(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基準タイヤを再現した有限要素モデルである基準タイヤモデルから、前記基準タイヤモデルのタイヤ断面形状が変形したタイヤ変形形状を有する変形タイヤモデルを複数定めるステップと、
タイヤ断面形状が前記基準タイヤと異なる解析対象基準タイヤを再現した有限要素モデルである解析対象基準タイヤモデルを作成するステップと、
前記変形タイヤモデルそれぞれと前記基準タイヤモデルとの間の形状の差を表す形状差分の分布を求めるステップと、
タイヤ断面形状を特徴付けるタイヤ外周表面上の複数の区間の各区間において、前記形状差分の分布に用いる前記区間毎のペリフェリ長さが、前記解析対象基準タイヤモデルの対応する区間のペリフェリ長さに一致するように、前記形状差分の分布における前記区間毎のペリフェリ長さを、前記区間毎に伸張あるいは圧縮して修正形状差分を求め、前記修正形状差分の分布を用いて、前記解析対象基準タイヤモデルに変形を与えることにより、有限要素モデルである解析対象基底タイヤモデルを複数作成するステップと、
作成した前記解析対象基底タイヤモデル毎の前記解析対象基準タイヤモデルからの変形量を線形加算することにより、有限要素モデルである試行タイヤモデルを作成するステップと、を有し、
コンピュータが、前記変形タイヤモデルを複数定めるステップ、前記解析対象基準タイヤモデルを作成するステップ、前記形状差分の分布を求めるステップ、前記解析対象基底タイヤモデルを複数作成するステップ、及び前記試行タイヤモデルを作成するステップを、実行することを特徴とするタイヤモデル作成方法。
前記タイヤ断面形状を特徴付ける前記複数の区間は、タイヤセンターラインの位置とビード先端位置との間の領域を、タイヤ断面形状を特徴付ける、前記タイヤ外周表面上の複数の代表点により区分けされた区間である、請求項1に記載のタイヤモデル作成方法。
前記代表点は、タイヤ最大幅を有する点、及びトレッドゴムの配置領域のうちの前記タイヤ外周表面上のタイヤ断面幅方向の端部の点を少なくとも含む、請求項2に記載のタイヤモデル作成方法。
前記解析対象基準タイヤモデルの変形計算を行うとき、前記解析対象基準タイヤモデルの各要素のポアソン比を0.1以下の一定値にし、かつ各要素の弾性定数および質量密度に一定の値である仮想の物性値を付与する、請求項4または5に記載のタイヤモデル作成方法。
請求項1〜6のいずれか1項に記載のタイヤモデル作成方法により複数作成された前記解析対象基底タイヤモデルそれぞれの前記解析対象基準タイヤモデルからの変形量を、重み付け係数を変えて線形加算することにより、複数の試行タイヤモデルを作成するステップと、
前記複数の試行タイヤモデルを用いてタイヤの特性値を得るためのシミュレーション計算を行うことにより、少なくとも1つ以上のタイヤの特性値が予
め設定された条件を満足する最適化タイヤ断面形状を見出すステップと、を有し、
コンピュータが、前記複数の試行タイヤモデルを作成するステップ及び前記最適化タイヤ断面形状を見出すステップを実行することを特徴とするタイヤ断面形状決定方法。
基準タイヤを再現した有限要素モデルである基準タイヤモデル、及びタイヤ断面形状が前記基準タイヤと異なる解析対象基準タイヤを再現した有限要素モデルである解析対象基準タイヤモデルを作成するモデル作成部と、
前記基準タイヤモデルから、前記基準タイヤモデルのタイヤ断面形状が変形したタイヤ変形形状を有する変形タイヤモデルを複数定める変形タイヤモデル設定部と、
前記変形タイヤモデルそれぞれと前記基準タイヤモデルとの間の形状の差を表す形状差分の分布を求めるとともに、タイヤ断面形状を特徴付けるタイヤ外周表面上の複数の区間の各区間において、前記形状差分の分布に用いる前記区間毎のペリフェリ長さが、前記解析対象基準タイヤモデルの対応する区間のペリフェリ長さに一致するように、前記形状差分の分布における前記区間毎のペリフェリ長さを、前記区間毎に伸張あるいは圧縮して修正形状差分を求め、前記修正形状差分の分布を用いて、前記解析対象基準タイヤモデルに変形を与えることにより、有限要素モデルである解析対象基底タイヤモデルを複数作成する解析対象基底タイヤモデル作成部と、
作成した前記解析対象基底タイヤモデルそれぞれの変形量を線形加算することにより、有限要素モデルである試行タイヤモデルを作成する試行タイヤモデル作成部と、を有することを特徴とするタイヤモデル作成装置。
基準タイヤを再現した有限要素モデルである基準タイヤモデル、及びタイヤ断面形状が前記基準タイヤと異なる解析対象基準タイヤを再現した有限要素モデルである解析対象基準タイヤモデルを作成するモデル作成部と、
前記基準タイヤモデルから、前記基準タイヤモデルのタイヤ断面形状が変形したタイヤ変形形状を有する変形タイヤモデルを複数定める変形タイヤモデル設定部と、
前記変形タイヤモデルそれぞれと前記基準タイヤモデルとの間の形状の差を表す形状差分の分布を求めるとともに、タイヤ断面形状を特徴付けるタイヤ外周表面上の複数の区間の各区間において、前記形状差分の分布に用いる前記区間毎のペリフェリ長さが、前記解析対象基準タイヤモデルの対応する区間のペリフェリ長さに一致するように、前記形状差分の分布における前記区間毎のペリフェリ長さを、前記区間毎に伸張あるいは圧縮して修正形状差分を求め、前記修正形状差分の分布を用いて、前記解析対象基準タイヤモデルに変形を与えることにより、有限要素モデルである解析対象基底タイヤモデルを複数作成する解析対象基底タイヤモデル作成部と、
作成した複数の前記解析対象基底タイヤモデルそれぞれの前記解析対象基準タイヤモデルからの変形量を、コンピュータを用いて、重み付け係数を変えて線形加算することにより、複数の試行タイヤモデルを作成する試行タイヤモデル作成部と、
前記複数の試行タイヤモデルを用いてタイヤの特性値を得るためのシミュレーション計算を行うことにより、少なくとも1つ以上のタイヤの特性値が予め設定された条件を満足する最適化タイヤ断面形状を見出して決定する最適形状決定部と、を有することを特徴とするタイヤ断面形状決定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の公知の最適形状設計方法をタイヤ断面形状に適用する場合、タイヤ断面形状の固有振動モードにおける変形形状をタイヤ断面形状の基底断面形状とするため、最適化しようとするタイヤのタイヤサイズや構造が複数ある場合、タイヤサイズや構造毎に異なる基底断面形状を用いて最適タイヤ断面形状を求めることになる。したがって、得られる最適タイヤ断面形状も、タイヤサイズが異なると大きく異なる場合がある。このため、上述の最適形状設計方法では、タイヤサイズを超えて、一貫した特徴をタイヤ断面形状に持つタイヤ断面形状を得ることができない。このような問題は、タイヤサイズや構造ばかりでなくタイヤ断面形状が互いに異なる2つのタイヤにおいても同様の問題が生じる。なお、タイヤ断面形状が異なることには、タイヤサイズが異なることも含まれるため、以降では、タイヤサイズが異なることも含めて、タイヤ断面形状が異なるという。
【0007】
