(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂組成物を硬化させて絶縁層を形成し、絶縁層表面を粗化処理した後における絶縁層表面の算術平均粗さが10〜350nmであり、二乗平均平方根粗さが20〜500nmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明はナフチルフルオレン構造を有するエポキシ樹脂、及び活性エステル系硬化剤及び/又はシアネートエステル系硬化剤、すなわち活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤のうちのいずれか一方又は両方を含有することを特徴とする樹脂組成物である。以下、樹脂組成物の配合成分について詳述する。
【0010】
<成分(A)ナフチルフルオレン構造を有するエポキシ樹脂>
本発明に使用するナフチルフルオレン構造を有するエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、フルオレン骨格とナフタレン骨格とを有するエポキシ樹脂であればよい。例えば、フルオレノンとナフタレン類とを反応させて得られたナフチルフルオレン構造を有するフェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させることにより該フェノール樹脂をグリシジルエーテル化した分子構造を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。特開2012−102228号公報に開示されているナフチルフルオレン構造を有するエポキシ樹脂を使用することも出来る。特に、下記一般式(1)で示される構造を含むエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0011】
【化1】
〔式中、R
1及びR
2としては、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、好ましくは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。aは0〜3である。bは0〜3である。〕
【0012】
市販されているナフチルフルオレン構造を有するエポキシ樹脂としては、CG−500(大阪ガスケミカル(株)製、上記一般式(1)で示される構造を有する。)などが挙げられる。
【0013】
樹脂組成物中のナフチルフルオレン構造を有するエポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、湿式粗化工程において絶縁層表面の低粗度化とメッキにより形成される導体層の高ピール強度とを両立させるという観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1〜20質量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましく、5〜10質量%が更に好ましい。
【0014】
本発明の樹脂組成物においては、本発明の効果が発揮される範囲で、必要に応じてナフチルフルオレン構造を有するエポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂とを併用してもよい。このような他のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらを1種又は2種以上組み合わせて他のエポキシ樹脂として使用してもよい。
【0015】
エポキシ樹脂として、ナフチルフルオレン構造を有するエポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂とを併用する場合、湿式粗化工程において絶縁層表面の低粗度化とメッキにより形成される導体層の高ピール強度とを両立させるという観点から、エポキシ樹脂全体の固形分を100質量部とした場合、ナフチルフルオレン構造を有するエポキシ樹脂が30〜90質量部であることが好ましく、35〜80質量部であることがより好ましく、40〜70質量部であることが更に好ましい。
【0016】
<成分(B)活性エステル系硬化剤及び/又はシアネートエステル系硬化剤>
本発明の樹脂組成物に使用される活性エステル系硬化剤及び/又はシアネートエステル系硬化剤としては、特に限定されないが、低い誘電正接を実現するという観点から活性エステル系硬化剤を用いることが好ましい。活性エステル系硬化剤及び/又はシアネートエステル系硬化剤として、これらを1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0017】
活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物と、フェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。本発明における活性エステル系硬化剤として1種又は2種以上を使用してもよい。活性エステル系硬化剤として、具体的にはジシクロペンタジエニル型ジフェノール縮合構造を含む活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤等が好ましく、なかでもピール強度の向上に優れるという点で、ジシクロペンタジエニル型ジフェノール縮合構造を含む活性エステル系硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系硬化剤がより好ましい。活性エステル系硬化剤としては、特開2004−277460号公報に開示されている活性エステル系硬化剤を用いてもよく、また市販のものを用いることもできる。市販品としてはジシクロペンタジエニル型ジフェノール縮合構造を含むものとしてEXB9451、EXB9460、EXB9460S−65T、HPC8000−65T(DIC(株)製、活性基当量約223)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤としてDC808(三菱化学(株)製、活性基当量約149)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤としてYLH1026(三菱化学(株)製、活性基当量約200)、YLH1030(三菱化学(株)製、活性基当量約201)、YLH1048(三菱化学(株)製、活性基当量約245)等が挙げられる。
【0018】
ジシクロペンタジエニル型ジフェノール縮合構造を含む活性エステル系硬化剤として、より具体的には下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0019】
【化2】
〔式中、Rはフェニル基又はナフチル基であり、kは0又は1を表し、nは繰り返し単位の平均で0.05〜2.5である。〕
【0020】
