(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ブレーキ操作部材の操作に伴ってブレーキ液圧を発生させるブレーキ液圧発生手段と複数のホイールシリンダとの間を接続する主管路と、該主管路に設けられ、前記主管路を前記ブレーキ液圧発生手段側の第1管路と前記複数のホイールシリンダ側の第2管路とに分けると共に、差圧を発生させることで前記第1管路と前記第2管路との間の差圧を制御する差圧制御弁と、モータおよび当該モータにより駆動されることでブレーキ液の吸入吐出を行うポンプとを有し、前記モータおよび前記差圧制御弁を制御することで前記第1管路と前記第2管路との間の差圧を制御し、前記ホイールシリンダに発生させるブレーキ液圧を制御するブレーキ液圧制御用アクチュエータと、
液圧ポンプの作動に基づいてアキュムレータに所定範囲のブレーキ液圧を蓄圧し、アキュムレータ圧として出力する補助圧力源と、
前記液圧ポンプおよび前記アキュムレータと前記主管路との間の連通遮断を制御し、連通状態とされることで前記アキュムレータ圧を前記ホイールシリンダに伝達する電磁弁と、を備え、
緊急性を要する場合には、前記電磁弁を連通状態に切り替え、前記ブレーキ液圧制御用アクチュエータのポンプを駆動すると共に、前記差圧制御弁を差圧状態に制御することで、前記アキュムレータ圧と前記ポンプの双方によって前記ホイールシリンダが加圧されることを特徴とするブレーキ装置。
前記ブロックには、前記主管路のうちの前記差圧制御弁と前記複数のホイールシリンダとの間を接続する前記第2管路に繋がるポートが備えられており、該ポートに前記電磁弁を介して前記アキュムレータ圧が伝達される補助圧伝達管路が接続されていることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、W/C圧の昇圧応答性の更なる向上が望まれている。例えば、車両進行方向に障害物が検知されて車両を緊急停止もしくは車両の進路変更させるような衝突回避制御などのように、安全性を向上させるための制御が行われる車両においては、より応答性良くブレーキ力が高められるように、W/C圧の昇圧応答性の更なる向上が望まれる。特に、トラックのような大型車両においては、W/C圧の昇圧応答性の確保が車両の安全性の向上において重要となる。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、W/C圧の昇圧応答性の更なる向上を図ることが可能なブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、 ブレーキ操作部材の操作に伴ってブレーキ液圧を発生させるブレーキ液圧発生手段と複数のW/Cとの間を接続する主管路と、該主管路に設けられ、主管路をブレーキ液圧発生手段側の第1管路と複数のW/C側の第2管路とに分けると共に、差圧を発生させることで第1管路と第2管路との間の差圧を制御する差圧制御弁と、モータおよび当該モータにより駆動されることでブレーキ液の吸入吐出を行うポンプとを有し、モータおよび差圧制御弁を制御することで第1管路と第2管路との間の差圧を制御し、W/Cに発生させるブレーキ液圧を制御するブレーキ液圧制御用アクチュエータと、液圧ポンプの作動に基づいてアキュムレータに所定の圧力範囲のブレーキ液圧を蓄圧し、アキュムレータ圧として出力する補助圧力源と、液圧ポンプおよびアキュムレータと主管路との間の連通遮断を制御し、連通状態とされることでアキュムレータ圧をW/Cに伝達する電磁弁と、を備えていることを特徴としている。
【0007】
このように、ブレーキ液圧制御用アクチュエータに加えて、補助圧力源を備えている。このため、ブレーキ液圧制御用アクチュエータに備えられたポンプによる加圧に加えて、補助圧力源による加圧によってW/Cを加圧することが可能となる。これにより、ブレーキ液圧制御用アクチュエータのみを用いる場合と比較してW/C圧の昇圧応答性を更に向上させることが可能となり、衝突回避などの緊急性が高くてW/C圧の高い昇圧応答性が要求される制御において高い昇圧応答性を実現できることから、更なる安全性の向上を図ることが可能になる。
また、請求項1に記載の発明では
、緊急性を要する場合に
電磁弁を連通状態
に切り替え、ブレーキ液圧制御用アクチュエータのポンプを駆動すると共に、差圧制御弁を差圧状態に制御することで、アキュムレータ圧とポンプの双方によってホイールシリンダが加圧されることを特徴としている。
このように
、緊急性を要する場合には、ブレーキ液圧制御用アクチュエータと補助圧力源との組み合わせによって、W/C圧の高い昇圧応答性を実現することが可能となる
。
【0008】
請求項2に記載の発明では、ブレーキ液圧制御用アクチュエータは、ブロックに対して主管路の一部と差圧制御弁およびポンプを組み込んで一体化されたものであり、電磁弁および補助圧力源は、ブレーキ液圧制御用アクチュエータと別体とされていることを特徴としている。
