(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281127
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】パチンコ機
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20180208BHJP
【FI】
A63F7/02 312Z
A63F7/02 316B
A63F7/02 310C
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-16156(P2016-16156)
(22)【出願日】2016年1月29日
(62)【分割の表示】特願2012-15552(P2012-15552)の分割
【原出願日】2012年1月27日
(65)【公開番号】特開2016-83491(P2016-83491A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2016年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241234
【氏名又は名称】豊丸産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩之
【審査官】
清水 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−191990(JP,A)
【文献】
特開2009−160028(JP,A)
【文献】
特開2007−14643(JP,A)
【文献】
特開2010−119425(JP,A)
【文献】
特開2005−312750(JP,A)
【文献】
特開2012−10838(JP,A)
【文献】
特開2011−83373(JP,A)
【文献】
特開2011−182821(JP,A)
【文献】
特開2008−136768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技盤の前面に遊技球が流下可能な遊技領域が形成されているとともに、遊技球が入賞可能な入賞口を有する始動部材、起立姿勢と傾倒姿勢との間で動作可能な一対の翼片を有し、所定条件が成立すると前記翼片が前記起立姿勢から前記傾倒姿勢となるチューリップ式電動役物、図柄を表示可能な図柄表示部、及び開閉可能な扉部材を有する大入賞装置が設けられており、
前記始動部材又は前記翼片が前記傾倒姿勢にある前記チューリップ式電動役物へ遊技球が入賞すると、前記図柄表示部において図柄が所定時間にわたり変動した後で確定表示され、当該確定表示が所定の大当たり図柄であると、前記大入賞装置を所定回数にわたり断続的に開成させる大当たり状態を生起するパチンコ機であって、
前記図柄表示部の下方に、前記始動部材及び前記チューリップ式電動役物が、前記始動部材が前記チューリップ式電動役物よりも上方に位置するように設けられているとともに、
前記始動部材に、下方へ突出しており、その先端が前記起立姿勢にある前記翼片間に位置して、前記翼片が前記起立姿勢にある前記チューリップ式電動役物への遊技球の入賞を阻止する阻止部が設けられている一方、
前記大入賞装置と、遊技球の通過を検知可能であり、遊技球の通過検知にもとづいて前記所定条件が成立するか否かが判断される検知部材とが、前記始動部材及び前記チューリップ式電動役物よりも右方に設けられており、遊技球を前記図柄表示部の左側を流下させることによって、遊技球を前記始動部材へ入賞させる一方、遊技球を前記図柄表示部の右側を流下させることによって、遊技球を前記大入賞装置へ入賞させたり前記検知部材で検知させるようにし、
さらに、前記大入賞装置の左側に隣接した位置で、且つ、前記大入賞装置と前記始動部材及び前記チューリップ式電動役物との間となる位置に、前記大入賞装置に入賞しなかった遊技球を下方へ導く流下路を有する誘導部材が設けられているとともに、前記始動部材の前記入賞口が、前記流下路の下端よりも上方に位置していることを特徴とするパチンコ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技領域へ遊技球を打ち込んで流下させて遊技するパチンコ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、遊技球の入賞を契機として図柄表示部での図柄が変動を開始する始動部材と、一対の翼片を開閉動作可能に備えており、こちらも遊技球の入賞を契機として図柄表示部での図柄が変動を開始するチューリップ式電動役物とを備えたパチンコ機が一般的に知られている(たとえば特許文献1)。また、特許文献1に開示されているパチンコ機もそうであるように、始動部材とチューリップ式電動役物とは上下に連設されることが多い。さらに、一般的なチューリップ式電動役物では、翼片が起立姿勢にある閉状態にあっても翼片と翼片との間から遊技球が入賞可能となっている。
