特許第6281140号(P6281140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6281140映像信号処理回路、映像信号処理方法、及び、表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281140
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】映像信号処理回路、映像信号処理方法、及び、表示装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/202 20060101AFI20180208BHJP
   G09G 3/30 20060101ALI20180208BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20180208BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180208BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   H04N5/202
   G09G3/30 K
   G09G3/20 641Q
   G09G3/20 612U
   G09G3/20 632F
   G09G3/20 632L
   G09G3/20 631V
   G09G3/20 642P
   G09G3/20 680G
   G09G3/20 624B
   H05B33/14 A
   H05B33/14 Z
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-518139(P2015-518139)
(86)(22)【出願日】2014年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2014059468
(87)【国際公開番号】WO2014188789
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2015年11月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-105756(P2013-105756)
(32)【優先日】2013年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 栄寿
(72)【発明者】
【氏名】荒木 昭士
【審査官】 西谷 憲人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−058675(JP,A)
【文献】 特開2006−330292(JP,A)
【文献】 特開2008−011382(JP,A)
【文献】 特開2008−148055(JP,A)
【文献】 特開2009−141302(JP,A)
【文献】 特開2009−122552(JP,A)
【文献】 特開2009−265114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/202
G09G 3/20
G09G 3/30
H01L 51/50
H05B 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号に対してガンマ補正を行うガンマ補正部と、
前記ガンマ補正部から出力されたガンマ補正後の映像信号に対して、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方に応じたオフセット成分を与えるガンマ修正部と
を備え
前記ガンマ修正部は、
前記リフレッシュレートおよび前記発光デューティのうちの少なくとも一方に応じた前記オフセット成分を生成するオフセット成分生成部と、
前記ガンマ補正部から出力されたガンマ補正後の前記映像信号に対して前記オフセット成分を加算する加算部と
を有し、
前記オフセット成分生成部は、
前記リフレッシュレートおよび前記発光デューティのうちの少なくとも一方に基づいて発光時間を算出する発光時間算出部と、
前記発光時間算出部が算出した前記発光時間に基づいて、次の式によりオフセット量を求めることにより前記オフセット成分を算出するオフセット算出部と
を有する
映像信号処理回路。
オフセット量=α×Ids1×(t1/t2−1)
ここで、t1は、第1の動作において前記発光時間算出部が算出した前記発光時間であり、t2は、前記リフレッシュレートおよび前記発光デューティのうちの少なくとも一方が前記第1の動作とは異なる第2の動作において前記発光時間算出部が算出した前記発光時間であり、Ids1は、前記第1の動作における、画素の発光素子を駆動する駆動トランジスタに流れる発光時の電流値であり、αは所定の定数であり、オフセット量は、前記第1の動作から前記第2の動作に変更したときの前記オフセット成分である。
【請求項2】
映像信号に対してガンマ補正を行うガンマ補正部と、
前記ガンマ補正部から出力されたガンマ補正後の映像信号に対して、発光デューティに応じたオフセット成分を与えるガンマ修正部と、
表示装置の表示エリア外に設けられたダミー画素の輝度あるいは当該ダミー画素の発光素子に流れる電流値を測定する測定部と
を備え、
前記ガンマ修正部は、
前記発光デューティに応じた前記オフセット成分を生成するオフセット成分生成部と、
前記ガンマ補正部から出力されたガンマ補正後の前記映像信号に対して前記オフセット成分を加算する加算部と
を有し、
前記オフセット成分生成部は、前記測定部の測定結果に基づいて前記オフセット成分を算出するオフセット算出部を有する
映像信号処理回路。
【請求項3】
リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方に基づいて発光時間を算出し、
算出された前記発光時間に基づいて、次の式によりオフセット量を求めることによりオフセット成分を算出し、
ガンマ補正後の映像信号に対して前記オフセット成分を加算する
映像信号処理方法。
オフセット量=α×Ids1×(t1/t2−1)
ここで、t1は、第1の動作において算出した前記発光時間であり、t2は、前記リフレッシュレートおよび前記発光デューティのうちの少なくとも一方が前記第1の動作とは異なる第2の動作において算出した前記発光時間であり、Ids1は、前記第1の動作における、画素の発光素子を駆動する駆動トランジスタに流れる発光時の電流値であり、αは所定の定数であり、オフセット量は、前記第1の動作から前記第2の動作に変更したときの前記オフセット成分である。
【請求項4】
表示装置の表示エリア外に設けられたダミー画素の輝度あるいは当該ダミー画素の発光素子に流れる電流値を測定し、
前記電流値の測定結果に基づいて、発光デューティに応じたオフセット成分を算出し、
ガンマ補正後の映像信号に対して前記オフセット成分を加算する
映像信号処理方法。