樹脂組成物の硬化物の誘電正接を低下させ、耐熱性を向上させるという観点から、Rはナフチル基が好ましく、kは0が好ましく、また、nは0.25〜1.5が好ましい。
【0021】
シアネートエステル系硬化剤としては、特に制限はないが、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系硬化剤、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル系硬化剤、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、500〜4500が好ましく、600〜3000がより好ましい。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート))、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン型構造含有フェノール樹脂等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。これらを1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。市販されているシアネートエステル樹脂としては、下記式(3)で表されるフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、PT30S、シアネート当量124)、下記式(4)で表されるビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン(株)製、BA230S、シアネート当量232)、下記式(5)で表されるジシクロペンタジエン型構造含有シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、DT−4000、DT−7000)等が挙げられる。
【0022】
【化3】
〔式中、nは平均値として任意の数(好ましくは0〜20)を示す。〕
【0024】
【化5】
〔式中、nは平均値として0〜5の数を表す。〕
【0025】
樹脂組成物中の活性エステル系硬化剤及び/又はシアネートエステル系硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、湿式粗化工程において絶縁層表面の低粗度化とメッキにより形成される導体層の高ピール強度とを両立させるという観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましく、5〜20質量%が更に好ましい。
【0026】
本発明の樹脂組成物においては、本発明の効果が発揮される範囲で、必要に応じて活性エステル系硬化剤及び/又はシアネートエステル系硬化剤と他の硬化剤とを併用してもよい。このような他の硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤等が挙げられる。フェノール系硬化剤としては、特に制限はないが、ビフェニル型硬化剤、ナフタレン型硬化剤、フェノールノボラック型硬化剤、ナフチレンエーテル型硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤から選択される1種以上を用いることが好ましい。ベンゾオキサジン系硬化剤としては、特に制限はないが、具体例としては、F−a、P−d(四国化成(株)製)、HFB2006M(昭和高分子(株)製)などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用してもよい。
【0027】
硬化剤として、活性エステル系硬化剤及び/又はシアネートエステル系硬化剤と他の硬化剤とを併用する場合、湿式粗化工程において絶縁層表面の低粗度化とメッキにより形成される導体層の高ピール強度とを両立させるという観点から、硬化剤全体の固形分を100質量部とした場合、活性エステル系硬化剤及び/又はシアネートエステル系硬化剤が30〜100質量部であることが好ましく、40〜95質量部であることがより好ましく、50〜90質量部であることが更に好ましい。
【0028】
また、本発明の樹脂組成物において、樹脂組成物の硬化物の機械強度や耐水性を向上させるという観点から、全てのエポキシ樹脂におけるエポキシ基の合計数と、全ての硬化剤における反応基の合計数との比が、1:0.2〜1:2であることが好ましく、1:0.3〜1:1.5であることがより好ましく、1:0.4〜1:1であることが更に好ましい。なお樹脂組成物中に存在する全てのエポキシ樹脂におけるエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、全ての硬化剤における反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。
【0029】
<無機充填材>
本発明の樹脂組成物は、さらに無機充填材を含有することにより、樹脂組成物の硬化物の誘電正接や熱膨張係数を低下させることができる。無機充填材としては、特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。なかでも、無定形シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ、球状シリカ等のシリカが好ましく、とくに絶縁層の表面粗さを低下させるという点で溶融シリカ、球状シリカがより好ましく、球状溶融シリカが更に好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。市販されている球状溶融シリカとして、(株)アドマテックス製「SOC2」、「SOC1」等が挙げられる。
【0030】
無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、絶縁層表面が低粗度となり、絶縁層表面に微細配線形成を行うことを可能にするという観点から、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下が更に好ましく、1μm以下が更に一層好ましく、0.8μm以下が殊更好ましく、0.6μm以下が特に好ましい。他方、樹脂組成物を樹脂ワニスとした場合に、ワニスの粘度が上昇することにより、取り扱い性が低下するのを防止するという観点から、無機充填材の平均粒径は、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上が更に好ましく、0.07μm以上が更に一層好ましく、0.1μm以上が殊更好ましい。上記無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルとして、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置として、(株)堀場製作所製 LA−950等を使用することができる。
【0031】
