特許第6281188号(P6281188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6281188ウレタン(メタ)アクリレート及びこれを含有する光硬化型樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281188
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ウレタン(メタ)アクリレート及びこれを含有する光硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/67 20060101AFI20180208BHJP
   C08G 18/78 20060101ALI20180208BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C08G18/67 010
   C08G18/78 037
   C08F299/06
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-69011(P2013-69011)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-189735(P2014-189735A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162628
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 博
(74)【代理人】
【識別番号】100119286
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 操
(72)【発明者】
【氏名】石川 正和
(72)【発明者】
【氏名】楠本 光司
【審査官】 前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−111876(JP,A)
【文献】 特開2009−074070(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/100024(WO,A1)
【文献】 特開2015−086300(JP,A)
【文献】 特開2013−087287(JP,A)
【文献】 特開2006−249435(JP,A)
【文献】 特開2009−062533(JP,A)
【文献】 特開2010−185074(JP,A)
【文献】 特開2005−162908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00− 18/87
C08F 2/00−299/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される、アロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート。
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよく水素原子又はメチル基、Rは、炭素数1〜20の2価の脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素基、Rは、炭素数1〜20の脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素基、AO及びAOは、それぞれ同一でも異なっていてもよく炭素数2〜4のオキシアルキレン基、m及びnは、同一でも異なっていてもよく、オキシアルキレン基の繰り返し単位数を表す2〜10の数である。)
【請求項2】
上記一般式(1)において、Rが脂環式炭化水素基であり、かつ、m及びnが5〜9の数である、請求項1に記載のアロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート、及び光重合開始剤を含有する、光硬化型樹脂組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート及びこれを含有する光硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、種々のプラスチック成形品は、その透明性や加工性に加え、軽量かつ安価といった利点から、自動車関連部品や電子・電気製品をはじめとする様々な分野で利用されている。しかし、これらプラスチック成形品は、一般的に硬度が低く柔軟であるため、その表面に傷が付き易い欠点がある。そのため、表面に耐擦傷性に優れる塗料・コーティング剤を塗工して、被膜を形成する手法がなされている。
【0003】
近年、被膜を形成する材料としては、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が主流となっている。これは、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって直ちに硬化するため、従来の熱硬化型樹脂と比較して熱などのエネルギーを必要とせず、加工速度が速いため生産性が非常に高いことに加え、その被膜は表面硬度、耐擦傷性、耐薬品性等に優れるためである。
【0004】
前記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としては、架橋密度を高くすることによって表面硬度を高めたハードコート層を形成する手法が、一般的に普及している。例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の分子内に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基と水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートと、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネートを反応させた多官能ウレタン(メタ)アクリレートを含有する硬化皮膜が報告されている(特許文献1参照)。特許文献1の硬化皮膜は表面硬度が高く耐擦傷性が良好であり、ハードコートの課題であった硬化収縮に起因するカールは改善されたものの、塗工後のカールが未だに大きく実用上十分ではなかった。また、破断伸度や耐屈曲性の面でも満足のいくものではなく、三次元曲面への成形加工時における追随性(加工性)が求められる用途への適用は困難であった。
【0005】
表面硬度が高く、成形加工時おける追随性(加工性)に優れる皮膜を形成することを目的として、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させたウレタン(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化型加飾積層フィルム用組成物が報告されている(特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2の組成物は、金属ブラシ等の引掻きによる細かい擦り傷に対しては傷付きやすく、かつ、一旦付いた傷は、経時的に復元して消失することがないため、長期的に美観を保持することができないという課題があった。
【0006】
他方、最近では、特許文献1のように表面硬度を高めて耐擦傷性を改善する発想とは反対に、弾性を高くすることによって外力を吸収し、傷を経時的に復元して消失させる機能を持つ被膜を形成する手法が要望されており、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートを反応させたウレタン(メタ)アクリレートが報告されている(特許文献3参照)。しかしながら、特許文献3に記載のイソシアヌレート変性体を原料として用いたウレタン(メタ)アクリレートは、傷が経時的に復元して消失するものの、硬化収縮に起因するカールが僅かながら生じ、かつ、イソシアヌレート骨格が剛直であるため、破断伸度がいまだ十分ではなく改良の余地があった。また、トリメチロールプロパンのアダクト変性体を原料として用いたウレタン(メタ)アクリレートは、傷が経時的に復元して消失するものの、復元力が低いため、傷の付き方や荷重によっては傷が残ってしまうという課題があった。