【請求項5】
映像信号に対してガンマ補正を行うガンマ補正部と、前記ガンマ補正部から出力されるガンマ補正後の映像信号に対して、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方に応じたオフセット成分を与えるガンマ修正部とを有する映像信号処理回路と、
発光素子および前記発光素子を駆動する駆動トランジスタを含む画素を有する表示部と
を備え
前記ガンマ修正部は、
前記リフレッシュレートおよび前記発光デューティのうちの少なくとも一方に応じた前記オフセット成分を生成するオフセット成分生成部と、
前記ガンマ補正部から出力されたガンマ補正後の前記映像信号に対して前記オフセット成分を加算する加算部と
を有し、
前記オフセット成分生成部は、
前記リフレッシュレートおよび前記発光デューティのうちの少なくとも一方に基づいて発光時間を算出する発光時間算出部と、
前記発光時間算出部が算出した前記発光時間に基づいて、次の式によりオフセット量を求めることにより前記オフセット成分を算出するオフセット算出部と
を有する
表示装置。
オフセット量=α×Ids1×(t1/t2−1)
ここで、t1は、第1の動作において前記発光時間算出部が算出した前記発光時間であり、t2は、前記リフレッシュレートおよび前記発光デューティのうちの少なくとも一方が前記第1の動作とは異なる第2の動作において前記発光時間算出部が算出した前記発光時間であり、Ids1は、前記第1の動作における、前記駆動トランジスタに流れる発光時の電流値であり、αは所定の定数であり、オフセット量は、前記第1の動作から前記第2の動作に変更したときの前記オフセット成分である。
【請求項6】
映像信号に対してガンマ補正を行うガンマ補正部と、前記ガンマ補正部から出力されるガンマ補正後の映像信号に対して、発光デューティに応じたオフセット成分を与えるガンマ修正部とを有する映像信号処理回路と、
発光素子を含む画素を有する表示部と、
前記表示部の表示エリア外に設けられたダミー画素の輝度あるいは当該ダミー画素の発光素子に流れる電流値を測定する測定部と
を備え
前記ガンマ修正部は、
前記発光デューティに応じた前記オフセット成分を生成するオフセット成分生成部と、
前記ガンマ補正部から出力されたガンマ補正後の前記映像信号に対して前記オフセット成分を加算する加算部と
を有し、
前記オフセット成分生成部は、前記測定部の測定結果に基づいて前記オフセット成分を算出するオフセット算出部を有する
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、映像信号処理回路、映像信号処理方法、及び、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置において、画素毎に設けられる電気光学デバイスが駆動電圧に対してデバイス固有の非線形な光学応答を示すことが知られている。そのため、非線形な光学応答を示す電気光学デバイスの駆動に当たって、映像信号に対してガンマ補正が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−165111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表示装置にあっては、映像信号フォーマットや駆動モードに応じて、リフレッシュレート(フレームレート)や発光デューティを変更する場合がある。しかしながら、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方を変更すると、駆動電圧に対する発光輝度の特性、即ち、ガンマ特性が変動し、それに伴って画質の変動を引き起こす。
【0005】
そこで、本開示は、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方を変更しても、画質の変動の無い映像を得ることを可能とする映像信号処理回路、映像信号処理方法、及び、当該映像信号処理回路を有する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の第1の映像信号処理回路は、映像信号に対してガンマ補正を行うガンマ補正部と、ガンマ補正部から出力されたガンマ補正後の映像信号に対して、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方に応じたオフセット成分を与えるガンマ修正部とを備える。 ガンマ修正部は、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方に応じたオフセット成分を生成するオフセット成分生成部と、ガンマ補正部から出力されたガンマ補正後の映像信号に対してオフセット成分を加算する加算部とを有する。オフセット成分生成部は、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方に基づいて発光時間を算出する発光時間算出部と、発光時間算出部が算出した発光時間に基づいて、次の式によりオフセット量を求めることによりオフセット成分を算出するオフセット算出部とを有する。
オフセット量=α×Ids1×(t1/t2−1)
ここで、t1は、第1の動作において発光時間算出部が算出した発光時間であり、t2は、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方が第1の動作とは異なる第2の動作において発光時間算出部が算出した発光時間であり、Ids1は、第1の動作における、画素の発光素子を駆動する駆動トランジスタに流れる発光時の電流値であり、αは所定の定数であり、オフセット量は、第1の動作から第2の動作に変更したときのオフセット成分である。
本開示の第2の映像信号処理回路は、映像信号に対してガンマ補正を行うガンマ補正部と、ガンマ補正部から出力されたガンマ補正後の映像信号に対して、発光デューティに応じたオフセット成分を与えるガンマ修正部と、表示装置の表示エリア外に設けられたダミー画素の輝度あるいは当該ダミー画素の発光素子に流れる電流値を測定する測定部とを備える。ガンマ修正部は、発光デューティに応じたオフセット成分を生成するオフセット成分生成部と、ガンマ補正部から出力されたガンマ補正後の映像信号に対してオフセット成分を加算する加算部とを有する。オフセット成分生成部は、測定部の測定結果に基づいてオフセット成分を算出するオフセット算出部を有する。
【0007】
また、上記の目的を達成するための本開示の第1の映像信号処理方法は、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方に基づいて発光時間を算出し、算出された発光時間に基づいて、次の式を用いてオフセット量を求めることによりオフセット成分を算出し、ガンマ補正後の映像信号に対してオフセット成分を加算するものである。
オフセット量=α×Ids1×(t1/t2−1)
