特許第6281144号(P6281144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 石原ケミカル株式会社の特許一覧

特許6281144カーエアコンディショナー用洗浄剤組成物およびそれを用いたエアゾール組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281144
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】カーエアコンディショナー用洗浄剤組成物およびそれを用いたエアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20180208BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20180208BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20180208BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20180208BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20180208BHJP
   C11D 3/28 20060101ALI20180208BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20180208BHJP
   C11D 1/74 20060101ALI20180208BHJP
   C11D 17/04 20060101ALI20180208BHJP
   C11D 3/22 20060101ALI20180208BHJP
   C23F 11/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C11D17/08
   B60H1/32
   C11D1/62
   C11D1/68
   C11D3/43
   C11D3/28
   C11D1/75
   C11D1/74
   C11D17/04
   C11D3/22
   C23F11/00
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-124011(P2016-124011)
(22)【出願日】2016年6月22日
(65)【公開番号】特開2017-226766(P2017-226766A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2017年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】嬉野 智子
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 俊幸
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−261900(JP,A)
【文献】 特開2010−138295(JP,A)
【文献】 再公表特許第2014/119755(JP,A1)
【文献】 特開2014−74125(JP,A)
【文献】 再公表特許第2009/075142(JP,A1)
【文献】 特開2007−262258(JP,A)
【文献】 特開2000−230199(JP,A)
【文献】 特開平10−265800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 17/08
B60H 1/32
C11D 1/62
C11D 1/68
C11D 1/74
C11D 1/75
C11D 3/22
C11D 3/28
C11D 3/43
C11D 17/04
C23F 11/00
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジ長鎖アルキル短鎖アルキルポリオキシエチレンアンモニウム有機酸塩およびジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム有機酸塩の少なくともいずれか一方からなる有機系抗菌防黴剤0.1〜5.0質量%と、(B)消臭剤0.01〜5.0質量%と、(C)有機系防錆剤0.01〜5.0質量%と、(D)脂肪酸エステル以外の界面活性剤0.1〜10.0質量%と、(E)HLBが3.0〜16.0の脂肪酸エステルからなる親水化剤0.1〜20.0質量%と、(F)アルコール性有機溶剤60〜99質量%と、を含有してなることを特徴とするカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記(B)消臭剤が、(B1)天然抽出物である請求項1記載のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記(B)消臭剤として、更に(B2)シクロデキストリンを含有する請求項2記載のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記(C)有機系防錆剤が、ベンゾトリアゾール系化合物、アンモニウム塩系化合物および安息香酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか一項記載のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記(D)脂肪酸エステル以外の界面活性剤が、脂肪酸エステル以外の非イオン系界面活性剤である請求項1〜4のいずれか一項記載のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記脂肪酸エステル以外の非イオン系界面活性剤が、アルキルアミンオキサイドである請求項5記載のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物。
【請求項7】
前記(E)HLBが3.0〜16.0の脂肪酸エステルからなる親水化剤が、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸エステルである請求項1〜6のいずれか一項記載のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物。
【請求項8】