【0007】
さらに、ウレタン(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートと、アロファネート基含有ポリイソシアネートを反応させたウレタン(メタ)アクリレートが報告されている(特許文献4参照)。特許文献4では、表面硬度については良く検討されているものの、傷復元性に関しては検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−113648号公報
【特許文献2】特開2012−82274号公報
【特許文献3】特開2005−162908号公報
【特許文献4】特開平11−130835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、一旦付いた傷が経時的に復元して消失する特性を有し、成形加工時における追随性や密着性に優れ、かつ、寸法安定性や耐屈曲性にも優れるウレタン(メタ)アクリレート、及びそれを含有する光硬化型樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定構造のウレタン(メタ)アクリレートが、上記課題解決に適した化合物であることを見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 下記一般式(1)で表される、アロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、R及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよく水素原子又はメチル基、Rは、炭素数1〜20の2価の脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素基、Rは、炭素数1〜20の脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素基、AO及びAOは、それぞれ同一でも異なっていてもよく炭素数2〜4のオキシアルキレン基、m及びnは、同一でも異なっていてもよく、オキシアルキレン基の繰り返し単位数を表す2〜10の数である。)
[2] 上記一般式(1)において、Rが脂環式炭化水素基であり、かつ、m及びnが5〜9の数である、[1]に記載のアロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート。
[3] 前記[1]又は[2]に記載のアロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート及び光重合開始剤を含有する、光硬化型樹脂組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレートの硬化物は、成形加工時における追随性、寸法安定性や耐屈曲性、密着性に優れ、かつ表面に一旦傷が付いても経時的消失して復元し、長期的に美観を保持することができるなど、被膜形成用の素材として極めて適した特性を有する。したがって、本発明のアロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート及びこれを含有する光硬化型樹脂組成物は、各種プラスチック成形品やフィルムの被膜形成材として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の詳細について説明する。
上記一般式(1)で表される本発明のアロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)において、R及びRは水素原子又はメチル基であるが、硬化速度の観点から水素原子が好ましい。これらR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
は炭素数1〜20の2価の脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素基である。
脂肪族炭化水素基としては、テトラメチレン基、カルボキシメチルペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。脂環式炭化水素基としては、メチルシクロへキシレン基、シクロヘキサンジイルビスメチレン基、下記一般式(2)で表される基等が挙げられる。
【0015】
【化2】
【0016】
芳香族炭化水素基としては、トリレン基、キシリレン基等が挙げられる。Rが脂肪族又は脂環式炭化水素基であることによって、傷復元性と破断伸度を両立しながらも耐候性及び耐黄変性に優れ、さらに、脂環式炭化水素基であることによって、破断伸度が特に高いため、成形加工時における追随性(加工性)に優れる。これらの中でも、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等の脂肪族炭化水素基、シクロヘキサンジイルビスメチレン基、上記一般式(2)で表される基等の脂環式炭化水素基が好ましく、ヘキサメチレン基及び上記一般式(2)で表される基がより好ましい。
【0017】
は炭素数1〜20の脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数2〜6の脂肪族炭化水素基がよりさらに好ましい。
【0018】
O及びAOは炭素数2〜4の直鎖又は分岐状のオキシアルキレン基であり、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基等が挙げられる。これらの中でも、破断伸度及びウレタン化反応性の観点から、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基が好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。これらAO及びAOは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
m及びnはオキシアルキレン基の繰り返し単位数を表す2〜10の数であり、Rが脂環式炭化水素基である場合は5〜9の範囲であることが好ましい。これらm及びnは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、オキシアルキレン基は、それぞれ二種類以上をランダム状やブロック状に含んでいてもよい。m及びnが2未満であると傷が復元せずに傷跡が残りやすく、かつ、寸法安定性や耐屈曲性に劣る。一方、m及びnが10を超えると傷が復元せずに傷跡が残りやすく、かつ、強靭性が低いため破断伸度が低い。上記の範囲であることにより、一旦付いた傷が復元して消失し、破断伸度が格段に高いため、成形加工時における追随性に優れ、かつ、寸法安定性や耐屈曲性にも優れる。
【0019】
本発明のアロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、具体的には、下記一般式(3)で表されるアロファネート基含有ポリイソシアネート(a−1)と、下記一般式(4)で表されるポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート(a−2)を反応させることによって得られる化合物である。
【0020】
【化3】
【0021】