ここで、t1は、第1の動作において算出した発光時間であり、t2は、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方が第1の動作とは異なる第2の動作において算出した発光時間であり、Ids1は、第1の動作における、画素の発光素子を駆動する駆動トランジスタに流れる発光時の電流値であり、αは所定の定数であり、オフセット量は、第1の動作から第2の動作に変更したときのオフセット成分である。
本開示の第2の映像信号処理方法は、表示装置の表示エリア外に設けられたダミー画素の輝度あるいは当該ダミー画素の発光素子に流れる電流値を測定し、電流値の測定結果に基づいて、発光デューティに応じたオフセット成分を算出し、ガンマ補正後の映像信号に対してオフセット成分を加算するものである。
【0008】
また、上記の目的を達成するための本開示の第1の表示装置は、映像信号に対してガンマ補正を行うガンマ補正部と、ガンマ補正部から出力されるガンマ補正後の映像信号に対して、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方に応じたオフセット成分を与えるガンマ修正部とを有する映像信号処理回路と、発光素子および発光素子を駆動する駆動トランジスタを含む画素を有する表示部とを備える。 ガンマ修正部は、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方に応じたオフセット成分を生成するオフセット成分生成部と、ガンマ補正部から出力されたガンマ補正後の映像信号に対してオフセット成分を加算する加算部とを有する。オフセット成分生成部は、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方に基づいて発光時間を算出する発光時間算出部と、発光時間算出部が算出した発光時間に基づいて、次の式によりオフセット量を求めることによりオフセット成分を算出するオフセット算出部とを有する。
オフセット量=α×Ids1×(t1/t2−1)
ここで、t1は、第1の動作において発光時間算出部が算出した発光時間であり、t2は、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方が第1の動作とは異なる第2の動作において発光時間算出部が算出した発光時間であり、Ids1は、第1の動作における、画素の発光素子を駆動する駆動トランジスタに流れる発光時の電流値であり、αは所定の定数であり、オフセット量は、第1の動作から第2の動作に変更したときのオフセット成分である。
本開示の第2の表示装置は、映像信号に対してガンマ補正を行うガンマ補正部と、ガンマ補正部から出力されるガンマ補正後の映像信号に対して、発光デューティに応じたオフセット成分を与えるガンマ修正部とを有する映像信号処理回路と、発光素子を含む画素を有する表示部と、表示部の表示エリア外に設けられたダミー画素の輝度あるいは当該ダミー画素の発光素子に流れる電流値を測定する測定部とを備える。ガンマ修正部は、発光デューティに応じたオフセット成分を生成するオフセット成分生成部と、ガンマ補正部から出力されたガンマ補正後の映像信号に対してオフセット成分を加算する加算部とを有する。オフセット成分生成部は、測定部の測定結果に基づいてオフセット成分を算出するオフセット算出部を有する。
【0009】
上記の構成の映像信号処理回路、映像信号処理方法、あるいは、表示装置において、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方を変更した際に、ガンマ特性は、階調方向(信号電圧の大小方向)に変動(シフト)する。このガンマ特性の変動は、画質の変動を引き起こす要因となる。そこで、ガンマ補正後の映像信号に対して、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方に応じたオフセット成分を与える。これにより、ガンマ特性の変動分を補正することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方を変更した際のガンマ特性の変動分を補正することができるため、リフレッシュレートおよび発光デューティのうちの少なくとも一方を変更しても、画質の変動の無い映像を得ることができる。
尚、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって、これに限定されるものではなく、また付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示が適用されるアクティブマトリクス型表示装置の基本的な構成の概略を示すシステム構成図である。
図2図2は、画素(画素回路)の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。
図3図3Aは、発光デューティを変更したときのガンマ特性の変動を示す図であり、図3Bは、図3Aの破線で囲んだ低輝度発光領域を拡大して示す図である。
図4図4Aは、リフレッシュレートを変更したときのガンマ特性の変動を示す図であり、図4Bは、図4Aの破線で囲んだ低輝度発光領域を拡大して示す図である。
図5図5は、ガンマ特性の変動の発生原理についての説明図である。
図6図6は、発光デューティが20%のガンマ特性を基準にして、発光デューティを45%にしたときの輝度比を、ガンマ特性の変動分について補正なしと補正ありでプロットしたグラフを示す図である。
図7図7Aは、実施例1に係る映像信号処理回路の構成を示すブロック図であり、図7Bは、実施例1に係る映像信号処理回路の作用を説明する図である。
図8図8は、実施例2に係る映像信号処理回路の構成を示すブロック図である。
図9図9Aは、実施例3に係る映像信号処理回路の構成を示すブロック図であり、図9Bは、オフセット成分(オフセット量)の変換式についての説明図である。
図10図10は、実施例4に係る映像信号処理回路の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の技術を実施するための形態(以下、「実施形態」と記述する)について図面を用いて詳細に説明する。本開示は実施形態に限定されるものではなく、実施形態における種々の数値などは例示である。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.本開示の映像信号処理回路、映像信号処理方法、及び、表示装置、全般に関する説明2.本開示の技術が適用される表示装置
2−1.システム構成
2−2.画素回路
2−3.ガンマ補正について
3.実施形態の説明
3−1.実施例1
3−2.実施例2
3−3.実施例3
3−4.実施例4
4.変形例
【0013】
<本開示の映像信号処理回路、映像信号処理方法、及び、表示装置、全般に関する説明> 本開示の映像信号処理回路、映像信号処理方法、及び、表示装置にあっては、ガンマ補正後の映像信号に対して与えるオフセット成分について、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方を変更した際に生ずる、ガンマ特性のシフト量に対応した値に設定する構成とすることができる。
