(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のプランターは従来のプランターを改良して作成するのも簡単ではなく、新たに特別のプランターを作成しなければならなかった。特別なプランターを作成しなくても、従来のプランターをそのまま使用できる方法が望まれていた。
本発明の目的は、従来のプランターをそのまま使用して膨潤性吸水性樹脂の能力を十分発揮できるプランターおよびそのために用いる保水剤容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題に鑑み、鋭意研究の結果、特定の構造の保水剤容器を従来のプランターに入れて使用すれば、膨潤性吸水性樹脂の保水および給水能力を十分発揮でき、散水が不十分であっても植物が生き生きと生育することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、
プランターの中に保水剤用容器を入れて植物を育生する方法であって、
前記保水剤用容器は、植物の根が通過できる複数の孔を有する蓋で閉じられ、その中に実質的に下記膨潤性吸水性樹脂のみが入れられており、
前記保水剤用容器を、その外側側壁と前記プランターの内側側壁とが接触しないように離して置き、その上に土をかけさらにその上から散水して膨潤性吸水性樹脂を水で膨潤させた後、植物を植えて植物を育生する、プランターの中に保水剤用容器を入れて植物を育生する方法である。
膨潤性吸水性樹脂: 25℃のイオン交換水の吸水倍率が80〜1000倍であり、膨潤性吸水性樹脂1重量部を25℃のイオン交換水100重量部に吸水させた時の吸水体の電気伝導率が0〜2.0mS/cmである
さらに本発明は、前記保水剤容器の蓋のすぐ上まで植物の根がくるようにして植物を植えて植物を育成することを特徴とする。
【0007】
さらに本発明は、
上記のプランターの中に保水剤用容器を入れて植物を育生する方法に用いるプランターであって、
前記保水剤用容器は、植物の根が通過できる複数の孔を有する蓋で閉じられ、その中に実質的に下記膨潤性吸水性樹脂のみが入れられており、
前記保水剤用容器は、前記プランター内の底であって、保水剤容器の外側側壁と前記プランターの内側側壁とが接触しないように離れて置かれ、且つ保水剤容器の蓋の上および側面外側に土壌が存在することを特徴とする、保水剤用容器を入れたプランターである。
膨潤性吸水性樹脂: 25℃のイオン交換水の吸水倍率が80〜1000倍であり、膨潤性吸水性樹脂1重量部を25℃のイオン交換水100重量部に吸水させた時の吸水体の電気伝導率が0〜2.0mS/cmである
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、植物を育生するプランターの中に入れる保水剤用容器であって、植物の根が通過できる複数の孔を有する蓋で閉じられ、中に膨潤性吸水性樹脂が入った保水剤用容器であるので、該保水剤用容器をプランターに入れその上に土壌をかけた後さらにその上から散水すれば、土壌が蓋の下に入りにくいため土壌に圧迫されることなく膨潤性吸水性樹脂が十分に膨潤し吸水性樹脂が有する吸水能力を十分発揮できる。その結果、プランターの土壌の下の保水剤用容器の中には水が十分あり、植物はその根が通り抜ける複数の孔を通過して吸水することができる。そして膨潤性吸水性樹脂が有する給水能力を十分発揮できる。
【0009】
さらに本発明によれば、保水剤が下記の吸水性樹脂であるので、植物の根が水枯れしにくく、散水が不十分のときでも植物を生き生きと生育させることができる。水だけだと根がある植物は水枯れする場合があるが、該膨潤性吸水性樹脂は水枯れしにくい。
膨潤性吸水性樹脂: 25℃のイオン交換水の吸水倍率が80〜1000倍であり、膨潤性吸水性樹脂1重量部を25℃のイオン交換水100重量部に吸水させた時の吸水体の電気伝導率が0〜2.0mS/cmである
【0010】
本発明によれば、保水剤用容器の中に膨潤性吸水性樹脂と共に、肥料、植物生長ホルモン、抗菌剤、微量要素、防カビ剤から選択される1種以上の成分が入れられてなるので、これらの成分は保水剤用容器から流出しにくく、その結果プランターにおいて長期間その成分による効果を持続することができる。
【0011】