(式中、Rは炭素数1〜20の2価の脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素基、Rは炭素数1〜20の脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素基である。)
【0022】
【化4】
【0023】
(式中、Rは上記一般式(1)におけるR又はRであり、水素原子又はメチル基、AOは上記一般式(1)におけるAO又はAOであり、炭素数2〜4のオキシアルキレン基、pは上記一般式(1)におけるm又はnであり、オキシアルキレン基の繰り返し単位数を表す2〜10の数である。)
【0024】
前記アロファネート基含有ポリイソシアネート(a−1)は、上記一般式(3)で表される化合物であれば、特に限定されない。一般的には公知の方法に従って、脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素基を有するモノアルコールと、該モノアルコール中の水酸基当量に対してイソシアネート当量が過剰となる量の脂肪族、脂環式又は芳香族ジイソシアネートを、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム等のアロファネート化触媒の存在下でアロファネート化反応させることによって得られる化合物である。
一般に入手可能な市販品としては、例えば、上記一般式(1)におけるRがヘキサメチレン基である住化バイエルウレタン(株)社製「デスモジュールXP2580」、旭化成ケミカルズ(株)社製「デュラネートA201H」、日本ポリウレタン(株)社製「LVA−209」、「LVA−210」、「VA−211」や、Rが一般式(2)で表される脂環式炭化水素基である住化バイエルウレタン(株)社製「デスモジュールXP2565」等が挙げられる。これら(a−1)成分は、単独でも二種類以上を併用してもよい。
【0025】
前記ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート(a−2)は、上記一般式(4)で表される化合物であれば特に限定されず、一般的には公知の方法に従って、(メタ)アクリル酸又は水酸基含有(メタ)アクリレートに、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体等の触媒の存在下で、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド又はテトラヒドロフランを開環重合させることによって得られる化合物である。
具体的な化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン(平均付加モル数2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(平均付加モル数2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン(平均付加モル数2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン(平均付加モル数2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン・ポリオキシテトラメチレン(平均付加モル数2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン・ポリオキシテトラメチレン(平均付加モル数2〜10)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら(a−2)成分は、単独でも二種類以上を併用してもよい。
【0026】
本発明のアロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、前記アロファネート基含有ポリイソシアネート(a−1)と前記ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート(a−2)をウレタン化反応させることによって得られる化合物である。
(a−1)成分と(a−2)成分の配合比率は、(a−1)成分中のイソシアネート基1当量に対して(a−2)成分の水酸基が通常0.1〜10当量であり、0.5〜5当量が好ましく、0.9〜1.2当量がより好ましい。反応温度は通常10〜150℃であり、30〜120℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。反応の終点はイソシアネート基を示す2270cm−1の赤外吸収スペクトルの消失や、JIS K 7301に記載の方法でイソシアネート基の含有量を求めることで確認することができる。なお、前記ウレタン化反応では反応速度を促進する目的としてジブチルスズジラウレート等のスズ化合物や、トリエチルアミン等のアミンを触媒として用いてもよい。
【0027】
本発明の光硬化型樹脂組成物に含有させる光重合開始剤としては、下記のような化合物が挙げられる。例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン又はベンゾインアルキルエーテル;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等の芳香族ケトン;ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド;2,4−ジメチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントンが挙げられる。これらの中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイドが好ましく、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノンがより好ましい。
前記光重合開始剤の使用量は、アロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含有する樹脂固形分の合計質量に対して0.1〜20質量%の範囲が好ましく、0.5〜5質量%の範囲がより好ましい。0.1質量%未満では硬化が十分に進行せず、20質量%を越えると樹脂固形分の質量が相対的に減少し、硬化物の目標とする物性が低下するため好ましくない。
【0028】
本発明の光硬化型樹脂組成物には、任意成分として本発明の効果を阻害しない範囲内で種々の添加剤を配合することができる。添加剤の具体例としては、例えば、レベリング剤、シランカップリング剤、充填剤、顔料、チキソトロピー性付与剤、帯電防止剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
【0029】
本発明の光硬化型樹脂組成物は、アロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(A)、光重合開始剤及び必要に応じて種々の添加剤を、常法により均一に混合して得ることができる。
前記樹脂組成物は、各種のプラスチック成形品や基材フィルムに塗布することによって、保護被膜を形成するこができる。基材フィルムの材質としてはプラスチックが好ましく、熱可塑性プラスチックがより好ましい。例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等のプラスチックフィルムが挙げられる。これらの中でも、透明性や強靭性の観点からPET樹脂が好ましい。
塗布方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、フローコート法、バーコート法等の塗工方法や、グラビア印刷、スクリーン印刷等の印刷方法を適用することが可能である。塗膜の厚さは通常1〜100μmであり、傷復元性の観点から3〜80μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。100μmを超えると硬化物の硬化性が低下し、傷復元性や破断伸度が低下する恐れがあり、膜厚が1μm未満では傷復元性等の性能が十分に得られない場合があるため好ましくない。