【0014】
上述した好ましい構成を含む本開示の映像信号処理回路、映像信号処理方法、及び、表示装置にあっては、ガンマ修正部について、オフセット成分生成部と加算部とを有する構成とすることができる。オフセット成分生成部は、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方に応じたオフセット成分を生成する処理を行う。加算部は、ガンマ補正部でガンマ補正後の映像信号に対してオフセット成分を加算する処理を行う。
【0015】
上述した好ましい構成を含む本開示の映像信号処理回路、映像信号処理方法、及び、表示装置にあっては、オフセット成分生成部について、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方に応じたオフセット成分を格納したテーブルから成る構成とすることができる。このとき、オフセット成分生成部は、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方に対応したオフセット成分をテーブルから選択して出力する。
【0016】
あるいは又、上述した好ましい構成を含む本開示の映像信号処理回路、映像信号処理方法、及び、表示装置にあっては、オフセット成分生成部について、発光時間算出部と発光時間算出部とを有する構成とすることができる。発光時間算出部は、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方に基づいて発光時間を算出する処理を行う。テーブルは、発光時間に応じたオフセット成分を格納する。そして、オフセット成分生成部は、発光時間算出部が算出した発光時間に対応したオフセット成分をテーブルから選択して出力する。
【0017】
あるいは又、上述した好ましい構成を含む本開示の映像信号処理回路、映像信号処理方法、及び、表示装置にあっては、オフセット成分生成部について、発光時間算出部とオフセット算出部とを有する構成とすることができる。発光時間算出部は、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方から発光時間を算出する処理を行う。オフセット算出部は、発光時間算出部が算出した発光時間に基づいてオフセット成分を算出する処理を行う。
【0018】
あるいは又、上述した好ましい構成を含む本開示の映像信号処理回路、映像信号処理方法、及び、表示装置にあっては、表示装置の表示エリア外にダミー画素が設けられていることを前提とする。そして、オフセット成分生成部について、ダミー画素の輝度あるいはダミー画素の発光素子に流れる電流値を測定する測定部と、測定部の測定結果に基づいてオフセット成分を算出するオフセット算出部を有する構成とすることができる。
【0019】
<本開示の技術が適用される表示装置>
[システム構成]
図1は、本開示が適用されるアクティブマトリクス型表示装置の基本的な構成の概略を示すシステム構成図である。
【0020】
アクティブマトリクス型表示装置は、電気光学素子(発光素子)に流れる電流を、当該電気光学素子と同じ画素内に設けた能動素子、例えば絶縁ゲート型電界効果トランジスタによって制御する表示装置である。絶縁ゲート型電界効果トランジスタとしては、典型的には、TFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)を用いることができる。
【0021】
ここでは、一例として、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子である例えば有機EL素子を、画素(画素回路)の発光素子として用いるアクティブマトリクス型有機EL表示装置の場合を例に挙げて説明するものとする。以下では、「画素回路」を単に「画素」と記述する場合もある。
【0022】
図1に示すように、本開示の技術が適用される有機EL表示装置10は、有機EL素子を含む複数の画素20が行列状(マトリクス状)に2次元配置されて成る画素アレイ部30と、当該画素アレイ部30の周辺に配置される駆動回路部(駆動部)とを有する構成となっている。駆動回路部は、例えば、画素アレイ部30と同じ表示パネル70上に搭載された書込み走査部40、駆動走査部50、及び、信号出力部60等から成り、画素アレイ部30の各画素20を駆動する。尚、書込み走査部40、駆動走査部50、及び、信号出力部60のいくつか、あるいは全部を表示パネル70外に設ける構成を採ることも可能である。
【0023】
ここで、有機EL表示装置10がカラー表示対応の場合は、カラー画像を形成する単位となる1つの画素(単位画素/ピクセル)は複数の副画素(サブピクセル)から構成される。このとき、副画素の各々が図1の画素20に相当することになる。より具体的には、カラー表示対応の表示装置では、1つの画素は、例えば、赤色(Red;R)光を発光する副画素、緑色(Green;G)光を発光する副画素、青色(Blue;B)光を発光する副画素の3つの副画素から構成される。
【0024】
但し、1つの画素としては、RGBの3原色の副画素の組み合わせに限られるものではなく、3原色の副画素に更に1色あるいは複数色の副画素を加えて1つの画素を構成することも可能である。より具体的には、例えば、輝度向上のために白色(White;W)光を発光する副画素を加えて1つの画素を構成したり、色再現範囲を拡大するために補色光を発光する少なくとも1つの副画素を加えて1つの画素を構成したりすることも可能である。
【0025】
画素アレイ部30には、m行n列の画素20の配列に対して、行方向(画素行の画素の配列方向/水平方向)に沿って走査線31(311〜31m)と電源供給線32(321〜32m)とが画素行毎に配線されている。更に、m行n列の画素20の配列に対して、列方向(画素列の画素の配列方向/垂直方向)に沿って信号線33(331〜33n)が画素列毎に配線されている。
【0026】
走査線311〜31mは、書込み走査部40の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。電源供給線321〜32mは、駆動走査部50の対応する行の出力端にそれぞれ接続されている。信号線331〜33nは、信号出力部60の対応する列の出力端にそれぞれ接続されている。
【0027】
書込み走査部40は、シフトレジスタ回路等によって構成されている。この書込み走査部40は、画素アレイ部30の各画素20への映像信号の信号電圧の書込みに際して、走査線31(311〜31m)に対して書込み走査信号WS(WS1〜WSm)を順次供給することによって画素アレイ部30の各画素20を行単位で順番に走査する、所謂、線順次走査を行う。
【0028】
