(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送信処理部は、前記判定部が前記所定の動きがあったと判定すると、前記対応情報と前記時刻情報を直ちに送信する請求項2に記載のリストバンド型腕動作判定装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
(構成)
図1は、本実施形態に係わるリストバンド型活動量計1の外観図である。
図2は、リストハンド型活動量計とスマートフォンからなる行動記録システム100の構成図である。
【0011】
リストバンド型活動量計(以下、活動量計という)1は、ユーザの行動情報を記録し、スマートフォン2へ送信することができる機器である。
活動量計1は、ユーザの腕(点線で示す)Lに巻かれて装着するために帯状のリストバンド型であり、中央部には細長い形状の操作ボタン3が設けられている。操作ボタン3に隣接して、発光ダイオード(以下、LEDという)のランプ4が配設されている。さらに、ランプ4に隣接してスピーカ5も配設されている。
【0012】
操作ボタン3は、後述するように、ユーザが、食事、服用などの所定の行動をする前あるいは後に、操作される。操作ボタン3は、スイッチ3a(
図3参照)を内部に有する。後述するように、操作ボタン3が押されると、スイッチ3aがオンとなり、そのオンの時から所定時間が経過するまでの間における腕の動作が、所定の動きであるか否かの判定が行われる。よって、操作ボタン3は、ユーザが、腕動作判定指示を入力するための入力装置であり、操作されると所定の信号を出力する操作部である。
【0013】
発光素子であるLEDを有するランプ4は、上述した腕の動作が所定の動きであると判定されたときに、点灯して、ユーザに知らせるための告知部である。
スピーカ5は、所定の音あるいは音声を出力するための音出力部である。
【0014】
活動量計1は、操作ボタン3などが配設された中央部の両側から延出する2本のバンド6aと6bを有する。バンド6aの端部には、止め具7が設けられており、バンド6bには、止め具7の突起部(図示せず)が嵌入するための複数の孔8が所定の間隔で形成されている。ユーザは、止め具7に形成された突起部(図示せず)を、任意の位置の孔8に嵌め込むことにより、活動量計1を腕Lに装着することができる。
【0015】
なお、本実施形態の活動量計1は、2本のバンド6aと6bと、操作ボタン3等が設けられた中央部とは、ゴム部材などが一体成形されたものであるが、操作ボタン3等が設けられる本体部と、本体部の両側に接続された2本のバンドとからなる、本体部とバンド部が別体の構成であってもよい。
【0016】
操作ボタン3、ランプ4及びスピーカ5は、活動量計1をユーザの腕Lに装着したとき、腕Lに密着する活動量計1の裏側面とは反対側の表側にくるように、活動量計1に配置されている。
図2に示す行動記録システム100は、活動量計1を利用した行動記録システムである。
【0017】
後述するように、活動量計1は、無線通信機能を有し、歩数情報、推定された行動情報、及びイベント情報をスマートフォン2に送信することができる。ユーザは、活動量計1からの歩数情報などのデータを、スマートフォン2に送信し、スマートフォン2のメモリに記憶させ、スマートフォン2が有するアプリケーションプログラムにより管理したり、スマートフォン2の表示部2a上に表示させることができる。
【0018】
図3は、本実施形態の活動量計1の構成を示すブロック図である。
活動量計1は、操作ボタン3、ランプ4、スピーカ5、加速度センサ11、加速度検出部12、歩数カウンタ13、加速度エネルギー検出部14、重力検出部15、及び制御部16を含んで構成されている。例えば、操作ボタン3とランプ4とスピーカ5と加速度センサ11以外の構成要素、具体的には、加速度検出部12、歩数カウンタ13、加速度エネルギー検出部14、重力検出部15及び制御部16は、半導体集積回路として、1チップの半導体装置内に形成される。
【0019】
活動量計1は、歩数計の機能、活動量計測の機能、及び後述するイベントの時刻の記録及び送信の機能を有する。
なお、
図1では、活動量計1の電源をオン・オフするためのオン・オフボタン、カウント値をリセットするためのリセットボタンなどは省略しており、それらのボタンからの操作信号OPが、制御部16に入力される。
【0020】