前記(F)アルコール性有機溶剤が、炭素数2〜5の低級アルコール性有機溶剤である請求項1〜7のいずれか一項記載のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項記載のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物、および、噴射剤を含有してなることを特徴とするカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物。
【請求項10】
前記噴射剤が、窒素ガスである請求項9記載のカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物。
【請求項11】
エアゾール容器に加圧充填された請求項9または10記載のカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物。
【請求項12】
前記エアゾール容器の噴射圧が、0.6〜0.9MPaである請求項11記載のカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物。
【請求項13】
前記エアゾール容器の噴出口の孔径が、0.4mm以下である請求項11または12記載のカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物。
【請求項14】
前記エアゾール容器の噴出口に、孔径が0.4mm以下である可撓性細管を付設した請求項11〜13のいずれか一項記載のカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーエアコンディショナー用洗浄剤組成物およびそれを用いたカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物に関し、詳しくは、エバポレーターフィン表面の親水性が持続されることで、結露水によるフィンの目詰まりや、水滴飛散を防止することができ、エアコンディショナー効率の改善につなげることが可能なカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物およびそれを用いたカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のエアコンディショナー(以下「カーエアコンディショナー」と称する)の内部に発生する細菌や黴のような微生物を撲滅したり、タバコ臭のような悪臭を消臭するためにカーエアコンディショナー用洗浄剤が用いられている。
【0003】
カーエアコンディショナー用洗浄剤に用いられる洗浄剤組成物としては、例えば、有機系抗菌防黴剤、有機カルボン酸またはその塩と天然抽出物との混合物からなる消臭剤、防錆剤、界面活性剤を含有してなる洗浄剤組成物(特許文献1参照)や、ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウムカルボン酸塩、植物抽出エキス、ハロゲン原子を有しない有機系防錆剤、ハロゲン原子を有しない非イオン性界面活性剤、残部アルコール性有機溶剤からなる洗浄剤組成物(特許文献2参照)がこれまで提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−261900号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献2】特開2010−138295号公報(特許請求の範囲その他)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カーエアコンディショナーを長期使用すると、エバポレーターフィン表面の処理被膜の劣化や、フィン表面への汚れの堆積などにより、フィン表面の親水性が低下してしまう。フィン表面の親水性が低下すると、エバポレーターで発生した結露水によるフィンの目詰まりや、エアコンディショナーの吹き出し口から水滴が飛散するといった問題が発生する場合がある。しかしながら、従来のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物では、抗菌持続性、防黴性、消臭性のような諸性能を維持したまま、フィン表面の親水性を持続させることは困難であり、改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、エバポレーターフィン表面の親水性が持続されることで、結露水によるフィンの目詰まりや、水滴飛散を防止することができ、エアコンディショナー効率の改善につなげることが可能なカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物およびそれを用いたカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解消するために鋭意検討した結果、特定の脂肪酸エステルが持続的な親水性を発揮することを突き止め、これを配合することで前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物は、(A)ジ長鎖アルキル短鎖アルキルポリオキシエチレンアンモニウム有機酸塩およびジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム有機酸塩の少なくともいずれか一方からなる有機系抗菌防黴剤0.1〜5.0質量%と、(B)消臭剤0.01〜5.0質量%と、(C)有機系防錆剤0.01〜5.0質量%と、(D)脂肪酸エステル以外の界面活性剤0.1〜10.0質量%と、(E)HLBが3.0〜16.0の脂肪酸エステルからなる親水化剤0.1〜20.0質量%と、(F)アルコール性有機溶剤60〜99質量%と、を含有してなることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物は、本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物、および、噴射剤を含有してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エバポレーターフィン表面の親水性が持続されることで、結露水によるフィンの目詰まりや、水滴飛散を防止することができ、エアコンディショナー効率の改善につなげることが可能なカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物およびそれを用いたカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物は、(A)ジ長鎖アルキル短鎖アルキルポリオキシエチレンアンモニウム有機酸塩およびジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム有機酸塩の少なくともいずれか一方からなる有機系抗菌防黴剤0.1〜5.0質量%と、(B)消臭剤0.01〜5.0質量%と、(C)有機系防錆剤0.01〜5.0質量%と、(D)脂肪酸エステル以外の界面活性剤0.1〜10.0質量%と、(E)HLBが3.0〜16.0の脂肪酸エステルからなる親水化剤0.1〜20.0質量%と、(F)アルコール性有機溶剤60〜99質量%と、を含有してなるものである。