【0003】
しかしながら、翼片が傾倒姿勢となる開状態とならない限り、すなわちチューリップ式電動役物が閉状態にある時には、遊技球のチューリップ式電動役物への入賞を阻止したいことも考えられる。このような場合、従来では、始動部材とチューリップ式電動役物との間のスペースや起立している翼片と翼片との間等に複数の遊技釘を植設することで、閉状態にあるチューリップ式電動役物への遊技球の入賞の阻止を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−172659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の構成では、遊技釘が狭いスペースへ植設されることになるため、始動部材やチューリップ式電動役物の設置後に遊技釘を植設しようとすると、遊技釘を打ち込むための器具や遊技釘そのものにより始動部材等が破損するおそれがあるという問題がある。一方、遊技釘を植設した後で始動部材やチューリップ式電動役物を設置するとなると、遊技釘が邪魔となって始動部材等の設置が煩わしくなるという問題がある。さらに、上述したような位置に遊技釘を植設するとなると、どうしてもチューリップ式電動役物の上方のスペースが狭くなってしまい、小さくて意匠性にかける始動部材しか設置することができないという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、遊技釘を植設することなくチューリップ式電動役物への遊技球の入賞を阻止することができるパチンコ機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、遊技盤の前面に遊技球が流下可能な遊技領域が形成されているとともに、遊技球が入賞可能な入賞口を有する始動部材、起立姿勢と傾倒姿勢との間で動作可能な一対の翼片を有し、所定条件が成立すると前記翼片が前記起立姿勢から前記傾倒姿勢となるチューリップ式電動役物、図柄を表示可能な図柄表示部、及び開閉可能な扉部材を有する大入賞装置が設けられており、前記始動部材又は前記翼片が前記傾倒姿勢にある前記チューリップ式電動役物へ遊技球が入賞すると、前記図柄表示部において図柄が所定時間にわたり変動した後で確定表示され、当該確定表示が所定の大当たり図柄であると、前記大入賞装置を所定回数にわたり断続的に開成させる大当たり状態を生起するパチンコ機であって、前記図柄表示部の下方に、前記始動部材及び前記チューリップ式電動役物が、前記始動部材が前記チューリップ式電動役物よりも上方に位置するように設けられているとともに、前記始動部材に、下方へ突出しており、その先端が前記起立姿勢にある前記翼片間に位置して、前記翼片が前記起立姿勢にある前記チューリップ式電動役物への遊技球の入賞を阻止する阻止部が設けられている一方、前記大入賞装置と、遊技球の通過を検知可能であり、遊技球の通過検知にもとづいて前記所定条件が成立するか否かが判断される検知部材とが、前記始動部材及び前記チューリップ式電動役物よりも右方に設けられており、遊技球を前記図柄表示部の左側を流下させることによって、遊技球を前記始動部材へ入賞させる一方、遊技球を前記図柄表示部の右側を流下させることによって、遊技球を前記大入賞装置へ入賞させたり前記検知部材で検知させるようにし、さらに、前記大入賞装置
の左側に隣接し
た位置で、且つ、前記大入賞装置と前記始動部材及び前記チューリップ式電動役物との間となる位置に、前記大入賞装置に入賞しなかった遊技球を下方へ導く
流下路を有する誘導部材が設けられているとともに、前記始動部材の前記入賞口が、前記
流下路の下端よりも上方に位置していることを特徴とする。
【0008】
なお、遊技盤の前面に遊技球が流下可能な遊技領域が形成されているとともに、前記遊技領域内に、遊技球が入賞可能な入賞口を有する始動部材、起立姿勢と傾倒姿勢との間で動作可能な一対の翼片を有し、所定条件が成立すると前記翼片が起立姿勢にある閉状態から前記翼片が傾倒姿勢となる開状態となるチューリップ式電動役物、図柄を表示可能な図柄表示部、及び開閉可能な扉部材を有する大入賞装置が設けられており、前記始動部材又は前記開状態にある前記チューリップ式電動役物へ遊技球が入賞すると、前記図柄表示部において図柄が所定時間にわたり変動した後で確定表示され、当該確定表示が所定の大当たり図柄であると、前記大入賞装置を所定回数にわたり断続的に開成させる大当たり状態を生起するパチンコ機において、前記始動部材を前記チューリップ式電動役物よりも上方に設けるとともに、前記始動部材に、下方へ突出しており、その先端が前記起立姿勢にある前記翼片間に位置して前記閉状態にある前記チューリップ式電動役物への遊技球の入賞を阻止する阻止部を設けるという第1の構成を採用してもよい。