また本発明によれば、プランターの中に上記の保水剤用容器を入れ、その上に土をかけた後さらにその上から散水して膨潤性吸水性樹脂を水で膨潤させるプランターの使用方法であるので、土壌の上から散水しても土壌が蓋の下に入りにくいため土壌に圧迫されることなく膨潤性吸水性樹脂が十分に膨潤し吸水性樹脂が有する吸水能力を十分発揮できる。
【0012】
本発明によれば、上記保水剤用容器の使用方法を用いて作成された、前記保水剤用容器の蓋の上側は土壌があり、保水剤用容器の中は水で膨潤した膨潤性吸水性樹脂のゲルで満たされてなるプランターであるので、植物は水枯れしにくくゲルが水を豊富に有するので、散水しなくても長期間植物を生育させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0015】
図1は、本発明における実施の一形態の保水剤用容器である。
図1(a)は斜視図であり、
図1(b)は
図1(a)におけるX−Y軸を含む切断面における断面図である。
図1(a)において、保水剤用容器1の蓋2の形状は四角形であり、保水剤用容器1の本体部分3の上側(開口部)も蓋2の形状に合わせた四角形であって、底にいく程小さな四角形となり、保水剤用容器1の側面は逆台形を示している。蓋2の表面は網目状であり、容器本体3に結合されている。
図1(b)には、保水剤用容器1の底に吸水性樹脂の粉末4が入っている。水が入っていないのでこの段階ではゲル状にはなっていない。
【0016】
図2(a)は、本発明における実施の一形態の保水剤用容器1を納めて土壌5をかけた状態のプランター6の概念的断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のプランター6に散水した場合の概念的断面図である。
図2(a)は、市販のプランター6の底に
図1に示した保水剤用容器1が入れられており、その上から土壌5がかけられている。土壌5は保水剤用容器1の中に殆ど入っていない。
図2(b)は、プランター6の土壌5の上から散水して保水剤用容器1の中の膨潤性吸水性樹脂の粉末4を膨潤させてゲル状とし、そのゲル7が容器の中を満たしている状態を示している。
【0017】
図3は、
図2(b)のプランター6に植物8の苗を植え養生した場合の概念的断面図である。
図2(b)は、プランター6に植物8の苗を植え水をやらずに養生した後の植物8の根9の様子を示している。植物8の根9は保水剤用容器1の蓋2の孔10を通って保水剤用容器1の中に入りゲル7の水を吸収している。プランター6に水をやらずとも長期に渡り植物8が枯れることなく植物8を生育することができる。
【0018】
保水剤用個の容器本体は、水が漏れにくい容器であり完全に水が漏れなくてもよいが、中の膨潤性吸水性樹脂のゲルが漏れなければよい。好ましくは水も漏れない受け皿のような容器である。
保水剤用容器の大きさは、プランターに入れることができればよい。プランターの大きさに合わせて容器を作製してもよいが、色々な大きさの容器を作成しておきプランターの大きさに合わせて用いてもよい。容器はプランターの底の大部分を占めてもよいし、一部分のみを占めてもよい。好ましくはプランターの底の半分以上を占めるのがよい。容器の深さも任意である。上に土壌がかけられ、植物を植えて生育できれば限定はない。容器の材質は、プラスチック、金属、セラミック。陶器、木などが用いられ、特に限定されない。
【0019】
保水剤用容器の蓋には植物の根が通過する複数の孔が設けられている。孔の大きさは植物の根が通ればよいが、土壌が蓋の下に落ちにくいのが好ましい。孔が小さすぎれば土壌が落ちにくいが植物の根も通りにくくなる。孔が大きすぎれば根はよく通るが、土壌が下に落ちやすくなる。土壌が少々落ちるぐらいであれば膨潤性吸水性樹脂を圧迫することはないが、土壌が下に多く落ちれば膨潤性吸水性樹脂を圧迫することになるので、そのバランスで構成するのがよい。蓋の上の土壌の粒子との関係も考慮して孔の大きさが決められるのがより好ましい。孔の形状は丸型、角型など特に限定はない。孔の数も限定はないが、数が多い程好ましく、蓋の全面に設けられるのがより好ましい。蓋はメッシュ状のように全面に孔があるものが生産上も特に好ましい。
図1(a)においては、蓋はメッシュ状である。蓋の材質は、容器の材質と同じプラスチック、金属、セラミック。陶器、木などが使用できるが、同じでも異なっていてもよい。
【0020】
蓋の厚さも特に限定はなく、上の土壌を支え、下の膨潤性吸水性樹脂のゲル層と分離できるものならよく、容器と蓋は結合されていてもいなくてもよい。容器と蓋が結合されていても膨潤性吸水性樹脂は蓋の孔から入れることができる。また、蓋は一枚であっても二枚以上であってもよい。たとえば、下の板を荒い目の格子状にしておいてその上に多孔質シートをおいてもよい。