【0012】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物において(A)成分として用いられる有機系抗菌抗黴剤としては、ジ長鎖アルキル短鎖アルキルポリオキシエチレンアンモニウム有機酸塩およびジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム有機酸塩の少なくともいずれか一方の第四級アンモニウム塩を用いることが必要であり、金属部品の腐食に対する影響から対イオンがハロゲンではなく、有機酸であることが肝要である。また、昨今の規制法令から、例えば化審法(監視化学物質や優先評価化学物質)のような法令に該当しない化合物を選定することが望ましい。本発明の(A)成分は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0013】
前記ジ長鎖アルキル短鎖アルキルポリオキシエチレンアンモニウム有機酸塩において、第四級アンモニウム塩を構成する2個の長鎖アルキル基はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよいが同一の方が好ましく、長鎖アルキル基としては炭素数8〜12のアルキル基が、短鎖アルキル基としては炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。また、オキシエチレンユニットは1〜50が好ましい。
【0014】
前記ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム有機酸塩において、第四級アンモニウム塩を構成する2個の長鎖アルキル基はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよいが同一の方が好ましく、長鎖アルキル基としては炭素数8〜12のアルキル基が好ましい。また、第四級アンモニウム塩を構成する2個の短鎖アルキル基はそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよいが異なる方が好ましく、短鎖アルキル基としては炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
【0015】
本発明の(A)成分の有機酸塩としては、プロピオン酸塩やアジピン酸塩のようなカルボン酸塩、メトサルフェート塩やエトサルフェート塩のようなスルホン酸塩や、炭酸塩などが挙げられるが、中でもカルボン酸塩およびスルホン酸塩が好ましい。
【0016】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物中の(A)成分の混合割合は、該洗浄剤組成物全量に基づき0.1〜5.0質量%、好ましくは0.3〜3.0質量%の範囲から選ばれる。(A)成分が0.1質量%よりも少ないと、抗菌抗黴効果が不十分になるし、また5.0質量%よりも多くなると、洗浄剤組成物自体が不安定になり、固形分が析出するため、エアゾールで使用する場合、噴射不能を起こす上に、噴射後の液の付着量が多くなりすぎ、エアコンディショナー部位に悪影響を与えるおそれがある。
【0017】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物においては、洗浄剤組成物の適用時の除菌効果を増強するために、イソチアゾリン系化合物、例えば2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンなどや、分子内にアミノ基、カルボキシル基を持つアミノ酸、例えばナトリウムアルキルジ(アミノエチル)グリシン、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムなどや、ピリチオン系化合物、例えばピリチオンナトリウム、ピリチオン亜鉛などの除菌増強剤を併用することができる。中でも、除菌増強剤としてはピリチオン系化合物が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
前記除菌増強剤をさらに配合する場合、その混合割合は洗浄剤組成物全量に基づき0.01〜1.5質量%の範囲から選ぶことができる。
【0019】
次に、本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物において(B)成分として用いられる消臭剤としては、(B1)天然抽出物が好ましい。この天然抽出物としては、例えば柿、茶や竹のようなポリフェノールを含むものがより好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
この(B)成分として、更に(B2)シクロデキストリンを含有してもよく、(B1)天然抽出物と(B2)シクロデキストリンを併用することで、低級脂肪酸臭をさらに効率的に消臭することができる。
【0021】
本発明の(B)成分の混合割合は、洗浄剤組成物全量に基づき0.01〜5.0質量%、好ましくは0.1〜5.0質量%の範囲から選ばれる。(B)成分の量が0.01質量%よりも少ないと消臭効果が不十分になるし、5.0質量%よりも多くなると洗浄剤組成物自体の安定性を欠き、エアゾールで使用する際に固形分の析出によるエアゾールの噴射障害をもたらすおそれがある。
【0022】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物において(C)成分として用いられる有機系防錆剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、アンモニウムニトライトのようなアンモニウム塩系化合物およびp−t−ブチル安息香酸のような安息香酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。中でも、ベンゾトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、ジイソプロピルアンモニウムニトライトが好ましい。