そこで、本発明は、タイヤ断面形状が異なっても、タイヤ断面形状を超えて一貫した特徴をタイヤ断面形状に持つ最適化タイヤ断面形状を得ることができるタイヤモデル作成方法、タイヤ断面形状決定方法、タイヤモデル作成装置、タイヤ断面形状決定装置及びタイヤモデル作成方法を実現するプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
コンピュータが行うことを特徴とするタイヤモデル作成方法である。当該方法は、
基準タイヤを再現した有限要素モデルである基準タイヤモデルから、前記基準タイヤモデルのタイヤ断面形状が変形したタイヤ変形形状を有する変形タイヤモデルを複数定めるステップと、
タイヤ断面形状が前記基準タイヤと異なる解析対象基準タイヤを再現した有限要素モデルである解析対象基準タイヤモデルを作成するステップと、
前記変形タイヤモデルそれぞれと前記基準タイヤモデルとの間の形状の差を表す形状差分の分布を求めるステップと、
タイヤ断面形状を特徴付けるタイヤ外周表面上の複数の区間の各区間において、前記形状差分の分布に用いる前記区間毎のペリフェリ長さが、前記解析対象基準タイヤモデルの対応する区間のペリフェリ長さに一致するように、前記形状差分の分布における前記区間毎のペリフェリ長さを、前記区間毎に伸張あるいは圧縮して修正形状差分を求め、前記修正形状差分の分布を用いて、前記解析対象基準タイヤモデルに変形を与えることにより、有限要素モデルである解析対象基底タイヤモデルを複数作成するステップと、
作成した前記解析対象基底タイヤモデル毎の前記解析対象基準タイヤモデルからの変形量を線形加算することにより、有限要素モデルである試行タイヤモデルを作成するステップと、を有し、
コンピュータが、前記変形タイヤモデルを複数定めるステップ、前記解析対象基準タイヤモデルを作成するステップ、前記形状差分の分布を求めるステップ、前記解析対象基底タイヤモデルを複数作成するステップ、及び前記試行タイヤモデルを作成するステップを、実行する。
【0009】
前記タイヤ断面形状を特徴付ける前記複数の区間は、タイヤセンターラインの位置とビード先端位置との間の領域を、タイヤ断面形状を特徴付ける、前記タイヤ外周表面上の複数の代表点により区分けされた区間である、ことが好ましい。
【0010】
このとき、前記代表点は、タイヤ最大幅を有する点、及びトレッドゴムの配置領域のうちの前記タイヤ外周表面上のタイヤ断面幅方向の端部の点を少なくとも含む、ことがより好ましい。
【0011】
また、前記解析対象基底タイヤモデルは、前記解析対象基準タイヤモデルのタイヤ外周表面上の節点に強制変位を与えて
前記コンピュータが変形計算を行うことにより得られる、ことが好ましい。
【0012】
あるいは、前記解析対象基底タイヤモデルは、
前記コンピュータが、前記解析対象基準タイヤモデルのタイヤ内周表面上の節点、あるいはタイヤ内周表面上の節点及びタイヤ外周表面上の節点に強制変位を与えて変形計算を行うことにより得られる、ことも同様に好ましい。
【0013】
この時、前記解析対象基準タイヤモデルの変形計算を行うとき、前記解析対象基準タイヤモデルの各要素のポアソン比を0.1以下の一定値にし、かつ各要素の弾性定数および質量密度に一定の値である仮想の物性値を付与する、ことが好ましい。
【0014】
本発明の他の一態様は、コンピュータを用いて行うタイヤ断面形状決定方法である。当該方法は、
前記タイヤモデルの作成方法により複数作成された前記解析対象基底タイヤモデルそれぞれの前記解析対象基準タイヤモデルからの変形量を、重み付け係数を変えてコンピュータを用いて線形加算することにより、複数の試行タイヤモデルを作成するステップと、
前記複数の試行タイヤモデルを用いてタイヤの特性値を得るためのシミュレーション計算を、コンピュータを用いて行うことにより、少なくとも1つ以上のタイヤの特性値が予め設定された条件を満足する最適化タイヤ断面形状を見出すステップと、を有
し、
コンピュータが、前記複数の試行タイヤモデルを作成するステップ及び前記最適化タイヤ断面形状を見出すステップを実行する。
【0015】
さらに、コンピュータ
が、前記最適化タイヤ断面形状を見出すときに得られるタイヤ断面形状を特徴付けるパラメータと、前記タイヤの特性値との対応関係を可視化して画面表示
させるステップ、を有する、ことが好ましい。
【0016】
本発明のさらに他の一態様は、タイヤモデル作成装置である。当該装置は、
基準タイヤを再現した有限要素モデルである基準タイヤモデル、及びタイヤ断面形状が前記基準タイヤと異なる解析対象基準タイヤを再現した有限要素モデルである解析対象基準タイヤモデルを作成するモデル作成部と、
前記基準タイヤモデルから、前記基準タイヤモデルのタイヤ断面形状が変形したタイヤ変形形状を有する変形タイヤモデルを複数定める変形タイヤモデル設定部と、
前記変形タイヤモデルそれぞれと前記基準タイヤモデルとの間の形状の差を表す形状差分の分布を求めるとともに、タイヤ断面形状を特徴付けるタイヤ外周表面上の複数の区間の各区間において、前記形状差分の分布に用いる前記区間毎のペリフェリ長さが、前記解析対象基準タイヤモデルの対応する区間のペリフェリ長さに一致するように、前記形状差分の分布における前記区間毎のペリフェリ長さを、前記区間毎に伸張あるいは圧縮して修正形状差分を求め、前記修正形状差分の分布を用いて、前記解析対象基準タイヤモデルに変形を与えることにより、有限要素モデルである解析対象基底タイヤモデルを複数作成する解析対象基底タイヤモデル作成部と、
作成した前記解析対象基底タイヤモデルそれぞれの変形量を線形加算することにより、有限要素モデルである試行タイヤモデルを作成する試行タイヤモデル作成部と、を有する。
【0017】
本発明のさらに他の一態様は、タイヤ断面形状決定装置である。当該装置は、
基準タイヤを再現した有限要素モデルである基準タイヤモデル、及びタイヤ断面形状が前記基準タイヤと異なる解析対象基準タイヤを再現した有限要素モデルである解析対象基準タイヤモデルを作成するモデル作成部と、
前記基準タイヤモデルから、前記基準タイヤモデルのタイヤ断面形状が変形したタイヤ変形形状を有する変形タイヤモデルを複数定める変形タイヤモデル設定部と、
前記変形タイヤモデルそれぞれと前記基準タイヤモデルとの間の形状の差を表す形状差分の分布を求めるとともに、タイヤ断面形状を特徴付けるタイヤ外周表面上の複数の区間の各区間において、前記形状差分の分布に用いる前記区間毎のペリフェリ長さが、前記解析対象基準タイヤモデルの対応する区間のペリフェリ長さに一致するように、前記形状差分の分布における前記区間毎のペリフェリ長さを、前記区間毎に伸張あるいは圧縮して修正形状差分を求め、前記修正形状差分の分布を用いて、前記解析対象基準タイヤモデルに変形を与えることにより、有限要素モデルである解析対象基底タイヤモデルを複数作成する解析対象基底タイヤモデル作成部と、
作成した複数の前記解析対象基底タイヤモデルそれぞれの前記解析対象基準タイヤモデルからの変形量を、コンピュータを用いて、重み付け係数を変えて線形加算することにより、複数の試行タイヤモデルを作成する試行タイヤモデル作成部と、
前記複数の試行タイヤモデルを用いてタイヤの特性値を得るためのシミュレーション計算を行うことにより、少なくとも1つ以上のタイヤの特性値が予め設定された条件を満足する最適化タイヤ断面形状を見出して決定する最適形状決定部と、を有する。
【0018】