加速度センサ11は、互いに直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)方向の加速度をそれぞれ検出することができるように、3つのセンサを有し、X軸出力、Y軸出力及びZ軸出力を、各軸について加速度信号として出力する3軸加速度センサである。加速度センサ11の各出力は、加速度検出部12、重力検出部15及び後述する腕動き判定部51に入力される。
【0021】
図1に示すように、活動量計1がユーザの腕Lに装着されたときに、X軸方向が、手Hの甲の面と平行で、かつ腕Lの軸に対して直交する方向となり、Y軸方向が、手Hの甲の面と平行で、かつ腕Lの軸と平行な方向となり、Z軸方向が、手Hの甲の面に直交する方向となるように、ユーザは、活動量計1を腕Lに装着することができる。
図1では、腕Lは、紙面の手前から裏側に向かうように、活動量計1の円環状のバンド6aと6bに通されている。
【0022】
加速度検出部12は、二乗和平方根算出部12aと、ハイパスフィルタ(HPF)12bとを含む。
二乗和平方根算出部12aは、加速度センサ11の各出力の二乗和の平方根の信号を生成する回路である。ここでは、複数方向(ここでは3つの方向)の加速度を用いているので、各出力の二乗和の平方根の信号を生成する二乗和平方根算出部12aを用いているが、二乗和平方根算出部12aに代えて、二乗和の信号を生成する二乗和算出回路を用いてもよい。
【0023】
ハイパスフィルタ12bは、二乗和平方根算出部12aの出力から重力加速度を除去するためのオフセットキャンセラー回路である。
なお、ここでは、加速度センサ11は、3軸加速度センサであるが、2以上の方向の加速度を検出するセンサであればよく、2軸以上の加速度センサでもよい。
よって、加速度検出部12は、互いに直交する2軸以上の方向の加速度を検出することができる加速度センサ11の出力から加速度を検出し、加速度信号を出力する。
加速度検出部12から出力される加速度信号は、歩数カウンタ(CNT)13及び加速度エネルギー検出部14に入力される。
【0024】
歩数カウンタ13は、加速度検出部12から出力される加速度信号に基づいて、歩数をカウントするカウンタである。歩数カウンタ13は、所定の閾値以上の入力があると、1つインクリメントするカウンタである。歩数カウンタ13は、所定時間(例えば5秒間)における、加速度信号に基づいた歩数をカウントし、そのカウントした値を保持する。
加速度エネルギー検出部14は、絶対値回路21と、ローパスフィルタ22とを含む。
【0025】
加速度エネルギー検出部14に入力された加速度信号は、絶対値回路21に入力される。絶対値回路21は、入力された加速度信号の絶対値を算出し、ローパスフィルタ22に出力する。
【0026】
ローパスフィルタ22は、絶対値回路21の出力を平均化して加速度の強度を検出し、制御部16の行動判定・推定部31に出力する。このように、加速度エネルギー検出部14は、加速度検出部12からの加速度信号から加速度の強度を検出する加速度強度検出部を構成する。
重力検出部15は、重力方向に対して加速度センサ11の各軸方向の変化を検出し、検出結果(後述する判定信号)を行動判定・推定部31に出力する。
【0027】
図4は、重力検出部15の詳細な回路構成を説明するためのブロック図である。
図4に示すように、重力検出部15は、3つのバンドパスフィルタ41a,41b,41c、3つの絶対値回路42a,42b,42c、合算回路43、及び、ローパスフィルタ44を含んで構成されている。
【0028】
図5は、バンドパスフィルタ41aのフィルタ特性を示す図である。
図5において、横軸は、周波数で、縦軸は、出力信号の出力を示す。なお、バンドパスフィルタ41b及び41cのフィルタ特性もバンドパスフィルタ41aのフィルタ特性と同じである。
【0029】
一般には、歩行時の腕振りの周波数は1Hz程度であり、走行時の腕振りの周波数は、歩行時の2倍以上程度となる。これに対して、歩行以外の行動、例えば、体操、食事などでは、加速度センサ11の各軸方向が比較的ゆっくり、かつ、大きく変化する。
【0030】
図5に示すように、バンドパスフィルタ41a〜41cは、それぞれ0.2Hzから0.8Hzの周波数成分を透過するフィルタである。
図5に示すフィルタ特性を有するバンドパスフィルタ41a〜41cを用いることにより、重力方向に対して加速度センサ11の各軸方向がゆっくり、かつ、大きく変化した場合にのみ、その変化に応じた信号がバンドパスフィルタ41a〜41cから出力される。このように、重力検出部15は、所定の周波数領域を透過するバンドパスフィルタ41a〜41cにより、重力方向に対する加速度センサ11の各軸方向の変化を検出する方向変化検出部を構成する。より具体的には、方向変化検出部である重力検出部15は、重力加速度方向と加速度センサ11の各軸方向とがなす角度の変化を検出する。つまり、加速度センサ11は常に重力の影響を受けているため、重力加速度方向と各軸方向の角度変化により、加速度センサ11の値も軸毎に変化する。