無機充填材の含有量は、線熱膨張係数を低下させる点や多層プリント配線板のクラックの発生を抑制するという点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、60質量%以上が更に一層好ましい。他方、硬化物が脆くなるのを防止する点やピール強度低下を防止する点から、無機充填材の含有量は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
【0032】
無機充填材は、表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、具体的には、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、スチリルシラン系カップリング剤、アクリレートシラン系カップリング剤、イソシアネートシラン系カップリング剤、スルフィドシラン系カップリング剤、ビニルシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物及びチタネート系カップリング剤より選択される1種以上の表面処理剤で表面処理することがより好ましい。これにより、無機充填材の分散性や耐湿性を向上させることが出来る。
【0033】
具体的には、表面処理剤として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン等のアミノシラン系カップリング剤、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、11−メルカプトウンデシルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤、p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリルシラン系カップリング剤、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルジメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルジエトキシシラン等のアクリレートシラン系カップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネートシラン系カップリング剤、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィドシラン系カップリング剤、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン、t-ブチルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサオクチルジシラザン、1,3−ジエチルテトラメチルジシラザン、1,3−ジ−n−オクチルテトラメチルジシラザン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3−ジメチルテトラフェニルジシラザン、1,3−ジエチルテトラメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジメチルジシラザン、1,3−ジプロピルテトラメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラザン、テトラメチルジシラザン等のオルガノシラザン化合物、テトラ−n−ブチルチタネートダイマー、チタニウム-i-プロポキシオクチレングリコレート、テトラ−n−ブチルチタネート、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられる。これらのなかでもアミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物が好ましい。市販品としては、信越化学工業(株)製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0034】
無機充填材を表面処理剤で表面処理する際の、該表面処理剤の量は、特に限定されないが、無機充填材100質量部に対して、表面処理剤を0.05〜5質量部で表面処理するのが好ましく、0.1〜4質量部で表面処理するのがより好ましく、0.2〜3質量部で表面処理するのが更に好ましく、0.3〜2質量部で表面処理するのが更に一層好ましい。
【0035】
また、表面処理剤で表面処理された無機充填材は、溶剤(例えば、メチルエチルケトン:MEKと略す。)により洗浄処理した後の無機充填材の単位重量当たりのカーボン量を測定することができる。ここで、「無機充填材の単位重量当たりのカーボン量」とは、無機充填材1gに結合しているカーボン量(g)を百分率で表したものである。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを、表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて固形分を分析することにより、無機充填材の単位重量当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所製「EMIA−320V」等を使用することができる。
【0036】
無機充填材の単位重量当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上や硬化物の湿式粗化工程後の二乗平均平方根粗さを安定させるという点で、0.02%以上が好ましく、0.05%以上がより好ましく、0.1%以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度や接着フィルム形態での溶融粘度の上昇を防止するという点で、3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下が更に好ましい。
【0037】
表面処理剤で表面処理されている無機充填材を樹脂組成物に含有させる場合、無機充填材を表面処理剤により表面処理した後、樹脂組成物に添加することが好ましい。この場合には、無機充填材の分散性をより一層高めることが出来る。
【0038】
無機充填材を表面処理剤で表面処理する際の表面処理方法は、特に限定されないが、乾式法や湿式法が挙げられる。乾式法としては、回転ミキサーに無機充填材を仕込んで、攪拌しながら表面処理剤のアルコール溶液又は水溶液を滴下又は噴霧した後、さらに攪拌し、ふるいにより分級する。その後、加熱処理して表面処理剤と無機充填材とを脱水縮合させることにより表面処理されている無機充填材を得ることができる。湿式法としては、無機充填材と有機溶媒とのスラリーを攪拌しながら表面処理剤を添加し、攪拌した後、濾過、乾燥及びふるいによる分級を行う。その後、加熱処理して表面処理剤と無機充填材とを脱水縮合させることにより、表面処理されている無機充填材を得ることができる。さらに、樹脂組成物中に表面処理剤を添加するインテグラルブレンド法でも表面処理を行うことが可能である。
【0039】
<硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物には、さらに硬化促進剤を含有させることにより、エポキシ樹脂と硬化剤とを効率的に硬化させることができる。硬化促進剤としては、特に限定されないが、アミン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、ホスホニウム系硬化促進剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0040】
アミン系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン(以下、DBUと略記する。)などのアミン化合物などが挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0041】
グアニジン系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0042】
イミダゾール系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物、及びこれらイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0043】
ホスホニウム系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0044】
本発明の樹脂組成物に硬化促進剤を配合する場合には、硬化促進剤は、エポキシ樹脂と硬化剤との合計を100質量部とした場合、0.005〜1質量部の範囲が好ましく、0.01〜0.5質量部の範囲がより好ましい。硬化促進剤がこの範囲内であると、熱硬化をより効率的にでき、樹脂ワニスの保存安定性も向上する。
【0045】
<熱可塑性樹脂>
本発明の樹脂組成物には、さらに熱可塑性樹脂を含有させることにより、硬化物の機械強度を向上させることができ、更に樹脂組成物を接着フィルムの形態で使用する場合の、樹脂組成物のフィルム成型能を向上させることもできる。熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂を挙げることができ、特にフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は8000〜200000の範囲であるのが好ましく、12000〜100000の範囲がより好ましい。なお本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物に熱可塑性樹脂を配合する場合には、熱可塑性樹脂の配合率は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。熱可塑性樹脂の配合率がこの範囲内であると、樹脂組成物のフィルム成型能や硬化物の機械強度を向上させる効果が発揮され、更に溶融粘度の上昇を抑制し、湿式粗化工程後の絶縁層表面の粗度を低下させることができる。
【0047】
<他の成分>
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、マレイミド化合物、ブロックイソシアネート化合物のような熱硬化性樹脂、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素化合物パウダー、ゴム粒子等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の、密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤、水酸化アルミニウム、リン系化合物等の難燃剤、等を挙げることができる。
【0048】
本発明の樹脂組成物は、上記成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または混合することにより調製することができる。また、さらに樹脂組成物に有機溶剤を加えることで樹脂ワニスとしても調製することができる。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、硬化させて絶縁層を形成した場合に、粗化処理(湿式粗化)した後における絶縁層表面の算術平均粗さの値が小さいのみならず、絶縁層表面の二乗平均平方根粗さの値も小さく、絶縁層表面上に十分なピール強度を有する導体層をメッキにより形成することができ、硬化物の誘電正接が低いので、多層プリント配線板の製造において、多層プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物として好適に使用することができる。更に、本発明の樹脂組成物は、メッキにより導体層を形成するための樹脂組成物(導体層がメッキにより形成される多層プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、更に多層プリント配線板のビルドアップ層用樹脂組成物として好適である。
【0050】
本発明の樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、絶縁層表面を粗化処理した後における絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra値)、二乗平均平方根粗さ(Rq値)は、後述する〔メッキにより形成された導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定、算術平均粗さ(Ra値)、二乗平均平方根粗さ(Rq値)の測定〕に記載の測定方法により把握することができる。
【0051】
絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra値)の上限値は、微細配線形成の観点から、350nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、250nm以下が更に好ましく、200nm以下が更に一層好ましく、150nm以下が殊更好ましく、100nm以下が特に好ましい。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra値)の下限値は、特に制限は無く、10nm以上などとなる。
【0052】
絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq値)には絶縁層表面の局所的な状態が反映されるため、Rq値の把握により、緻密で平滑な絶縁層表面になっているか否かが確認でき、緻密で平滑な絶縁層表面になっている場合、ピール強度が安定することを見出した。絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq値)の上限値は、緻密で平滑な絶縁層表面とするために、500nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましく、300nm以下が更に好ましく、200nm以下が更に一層好ましい。絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq値)の下限値は、ピール強度を安定させるという観点から、20nm以上が好ましく、40nm以上がより好ましい。