【0023】
本発明の(C)成分の混合割合は、洗浄剤組成物全量に基づき0.01〜5.0質量%、好ましくは0.05〜2.0質量%、さらに好ましくは0.1〜2.0質量%の範囲から選ばれる。(C)成分が0.01質量%よりも少ないと防錆効果が不十分になって、エアコンディショナーの基材の保護が十分に行われなくなるし、5.0質量%より多くなると、洗浄剤組成物自体の安定性が確保されず、またエアゾールで使用する際に固形分の析出による噴射不能が引き起こされるおそれがある。
【0024】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物において(D)成分として用いられる界面活性剤は、脂肪酸エステル以外から選ばれるが、可溶化洗浄作用に優れた非イオン系界面活性剤が好ましい。このような非イオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルアミンエチレンオキサイド、アルキルジエタノールアマイド、アルキルアミンオキサイドなどを挙げることができる。中でも洗浄剤組成物適用時に除菌性も与えるという点で、アルキルアミンオキサイドが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明の(D)成分の混合割合は、洗浄剤組成物全量に基づき0.1〜10.0質量%、好ましくは0.1〜5.0質量%の範囲から選ばれる。(D)成分が0.1質量%よりも少ないと、洗浄剤組成物の安定性が損なわれ、分離しやすくなる結果、洗浄力が低下するおそれがあり、10.0質量%よりも多くなるとエアコンディショナーの基材に悪影響を与えるおそれがある。
【0026】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物において(E)成分として用いられる親水化剤は、HLBが3.0〜16.0の脂肪酸エステルであることが必要であるが、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。脂肪酸エステルの脂肪酸部分としては、直鎖または分岐鎖の炭素数8〜22の脂肪酸が好ましく、より好ましくは炭素数8〜18の脂肪酸である。また、前記脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれでもよい。これらは、単独で用いてもよいし、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明の親水化剤として用いることのできるモノグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノグリセライドやアセチル化モノグリセライドのようなグリセリン脂肪酸モノエステル、有機酸モノグリセライドのようなグリセリン脂肪酸ジエステル、モノ・ジグリセライドのようなグリセリン脂肪酸モノ・ジエステル、中鎖脂肪酸トリグリセライドのようなグリセリン脂肪酸トリエステルなどが挙げられる。
【0028】
グリセリン脂肪酸モノエステルの具体例としては、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノ−12−ヒドロキシステアレート、グリセリンモノアラキジエート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノオレートなどが挙げられる。
【0029】
グリセリン脂肪酸ジエステルの具体例としては、グリセリンジカプリレート、グリセリンジカプレート、グリセリンジラウレート、グリセリンジミリステート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジステアレート、グリセリンジオレートなどが挙げられる。
【0030】
グリセリン脂肪酸モノ・ジエステルの具体例としては、グリセリンモノ・ジステアレート、グリセリンモノ・ジベヘネート、グリセリンモノ・ジオレートなどが挙げられる。
【0031】
グリセリン脂肪酸トリエステルの具体例としては、グリセリントリカプリレート、グリセリントリカプレート、グリセリントリラウレートなどが挙げられる。
【0032】
本発明の親水化剤として用いることのできるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ジグリセリン脂肪酸エステル、テトラグリセリン脂肪酸エステル、ペンタグリセリン脂肪酸エステル、ヘキサグリセリン脂肪酸エステルやデカグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0033】
ジグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、ジグリセリンモノカプリレート、ジグリセリンモノカプレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノミリステート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノオレートのようなジグリセリン脂肪酸モノエステルや、ジグリセリンジラウレート、ジグリセリンジミリステート、ジグリセリンジパルミテート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリンジオレートのようなジグリセリン脂肪酸ジエステルなどが挙げられる。
【0034】
テトラグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、テトラグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンモノミリステート、テトラグリセリンモノパルミテート、テトラグリセリンモノステアレート、テトラグリセリンモノオレートのようなテトラグリセリン脂肪酸モノエステル、テトラグリセリントリラウレート、テトラグリセリントリミリステート、テトラグリセリントリパルミテート、テトラグリセリントリステアレート、テトラグリセリントリオレートのようなテトラグリセリン脂肪酸トリエステル、テトラグリセリンペンタラウレート、テトラグリセリンペンタミリステート、テトラグリセリンペンタパルミテート、テトラグリセリンペンタステアレート、テトラグリセリンペンタオレートのようなテトラグリセリン脂肪酸ペンタエステルなどが挙げられる。
【0035】
ペンタグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、ペンタグリセリンモノラウレート、ペンタグリセリンモノミリステート、ペンタグリセリンモノパルミテート、ペンタグリセリンモノステアレート、ペンタグリセリンモノオレートのようなペンタグリセリン脂肪酸モノエステル、ペンタグリセリンジステアレートのようなペンタグリセリン脂肪酸ジエステル、ペンタグリセリントリステアレートのようなペンタグリセリン脂肪酸トリエステル、ペンタグリセリンヘキサステアレートのようなペンタグリセリン脂肪酸ヘキサエステルなどが挙げられる。
【0036】
ヘキサグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、ヘキサグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノミリステート、ヘキサグリセリンモノパルミテート、ヘキサグリセリンモノステアレート、ヘキサグリセリンモノオレートのようなヘキサグリセリン脂肪酸モノエステル、ヘキサグリセリントリステアレートのようなヘキサグリセリン脂肪酸トリエステル、ヘキサグリセリンペンタステアレート、ヘキサグリセリンペンタオレートのようなヘキサグリセリン脂肪酸ペンタエステルなどが挙げられる。
【0037】
デカグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、デカグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノミリステート、デカグリセリンモノパルミテート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノオレートのようなデカグリセリン脂肪酸モノエステル、デカグリセリンジステアレートのようなデカグリセリン脂肪酸ジエステル、デカグリセリントリステアレートのようなデカグリセリン脂肪酸トリエステル、デカグリセリンペンタステアレート、デカグリセリンペンタオレートのようなデカグリセリンペンタエステル、デカグリセリンデカステアレート、デカグリセリンデカオレートのようなデカグリセリンデカエステルなどが挙げられる。
【0038】
本発明の親水化剤として用いることのできるソルビタン脂肪酸エステルの具体例としては、ソルビタンカプレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンミリステート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレート、ソルビタンベヘネート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレート、ソルビタントリベヘネートなどが挙げられる。
【0039】
本発明における前記ソルビタン脂肪酸エステルはポリオキシエチレン付加物であってもよいし、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレートのようなソルビトール型のものであってもよい。ソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシエチレン付加物の具体例としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートなどが挙げられる。
【0040】
本発明の親水化剤として用いることのできるポリエチレングリコール脂肪酸エステルの具体例としては、ポリエチレングリコールモノラウレート、エチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0041】
本発明の親水化剤として用いることのできるプロピレングリコール脂肪酸エステルの具体例としては、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノミリステート、プロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノオレート、プロピレングリコールモノベヘネートなどが挙げられる。
【0042】
本発明の(E)成分の脂肪酸エステルは、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびポリエチレングリコール脂肪酸エステルがより好ましく、ジグリセリン脂肪酸エステルがさらに好ましい。中でも、他の成分との溶解性や洗浄剤組成物自体の安定性の観点から、ジグリセリンモノオレートに代表されるジグリセリン脂肪酸モノエステルが特に好ましい。
【0043】
本発明の(E)成分の混合割合は、洗浄剤組成物全量に基づき0.1〜20.0質量%、好ましくは0.5〜10.0質量%の範囲から選ばれる。(E)成分が0.1質量%よりも少ないと、親水効果が悪く、20.0質量%よりも多くなると、洗浄剤組成物自体の安定性が確保されず、また、エアゾールで使用する際に固形分の析出による噴射不能が引き起こされるおそれがある。
【0044】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物において(F)成分として用いられる有機溶剤としては、容易に揮発するアルコール性有機溶剤を用いることが必要である。このアルコール性有機溶剤としては、アルコールおよびグリコールエーテルの中から選ばれた少なくとも1種が好ましい。中でも、前記各成分を溶解し、分散させる作用のある炭素数2〜5の低級アルコール性有機溶剤が好ましい。
【0045】
前記低級アルコール性有機溶剤の具体例としては、エチルアルコール、n‐プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどのような低級アルコールや、エチレングリコールメチルエーテルなどのような低級グリコールエーテルが挙げられるが、人体に対する毒性が少なく、揮発しやすいという点でエタノールが特に好ましい。
【0046】
本発明の(F)成分の混合割合は、洗浄剤組成物全量に基づき60〜99質量%の範囲から選ばれる。(F)成分が60質量%よりも少ない場合は、洗浄剤組成物の乾燥性が失われ、エアコンディショナー電子部材への影響が懸念される。また、ミストタイプのエアゾールで本発明の洗浄剤組成物を使用した場合、エアゾールのミストが粗くなってエバポレーターへの洗浄剤組成物の到達率が低下するおそれがある。また、99質量%よりも多くなると、洗浄剤組成物自体の安定性が確保されず、固形分が析出してエアゾールの噴射を阻害するおそれがある。