【0031】
図6は、重力加速度の方向と加速度センサ11のX軸方向とがなす角度の変化について説明するための図である。
加速度センサ11が
図6(a)に示す向きの場合、重力加速度の方向と加速度センサ11のX軸方向とがなす角度はα1となる。ユーザの行動により、加速度センサ11が
図6(b)に示す向きに変化した場合、重力加速度の方向と加速度センサ11のX軸方向とがなす角度はα2となる。重力加速度の方向と加速度センサ11のX軸方向とがなす角度が、α1からα2の変化するとき、加速度センサ11のX軸出力の値も変化する。重力検出部15は、バンドパスフィルタ41aにより、重力加速度方向と加速度センサ11のX軸方向とがなす角度の変化(動き)の成分を透過させ、この動きを検出する。加速度センサ11のY軸方向及びZ軸方向についても同様に検出し、重力加速度方向と加速度センサ11の各軸方向とがなす角度の変化を検出する。
【0032】
バンドパスフィルタ41a〜41cの出力は、それぞれ絶対値回路42a〜42cに入力される。絶対値回路42a〜42cは、それぞれバンドパスフィルタ41a〜41cの出力の絶対値を算出し、合算回路43に出力する。
【0033】
合算回路43は、絶対値回路42a〜42cの出力を合算し、ローパスフィルタ44に出力する。ローパスフィルタ44は、合算回路43の出力を平均化して判定信号を生成する。この判定信号は、制御部16の行動判定・推定部31に出力される。
【0034】
制御部16は、
図3に示すように、行動判定・推定部31と、カウンタ部32と、メモリ33と、イベント情報記録送信部34と、無線送信部35とを含む。制御部16は、中央処理装置(CPU)、ROM、RAMを含み、行動判定・推定部31及びイベント情報記録送信部34の機能の一部を、ソフトウエアにより実現している。
【0035】
行動判定・推定部31は、重力検出部15からの判定信号を所定の閾値と比較することで、現在の行動が歩行または走行(以下特に断りが無い場合歩行と走行は区別せず歩行という)であるのか、歩行以外であるのかを判定する。また、行動判定・推定部31は、時刻情報を受信できるように、後述する時計部53に接続されている。
【0036】
図7は、歩行中の加速度センサ11及び重力検出部15の出力の例を説明するための図であり、
図8は、体操中の加速度センサ11及び重力検出部15の出力の例を説明するための図である。なお、
図7(a)は、歩行中の加速度センサ11の出力を示し、
図7(b)は、歩行中の重力検出部15の出力を示す。同様に、
図8(a)は、体操中の加速度センサ11の出力を示し、
図8(b)は、体操中の重力検出部15の出力を示す。
【0037】
また、
図7(a)及び(b)において、約120秒から460秒までの間が歩行中の出力を示しており、
図8(a)及び(b)において、約100秒から230秒までの間が体操中の出力を示している。
【0038】
図7(b)に示すように、歩行中では重力検出部15の出力、より具体的には、ローパスフィルタ44の出力は小さく、ほとんどない。これに対し、
図8(b)に示すように、歩行以外の行動、ここでは、体操中では重力検出部15の出力、より具体的には、ローパスフィルタ44の出力は、大きくなる。行動判定・推定部31は、このような重力検出部15からの出力の違いに基づいて、現在の行動が歩行か歩行以外かを判定する。
【0039】
行動判定・推定部31は、重力検出部15の出力に基づいて、現在の行動が歩行と判定した場合、歩数カウンタ13のカウント値を、カウンタ部32の歩行時カウンタ32aに加算する。
具体的には、行動判定・推定部31は、所定の周期(例えば5秒)で、重力検出部15の出力に基づいて、歩行か歩行以外の行動かを判定し、歩行と判定したときは、直前の所定の周期(例えば5秒)期間の歩数カウンタ13のカウント値を、歩行時カウンタ32aのカウント値に加算する。
【0040】
なお、歩行時カウンタ32aは、それぞれリセットボタン(図示せず)などが押されて、リセット信号の操作信号OPが生成されると、歩数を0(ゼロ)にするようにカウント値が0(ゼロ)に設定される。
また、歩行時カウンタ32aのカウント値は、一定時間毎にメモリ33に記録される。
【0041】
以上のように、カウンタ部32は、歩行時カウンタ32aを含み、歩行時カウンタ32aには、ユーザが歩いているときの歩数がカウントアップされていく。
