室の吸入圧力Psが十分に低くなると、ダイヤフラム65がその吸入圧力Psを感知して上方へ変位し、第2プランジャ68が作動ロッド50に当接する。このとき、ソレノイド3に供給される制御電流を空調の設定温度に応じて小さくすると、第2プランジャ68および第1プランジャ66は吸着状態のまま一体となって、吸入圧力Psによる力と、スプリング37,74,75の合力と、ソレノイド3の吸引力とがバランスする位置まで上方へ移動する。これにより、弁体33が第2プランジャ68により押し上げられ、弁座20から離れて所定の開度に設定される。したがって、吐出圧力Pdの冷媒が開度に応じた流量に制御されてクランク室に導入され、圧縮機は、制御電流に対応した容量の運転に移行するようになる。
【0039】
ソレノイド3の電磁コイル53に供給される制御電流が一定の場合、ダイヤフラム65が吸入圧力Psを感知して弁開度を制御する。例えば冷凍負荷が大きくなって吸入圧力Psが高くなった場合には、弁体38が作動ロッド50,第2プランジャ68,ダイヤフラム65及び第1プランジャ66と一体となって下方へ変位するので、弁開度が小さくなり、圧縮機は、吐出容量を増やすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが低下して設定圧力に近づくようになる。逆に、冷凍負荷が小さくなって吸入圧力Psが低くなった場合は、弁体38が上方へ変位して弁開度を大きくするので、圧縮機は、吐出容量を減らすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが上昇して設定圧力に近づくようになる。このようにして、制御弁1は、吸入圧力Psがソレノイド3によって設定された設定圧力Psetになるよう圧縮機の吐出容量を制御する。
【0040】
次に、弁作動のロックを防止するための構造および方法について説明する。
図2は、弁作動ロック防止構造を表す図である。(A)は図1のD部拡大図を示している。(B)および(C)は(A)のB部拡大図を模式的に示している。(B)は作動ロッド50がガイド孔26と同心状にある状態を示し、(C)は作動ロッド50がガイド孔26の片側に当接するまで寄せられた状態を示している。
【0041】
図2(A)に太線にて示すように、作動ロッド50の外周面には、フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン:PTFE)による所定厚みのコーティングが施されている。本実施形態では、それによるコーティング膜100が作動ロッド50におけるガイド孔26との摺動面全体に形成されている。このコーティング膜100は、空調装置(対象装置)の冷媒通路を形成する金属(冷媒通路において摺動部を形成する金属など)よりも柔らかい材質からなる。
【0042】
本実施形態では、圧縮機の吐出冷媒に金属粉が含まれ、仮に作動ロッド50とガイド孔26との隙間にその金属粉が侵入したとしても、これを金属よりも柔らかいコーティング膜100に食い込ませて受け止めさせる。そして、そのコーティング膜100のクッション性を利用し、金属粉が摺動部に噛み込んで作動ロッド50ひいては弁体33の作動をロックすることを防止する。本実施形態では、コーティング膜100に受け止められた金属粉が容易に脱落しないよう、コーティング膜100の膜厚を、侵入が想定される金属粉の最大径(最大幅)の半分以上となるように設定する。
【0043】
これは以下の考えに基づく。すなわち図2(B)に示すように、ガイド孔26の半径をR、作動ロッド50の半径をr、半径Rと半径rとの差をs、コーティング膜100の膜厚をt、作動ロッド50とガイド孔26との隙間への侵入が想定される異物W(金属粉)の最大径(最大幅)をDmaxとする。ここで、最大径Dmaxは、図2(C)に示すように、作動ロッド50がガイド孔26の片側に寄せられたときの反対側の隙間の大きさに相当する。このため、下記式(1)が成立する。
Dmax=2(s−t) ・・・(1)
ここで、コーティング膜100の膜厚tを、侵入が想定される異物Wの最大径(最大幅)の半分以上とするために、下記式(2)を満たすようにする。
t≧Dmax/2 ・・・(2)
ただし、作動ロッド50のコーティング後の外径がガイド孔26の内径よりも小さくなる必要があるため、下記式(3)を満たす必要がある。
2(r+t)<2R ・・・(3)
上記式(1)〜(3)を解き、R−r=sを代入すると、下記式(4)が成立する。 s/2≦t<s ・・・(4)
