(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281206
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ハイブリッドシステム、ハイブリッド車両、及びハイブリッドシステムの動力伝達方法
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20180208BHJP
B60K 6/543 20071001ALI20180208BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20180208BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20180208BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20180208BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20180208BHJP
B60L 11/14 20060101ALI20180208BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20180208BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/543ZHV
B60K6/54
B60W10/10 900
B60W10/06 900
B60K6/485
B60L11/14
B60W20/00
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-166512(P2013-166512)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-33963(P2015-33963A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】岩田 憲仁
【審査官】
田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−082261(JP,A)
【文献】
特開2011−127590(JP,A)
【文献】
特開2004−183613(JP,A)
【文献】
実開昭58−012673(JP,U)
【文献】
特開2001−221138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
B60W 10/00 − 20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と電動発電機を有するハイブリッドシステムにおいて、
前記内燃機関のクランク軸に前記電動発電機を接続すると共に、
前記電動発電機を制御するハイブリッド用制御装置が、前記内燃機関の停止後に、前記電動発電機を制御して、前記電動発電機の駆動力により前記クランク軸を回転して停止位置を移動して、前記内燃機関の始動時における前記クランク軸の回転開始位置を前記クランク軸の全周に分散させて、スタータのオピニオンギアとリングギアがかみ合う位置を前記リングギアの全周に均等に分散させる制御を行うように構成されることを特徴とするハイブリッドシステム。
【請求項2】
前記ハイブリッド用制御装置が、前記クランク軸又はリングギアの全周における各位置に対応する位置用メモリーを設け、始動時の前記回転開始位置が前記各位置のどの位置に何回なったかをカウントして、その位置に対応する前記位置用メモリーに記憶し、前記内燃機関の停止後に前記電動発電機で前記クランク軸を回転させる時に、カウント数が最小の前記位置用メモリーに対応する位置に、次回の始動時の前記回転開始位置がなるように、前記電動発電機を制御する制御を行うように構成されることを特徴とする請求項1記載のハイブリッドシステム。
【請求項3】
前記ハイブリッド用制御装置が、前記内燃機関の停止後に前記電動発電機で前記クランク軸を回転させる時に、カウント数が最小の前記位置用メモリーに対応する位置の中から前記内燃機関の停止後の移動前の停止位置に最短の位置を選定して、この位置に、次回の始動時の前記回転開始位置がなるように、前記電動発電機を制御する制御を行うように構成されることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッドシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッドシステムを搭載したことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項5】
内燃機関と電動発電機を有するハイブリッドシステムの動力伝達方法において、
前記内燃機関の停止後に、前記電動発電機を制御して、前記電動発電機の駆動力により前記クランク軸を回転して停止位置を移動して、前記内燃機関の始動時における前記クランク軸の回転開始位置を前記クランク軸の全周に分散させて、スタータのオピニオンギアとリングギアがかみ合う位置を前記リングギアの全周に均等に分散させることを特徴とするハイブリッドシステムの動力伝達方法。