一方、行動判定・推定部31は、重力検出部15からの判定信号を所定の閾値と比較することで、現在の行動が歩行以外と判定した場合、加速度エネルギー検出部14からの加速度の強度に基づいて、歩行以外の行動の種類を推定する。
【0042】
図9は、屈伸運動中の加速度センサ11、重力検出部15及び加速度エネルギー検出部14の出力の例を説明するための図であり、
図10は、テニスの素振り中の加速度センサ11、重力検出部15及び加速度エネルギー検出部14の出力の例を説明するための図である。なお、
図9(a)は、屈伸運動中の加速度センサ11の出力を示し、
図9(b)は、屈伸運動中の重力検出部15の出力を示し、
図9(c)は、屈伸運動中の加速度エネルギー検出部14の出力を示す。同様に、
図10(a)は、テニスの素振り中の加速度センサ11の出力を示し、
図10(b)は、テニスの素振り中の重力検出部15の出力を示し、
図10(c)は、テニスの素振り中の加速度エネルギー検出部14の出力を示す。
【0043】
また、
図9(a)、(b)及び(c)において、約100秒から180秒までの間が屈伸運動中の出力を示しており、
図10(a)、(b)及び(c)において、約100秒から260秒までの間がテニスの素振り中の出力を示している。
【0044】
行動判定・推定部31は、
図9(b)及び
図10(b)に示す重力検出部15の出力から歩行以外の行動を判定し、
図9(c)及び
図10(c)に示す加速度エネルギー検出部14の出力から歩行以外の行動(屈伸運動及びテニスの素振り)を推定する。
【0045】
なお、屈伸運動やテニスの素振り以外の行動についても同様に、加速度エネルギー検出部14の出力から推定することができる。また、行動判定・推定部31は、加速度エネルギー検出部14の出力を所定の閾値と比較することで、例えば、運動強度を小、中、大と分け、運動強度小、中、大のいずれかである行動と推定し、それぞれの運動強度に応じた消費カロリー(消費エネルギー)を求めるようにしてもよい。
そして、行動判定・推定部31は、この推定結果をメモリ33に記憶する。このように、メモリ33は、行動判定・推定部31が推定した推定結果を記憶する記憶部を構成する。
【0046】
また、無線送信部35は、ブルートゥース BlueTooth(登録商標)、WiFiなどの無線通信のための回路である。行動判定・推定部31からの送信指示に応じて、メモリ33に記憶された推定結果情報は、スマートフォン2へ送信される。なお、無線送信部35は、後述するように、イベント情報記録送信部34からの指示に応じて、記録された行動情報と時刻情報も、スマートフォン2へ送信する。
【0047】
このように、行動判定・推定部31は、現在の行動が歩行以外と判定した場合、加速度エネルギー検出部14からの加速度の強度に基づいて行動推定を行うことで、歩行以外の行動の種類をより正確に推定することができる。
【0048】
次に、イベント情報記録送信部34について説明する。イベント情報記録送信部34は、腕動き判定部51と、記録部52と、時計部53と、タイマ54とを含む。
時計部53は、時刻情報を生成する回路であり、腕動き判定部51は、時計部53の時刻情報を参照することができる。時刻情報は、年月日と時刻の情報を含む。
【0049】
タイマ54は、所定の時間が経過したか否かを計時する回路であり、腕動き判定部51からのタイマオン指令によって、計時を開始し、所定の時間が経過すると、タイムアウトする。所定の時間は、例えば2秒である。タイマ54は、オンしてからタイムアウトするまでの間、タイムアウトしたか否かを示す信号を出力する。よって、腕動き判定部51は、タイマ54の出力状態を参照することにより、タイムアウトしたか否かを判定することができる。
【0050】
腕動き判定部51には、操作ボタン3のスイッチ3aの信号と、加速度センサ11の各出力とが入力される。腕動き判定部51は、操作ボタン3が押されると、加速度センサ11の各出力に基づいて、腕Lの動きに所定の動きがあったか否かを判定する。すなわち、腕動き判定部51は、操作ボタン3が操作されて操作ボタン3から所定の信号があったことが検出されると、所定の時間内に、加速度センサ11の出力に基づいて、所定の動きがあったか否かを判定する判定部を構成する。
所定の動きは、複数あり、各動きの判定のためのデータは、参照データとして予め、腕動き判定部51の書き換え可能な不揮発性メモリである記憶部51aに登録されている。
【0051】