上記式(4)の関係を有するようにコーティング膜100の膜厚tを設定することにより、異物Wの侵入による作動ロックを防止又は抑制することが可能となる。すなわち、このような膜厚tに設定すると、仮に作動ロッド50とガイド孔26との隙間に異物Wが侵入したとしても、これをコーティング膜100に十分に食い込ませて保持することが可能となる。十分に食い込んだ異物Wは、そのコーティング膜100から脱落する可能性も低い。コーティング膜100が異物W(金属粉)よりも柔らかいため、金属間のような圧接力が作用し難く、その異物Wの噛み込みによる摺動部のロックも生じ難い。すなわち、本実施形態によれば、作動ロッド50ひいては弁体33の作動ロックを防止又は抑制することが可能となる。
【0044】
図3は、本実施形態による作用効果を例示する写真を示す。(A)は作動ロッド50の上部を示す。図中一点鎖線にて囲まれる箇所に異物W(金属粉)が受け止められた様子が示されている。(B)は(A)の異物W近傍を拡大したものであり、(C)は(B)における異物W近傍をさらに拡大したものである。
【0045】
上述のように作動ロッド50にコーティング膜100を形成して得られた制御弁1を圧縮機に設置して冷凍サイクルを運転したところ、図示の結果が得られた。すなわち、異物Wがコーティング膜100に食い込むようにして受け止められる例が確認できた。また、それにより異物Wの噛み込みによるロックが生じないことも確認できた。
【0046】
図4は、異物による作動ロックの有無を検証した実験結果を表す図である。横軸はガイド孔26とコーティング膜100との径方向のクリアランスの合計値:2(s−t)(μm)を示し、縦軸はコーティング膜100の膜厚t(μm)を示す。図中の「○」はロックの発生なしを示し、「×」はロックの発生ありを示す。
【0047】
この実験は、自動車用空調装置を模した試験装置の流体循環路に制御弁1を設置し、その流体循環路に人為的に異物を流すことにより行った。具体的には、異物として標準的な粒径が20〜40μmの金属粉(アルミナ:Al)を用意し、その28mg分を冷媒循環路に投入した。吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの関係が定常運転時と近似した関係となるよう試験装置を運転する一方、制御弁1について所定の駆動制御を行った。すなわち、ソレノイド3に対し、制御上とり得る電流値範囲(最小容量運転の電流値から最大容量運転の電流値までの範囲)の2点で供給電流値を切り替えるサイクル(第1電流値にて20秒の通電の後に第2電流値にて20秒の通電を行うサイクル)を100サイクル行い、その通電切り替えにより作動ロッド50を繰り返し作動させた。そして、その100サイクルの間に作動ロックが発生するか否かを検証した。
【0048】
この実験結果より、t≧s−tとなる範囲(一点鎖線を境界とする範囲)においては作動ロックがほとんど発生せず、t≧2(s−t)の範囲(二点鎖線を境界とする範囲)においては作動ロックが全く発生しなかった。前者の範囲はt≧2/sとなり、上記式(4)と一致する。後者の範囲からはt≧2s/3が導き出される。したがって、下記式(5)の範囲が極めて良好な結果が得られることが分かった。
2s/3≦t<s ・・・(5)
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0050】
上記実施形態では、作動ロッドとして中空構造のものを例示した。変形例においては、作動ロッドを中実構造としてもよい。例えば、ブリード機能とは無関係の中実のシャフトを作動ロッドとして、その外周面(摺動面)にコーティングを施すようにしてもよい。ブリード機能を有しない制御弁に対して上記弁作動ロック防止構造を適用してもよい。
【0051】
上記実施形態では、コーティング膜100の材質としてフッ素樹脂を例示したが、例えばセラミックス、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、エポキシ樹脂等の材質を採用することもできる。あるいは、フッ素樹脂に二硫化モリブデンを混合して得られる固体潤滑剤やその他の固体潤滑剤をコーティングしてもよい。
【0052】
上記実施形態では、ソレノイドをアクチュエータとする電磁弁に弁作動ロック防止構造を適用する例を示した。変形例においては、ステッピングモータ等の電動機をアクチュエータとする制御弁に対して同様の弁作動ロック防止構造を適用してもよい。また、上記実施形態では、可変容量圧縮機用制御弁に弁作動ロック防止構造を適用する例を示した。変形例においては、冷凍サイクルに設けられる他の制御弁に適用してもよい。あるいは、冷凍サイクルに限らず、流体の流れを制御する他の制御弁に適用してもよい。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 制御弁、 2 弁本体、 3 ソレノイド、 5 ボディ、 12,14,16 ポート、 18 弁孔、 20 弁座、 24 中間圧力室、 26 ガイド孔、 28 作動室、 33 弁体、 36 弁座、 38 弁体、 50 作動ロッド、 65 ダイヤフラム、 100 コーティング膜。
図1
図2
図3
図4