本発明のさらに他の一態様は、タイヤモデル作成方法をコンピュータに実行させるコンピュータが読み取り可能なプログラムである。当該プログラムは、
基準タイヤを再現した有限要素モデルである基準タイヤモデルから、前記基準タイヤモデルのタイヤ断面形状が変形したタイヤ変形形状を有する変形タイヤモデルを複数定める手順と、
タイヤ断面形状が前記基準タイヤと異なる解析対象基準タイヤを再現した有限要素モデルである解析対象基準タイヤモデル作成する手順と、
前記変形タイヤモデルそれぞれと前記基準タイヤモデルとの間の形状の差を表す形状差分の分布を求める手順と、
タイヤ断面形状を特徴付けるタイヤ外周表面上の複数の区間の各区間において、前記形状差分の分布に用いる前記区間毎のペリフェリ長さが、前記解析対象基準タイヤモデルの対応する区間のペリフェリ長さに一致するように、前記形状差分の分布における前記区間毎のペリフェリ長さを、前記区間毎に伸張あるいは圧縮して修正形状差分を求め、前記修正形状差分の分布を用いて、前記解析対象基準タイヤモデルに変形を与えることにより、有限要素モデルである解析対象基底タイヤモデルを複数作成する手順と、
作成した前記解析対象基底タイヤモデル毎の前記解析対象基準タイヤモデルからの変形量を線形加算することにより、有限要素モデルである試行タイヤモデルを作成する手順と、を有し、前記手順を、コンピュータを用いて実行させる。
【発明の効果】
【0019】
上述のタイヤモデル作成方法、タイヤ断面形状決定方法、タイヤモデル作成装置、タイヤ断面形状決定装置、及びプログラムによれば、タイヤ断面形状が異なっても、タイヤ断面形状を超えて一貫した特徴をタイヤ断面形状に持つ最適化タイヤ断面形状を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態のタイヤモデル作成方法、タイヤ断面形状決定方法、タイヤモデル作成装置、タイヤ断面形状決定装置、及びプログラムについて、添付図面に示す実施形態に基いて説明する。本実施形態のタイヤモデル作成方法は、本実施形態のタイヤ断面形状決定方法の一部分に用いられる。
【0022】
(本実施形態の概要)
一般に、タイヤサイズを複数種類備えるタイヤ製品は、タイヤサイズを超えて一貫した特徴をタイヤ断面形状に持つ最適化タイヤ断面形状を有することが望まれる。最適化タイヤ断面形状は、定められたタイヤ性能が目標となる条件を満足するように、有限要素法による試行タイヤモデルを複数作成してシミュレーション計算を行うことにより最適化される。しかし、タイヤ断面形状の最適化は、タイヤサイズ毎に異なった基準タイヤモデルを用いて行うため、最適化タイヤ断面形状の特徴に、タイヤサイズによらない一貫性のある特徴が出ない場合がある。例えば、タイヤ幅が175サイズでは、タイヤ最大幅を大きくしたタイヤ断面形状が最適化タイヤ断面形状となり、タイヤ幅が225サイズでは、トレッド幅を小さくしたタイヤ断面形状が最適化タイヤ断面形状となる場合がある。これに対して、本実施形態では、タイヤサイズを超えて一貫した特徴をタイヤ断面形状に持つ最適化タイヤ断面形状を決定することができる。また、タイヤサイズの他に、タイヤ断面形状が異なる場合も、本実施形態は適用できる。タイヤ断面形状が異なる2つのタイヤは、タイヤ断面形状のタイヤ外周表面全体あるいはタイヤ外周表面の一部分のペリフェリ長さが異なる場合が多い。なお、タイヤ断面形状が異なることには、タイヤサイズが異なることも含まれる。
【0023】
具体的に説明すると、あるタイヤサイズで、あるタイヤ構造の基準タイヤを有限要素モデルである基準タイヤモデルを作成し、この基準タイヤモデルから、基準タイヤモデルのタイヤ断面形状が変形したタイヤ断面形状を有する、有限要素モデルである変形タイヤモデルを複数定める。この変形タイヤモデルを用いて、基準タイヤと異なるタイヤ断面形状を持つ解析対象基準タイヤモデルから試行タイヤモデルを有限要素法により作成する。このとき、変形タイヤモデルそれぞれと基準タイヤモデルとの間の形状の差を表す形状差分の分布を求める。さらに、タイヤ断面形状を特徴付けるタイヤ外周表面上の複数の区間の各区間において、上記形状差分の分布に用いる区間毎のペリフェリ長さが、作成した解析対象基準タイヤモデルの対応する区間のペリフェリ長さに一致するように、上記形状差分の分布における区間毎のペリフェリ長さを、区間毎に伸張あるいは圧縮して修正形状差分を求める。この修正形状差分の分布を用いて、解析対象基準タイヤモデルに変形を与えることにより、有限要素モデルである解析対象基底タイヤモデルを複数作成する。
最後に、作成した解析対象基底タイヤモデル毎の変形量を線形加算することにより、有限要素モデルである試行タイヤモデルを作成する。この試行タイヤモデルを用いてタイヤ断面形状の最適化を行う。
【0024】
(タイヤ断面形状決定装置)
図1は、本実施形態のタイヤ断面形状決定装置の構成を示すブロック図である。本実施形態のタイヤ断面形状決定装置は、本実施形態のタイヤモデル作成装置を含み、タイヤモデル作成方法及びタイヤ断面形状決定方法を実行する。
【0025】
本実施形態のタイヤ断面形状決定装置(以降、単に装置という)10は、コンピュータにより構成される。
装置10は、CPU12、メモリ14、入出力部16、及びバス17を有するコンピュータである。入出力部16は、マウスやキーボード等の入力操作デバイス18と、プリンタやディスプレイ等の出力装置20と接続されている。メモリ14には、本実施形態のタイヤモデル作成方法及びタイヤ断面形状決定方法を実行するためのプログラムが記憶されており、このプログラムが呼び出されて起動されることにより装置10が構築される。装置10がプログラムを呼び出して実行することにより、装置10に処理モジュール22が形成される。処理モジュール22の各部分は、実質的な計算をCPU12に行わせるソフトウェアモジュールである。したがって、処理モジュール22は、CPU12、メモリ14、及び入出力部16と、バス18を介して機能的に形成される部分である。
処理モジュール22は、モデル作成部24、変形タイヤモデル設定部26、解析対象基底タイヤモデル作成部28、試行タイヤモデル作成部30、評価部32、及び決定部34を有する。
試行タイヤモデルを作成するタイヤモデル作成装置は、モデル作成部24、変形タイヤモデル設定部26、解析対象基底タイヤモデル作成部28、及び試行タイヤモデル作成部30によって構成される。
【0026】
モデル作成部24は、互いにタイヤ断面形状が異なる基準タイヤと解析対象基準タイヤを再現した、有限要素モデルである基準タイヤモデルと解析対象基準タイヤモデルを作成する。タイヤ断面形状が異なる一形態であるタイヤサイズが異なるとは、トレッド表面のセンターラインの位置から、タイヤ断面幅方向にビード先端位置まで、タイヤ外周表面に沿った長さが異なることを言う。例えば、“225/60R15”といったタイヤ幅、扁平率、リム径の情報が1つでも異なる場合、タイヤサイズが異なる。解析対象基準タイヤモデルは、節点及び要素の位置座標と、要素を構成する節点の情報と、各要素の材料定数と、を含む、有限要素法によるシミュレーション計算が可能な有限要素モデルとなっている。