腕動き判定部51は、所定の動きがあったと判定したときは、記録部52に対して、判定した所定の動きに関する情報(以下、所定の動き情報という)を供給する。記録部52は、所定の動き情報を受信すると、時刻情報を時計部53から読み出させて、所定の動き情報に対応するイベント情報と、読み出した時刻情報を、メモリ33に記録させるコマンド信号を出力する。腕動き判定部51から記録部52に供給される所定の動き情報は、所定の動きの名称(例えば、食事、服用、排泄など)でもよいし、各動きについて予め決められたコード情報(例えば、番号)などでもよい。
【0052】
図11は、腕Lに所定の動きがあったときの加速度センサ11の各出力の例を説明するための図である。
図11は、腕の所定の動きM1として、
図1において2点鎖線RMで示すように、手Hの手首を、腕Lの軸周りに、素早く2回、回動させたときの加速度センサ11の各出力を示す。
【0053】
操作ボタン3を押した後、所定の時間内(例えば2秒以内)に、手Hを素早く2回回動させると、
図11に示すように、Y軸出力は、大きく変化しないが、X軸出力とZ軸出力が、50msec近辺で大きく変化する。
【0054】
図12は、腕に所定の動きがあったときの加速度センサ11の各出力の他の例を説明するための図である。
図12は、腕の所定の動きM2として、手Hに、1回だけ素早く叩くような動作(タップ動作)をさせたときの加速度センサ11の各出力を示す。
【0055】
操作ボタン3を押した後、所定の時間内(例えば2秒以内)に、手Hを2回だけ素早く叩くような動作をさせると、
図12に示すように、X軸出力、Y軸出力及びZ軸出力の各出力は、50msec近辺で大きく変化する。
【0056】
図11及び
図12に示す2つの所定の動きM1とM2のそれぞれについてのX軸出力、Y軸出力及びZ軸出力の波形パターンの情報が、パターン認識用の参照パターンとして、腕動き判定部51内の記憶部51aに予め登録されている。腕動き判定部51は、加速度センサ11のX軸出力、Y軸出力及びZ軸出力の各波形パターンが、登録された各波形パターンと一致するか否かを、パターンマッチング処理により判定することによって、腕Lが所定の動きをしたか否かを判定する。そして、腕動き判定部51は、判定された所定の動きを示す所定の動き情報を、記録部52に出力する。
【0057】
よって、波形のパターンマッチング処理により、加速度センサ11のX軸出力、Y軸出力及びZ軸出力の各波形パターンが、
図11と
図12に示す波形パターンと一致するか否かを判定することにより、腕Lに所定の動きM1あるいはM2があったか否かの判定を行うことができる。
【0058】
ここでは、所定の動きとして、2つの例を示したが、腕の所定の動きは、以上の2つの動きM1とM2以外の腕の動きのデータも、参照データとして、記憶部51aに予め記録されている。
【0059】
そして、記録部52は、腕動き判定部51からの所定の動き情報を受信すると、その所定の動き情報に対応するイベント情報と、所定の動き情報を受信したときの時刻情報と、をメモリ33の所定の記憶領域、ここでは所定のテーブルTBLに記録する。記録部52は、時計部53からの時刻情報に基づいて、時刻情報を生成する。
【0060】
よって、ユーザは、自己が行うあるいは行った食事等の行動に対応する腕の動きを行うと、その行動を1つのイベントとして、そのイベント情報と、その腕の動きがあったときの時刻情報を、活動量計1に記録させることができる。
【0061】
例えば、ユーザが、「食事」と「服用」の2つの行動の時刻記録をしたいときは、食事の前あるいは後に、操作ボタン3を押してから所定の時間内に、所定の動きM1を行うと、活動量計1では、「食事」のイベント情報と、その時刻情報とが関連付けられて、メモリ33のテーブルTBLに記録される。そして、食後に薬を服用したときは、服用の前あるいは後に、操作ボタン3を押してから所定の時間内に、所定の動きM2を行うと、活動量計1では、「服用」のイベント情報と、その時刻情報とが関連付けられて、メモリ33のテーブルTBLに記録される。
(作用)
(行動判定・推定)
活動量計1は、通常は、電源がオンになっていると、歩数の計測と、
図7〜
図10で示した行動の推定処理を実行している。
【0062】
ユーザが、活動量計1を腕部に装着して行動すると、加速度センサ11で検出された各軸の出力値が加速度検出部12及び重力検出部15に入力される。加速度センサ11で検出された各軸の出力値は、加速度検出部12に入力され、加速度信号が検出される。加速度検出部12により検出された加速度信号は、加速度エネルギー検出部14に入力され、加速度の強度が検出される。この加速度の強度は、行動判定・推定部31に入力される。
【0063】