【請求項6】
始動時の前記回転開始位置が前記クランク軸又はリングギアの全周におけるどの位置に何回なったかをカウントして、その位置に対応する前記位置用メモリーに記憶し、前記内燃機関の停止後に前記電動発電機で前記クランク軸を回転させる時に、カウント数が最小の前記位置用メモリーに対応する位置に、次回の始動時の前記回転開始位置がなるように、前記電動発電機を制御することを特徴とする請求項5記載のハイブリッドシステムの動力伝達方法。
【請求項7】
前記内燃機関の停止後に前記電動発電機で前記クランク軸を回転させる時に、カウント数が最小の前記位置用メモリーに対応する位置の中から前記内燃機関の停止後の移動前の停止位置に最短の位置を選定して、この位置に、次回の始動時の前記回転開始位置がなるように、前記電動発電機を制御することを特徴とする請求項6に記載のハイブリッドシステムの動力伝達方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のクランク軸のリングギアの損傷を防止できるハイブリッドシステム、ハイブリッド車両、及びハイブリッドシステムの動力伝達方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の始動開始時には、スタータを用いてクランク軸を回転駆動して、気筒(シリンダ)内のピストンを着火可能な速度まで加速させ、燃料噴射可能な位置及び着火可能な位置に移動させている。このときに、スタータのピニオンギアをクランク軸のフライホール側のリングギアに噛み合せることで、スタータにより発生するトルクをクランク軸に伝達してクランク軸を回転することで内燃機関のピストンを上下させている。 しかしながら、この始動開始前のエンジン停止時においては、燃料噴射を停止した後、クランク軸は慣性でピストンの移動を行いながら回転しているが、内燃機関のフリクションの関係で、いずれかの気筒(シリンダ)でピストンが圧縮上死点の近傍位置にある位置でクランク軸が停止する。
【0003】
そのため、この停止後の始動時に、スタータのピニオンギアが押し出されて、リングギアと噛み合いを開始する際の、ピニオンギアとリングギアとの噛み合い位置は、ピストンが圧縮上死点の近傍で停止する気筒によって変化するものの、特定の部位に集中して、リングギアの全周で均等にならない。この噛み合い開始部分では、噛み合い時の力が繰り返し作用するため、この部分の損傷が大きく、リングギアの交換の契機になり、リングギアの寿命を短くしている。
【0004】
一方、内燃機関と電動発電機の両方を搭載するハイブリッド車両(HEV)では、内燃機関の出力により電動発電機を駆動して発電して、この発電した電力をバッテリに充電したり、このバッテリに充電した電力で電動発電機を駆動して内燃機関の出力をアシストしたりしている。この内燃機関で電動発電機を駆動する場合には、内燃機関の駆動力を電動発電機に伝達する必要がある。
【0005】
この動力伝達に関しては、いくつかの方法が提案されており、例えば、エンジン(内燃機関)と変速機との間に電動モータ(電動発電機)を設けて、この電動モータをエンジンの駆動軸(クランク軸)に連結したハイブリッド車両が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、このハイブリッド車両においては、内燃機関の停止時及び始動時のスタータのピニオンギアとリングギアの位置関係やリングギアの寿命延長に関しては触れられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−75540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、その目的は、リングギアの寿命の延長を図ることができるハイブリッドシステム、ハイブリッド車両、及びハイブリッドシステムの動力伝達方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明のハイブリッドシステムは、内燃機関と電動発電機を有するハイブリッドシステムにおいて、前記内燃機関のクランク軸に前記電動発電機を接続すると共に、前記電動発電機を制御するハイブリッド用制御装置が、前記内燃機関の停止後に、
前記電動発電機を制御して、前記電動発電機の駆動力により前記クランク軸を回転して停止位置を移動して、前記内燃機関の始動時における前記クランク軸の回転開始位置を
前記クランク軸の全周に分散させて、スタータのオピニオンギアとリングギアがかみ合う位置を前記リングギアの全周に均等に分散させる制御を行うように構成される。
【0010】
この構成によれば、内燃機関が停止した後で、上死点近傍に停止しているピストンを動かして、停止位置を毎回別の停止位置にずらすので、内燃機関の始動時及びアイドリングストップの再始動時に、スタータのオピニオンギアとリングギアが噛み合う位置を、リングギアの全周に均等に分散できて、リングギアの寿命の延長を図ることができる。
【0011】
なお、電動発電機が内燃機関のクランク軸に接続していることで、内燃機関停止後のクランク軸を電動発電機で回転することができるが、内燃機関の始動に関しては、内燃機関のスタータの役割を電動発電機が果してもよく、また、電動発電機とは別に内燃機関がスタータを備えて、このスタータで始動してもよい。