【0009】
また、上記第1の構成を採用したものにおいて、前記図柄表示部の下方に前記始動部材及び前記チューリップ式電動役物を設けるとともに、前記大入賞装置を前記始動部材及び前記チューリップ式電動役物よりも右方に設けており、遊技球を前記図柄表示部の左側を流下させて前記始動部材へ入賞させる一方、遊技球を前記図柄表示部の右側を流下させて前記大入賞装置へ入賞させるパチンコ機とし、前記大入賞装置に隣接して、前記大入賞装置に入賞しなかった遊技球を下方へ導く誘導部材を設けるとともに、前記始動部材の前記入賞口を、前記誘導部材の下端よりも上方に位置させるといった第2の構成を採用してもよい。
そして、そのような第2の構成を採用することで、所謂右打ちタイプのパチンコ機において、大入賞装置への入賞を狙った遊技球が始動部材へ入賞してしまう事態を防止したい際に、簡易な構成で当該防止を実現することができるといった効果を奏することができる。
【0010】
さらに、上記第1の構成や第2の構成を採用したものにおいて、前記始動部材の側面に、下方へ向かって徐々に外へ張り出す滑らかな円弧面であって、前記遊技領域内を流下してきた遊技球が衝突した際に、その流下速度を減速させるための緩衝面を設けるといった第3の構成を採用してもよい。
そして、そのような第3の構成を採用することで、特に始動部材の下方にあるチューリップ式電動役物側へと流下する遊技球の減速を期待することができる。したがって、遊技球が衝突したことによりチューリップ式電動役物の翼片が破損してしまう事態を低減することができるし、遊技球が傾倒姿勢にある翼片に衝突した際に弾かれにくく、開状態にあるチューリップ式電動役物へ遊技球が入賞しやすくなるといった効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、始動部材をチューリップ式電動役物よりも上方に設けるとともに、始動部材に、下方へ突出しており、その先端が起立姿勢にある翼片間に位置してチューリップ式電動役物への遊技球の入賞を阻止する阻止部を設けている。したがって、従来の如くチューリップ式電動役物の上方に、遊技球の入賞を阻止するためだけの遊技釘を植設する必要がなく、始動部材やチューリップ式電動役物の設置が容易となるし、それらの部材が遊技釘の植設時に破損してしまうようなおそれもない。また、始動部材とチューリップ式電動役物との間に遊技釘を植設するためのスペースを確保する必要がないため、従来よりも大型の始動部材を設置することができ、意匠性の向上を図ることもできる。
また、図柄表示部の下方に、始動部材及びチューリップ式電動役物を設ける一方、大入賞装置と、遊技球の通過を検知可能であり、遊技球の通過検知にもとづいて所定条件が成立するか否かが判断される検知部材とを、始動部材及びチューリップ式電動役物よりも右方に設け、遊技球を図柄表示部の左側を流下させることによって、遊技球を始動部材へ入賞させる一方、遊技球を図柄表示部の右側を流下させることによって、遊技球を大入賞装置へ入賞させたり検知部材で検知させるようにしている。さらに、大入賞装置
の左側に隣接し
た位置で、且つ、大入賞装置と始動部材及びチューリップ式電動役物との間となる位置に、大入賞装置に入賞しなかった遊技球を下方へ導く
流下路を有する誘導部材を設けるとともに、始動部材の入賞口を、
流下路の下端よりも上方に位置させている。したがって、所謂右打ちタイプのパチンコ機において、大入賞装置への入賞を狙った遊技球が始動部材へ入賞してしまう事態を防止したい際に、簡易な構成で当該防止を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】パチンコ機を前面側から示した説明図である。
【
図3】パチンコ機を後面側から示した説明図である。
【
図4】遊技盤の始動部材の周辺部を拡大して示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態となるパチンコ機について、図面にもとづき詳細に説明する。
【0014】
(パチンコ機の全体的な説明)
図1は、パチンコ機1を前面側から示した説明図である。また、