【0030】
本発明の光硬化型樹脂組成物は、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線及び電子線より選ばれる活性エネルギー線を照射することにより硬化させることができる。活性エネルギー線の照射方法は、通常の光硬化型樹脂組成物の硬化方法を用いることができる。活性エネルギー線照射装置としては、紫外線を用いる場合、波長が200〜450nmの領域にスペクトル分布を有するフュージョンUVシステムズ社製HバルブやDバルブ等の無電極ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。活性エネルギー線の照射量は、積算光量として通常10〜3000mJ/cmであり、好ましくは50〜1000mJ/cmである。照射するときの雰囲気は、空気中でもよいし、窒素やアルゴンなどの不活性ガス中で硬化してもよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下の記載において特に規定しない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
【0032】
<実施例1>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−1)の合成]
攪拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分としてアロファネート基含有ポリイソシアネート(デスモジュールXP2580,住化バイエルウレタン(株)社製,イソシアネート基含有率=20.0%,以下、「XP2580」という。)54部、(a−2)成分としてポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数=2,水酸基価=326mgKOH/g,以下、「PEG90MA」という。)46部、ジブチルスズジラウレート(以下、「DBTDL」という。)0.02部、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、「MEHQ」という。)0.04部を投入した。なお、このときのイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法でイソシアネート基含有量が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−1)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A−1)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rがヘキサメチレン基、Rはブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが2である化合物であり、25℃における粘度は下表1に示すように12Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(標準ポリスチレン換算)は800であった。
【0033】
<実施例2>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−2)の合成]
攪拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、実施例1で使用したXP2580を47部、ポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数=3.5,水酸基価=250mgKOH/g,以下、「PEG150MA」という。)53部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、このときのイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法でイソシアネート基含有量が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−2)を100部得た。得られたウレタンアクリレート(A−2)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rがヘキサメチレン基、Rはブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが3.5である化合物であり、25℃における粘度は10Pa・s、数平均分子量は1,100であった。
【0034】
<実施例3>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−3)の合成]
攪拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、実施例1で使用したXP2580を37部、ポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数=6,水酸基価=165mgKOH/g,以下、「PEG260MA」という)63部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、このときのイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法でイソシアネート基含有量が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−3)を100部得た。得られたウレタンアクリレート(A−3)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rがヘキサメチレン基、Rはブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが6である化合物であり、25℃における粘度は9Pa・s、数平均分子量は1,400であった。
【0035】
<実施例4>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−4)の合成]
攪拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、アロファネート基含有ポリイソシアネート(デスモジュールXP2565,住化バイエルウレタン(株)社製,イソシアネート基含有率=12.0%,樹脂固形分80%(酢酸ブチル希釈),以下、「XP2565」という。)50部、ポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数=6,水酸基価=165mgKOH/g,以下、「PEG260MA」という。)50部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、このときのイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法でイソシアネート基含有量が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認してアロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−4)を得た。得られたウレタンアクリレート(A−4)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rが一般式(2)で表される脂環式炭化水素基、Rはブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが6である化合物であり、25℃における粘度は50Pa・s、数平均分子量は1,300であった。