図2(a),(b)には、モデル作成部24で作成される、タイヤサイズを含むタイヤ断面形状が互いに異なる基準タイヤモモデル40と解析対象基準タイヤモデル42の一例のタイヤ断面形状が示されている。作成された基準タイヤモモデル40と解析対象基準タイヤモデル42は、メモリ14に記憶される。なお、基準タイヤモデルと解析対象基準タイヤモデルは、各要素の材料定数が与えられておらず、シミュレーション計算ができないものであってもよい。この場合、シミュレーション計算をする直前に各要素の材料定数が与えられるとよい。
【0027】
変形タイヤモデル設定部26は、有限要素モデルである基準タイヤモデル40から、基準タイヤモデル40のタイヤ断面形状が変形したタイヤ変形形状を有する変形タイヤモデルを複数定める。変形タイヤモデルのメッシュ分割構造は、基準タイヤモデル40のメッシュ分割構造と同じである。タイヤ変形形状の情報は、メモリ14に記憶されており、変形タイヤモデル設定部26がメモリ14からタイヤ変形形状の情報を呼び出して、変形タイヤモデルを作成する。あるいは、基準タイヤモデル40は、有限要素法によるシミュレーション計算が可能なように、材料定数が与えられている場合、基準タイヤモデル40の固有値解析を行って、タイヤ断面形状において変形形状に差異がある固有振動モードの変形形状を複数個、タイヤ変形形状として用いることもできる。このような固有振動モードの変形形状は、出力装置20に出力される。オペレータは、出力された複数の固有振動モードの中から固有振動モードを適宜選択するとよい。
図3(a),(b)は、基準タイヤモデル40から得られた変形タイヤモデル1,2の断面形状の例を示す。
図3(a)に示す変形タイヤモデル1は、基準タイヤモデル40に対してタイヤ最大幅が大きい変形形状を有する。
図3(b)に示す変形タイヤモデル2は、基準タイヤモデル40に対してトレッド幅が大きい変形形状を有する。このように、変形タイヤモデル設定部26は、変形タイヤモデル1、2を含む複数の変形タイヤモデルを作成する。作成したタイヤ変形タイヤモデルは、メモリ14に記憶される。以降、変形タイヤモデル1,2を含む複数の変形タイヤモデルを変形タイヤモデル44とする。
【0028】
解析対象基底タイヤモデル作成部28は、変形タイヤモデル44それぞれと基準タイヤモデル40との間の形状の差を表す形状差分の分布を求める。形状差分は、変形タイヤモデル44のタイヤ外周面上の節点の位置座標の値から基準タイヤモデル40のタイヤ外周面上の節点の位置座標の値を引いて、節点間の移動距離を求めることにより、対応する節点間の変形量を求めることができる。さらに、解析対象基底タイヤモデル作成部28は、タイヤ断面形状を特徴付けるタイヤ外周表面上の複数の区間の各区間において、求めた形状差分の分布に用いる区間毎のペリフェリ長さが、モデル作成部24で作成した解析対象基準タイヤモデル42の対応する区間のペリフェリ長さに一致するように、形状差分の分布における区間毎のペリフェリ長さを、区間毎に伸張あるいは圧縮して修正形状差分を求める。解析対象基底タイヤモデル作成部28は、さらに、求めた修正形状差分の分布を用いて、解析対象基準タイヤモデル42に変形を与えることにより、有限要素モデルである解析対象基底タイヤモデル46(
図3(c),(d)参照)を複数作成する。
【0029】
図3(c),(d)には、解析対象基底タイヤモデル作成部28で作成される解析対象基底タイヤモデル46の例である基底タイヤモデル1,2のタイヤ断面形状を示している。
図3(c)に示す基底タイヤモデル1は、
図3(a)に示す変形タイヤモデル1から求められたものであり、
図3(d)に示す基底タイヤモデル2は、
図3(b)に示す変形タイヤモデル2から求められたものである。
【0030】
図4(a)〜(c)は、タイヤの変形を説明する図であり、(d)及び(e)は、タイヤモデル外周表面上のペリフェリ長に対する変形量の分布の例を示す図である。具体的には、
図4(a)は、基準タイヤモデル40と変形タイヤモデル44のタイヤ断面形状を示している。基準タイヤモデル40と変形タイヤモデル44は、タイヤ最大幅となる点A2のタイヤ径方向における位置が同じであり、タイヤ断面幅方向の位置が異なる例を示している。このような形状差分、すなわち変形量を解析対象基準タイヤモデル42に与えて、解析対象基底タイヤモデル46を作成するとき、形状差分の分布における複数の区間の区間毎のペリフェリ長さを、区間毎に伸張あるいは圧縮して修正形状差分を求める。区間として、タイヤセンターラインの位置Cとビード先端位置C’までの領域を、複数のタイヤ断面形状を特徴付ける、タイヤ外周表面上の複数の代表点により区分けされている。この代表点は、
図4(c)に示されるように、タイヤ最大幅を有する点C2、及びトレッドゴムの配置領域のうちのタイヤ断面幅方向の端部の点C1を含む、ことが好ましい。なお、点C1は、セクターモールドとサイドモールドとの分割位置の点でもある。タイヤ最大幅を有する点C2、及びトレッドゴムの配置領域のうちのタイヤ断面幅方向の端部の点C1は、タイヤ断面形状を特徴付ける上で大きな役割を果たす。トレッドゴムの配置領域のうちのタイヤ断面幅方向の端部の点C1は、トレッド部とサイド部のモールド分割位置でもある。トレッドゴムの配置領域のうちのタイヤ断面幅方向の端部の点C1は、トレッド部の幅を決め、さらに、トレッド部の湾曲(曲率)の程度を特徴付けることができる。タイヤ最大幅を有する点C2は、サイド部の膨らみを特徴付けることができる。トレッド部の幅、トレッド部の湾曲(曲率)の程度、あるいは、サイド部の膨らみは、転がり抵抗、摩耗特性、ベルト耐久性、排水性、振動乗り心地性能、騒音、操縦安定性を含むタイヤ性能に大きな影響を与える。
【0031】
このとき、解析対象基底タイヤモデル作成部28は、タイヤ断面形状を特徴付けるタイヤ外周表面上の複数の区間の各区間において、形状差分の分布に用いる区間毎のペリフェリ長さが、解析対象基準タイヤモデル42の対応する区間のペリフェリ長さに一致するように、形状差分の分布における区間毎のペリフェリ長さを、区間毎に伸張あるいは圧縮して修正形状差分を求める。
図4(d)の□は、基準タイヤモデル40と変形タイヤモデル44の形状差分の分布である変形量の分布を示している。具体的には、タイヤモデルにおける対応する節点間の位置座標から算出されるタイヤ断面幅方向の変位量を、基準タイヤモデル40のセンターライン位置である点Aからのペリフェリ長さに沿ってグラフ上にプロットした分布である。
図4(d)の△は、区間毎のペリフェリの長さを伸張あるいは圧縮することなく、センターライン位置である点B(
図4(b)参照)からビード先端位置B’ (
図4(b)参照)までのペリフェリ長さが解析対象基準タイヤモデル42のタイヤ外周表面のペリフェリの長さに一致するように、形状差分の分布、すなわち変形量の分布を圧縮あるいは伸張して得られる形状差分の分布を示している。このような形状差分を解析対象基準タイヤモデル42に与えたとき、
図4(b)に示すように、変形タイヤ断面形状のタイヤ最大幅を有する点のタイヤ径方向の位置は、解析対象基準タイヤモデル42のタイヤ最大幅を有する点のタイヤ径方向の位置に比べて下側に位置し、タイヤ径方向の位置が一致しない。この場合、このタイヤ断面形状の違いはタイヤ特性に差異を与えるとともに、