図2は、遊技盤2を前面側から示した説明図である。さらに、
図3は、パチンコ機1を後面側から示した説明図である。
パチンコ機1は、遊技盤2の前面に形成された遊技領域16内へ遊技球を打ち込み、遊技領域16内を流下させて遊技するものであって、遊技盤2は、支持体として機能する機枠3の前面上部に、金属製のフレーム部材であるミドル枠5を介して設置されている。また、遊技盤2の前方には、ガラス板を嵌め込み設置してなる前扉4が、左端縁を軸として片開き可能に機枠3に蝶着されており、該前扉4によって閉塞される遊技盤2の前方空間が遊技領域16とされている。
【0015】
当該遊技領域16は、遊技盤2の前面に円弧状に配設された外レール23及び内レール24等によって囲まれており、遊技領域16に左部における両レール23、24間が遊技球を遊技領域16内へ打ち込むための発射通路13とされている。また、遊技領域16の略中央には、「0」〜「9」の数字や絵柄等からなる図柄を表示するための図柄表示部6を有する電動役物31と、該電動役物31を囲むように配設された種々の報知部材30、30・・とを有するセンター部材26が設置されている。さらに、遊技領域16におけるセンター部材26の下方(すなわち、図柄表示部6の下方)には、遊技球が入賞可能な入賞口(図示せず)を有する始動部材19と、一対の翼片17a、17aを開閉動作可能に備えたチューリップ式電動役物17とが上下に並設されている。また、センター部材26の下方で、始動部材19及びチューリップ式電動役物17の右方には、開閉可能な扉部材を有する大入賞装置18が設置されている。加えて、センター部材26の右側縁部には、遊技球が通過可能な遊技球通路(図示せず)が設けられている。該遊技球通路の上流端は、センター部材26の上面に開口して遊技球を遊技球通路内へ進入させるための進入口となっている一方、下流端は大入賞装置18の上方に開口して遊技球を遊技球通路内から排出するための排出口となっている。そして、遊技球通路内にはセンサが設けられており、遊技球の遊技球通路内の通過を検出可能となっている。
【0016】
また、機枠3の前面側であって上記遊技盤2の下方には、遊技球を発射装置10へ供給するための供給皿7、及び供給皿7から溢れた遊技球を貯留するための貯留皿8が取り付けられており、供給皿7は前扉4の開放に伴い、貯留皿8はミドル枠5の開放に伴い夫々機枠3に対して片開き可能となっている。さらに、貯留皿8の右側には、発射装置10を作動させるためのハンドル9が回動操作可能に設置されている。加えて、供給皿7の前方には、遊技者が任意に押し込み操作可能な押しボタン25が設けられている。
さらに、前扉4の上部には、効果音や各種メッセージ等を報音する一対のスピーカ14、14が設けられており、前扉4の側部には、パチンコ機1の遊技状態等に応じて点灯・点滅する複数のLEDを備えたランプ部材15、15が設けられている。
【0017】
一方、機枠3の後面側には、供給皿7へ貸球や賞品球として払い出される遊技球を貯留するための貯留タンク11、当該貯留タンク11と連結された払出装置12、払出装置12における払い出し動作を制御する払出制御装置28、及び各制御基板や装置・部材に電源電圧を供給するための電源装置29等が設置されている。また、21は、合成樹脂製のカバー状に形成されたセンターカバーであって、当該センターカバー21の内部には、遊技に係る主たる制御(たとえば、所謂「大当たり抽選」等)を実行するためのメイン制御装置(図示せず)、図柄表示部6における表示動作等を制御する表示制御装置(図示せず)、ランプ部材15や報知部材30の点灯/点滅動作等を制御する発光制御装置(図示せず)、スピーカ14からの報音動作を制御する音制御装置(図示せず)、及び表示制御装置や音制御装置等の動作を統合的に制御するとともに、電動役物31の動作を制御するサブ制御装置(図示せず)等が設置されている。尚、22は、パチンコ機1をトランスに接続するためのプラグであり、27は、アースである。
【0018】
以上のようなパチンコ機1では、遊技者によってハンドル9が回動操作されると、発射装置10が作動して遊技球が遊技領域16内へ打ち込まれる。そして、遊技領域16内であって、センター部材26の左側(すなわち、図柄表示部6の左側)を流下する遊技球が始動部材19へ入賞すると、メイン制御装置にて「大当たり抽選」を行う。該「大当たり抽選」は、乱数から1つの数値を取得する態様で行われ、取得した数値に応じて、「大当たり」であるか「外れ」であるかを決定するとともに、図柄の変動時間を決定する。そして、「大当たり抽選」の結果、「大当たり」である場合には、決定した変動時間だけ図柄を変動表示させた後、図柄表示部6に所定の「大当たり図柄」(たとえば、「7、7、7」等)を確定表示させる。さらに確定表示後、大入賞装置18の扉部材を所定回数にわたって断続的に開成させるといった所謂「大当たり状態」を生起させる。