【0009】
このように、ブレーキ液圧制御用アクチュエータと補助圧力源とを別体としているため、これらを車両に対して別々の場所に搭載することができる。このため、汎用性が高く、かつ、搭載性の良いブレーキ装置とすることが可能となる。また、これらを一体化する場合と比較して、個々の部品の小型化を図ることが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、ブロックには、主管路のうちの差圧制御弁と複数のW/Cとの間を接続する第2管路に繋がるポートが備えられており、該ポートに電磁弁を介してアキュムレータ圧が伝達される補助圧伝達管路が接続されていることを特徴としている。
【0011】
このような構成とすれば、従来構造のブレーキ液圧制御用アクチュエータを適用可能にでき、汎用性を高めることが可能になる。
【0014】
請求項
4に記載の発明では、電磁弁がブレーキ液圧制御用アクチュエータ内に組み込まれていることを特徴としている。
【0015】
これにより、各種制御弁をすべてブレーキ液圧制御用アクチュエータに集約して組み付けることが可能となり、搭載性に優れたブレーキ装置とすることが可能となる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。本発明の一実施形態にかかる車両用のブレーキ装置について説明する。
図1は、本実施形態にかかるブレーキ装置1の基本構成を示した液圧回路図である。ここでは前後配管の液圧回路を構成する車両に本発明にかかるブレーキ装置1を適用した例について説明するが、X配管などの車両についても適用可能である。
【0020】
図1において、ドライバがブレーキ操作部材としてのブレーキペダル11を踏み込むと、倍力装置12にて踏力が倍力され、ブレーキ液圧発生手段に相当するM/C13に配設されたマスタピストン13a、13bを押圧する。これにより、これらマスタピストン13a、13bによって区画されるプライマリ室13cとセカンダリ室13dとに同圧のM/C圧が発生する。M/C圧は、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50を通じて各W/C14、15、34、35に伝えられる。このM/C13には、プライマリ室13cおよびセカンダリ室13dそれぞれと連通する通路を有するマスタリザーバ13eが備えられている。
【0021】
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50は、第1配管系統50aと第2配管系統50bとを有しており、図示しないアルミ製などのブロックに各種部品が組み付けられることで一体化された構成とされている。第1配管系統50aは、右後輪RRと左後輪RLに加えられるブレーキ液圧を制御するリア系統、第2配管系統50bは、左前輪FLと右前輪FRに加えられるブレーキ液圧を制御するフロント系統とされる。
【0022】
なお、各系統50a、50bの基本構成は同様であるため、以下では第1配管系統50aについて説明し、第2配管系統50bについては説明を省略する。
【0023】
第1配管系統50aは、上述したM/C圧を左後輪RLに備えられたW/C14および右後輪RRに備えられたW/C15に伝達し、W/C圧を発生させる主管路となる管路Aを備える。
【0024】
また、管路Aには、管路Aを連通状態と差圧状態に制御することで、上流側となるM/C13側の第1管路と下流側となるW/C14、15側の第2管路との間の差圧を制御する第1差圧制御弁16が備えられている。この第1差圧制御弁16は、ドライバがブレーキペダル11の操作を行う通常ブレーキ時(衝突回避制御や横滑り防止制御などの車両運動制御が実行されていない時)には連通状態となるように弁位置が調整されており、第1差圧制御弁16に備えられるソレノイドコイルに電流が流されると、この電流値が大きいほど大きな差圧状態となるように弁位置が調整される。
【0025】
この第1差圧制御弁16が差圧状態のときには、W/C14、15側のブレーキ液圧がM/C圧よりも所定以上高くなった際にのみ、W/C14、15側からM/C13側へのみブレーキ液の流動が許容される。このため、常時W/C14、15側がM/C13側よりも所定圧力以上高くならないように維持される。また、第1差圧制御弁16に対して並列に逆止弁16aが備えられている。
【0026】
そして、管路Aは、この第1差圧制御弁16よりも下流になるW/C14、15側において、2つの管路A1、A2に分岐する。管路A1にはW/C14へのブレーキ液圧の増圧を制御する第1増圧制御弁17が備えられ、管路A2にはW/C15へのブレーキ液圧の増圧を制御する第2増圧制御弁18が備えられている。
【0027】