【0021】
蓋の上側にある土壌は、通常プランターで花類や野菜などの植物に用いられる土壌であれば限定はない。また、この土壌には膨潤性吸水性樹脂を分散してもよい。このようにすれば、下層のゲル層に届かない植物の根の吸水を補充できるので好ましい。
【0022】
容器の中には、吸水性樹脂と共に肥料、植物生長ホルモン、抗菌剤、微量要素、防カビ剤から選択される1種以上の成分を入れてもよい。保水剤用容器の中の膨潤性吸水性樹脂のゲルと共にあるこれらの成分は容器から流出しにくいので、これらの成分の効果を長期間持続することができる。
【0023】
ここで、肥料としては、窒素質肥料、リン酸質肥料、カリ質肥料、有機質肥料、複合肥料、石灰質肥料、ケイ酸質肥料、苦土肥料、マンガン質肥料、ホウ素質肥料、微量要素複合肥料などの普通肥料と、その他の特殊肥料(緩効性肥料など)を挙げることができる。
成長ホルモン剤としては、2,4−D(2,4−ジクロロフェノキシ酢酸)などのオーキシン類、カイネチンなどのサイトカイニン類、ジベレリンなどが挙げられる。
抗菌剤としては、TPN(テトラクロロイソフタロニトリル)、キャブタン、ピンクロゾリン剤、ブラシミドン剤、ベンチアゾール剤、第4級アンモニウム塩、第4ピリジニウム塩、抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシンなど)、N−クロルスクシンイミド、石灰、有機硫黄剤(ジネブ、マンネブ、チオジアジン剤、チウラム剤など)、モノ及びジチオカルバベート、チオジアジン、スルホンアミド、フタルイミド、ナフトキノン、テトラヒドロフタルイミド、ヒドロキシイソキサゾール、第二銅塩、有機銅剤(8−オキシキノリン銅など)、グアニジン塩、グリオキサリジン塩、キノリウム塩、フェニルクロトネートなどが挙げられ、2種以上併用してもよい。
さらに、培地の腐敗防止の目的で微量要素として、ゼオライト、麦飯石等の無機多孔質材料を加えてもよい。
防カビ剤としては、ハロゲン供給剤、特に塩素系供給剤、例えばクロロ−シアヌル酸類又はその塩、特に、ジクロロイソシアヌル酸モノ−ナトリウムまたはカリウム;ヒドロキシキノン類などを挙げられ、2種以上を併用してもよい。
これらの添加量は、植物の種類、使用する肥料の種類などを考慮して任意に決めることができる。
【0024】
本発明における膨潤性吸水性樹脂は、水で膨潤すれば天然系でも合成系でも特に限定はないが、保水剤として用いるので安価で、安全性、耐久性、吸水倍率・保水性などの吸水特性に優れ、かつ、腐敗の心配の無いものが好ましい。
【0025】
このようなものとして特に合成系の吸水性樹脂が挙げられ、たとえば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、アクリル酸塩−アクリルアミド共重合架橋体、ポリビニルアルコール架橋体、変性ポリエチレンオキサイド架橋体、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩共重合架橋体、(メタ)アクリロイルアルカンスルホン酸塩共重合架橋体、架橋カルボキシメチルセルロース塩、カチオン性モノマーの架橋重合体などが挙げられる。これらのうち、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、および、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物が、吸水特性、安全性や経済性などが特に良好であるため好ましい。上記の吸水性樹脂は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0026】
また特に好ましいのは、25℃のイオン交換水の吸水倍率が80〜1000倍であり、膨潤性吸水性樹脂1重量部を25℃のイオン交換水100重量部に吸水させた時の吸水体の電気伝導率が0〜2.0mS/cmである膨潤性吸水性樹脂である。
吸水倍率が80g/g以上であると膨潤性が良好であり、保水剤用容器をゲルで満たすことができ、給水性も良好であり、1,000g/g以下であるとゲルの強度が弱くなく上に土壌がかけられても崩れにくい。吸水量は上記の吸水性樹脂の種々の製造条件によりコントロールできる。