また、加速度センサ11で検出された各軸の出力値は、重力検出部15のバンドパスフィルタ41a〜41cに入力される。0.2Hzから0.8Hzの周波数成分を透過するバンドパスフィルタ41a〜41cにより、歩行時の周波数成分が除去され、重力方向に対して加速度センサ11の各軸方向がゆっくり、かつ、大きく変化した場合にのみ、その変化に応じた信号が出力される。
【0064】
バンドパスフィルタ41a〜41の出力は、それぞれ絶対値回路42a〜42cにより絶対値が算出される。そして、絶対値回路42a〜42cの出力は、合算回路43で合算された後、ローパスフィルタ44で平均され、判定信号として行動判定・推定部31に出力される。
【0065】
ユーザが歩行以外の行動をしている場合、重力方向に対して加速度センサ11の各軸方向がゆっくり変化する。バンドパスフィルタ41a〜41cは、重力方向に対して加速度センサ11の各軸方向がゆっくり、かつ、大きく変化した場合にのみ、その変化に応じた信号を出力する。そのため、行動判定・推定部31は、バンドパスフィルタ41a〜41cの出力から生成される判定信号を所定の閾値と比較することで、現在の行動が歩行か歩行以外かを判定することができる。
【0066】
行動判定・推定部31は、現在の行動が歩行以外と判定した場合、加速度エネルギー検出部14からの加速度の強度に基づいて、歩行以外の行動の種類を推定する。
行動判定・推定部31は、歩行時カウンタ32aの値、すなわち歩数をメモリ33に記憶する。さらに、行動判定・推定部31は、ユーザの行動の推定結果をメモリ33に記憶する。このとき、行動判定・推定部31は、ユーザの行動の推定結果をメモリ33に記憶する際に、現在の時刻とともに記憶する。ユーザの行動の推定結果と、時計部53からの現在の時刻を示す時刻情報とを関連付けて記憶することで、活動量計1は、ユーザの1日の行動の推定結果を取得することができる。
【0067】
このように、ユーザの1日の行動の推定結果を取得することで、活動量計1は、例えば、体操などの運動を何時間行ったかなどのユーザの1日の行動パターン、ライフスタイルを取得することができる。例えば生活習慣病などの患者の腕部に活動量計1を取り付け、患者の1日の行動パターンを取得することで、医師が患者に対して、生活環境、生活習慣の改善についての最適なアドバイスを行うことができる。
(イベント記録)
ユーザが、操作ボタン3を押すと、活動量計1は、イベント情報記録送信処理を実行する。
【0068】
腕動き判定部51は、操作ボタン3が押されたことを検知すると、
図13の処理を実行する。
図13は、イベント情報記録送信処理の流れの例を示すフローチャートである。
【0069】
腕動き判定部51は、まず、操作ボタン3が押されたか否かを判定する(S1)。S1の処理は、加速度センサ11の出力信号でない、所定の信号の有無を検出する検出処理部である。ここでは、S1の検出処理は、スイッチ3aの信号を、所定の信号として検出する。操作ボタン3が押されたことを検知しなければ(S1:NO)、処理は、何もしない。
【0070】
操作ボタン3が押されたことを検知すると(S1:YES)、タイマ54をオンにする(S2)。タイマ54は、オンされると、所定の時間(例えば2秒)の計時を開始する。腕動き判定部51は、タイマ54をオンにした後、判定処理を実行する(S3)。
【0071】
判定処理は、加速度センサ11のX軸出力、Y軸出力及びZ軸出力の3つの出力を監視し、入力された3つの出力の波形が、記憶部51aに予め登録されている複数の波形パターンのいずれかと一致するか否かを判定する。一致の判定は、上述したように、X軸出力、Y軸出力及びZ軸出力の3つ波形データが、それぞれ、予め登録されている波形パターンのX軸出力、Y軸出力及びZ軸出力の3つ波形データと一致するか否かを比較して判定するパターンマッチング処理により行われる。
【0072】
判定処理の結果において、加速度センサ11のX軸出力、Y軸出力及びZ軸出力の3つ波形データが、それぞれ、予め登録されている波形パターンのいずれか1つのX軸出力、Y軸出力及びZ軸出力の3つ波形データと一致したと判定されると(S4:YES)、上述したように、腕動き判定部51は、一致した3つの波形データに対応する所定の動き情報を、記録部52に出力する。
【0073】
以上のように、腕動き判定部51は、操作ボタン3が操作されてから所定の時間内における腕の動作を判定するため、所定の腕動作の有無を正確に判定することができ、判定処理も、その所定の時間内だけ実行されるので、活動量計1の消費電力の低減を図ることができる。
【0074】
所定の動き情報を受信した記録部52は、記録処理を行う(S5)。