第1、第2増圧制御弁17、18は、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成されている。具体的には、第1、第2増圧制御弁17、18は、第1、第2増圧制御弁17、18に備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には連通状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に遮断状態に制御されるノーマルオープン型となっている。
【0028】
管路Aにおける第1、第2増圧制御弁17、18および各W/C14、15の間と調圧リザーバ20とを結ぶ減圧管路としての管路Bには、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成される第1減圧制御弁21と第2減圧制御弁22とがそれぞれ配設されている。これら第1、第2減圧制御弁21、22は、第1、第2減圧制御弁21、22に備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には遮断状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に連通状態に制御されるノーマルクローズ型となっている。
【0029】
調圧リザーバ20と主管路である管路Aとの間には還流管路となる管路Cが配設されている。この管路Cには調圧リザーバ20からM/C13側あるいはW/C14、15側に向けてブレーキ液を吸入吐出するモータ60によって駆動される自吸式のポンプ19が設けられている。モータ60は図示しないモータリレーに対する通電が制御されることで駆動される。
【0030】
そして、調圧リザーバ20とM/C13の間には補助管路となる管路Dが設けられている。この管路Dを通じ、ポンプ19にてM/C13からブレーキ液を吸入し、管路Aに吐出することで、車両運動制御時において、W/C14、15側にブレーキ液を供給し、対象となる車輪のW/C圧を加圧する。
【0031】
なお、ここでは第1配管系統50aについて説明したが、第2配管系統50bも同様の構成であり、第1配管系統50aに備えられた各構成と同様の構成を第2配管系統50bも備えている。具体的には、第1差圧制御弁16および逆止弁16aと対応する第2差圧制御弁36および逆止弁36a、第1、第2増圧制御弁17、18と対応する第3、第4増圧制御弁37、38、第1、第2減圧制御弁21、22と対応する第3、第4減圧制御弁41、42、ポンプ19と対応するポンプ39、リザーバ20と対応するリザーバ40、管路A〜Dと対応する管路E〜Hがある。ただし、各系統50a、50bがブレーキ液を供給するW/C14、15、34、35については、リア系統となる第1配管系統50aよりもフロント系統となる第2配管系統50bの方の容量が大きくされている。これにより、フロント側においてより大きな制動力を発生させることができる。トラック等ではリア系統とフロント系統が同じ容量とされることから、各系統50a、50bで同じ構成とされる。
【0032】
さらに、
図1に示すように、本実施形態にかかるブレーキ装置1の液圧回路には、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50に加えて補助圧力源100および補助圧力源100とW/C14、15、34、35との連通遮断を制御する電磁弁110、111などが備えられている。補助圧力源100には、液圧ポンプ101、アキュムレータ102、電動モータ103および圧力センサ104が備えられている。
【0033】
液圧ポンプ101は、電動モータ103によって駆動されるもので、マスタリザーバ13eのブレーキ液を吸入吐出する。この液圧ポンプ101が吐出したブレーキ液がアキュムレータ102に供給され、蓄圧される。このアキュムレータ102で蓄圧されたブレーキ液圧がアキュムレータ圧に相当する。
【0034】
電動モータ103は、アキュムレータ圧が所定の下限値を下回ることに応答して駆動されることでアキュムレータ圧を上昇させ、アキュムレータ圧が所定の上限値を上回ることに応答して停止させられる。
【0035】
圧力センサ104は、アキュムレータ圧を監視するためものであり、圧力センサ104で検出されたアキュムレータ圧が常に所定範囲内に保たれるように、圧力センサ104の検出信号に基づいて電動モータ103の駆動が行われている。
【0036】
電磁弁110、111は、補助圧力源100とブレーキ液圧制御用アクチュエータ50との間、具体的には液圧ポンプ101およびアキュムレータ102と第1、第2配管系統50a、50bにおける第1、第2差圧制御弁16、36と各増圧制御弁17、18、37、38との間に配置されている。これら電磁弁110、111は、電磁弁110、111に備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には遮断状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に連通状態に制御されるノーマルクローズ型となっている。このため、電磁弁110、111は、非通電時にはアキュムレータ圧を各W/C14、15、34、35に伝えず、通電時にアキュムレータ圧を各W/C14、15、34、35を伝えるようになっている。