【0053】
本発明の樹脂組成物を硬化させて絶縁層を形成し、絶縁層表面を粗化処理し、さらにメッキにより形成される導体層と絶縁層とのピール強度は、後述する〔メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定、算術平均粗さ(Ra値)、二乗平均平方根粗さ(Rq値)の測定〕に記載の測定方法により把握することができる。
【0054】
ピール強度は、絶縁層と導体層とを十分に密着させておくために0.37kgf/cm以上が好ましく、0.4kgf/cm以上がより好ましく、0.43kgf/cm以上が更に好ましい。ピール強度の上限値は高いほどよく、特に制限は無いが、一般的に1.5kgf/cm以下、1.2kgf/cm以下、1.0kgf/cm以下、0.8kgf/cm以下などとなる。
【0055】
本発明の樹脂組成物の硬化物の誘電正接は、後述する〔誘電正接の測定〕に記載の測定方法により把握することができる。誘電正接は、電気信号ロスを軽減させるという点から、0.007以下が好ましく、0.006以下がより好ましい。誘電正接は低いほどよく、特に下限値は無いが、一般的に0.001以上、0.002以上などとなる。
【0056】
本発明の樹脂組成物の形態としては、特に限定されないが、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)に適用することが出来る。本発明の樹脂組成物は、樹脂ワニスとして回路基板に塗布して絶縁層を形成することもできるが、工業的には一般に、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料の形態で用いるのが好ましい。樹脂組成物の軟化点は、シート状積層材料のラミネート性の観点から40〜150℃が好ましい。
【0057】
<シート状積層材料>
(接着フィルム)
本発明の接着フィルムは、当業者に公知の方法、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて、支持体に塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成する方法により製造することができる。
【0058】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等の、カルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の、アミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0059】
乾燥条件は特に限定されない。例えば、樹脂組成物層への有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように樹脂ワニスを乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤量、有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0060】
接着フィルムにおいて形成される樹脂組成物層の厚さは、導体層の厚さ以上とするのが好ましい。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層は10〜100μmの厚さを有するのが好ましい。薄膜化の観点から、15〜80μmがより好ましい。
【0061】
支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィンのフィルム、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルのフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルムなどの各種プラスチックフィルムが挙げられる。また支持体として、離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを使用してもよい。中でも、支持体は、汎用性の点から、プラスチックフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。支持体及び後述する保護フィルムには、マッド処理、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。また、支持体及び後述する保護フィルムには、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤で離型処理が施してあってもよい。
【0062】
支持体の厚さは特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。
【0063】
樹脂組成物層の支持体が密着していない面には、支持体と同様の保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、1〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。以上のように形成された接着フィルムを、ロール状に巻きとって貯蔵することもできる。
【0064】
(プリプレグ)
本発明のプリプレグは、本発明の樹脂組成物をシート状補強基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸させ、加熱して半硬化させることにより製造することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物がシート状補強基材に含浸された状態であるプリプレグとすることができる。シート状補強基材としては、例えば、ガラスクロスやアラミド繊維等のプリプレグ用繊維として常用されている繊維からなるものを用いることができる。このプリプレグが支持体上に設けられる構成が好適である。
【0065】
ホットメルト法は、樹脂組成物を有機溶剤に溶解させることなく、支持体上に一旦コーティングし、それをシート状補強基材にラミネートするか、あるいはダイコーターによりシート状補強基材に直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。ソルベント法は、接着フィルムと同様にして樹脂を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスにシート状補強基材を浸漬し、樹脂ワニスをシート状補強基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。また、加熱、加圧条件下で、接着フィルムをシート状補強基材の両面に、連続的に熱ラミネートすることで調製することもできる。支持体や保護フィルム等も接着フィルムと同様に用いることができる。