駆動走査部50は、書込み走査部40と同様に、シフトレジスタ回路等によって構成されている。この駆動走査部50は、書込み走査部40による線順次走査に同期して、第1電源電位Vcc_Hと当該第1電源電位Vcc_Hよりも低い第2電源電位Vcc_Lとで切り替わることが可能な電源電位DS(DS1〜DSm)を電源供給線32(321〜32m)に供給する。後述するように、駆動走査部50による電源電位DSのVcc_H/Vcc_Lの切替えによって、画素20の発光/非発光(消光)の制御が行われる。
【0029】
信号出力部60は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧(以下、単に「信号電圧」と記述する場合もある)Vsigと基準電圧Vofsとを選択的に出力する。ここで、基準電圧Vofsは、映像信号の信号電圧Vsigの基準となる電圧(例えば、映像信号の黒レベルに相当する電圧)であり、後述する閾値補正処理の際に用いられる。
【0030】
信号出力部60から出力される信号電圧Vsig/基準電圧Vofsは、信号線33(331〜33n)を介して画素アレイ部30の各画素20に対して、書込み走査部40による走査によって選択された画素行の単位で書き込まれる。すなわち、信号出力部60は、信号電圧Vsigを行(ライン)単位で書き込む線順次書込みの駆動形態を採っている。
【0031】
[画素回路]
図2は、画素(画素回路)20の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。画素20の発光部は、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子である有機EL素子21から成る。
【0032】
図2に示すように、画素20は、有機EL素子21と、有機EL素子21に電流を流すことによって当該有機EL素子21を駆動する駆動回路とによって構成されている。有機EL素子21は、全ての画素20に対して共通に配線された共通電源線34にカソード電極が接続されている。
【0033】
有機EL素子21を駆動する駆動回路は、駆動トランジスタ22、サンプリングトランジスタ23、保持容量24、及び、補助容量25を有する構成となっている。駆動トランジスタ22及びサンプリングトランジスタ23として、例えば、Nチャネル型のTFTを用いることができる。
【0034】
但し、ここで示した、駆動トランジスタ22及びサンプリングトランジスタ23の導電型の組み合わせは一例に過ぎず、これらの組み合わせに限られるものではない。すなわち、駆動トランジスタ22及びサンプリングトランジスタ23の一方又は両方として、Pチャネル型のTFTを用いることができる。
【0035】
駆動トランジスタ22は、一方の電極(ソース/ドレイン電極)が有機EL素子21のアノード電極に接続され、他方の電極(ソース/ドレイン電極)が電源供給線32(321〜32m)に接続されている。
【0036】
サンプリングトランジスタ23は、一方の電極(ソース/ドレイン電極)が信号線33(331〜33n)に接続され、他方の電極(ソース/ドレイン電極)が駆動トランジスタ22のゲート電極に接続されている。また、サンプリングトランジスタ23のゲート電極は、走査線31(311〜31m)に接続されている。
【0037】
駆動トランジスタ22及びサンプリングトランジスタ23において、一方の電極とは、一方のソース/ドレイン領域に電気的に接続された金属配線を言い、他方の電極とは、他方のソース/ドレイン領域に電気的に接続された金属配線を言う。また、一方の電極と他方の電極との電位関係によって一方の電極がソース電極ともなればドレイン電極ともなり、他方の電極がドレイン電極ともなればソース電極ともなる。
【0038】
保持容量24は、一方の電極が駆動トランジスタ22のゲート電極に接続され、他方の電極が駆動トランジスタ22の他方の電極、及び、有機EL素子21のアノード電極に接続されている。
【0039】
補助容量25は、一方の電極が有機EL素子21のアノード電極に接続され、他方の電極が固定電位のノード(本例では、共通電源線34/有機EL素子21のカソード電極)に接続されている。補助容量25は、例えば、有機EL素子21の容量不足分を補い、保持容量24に対する映像信号の書込みゲインを高めるために設けられている。但し、補助容量25は、必須の構成要素ではない。すなわち、有機EL素子21の容量不足分を補う必要がない場合には、補助容量25は不要となる。
【0040】
上記構成の画素20において、サンプリングトランジスタ23は、書込み走査部40から走査線31を通してゲート電極に印加されるHighアクティブの書込み走査信号WSに応答して導通状態となる。これにより、サンプリングトランジスタ23は、信号線33を通して信号出力部60から異なるタイミングで供給される、輝度情報に応じた映像信号の信号電圧Vsigまたは基準電圧Vofsをサンプリングして画素20内に書き込む。サンプリングトランジスタ23によって書き込まれた信号電圧Vsigまたは基準電圧Vofsは、駆動トランジスタ22のゲート電極に印加されるとともに保持容量24に保持される。
【0041】
駆動トランジスタ22は、電源供給線32(321〜32m)の電源電位DSが第1電源電位Vcc_Hにあるときには、一方の電極がドレイン電極、他方の電極がソース電極となって飽和領域で動作する。これにより、駆動トランジスタ22は、電源供給線32から電流の供給を受けて有機EL素子21を電流駆動にて発光駆動する。より具体的には、駆動トランジスタ22は、飽和領域で動作することにより、保持容量24に保持された信号電圧Vsigの電圧値に応じた電流値の駆動電流を有機EL素子21に供給し、当該有機EL素子21を電流駆動することによって発光させる。
【0042】
駆動トランジスタ22は更に、電源電位DSが第1電源電位Vcc_Hから第2電源電位Vcc_Lに切り替わったときには、一方の電極がソース電極、他方の電極がドレイン電極となってスイッチングトランジスタとして動作する。これにより、駆動トランジスタ22は、有機EL素子21への駆動電流の供給を停止し、有機EL素子21を非発光状態にする。すなわち、駆動トランジスタ22は、電源電位DS(Vcc_H/Vcc_L)の切替えの下に、有機EL素子21の発光/非発光を制御するトランジスタとしての機能をも併せ持っている。
【0043】
この駆動トランジスタ22のスイッチング動作により、有機EL素子21が非発光状態となる期間(非発光期間)を設け、有機EL素子21の発光期間と非発光期間の割合(デューティ)を制御することができる。このデューティ制御により、1表示フレーム期間に亘って画素が発光することに伴う残像ボケを低減できるために、特に、動画の画品位をより優れたものとすることができる。
【0044】