【0012】
また、上記のハイブリッドシステムにおいて、前記ハイブリッド用制御装置が、前記クランク軸又はリングギアの全周における各位置に対応する位置用メモリーを設け、始動時の前記回転開始位置が前記各位置のどの位置に何回なったかをカウントして、その位置に対応する前記位置用メモリーに記憶し、前記内燃機関の停止後に前記電動発電機で前記クランク軸を回転させる時に、カウント数が最小の前記位置用メモリーに対応する位置に、次回の始動時の前記回転開始位置がなるように、前記電動発電機を制御する制御を行うように構成すると、これにより、始動時の回転開始位置を、クランク軸の全周に容易に分散させることができる。
【0013】
また、上記のハイブリッドシステムにおいて、前記ハイブリッド用制御装置が、前記内燃機関の停止後に前記電動発電機で前記クランク軸を回転させる時に、カウント数が最小の前記位置用メモリーに対応する位置の中から前記内燃機関の停止後の移動前の停止位置に最短の位置を選定して、この位置に、次回の始動時の前記回転開始位置がなるように、前記電動発電機を制御する制御を行うように構成すると、これにより、始動時の回転開始位置を、効率的にクランク軸の全周に容易に分散させることができる。
【0014】
そして、上記の目的を達成するためのハイブリッド車両は、上記のハイブリッドシステムを搭載したことを特徴とすると、上記のハイブリッドシステムと同様の効果を奏することができる。
【0015】
そして、上記の目的を達成するための本発明のハイブリッドシステムの動力伝達方法は、内燃機関と電動発電機を有するハイブリッドシステムの動力伝達方法において、前記内燃機関の停止後に、
前記電動発電機を制御して、前記電動発電機の駆動力により前記クランク軸を回転して停止位置を移動して、前記内燃機関の始動時における前記クランク軸の回転開始位置を
前記クランク軸の全周に分散させて、スタータのオピニオンギアとリングギアがかみ合う位置を前記リングギアの全周に均等に分散させることを特徴とする方法である。
【0016】
また、上記のハイブリッドシステムの動力伝達方法において、始動時の前記回転開始位置が前記クランク軸又はリングギアの全周におけるどの位置に何回なったかをカウントして、その位置に対応する前記位置用メモリーに記憶し、前記内燃機関の停止後に前記電動発電機で前記クランク軸を回転させる時に、カウント数が最小の前記位置用メモリーに対応する位置に、次回の始動時の前記回転開始位置がなるように、前記電動発電機を制御する。
【0017】
また、上記のハイブリッドシステムの動力伝達方法において、前記内燃機関の停止後に前記電動発電機で前記クランク軸を回転させる時に、カウント数が最小の前記位置用メモリーに対応する位置の中から前記内燃機関の停止後の移動前の停止位置に最短の位置を選定して、この位置に、次回の始動時の前記回転開始位置がなるように、前記電動発電機を制御する。
【0018】
これらの方法によれば、上記のハイブリッドシステムと同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のハイブリッドシステム、ハイブリッド車両、及びハイブリッドシステムの動力伝達方法によれば、内燃機関が停止した後で、上死点近傍に停止しているピストンを動かして、停止位置を毎回別の停止位置にずらすので、内燃機関の始動時及びアイドリングストップの再始動時に、スタータのオピニオンギアとリングギアが噛み合う位置を、リングギアの全周に均等に分散できて、リングギアの寿命の延長を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態のハイブリッドシステム及びハイブリッド車両の構成を示す図である。
【
図2】クランク軸用断接装置を備えたハイブリッドシステム及びハイブリッド車両の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態のハイブリッドシステム、ハイブリッド車両、及びハイブリッドシステムの動力伝達方法について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示すように、この実施の形態のハイブリッドシステム2は、エンジン(内燃機関)10と電動発電機(M/G)21を有するハイブリッドシステムである。なお、ここでは、このハイブリッドシステム2はハイブリッド車両(HEV:以下車両とする)1に搭載されるものとして説明するが、必ずしも、車両に搭載されるものに限定されない。
【0023】
図1に示すように、この実施の形態のハイブリッドシステム2は、エンジン11と排気通路12とターボ過給器13と、排気通路12に設けられた排気ガス浄化装置(後処理装置)14を備えている。
【0024】