図4(a)に示すような、タイヤ最大幅を有する点におけるタイヤ径方向の位置が同じであり、なおかつタイヤ断面幅方向の位置が異なる変形を表現できていないため、好ましくない。このため、解析対象基底タイヤモデル作成部28は、区間毎のペリフェリ長さが、解析対象基準タイヤモデル40の対応する区間のペリフェリ長さに一致するように、形状差分の分布における区間毎のペリフェリ長さを、区間毎に伸張あるいは圧縮して修正形状差分を求める。
【0032】
上記区間は、例えば、タイヤセンターラインの位置の点Cとトレッドゴムの配置領域のうちのタイヤ断面幅方向の端部の点C1との間の区間、トレッドゴムの配置領域のうちのタイヤ断面幅方向の端部の点C1とタイヤ最大幅を有する点C2との間の区間、タイヤ最大幅を有する点C2とビード先端位置C’との間の区間を含むことが好ましい。
図4(b)で示されているようなタイヤ最大幅を有する点のタイヤ径方向の位置がずれる問題点は、上述の区間毎のペリフェリ長さを圧縮あるいは伸張することにより修正形状差分の分布を求めることにより解消することができる。例えば、
図4(c)に示されるように、解析対象基準タイヤモデル42におけるタイヤ最大幅を有する点C2のタイヤ径方向の位置は、区間毎の修正形状差分の分布を、解析対象基準タイヤモデル42に与えて求められる解析対象基底タイヤモデルにおけるタイヤ最大幅を有する点C2のタイヤ径方向の位置に一致する。
図4(e)の○は、解析対象基準タイヤモデル42の区間毎のペリフェリ長さに対応するように、基準タイヤモデル40における区間(点A〜点A1,点A1〜点A2、点A2〜点A’)毎に形状差分の分布を修正して、修正形状差分の分布を表す。
図4(e)の□は、
図4(d)の□と同じ基準タイヤモデル40と変形タイヤモデル44との間の形状差分の分布を表す。このように、本実施形態で用いる
図4(e)に示される○で表される修正形状差分の分布は、
図4(d)の△に示す分布と異なる。解析対象基底タイヤモデル作成部28は、こうして解析対象基準タイヤモデル42のタイヤ外周表面の節点に修正形状差分の分布を与えて、解析対象基底タイヤモデル46のタイヤ断面形状を生成する。
なお、解析対象基準タイヤモデル42のメッシュ分割構造と、基準タイヤモデル40のメッシュ分割構造とは必ずしも一致せず、解析対象基準タイヤモデル42のタイヤ外周面上の節点は、基準タイヤモデル40のタイヤ外周面上の節点と必ずしも対応しない場合がある。この場合、求められた形状差分の分布を、直線近似あるいは曲線近似を用いて内挿補間することによって一旦関数として求め、この関数を用いて、修正差分の分布を求めることができる。
【0033】
解析対象基底タイヤモデル46のタイヤ断面形状を生成するとき、解析対象基底タイヤモデル作成部28は、解析対象基底タイヤモデル46のタイヤ外周表面の節点に、修正形状差分の分布に応じた強制変位を与えて、解析対象基底タイヤモデル46の変形計算をすることにより、解析対象基底タイヤモデル46を生成することが好ましい。これにより、解析対象基底タイヤモデル46の内部の節点やタイヤ空洞領域に面するタイヤ内表面の節点の情報を正確に得ることができる。このとき、解析対象基準タイヤモデル42の各要素のポアソン比を0.1以下の一定値にし、かつ弾性定数および質量密度に一定の値を付与することが好ましい。一般的に、ゴムに対応する要素のポアソン比は、ゴムの非圧縮性を考慮して例えば0.4999が用いられるが、解析対象基底タイヤモデル46の変形計算では、変形結果が適切に得られるように、解析対象基準タイヤモデル42の各要素(全要素)を圧縮要素とし、ポアソン比を例えば0.01とする。また、各要素(全要素)のヤング率やせん断剛性を含む弾性定数を、タイヤ性能のシミュレーション計算時に用いる値に対して例えば10分の1以下、好ましくは100分の1以下に設定する。同様に、質量密度も例えば100分の1以下、好ましくは1000分の1以下に設定する。このように、解析対象基準タイヤモデル42を、タイヤ性能のシミュレーション計算に用いるときの弾性定数に比べて軟らかい弾性定数を用いかつ圧縮性を有する仮想の物性値を用いて、変形計算を行うことにより、タイヤモデルの内部におけるメッシュ分割に悪影響を与えることなくタイヤ外周表面のタイヤ断面形状が、解析対象基準タイヤモデル42のタイヤ断面形状に修正形状差分の分布が付加されたタイヤ外周表面の形状を有する。ここで、メッシュ分割に及ぼす悪影響とは、要素の縦横比やゆがみが大きくなり、計算が破綻しやすくなることや計算精度が低下することを示す。
【0034】
図5(a)及び(b)は、本実施形態の解析対象基底タイヤモデルを説明する図である。
図5(a)は、解析対象基準タイヤモデル42の各要素(全要素)を同一の物性値にて統一している。具体的には圧縮性を有し、非常に軟らかく、質量密度の非常に小さい仮想物性値としてポアソン比を0.01とし、ヤング率やせん断剛性を含む弾性定数を、タイヤ性能のシミュレーション計算時に用いる値(実際のゴム部材の値)の100分の1の値に設定し、質量密度を、タイヤ性能のシミュレーション計算時に用いる値(実際のゴム、スチール等のタイヤ構成部材の値)の100000分の1の値に設定したときの解析対象基準タイヤモデル42の変形計算後の結果を示す。
図5(a)に示すように、タイヤモデル内部の節点は乱れることなく、整然と配置されている。
図5(b)は、通常用いるポアソン比及び材料定数の値を用いたときの解析対象基準タイヤモデル42の変形計算後の結果を示す。
図5(b)に示すように、タイヤモデル内部の節点は乱れ、要素がいびつな形状をしている。このように、本実施形態では、解析対象基準タイヤモデル42の変形計算によって生成される解析対象基底タイヤモデル46が適切なタイヤモデルとして得られる点で、解析対象基準タイヤモデル42の各要素(全要素)のポアソン比を0.1以下の一定値にし、かつ各要素の弾性定数および質量密度に一定の値を付与することが好ましい。
解析対象基準タイヤモデル42に与える変形は、解析対象基準タイヤモデル42のタイヤ外周表面の節点の他にタイヤ内周表面上の節点に強制変位を与えて変形計算を行うことにより得られることもできる。この場合、タイヤ内周表面上の節点にも修正形状差分の分布が強制変位として与えられる。
【0035】
こうして、解析対象基底タイヤモデル作成部28は、変形タイヤモデル設定部26で設定された変形タイヤモデル44の種類だけ、変形タイヤモデル44に応じて定まる修正形状差分の分布を解析対象基準タイヤモデル42に与えて、解析対象基底タイヤモデル46を作成する。作成された解析対象基底タイヤモデル46は、メモリ14に記憶される。このとき、解析対象基底タイヤモデル46は、節点の位置情報、節点によって構成される要素の情報、タイヤ構成部材のポアソン比、タイヤ構成部材の弾性定数、及びタイヤ構成部材の質量密度の情報等によって構成されているので、これらの情報がメモリ14に記憶される。
【0036】
試行タイヤモデル作成部30は、メモリ14に記憶された複数の解析対象基底タイヤモデル46を呼び出して、解析対象基底タイヤモデル46毎の変形量を線形加算することにより、有限要素モデルである試行タイヤモデルを作成する。
図6は、本実施形態の解析対象基底タイヤモデルから試行タイヤモデルを作成する方法を説明する図である。
図6に示すように、解析対象基底タイヤモモデル1〜Nが作成されているとき、試行タイヤモデル作成部30は、各モデルの変形量、すなわち、解析対象基底タイヤモデル46それぞれの解析対象基準タイヤモデル42からの変形量に重み付け係数α