【0037】
電磁弁110、111を通じて補助圧力源100からアキュムレータ圧を伝える補助圧伝達管路Iは、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50のブロックに備えられた各差圧制御弁16、36の下流、つまりW/C14、15、34、35側に繋がるポートに接続されている。これにより、電磁弁110、111が連通状態とされたときには、各差圧制御弁16、36で設定される差圧に応じたW/C圧を各W/C14、15、34、35に伝達できるようになっている。
【0038】
また、ブレーキ装置1には、ブレーキECU70が備えられている。ブレーキECU70は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って各種演算などの処理を実行し、アキュムレータ102への蓄圧や衝突回避制御もしくは横滑り防止制御等の車両運動制御を実行する。
【0039】
具体的には、ブレーキECU70は、圧力センサ104の検出信号に基づいてアキュムレータ圧が所定範囲(例えば10〜15MPa)となるように電動モータ103を制御している。また、ブレーキECU70は、図示しないセンサ類の検出信号に基づいて各種物理量を演算し、その演算結果に基づいて車両運動制御を実行するか否かを判定し、実行する際には、制御対象輪に対する制御量、すなわち制御対象輪のW/Cに発生させるW/C圧を求める。その結果に基づいて、ブレーキECU70が各制御弁16〜18、21、22、36〜38、41、42、110、111への電流供給制御およびポンプ19、39を駆動するためのモータ60の電流量制御を実行することで、制御対象輪のW/C圧が制御され、車両運動制御が行われる。
【0040】
例えば、ブレーキペダル11が踏み込まれた通常ブレーキ時、衝突回避制御もしくは横滑り防止制御が実行されたことによる加圧要求があった時には、電磁弁110、111を連通状態に切り替える。同時にポンプ19、39を駆動すると共に、第1、第2差圧制御弁16、36を差圧状態にする。これにより、アキュムレータ102から補助圧伝達管路Iおよび管路A、Eを通じてW/C14、15、34、35にアキュムレータ圧が伝えられる。また、ポンプ19、39の作動によって、管路D、Hを通じてM/C13内のブレーキ液がW/C14、15、34、35側に供給される。そして、第1、第2差圧制御弁16、36が差圧状態とされていることから、第1、第2差圧制御弁16、36の下流側のブレーキ液圧が設定された差圧に応じた圧力となり、加圧要求に応じたW/C圧がW/C14、15、34、35に印加される。
【0041】
そして、衝突回避制御もしくは横滑り防止制御には、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38や第1〜第4減圧制御弁21、22、41、42を適宜制御することで制御対象輪のW/C圧の増減圧を制御し、W/C圧が所望の制御量となるように制御する。
【0042】
また、通常ブレーキ時において車輪スリップが発生してアンチスキッド(ABS)制御が実行された時には、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38や第1〜第4減圧制御弁21、22、41、42を適宜制御すると共に、ポンプ19、39を駆動することでW/C圧の増減圧を制御し、W/C圧が所望の制御量となるように制御する。
【0043】
図2は、本実施形態にかかるブレーキ装置1の作動の一例を示したタイムチャートである。この図に示すように、ドライバがブレーキペダル11を踏み込んだり、車両運動制御が実行されることによって加圧要求が出されると、それに伴って電磁弁110、111への通電がオンされ、第1、第2差圧制御弁16、36が差圧状態に制御されると共にモータ60も駆動される。これにより、アキュムレータ圧とポンプ19、39の双方によってW/C14、15、34、35が加圧される。したがって、W/C圧の昇圧応答性を更に向上させることが可能となる。
【0044】
そして、W/C圧が所定値(図示例では10MPa)に達すると、アキュムレータ圧による加圧を解除し、その後はポンプ19、39のみによってW/C14、15、34、35の増圧を行うようにしている。このようにして、緊急性を要する領域、つまりW/C圧が殆ど発生していない低圧領域においてはアキュムレータ圧による加圧を用い、W/C圧がある程度発生したときにはアキュムレータ圧による加圧を解除してポンプ19、39による加圧のみとすることができる。