【0036】
<実施例5>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−5)の合成]
攪拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、実施例4で使用したXP2565を47部、ポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数=7,水酸基価=146mgKOH/g,以下、「PEG310MA」という。)53部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、このときのイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法でイソシアネート基含有量が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−5)を得た。得られたウレタンアクリレート(A−5)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rが一般式(2)で表される脂環式炭化水素基、Rはブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが7である化合物であり、25℃における粘度は26Pa・s、数平均分子量は1,500であった。
【0037】
<実施例6>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−6)の合成]
攪拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、実施例4で使用したXP2565を43部、ポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数=8,水酸基価=129mgKOH/g,以下、「PEG360MA」という)57部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、このときのイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法でイソシアネート基含有量が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−6)を得た。得られたウレタンアクリレート(A−6)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rが一般式(2)で表される脂環式炭化水素基、Rはブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが8である化合物であり、25℃における粘度は16Pa・s、数平均分子量は1,650であった。
【0038】
【表1】
【0039】
<比較例1>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A’−1)の合成]
攪拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、実施例1で使用したXP2580を63部、(a’−2)成分として2−ヒドロキシエチルアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数=1,水酸基価=483mgKOH/g。以下、「HEA」という。)37部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、このときのイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法でイソシアネート基含有量が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A’−1)を得た。得られたウレタンアクリレート(A’−1)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rがヘキサメチレン基、Rはブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが1である化合物であり、25℃における粘度は11Pa・s、数平均分子量は700であった。
【0040】
<比較例2>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A’−2)の合成]
攪拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、実施例4で使用したXP2565を74部、比較例1で使用したHEAを26部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、このときのイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法でイソシアネート基含有量が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A’−2)を得た。得られたウレタンアクリレート(A’−2)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rが一般式(2)で表される脂環式炭化水素基、Rはブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが1である化合物であり、25℃における粘度は100Pa・s以上、数平均分子量は800であった。
【0041】
<比較例3>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A’−3)の合成]
攪拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、実施例1で使用したXP2580を27部、(a’−2)成分としてポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数=11,水酸基価=98mgKOH/g,以下、「PEG480MA」という)73部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、このときのイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法でイソシアネート基含有量が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A’−3)を得た。得られたウレタンアクリレート(A’−3)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rがヘキサメチレン基、Rはブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが11である化合物であり、25℃における粘度は5Pa・s、数平均分子量は2,200であった。
【0042】
<比較例4>
[ウレタンアクリレート(A’−4)の合成]