膨潤性吸水性樹脂の電気伝導率が2.0mS/cm以下であると植物の根が吸水して植物が枯れない。より好ましくは、0〜1.8mS/cmであり、特に好ましくは0〜1.6mS/cmである。この膨潤性吸水性樹脂は、植物の根が吸水することを阻害しないので、植物を生育することができる。上記数値範囲は、特開2007−319029号公報の記載に準じている。
【0027】
吸水倍率、電気伝導率は下記の方法で測定できる。
[吸水倍率の測定法]
250メッシュナイロンネット製、サイズ10×20cm、ヒートシール幅5mm以内のティーバッグと、純水を準備する。膨潤性吸水性樹脂をJIS標準篩いでふるい分けし、30〜100メッシュの粒径のものを採取して測定試料とする。
試料0.20gをティーバッグへ投入し、それを純水中に、ティーバッグの底から約15cmを浸す。1時間放置後にティーバッグを引き上げ、垂直に吊るして15分間水切りする。重量(Ag)を測定する。試料を入れない空ティーバッグを使用して同様の操作を行い重量(Bg)を測定する。測定は各3回行い平均する。吸水倍率(g/g)=(A−B)/0.2より計算する。
【0028】
〔電気伝導率の測定法〕
25℃のイオン交換水100重量部に膨潤性吸水性樹脂1重量部を入れ、25℃で8時間、恒温槽中で放置して、前記吸水性樹脂を膨潤させ吸水体を作成する。吸水体の温度が25℃であることを温度計で確認し、比伝導度測定装置の電極を吸水体に差し込み値を読み取る。なお、吸水性樹脂の吸水倍率が小さい場合には、吸水性樹脂の吸水体とイオン交換水が分離して二相になるので、撹拌して均一にした後、比伝導度測定装置の電極を差し込み値を測定する。撹拌・均一化してもすぐに二相に再び分離する場合は、撹拌下に比伝導度測定装置の電極を差し込み値を測定する。
【0029】
また、上記膨潤性吸水性樹脂は粒子状であり、所定形状に造粒されていてもよく、また、不定形破砕状、球状、鱗片状、繊維状、棒状、塊状、粉末状など、形状には限定はないが、吸水特性を向上させるために、粉末状であることがより好ましい。
粒子の平均粒子径について特に限定はないが、好ましくは30〜850μmであり、より好ましくは60〜400μmである。30μmより大きいと吸水特性が良好であり生産しやすい。850μmより小さいと容器に入れてもブロッキングしにくい。粒度分布は特に限定はないが、好ましくは30〜850μmの範囲の粒子が95質量%以上になるような粒度分布である。ここで平均粒子径は質量平均粒子径を意味し、質量平均粒子径は、架橋重合体の各粒度分布を横軸が粒子径、縦軸が質量基準の含有量の対数確率紙にプロットし、全体の50%を占めるところの粒子径を求める方法により測定する。たとえば、通常の篩振とう法が適用できる。
【0030】
また膨潤性吸水性樹脂には、従来公知の保水剤を併用できる。たとえば、パーライト、バーミキュライト、珪藻土、バーク、ゼオライト、ロックウール、軽石などの多孔質鉱物、モンモリロナイト系の粘土系鉱物;ピートモス、クリプトモス、鋸維、籾殻、バガス、ヤシ殻、間伐材、水苔粉末、パルプ繊維、種子リンターなどの植物質天然有機物;古紙成分;ポリエチレンオキサイドなどが挙げられる。これらは植物の生育を阻害しない程度に配合してもよい。
【0031】
本発明の別の発明は、プランターの中に上記の保水剤用容器を入れ、その上に土をかけた後さらにその上から散水して膨潤性吸水性樹脂を水で膨潤させる保水剤用容器の使用方法である。
プランターにおいて散水すれば容器中の膨潤性吸水性樹脂は吸水してゲルとなり、蓋の下側の容器空間をゲルで満たすことができる。蓋の下側には使用時膨潤性吸水性樹脂で満たすのが、根が水枯れしないので好ましい。膨潤性吸水性樹脂が膨潤して体積が増えても蓋を押し上げることのないように考慮して入れられる。該ゲルにおける膨潤性吸水性樹脂と水の割合は、膨潤性吸水性樹脂の吸水倍率、植物の種類により異なるが、重量比で好ましくは1:10〜1:1000であり、より好ましくは1:20〜1:500である。
また、好ましいのは粉末を吸水させたゲルであるが、ゲルは吸水シートのゲルであってもよく、吸水シートを用いる場合はシートが破れ中にある吸水性樹脂が出て膨潤するのが好ましい。
【0032】
保水剤用容器の中の膨潤性吸水性樹脂を水で膨潤させてゲルとした後、植物を植えるのが好ましい。先に水を入れて膨潤させてもよいし、後で散水によって膨潤させてもよいが、後者の方が本発明の効果を発揮しやすいので好ましい。散水して容器の中を膨潤性吸水性樹脂が膨潤してゲルで満たされると、吸水能力以上の水が上からきてもオーバーフローして土壌を通り下のプランターの穴から流れ出る。