【0045】
以上のようにして、本実施形態にかかるブレーキ装置1が構成されている。このように構成されたブレーキ装置1では、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50に加えて、補助圧力源100を備えている。このため、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50に備えられたポンプ19、39による加圧に加えて、補助圧力源100による加圧によってW/C14、15、34、35を加圧することが可能となる。これにより、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50のみを用いる場合と比較してW/C圧の昇圧応答性を更に向上させることが可能となり、衝突回避などの緊急性が高くてW/C圧の高い昇圧応答性が要求される制御において高い昇圧応答性を実現できることから、更なる安全性の向上を図ることが可能になる。
【0046】
また、このような構成のブレーキ装置1では、従来より用いられているブレーキ液圧制御用アクチュエータ50をそのまま用いれば良い。さらに、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50と補助圧力源100および電磁弁110、111とを別体としているため、これらを車両に対して別々の場所に搭載することができる。このため、汎用性が高く、かつ、搭載性の良いブレーキ装置1とすることが可能となる。特に、トラックなどの大型車両においては、高圧が維持されるアキュムレータ102を車室外に配置することも可能となるため、車室内の安全性を確保することも可能となる。さらに、電磁弁110、111を補助圧力源100に近づけて配置できることから、高圧なアキュムレータ圧が作用する部分を少なくでき、より安全性を高めることが可能となる。
【0047】
また、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50と補助圧力源100の2つを用いてW/C圧を発生させられることから、これらの一方のみを用いる場合と比較して、それぞれの昇圧性能を低下させることも可能となる。このため、モータ60の小型化やアキュムレータ102の小型化を図ることも可能となる。
【0048】
また、緊急性を要する領域、つまりW/C圧が殆ど発生していない低圧領域においてはアキュムレータ圧による加圧を用い、W/C圧がある程度発生したときにはアキュムレータ圧による加圧を解除してポンプ19、39による加圧のみとしている。このようにすれば、更にアキュムレータ102の小型化を実現できる。
【0049】
また、補助圧力源100におけるアキュムレータ圧による加圧については、衝突回避制御のような緊急性を要する車両運動制御が実行される場合にのみ行われるようにし、通常ブレーキ時には行われないようにしている。このようにすれば、アキュムレータ圧による加圧頻度を少なくでき、補助圧力源100の耐久負荷を軽減することも可能となる。
【0050】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、ハイドロリックブースタを用いたブレーキ装置1において、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50と補助圧力源100とを組み合わせたものである。本実施形態においても、ブレーキ装置1の基本構成については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
図3は、本実施形態にかかるブレーキ装置1の基本構成を示した液圧回路図である。この図に示すように、本実施形態では、ハイドロリックブースタ120を用いたブレーキ装置1としている。このブレーキ装置1にも、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50および補助圧力源100が備えられている。そして、ハイドロリックブースタ120に対してブレーキ液圧制御用アクチュエータ50および補助圧力源100が接続されており、これらがドライバによるブレーキペダル11の踏み込みや車両運動制御が実行されたときの加圧要求に基づいて駆動されることでブレーキ力を発生させる。
【0052】
ハイドロリックブースタ120には補助圧力源100および低圧リザーバ121が接続されている。第1実施形態と同様、補助圧力源100には、液圧ポンプ101、アキュムレータ102、電動モータ103および圧力センサ104が備えられているが、本実施形態では、電磁弁110、111をブレーキ液圧制御用アクチュエータ50内に組み込んでいる。そして、電動モータ103によって液圧ポンプ101が駆動されることで、低圧リザーバ121のブレーキ液を吸入吐出し、アキュムレータ102内にアキュムレータ圧を蓄積するように構成されている。このアキュムレータ102に蓄積されたブレーキ液圧がハイドロリックブースタ120に入力されるようになっている。