攪拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a’−1)成分としてヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」という。)のイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(デュラネートTPA−100,旭化成ケミカルズ(株)社製,イソシアネート基含有率=23.1%)を39部、ポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数=4.5,水酸基価=203mgKOH/g,以下、「PEG200MA」という。)61部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、このときのイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法でイソシアネート基含有量が0.1%となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、イソシアヌレート基含有ウレタンアクリレート(A’−4)を得た。得られたウレタンアクリレート(A’−4)は、1分子中に繰り返し単位数が4.5のポリオキシエチレン基を有するがアロファネート基は有さず、上記一般式(1)に含まれない化合物であり、25℃における粘度は16Pa・s、数平均分子量は2,300であった。
【0043】
<比較例5>
[ウレタンアクリレート(A’−5)の合成]
攪拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、比較例4で使用したTPA−100を60部、HEAを40部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、このときのイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法でイソシアネート基含有量が0.1%となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、イソシアヌレート基含有ウレタンアクリレート(A’−5)を得た。得られたウレタンアクリレート(A’−5)は、1分子中に繰り返し単位数が1のポリオキシエチレン基を有するがアロファネート基は有さず、上記一般式(1)に含まれない化合物であり、数平均分子量は1,600であった。
【0044】
<比較例6>
[ウレタンアクリレート(A’−6)の合成]
攪拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a’−1)成分としてHDIのアダクト変性ポリイソシアネート(デュラネートAE710−100,旭化成ケミカルズ(株)社製,イソシアネート基含有率12.0%)74部、HEAを26部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、このときのイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法でイソシアネート基含有量が0.1%となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、ウレタンアクリレート(A’−6)を得た。得られたウレタンアクリレート(A’−6)は、1分子中に繰り返し単位数が1のポリオキシエチレン基を有するがアロファネート基は有さず、上記一般式(1)に含まれない化合物であり、25℃における粘度は9Pa・s、数平均分子量は1,700であった。
【0045】
【表2】
【0046】
<実施例7〜12、比較例7〜12>
[光硬化型樹脂組成物の調製]
下表3及び4に示すように、上記で得られたウレタンアクリレート100部に、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184,BASFジャパン(株)社製。以下、「Irgacure184」という。)3部、添加剤としてポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(BYK−3570,ビックケミー・ジャパン(株)社製。以下、「BYK−3570」という。)0.2部、有機溶剤としてメチルエチルケトン(以下、「MEK」という。)150部を均一に混合して、樹脂固形分40%の光硬化型樹脂組成物を得た。
【0047】
[光硬化型樹脂組成物の硬化膜層を有するフィルムの作製]
易接着PETフィルム(コスモシャインA4300,膜厚100μm,東洋紡績(株)社製)上に、上記で得られた光硬化型樹脂組成物を、乾燥膜厚で25μmとなるよう塗工し、80℃にて1分間乾燥して有機溶剤を蒸発させた。次に、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン(株)社製,光源:Hバルブ)を用いて、積算光量500mJ/cmの紫外線を照射することで、光硬化型樹脂組成物の硬化膜層を有するフィルムを得た。作製したフィルムについて下記の評価を実施した結果を、下表3及び4に示す。
【0048】
<密着性>
JIS K 5600に準拠し、作製した硬化膜層を有するフィルムを、60℃、90RH%の条件下で1時間保管した後、25℃に冷却してからカッターナイフで1mm四方の碁盤目を100個作製し、市販のセロハンテープを表面に密着させた後に一気に剥がしたとき、剥離せずに残った碁盤目の個数を下記の基準により判定した。
◎:残存した碁盤目の個数が100個である。
○:残存した碁盤目の個数が90〜99個である。
△:残存した碁盤目の個数が60〜89個である。
×:残存した碁盤目の個数が60個未満である。
【0049】
<傷復元性>
作製した硬化膜層を有するフィルムに、23℃、60RH%の条件下、真鍮ブラシにより500gの荷重を掛けて5往復擦ったとき、硬化物の表面状態を目視によって下記の基準により判定した。
◎:傷が3分以内に復元する。
○:3分後に傷が認められるが、10分経過後には復元する。
△:1時間後に傷跡が若干認められる。
×:1時間後も傷が全く復元しない。
【0050】
<破断伸度>
作製した硬化膜層を有するフィルムを10mm×60mmサイズに裁断し、オートグラフを用いてチャック間距離が40mmとなるようセットした後、80℃の条件下、50mm/minの引張速度にて引張試験を行い、硬化膜にクラックが生じたときの伸度を決定した。なお、破断伸度の評価基準は下記のとおりである。
◎:破断伸度が40%以上である。
○:破断伸度が30〜40%未満である。
△:破断伸度が20〜30%未満である。
×:破断伸度が20%未満である。
【0051】
<耐屈曲性>
JIS K 5600に準拠し、作製した硬化膜層を有するフィルムの硬化膜面が外側になるよう円筒に巻きつけたとき、硬化膜の状態を下記の基準より判定した。
○:直径1mmの円筒でクラックが生じない。
△:直径1mmの円筒ではクラックが発生するが、直径4mmの円筒ではクラックが生じない。
×:直径4mmの円筒でクラックが生じる。
【0052】
<寸法安定性>
10cm×10cmにカットした硬化膜層を有するフィルムを、80℃、60RH%の条件下で1時間加熱した後、25℃に冷却してから、水平な台に硬化膜面を上にして置いたとき、浮き上がった4辺それぞれの高さの平均値を計測し、寸法安定性を下記の基準により判定した。
◎:高さの平均値が2mm未満である。
○:高さの平均値が2mm〜5mm未満である。
△:高さの平均値が5mm〜9mm未満である。
×:高さの平均値が9mm以上である。
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
上表3に示したとおり、本発明の実施例7〜12の光硬化型樹脂組成物は、一旦付いた傷が経時的に復元して消失する特性を有し、成形加工時における追随性や密着性に優れ(破断伸度)、かつ、寸法安定性や耐屈曲性にも優れていた。とくに、実施例10〜12のように、一般式(1)においてRが脂環式炭化水素基、かつ、m及びnが6〜8の範囲である化合物を用いた場合、破断伸度が特に高い。
他方、上表4の比較例7〜9に示すように、一般式(1)においてm及びnが本発明の範囲を外れる化合物を用いた場合、傷は復元性せずに傷跡が残り、かつ、耐屈曲性や密着性、寸法安定性に劣っていた。また、比較例10〜12のように、ウレタン(メタ)アクリレートの構造中にアロファネート基を有しない化合物を用いた場合にも、傷復元性、破断伸度、耐屈曲性及び寸法安定性のいずれかを満足しなかった。