記録部52は、受信した所定の動き情報に対応する対応情報であるイベント情報と時刻情報とを関連付けて一対の情報として、メモリ33に書き込む。ここでは、所定の動き情報に対応する対応情報は、イベントコード情報であり、メモリ33のテーブルTBLに記録される。すなわち、S5の処理は、判定された所定の動きに対応する対応情報としてのイベント情報コードと時刻情報をメモリ33に記録する記録処理部を構成する。
【0075】
図14は、メモリ33に記録されるイベント情報と時刻情報の例を示す図である。イベント情報と時刻情報は、メモリ33中のテーブルTBLに、イベント情報と時刻情報が関連付けられて記録される。
図14に示すように、2013年12月19日7時30分に「食事」があったことを示す「1」というイベントコードが記録され、2013年12月19日8時10分に「服用」があったことを示す「2」というイベントコードが記録されている。
【0076】
判定処理の結果において、加速度センサ11のX軸出力、Y軸出力及びZ軸出力の3つ波形データが、それぞれ、予め登録されている波形パターンのいずれか1つのX軸出力、Y軸出力及びZ軸出力の3つ波形データと一致しないと判定されると(S4:NO)、腕動き判定部51は、タイマ54がタイマオン時から所定の時間(例えば2秒)が経過してタイムアウトしたか否かを、タイマ54の出力状態から判定する(S6)。タイマ54がタイムアウトしていないとき(S6:NO)、処理は、S3に移行し、判定処理(S3)が実行される。タイマ54がタイムアウトしたとき(S6:YES)、処理は、終了する。
【0077】
記録処理が実行されると(S5)、腕動き判定部51は、告知処理を実行する(S7)。告知処理は、ランプ4を、判定されたイベントに応じて光らせる処理である。ここでは、一致すると判定された予め登録された波形パターンに対応するイベントコードが「1」であるときは、ランプ4を1回光らせるように、腕動き判定部51は、ランプ4の発光を制御する。また、一致すると判定された予め登録された波形パターンに対応するイベントコードが「2」であるときは、ランプ4を2回光らせるように、腕動き判定部51は、ランプ4の発光を制御する。よって、S7の処理は、S3において、所定の動きがあったことが判定されると、ユーザに判定がされたことを告知するために、所定の出力をする出力部である。
【0078】
なお、ここでは、ランプ4を、各イベント情報コードに応じた回数、光らせているが、いずれのイベント情報コードの場合も1回光らせるだけでもよい。
よって、ユーザは、操作ボタン3を押した後、所定の時間内に腕Lに所定の動きをさせた後、ランプ4が発光するので、行った腕の所定の動きが、活動量計1に認識されたと知ることができる。逆に、ユーザが操作ボタン3を押した後、所定の時間内に腕Lに所定の動きをした後、ランプ4が発光しなければ、ユーザは、行った腕の所定の動きが、活動量計1に認識されていないことが分かる。
【0079】
そして、腕動き判定部51は、送信処理を行う(S8)。送信処理は、メモリ33に記録されたイベント情報コードと時刻情報を、無線送信部35から無線で送信する処理である。よって、S8の処理は、腕に所定の動きがあったことがS3の処理において判定されると、判定された所定の動きに対応する対応情報としてのイベントコードと、操作ボタン3が押されて所定の入力があったことが検出されときの時刻情報を無線で送信する送信処理部を構成する。すなわち、腕動き判定部51は、S3において所定の動きがあったと判定されると、対応情報と時刻情報を無線送信部35から直ちに送信する。
【0080】
なお、送信処理では、緊急時あるいは特定の動き以外の動きのときは、イベントコードと時刻情報を直ちに送信しないようにしてもよい。すなわち、活動量計1は、緊急時あるいは特定の動き以外の動きのときは、イベントコードと時刻情報を直ぐに送信しないが、緊急時あるいは特定の腕の動きのときは、イベントコードと時刻情報は、リアルタイムで送信するようにしてもよい。
【0081】
例えば、緊急時の腕の動きを予め登録しておき、ユーザが転倒して助けが必要な時のような緊急時、ユーザは、操作ボタン3を押して、緊急時に対応する所定の動き(上述した所定の動きM1,M2とは異なる動き)をすると、緊急時を意味するイベントのイベント情報コードと時刻情報は直ぐに送信される。
【0082】
しかし、「食事」、「服用」等の緊急でないイベントの時は、腕動き判定部51は、時計部53の時刻情報を監視しており、所定の時刻、例えば夜中の12時00分、になると、メモリ33のTBLに記録されたイベントコードと時刻情報を、無線で送信する送信処理を実行する。すなわち、その送信処理では、無線送信部35から、所定の時刻になるとメモリ33に記録されたイベントコードと時刻情報とを、まとめて送信する。