【0066】
<シート状積層材料を用いた多層プリント配線板>
次に、上記のようにして製造したシート状積層材料を用いて多層プリント配線板を製造する方法の一例を説明する。
【0067】
まず、シート状積層材料を、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネート(積層)する(ラミネート工程)。回路基板に用いられる基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっているものも、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理、銅エッチング等の粗化処理が予め施されていてもよい。
【0068】
上記ラミネート工程において、シート状積層材料が保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じてシート状積層材料及び回路基板をプレヒートし、シート状積層材料を加圧及び加熱しながら回路基板にラミネートする。本発明のシート状積層材料においては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネートの条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力(ラミネート圧力)を好ましくは1〜11kgf/cm
2(9.8×10
4〜107.9×10
4N/m
2)とし、圧着時間(ラミネート時間)を好ましくは5〜180秒とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であってもロールを用いる連続式であってもよい。真空ラミネートは、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製バキュームアプリケーター、(株)名機製作所製真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0069】
シート状積層材料を回路基板にラミネートした後、室温程度に冷却してから、支持体を剥離する場合には支持体を剥離し、樹脂組成物を熱硬化して硬化物を形成することで、回路基板上に絶縁層を形成することができる。熱硬化の条件は、樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃〜220℃で20分〜180分、より好ましくは160℃〜210℃で30〜120分の範囲で選択される。絶縁層を形成した後、硬化前に支持体を剥離しなかった場合には、必要により硬化後に支持体を剥離することもできる。
【0070】
また、シート状積層材料を、真空プレス機を用いて回路基板の片面又は両面に積層することもできる。減圧下、加熱及び加圧を行う積層工程は、一般の真空ホットプレス機を用いて行うことが可能である。例えば、加熱されたSUS板等の金属板を支持体層側からプレスすることにより行うことができる。プレス条件は、減圧度を通常1×10
−2MPa以下、好ましくは1×10
−3MPa以下の減圧下とする。加熱及び加圧は、1段階で行うことも出来るが、樹脂のしみだしを制御する観点から2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。例えば、1段階目のプレスを、温度を70〜150℃とし、圧力を1〜15kgf/cm
2の範囲として行い、2段階目のプレスを、温度を150〜200℃とし、圧力を1〜40kgf/cm
2の範囲として行うのが好ましい。各段階は、時間を30〜120分間として行うのが好ましい。このように樹脂組成物層を熱硬化することにより回路基板上に絶縁層を形成することができる。市販されている真空ホットプレス機としては、例えば、MNPC−V−750−5−200((株)名機製作所製)、VH1−1603(北川精機(株)製)等が挙げられる。
【0071】
次いで、回路基板上に形成された絶縁層に穴開け加工を行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけ加工は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の手段により、また必要によりこれらの手段を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけ加工が最も一般的な方法である。穴あけ加工前に支持体を剥離しなかった場合は、穴あけ加工後に支持体を剥離することができる。
【0072】
次いで、絶縁層表面に対して粗化処理を行う。乾式の粗化処理の方法としてはプラズマ処理等が挙げられ、湿式の粗化処理の方法としては膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理及び中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。湿式の粗化処理の方が、絶縁層表面に凸凹のアンカーを形成しながら、ビアホール内のスミアを除去することができる点で好ましい。膨潤液による膨潤処理は、絶縁層を50〜80℃で5〜20分間(好ましくは55〜70℃で8〜15分間)、膨潤液に浸漬させることで行われる。膨潤液としてはアルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等が挙げられる。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等を挙げることができる。酸化剤による粗化処理は、絶縁層を60〜80℃で10〜30分間(好ましくは70〜80℃で15〜25分間)、酸化剤溶液に浸漬させることで行われる。酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムまたは過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等を挙げることができる。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5〜10重量%とするのが好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ドージングソリューション セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。中和液による中和処理は、30〜50℃で3〜10分間(好ましくは35〜45℃で3〜8分間)、中和液に浸漬させることで行われる。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューシン・セキュリガントPが挙げられる。
【0073】