駆動走査部50から電源供給線32を通して選択的に供給される第1,第2電源電位Vcc_H,Vcc_Lのうち、第1電源電位Vcc_Hは有機EL素子21を発光駆動する駆動電流を駆動トランジスタ22に供給するための電源電位である。また、第2電源電位Vcc_Lは、有機EL素子21に対して逆バイアスを掛けるための電源電位である。この第2電源電位Vcc_Lは、基準電圧Vofsよりも低い電位、例えば、駆動トランジスタ22の閾値電圧をVthとするとき、Vofs−Vthよりも低い電位、好ましくは、Vofs−Vthよりも十分に低い電位に設定される。
【0045】
[ガンマ補正について]
ところで、有機EL表示装置10において、有機EL素子21は、駆動電圧に対してデバイス固有の非線形な光学応答を示すことが知られている。この非線形な光学応答に対処するために、表示パネル70に入力される映像信号に対してガンマ補正が行われる。
【0046】
一方で、有機EL素子21に電流を流して発光させる際、有機EL素子21の両端電圧が所定の電圧に達するまでに補助容量25に電荷が蓄積されるために、有機EL素子21に電流を流し始めてから有機EL素子21が発光するまでに遅延が生じる。この遅延時間は、有機EL素子21に流れる電流によって異なり、かつ、リフレッシュレート(フレームレート)や発光デューティによって、発光時間の比率に影響を及ぼす。ここに、「発光時間の比率」とは、発光デューティで決まる発光時間と実際の発光時間との比率のことである。
【0047】
リフレッシュレートや発光デューティは、NTSC方式、PAL方式などの映像信号フォーマットや、動画モード、静止画モードなどの駆動モードに応じて変更されることがある。そして、同じ発光電流になるように駆動電圧(信号電圧)の電圧値を設定しても、リフレッシュレートや発光デューティが変更されると、ガンマ特性(即ち、駆動電圧に対する発光輝度の特性)が変動し、それに伴って画質の変動を引き起こす。
【0048】
尚、上記の構成の画素20は、有機EL素子21の容量不足分を補い、保持容量24に対する映像信号の書込みゲインを高めるために補助容量25を有する画素構成となっている。但し、補助容量25を必要としない画素構成においても、有機EL素子21の寄生容量(等価容量)が補助容量25と同様に上記の遅延に対して影響を及ぼすと考えることができる。
【0049】
ここで、発光デューティやリフレッシュレートを変更したときのガンマ特性の変動について説明する。
【0050】
図3Aは、発光デューティを変更したときのガンマ特性の変動を示す図であり、図3Bは、図3Aの破線で囲んだ低輝度発光領域を拡大して示す図である。ここでは、発光デューティが45%、30%、20%のときのガンマ特性を示している。特に図3Bから、発光デューティの違いによってガンマ特性が変化していることがわかる。より具体的には、発光デューティを45%→30%→20%と変更することで、ガンマ特性が高階調側に変動(シフト)する。この変動量は一見して小さく見えるが、図3Bに示す発光輝度の低い領域では、目視でも十分認識することができる変動量である。この変動量によって映像の明るさに違いが生じてしまうことになる。
【0051】
図4Aは、リフレッシュレートを変更したときのガンマ特性の変動を示す図であり、図4Bは、図4Aの破線で囲んだ低輝度発光領域を拡大して示す図である。ここでは、リフレッシュレートが60Hz、90Hz、120Hzのときのガンマ特性を示している。特に図4Bから、リフレッシュレートの違いによってガンマ特性が変化していることがわかる。より具体的には、リフレッシュレートを60Hz→90Hz→120Hzと変更することで、ガンマ特性が高階調側に変動(シフト)する。
【0052】
ガンマ特性の変動の発生原理について、図5を用いて説明する。低輝度発光領域(発光部)では、有機EL素子21に電流を流して発光させる際に、有機EL素子21の等価容量、あるいは、並列に接続される補助容量25の存在によって、充電される時間が長い。従って、有機EL素子21に電流を流し始めてからすぐには有機EL素子21は発光しない。そのため、発光時間に影響を及ぼす発光デューティやリフレッシュレートによって、平均の発光輝度が大きく変化してしまう。
【0053】
<実施形態の説明>
本開示の実施形態は、ガンマ補正部を有する映像信号処理回路、又は、当該映像信号処理回路を備える表示装置、例えば、有機EL表示装置に適用される。そして、実施形態では、発光デューティ及びリフレッシュレートの少なくとも一方を変更したときに生ずる発光輝度の変動を補正するために、ガンマ補正後の映像信号に対して、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方に応じたオフセット成分を与えるようにする。
【0054】
具体的には、ガンマ補正部を有する映像信号処理回路において、ガンマ補正部でガンマ補正後の映像信号に対して、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方に応じたオフセット成分を与える構成とする。より具体的には、ガンマ補正部の後段に、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方に応じたオフセット成分を与えるガンマ修正部を設ける構成とする。
【0055】
リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方を変更した際に、ガンマ特性は、階調方向(信号電圧/駆動電圧の大小方向)に変動(シフト)する。そこで、ガンマ補正後の映像信号に対して、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方に応じたオフセット成分を与える。オフセット成分は、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方を変更した際に生ずる、ガンマ特性のシフト量(変動量)に対応した値に設定される。
【0056】
ガンマ特性のシフト量に対応した値のオフセット成分を、ガンマ補正後の映像信号に与えることで、ガンマ特性の変動分を補正(キャンセル)することができる。オフセット成分としては、ガンマ特性のシフト量に対応した値に設定するのが好ましいが、これに限られるものではない。ガンマ補正後の映像信号に対して所定の値のオフセット成分を与えることで、オフセット成分を与えない場合に比べて、ガンマ特性の変動分を抑えることができる。
【0057】
一例として、発光デューティが20%のガンマ特性を基準にして、発光デューティを45%にしたときの輝度比を、ガンマ特性の変動分について補正なしと補正ありでプロットしたグラフを図6に示す。補正なし、即ち、発光デューティ45%の場合には、輝度0.06%以下で発光デューティ20%との輝度比が2.0程度である。これに対して、補正あり、即ち、発光デューティ45%+オフセット成分の場合には、輝度0.06%以下で発光デューティ20%との輝度比が1.0程度となる。
【0058】
このように、ガンマ補正後の映像信号に対して、リフレッシュレートや発光デューティに応じたオフセット成分を与える補正を行うことで、特に視認し易い低輝度発光領域においても、基準のガンマ特性に近い結果を得ることができる。その結果、リフレッシュレートや発光デューティを変更しても、画質の変動の無い映像を得ることができる。