【0047】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物においては、防錆性を保つために、各成分にハロゲンを含まないものを用いるのが好ましい。
【0048】
本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物を使用する場合は、エアゾール組成物を調製し、これを噴射して用いればよい。
【0049】
本発明のカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物は、本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物、および、噴射剤を含有してなるものである。
【0050】
噴射剤は、本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物を噴射させるために含有されており、気体、あるいは施用に際し気体となるもの、例えば、エアー、ジメチルエーテル、LPG、LNG、窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素ガス、アルゴン、ヘリウム等が挙げられるが、中でも、アルコール性有機溶剤との溶解性や安全性の点から、窒素ガスが好ましい。
【0051】
本発明のカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物は、エアゾール容器、好ましくはミストタイプのエアゾール容器に加圧充填することによって用いられる。エアゾール容器の噴射圧は適宜調整すればよいが、0.6〜0.9MPaが好ましい。噴射圧がこれよりも低いと微細なミストの形成ができないし、またこれよりも高いと破裂するおそれがあり、危険である。
【0052】
本発明に用いられるエアゾール容器の噴出口の孔径は0.4mm以下、好ましくは0.1〜0.3mmの範囲で選ばれる。また、当該噴出口に可撓性細管を付設することにより、本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物を噴射する際のミストをより細かくすることができる。この場合の細管の噴出口の孔径は、0.4mm以下、好ましくは0.1〜0.3mmの範囲で選ばれる。
【0053】
次に、本発明のカーエアコンディショナー洗浄用エアゾール組成物を使用するときの一例を以下に示す。
先ず、(F)成分のアルコール性有機溶剤に上記(A)成分ないし(E)成分および所望により用いる除菌増強剤を溶解させて、固形分濃度1〜30質量%の本発明のカーエアコンディショナー用洗浄剤組成物を調製する。このようにして調製された洗浄剤組成物に対し、噴射剤を圧入し、噴射圧を適宜、好ましくは0.6〜0.9MPaに調整し、エアゾール容器に充填する。このようにして、噴射するミストをエアコンディショナーの送風によりエバポレーターに到着させることができる。
【実施例】
【0054】
次に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらによりなんら限定されるものではない。
【0055】
(実施例1〜17および比較例1〜7)
表1〜3に示す処方(質量%)の洗浄剤組成物を調製して、以下の(1)〜(4)および(6)についてそれらの物性を評価した。さらに、上記の洗浄剤組成物を充填し、噴射剤として窒素ガスを圧入したエアゾール組成物を調製して、それらの洗浄性(5)を評価した。それらの結果を表4〜6に示す。
【0056】
(1)親水持続性
アルミニウム試験板(10×40mm)に各洗浄剤組成物を処理・乾燥させ、流水に96時間浸漬させた後取り出し、室温にて十分に乾燥した後、その表面の水に対する接触角をDrop Master(協和界面社製)を用いて測定した。なお親水持続性の評価は以下のように判断した。
◎: 10°未満
○: 10°以上20°未満
△: 20°以上40°未満
×: 40°以上
【0057】
(2)抗菌持続性
アルミニウム試験板(10×40mm)に各洗浄剤組成物を処理・乾燥させ、塩水噴霧試験機(スガ試験機社製、イオン交換水使用)中にセットし、1ヶ月間静置した。その後、試験板を取り出し、乾燥後、直径90mmのシャーレに用意した普通寒天培地(予め枯草菌を塗布)の中央に置き、25℃で3日間培養した際の、阻止円の有無を目視にて確認した。なお、抗菌持続性の評価は以下のように判断した。
○: 阻止円がはっきりと観測される
△: 僅かに阻止円が観測される
×: 阻止円なし
【0058】
(3)防黴性
直径8mmの紙製ディスクに各洗浄剤組成物を処理し、直径90mmのシャーレ中に用意したポテトデキストロース寒天培地(予め黒麹黴を塗布)の中央に置き、25℃で3日間培養した際の、阻止円の有無を目視にて確認した。なお、防黴性の評価は以下のように判断した。
○: 阻止円がハッキリと観測される
△: 僅かに阻止円が観測される
×: 阻止円なし
【0059】
(4)消臭性
臭気源として0.5%酢酸/エタノール溶液0.2ccを5Lデシケータ内の容器に入れ、30分放置後、ガステック社製ガス検知管で濃度測定を行い、コントロールとした。次に、デシケータ内に各洗浄剤組成物0.5ccを染み込ませたネル布(50×50mm)を入れ、同様に臭気濃度測定を行い、コントロールとの差を消臭率とした。なお、消臭性の評価は以下のように判断した。
○: 消臭率70%以上
△: 消臭率30%以上70%未満
×: 消臭率30%未満
【0060】
(5)洗浄性
人工汚染油として、JIS試験用粉体5種および7種、油脂、カーボンブラックを混合調製したものをアルミニウム試験板に塗布し、各エアゾール組成物を試験容器に充填して全量噴射洗浄後、試験板に塗布した最初の質量と残存分の質量との差を測定することにより洗浄率を求めた。なお、洗浄性の評価は以下のように判断した。
○: 洗浄率40%以上
△: 洗浄率20%以上40%未満
×: 洗浄率20%未満
【0061】
(6)防錆性
各洗浄剤組成物中に、研磨した鉄板を全体の半分が漬かるように浸漬し、1週間50℃の恒温槽中に放置した後での錆の有無を目視にて観察した。なお、防錆性の評価は以下のように判断した。
○: 錆発生なし
△: 部分的に錆発生
×: 板全体に錆発生
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
上記表4〜6より、本発明における親水化剤を含まない比較例の洗浄剤組成物を用いても、親水持続性が得られていないことが分かった。一方、実施例においては、優れた抗菌持続性、防黴性、消臭性、洗浄性および防錆性を奏する上に、親水持続効果にも優れていることが分かった。