次いで、乾式メッキ又は湿式メッキにより絶縁層上に導体層を形成する。乾式メッキとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。湿式メッキとしては、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて導体層を形成する方法、導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成する方法、等が挙げられる。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができ、上述の一連の工程を複数回繰り返すことで、ビルドアップ層を多段に積層した多層プリント配線板を形成することができる。本発明の樹脂組成物は、硬化し、粗化処理した後に、低粗度、高ピール強度であるため、多層プリント配線板のビルドアップ層として好適に使用することができる。
【0074】
<半導体装置>
本発明の多層プリント配線板を用いることで半導体装置を製造することができる。すなわち、この半導体装置は本発明の多層プリント配線板を含んでいる。本発明の多層プリント配線板の導通箇所に、半導体チップを実装することにより半導体装置を製造することができる。「導通箇所」とは、「多層プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0075】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、などが挙げられる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明をいかなる意味においても制限するものではない。なお、以下の記載において、「部」は「質量部」を意味する。
【0077】
<測定方法・評価方法>
まずは測定方法・評価方法について説明する。
【0078】
〔メッキにより形成された導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定、算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq)の測定〕
(1)積層板の下地処理
内層回路の形成されたガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、残銅率60%、基板厚み0.3mm、松下電工(株)製R5715ES)両面をメック(株)製CZ8100に浸漬して銅箔表面の粗化処理を行った。
【0079】
(2)接着フィルムのラミネート工程
各実施例及び各比較例で作成した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP-500((株)名機製作所製、商品名)を用いて、積層板の両面にラミネートした。ラミネート工程は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaで圧着することにより行った。
【0080】
(3)樹脂組成物の硬化
ラミネートされた接着フィルムからPETフィルムを剥離し、170℃、30分間の硬化条件で樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成した。
【0081】
(4)粗化処理
絶縁層を形成した積層板を、膨潤液である、アトテックジャパン(株)のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガンドPに60℃で10分間浸漬し、次に粗化液として、アトテックジャパン(株)のコンセントレート・コンパクトP(KMnO
4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬し、最後に中和液として、アトテックジャパン(株)のリダクションショリューシン・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。この粗化処理後の積層板をサンプルAとした。
【0082】
(5)セミアディティブ工法によるメッキ
サンプルAを、PdCl
2を含む無電解メッキ用溶液に浸漬し、次に無電解銅メッキ液に浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成の後に、硫酸銅電解メッキを行い、30μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を180℃にて60分間行った。この積層板をサンプルBとした。
【0083】
(6)算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq値)の測定
サンプルAについて、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値によりRa、Rq値を求めた。そして、それぞれ10点の平均値を求め、これを測定値とした。
【0084】
(7)メッキにより形成された導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定
サンプルBの導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分を囲む切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具(株式会社ティー・エス・イー、オートコム型試験機 AC−50C−SL)で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。
【0085】
〔誘電正接の測定〕
各実施例および各比較例で得られた接着フィルムを190℃で90分間熱硬化させ、PETフィルムを剥離してシート状の硬化物を得た。その硬化物を、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断し、関東応用電子開発(株)製空洞共振器摂動法誘電率測定装置CP521およびアジレントテクノロジー(株)製ネットワークアナライザーE8362Bを使用して、空洞共振法で測定周波数5.8GHzにて誘電正接(tanδ)の測定を行った。2本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。
【0086】