【0019】
そして、「大当たり状態」が生起すると、遊技球がセンター部材26の上方を越えて右側(すなわち、図柄表示部6の右側)を流下するように、遊技球を打ち込む(所謂右打ちを行う)ことにより、遊技球が遊技球通路を流下して排出口から排出され、断続的に開成している大入賞装置18へ入賞する。また、「大当たり状態」が終了すると、「大当たり抽選」の結果が「大当たり」となる確率が高くなる特定遊技状態が生起する。また、特定遊技状態においては、遊技球通路内のセンサによって遊技球が検知される度に、チューリップ式電動役物17を開状態とするか否かの抽選を行う。そして、この抽選に当選すると、チューリップ式電動役物17を所定時間だけ開状態(すなわち、起立姿勢にある一対の翼片17a、17aが、所定時間だけ
図2に示すように傾倒する状態)とし、チューリップ式電動役物17への遊技球の入賞を許容する。そのため、遊技者は「大当たり状態」の終了後も右打ちを継続し、遊技球を遊技球通路へ進入させて流下させることにより、遊技球通路内のセンサによって遊技球を検知させることになる。また、開状態にあるチューリップ式電動役物17への遊技球の入賞をもって、上記同様の「大当たり抽選」及び図柄表示部6における図柄の表示制御を実行する。
【0020】
尚、上記特定遊技状態は、「大当たり状態」の終了後、「大当たり抽選」で「大当たり」となることなく、図柄表示部6において図柄が所定回数変動したことをもって終了する。また、遊技球が遊技球通路を通過したことに起因して行う上記抽選は、特定遊技状態以外の状態においても実行するものの、特定遊技状態中においてのみ抽選結果に当選を含むように、すなわち特定遊技状態以外の状態においては抽選結果が全て外れとなるように制御されている。そのため、特定遊技状態以外の状態においては、上記抽選を実行しないとみなしてもよい。
【0021】
(始動部材の説明)
ここで、本発明の要部となる始動部材19の構造、及び始動部材19の設置位置に係る構成について、
図4にもとづき詳細に説明する。
図4は、遊技盤2の始動部材19の周辺部を拡大して示した説明図である。なお、
図4において、チューリップ式電動役物17の翼片17a、17aは起立姿勢にあり、チューリップ式電動役物17は閉状態となっている。
【0022】
始動部材19は、上下方向の長さが遊技球の直径の略2倍となる角筒状のカバー体を遊技盤2の前面に設置してなり、上端が遊技球を入賞可能な入賞口となっている。また、始動部材19の左右両側面は、下方へ向かって徐々に外へ張り出す滑らかな円弧面とされており、遊技領域16内を流下してきた遊技球が衝突した際に、その流下速度を減速させるための緩衝面19a、19aとして機能するようになっている。さらに、始動部材19の下部は、矢尻状に下方へ突出しており、後述するようにチューリップ式電動役物17の起立姿勢にある翼片17a、17a間に位置して、閉状態にあるチューリップ式電動役物17への遊技球の進入を阻止する阻止部19bとして機能するようになっている。加えて、始動部材19の前面は装飾面として機能し、図示しない装飾部材(シール部材)が貼着可能となっている。
【0023】
尚、始動部材19の内部には、入賞した遊技球を検知する入賞検知センサ(図示せず)が設けられている。また、始動部材19の下端は閉塞しているとともに、遊技盤2における当該下端位置に対応する箇所には、始動部材19へ入賞した遊技球を遊技領域16外(具体的には遊技盤2の後方側)へ排出するための排出口(図示せず)が設けられている。さらに、始動部材19とチューリップ式電動役物17とは独立した別部材として成形されている。
【0024】
以上のような始動部材19は、チューリップ式電動役物17の上方となる位置に、入賞口が上方へ開口し、阻止部19bが下方へ突出するような姿勢で設置されており、始動部材19の阻止部19bが、チューリップ式電動役物17の起立姿勢にある翼片17a、17a間に入り込んだ状態となっている。したがって、始動部材19により、閉状態にあるチューリップ式電動役物17への遊技球の入賞が阻止されることになる。また、設置状態において、始動部材19の入賞口(すなわち上端部)は、大入賞装置18に入賞しなかった遊技球を下方へ導く誘導釘50a、50b・・列の最下端にある遊技釘(ここでは遊技釘50c)よりも上方に位置している。したがって、特に大当たり状態や特定遊技状態において(すなわち、右打ちでの遊技中に)、始動部材19へ遊技球が入賞しないようになっている。尚、誘導釘50a、50b・・列とは、複数の遊技釘50a、50b・・を、下方に傾斜する方向へ、且つ、各遊技釘間から落下しない程度の略等間隔で並べて植設してなるもので、大入賞装置18に隣接して設けられている。