【0059】
以下に、本実施形態の映像信号処理回路の具体的な実施例、より具体的には、ガンマ修正部の実施例について説明する。
【0060】
[実施例1]
図7Aは、実施例1に係る映像信号処理回路の構成を示すブロック図である。図7Aに示すように、実施例1に係る映像信号処理回路80Aは、ガンマ補正部81と、ガンマ修正部82とを有し、ガンマ補正及びガンマ修正した後の映像信号を、表示パネル70の信号出力部60に供給する。この点については、以下に説明する各実施例においても同様である。
【0061】
実施例1にあっては、ガンマ補正部81は、例えば補正テーブル(変換テーブル)811から成る。この点についても、以下に説明する各実施例において同様である。補正テーブル811は、デバイス固有の非線形な光学応答特性に対応して決まるガンマ補正カーブに基づくガンマ補正データをテーブルとして格納する。ガンマ補正部81は、入力される映像信号に対して、補正テーブル811を用いてガンマ補正を行うことで、表示パネル70のガンマ特性に合った映像信号に変換する。
【0062】
実施例1にあっては、ガンマ修正部82は、発光デューティやリフレッシュレートに応じたオフセット成分を生成するオフセット成分生成部821と、ガンマ補正部81でガンマ補正後の映像信号に対してオフセット成分を加算(減算を含む)する加算部822と、を有する構成となっている。そして、実施例1にあっては、オフセット成分生成部821として、例えばテーブル(オフセットテーブル)を用いる。オフセットテーブルは、発光デューティとリフレッシュレートとに対応したオフセット成分(オフセット値)を格納する3次元テーブルである。
【0063】
上記の構成のガンマ修正部82において、オフセット成分生成部821は、発光デューティやリフレッシュレートに対応したオフセット成分をオフセットテーブルから選択して出力する。このオフセット成分は、発光デューティやリフレッシュレートを変更した際に生ずる、ガンマ特性のシフト量(変動量)に対応して設定されている。従って、加算部822において、図7Bに示すように、オフセット成分生成部821から出力されるオフセット成分αを、ガンマ補正後の信号V2に加算し、黒レベルを修正してガンマ修正後の信号V1とすることで、ガンマ特性のシフト分(変動分)を補正することができる。
【0064】
因みに、テーブルを用いてガンマ特性のシフト分を補正するに当たって、変更する発光デューティ及びリフレッシュレートそれぞれに対応したテーブルを用意する手法も考えられる。しかしながら、この手法を採る場合、変更する発光デューティ及びリフレッシュレートの全ての組み合わせについてのテーブルが必要となるため、回路構成が複雑で、規模が大きくなってしまう。これに対して、実施例1にあっては、発光デューティ及びリフレッシュレートの全ての組み合わせ分のテーブルは不要となり、3次元テーブルであるオフセットテーブルが1つのみで済むため、回路構成の簡略化、規模の縮小化を図ることができる。
【0065】
[実施例2]
図8は、実施例2に係る映像信号処理回路の構成を示すブロック図である。図8に示すように、実施例2に係る映像信号処理回路80Bにあっては、ガンマ修正部82は、加算部822に加えて、発光時間算出部823及びオフセットテーブル823を有する構成となっている。
【0066】
有機EL素子21の発光時間は、リフレッシュレート(フレームレート)や発光デューティによって決まる。発光時間算出部823は、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方、好ましくは両方に基づいて有機EL素子21の発光時間を算出する。オフセットテーブル823は、有機EL素子21の発光時間に対応したオフセット成分(オフセット値)を格納する2次元テーブルである。
【0067】
上記の構成の実施例2に係る映像信号処理回路80Bにあっては、発光時間算出部823が算出した発光時間に対応したオフセット成分をオフセットテーブル823から選択して出力する。そして、オフセットテーブル823で選択されたオフセット成分は、加算部822において、ガンマ補正部81でガンマ補正後の映像信号に加算(減算を含む)される。
【0068】
実施例2に係る映像信号処理回路80Bにあっても、実施例1に係る映像信号処理回路80Aと同様に、発光デューティやリフレッシュレートを変更した際に生ずる、ガンマ特性のシフト量(変動量)を補正することができる。加えて、実施例1では、オフセット成分生成部821として3次元テーブルが必要であったのに対して、実施例2では、オフセットテーブル823として2次元テーブルで良いため、テーブルの規模を実施例1の場合よりも更に縮小できる利点がある。
【0069】
[実施例3]
図9Aは、実施例3に係る映像信号処理回路の構成を示すブロック図であり、図9Bは、オフセット成分(オフセット量)の変換式についての説明図である。図9Aに示すように、実施例3に係る映像信号処理回路80Cにあっては、実施例2のオフセットテーブル823に代えて、オフセット算出部825を用いる構成となっている。オフセット算出部825は、発光時間算出部823が算出した発光時間に基づいて、当該発光時間に対応したオフセット成分(オフセット量/オフセット値)を算出する。
【0070】
ここで、オフセット算出部825において、発光時間に基づいてオフセット成分(オフセット量)を算出するための変換式について、図9Bを参照しつつ説明する。
【0071】
ある2つの想定発光期間t1,t2について考える。ここで、発光デューティ[%]をd1,d2とし、リフレッシュレート[Hz]をf1,f2とすると、t1=d1/f1、t2=d2/f2となる。この場合、発光を開始するときの駆動トランジスタ22(図2参照)の電流値をそれぞれIds1,Ids2とすると、
ds1×t1=Ids2×t2=S
となる。ここで、Sは固定値であり、非発光時に補助容量25(図2参照)に充電される電荷量である。
【0072】
また、階調と電流の関係は、電流値Ids1,Ids2の差が微小であれば、ほぼリニアな関係と考えることができる。従って、想定発光期間t1から想定発光期間t2に変更したときのオフセット量(オフセット成分)は、
オフセット量=α×(Ids2−Ids1
=α×{(S/t2)−Ids1
=(α×S/t2)−α×Ids1
と表わすことができる。ここで、αは駆動トランジスタ22の電流値Idsから階調への変換係数であり、画素設計で決定される固定値である。
【0073】
従って、想定発光期間t1の発光条件を基準とすれば、α×S,α×Ids1は固定値となるので、想定発光期間t2をパラメータとしてオフセット量(オフセット成分)を算出することができる。
【0074】
このように、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方から発光時間を算出し、当該発光時間に基づいてオフセット成分を算出する実施例3にあっても、発光デューティやリフレッシュレートを変更した際に生ずる、ガンマ特性のシフト量(変動量)を補正することができる。