1〜α
Nを乗算し、この乗算結果を加算し、加算により得られた変形量を解析対象基準タイヤモデル42に付与することにより、試行タイヤモデルを作成する。
なお、重み付け係数α
1〜α
Nは、設定された値が用いられる。重み付け係数α
1〜α
Nについては、例えば、モンテカルロ法やラテン超方格法、準乱数法などの実験計画に従って水準を振ってもよいし、実験計画法における直交表を用いて水準を振ってもよい。重み付け係数α
1〜α
Nの値は、決定部34によって定められる。なお、重み付け係数α
1〜α
Nの値の総和が常に1となるように設定されていることが好ましい。
本実施形態の試行タイヤモデル作成部30では、解析対象基底タイヤモデル46毎の変形量を線形加算することにより、試行タイヤモデルを作成するが、解析対象基底タイヤモデル46毎の各節点の位置情報である位置座標の値に重み付け係数α
1〜α
Nを乗算して累積することにより、試行タイヤモデルを作成してもよい。この場合においても、重み付け係数α
1〜α
Nの値の総和が常に1となるように設定されていることが好ましい。
【0037】
評価部32は、試行タイヤモデル作成部30で作成された試行タイヤモデルを用いてタイヤ性能のシミュレーション計算を行うことにより、試行タイヤモデルのタイヤ断面形状に関してタイヤ性能の評価を行う。タイヤ性能は、例えば、タイヤの転がり抵抗、トレッドの摩耗寿命、トレッドの偏摩耗、振動乗心地性能、タイヤ騒音、ベルトの耐久性能、タイヤの横ばね定数(横剛性)あるいは縦ばね定数(縦剛性)等のタイヤの特性値を含む。
なお、前記基底タイヤモデル算出時において要素に仮想物性の値を用いた場合、タイヤ性能評価時における要素の材料物性は実際のゴム、スチール等のタイヤ構成部材の値が設定される。
【0038】
評価部32は、入力操作デバイス18により予め設定されたタイヤ性能における特性値、例えば固有振動数、縦ばね定数、横ばね定数、前後ばね定数、転がり抵抗、ベルト間における層間剪断歪み、摩耗予測値、あるいは、タイヤが地面に接地したときの接地圧力の値等を数値計算によって算出する。これらの具体的な計算は、周知の方法であるので説明は省略される。
【0039】
決定部34は、試行タイヤモデル作成部30において行う重み付け加算に用いる重み付け係数α
1〜α
Nを変更して作成した試行タイヤモデルを用いて評価部32でタイヤ性能の評価を行わせる。重み付け係数α
1〜α
Nの値は、予め定めた定義域内を連続的に変化させてもよいし、離散的に変化させてもよい。
決定部34は、公知の実験計画法に従って、重み付け係数α
1〜α
Nについて水準を振り、この値を解析対象基底タイヤモデル46のそれぞれに割り付けることで、試行タイヤモデル作成部30に試行タイヤモデルを作成させる。
【0040】
決定部34は、作成した試行タイヤモデル毎に評価部32で得られるタイヤの特性値に基づいて、タイヤ断面形状の設計空間を、曲面近似関数を用いて応答曲面関数として定める。この応答曲面関数は、上記重み付け係数を設計変数とする。すなわち、応答曲面関数は、変形量の重み付け加算に用いる重み付け係数α
1〜α
Nを設計変数として、タイヤの特性値を、曲面近似関数を用いて表したものである。例えば、6つの重み付け係数を定めることにより、1つのタイヤ断面が定まり、曲面近似関数により1つの評価値が得られる。ここで、曲面近似関数は、チェビシェフの直交多項式やn次多項式、動径基底関数法(RBF)やクリギング法等による関数が挙げられる。そして、得られた曲面近似関数に基づき、例えば多目的遺伝的アルゴリズム等の発見的手法や、勾配法などの数理計画法を用いて最適化タイヤ断面形状、すなわち、設定された条件を満足するタイヤの特性値を有する試行タイヤモデルのタイヤ断面形状の探索を行う。
決定部34は、複数の試行タイヤモデルを用いてタイヤの特性値を得るためのシミュレーション計算を行うことにより、少なくとも1つ以上のタイヤの特性値が予め設定された条件を満足する最適化タイヤ断面形状を見出す。
【0041】
決定部30は、こうしてタイヤの特性値が予め設定された条件に適合したタイヤ断面形状を決定する。予め設定された条件とは、例えば、タイヤの特性値の範囲、タイヤの特性値の最小値、あるいはタイヤの特性値の最大値等である。
【0042】
決定部34では、重み付け係数α
1〜α
Nを変更して最適なタイヤ断面形状を決定するので、タイヤの特性値が条件を満足する重み付け係数α
1〜α
Nを抽出することで、最適化タイヤ断面形状を容易に求めることができる。
【0043】
なお、得られた最適化タイヤ断面形状の情報は、出力装置20に出力される他、図示されないタイヤ加硫用金型を作成するCADシステム等に送られる。あるいは、得られた最適なタイヤ断面形状は、タイヤデフレート時のタイヤ断面形状の情報として、あるいは、インモールドタイヤ断面形状の情報として、メモリ14に記憶され、さらに、図示されないハードディスクや記録メディア等に記録される。
【0044】
本実施形態では、試行タイヤモデル作成部30において、決定部34で定めた重み付け係数α
1〜α
Nを用いて、複数の試行タイヤモデルを作成したが、決定部34は、評価部32で得られたタイヤの特性値に応じて、重み付け係数α
1〜α
Nを変更しながら、試行タイヤモデルを1つずつ作成することもできる。すなわち、重み付け係数α
1〜α
Nを変更して試行タイヤモデル作成部30において試行タイヤモデルを1つ作成し、この作成した試行タイヤモデルについてのタイヤの評価値を評価部32において求め、この評価値に応じて、決定部34は、先に定めた重み付け係数α
1〜α
Nを変更することもできる。これにより、絶えず重み付け係数α
1〜α
Nを変更しながら、予め設定された条件をタイヤの特性値が満足するような重み付け係数α
1〜α
Nを探索し見出すことができる。
【0045】
(タイヤ断面形状決定方法)
図7は、本実施形態のタイヤ断面形状決定方法のフローを説明する図である。
まず、モデル作成部24は、基準タイヤを再現した、有限要素モデルである基準タイヤモデル40を作成し、変形タイヤモデル設定部26は、基準タイヤのタイヤ断面形状が変形したタイヤ断面形状を有する有限要素モデルである変形タイヤモデル44を設定する(ステップS10)。基準タイヤモデル40は、有限要素法によるシミュレーション計算が可能なタイヤモデルとなっている。なお、下記に示す固有値解析をしない場合は、各要素の材料定数を含まず、単にメッシュ分割構造が規定されたタイヤモデルであってもよい。このタイヤモデルは、オペレータが入力操作デバイス18を用いて入力設定した情報に基いてモデル作成部24により作成されてもよく、あるいは、メモリ14に記憶されていた各情報を組み合わせて、モデル作成部24により作成されてもよい。