【0025】
(本実施形態のパチンコ機による効果)
上述したような始動部材19を備えてなるパチンコ機1によれば、始動部材19がチューリップ式電動役物17の上方に設置されているとともに、始動部材19の下端部が起立姿勢にある翼片17a、17a間に位置しており、当該下端部が、閉状態にあるチューリップ式電動役物17への遊技球の入賞を阻止する阻止部19bとして機能するようになっている。したがって、チューリップ式電動役物17の上方に、遊技球の入賞を阻止するためだけの遊技釘を植設する必要がなく、始動部材19やチューリップ式電動役物17の設置が容易となるし、それらの部材が遊技釘の植設時に破損してしまうようなおそれもない。また、始動部材19とチューリップ式電動役物17との間に遊技釘を植設するためのスペースを確保する必要がないため、上下方向の長さが遊技球の直径の略2倍にもなる従来よりも大型の始動部材19を設置することができ、意匠性の向上を図ることもできる。
【0026】
さらに、始動部材19の左右両側面を、下方へ向かって徐々に外へ張り出す滑らかな円弧面としており、遊技領域16内を流下してきた遊技球が衝突した際に、その流下速度を減速させるための緩衝面19a、19aとしているため、特に始動部材19の下方にあるチューリップ式電動役物17側へと流下する遊技球の減速を期待することができる。したがって、遊技球が衝突したことによりチューリップ式電動役物17の翼片17a、17aが破損してしまう事態を低減することができるし、遊技球が傾倒姿勢にある翼片17a、17aに衝突した際に弾かれにくく、開状態にあるチューリップ式電動役物17へ遊技球が入賞しやすくなるという効果もある。
【0027】
加えて、始動部材19及びチューリップ式電動役物17よりも右側に大入賞装置18を設置した所謂右打ちタイプのパチンコ機1において、大入賞装置18に隣接して、大入賞装置18に入賞しなかった遊技球を下方へ導く複数の遊技釘50a、50b・・列を設けるとともに、始動部材19の入賞口が、遊技釘50a、50b・・列の最下端にある遊技釘50cよりも上方に位置するように始動部材19を設置しているため、特に右打ち中において、始動部材19へ遊技球が入賞しないようになっている。したがって、遊技球を始動部材へ入賞させない方が遊技者にとって有利となる(たとえば、チューリップ式電動役物へ遊技球が入賞したことによる大当たり抽選の方が、始動部材へ遊技球が入賞したことによる大当たり抽選よりも、大入賞装置の開成回数が多い大当たり状態が生起しやすい等)パチンコ機を構成したい等の際に、そのようなパチンコ機を簡易な構成で実現することができる。
【0028】
(本発明の変更例について)
なお、本発明のパチンコ機に係る構成は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、パチンコ機全体の構成、始動部材の構成や設置位置に係る構成等について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更可能である。
【0029】
たとえば、始動部材を、より上下方向へ長く形成してもよいし、始動部材の左右いずれか一方側の側面にのみ緩衝面を形成するように構成してもよい。また、上記実施形態の始動部材を、大入賞装置がチューリップ式電動役物の下方にあるようなパチンコ機に設置することも、当然可能である。
さらに、始動部材の阻止部が始動部材の下端部である必要はなく、下方へ突出する突出部を始動部材に適宜形成し、当該突出部を阻止部としても何ら問題はない。さらにまた、始動部材及びチューリップ式電動役物の設置位置も上記実施形態の位置に何ら限定されることはなく、たとえば両部材を遊技領域の上部(たとえば、センター部材よりも上方となる位置)に設けてもよい。
加えて、上記実施形態では、複数の遊技釘50a、50b・・を並べて植設することにより誘導部材を構成しているが、たとえば遊技釘を植設する代わりに、金属板や合成樹脂板を立設して誘導部材とする構成であっても何ら問題はない。
【符号の説明】
【0030】
1・・パチンコ機、2・・遊技盤、16・・遊技領域、17・・チューリップ式電動役物、17a・・翼片、18・・大入賞装置、19・・始動部材(入賞部材)、19a・・緩衝面、19b・・阻止部、50a、50b、50c・・遊技釘(誘導部材)。