【0075】
[実施例4]
図10は、実施例4に係る映像信号処理回路の構成を示すブロック図である。図10に示すように、実施例4では、表示パネル(表示装置)の表示エリア外にダミー画素20Aが設けられていることを前提とする。そして、ダミー画素20Aの輝度あるいは当該ダミー画素20Aの発光素子(有機EL素子)に流れる電流値を測定部90で測定するようにする。測定部90は、輝度センサー、あるいは、電流計等から成る。
【0076】
また、実施例4に係る映像信号処理回路80Dにあっては、ガンマ修正部82は、加算部822に加えて、オフセット算出部826を有する構成となっている。オフセット算出部826は、測定部90の測定結果、即ち、ダミー画素20Aの輝度あるいは当該ダミー画素20Aの発光素子に流れる電流値に基づいて、オフセット成分(オフセット量/オフセット値)を算出する。
【0077】
このように、ダミー画素20Aの輝度あるいはダミー画素20Aの発光素子に流れる電流値を測定し、その測定結果に基づいてオフセット成分を算出する実施例4にあっても、発光デューティやリフレッシュレートを変更した際に生ずる、ガンマ特性のシフト量(変動量)を補正することができる。
【0078】
<変形例>
以上、本開示の技術について実施形態を用いて説明したが、本開示の技術は上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。すなわち、本開示の技術の要旨を逸脱しない範囲内で上記の実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本開示の技術の技術的範囲に含まれる。
【0079】
例えば、上記の実施形態では、有機EL素子21を駆動する駆動回路について、2つのトランジスタ(22,23)及び2つ容量素子(24,25)から成る2Tr/2C型の回路としたが、これに限られるものではない。例えば、閾値補正に用いる基準電圧Vofsを選択的に駆動トランジスタ23に与えるスイッチングトランジスタを追加した回路構成や、必要に応じて更に1つあるいは複数のトランジスタを追加した回路構成とすることもできる。
【0080】
また、上記の実施形態では、画素20の電気光学素子として、有機EL素子を用いた有機EL表示装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、本開示はこの適用例に限られるものではない。具体的には、本開示は、無機EL素子、LED素子、半導体レーザー素子など、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子を用いた表示装置全般に対して適用可能である。
【0081】
尚、本開示は以下のような構成を取ることもできる。
[1]映像信号に対してガンマ補正を行うガンマ補正部と、
ガンマ補正部でガンマ補正後の映像信号に対して、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方に応じたオフセット成分を与えるガンマ修正部と、
を備える映像信号処理回路。
[2]ガンマ修正部は、
リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方に応じたオフセット成分を生成するオフセット成分生成部と、
ガンマ補正部でガンマ補正後の映像信号に対してオフセット成分を加算する加算部と、を有する上記[1]に記載の映像信号処理回路。
[3]オフセット成分生成部は、
リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方に応じたオフセット成分を格納したテーブルから成り、
リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方に対応したオフセット成分をテーブルから選択して出力する上記[2]に記載の映像信号処理回路。
[4]オフセット成分生成部は、
リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方に基づいて発光時間を算出する発光時間算出部と、
発光時間に応じたオフセット成分を格納したテーブルと、
を有し、
発光時間算出部が算出した発光時間に対応したオフセット成分をテーブルから選択して出力する上記[2]に記載の映像信号処理回路。
[5]オフセット成分生成部は、
リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方から発光時間を算出する発光時間算出部と、
発光時間算出部が算出した発光時間に基づいてオフセット成分を算出するオフセット算出部と、
を有する上記[2]に記載の映像信号処理回路。
[6]表示装置の表示エリア外に設けられたダミー画素の輝度あるいは当該ダミー画素の発光素子に流れる電流値を測定する測定部と、
測定部の測定結果に基づいてオフセット成分を算出するオフセット算出部と、
を有する上記[2]に記載の映像信号処理回路。
[7]オフセット成分は、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方を変更した際に生ずる、ガンマ特性のシフト量に対応した値に設定される上記[1]乃至上記[6]のいずれかに記載の映像信号処理回路。
[8]ガンマ補正後の映像信号に対して、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方に応じたオフセット成分を与える映像信号処理方法。
[9]映像信号に対してガンマ補正を行うガンマ補正部と、
ガンマ補正部でガンマ補正後の映像信号に対して、リフレッシュレート及び発光デューティの少なくとも一方に応じたオフセット成分を与えるガンマ修正部と、
を備える映像信号処理回路を有する表示装置。
【符号の説明】
【0082】
10・・・有機EL表示装置、20・・・画素、20A・・・ダミー画素、21・・・有機EL素子、22・・・駆動トランジスタ、23・・・サンプリングトランジスタ、24・・・保持容量、25・・・補助容量、30・・・画素アレイ部、31(311〜31m)・・・走査線、32(321〜32m)・・・電源供給線、33(331〜33n)・・・信号線、40・・・書込み走査部、50・・・駆動走査部、60・・・信号出力部、70・・・表示パネル、80A,80B,80C,80D・・・信号処理回路、81・・・ガンマ補正部、82・・・ガンマ修正部、90・・・測定部、821・・・オフセット成分生成部、822・・・加算部、823・・・発光時間算出部、824・・・オフセットテーブル、825,826・・・オフセット算出部、WS(WS1〜WSm)・・・書込み走査信号、DS(DS1〜DSm)・・・電源供給線の電位(電源電位)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10