(実施例1)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量165、新日鐵化学(株)製「ZX1059」)10部と、ナフチルフルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量300、大阪ガスケミカル(株)製「CG−500」)10部とをメチルエチルケトン(以下「MEK」と略称する。)5部、シクロヘキサノン5部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性エステル当量223、固形分65%のトルエン溶液)30部、硬化促進剤(広栄化学工業(株)製、「4−ジメチルアミノピリジン」)0.3部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、フェニルアミノシラン処理付「SO−C2」、(株)アドマテックス製、単位重量あたりのカーボン量0.18%)130部、フェノキシ樹脂(YL7553BH30、固形分30質量%のMEK溶液、重量平均分子量35000)5部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを調製した。次に、かかる樹脂ワニスをPETフィルム(厚さ38μm)上に、乾燥後の樹脂厚みが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80〜120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、シート状の接着フィルムを得た。
【0087】
(実施例2)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量165、新日鐵化学(株)製「ZX1059」)10部と、ナフチルフルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量300、大阪ガスケミカル(株)製「CG−500」)10部とをMEK5部、シクロヘキサノン5部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性エステル当量223、固形分65%のトルエン溶液)15部、フェノール化合物(DIC(株)製「LA3018−50P」、フェノール当量151、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)10部、硬化促進剤(広栄化学工業(株)製、「4−ジメチルアミノピリジン」)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、フェニルアミノシラン処理付「SO−C2」、(株)アドマテックス製、単位重量あたりのカーボン量0.18%)130部、フェノキシ樹脂(YL7553BH30、固形分30質量%のMEK溶液、重量平均分子量35000)5部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを調製した。次に実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0088】
(比較例1)
実施例2のナフチルフルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量300、大阪ガスケミカル(株)製「CG−500」)10部をナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4710」、エポキシ当量171)10部に変更したこと以外は、実施例2と全く同様にして樹脂ワニスを作製した。次に実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0089】
(比較例2)
実施例2の活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC−8000−65T」、活性エステル当量223、固形分65%のトルエン溶液)15部を添加せずに、フェノール化合物(DIC(株)製「LA3018−50P」、フェノール当量151、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)を20部に変更し、さらに球形シリカ(平均粒径0.5μm、フェニルアミノシラン処理付「SO−C2」、(株)アドマテックス製、単位重量あたりのカーボン量0.18%)を115部に変更したこと以外は、実施例2と全く同様にして樹脂ワニスを調製した。次に実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0090】
結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
表1の結果から、実施例1及び2では、硬化して絶縁層とした場合に、算術平均粗さの値及び二乗平均平方根粗さの値が小さく、ピール強度として十分な値が得られ、誘電正接が低いことが分かる。他方、比較例1及び2の樹脂組成物では、算術平均粗さ、二乗平均平方根粗さの値が大きくなり、ピール強度が小さく、誘電正接が高かった。
【0093】
(実施例3)
半固形状ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量144、DIC(株)製「HP4032」)9部とナフチルフルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量300、大阪ガスケミカル(株)製「CG−500」)10部とをMEK5部、シクロヘキサノン5部に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、シアネートエステル化合物(シアネート当量124、ロンザジャパン(株)製「PT30S」)7.65部、硬化促進剤(広栄化学工業(株)製、「4−ジメチルアミノピリジン」)0.02部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、フェニルアミノシラン処理付「SO−C2」、(株)アドマテックス製、単位重量あたりのカーボン量0.18%)190部、フェノキシ樹脂(YL7553BH30、固形分30質量%のMEK溶液、重量平均分子量35000)5部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを調製した。次に実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0094】
(比較例3)
実施例3のナフチルフルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量300、大阪ガスケミカル(株)製「CG−500」)10部をビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量185、三菱化学(株)製「YX4000H」)6部に変更したこと以外は、実施例3と同様にして樹脂ワニスを調製した。次に実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0095】
結果を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
表2の結果から、実施例3では、算術平均粗さ、二乗平均平方根粗さの値が小さく、ピール強度として十分な値が得られ、誘電正接が低いことが分かる。他方、比較例3では、算術平均粗さ、二乗平均平方根粗さの値が大きくなり、ピール強度が小さく、誘電正接が高かった。