エンジン11のクランク軸15に電動発電機21を連結して構成する。つまり、エンジン11のクランク軸15に直結してベルト(又はチェーン)式CVT(無段変速機構:レシオ可変機構)16を設け、このCVT16に電動発電機21を連結する。つまり、エンジン11のクランク軸15にCVT16の第1プーリー(第1動力伝達部)16aを設けると共に、電動発電機21にCVT16の第2プーリー(第2動力伝達部)16bを設けて構成し、第1プーリー16aと第2プーリー16bを介してクランク軸15と電動発電機21との間の動力伝達を行うように構成する。この第1プーリー16aと第2プーリー16bとの間にはベルトやチェーンなどの動力伝達部材(以下ベルト)16cが掛けられており、クランク軸15から第1プーリー16aとベルト16cと第2プーリー16bを経由して電動発電機21に、また逆に、電動発電機21から第2プーリー16bとベルト16cと第1プーリー16aを経由してクランク軸15に、動力が伝達される。
【0025】
このCVT16では、2個一組の第1プーリー16aと第2プーリー16bにベルト16cをかけ、個々のプーリー16a、16bの幅を変えることにより、プーリー16a、16bとベルト16cの接する位置を変えるようにしており、幅が拡げられてベルト16cの接する位置が内側に(軸に近く)なれば直径が小さくなり、逆に幅が狭められてベルト16cの接する位置が外側なれば(外周側に移動すれば)直径が大きくなるように構成されている。そして、電子制御による油圧又は電動機構(図示しない)で2個のプーリー16a、16bの幅の拡縮が互いに逆になるように変化させる制御を行うことにより、ベルト16cをたるませることなく、変速を連続的に行うことができる。
【0026】
このCVT16を、エンジン11において、クランク軸15の一方に変速機31が接続されており、クランク軸15の他方にCVT16が接続されているように構成すると、CVT16が、エンジン11に関して、変速機31とは反対側のクランク軸15に設けられていることになるので、これにより、エンジン11と変速機31の間にCVT16を設ける必要がなくなる。そのため、ハイブリッドシステムを考慮していない、既存のエンジンと変速機との組み合わせ(パワートレイン)に対しても、電動発電機を容易に設けることができ、ハイブリッドシステムを適用できるパワートレインの種類を拡大することが容易にできる。
【0027】
なお、この場合、従来技術では、エンジンに関して、変速機とは反対側には、クランク軸から駆動力を得ている冷却ファンや冷却水ポンプや潤滑油ポンプ等の補機が配置されているので、これらの補機は電動化して、クランク軸から
直接駆動力を得ることなく、電動発電機で発電した電力で駆動されるようにすることが好ましい。これにより、補機類のレイアウトに関して自由性が増し、更には状況に応じて補機による負荷損失のないエンジン出力を駆動力に活用できるというメリットが生じる。
【0028】
そして、電力システム20の一部である電動発電機21は、発電機として、エンジン11の駆動力を受けて発電をしたり、又は、車両1のブレーキ力等の回生力発生による回生発電をしたりすると共に、モータとして駆動して、その駆動力をエンジン11のクランク軸15に伝達して、エンジン11の駆動力(出力:トルク)をアシストしたりする。
【0029】
なお、発電して得た電力は、配線22を経由してインバータ(INV)23で変換して第1バッテリ(充電器:B1)24Aに充電される。また、電動発電機21を駆動するときは、第1バッテリ24Aに充電された電力をインバータ23で変換して電動発電機21に供給する。
【0030】
図1の構成では、更に、DC−DCコンバータ(CON)25と第2バッテリ(B2)24Bを第1バッテリ24Aに直列に設けて、第1バッテリ24Aの、例えば、一般的な12Vや24V以上の高い電圧の電力を、DC−DCコンバータ25で、例えば、12Vに電圧降下させて、第2バッテリ24Bに充電して、この第2バッテリ24Bから補機の冷却ファン26A、冷却水ポンプ26B、潤滑油ポンプ26C等に電力を供給するように構成している。
【0031】
このハイブリッドシステム2を搭載したハイブリッド車両(以下車両)1においては、エンジン11の動力は、動力伝達システム30の変速機(トランスミッション)31に伝達され、さらに、変速機31より推進軸(プロペラシャフト)32を介して作動装置(デファレンシャルギア)33に伝達され、作動装置33より駆動軸(ドライブシャフト)34を介して車輪35に伝達される。これにより、エンジン11の動力が車輪35に伝達され、車両1が走行する。
【0032】
尚、エンジン11の搭載方式によっては、エンジン11から車輪35の動力伝達システムの伝達経路は異なってもよい。
【0033】
一方、電動発電機21の動力に関しては、第1バッテリ24Aに充電された電力がインバータ23を介して電動発電機21に供給され、この電力により電動発電機21が駆動され動力を発生する。この電動発電機21の動力は、CVT16を介してクランク軸15に伝達されて、エンジン11の動力伝達経路を伝達して、車輪35に伝達される。
【0034】
これにより、電動発電機21の動力がエンジン11の動力と共に車輪35に伝達され、車両1が走行する。なお、回生時には、逆の経路で、車輪35の回生力、又はエンジン11の回生力が電動発電機21に伝達されて、電動発電機21で発電が可能となる。
【0035】