【0083】
さらになお、腕動き判定部51は、時計部53の時刻情報に基づいて、所定の時間、例えば3時間、が経過する度に、メモリ33のTBLに記録された行動情報を、無線で送信するようにしてもよい。
【0084】
すなわち、腕動き判定部51は、所定の時刻にあるいは所定の時間間隔で、メモリ33に記録された対応情報と時刻情報を、無線送信部35から送信するようにしてもよい。その場合、S3では、加速度センサ11の出力に基づいて、複数の所定の動きの中のいずれの動きかが判定される。腕動き判定部51は、判定された動きが緊急時などに対応する動きであるときは、対応情報と時刻情報を直ちに送信し、判定された動きが緊急時などの動き以外の動きであるときは、対応情報と時刻情報を、所定の時刻にあるいは所定の時間間隔で送信する。
【0085】
以上のように、上述した実施形態によれば、所定の腕動作の有無を正確に判定することができ、電力消費量を低減することができるリストバンド型腕動作判定装置を提供することができる。
【0086】
特に、ユーザが意思も持って行う所定の操作(ここでは操作ボタン3を押すこと)があった後に、所定の時間内に、腕Lの所定の動きがあるか否かを判定するので、腕動き判定部51における誤判定の確率も低くなる。
【0087】
従来より、人は、自己の行動の記録を取るには、メモを取るなどしている。特に、行動を取ったときの記録は、時刻も併せて記録してメモしなければならず、繁雑な作業が必要であった。
【0088】
また、人の計測データの定期的な測定及び記録管理が必要な場合もある。例えば、糖尿病患者は、定期的に血糖値を測定し、記録する必要がある。測定した血糖値が食前の値か、食後の値かを記録するために、データを記録するための手帳を持ち歩き、そのデータを記録しなければならなかった。
【0089】
しかし、上述した実施形態の活動量計1を用い、食前の服用と食後の服用のそれぞれの行動に対応する腕の動きを予め登録しておくと、ユーザは、活動量計1あるいはスマートフォン2で、例えば血糖値などの測定したデータの食前と食後の対応を付けることもできる。すなわち、上述した実施形態の活動量計1を用いれば、食事前であるとき、及び食事後であるということをイベント情報として、そのときの時刻情報と共に、自動的に記録されて送信されるので、ユーザは、スマートフォン2でイベントあるいは行動の記録を見て確認することができる。
さらに、上述した例では、操作ボタン3が1つしか設けられていないので、活動量計1が大型化しないというメリットがある。
【0090】
なお、操作ボタン3の代わりに、センサを用いてもよい。
図3において、点線で示すように、操作ボタン3の代わりに、センサ3Aを設け、そのセンサ3Aは検出部3Aaに接続される。検出部3Aaは、センサ3Aの出力信号が、所定の閾値を超えたか否かを判定し、出力信号が所定の閾値を超えると、検出信号を、腕動き判定部51に出力する。すなわち、S1の検出処理は、物理量を検出するセンサの出力信号を、所定の信号として検出する。
【0091】
この場合、センサ3Aは、温度センサ、二酸化炭素センサなどである。ユーザが、温度センサを触れると、検出部3Aaが温度センサの検出温度の変化を検出し、その検出信号は腕動き判定部51に出力される。
【0092】
また、告知手段として、ランプ4の光ではなく、スピーカ5から所定の音あるいは音声を出力させるようにしてもよい。さらにまた、告知手段として、振動を用いてもよい。例えば、
図3において、点線で示すように、活動量計1に、告知手段としてのバイブレータ7を内蔵させ、振動により、ユーザに判定されてことを知らせるようにしてもよい。
【0093】
また、
図3において、点線で示すように、活動量計1に、液晶表示器のような表示部17を設け、表示部17に、歩数などの情報や、腕の動きが判定されたことを示す表示を行うようにしてもよい。腕の動きの判定の場合、例えば、「判定」の文字、あるいは行動の内容を示す文字、例えば「食事」、「服用」などの文字を表示するようにしてもよい。
【0094】
さらに、上述した活動量計1は、リストバンド型であるので、腕時計に、
図3に示す構成の活動量計1を組み込んで、腕時計の機能に、腕動作判定装置としての機能を持たせるようにしてもよい。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として例示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。