【0053】
ハイドロリックブースタ120は、アキュムレータ圧を入力し、ドライバによってブレーキペダル11が踏み込まれたときに、ブレーキペダル11の操作力(踏力)を助勢して高いブレーキ液圧を発生させる。本実施形態の場合、このハイドロリックブースタ120がブレーキ液圧発生手段を構成している。このハイドロリックブースタ120としては、従来より用いられている一般的な構成のものを適用することができる。
【0054】
このように、ハイドロリックブースタ120が用いられるブレーキ装置1についても、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50と補助圧力源100との組み合わせによって、W/C圧の高い昇圧応答性を実現することが可能となる。これにより、ハイドロリックブースタ120が用いられるブレーキ装置1についても、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。また、本実施形態の構成の場合、ハイドロリックブースタ120および補助圧力源100については、従来のハイドロリックブースタを有するブレーキ装置1において用いられているものを適用できるため、汎用性の高いブレーキ装置1とすることが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態の場合、電磁弁110、111をブレーキ液圧制御用アクチュエータ50内に組み込んだ構成としている。この場合、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50として従来構造のものをそのまま適用することができなくなるし、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50の大型化を招く。しかしながら、各種制御弁16〜18、21、22、36〜38、41、42、110、111をすべてブレーキ液圧制御用アクチュエータ50を構成するブロックに集約して組み付けることが可能となり、搭載性に優れたブレーキ装置1とすることが可能となる。
【0056】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態では、ブレーキECU70によってブレーキ液圧制御用アクチュエータ50に備えられた各種部品の制御に加えて、補助圧力源100に備えられた電動モータ103の制御や電磁弁110、111の制御を行うようにしている。しかしながら、これらは単なる一例を示したに過ぎない。例えば、圧力センサ104の検出信号に基づいて補助圧力源100に備えられる電動モータ103を駆動してアキュムレータ圧を所定範囲内に制御するためのECUをブレーキECU70とは別体として備えるようにしても良い。
【0058】
また、上記第1実施形態では、電磁弁110、111をブレーキ液圧制御用アクチュエータ50の外部に備え、補助圧力伝達管路Iをブレーキ液圧制御用アクチュエータ50のブロックに備えられた各差圧制御弁16、36の下流に繋がるポートに接続した。これは、従来構造のブレーキ液圧制御用アクチュエータ50を適用可能とすること、つまり汎用性を高めることや個々の部品の小型化を目的としたものであり、これらの目的を考慮に入れなければ他の構造を採用しても良い。例えば、第1実施形態においても、第2実施形態と同様に、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50に電磁弁110、111を組み込んだ構成としても良い。
【0059】
さらに、上記実施形態では、W/C圧が所定値(例えば10MPa)に達するまでは補助圧力源100を用い、それ以上の圧力範囲ではポンプ19、39のみを用いるようにした。これについても一例を示したに過ぎず、アキュムレータ圧として蓄圧可能な圧力範囲内を上限として、その上限までは、補助圧力源100とポンプ19、39の双方を用いた加圧形態とすることもできる。また、W/C圧については、各差圧制御弁16、36で設定される差圧に制御可能であるが、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38を差圧がリニアに調整できる差圧制御弁とすれば、これらを制御することによってW/C圧を制御することもできる。また、電磁弁110、111を差圧がリニアに調整できる差圧制御弁とすれば、W/C圧に伝達されるアキュムレータ圧についてもリニアに調整することが可能となる。
【0060】
また、ブレーキ操作部材としてブレーキペダル11を例に挙げて説明したが、ブレーキレバーなどであっても良い。