また、ハイブリッドシステム用制御装置41が設けられ、エンジン11の回転数Neや負荷Q等の運転状態や電動発電機21の回転数Na等の運転状態や第1バッテリ24A,第2バッテリ24Bの充電量(SOC)の状態をモニターしながら、CVT16、電動発電機21、インバータ23、DC−DCコンバータ25等を制御する。このハイブリッドシステム用制御装置41は、通常は、エンジン11や車両1を制御する全体制御装置40に組み込まれて構成される。この全体制御装置40は、エンジン11の制御では、シリンダ内燃焼やターボ過給器13や排気ガス浄化装置14や補機の冷却ファン26A、冷却水ポンプ26B、潤滑油ポンプ26Cなどを制御している。
【0036】
また、
図2に示すハイブリッドシステム2A、及びハイブリッド車両1Aのように、クランク軸15と電動発電機21との間にクランク軸用断接装置17を設けて構成すると、これにより、電動発電機21をモータとしても発電機としても使用しないときには、クランク軸用断接装置17を断状態にして、電動発電機21側のフリクションの影響なしにエンジン11を運転することができるのでより好ましい。特に、クランク軸15と第1プーリー16aとの間にクランク軸用断接装置17を設けて構成すると、電動発電機21側に加えてCVT16側のフリクションの影響なしにエンジン11を運転することができる。
【0037】
そして、本発明においては、電動発電機21を制御するハイブリッド用制御装置41が、エンジン11の停止後に、電動発電機21の駆動力によりクランク軸15を回転して停止位置を移動して、エンジン11の始動時におけるクランク軸15の回転開始位置を分散させる制御を行うように構成される。
【0038】
この制御では、エンジン11の停止後に、電動発電機21でクランク軸15を移動して最終的に停止するクランク軸15の位置、即ち、始動時の回転開始位置を、エンジン11の燃料噴射制御などで使用するクランク角検出装置等により検出して、位置用メモリーに記憶している。そしてエンジン停止、すなわちエンジン始動毎にその回転始動位置を、位置用メモリーに記憶することで、始動時の回転開始位置がどの位置に何回なったかをカウントし、リングギアの負担をモニターすることが可能となる。
【0039】
そして、エンジン11の停止後に電動発電機21でクランク軸15を回転させる時に、カウント数が最小の位置用メモリーに対応する位置の中からクランク軸の移動が最短の位置に、次回の始動時の前記回転開始位置がなるように、電動発電機21を制御する。これにより、始動時の回転開始位置を、クランク軸15の全周に分散させることができる。そして、各位置(各クランク角度)に対応する位置用メモリーのカウント数が予め設定したゼロ以外の数値で全て同じになったらリセットしてゼロに戻す。なお、この回転開始位置の替りに、リングギアとピニオンギアが噛み合う位置を用いてもよい。
【0040】
また、エンジン11のクランク軸15と電動発電機21の間にCVT16を設けている場合には、クランク軸15側の第1プーリー16aの実働直径Daを大きくして、電動発電機21側の第2プーリー16bの実働直径Dbを小さくするようにCVT16を制御すると、電動発電機21の回転でクランク軸15のクランク角の位置をより細かく制御することが容易にできるようになるので、好ましい。
【0041】
そして、この実施の形態におけるハイブリッドシステムの動力伝達方法は、エンジン11と電動発電機21を有するハイブリッドシステム2、2Aの動力伝達方法であり、エンジン11のクランク軸15に直接又は間接に接続された電動発電機21で、クランク軸15との間の動力伝達を行うと共に、エンジン11の停止後に、電動発電機21の駆動力によりクランク軸15を回転して停止位置を移動して、エンジン11の始動時におけるクランク軸15の回転開始位置を分散させることを特徴とする方法である。
【0042】
本発明の実施の形態のハイブリッドシステム2、2A、ハイブリッド車両1、1A及びハイブリッドシステムの動力伝達方法によれば、エンジン11が停止した後で、電動発電機21によりクランク軸15を回転して上死点近傍に停止しているピストンを動かして、クランク軸15の停止位置を毎回別の停止位置にずらすので、エンジン11の始動時及びアイドリングストップの再始動時に、スタータのオピニオンギアとリングギアが噛み合って損傷が発生し易い位置を、リングギアの全周に均等に分散できるので、リングギアの寿命の延長を図ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1、1A 車両(ハイブリッド車両:HEV)
2、2A ハイブリッドシステム
11 エンジン(内燃機関)
12 排気通路
13 ターボ過給器
14 排気ガス浄化装置
15 クランク軸
16 CVT(無段変速機構)
17 クランク軸用断接装置
20 電力システム
21 電動発電機(M/G)
22 配線
23 インバータ(INV)
24A 第1バッテリ(B1)
24B 第2バッテリ(B2)
25 DC−DCコンバータ(CON)
26A 冷却ファン(補機)
26B 冷却水ポンプ(補機)
26C 潤滑油ポンプ(補機)
30 動力伝達システム
31 変速機(トランスミッション)
32 推進軸(プロペラシャフト)
33 差動装置(デファレンシャルギア)
34 駆動軸(ドライブシャフト)
35 車輪
40 全体制御装置
41 ハイブリッドシステム用制御装置