このような保水剤用容器を用いれば、従来のプランターにそのまま入れるだけで使用でき、膨潤性吸水性樹脂の吸水・保水能力を十分に発揮することができる。
【0033】
図3に、プランターにおいて植物を植えたときの概念的断面図を示す。土壌に植えてある植物の根が蓋の孔を通過して吸水性樹脂のゲルの水を吸水している。本発明においては植物の根が大きくなってからより効果を奏しやすい。根が蓋の近くにあるのが、根が蓋の孔を通過して吸水しやすいからである。
【0034】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(製造例1、膨潤性吸水性樹脂の製造)
1Lのビーカーに、アクリル酸230.4g(3.2mol)、架橋剤としてペンタエリスリトールトリアリルエーテル1.0g、及び水636gを添加し10℃に冷却した。この溶液を、断熱重合槽に入れ、窒素を通じて溶液の溶存酸素を0.1ppm(オリエント電気社製、商品名溶存酸素計 DO220PBで測定)とした後、重合開始剤として、35%の過酸化水素水0.023g、L−アスコルビン酸0.00575g、および過硫酸カリウム0.23gを添加した。約30分後、重合反応が開始し、約2時間後に最高温度72℃に到達した。更に、この温度で5時間熟成させて重合を完結させた。得られた重合体(重合体(Y)に該当)は、含水ゲル状を有していた。この重合体をニーダー(入江商会社製、商品名BENCH KNEADER
PNV−1;回転数70rpm)で約2時間撹拌して細断し、更に50%の水酸化カルシウム分散液61.6g、48%の水酸化ナトリウム水溶液64.0gを配合し、ニーダーで約2時間撹拌して混合した。その後、バンド乾燥機(透気乾燥機、井上金属株式会社製)を用いて110℃で加熱乾燥し、粉砕して吸水倍率300g/g、電気伝導率1.0mS/cm、平均粒径370μm(日機装社製、商品名:マイクロトラックFRA粒度分析計で測定)の膨潤性吸水性樹脂の粉末(1)を得た。
【0035】
(実施例1)
底が縦40cm×横9cm、高さ5cmで上側が開口した直方体状のポリプロピレン製の受け皿型の容器を作製した。この中に製造例1で製造した膨潤性吸水性樹脂の粉末(1)10gを入れ、径2mmのプロピレン製モノフィラメントでフィラメント間3mmのメッシュ状板を開口部の全面を覆うようにして固定し、本発明の保水剤用容器Aを作製した。該膨潤性吸水性樹脂の粉末(1)10gの吸水能力は保水剤容器が水で満たされても十分ゲルとなるものである。
【0036】
(実施例2)
上側62cm×17cm、下側54cm×13cm、高さ22cmの逆台形状の市販のプランターの底に上記の保水剤用容器Aを置き、植木鉢用の土壌を上から5cmのところまで全面にかけた。その上から散水した。このプランターには底の四隅に排水穴があり、この穴から排水するまで十分に散水した。その後土壌の一部を取り除き保水剤用容器の中を観察したところ、その中は膨潤性吸水性樹脂のゲルで充満していることを確認した。
【0037】
(実施例3)
上記の実施例2で作成した土壌の入ったプランターに、植物としてベコニア5本を蓋のすぐ上まで根がくるように穴を堀り植えて土を被せた。
【0038】
(比較例1)
実施例2で用いたプランターに上から5cmのところまで実施例2で用いたのと同じ植木鉢用の土壌入れ、その中に製造例1で製造した膨潤性吸水性樹脂の粉末(1)10gを十分混合して入れた。実施例2と同様に十分散水した後、植物としてベコニア5本を実施例3と同じ深さまで根があるように穴を堀り植えて土を被せた。
【0039】
(比較例2)
実施例2で用いたプランターに上から5cmのところまで実施例2で用いたのと同じ植木鉢用の土壌入れ、実施例2と同様に十分散水した後、植物としてベコニア5本を実施例3と同じ深さまで根があるように穴を堀り植えて土を被せた。
【0040】
(試験例)
上記の各プランターを屋外において散水せずに1ケ月間放置した。その間3回ほど雨が降った。1ケ月後の植物の生育状況は表1の通りであった。
【0042】
表1から、本発明の保水剤用容器は、膨潤性吸水性樹脂の吸水能力を発揮させ、散水しなくても長期間植物を生育するのに有効であることがわかる。本発明は、従来の土壌に吸水性樹脂を混ぜる場合に比較して保水剤としての能力を十分に発揮していることがわかる。