変形タイヤモデル設定部26は、タイヤ断面形状が互いに異なる複数種類の変形タイヤモデル44を設定する。変形タイヤモデル44の設定は、変形タイヤモデルのタイヤ断面形状を、メモリ14に記憶されたタイヤ断面形状を呼び出して、このタイヤ断面形状を持つタイヤモデルを作成することにより行う。あるいは、基準タイヤモデル40の固有値解析を行って、異なる変形形状を有する固有振動モードのタイヤ断面形状を変形タイヤモデル44のタイヤ断面形状とし、このタイヤ断面形状を持つタイヤモデルを作成することにより変形タイヤモデルを設定することができる。この場合、基準タイヤモデル40の材料定数を、ベルト構成部材やビードコア等の金属で構成される部分と、トレッドゴムやサイドゴムのようなゴム材料で構成される部分の区別なく、一定の小さな値にすることが好ましい。作成された変形タイヤモデル44には、実際のタイヤの構成部材の材料定数が付与される。あるいは、メモリ14に記憶されているタイヤ断面形状が互いに異なる、有限要素モデルであるタイヤモデルを複数呼び出して、変形タイヤモデル44として設定することもできる。
【0046】
さらに、モデル作成部24は、解析対象基準タイヤモデル42を作成する(ステップS12)。解析対象基準タイヤモデル42は、基準タイヤとタイヤ断面形状が異なる解析対象基準タイヤをモデル化した有限要素タイヤモデルである。解析対象基準タイヤモデル42も、基準タイヤモデル40と同様に、有限要素法によるシミュレーション計算が可能なタイヤモデルとなっている。解析対象基準タイヤモデル42のメッシュ分割構造は、基準タイヤモデル40のメッシュ分割構造と一致していなくてもよい。メッシュ分割構造が一致とは、節点の位置座標が異なっていてもよいが、節点により構成される要素が互いに対応していることをいう。作成された解析対象基準タイヤモデル42の各情報はメモリ14に記憶される。
【0047】
次に、解析対象基底タイヤモデル作成部28は、複数の解析対象基底タイヤモデル46を作成する(ステップS16)。
具体的には、解析対象基底タイヤモデル作成部28は、まず、ステップS10で作成した変形タイヤモデル44それぞれと基準タイヤモデル40との間の形状の差を表す形状差分の分布を求める。
図4(e)は、符号○によって、形状差分の分布の一例を示している。区間は、タイヤセンターラインの位置(
図4(c)の例では、点Cの位置)とビード先端位置(
図4(c)の例では、点C’の位置)までの領域を、複数のタイヤ断面形状を特徴付ける、タイヤ外周表面上の代表点により、区分けされていることが好ましい。より具体的には、代表点は、タイヤ最大幅を有する点(
図4(c)の例では、点C2)、及びトレッドゴムの配置領域のうちのタイヤ断面幅方向の端部の点(
図4(c)の例では、点C1)を含むことが好ましい。
次に、解析対象基底タイヤモデル作成部28は、タイヤ断面形状を特徴付けるタイヤ外周表面上の複数の区間の各区間において、求めた形状差分の分布に用いる区間毎のペリフェリ長さが、解析対象基準タイヤモデル42の対応する区間のペリフェリ長さに一致するように、形状差分の分布における区間毎のペリフェリ長さを、区間毎に伸張あるいは圧縮して修正形状差分を求める。
さらに、解析対象基底タイヤモデル作成部28は、求めた修正形状差分の分布を用いて、解析対象基準タイヤモデル42に変形を与えることにより、有限要素モデルである解析対象基底タイヤモデル46を複数作成する。
このとき、解析対象基準タイヤモデル42に与える変形は、解析対象基準タイヤモデル42のタイヤ外周表面上の節点に強制変位を与えて、あるいは、タイヤ外周表面上の節点及びタイヤ内周表面上の節点に強制変位を与えて、変形計算を行うことにより得られることが、タイヤモデルを効率よく作成する上で好ましい。
また、変形計算を行うとき、解析対象基準タイヤモデル42の各要素のポアソン比を0.1以下の一定値にし、かつ弾性定数および質量密度に一定の値を付与することが、
図5(a)に示すように、タイヤモデルの内部の節点の位置が乱れることなく整然と配置される点で好ましい。作成された複数の解析対象基底タイヤモデル46は、メモリ14に記憶される。
【0048】
次に、試行タイヤモデル作成部30は、複数の解析対象基底タイヤモデル46を用いて試行タイヤモデルを作成する(ステップS16)。具体的には、試行タイヤモデル作成部30は、メモリ14に記憶された複数の解析対象基底タイヤモデル46を呼び出して、解析対象基底タイヤモデル46毎の変形量を線形加算することにより、有限要素モデルである試行タイヤモデルを作成する。
図6に示すように、解析対象基底タイヤモモデル1〜Nが作成されているとき、試行タイヤモデル作成部30は、各モデルの変形量、すなわち、解析対象基準タイヤモデル42からの変形量、に重み付け係数α
1〜α
Nを乗算し、この乗算結果を加算し、加算により得られた変形量を解析対象基準タイヤモデル42に付与することにより、試行タイヤモデルを作成する。重み付け係数α
1〜α
Nは、設定された値が用いられる。重み付け係数α
1〜α
Nについては、例えば、モンテカルロ法やラテン超方格法、準乱数法などの実験計画に従って水準を振ってもよいし、直交表を用いて水準を振ってもよい。重み付け係数α
1〜α
Nの値は、決定部34によって定められ、試行タイヤモデル作成部30に送られる。
解析対象基底タイヤモデルは固定されている一方、重み付け係数α
1〜α
Nが変化することにより試行タイヤモデルが作成されているので、試行タイヤモデルと重み付け係数α
1〜α
Nの組とは一対一に対応する。
【0049】
次に、評価部32は、作成された試行タイヤモデルを用いてタイヤのシミュレーション計算を行って、タイヤ性能の評価を行う(ステップS18)。評価部32は、予め設定されたタイヤ性能における特性値、例えば固有振動数、縦ばね定数、横ばね定数、前後ばね定数、転がり抵抗、ベルト間における層間剪断歪み、摩耗予測値、あるいは、タイヤが地面に接地したときの接地圧力の値等を数値計算によって算出する。算出結果は、メモリ14に記憶される。評価部32は、作成された全ての試行タイヤモデルのシミュレーション計算が行われたか否かを判定する(ステップS20)。判定の結果が否定である場合(Noである場合)、評価部32は、ステップS18に戻り、まだシミュレーション計算されていない試行タイヤモデルのシミュレーション計算を行う。こうして、作成された試行タイヤモデル全てがシミュレーション計算されて、タイヤ特性値が得られるまで、ステップS18,20を繰り返す。
【0050】
次に、決定部34は、試行タイヤモデルのタイヤ特性値をメモリ14から呼び出して、これらのタイヤ特性値を用いて、タイヤ特性値が条件を満足するような重み付け係数α
1〜α
Nを探索する。これにより、決定部34は、タイヤ特性値が条件を満足するような最適化タイヤ断面形状を抽出する(ステップS22)。
決定部34は、作成した試行タイヤモデル毎に評価部32で得られるタイヤの特性値に基づいて、タイヤ断面形状の設計空間を、曲面近似関数を用いて応答曲面関数として定める。この応答曲面関数は、上記重み付け係数α
1〜α
Nを設計変数とする。例えば、6つの重み付け係数α
1〜α
Nを定めることにより、1つのタイヤ断面が定まり、曲面近似関数により1つのタイヤ性能の評価値が得られる。この定めた曲面近似関数に基づき、例えば多目的遺伝的アルゴリズム等の進化的計算手法や、勾配法などの数理計画法を用いて最適化タイヤ断面形状、すなわち、設定された条件を満足するタイヤの特性値を有する試行タイヤモデルのタイヤ断面形状の探索を行う。
なお、決定部34は、複数の試行タイヤモデルを用いて作られた応答曲面関数を用いて最適化タイヤ断面形状を抽出する方法の代わりに、1つの試行タイヤモデルを用いて求められたタイヤ特性値に基いて、タイヤ特性値が設定された条件を満足するように、多目的遺伝的アルゴリズム等の進化的計算手法を用いて改良したタイヤ断面形状を有する試行タイヤモデルを逐次作成しながら、最適化タイヤ断面形状を抽出することもできる。
すなわち、決定部34は、前記改良したタイヤ断面形状を有する試行タイヤモデルを逐次作成しながら、最適化タイヤ断面形状を抽出する方法と、試行タイヤモデルのタイヤ特性値から応答曲面を作成し、最適化タイヤ断面形状を抽出する方法の両方が備わっている。オペレータは、2つの方法のいずれかを予め入力操作デバイス18を用いて選択可能である。なお、抽出される最適化タイヤ断面形状はひとつに限定されない。例えば、目的特性が複数あるときにはパレート解の全てもしくは一部が抽出されてもよい。
【0051】
こうして、決定部34は、最適化タイヤ断面形状を抽出することができるが、最適化タイヤ断面形状の探索過程を、出力装置20に画面表示することが好ましい。すなわち、決定部34は、最適化タイヤ断面形状を見出すときに得られるタイヤ断面形状を特徴付けるパラメータと、タイヤの特性値との対応関係を可視化して画面表示することが好ましい。上記パラメータには、重み付け係数α
1〜α
Nの他、タイヤ最大幅を有する点、及びセクターモールドとサイドモールドとの分割位置の点、例えばトレッドゴムの配置領域のうちの前記タイヤ外周表面上のタイヤ断面幅方向の端部の点やタイヤ外径やトレッドセンター部の曲率半径等、形状を特徴付ける寸法情報を含めることが好ましい。
図8(a),(b)には、重み付け係数α
1、α
2の値とタイヤの特性値との関係を示す図である。このような重み付け係数α
1、α
2の値とタイヤの特性値の組は、最適化タイヤ断面形状の探索過程で得られたものである。
図8(a)では、重み付け係数α
1の値によらず、タイヤの特性値の変化は小さいことが示され、
図8(b)では、重み付け係数α
2の値が大きいほど、タイヤの特性値は低下することが示されている。これより、画面表示を見たオペレータは、上記タイヤの特性値が予め定めた条件を満足するような重み付け係数α
2の値が、大きいほど望ましいのか、小さいほど望ましいのか、もしくはある所定の値に近づくほど望ましいのかといった傾向を知ることができる。このように、画面表示により、オペレータは、タイヤ断面形状を特徴付けるパラメータのうち、どのパラメータが上記特性値に影響を与えるものであるか、知見することができ、この知見をタイヤ設計の指針として用いることができる。
【0052】
(プログラム)
上記タイヤ断面形状決定方法は、コンピュータでプログラムを起動させることにより、実現することができる。このようなプログラムは、以下の手順を含む。すなわち、以下の手順をコンピュータに実行させるコンピュータが読み取り可能なプログラムであって、
(A)有限要素モデルである基準タイヤモデル40から、基準タイヤモデル40のタイヤ断面形状が変形したタイヤ変形形状を有する変形タイヤモデル44を複数定める手順と、
(B)基準タイヤモデル40のタイヤ断面形状とタイヤ断面形状が異なる、有限要素モデルである解析対象基準タイヤモデル42作成する手順と、
(C)変形タイヤモデル44それぞれと基準タイヤモデル40との間の形状の差を表す形状差分の分布を求める手順と、
(D)タイヤ断面形状を特徴付けるタイヤ外周表面上の複数の区間の各区間において、求めた形状差分の分布に用いる区間毎のペリフェリ長さが、解析対象基準タイヤモデルの対応する区間のペリフェリ長さに一致するように、形状差分の分布における区間毎のペリフェリ長さを、区間毎に伸張あるいは圧縮して修正形状差分を求め、求めた修正形状差分の分布を用いて、解析対象基準タイヤモデル42に変形を与えることにより、有限要素モデルである解析対象基底タイヤモデル46を複数作成する手順と、
(E)作成した解析対象基底タイヤモデル46毎の変形量を線形加算することにより、有限要素モデルである試行タイヤモデルを作成する手順と、を有する。
【0053】
さらに、
(F)(A)〜(E)のステップにより作成された複数の解析対象基底タイヤモデルそれぞれの変形量を、重み付け係数を変えてコンピュータに線形加算させることにより、複数の試行タイヤモデルを作成させる手順と、
(G)複数の試行タイヤモデルを用いてタイヤの特性値を得るためのシミュレーション計算を、コンピュータに行わせることにより、少なくとも1つ以上のタイヤの特性値が予め設定された条件を満足する最適化タイヤ断面形状を、コンピュータに見出させる手順と、を有することが好ましい。
【0054】
本実施形態のタイヤモデル作成方では、基準タイヤモデル40と変形タイヤモデル44との間の形状差分の分布を、タイヤ断面形状を特徴付けるタイヤ外周表面上の複数の区間の各区間においてペリフェリ長さが、解析対象基準タイヤモデルの対応する区間のペリフェリ長さに一致するように、伸張あるいは圧縮して修正形状差分を求め、この修正形状差分の分布を用いて、解析対象基底タイヤモデル46を作成する。このため、タイヤ断面形状が異なっても、タイヤ断面形状を超えて一貫した特徴をタイヤ断面形状に持つ最適化タイヤ断面形状を得ることができる。したがって、本実施形態で得られる最適化タイヤ断面形状は、タイヤサイズ間で同様のタイヤ特性にバランスを持たせることが可能であるため、タイヤサイズを超えて1つの商品名で販売されるシリーズ化されたタイヤに好適に用いられる。
【0055】
また、タイヤ断面形状を特徴付ける複数の区間として、タイヤセンターラインの位置とビード先端位置までの領域を、複数のタイヤ断面形状を特徴付ける、タイヤ外周表面上の代表点により、区分けされた区間を用いることで、タイヤの特性値が設定した条件を満足する最適化タイヤ断面形状を効果的に得ることができる。特に、代表点は、タイヤ最大幅を有する点C2、及びトレッドゴムの配置領域のうちのタイヤ外周表面上のタイヤ断面幅方向の端部の点C1を含むことにより、最適化タイヤ断面形状をより効果的に得ることができる。
【0056】
また、本実施形態では、解析対象基底タイヤモデル46を得るために、解析対象基準タイヤモデル42のタイヤ外周表面上の節点に強制変位を与えて、あるいは、タイヤ外周表面上の節点及びタイヤ内周表面上の節点に強制変位を与えて、変形計算を行うことが、修正形状差分の分布を反映したタイヤ断面形状を容易に得る点で、好ましい。
さらに、解析対象基準タイヤモデル42の変形計算を行うとき、解析対象基準タイヤモデル42の各要素のポアソン比を0.1以下の一定値にし、かつ各要素の弾性定数および質量密度に一定の値を付与することで、タイヤモデル内部の節点の位置が乱されない点で好ましい。
【0057】
さらに、解析対象基底タイヤモデル46それぞれの変形量を、重み付け係数を変えて線形加算することにより、複数の試行タイヤモデルを作成し、複数の試行タイヤモデルを用いてタイヤの特性値を得るためのシミュレーション計算を行うことにより、少なくとも1つ以上のタイヤの特性値が予め設定された条件を満足する最適化タイヤ断面形状を、効率よくコンピュータで見出すことができる。
【0058】
以上、本発明のタイヤモデル作成方法、タイヤ断面形状決定方法、タイヤモデル作成装置、タイヤ断面形状決定装置、及びプログラムについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよい。