(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれか1項に記載の射出成形用プロピレン系樹脂組成物を、ウェルドが発生する金型を用いて、射出成形してなることを特徴とするプロピレン系樹脂成形品。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、(共)重合体(A)および共重合体(B)の合計100重量部基準で、特定のプロピレン系(共)重合体(A)75〜97重量部に対し、特定のプロピレン−エチレン共重合体(B)3〜25重量部、および、前記化学構造式(1)で示される透明化核剤(C)を0.01〜2.0重量部含有する射出成形用プロピレン系樹脂組成物、および該射出成形用プロピレン系樹脂組成物を、ウェルドが発生する金型を用いて射出成形して得られる成形品である。
以下、射出成形用プロピレン系樹脂組成物を構成する成分、射出成形用プロピレン系樹脂組成物の製造方法、成形品について、項目毎に、詳細に説明する。
【0022】
I.射出成形用プロピレン系樹脂組成物を構成する成分
1.プロピレン系(共)重合体(A)
本発明の射出成形用プロピレン系樹脂組成物(以下、プロピレン系樹脂組成物ともいう。)で用いられるプロピレン系(共)重合体(A)は、メタロセン触媒を用いた重合により、得られたものを使用する。メタロセン触媒を用いたものは、チーグラー・ナッタ触媒を用いたものよりも、分子量分布が狭く、結晶性分布が狭いため、均一かつ微細で緻密な結晶を生成し、その結果、透明性に著しく優れたプロピレン系(共)重合体を製造することができる。
本発明で用いられるプロピレン系(共)重合体(A)を製造するための適正な形態を、以下、順次詳細に説明する。
【0023】
1−1.メタロセン触媒
本発明で用いられるプロピレン系(共)重合体(A)の製造に用いるメタロセン触媒の種類は、特に限定されるものではない。
【0024】
本発明に用いることができるメタロセン触媒の代表的な例として、下記の成分(a)、(b)、および、任意成分である成分(c)からなるメタロセン触媒を挙げることができる。
成分(a):下記一般式(3)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
成分(b):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(b−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体
(b−2)成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体
(b−3)固体酸微粒子
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(c):有機アルミニウム化合物
【0025】
(1)成分(a)
成分(a)は、下記の一般式(3)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物である。
【0026】
【化3】
[式(3)中、AおよびA’は、置換基を有していてもよい共役五員環配位子、Qは、二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基、XおよびYは、成分(b)と反応してオレフィン重合能を発現させるσ共有結合性補助配位子、Mは、周期表第4族の遷移金属である。]
【0027】
上記一般式(3)中、共役五員環配位子は、置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基誘導体である。置換基を有する場合、その置換基の例としては、炭素数1〜30の炭化水素基(ハロゲン、珪素、酸素、硫黄などのヘテロ原子を含有していてもよい)が挙げられ、この炭化水素基は一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していても、また、これが複数存在するときにその内の2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニルの一部と共に環を形成していてもよい。
この様な共役五員環配位子の例としては、インデニル基、フルオレニル基、またはヒドロアズレニル基等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよく、中でもインデニル基またはヒドロアズレニル基が好ましい。これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。
【0028】
Qとして、好ましくはメチレン基、エチレン基、シリレン基、ゲルミレン基、およびこれらに炭化水素基が置換したもの、並びにシラフルオレン基等が挙げられる。
XおよびYの補助配位子は、成分(b)などの助触媒と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させるものであり、各々水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、あるいは、酸素、窒素、ケイ素等のヘテロ原子を有していてもよい、炭化水素基が例示できる。これらのうち好ましいものは、炭素数1〜10の炭化水素基、あるいはハロゲン原子である。
Mは、周期表第4族の遷移金属であり、好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウムである。特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
【0029】
さらに、上記遷移金属化合物の中でも、プロピレンの立体規則性重合を進行させ、かつ得られるプロピレン重合体の分子量が高いものが好ましい。具体的には、特開平1−301704号公報、特開平4−2211694号公報、特開平6−100579号公報、特表2002−535339号公報、特開平6−239914号公報、特開平10−226712号公報、特開平3−193796号公報、特表2001−504824号公報などに記載の遷移金属化合物が好ましく挙げられる。
【0030】
上記遷移金属化合物の非限定的な例として、下記のものを挙げることができる。
(1)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウム
(2)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)]ジルコニウム
(3)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウム
(4)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウム
(5)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウム
(6)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル)(2−イソプロピル−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウム
(7)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−t−ブチルフェニル−インデニル)(2−イソプロピル−4−t−ブチルフェニル−インデニル)]ジルコニウム
(8)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ジルコニウム
(9)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ジルコニウム
(10)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ジルコニウム
(11)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ジルコニウム
(12)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(13)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム
(14)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム
(15)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム
(16)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−5,6,7,8−テトラヒドロアズレニル}]ジルコニウム
(17)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,3−ジメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(18)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(19)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,3,4−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(20)ジクロロジメチルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニル)ジルコニウム
(21)ジクロロジメチルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジt−ブチルフルオレニル)ジルコニウム
(22)ジクロロジメチルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(1,1,4,4,7,7,10,10−オクタメチル−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウム
【0031】
上記で表される好ましい化合物は、煩雑な多数の例示を避けて代表的例示化合物のみ記載した。中心金属がジルコニウムの化合物を記載したが、同様のハフニウム化合物も、使用可能であることは言うまでもなく、また、種々の共役五員環配位子や結合性基あるいは補助配位子を任意に使用しうることは自明である。
【0032】
(2)成分(b)
成分(b)として、上述した成分(b−1)〜成分(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は、公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808号公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報などに詳細な例示がある。
【0033】
成分(b−1)、成分(b−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、さらには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
【0034】
また、成分(b)の非限定的な具体例としては、成分(b−1)として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−2)として、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−3)として、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウム、フッ素化合物処理した後に、か焼したシリカアルミナ、ペンタフルオロフェノールとジエチル亜鉛等の有機金属化合物を反応させ、さらに水と反応後、同生成物を担持したシリカなどを、成分(b−4)として、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などが挙げられる。これらは、混合層を形成しているものでもよい。
【0035】
上記成分(b)の中で特に好ましいものは、成分(b−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
【0036】
(3)成分(c)
必要に応じて成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物は、次の一般式で示される有機アルミニウム化合物が好ましく、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムまたはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムを好ましく例示できる。
一般式:AlR
aX
3−a
(式中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基、Xは、水素原子、ハロゲン原子またはアルコキシ基、aは、0<a≦3の数である。)
また、この他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。
これらのうち、成分(c)として、特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0037】
(4)触媒の形成
成分(a)、成分(b)および必要に応じて成分(c)を接触させて触媒とする。その接触方法は、特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、後述するオレフィンによる予備重合時に行ってもよい。
(i)成分(a)と成分(b)を接触させる。
(ii)成分(a)と成分(b)を接触させた後に、成分(c)を添加する。
(iii)成分(a)と成分(c)を接触させた後に、成分(b)を添加する。
(iv)成分(b)と成分(c)を接触させた後に、成分(a)を添加する。
(v)三成分を同時に接触させる。
【0038】
使用する成分(a)、(b)および(c)の量は、任意である。例えば、成分(b)に対する成分(a)の使用量は、成分(b)1gに対して、好ましくは0.1μmol〜500μmol、特に好ましくは0.5μmol〜100μmolの範囲である。成分(b)に対する成分(c)の使用量は、成分(b)1gに対し、好ましくは成分(c)のアルミニウム原子の量が0.001mmol〜100mmol、特に好ましくは0.005mmol〜50mmolの範囲である。したがって、成分(a)に対する成分(c)の量は、遷移金属のモル比で0.002〜10
6、好ましくは0.02〜10
5、特に好ましくは0.2〜10
4の範囲内である。
【0039】
メタロセン触媒は、予め、オレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。
使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。
【0040】
予備重合処理において、オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。予備重合の温度と時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(b)1グラムに対し、好ましくは0.01〜100g/g、さらに好ましくは0.1〜50g/gである。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行うことも可能である。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
【0041】
1−2.プロピレン系(共)重合体(A)の製造方法
本発明で用いられるプロピレン系(共)重合体(A)は、プロピレン単独重合体、もしくは、プロピレン−エチレンランダム共重合体のいずれかである。これ以外のプロピレン系共重合体、例えば、ブロック共重合体を用いると、透明性が著しく低下するため不適当である。中でも、プロピレン−エチレンランダム共重合体の方が高い透明性が得られるため、より好ましい。
【0042】
(1)重合プロセス
重合プロセスは、任意のものを用いることができ、単段重合でも多段重合でもかまわない。また、反応相も任意のものを用いることができるが、バルク法または気相法を用いるのが一般的である。バルク法と気相法の中間的な条件として超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には、気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。
なお、多槽連続重合プロセスの場合、バルク法の重合反応器の後に気相法の重合反応器を付ける場合があるが、この場合は、当業界の慣例にしたがってバルク法と呼ぶことにする。また、バッチ法の場合に、第1工程をバルク法で行い、第2工程を気相法で行うこともあるが、この場合も同様にバルク法と呼ぶことにする。
また、バルク法と気相法のそれぞれにおいて種々のプロセスが提案されている。攪拌(混合)方法や除熱方法に違いがあるが、この観点において、本発明においては、特にプロセス種を限定することはない。
【0043】
(2)一般的な重合条件
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は、選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、好ましくは0.1〜50MPaの範囲を用いることができる。この際に、窒素などの不活性ガスを共存させても問題はない。
【0044】
(3)有機アルミニウム化合物
メタロセン触媒は、チーグラー触媒とは異なり、有機アルミニウム化合物を助触媒として用いることが必須ではない。従って、活性化された触媒の形成という観点では、重合反応器に有機アルミニウム化合物を添加することは必ずしも必要ではない。しかし、オレフィンの重合反応は、他の触媒反応と較べて、極めて短時間に極めて多くの触媒サイクルが回るという点で特異的であり、そのため不純物の影響を受けやすいという技術上の課題が存在する。この課題を解決するために、通常の化成品と較べて遥かに純度の高い原料を用いたり、原料を更に精製して使用したり、種々の工夫がなされているのは周知の事実である。この観点で、重合反応器に反応性の高い有機アルミニウム化合物を添加し、不純物がメタロセン触媒と反応する前に、有機アルミニウム化合物と反応させ、無害化する手法が良く用いられる。
本発明においても、この観点で、有機アルミニウム化合物を用いることが望ましい。有機アルミニウム化合物として任意の化合物を用いることができるが、好適な化合物の例は、前述したメタロセン触媒の任意成分である成分(c)(有機アルミニウム化合物)と同様であり、とりわけ、トリイソブチルアルミニウムとトリオクチルアルミニウムが好ましい。
【0045】
有機アルミニウム化合物の使用量は、不純物のレベルに応じて、任意に設定することができる。一般的には、製造するプロピレン系(共)重合体(A)の重量に対する有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子のモル数として、0.001〜1000mmol−Al/kgの範囲内となる様に添加する。好ましくは、0.01〜100mmol−Al/kg、更に好ましくは、0.1〜20mmol/kgの範囲内となる様に添加するのが良い。
【0046】
1−3.プロピレン系(共)重合体(A)の各特性の制御方法
本発明で用いられるプロピレン系(共)重合体(A)は、プロピレン単独重合体、またはプロピレン−エチレンランダム共重合体である必要がある。
【0047】
(1)特性(A−i):エチレン含有量[E(A)]
プロピレン系(共)重合体(A)として、プロピレン−エチレンランダム共重合体を用いる場合には、プロピレン系(共)重合体(A)中のエチレン含有量[E(A)]が3.0重量%以下である必要がある。
E(A)が3.0重量%を超えると、結晶化速度が遅くなり、成形性が著しく悪化するためである。
プロピレン系(共)重合体(A)のE(A)は、重合槽内のガス成分におけるエチレン比率により、調整することができる。具体的には、エチレン比率を高くすると、E(A)が高くなる。逆もまた同様である。重合槽におけるエチレン比率を高くするには、重合槽へのエチレンの供給量を高くすれば良く、当業者にとって調整は、極めて容易である。
【0048】
(2)特性(A−ii):メルトフローレート[MFR(A)]
本発明で用いられるプロピレン系(共)重合体(A)は、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレート[MFR(A)]が2〜100g/10分である必要がある。
MFR(A)が2g/10分を下回ると、溶融粘度が高くなるため、大型の製品が成形できなくなったり、成形時の応力が残留して、成形後の反り変形が生じたり、表面の平滑性が損なわれて成形品の外観が悪化したりする恐れがある。一方、MFR(A)が100g/10分を上回ると、透明化核剤のプロピレン(共)重合体(A)への均一分散性が悪化して、透明性が発現し難くなったり、成形品の耐衝撃性が低下したりする恐れがある。MFR(A)は、3〜80g/分がより好ましく、5〜50g/分がさらに好ましい。
プロピレン系(共)重合体(A)のMFR(A)は、水素を連鎖移動剤として用いることにより調整することができる。具体的には、連鎖移動剤である水素の濃度を高くするとMFR(A)が高くなる。逆もまた同様である。重合槽における水素の濃度を高くするには、重合槽への水素の供給量を高くすれば良く、当業者にとって調整は、極めて容易である。
【0049】
(3)特性(A−iii):GPC測定における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)
本発明で用いられるプロピレン系(共)重合体(A)は、GPC測定における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2〜4の範囲にある必要がある。
メタロセン触媒を用いることにより、チーグラー・ナッタ触媒を用いる場合よりも、Mw/Mnを小さくすることができるが、Mw/Mnを制御する際には、狙いの値に対して適切なメタロセン触媒を選択すると同時に、重合条件を工夫することも有効である。例えば、2槽連続の重合プロセスを採用し、1段目の重合槽と2段目の重合槽で分子量の異なるプロピレン−エチレン共重合体を製造すれば、用いるメタロセン触媒が本来与える値よりも、Mw/Mnを高くすることができる。この際、用いる重合条件、特に水素濃度と得られるプロピレン−エチレン共重合体の分子量の関係を事前に把握しておき、各槽の水素濃度を適当に調整することにより、Mw/Mnを望みの値に調整することは、当業者にとって容易なことである。
【0050】
ここで、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)で求められ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定して得られるものとする。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380,F288,F128,F80,F40,F20,F10,F4,F1,A5000,A2500,A1000
各々が0.5mg/mlとなるようにo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2ml注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する、粘度式の[η]=K×M
αは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10
−4、α=0.7
PP:K=1.03×10
−4、α=0.78
【0051】
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
・装置:WATERS社製、GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製、MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
・移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/分
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料は、o−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlのBHTを含む)を用いて、1mg/mlの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
【0052】
2.プロピレン−エチレン共重合体(B)
本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)は、下記特性(B−i)〜(B−ii)を有する必要がある。
特性(B−i):共重合体(B)中のエチレン含有量[E(B)]が0.4〜13重量%の範囲にある。
特性(B−ii):共重合体(B)のメルトフローレート[MFR(B)]が0.5〜20g/10分の範囲にある。
【0053】
2−1.各特性
(1)特性(B−i):エチレン含有量[E(B)]
特性(B−i)のプロピレン−エチレン共重合体(B)中のエチレン含有量[E(B)]は、0.4〜13重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜12重量%の範囲である。共重合体中のエチレン含有量[E(B)]をこの範囲とすると、充分な表面荒れ改善効果が得られる。また、0.4重量%未満である場合は、プロピレン系(共)重合体(A)よりも、融点が高くなり、分散性が悪化する場合がある。一方、13重量%を超えると、プロピレン系(共)重合体(A)との相溶性が悪化して、透明性が低下する場合がある。
【0054】
(2)特性(B−ii):メルトフローレート[MFR(B)]
特性(B−ii)のプロピレン−エチレン共重合体(B)のメルトフローレート[MFR(B)]は、0.5〜20g/10分であり、好ましくは、1.0〜15g/10分である。0.5g/10分より小さい場合は、プロピレン系(共)重合体(A)への分散性が劣り、透明性が悪化したり、白点が発生したりして、外観が悪化する。一方、20g/10分よりも大きい場合は、後記するプロピレン系重合体成分(B1)のMFRとプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)のMFRとの格差が大きくなり、プロピレン−エチレン共重合体成分(B)の分散不良に起因した白点が生じて、射出成形品の外観が著しく悪化するため、好ましくない。
【0055】
さらに、本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)は、プロピレン系重合体成分(B1)[以下、成分(B1)とも記載する。]およびプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)[以下、成分(B2)とも記載する。]の合計100重量%基準で、下記特性(B1−i)を有する成分(B1):65〜95重量%と、下記特性(B2−i)〜(B2−ii)を有する成分(B2):5〜35重量%とからなるプロピレン−エチレン共重合体であることが必要である。
特性(B1−i):重合体成分(B1)中のエチレン含有量[E(B1)]が0〜6.0重量%の範囲にある。
特性(B2−i):共重合体成分(B2)中のエチレン含有量[E(B2)]が8〜25重量%の範囲にある。
特性(B2−ii):共重合体成分(B2)のメルトフローレート[MFR(B2)]が0.0001〜0.5g/10分の範囲にある。
ここで、E(B2)は、E(B)、E(B1)、共重合体(B)における成分(B1)と成分(B2)の重量比率(重量%)を用いて、以下の式により定義した値とする。
E(B2)={E(B)−E(B1)×[W(B1)÷100]}÷[W(B2)÷100]
[ここで、W(B1)、W(B2)は、共重合体(B)における成分(B1)と成分(B2)の重量比率(重量%)であり、W(B1)+W(B2)=100の関係を満たす。]
なお、本発明において用いたエチレン含有量の測定方法については、実施例においてその詳細を記載する。
【0056】
同様に、MFR(B2)は、MFR(B)、MFR(B1)、共重合体(B)における成分(B1)と成分(B2)の重量比率(重量%)を用いて、粘度の対数加成則として良く知られている以下の式により定義した値とする。
MFR(B2)=exp{(log
e[MFR(B)]−(W(B1)÷100)×log
e[MFR(B1)])÷(W(B2)÷100)}
[ここで、MFR(B1)は、プロピレン系重合体成分(B1)のMFRであり、W(B1)、W(B2)は、上記で定義したものである。]
なお、メルトフローレート[MFR(B)およびMFR(B1)]は、JIS K7210に準拠し、230℃、荷重2.16kgにて測定される。
【0057】
成分(B1)は、結晶性を有する成分であり、プロピレン系(共)重合体(A)との相溶性を発現させる成分である。よって、エチレン含有量[E(B1)]は0〜6.0重量%であり、好ましくは0.5〜5.0重量%である必要がある。エチレン含有量[E(B1)]が6.0重量%を超えると、重合体の性状が極端に悪化し、重合設備での閉塞を誘発するだけでなく、プロピレン系(共)重合体(A)との相溶性が悪化する。さらには、射出成形品のベタツキ性を悪化させる要因である低結晶性成分が増加するので、不適当である。
成分(B2)は、ウェルド近傍におけるメルトフロントを鈍化させ、気泡が発生する領域を抑制する成分である。そのような効果を発現させるためには、極めて高い分子量を有する必要がある。そこで、成分(B2)は、MFR(B2)が0.0001〜0.5g/10分の範囲にあることが必要で、好ましくはその上限は、0.2g/10分以下である。また、分子量が高すぎると、分散性が悪くなり、白点等の外観不良発生の要因となるため、0.0001g/10分以上であり、好ましくは0.001g/10分以上である。
【0058】
また、成分(B2)は、結晶固化を遅延させて、ウェルド部でのメルトフロントの融合を促進させる効果を発現させる成分でもある。よって、結晶性を有さない必要があるが、結晶性は、エチレン含有量で制御されるため、エチレン含有量[E(B2)]が8重量%以上であることが必要であり、好ましくは10重量%以上、より好ましくは10.5重量%以上、さらに好ましくは11重量%以上である。
一方、エチレン含有量[E(B2)]が高すぎると、プロピレン系(共)重合体(A)、ならびに成分(B1)のプロピレン分子鎖と、成分(B2)の分子鎖との相溶性が著しく低下して、白点などの外観不良が発生する。さらには、十分なウェルド改良効果を示さなくなるため、エチレン含有量[E(B2)]は、25重量%以下であることが必要であり、好ましくは20重量%以下である。
【0059】
成分(B2)は、著しく分子量が高いため、プロピレン−エチレン共重合体(B)中の成分(B2)の割合が多くなりすぎると、成分(B1)のMFRとの格差を大きくする必要があり、分散不良による白点の要因となる。したがって、35重量%以下であることが必要であり、好ましくは30重量%以下である。一方、成分(B2)が少なすぎると、ウェルドを十分に改良するためには、組成物中にプロピレン−エチレン共重合体(B)を過剰に含有する必要があり、射出成形品の透明性の低下を招く恐れがあり、好ましくない。よって、成分(B2)は、5重量%以上であることが必要であり、好ましくは10重量%以上である。
【0060】
2−2.プロピレン−エチレン共重合体(B)の製造方法
本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)は、上記特性(B−i)〜(B−ii)を有するものであって、かつ、特性(B1−i)を有するプロピレン系重合体成分(B1)65〜95重量%と、特性(B2−i)〜(B2−ii)を有するプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)5〜35重量%とからなるプロピレン−エチレン共重合体であり、本要件を有するものであれば、特に製造法を限定するものではない。
以下、具体的な例を挙げながら、本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)を製造するための適正な形態を説明する。
【0061】
(1)触媒
本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)を製造するための触媒は、任意のものを用いることができるが、特性(B2−i)〜(B2−ii)を有するプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)を構成成分として製造する観点から、チーグラー・ナッタ触媒を用いる方が好ましい。
チーグラー・ナッタ触媒を用いる場合、具体的な触媒の製造法は、特に限定されるものではないが、一例として、特開2007−254671号公報に開示された触媒を例示することができる。具体的には、本発明に係るプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の代表的な例として、以下の構成成分、(a1)チタン、マグネシウムおよびハロゲンを必須成分として含有する固体成分、(a2)有機アルミニウム化合物、(a3)電子供与体、からなる触媒を挙げることができる。
【0062】
(1−1)固体成分(a1)
本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分である固体成分(a1)は、チタン(a1a)、マグネシウム(a1b)およびハロゲン(a1c)を必須成分として含有するものであり、任意成分として電子供与体(a1d)を用いることができる。
ここで、「必須成分として含有する」ということは、上記成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分を任意の形態で含んでも良いということを示すものである。以下に詳述する。
【0063】
・チタン(a1a)
チタン源となるチタン化合物としては、任意のものを用いることができる。代表的な例としては、特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。チタンの価数に関しては、4価、3価、2価、0価の任意の価数を持つチタン化合物を用いることができるが、好ましくは4価および3価のチタン化合物、更に好ましくは4価のチタン化合物を用いることが望ましい。
【0064】
4価のチタン化合物の具体例としては、四塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類、テトラブトキシチタンに代表されるアルコキシチタン化合物類、テトラブトキシチタンダイマー(BuO)
3Ti−O−Ti(OBu)
3に代表されるTi−O−Ti結合を有するアルコキシチタンの縮合化合物類、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライドに代表される有機金属チタン化合物類、などを挙げることができる。この中で、四塩化チタンとテトラブトキシチタンが特に好ましい。
上記のチタン化合物類は、単独で用いるだけではなく、複数の化合物を併用することも可能である。また、上記チタン化合物類の混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Ti(OBu)
mCl
4−m;0<m<4などの化合物)、また、フタル酸エステル等のその他の化合物との錯化物(例えば、Ph(COOBu)
2・TiCl
4などの化合物)、などを用いることができる。
【0065】
・マグネシウム(a1b)
マグネシウム源となるマグネシウム化合物としては、任意のものを用いることができる。代表的な例としては、特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。
一般的には、塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物類、ジエトキシマグネシウムに代表されるアルコキシマグネシウム化合物類、金属マグネシウム、酸化マグネシウムに代表されるオキシマグネシウム化合物類、水酸化マグネシウムに代表されるヒドロキシマグネシウム化合物類、ブチルマグネシウムクロライドに代表されるグリニャール化合物類、ブチルエチルマグネシウムに代表される有機金属マグネシウム化合物類、炭酸マグネシウムやステアリン酸マグネシウムに代表される無機酸および有機酸のマグネシウム塩化合物類、およびそれらの混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Mg(OEt)
mCl
2−m;0<m<2などの化合物)、などを用いることができる。この中で特に好ましいのは、塩化マグネシウム、ジエトキシマグネシウム、金属マグネシウム、ブチルマグネシウムクロライドである。
【0066】
・ハロゲン(a1c)
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、およびそれらの混合物を用いることができる。この中で塩素が特に好ましい。
ハロゲンは、上記のチタン化合物類および/またはマグネシウム化合物から供給されるのが一般的であるが、その他の化合物より供給することもできる。
代表的な例としては、四塩化ケイ素に代表されるハロゲン化ケイ素化合物類、塩化アルミニウムに代表されるハロゲン化アルミニウム化合物類、1,2−ジクロロエタンやベンジルクロライドに代表されるハロゲン化有機化合物類、トリクロロボランに代表されるハロゲン化ボラン化合物類、五塩化リンに代表されるハロゲン化リン化合物類、六塩化タングステンに代表されるハロゲン化タングステン化合物類、五塩化モリブデンに代表されるハロゲン化モリブデン化合物類、などを挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いるだけでなく、併用することも可能である。この中で、四塩化ケイ素が特に好ましい。
【0067】
・電子供与体(a1d)
固体成分(a1)は、任意成分として、電子供与体を含有しても良い。電子供与体(a1d)の代表的な例としては、特開2004−124090号公報に開示されている化合物を挙げることができる。一般的には、有機酸および無機酸並びにそれらの誘導体(エステル、酸無水物、酸ハライド、アミド)化合物類、エーテル化合物類、ケトン化合物類、アルデヒド化合物類、アルコール化合物類、アミン化合物類、などを用いることが望ましい。
【0068】
電子供与体として用いることのできる有機酸化合物としては、フタル酸に代表される芳香族多価カルボン酸化合物類、安息香酸に代表される芳香族カルボン酸化合物類、2−n−ブチル−マロン酸の様な2位に一つまたは二つの置換基を有するマロン酸や2−n−ブチル−コハク酸の様な2位に一つまたは二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸に代表される脂肪族多価カルボン酸化合物類、プロピオン酸に代表される脂肪族カルボン酸化合物類、ベンゼンスルホン酸やメタンスルホン酸に代表される芳香族および脂肪族のスルホン酸化合物類、などを例示することができる。これらのカルボン酸化合物類およびスルホン酸化合物類は、芳香族・脂肪族に関わらず、マレイン酸の様に分子中の任意の場所に任意の数だけ不飽和結合を有しても良い。
【0069】
電子供与体として用いることのできる有機酸の誘導体化合物としては、上記有機酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミド、などを例示することができる。
エステルの構成要素であるアルコールとしては、脂肪族および芳香族アルコールを用いることができる。これらのアルコールの中でも、エチル基、ブチル基、イソブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、等の炭素数1〜20の脂肪族の遊離基からなるアルコールが好ましい。更に好ましくは炭素数2〜12の脂肪族の遊離基からなるアルコールが望ましい。また、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、等の脂環式の遊離基からなるアルコールを用いることもできる。
【0070】
酸ハライドの構成要素であるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、等を用いることができる。中でも、塩素が最も好ましい。多価有機酸のポリハライドの場合は、複数のハロゲンが同一であっても異なっていても良い。
【0071】
電子供与体として用いることのできる無機酸化合物としては、炭酸、リン酸、ケイ酸、硫酸、硝酸、などを例示することができる。これらの無機酸の誘導体化合物としては、エステルを用いることが望ましい。テトラエトキシシラン(ケイ酸エチル)、テトラブトキシシラン(ケイ酸ブチル)、などを具体例として挙げることができる。
【0072】
電子供与体として用いることのできるエーテル化合物としては、ジブチルエーテルに代表される脂肪族エーテル化合物類、ジフェニルエーテルに代表される芳香族エーテル化合物類、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンや2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンの様な2位に一つまたは二つの置換基を有する1,3−ジメトキシプロパンに代表される脂肪族多価エーテル化合物類、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、に代表される芳香族の遊離基を分子内に有する多価エーテル化合物類、などを例示することができる。
【0073】
電子供与体として用いることのできるアルコール化合物としては、ブタノールや2−エチルヘキサノールに代表される脂肪族アルコール化合物類、フェノール、クレゾールに代表されるフェノール誘導体化合物類、グリセリンや1,1’−ビ−2−ナフトールに代表される脂肪族若しくは芳香族の多価アルコール化合物類、などを例示することができる。
【0074】
これらの電子供与体は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。これらの中で好ましいのは、フタル酸ジブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチルに代表されるフタル酸エステル化合物類、フタロイルジクロライドに代表されるフタル酸ハライド化合物類、2−n−ブチル−マロン酸ジエチルの様な2位に一つまたは二つの置換基を有するマロン酸エステル化合物類、2−n−ブチル−コハク酸ジエチルの様な2位に一つまたは二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸エステル化合物類、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンや2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンの様な2位に一つまたは二つの置換基を有する1,3−ジメトキシプロパンに代表される脂肪族多価エーテル化合物類、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンに代表される芳香族の遊離基を分子内に有する多価エーテル化合物類、などである。
【0075】
・固体成分(a1)を構成する各成分の量比
固体成分(a1)を構成する各成分の使用量の量比は、触媒の性能を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
チタン化合物類の使用量は、使用するマグネシウム化合物類の使用量に対してモル比(チタン化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.0001〜1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.01〜10の範囲内が望ましい。マグネシウム化合物類およびチタン化合物類以外にハロゲン源となる化合物を使用する場合は、その使用量はマグネシウム化合物類およびチタン化合物類の各々がハロゲンを含むか含まないかに関わらず、使用するマグネシウム化合物類の使用量に対して、モル比(ハロゲン源となる化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.01〜1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.1〜100の範囲内が望ましい。
固体成分(a1)を調製する際に任意成分として電子供与体を用いる場合の使用量は、使用するマグネシウム化合物の量に対して、モル比(電子供与体のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.001〜10の範囲内であり、特に好ましくは0.01〜5の範囲内が望ましい。
【0076】
固体成分(a1)は、上記の構成する各成分を上記の量比で接触して得られる。各成分の接触条件は、酸素を存在させないことが必要であるものの、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることができる。一般的には、次の条件が好ましい。
接触温度は、−50〜200℃程度、好ましくは0〜100℃である。接触方法としては、回転ボールミルや振動ミルなどによる機械的な方法、並びに、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法、などを例示することができる。
【0077】
(1−2)有機アルミニウム化合物(a2)
本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分である有機アルミニウム化合物(a2)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式にて表される化合物を用いることが望ましい。
R
9cAlX
d(OR
10)
e
(式中、R
9は、炭化水素基を表す。Xは、ハロゲンまたは水素原子を表す。R
10は、炭化水素基またはAlによる架橋基を表す。c≧1、0≦d≦2、0≦e≦2、c+d+e=3である。)
【0078】
上記一般式中、R
9は、炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8、特に好ましくは炭素数1〜6、のものを用いることが望ましい。
R
9の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、などを挙げることができる。この中で、メチル基、エチル基、イソブチル基が最も好ましい。
上記一般式中、Xは、ハロゲンまたは水素原子である。Xとして用いることのできるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することができる。この中で、塩素が特に好ましい。
また、上記一般式中、R
10は、炭化水素基またはAlによる架橋基である。R
10が炭化水素基である場合には、R
9の炭化水素基の例示と同じ群からR
10を選択することができる。また、有機アルミニウム化合物(a2)としてメチルアルモキサンに代表されるアルモキサン化合物類を用いることも可能であり、その場合、R
10は、Alによる架橋基を表す。
【0079】
有機アルミニウム化合物(a2)として用いることのできる化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、メチルアルモキサン、などを挙げることができる。中でも、トリエチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムが好ましい。
有機アルミニウム化合物(a2)は、単独の化合物を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
【0080】
(1−3)電子供与体(a3)
本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分である電子供与体(a3)として、アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物(a3a)または少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(a3b)を例示することができる。
【0081】
・アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物(a3a)
本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分であるアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式にて表される化合物を用いることが望ましい。
R
3R
4aSi(OR
5)
b
(式中、R
3は、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。R
4は、水素、ハロゲン、炭化水素基およびヘテロ原子含有炭化水素基からなる群から選ばれる任意の遊離基を表す。R
5は、炭化水素基を表す。0≦a≦2,1≦b≦3,a+b=3である。)
【0082】
上記一般式中、R
3は、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。
R
3として用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数3〜10のものである。R
3として用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。より好ましくは、R
3として、分岐状脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
R
3がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれることが望ましく、とりわけ、窒素または酸素であることが望ましい。R
3のヘテロ原子含有炭化水素基の骨格構造としては、R
3が炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
【0083】
上記一般式中、R
4は、水素、ハロゲン、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。
R
4として用いることのできるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することができる。R
4が炭化水素基である場合は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。R
4として用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
R
4がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、R
3がヘテロ原子含有炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
aの値が2の場合、二つあるR
4は、同一であっても異なっても良い。また、aの値に関わらず、R
4とR
3は、同一であっても異なっても良い。
【0084】
上記一般式中、R
5は、炭化水素基を表す。R
5として用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5のものである。R
5として用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、などを挙げることができる。中でも、メチル基とエチル基が最も好ましい。bの値が2以上である場合、複数存在するR
5は、同一であっても異なっても良い。
【0085】
アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物の好ましい例としては、t−Bu(Me)Si(OMe)
2、t−Bu(Me)Si(OEt)
2、t−Bu(Et)Si(OMe)
2、t−Bu(n−Pr)Si(OMe)
2、c−Hex(Me)Si(OMe)
2、c−Hex(Et)Si(OMe)
2、c−Pen
2Si(OMe)
2、i−Pr
2Si(OMe)
2、i−Bu
2Si(OMe)
2、i−Pr(i−Bu)Si(OMe)
2、n−Pr(Me)Si(OMe)
2、t−BuSi(OEt)
3、(Et
2N)
2Si(OMe)
2、Et
2N−Si(OEt)
3、
【0087】
などを挙げることができる。
これらの有機ケイ素化合物類は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
【0088】
・少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(a3b)
本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造に好適なチーグラー・ナッタ触媒の構成成分である少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(a3b)としては、特開平3−294302号公報および特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式にて表される化合物を用いることが望ましい。
R
8O−C(R
7)
2−C(R
6)
2−C(R
7)
2−OR
8
(式中、R
6およびR
7は、水素原子、炭化水素基およびヘテロ原子含有炭化水素基からなる群から選ばれる任意の遊離基を表す。R
8は、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
【0089】
上記一般式中、R
6は、水素原子、炭化水素基およびヘテロ原子含有炭化水素基からなる群から選ばれる任意の遊離基を表す。
R
6として用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。R
6として用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。より好ましくは、R
6として分岐状脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、i−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
二つのR
6は、結合して一つ以上の環を形成しても良い。この際、環構造中に2個または3個の不飽和結合を含むシクロポリエン系構造を取ることもできる。また、他の環式構造と縮合していても良い。単環式、複環式、縮合の有無に関わらず、環上に炭化水素基を置換基として1つ以上有していても良い。環上の置換基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。
【0090】
上記一般式中、R
7は、水素原子、炭化水素基およびヘテロ原子含有炭化水素基からなる群から選ばれる任意の遊離基を表す。具体的には、R
7は、R
6の例示から選ぶことができる。好ましくは水素原子である。
【0091】
上記一般式中、R
8は、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。具体的には、R
8は、R
6が炭化水素基である場合の例示から選ぶことができる。好ましくは、炭素数1〜6の炭化水素基であることが望ましく、更に好ましくはアルキル基であることが望ましい。最も好ましくはメチル基である。
R
6〜R
8がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれることが望ましい。また、R
6〜R
8が炭化水素基であるか、ヘテロ原子含有炭化水素基であるかに関わらず、任意にハロゲンを含んでいても良い。R
6〜R
8がヘテロ原子および/またはハロゲンを含む場合、その骨格構造は、炭化水素基である場合の例示から選ばれることが望ましい。また、R
6〜R
8の8個の置換基は、お互いに同一であっても異なっても良い。
【0092】
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物の好ましい例としては、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジクロロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジシクロペンチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロフルオレン、1,1−ビス(1’−ブトキシエチル)シクロペンタジエン、1,1−ビス(α−メトキシベンジル)インデン、1,1−ビス(フェノキシメチル)−3,6−ジシクロヘキシルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)ベンゾナフテン、7,7−ビス(メトキシメチル)−2,5−ノボルナジネン、などを挙げることができる。
中でも、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、が特に好ましい。
【0093】
これらの少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。また、固体成分(A1)中の任意成分(A1d)として用いられる多価エーテル化合物と同一であっても異なっても良い。
【0094】
(1−4)触媒構成成分の使用量
上記に例示した触媒における各構成成分の使用量は、特に制限されるものではないが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
有機アルミニウム化合物(a2)の使用量は、固体成分(a1)を構成するチタン成分に対するモル比(有機アルミニウム化合物(a2)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは1〜1,000の範囲内であり、特に好ましくは10〜500の範囲内が望ましい。
【0095】
電子供与体(a3)として有機ケイ素化合物(a3a)を用いる場合の使用量は、固体成分(a1)を構成するチタン成分に対するモル比(有機ケイ素化合物(a3a)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜10,000の範囲内であり、特に好ましくは0.5〜500の範囲内が望ましい。
電子供与体(a3)として少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(a3b)を用いる場合の使用量は、固体成分(a1)を構成するチタン成分に対するモル比(少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜10,000の範囲内であり、特に好ましくは0.5〜500の範囲内が望ましい。
【0096】
(1−5)予備重合
上記に例示した触媒は、本重合で使用する前に予備重合されていても良い。重合プロセスに先立って、予め少量のポリマーを触媒周囲に生成させることによって、触媒がより均一となり、微粉の発生量を抑えることができる。
予備重合におけるモノマーとしては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。具体的な化合物の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、などに代表されるオレフィン類、スチレン、α−メチルスチレン、アリルベンゼン、クロロスチレン、などに代表されるスチレン類似化合物、および、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジビニルベンゼン類、などに代表されるジエン化合物類、などを挙げることができる。中でも、エチレン、プロピレン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、スチレン、ジビニルベンゼン類、などが特に好ましい。
【0097】
上記に例示した触媒と上記のモノマーとの反応条件は、特に制限されるものではないが、一般的には以下の範囲内が好ましい。
固体成分(a1)1グラムあたりの基準で、予備重合量は、0.001〜100gの範囲内であり、好ましくは0.1〜50g、更に好ましくは0.5〜10gの範囲内が望ましい。予備重合時の反応温度は、−150〜150℃、好ましくは0〜100℃である。そして、予備重合時の反応温度は、本重合のときの重合温度よりも低くすることが望ましい。反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのときヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒を存在させることもできる。
予備重合は、複数回行っても良く、この際用いるモノマーは、同一であっても異なっても良い。また、予備重合後にヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒で洗浄を行うこともできる。
【0098】
(2)プロピレン−エチレン共重合体(B)の製造方法の詳細
次に、本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造方法について、詳述する。
本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)は、特性(B1−i)を有するプロピレン系重合体成分(B1)65〜95重量%と、特性(B2−i)〜(B2−ii)を有するプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)5〜35重量%とからなるプロピレン−エチレン共重合体であり、プロピレン−エチレン共重合体(B)の製造に際しては、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の2つの重合体成分を製造する必要がある。両重合体成分を個別に製造しておいて、その後ブレンドすることでも製造することができるが、相対的に分子量や粘度が高くMFRが低いプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)をプロピレン系重合体成分(B1)中にきれいに分散させて、プロピレン−エチレン共重合体(B)本来の性能を発現させるという観点から、当該両成分を多段重合(以下「逐次重合」と呼ぶこともある)により製造する方法が望ましい。
【0099】
(2−1)多段重合
本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)を製造するのに望ましい方法としての多段重合は、成分(B1)を製造する工程(以下、「B1製造工程」という)と成分(B2)を製造する工程(以下、「B2製造工程」という)とを有する多段重合であれば、B1製造工程、B2製造工程の先後は、問わない。
B1製造工程においてプロピレン系重合体成分(B1)を重合した後で、B2製造工程においてプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)を重合することが望ましい。製造順を逆にすることも可能ではあるが、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)は、特性(B2−i)の規定から共重合体中のエチレン含有量[E(B2)]が8〜25重量%の範囲にあり、結晶性が低いまたは結晶性を有さない重合体であるため、最初の工程で製造すると重合槽内部で付着したり、移送配管を閉塞したりするなどの製造トラブルを起こす可能性がある。
【0100】
多段重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には、生産性の観点から、連続法を用いることが望ましい。
バッチ法の場合には、時間と共に重合条件を変化させることにより、単一の重合反応器を用いて、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)を個別に重合することが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の重合反応器を並列に接続して用いてもよい。
【0101】
連続法の場合には、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)を個別に重合する必要から、2個以上の重合反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要がある。プロピレン系重合体成分(B1)を製造する工程に対応する重合反応器とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)を製造する工程に対応する重合反応器については、直列の関係になくてはならないが、B1製造工程、B2製造工程のそれぞれについて、複数の重合反応器を直列および/または並列に接続して用いてもよい。
【0102】
(2−2)重合プロセス
重合プロセスは、任意のものを用いることができる。
反応相については、液体の媒体を用いる手法であっても良いし、気体の媒体を用いる手法であっても良い。具体的な例として、スラリー法、バルク法、気相法を挙げることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として、超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。
なお、多槽連続重合プロセスの場合、バルク法の重合反応器の後に、気相法の重合反応器を付ける場合があるが、この場合は、当業界の慣例に従ってバルク法と呼ぶことにする。また、バッチ法の場合に第1工程をバルク法で行い、第2工程を気相法で行うこともあるが、この場合も同様にバルク法と呼ぶことにする。
この様に反応相は、特に限定されるものではないが、スラリー法は、ヘキサンやヘプタンといった有機溶媒を用いるために付属設備が多く、一般的に生産コストが高くなるという問題がある。従って、バルク法か気相法を用いる方が一層望ましい。
また、バルク法と気相法については、それぞれ種々のプロセスが提案されている。攪拌(混合)方法や除熱方法に違いがあるが、この観点において、本発明は、特段プロセス種を限定することはない。
【0103】
(2−3)一般的な重合条件
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば、特に問題なく、用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は、選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、好ましくは0.1〜50MPaの範囲を用いることができる。この際に、窒素などの不活性ガスを共存させても問題はない。
また、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)を製造する第2工程においては、エタノールや酸素などの重合抑制剤を添加することもできる。この様な重合抑制剤を用いると、第2工程における重合量の制御が容易であるだけでなく、重合体粒子の性状を改良することもできる。
【0104】
2−3.プロピレン−エチレン共重合体(B)の特性の制御方法
次に、本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)の特性の制御方法について、詳述する。
【0105】
(1)プロピレン系重合体成分(B1)の特性制御方法
先ず、エチレン含有量であるが、既述の通り、プロピレン系重合体成分(B1)のエチレン含有量は、0〜6.0重量%であり、より好ましくは0.5〜5.0重量%である。エチレン含有量を制御する手段として、重合槽に供給するエチレンの量を制御する方法を用いるのが簡便である。具体的には、重合槽に供給するエチレンのプロピレンに対する量比(エチレン供給量÷プロピレン供給量)を高くすれば、得られるプロピレン系重合体成分(B1)のエチレン含有量は高くなる。逆も同様である。重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比と得られるプロピレン系重合体成分(B1)のエチレン含有量との関係は使用するチーグラー・ナッタ触媒の種類によって異なるが、適宜供給量比を調整することによって、目的のエチレン含有量を有するプロピレン系重合体成分(B1)を得ることは、当業者にとって極めて容易なことである。
【0106】
次に、MFRについて述べる。プロピレン系重合体成分(B1)のMFR(B1)は、特に限定されるものではないが、後述の様にプロピレン−エチレン共重合体(B)のMFR(B)を制御する手段として、プロピレン系重合体成分(B1)のMFR(B1)を制御することがある。プロピレン系重合体成分(B1)のMFR(B1)は、水素を連鎖移動剤として用いることにより、調整することができる。具体的には、連鎖移動剤である水素の濃度を高くすると、プロピレン系重合体成分(B1)のMFR(B1)が高くなる。逆も又同様である。重合槽における水素の濃度を高くするには、重合槽への水素の供給量を高くすれば良く、当業者にとって調整は、極めて容易である。
【0107】
(2)プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の特性制御方法
本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)の構成成分であるプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)は、共重合体中のエチレン含有量[E(B2)]が8〜25重量%の範囲にあり、共重合体成分(B2)のMFR(B2)が0.0001〜0.5g/10分の範囲にあることを特徴とするものである。エチレン含有量とMFRを制御する必要があるが、いずれもプロピレン系重合体成分(B1)と同様に、制御することができる。
【0108】
(3)プロピレン−エチレン共重合体(B)の特性制御方法
本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)は、共重合体中のエチレン含有量[E(B)]が0.4〜13重量%の範囲にあり、共重合体のMFR(B)が0.5〜20g/10分の範囲にあり、かつ、プロピレン系重合体成分(B1)65〜95重量%とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)5〜35重量%とからなるものである。従って、プロピレン−エチレン共重合体(B)の特性を制御する上で考慮すべき項目は、エチレン含有量[E(B)]、MFR(B)、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比の3つである。
【0109】
先ず、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比の制御方法から説明する。
プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比は、プロピレン系重合体成分(B1)を製造する第1工程における製造量とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)を製造する第2工程における製造量によって制御する。例えば、プロピレン系重合体成分(B1)の量を増やして、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の量を減らすためには、第1工程の製造量を維持したまま第2工程の製造量を減らせばよく、それは、第2工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたりすれば良い。また、エタノールや酸素などの重合抑制剤を添加したり、元々添加している場合には、その添加量を増やしたりすることでも、制御することができる。その逆も又同様である。
【0110】
通常、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量割合(重量%)は、プロピレン系重合体成分(B1)を製造する第1工程における製造量とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)を製造する第2工程における製造量で定義する。式を以下に示す。
成分(B1)の重量:成分(B2)の重量=W(B1):W(B2)
W(B1)=第1工程の製造量÷(第1工程の製造量+第2工程の製造量)×100
W(B2)=第2工程の製造量÷(第1工程の製造量+第2工程の製造量)×100
W(B1)+W(B2)=100
[ここで、W(B1)、W(B2)は、それぞれプロピレン−エチレン共重合体(B)におけるプロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比率(重量%)である。]
【0111】
工業的な製造設備では、各重合槽のヒートバランスやマテリアルバランスから製造量を求めるのが通常である。また、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の結晶性が充分異なる場合には、TREF(温度昇温溶離分別法)などの分析手法を用いて、両者を分離同定し、量比を求めることでもよい。
ポリプロピレンの結晶性分布をTREF測定により評価する手法は、当業者によく知られたものである。
【0112】
次に、エチレン含有量[E(B)]の制御方法について、説明する。
本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(B)は、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の混合物であるから、それぞれのエチレン含有量の間には、以下の関係式が成立する。
E(B)=E(B1)×[W(B1)÷100]+E(B2)×[W(B2)÷100]
この式は、エチレン含有量に関するマテリアルバランスを示すものである。なお、前記したように、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)のエチレン含有量[E(B2)]を以下の式で定義しているので、上記の式は、定義に使用した式を変形したに過ぎない。
E(B2)={E(B)−E(B1)×[W(B1)÷100]}÷[W(B2)÷100]
[ここで、W(B1)、W(B2)は、共重合体(B)における成分(B1)と成分(B2)の重量比率(重量%)であり、W(B1)+W(B2)=100の関係を満たす。]
従って、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比が決まれば、すなわち、W(B1)とW(B2)が決まれば、E(B)は、E(B1)とE(B2)によって、一意的に定まる。つまり、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比、E(B1)、E(B2)の3つの因子を制御することにより、E(B)を制御することができる。例えば、E(B)を高くするためには、E(B1)を高くしても良いし、E(B2)を高くしても良い。また、E(B2)がE(B1)よりも高いことに留意すれば、W(B1)を小さくしてW(B2)を大きくしても良いことも、容易に理解できよう。逆方向の制御方法も、同様である。
【0113】
なお、実際に測定値を直接得られるのは、E(B)とE(B1)であり、両者の測定値を使って、E(B2)を計算することになる。従って、仮に、E(B)を高くする操作を行う際に、E(B2)を高くする操作、すなわち、第2工程に供給するエチレンの量を増やす操作を手段として選ぶ場合、測定値として直接確認できるのは、E(B)であってE(B2)ではないが、E(B)が高くなる原因は、E(B2)が高くなることにあるのは自明である。
【0114】
最後に、MFR(B)の制御方法について、説明する。エチレン含有量E(B)と同様に、MFR(B)についても、以下の関係式が成立する。
log
e[MFR(B)]=[W(B1)÷100]×log
e[MFR(B1)]+[W(B2)÷100]×log
e[MFR(B2)]
(ここで、log
eは、eを底とする対数である)
この式は、粘度の対数加成則と呼ばれる経験式であり、当業界で日常的に使われるものである。なお、前記したように、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)のMFR(B2)を以下の式で定義しているので、上記の式は、定義に使用した式を変形したに過ぎない。
MFR(B2)=exp{(log
e[MFR(B)]−[W(B1)÷100]×log
e[MFR(B1)])÷[W(B2)÷100]}
【0115】
いずれにせよ、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比、MFR(B)、MFR(B1)、MFR(B2)は独立ではない。故に、MFR(B)を制御するには、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比、MFR(B1)、MFR(B2)の3つの因子を制御すればよい。例えば、MFR(B)を高くするためには、MFR(B1)を高くしても良いし、MFR(B2)を高くしても良い。また、MFR(B2)がMFR(B)以下であることから、MFR(B2)は、MFR(B1)以下であることが分かるが、MFR(B2)がMFR(B1)より低い場合には、W(B1)を大きくしてW(B2)を小さくしても、MFR(B)を高くすることができることも、容易に理解できよう。逆方向の制御方法も同様である。
【0116】
なお、実際に測定値を直接得られるのはMFR(B)とMFR(B1)であり、両者の測定値を使って、MFR(B2)を計算することになる。従って、仮に、MFR(B)を高くする操作を行う際に、MFR(B2)を高くする操作、すなわち、第2工程に供給する水素の量を増やす操作を手段として選ぶ場合、測定値として直接確認できるのは、MFR(B)であってMFR(B2)ではないが、MFR(B)が高くなる原因は、MFR(B2)が高くなることにあるのは自明である。
【0117】
3.プロピレン系(共)重合体(A)とプロピレン−エチレン共重合体(B)の割合
本発明の射出成形用ポリプロピレン系樹脂組成物におけるプロピレン系(共)重合体(A)とプロピレン−エチレン共重合体(B)の割合は、プロピレン系(共)重合体(A)及びプロピレン−エチレン共重合体(B)の合計100重量%基準で、プロピレン系(共)重合体(A)75〜97重量%、プロピレン−エチレン共重合体(B)3〜25重量%である。このような範囲とすることで、透明性、機械物性,ウェルド白化の抑制効果のバランスが良好となり、射出成形において、好適に使用可能な樹脂組成物を得ることができる。
【0118】
4.透明化核剤(C)
本発明の射出成形用プロピレン系樹脂組成物で用いられる透明化核剤(C)は、下記化学構造式(1)で示される透明化核剤である。
【0120】
[式(1)中、nは、0〜2の整数であり、R
1〜R
5は、同一または異なって、それぞれ水素原子または炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基もしくはフェニル基であり、R
6は、炭素数が1〜20のアルキル基である。]
【0121】
化学構造式(1)において、好ましくは、nは、0〜2の整数であり、R
1、R
2、R
4およびR
5は、それぞれ水素原子であり、R
3およびR
6は、同一または異なって、それぞれ炭素数が1〜20のアルキル基である。さらに好ましくは、nは、0〜2の整数であり、R
1、R
2、R
4およびR
5は、それぞれ水素原子であり、R
3は、−CH
3、−CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
3、−CH
2CH
2CH
2CH
3、−CH
2CH=CH
2、−CH(CH
3)CH=CH
2、−CH
2CH−X
1−CH
2−X
2、−CH
2CH−X
3−CH
2CH
3、−CH
2CH−X
4−CH
2OHもしくは−CH
2OH−CH(OH)−CH
2OHであり(但し、X
1〜X
4は、それぞれ独立したハロゲン基である。)、R
6は、炭素数が1〜20のアルキル基である。
【0122】
透明化核剤(C)として、化学構造式(1)で示される透明化核剤において、具体的には、例えば、下記化学構造式(2)で示される化合物であるノニトール型の透明化核剤が挙げられ、好ましい。下記化学構造式(2)で示される化合物は、3,5:4,6−ビス[4−プロピルベンジリデンビス(オキシ)]−1,2−ノナンジオールまたは慣用名の1,2,3―トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールである。
【0124】
本発明で用いられる透明化核剤(C)は、得られる成形品に、従来の透明化核剤では実現が不可能なほどの非常に優れた透明性を与えることができる。また、従来の透明化核剤よりも、高い結晶化温度を与えることが可能なため、併せて成形加工性の改良を実現することができる。
【0125】
本発明のプロピレン系樹脂組成物で用いられる透明化核剤(C)の配合量は、プロピレン系(共)重合体(A)とプロピレン−エチレン共重合体(B)との合計100重量部に対し、0.01〜2.0重量部であり、好ましくは0.2〜1.5重量部である。配合量が0.01重量部未満では、十分な効果が得られ難い。一方、配合量が2.0重量部を超えると、核剤の凝集が発生して、透明性が低下する可能性があるため望ましくない。より好ましくは、0.1〜1.0重量部であり、0.3〜0.6重量部がさらに好ましい。
【0126】
本発明で用いられる透明化核剤(C)の製造方法としては、WO2005/111134号(または前記特許文献3の特表2007−534827号)公報等に記載の方法を挙げることができる。市販品としても、容易に入手することができ、例えば、ミラッドNX8000J(ミリケン・アンド・カンパニー社製)を挙げることができる。
【0127】
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物においては、化学構造式(1)で示される透明化核剤(C)以外に、他の核剤の少なくとも1種類を併用してもよい。これにより透明性や剛性、成形加工性等をさらに向上させることができる。ここで用いられる核剤としては、特に限定されるものではなく、公知の核剤が使用できる。例えば、ソルビトール系透明化核剤、有機リン酸塩系透明化核剤、芳香族リン酸エステル類、タルクなど既知の透明化核剤を、本発明の効果を大きく阻害しない範囲で添加することができる。
【0128】
5.その他の添加剤
本発明のプロピレン系樹脂組成物においては、プロピレン系(共)重合体(A)とプロピレン−エチレン共重合体(B)および透明化核剤(C)に加えて、プロピレン系(共)重合体の安定剤などとして使用されている各種酸化防止剤、中和剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を配合することができる。
【0129】
具体的には、酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ジ−ステアリル−ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト等のリン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系酸化防止剤、ジ−ステアリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ラウリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート等のチオ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0130】
中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属脂肪酸塩、ハイドロタルサイト(商品名:協和化学工業(株)の下記一般式(4)で表されるマグネシウムアルミニウム複合水酸化物塩)、ミズカラック(下記一般式(5)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩)などが挙げられる。
【0131】
Mg
1−xAl
x(OH)
2(CO
3)
x/2・mH
2O …(4)
[式中、xは、0<x≦0.5であり、mは3以下の数である。]
[Al
2Li(OH)
6]
nX・mH
2O …(5)
[式中、Xは、無機または有機のアニオンであり、nはアニオン(X)の価数であり、mは3以下である。]
【0132】
滑剤の具体例としては、既知の滑剤が挙げられるが、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸ブチル、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0133】
紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0134】
光安定剤としては、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピぺリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジル)エタノール縮合物、ポリ{[6−〔(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル]〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等の光安定剤を挙げることができる。
【0135】
さらに、下記化学構造式(6)や下記一般式(7)で表されるアミン系酸化防止剤、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジ−メチル−フェニル)−3H−ベンゾフラン−2−ワン等のラクトン系酸化防止剤、下記化学構造式(8)等のビタミンE系酸化防止剤を挙げることができる。
【0137】
【化8】
[但し、式(7)中、R
1とR
2は、炭素数14〜22のアルキル基である。]
【0139】
さらに、その他に、帯電防止剤、脂肪酸金属塩等の分散剤、ポリエチレン、オレフィン系エラストマー等を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0140】
II.射出成形用プロピレン系樹脂組成物の製造方法
本発明の射出成形用プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系(共)重合体(A)、プロピレン−エチレン共重合体(B)および透明化核剤(C)、並びに必要に応じて用いる他の添加剤を、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等に投入して混合した後、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で180〜280℃の温度範囲で溶融混練することにより得ることができる。
【0141】
III.成形品
本発明の成形品は、上記の射出成形用プロピレン系樹脂組成物を、公知の射出成形機により成形することにより得られる。特に、ウェルド部が発生する金型、すなわち、多点ゲートを有する金型や、一旦分岐した溶融樹脂が再び合流する箇所を有する金型を用いて成形した際に、ウェルド部の白化が少ないというきわめて優れた特徴を発現する。
本発明の成形品としては、食品容器、キャップ、医療用器具、医療用容器、衣装ケース、日用品、自動車部品、電気部品、産業資材、コンテナ、パレット等を挙げることができる。
【実施例】
【0142】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの記載により何ら限定されるものではない。
なお、各実施例および比較例において、用いた物性測定などは、以下の方法で行い、プロピレン系(共)重合体(A)、プロピレン−エチレン共重合体(B)、透明化核剤(C)および他の添加剤(中和剤、滑剤など)としては、以下のものを使用した。
【0143】
1.試験方法
(1)エチレン含有量:
13C−NMRにより組成を検定したエチレン・プロピレンランダムコポリマーを基準物質として733cm
−1の特性吸収体を用いる赤外分光法により、ランダムコポリマー中のエチレン含有量を測定した。試験片には、ペレットをプレス成形により、約500ミクロンの厚さのフィルムとしたものを用いた。
(2)メルトフローレート(MFR):
JIS K7120に準拠して、230℃、2.16kg荷重の条件で測定した。
(3)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
GPCを用いて前述の方法で測定した。
【0144】
(4)曲げ弾性率:
東芝機械製EC−100射出成形機を用いて、JIS K7152−1に準拠して、射出成形を行い、A1型ダンベル試験片を作製した。その平行部を切り出して80×10×4mmtの短冊状試験片を作製した。これを用いて、JIS K7171に準拠して、23℃にて、曲げ弾性率を測定した。
(5)シャルピー衝撃強度:
東芝機械製EC−100射出成形機を用いて、JIS K7152−1に準拠して、射出成形を行い、A1型ダンベル試験片を作製した。その平行部を切り出して80×10×4mmtの短冊状試験片を作製した。これを用いて、JIS K7111に準拠して、23℃にて、シャルピー衝撃強度を測定した。
【0145】
(6)ヘイズ値:
東芝機械製EC−100射出成形機を用いて、JIS K7152−3に準拠して射出成形を行い、厚さ2mmのD2型小型角板を作製した。これを用いて、JIS K7136に準拠してヘイズを測定した。この値が小さいほど、透明性が良好なことを示す。
(7)ウェルド白化性:
東芝機械製IS−170射出成形機と、外寸:350mm×100mm×2mmtの試験片の両端からフィルムゲートで樹脂を注入する金型を用いて、成形温度220℃、金型温度40℃で射出成形した。得られた試験片に関して、樹脂が合一するウェルド部分の白化の度合いを目視にて判定した。判定基準は下記の通り。
◎:ウェルド部の白化を目視で全く判別できない。
○:ウェルド部の白化を目視でほとんど判別できない。
△:ウェルド部の白化を目視で判別できる。
×:ウェルド部の白化を目視で非常にはっきりと判別できる。
【0146】
(8)白点:
東芝機械製EC−100射出成形機を用いて、JIS K7152−3に準拠して、射出成形を行い、厚さ2mmのD2型小型角板を作製した。これを目視で観察し、白点の有無を判定した。判定基準は下記の通り。
○:白点が目視で判別できない。
×:白点が目視で判別できる。
××:白点が目視できわめて多数判別できる。
【0147】
2.プロピレン系(共)重合体、透明化核剤およびその他の添加剤
2−1.プロピレン系(共)重合体(A)
(i)エチレン・プロピレンランダム共重合体(PPA−1):
ウィンテックWMG03(日本ポリプロ社製)。メタロセン触媒により、重合されたもの。エチレン含有量0.9重量%、Mw/Mn2.6、MFR30g/10分
(ii)エチレン・プロピレンランダム共重合体(PPA−2):
ノバテックMG3F(日本ポリプロ社製)。チーグラー・ナッタ触媒により、重合されたもの。エチレン含有量2.5重量%、Mw/Mn4.5、MFR8g/10分。
これは、本発明のプロピレン系(共)重合体(A)に相当しないプロピレン系(共)重合体である。
【0148】
2−2.プロピレン−エチレン共重合体(B)
(1)プロピレン−エチレン共重合体(B)の諸物性の測定方法
(1−1)エチレン含有量[E(B1)、E(B)]:
逐次重合の第1工程後に重合槽より抜き出した重合体成分(B1)中のエチレン含有量[E(B1)]、および、第2工程後に得られたプロピレン−エチレン共重合体(B)中のエチレン含有量[E(B)]は、前述の赤外分光法により測定した。
(1−2)MFR(B1)、MFR(B):
第1工程後に得られたプロピレン−エチレン共重合体(B1)のMFR(B1)、および、第2工程後に得られたプロピレン−エチレン共重合体(B)のMFR(B)は、前述の方法で測定した。
【0149】
(1−3)各成分の重量比率[W(B1)とW(B2)]の特定:
既述の通り、プロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比率(%)は、以下の式で定義される。
W(B1)=第1工程の製造量÷(第1工程の製造量+第2工程の製造量)×100
W(B2)=第2工程の製造量÷(第1工程の製造量+第2工程の製造量)×100
【0150】
後述の[製造例B−1]において記載する様に、プロピレン−エチレン共重合体(B)の製造を行う際には、プロピレン系重合体成分(B1)を製造する第1工程が終わった後で得られたポリマーを一旦全量フラスコに抜き出し、第1工程の収量を測定した。
得られたプロピレン系重合体成分(B1)のうち10gをサンプルとして取り分けた後、残りを全て重合槽に充填し、プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の製造を行う第2工程を行った。第2工程が終わった後、得られたプロピレン−エチレン共重合体(B)の収量を測定した。
この結果から、第1工程の製造量と第2工程の製造量を以下の式で計算し、その結果を用いてW(B1)とW(B2)を上記の式で計算した。
第1工程の製造量=[第1工程の収量]−10g(サンプリング量)
第2工程の製造量=[プロピレン−エチレン共重合体(B)の収量]−[第1工程の製造量]
【0151】
(1−4)プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)中のエチレン含有量[E(B2)]:
共重合体成分(B2)中のエチレン含有量[E(B2)]は、上述したエチレン含有量[E(B1)、E(B)]と、各成分量[W(B1)とW(B2)]を用いて、以下の式より算出した。
E(B2)={E(B)−E(B1)×[W(B1)÷100]}÷[W(B2)÷100]
【0152】
(1−5)共重合体成分(B2)のメルトフローレート[MFR(B2)]:
共重合体成分(B2)のMFR(B2)は、上述したMFR(B1)、MFR(B)と、W(B1)、W(B2)を用いて、下記式より算出した。
MFR(B2)=exp{(log
e[MFR(B)]−[W(B1)÷100]×log
e[MFR(B1)])÷[W(B2)÷100]}
(ここで、log
eは、eを底とする対数である)
【0153】
(2)プロピレン−エチレン共重合体(B)の製造
[製造例B−1]
(i)触媒組成の分析
・Ti含有量:
試料を精確に秤量し、加水分解した上で比色法を用いて測定した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含有量を計算した。
・ケイ素化合物含有量:
試料を精確に秤量し、メタノールで分解した。ガスクロマトグラフィーを用いて標準サンプルと比較することにより、得られたメタノール溶液中のケイ素化合物濃度を求めた。メタノール中のケイ素化合物濃度と試料の重量から、試料に含まれるケイ素化合物の含有量を計算した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含有量を計算した。
【0154】
(ii)予備重合触媒の調製
(ii−1)固体成分の調製:
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、Mg(OEt)
2を200g投入し、TiCl
4を1Lゆっくりと添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸ジ−n−ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。
次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiCl
4を1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。
次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiCl
4を1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn−ヘプタンを用いて、トルエンをn−ヘプタンで置換し、固体成分のスラリーを得た。
このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分のTi含有量は2.7wt%であった。
【0155】
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分のスラリーを固体成分として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が25g/Lとなる様に調整した。SiCl
4を50ml加え、90℃で1hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
その後、精製したn−ヘプタンを導入して液レベルを4Lに調整した。ここに、ジメチルジビニルシランを30ml、t−BuMeSi(OMe)
2を30ml、Et
3Alのn−ヘプタン希釈液をEt
3Alとして80g添加し、40℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒を得た。
得られた固体触媒のスラリーの一部をサンプリングして乾燥し、分析を行った。固体触媒には、Tiが1.2wt%、t−BuMeSi(OMe)
2が8.9wt%含まれていた。
【0156】
(ii−2)予備重合
上記で得られた固体触媒を用いて、以下の手順により予備重合を行った。
上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体触媒の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、Et
3Alのn−ヘプタン希釈液をEt
3Alとして10g添加し、280gのプロピレンを4hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30min反応を継続した。
次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って予備重合触媒Cを得た。
この予備重合触媒Cは、固体触媒1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この予備重合触媒Cのポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.0wt%、t−BuMeSi(OMe)
2が8.3wt%含まれていた。
この予備重合触媒Cを用いて、以下の手順に従ってプロピレン−エチレン共重合体(B)の製造を行った。
【0157】
(iii)プロピレン−エチレン共重合体(B)の製造
(iii−1)第1工程:プロピレン系重合体成分(PPB−1)の製造
撹拌および温度制御装置を有する内容積3Lのオートクレーブをプロピレンで充分置換した後に、Et
3Alのn−ヘプタン希釈液をEt
3Alとして550mg添加し、水素11NL、エチレン11g、続いて液体プロピレン750gを導入し、60℃に昇温し、その温度を維持した。上記の予備重合触媒Cをn−ヘプタンでスラリー化し、固体触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)10mgを圧入し重合を開始した。槽内温度を60℃に維持して30分重合を継続した。その後、常圧まで残モノマーをパージし、さらに精製した窒素で完全に置換した。事前に窒素で充分に置換した2Lのガラスのフラスコを準備しておき、第1工程で得られたプロピレン系重合体成分(B1)ポリマーを、窒素気流下でテフロン(登録商標)チューブを通じて、このフラスコに全量抜き出した。
秤量の結果、第1工程で得られたプロピレン系重合体成分(B1)は、254gであった。このうち10gを取り分け、分析に使用した。
【0158】
(iii−2)第2工程:プロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の製造
第1工程が終了した後、重合に用いたオートクレーブを開放し、内部にポリマーが残存していないことを確認した。清掃した後に組み立てなおし、加熱しながら窒素を流して充分に乾燥した。乾燥終了後、室温まで冷却した。
その後、第1工程で得られたプロピレン系重合体成分(B1)254gのうち、分析用に10gを取り分けた残りの244gを、窒素気流下でテフロン(登録商標)チューブを通じて、オートクレーブに全量充填した。
別途、撹拌および温度制御装置を有する内容積20Lのオートクレーブを用いて、第2工程で使用する混合ガスを調製した。調製温度は75℃、混合ガス組成はエチレン19vol%、プロピレン81vol%、水素320ppmであった。この混合ガスを3Lのオートクレーブに供給して2.0MPaGまで昇圧し、第2工程の重合を開始した。
重合は、70℃で13分継続した。その後、エタノールを10ml導入して重合を停止した。回収したポリマーはオーブンで充分に乾燥した。
秤量の結果、得られたプロピレン−エチレン共重合体(B)は304gであった。このうち244gがプロピレン系重合体成分(B1)なので、得られたプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)は60gであった。これらの収量の値を基にプロピレン系重合体成分(B1)とプロピレン−エチレン共重合体成分(B2)の重量比率を計算した結果、W(B1)が0.80g/g、W(B2)が0.20g/gとなった。
第1工程の終了後に分析用に取り分けたプロピレン系重合体成分(B1)と第2工程の終了後に得られたプロピレン−エチレン共重合体(B)の分析を行い、エチレン含有量[E(B1)、E(B)]、MFR(B1)、MFR(B)の値を得た。
結果を表1に示す。また、W(B1)、W(B2)、E(B1)、E(B)、MFR(B1)、MFR(B)の値を用いて、E(B2)、MFR(B2)を計算した。これらの値も表1に示す。
【0159】
[製造例PPB−2〜PPB−8]
表1に記載の重合条件を用いた点以外は、製造例B−1と同様にして、プロピレン−エチレン共重合体の製造を行った。結果を表1に示す。これらは、本発明のプロピレン−エチレン共重合体(B)に相当しないプロピレン−エチレン共重合体である。
【0160】
【表1】
【0161】
2−3.透明化核剤(C)
(i)ミラッドNX8000J(ミリケン・アンド・カンパニー社製):
本発明の透明化核剤(C)相当品で、下記化学構造式(2)で表される化合物。
【0162】
【化10】
【0163】
(ii)ゲルオールMD(GAMD;新日本理化(株)社製):
ジメチルベンジリデンソルビトール系透明化核剤。これは、本発明の透明化核剤(C)に相当しない透明化核剤である。
【0164】
2−4.その他の添加剤
(1)酸化防止剤
(i)ヒンダードフェノール系酸化防止剤:イルガノックス1010(IR1010;BASF社製);テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]メタン
(ii)リン系酸化防止剤:イルガフォス168(IF168;BASF社製);トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト
【0165】
(2)中和剤
(i)ステアリン酸カルシウム(CAST;日油社製)
【0166】
[実施例1〜3及び比較例1〜10]
プロピレン系(共)重合体(A)、プロピレン−エチレン共重合体(B),透明化核剤(C)および他の添加剤(酸化防止剤、中和剤)を表2に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、東芝機械製TEM35二軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度200℃でダイから押し出しペレット化した。
得られたペレットを前述の方法で試験片を作製し、物性を測定した。その結果を表2に示す。
【0167】
【表2】
【0168】
[実施例と比較例の対比]
表2から明らかなように、実施例1〜3は、本発明の規定の範囲にあるプロピレン系(共)重合体(A)に該当するPPA−1の80〜95重量部に対して、本発明の規定の範囲にあるプロピレン−エチレン共重合体(B)に該当するPPB−1を5〜20重量部を加え、さらに、本発明の規定の範囲にある透明核剤(C)として、NX8000Jを0.4重量部配合したものである。表2から、高い透明性を維持しつつ、ウェルド白化が抑制されていること、白点の発生もないことがわかる。
【0169】
一方、比較例1は、プロピレン−エチレン共重合体(B)を含まない系である。透明性、白点は、良好であるものの、ウェルド部の白化が観察されており、意匠性に劣ることがわかる。
【0170】
また、比較例2は、実施例2のプロピレン系(共)重合体(A)に該当するPPA−1の代わりに、本発明の規定の範囲外にあるPPA−2を用いた系である。本発明に係るプロピレン系(共)重合体(A)がメタロセン触媒を用いて製造された重合体であり、Mw/Mnも2.0〜4.0の範囲内であるのに対して、PPA−2は、チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されており、Mw/Mnも本発明の規定の範囲よりも大きい。このような重合体をプロピレン系(共)重合体(A)の代わりに用いると、ウェルド白化や白点は生じないものの、透明性が劣り、意匠性が悪化することがわかる。
【0171】
また、比較例3は、実施例2のPPB−1の代わりに、本発明の規定の範囲外にあるPPB−2を用いた系である。本発明に係るプロピレン−エチレン共重合体(B)が(B1)成分と(B2)成分という2つの成分から構成されるのに対して、PPB−2は、(B1)成分のみしか有さない。このような共重合体をプロピレン−エチレン共重合体(B)の代わりに用いると、透明性、白点は良好なものの、ウェルド白化が改良できないことがわかる。
【0172】
また、比較例4は、実施例2のPPB−1の代わりに、本発明の規定の範囲外にあるPPB−3を用いた系である。本発明に係るプロピレン−エチレン共重合体(B)の(B2)成分のエチレン含有量が8〜25重量%であるのに対し、PPB−3の(B2)成分のエチレン含有量は7重量%であり、規定の範囲より小さい。このような共重合体をプロピレン−エチレン共重合体(B)の代わりに用いると、透明性、白点は良好なものの、ウェルド白化の改良幅が不十分であることがわかる。
【0173】
比較例5は、実施例2のPPB−1の代わりに、本発明の規定の範囲外にあるPPB−4を用いた系である。本発明に係るプロピレン−エチレン共重合体(B)の(B2)成分のエチレン含有量が8〜25重量%であるのに対し、PPB−4の(B2)成分のエチレン含有量は26重量%であり、規定の範囲より大きい。このような共重合体をプロピレン−エチレン共重合体(B)の代わりに用いると、透明性、ウェルド白化性は良好なものの、白点が発生し、意匠性を損なってしまうことがわかる。
【0174】
比較例6は、実施例2のPPB−1の代わりに、本発明の規定の範囲外にあるPPB−5を用いた系である。本発明に係るプロピレン−エチレン共重合体(B)の(B2)成分のMFRが0.0001〜0,5g/10分であるのに対し、PPB−5の(B2)成分のMFRは1.0g/10分であり、規定の範囲より大きい。このような共重合体をプロピレン−エチレン共重合体(B)の代わりに用いると、透明性、白点は良好なものの、ウェルド白化の改良効果がほとんど発現しないことがわかる。
【0175】
比較例7は、実施例2のPPB−1の代わりに、本発明の規定の範囲外にあるPPB−6を用いた系である。本発明に係るプロピレン−エチレン共重合体(B)の(B1)成分の比率は65〜95重量部、(B2)成分の比率は5〜35重量部であるのに対して、PPB−6の(B1)成分の比率は60重量部、(B2)成分の比率は40重量部であり、本発明の規定の範囲を外れている。このような共重合体をプロピレン−エチレン共重合体(B)の代わりに用いると、透明性、ウェルド白化性は良好なものの、白点がきわめて多発し、実用に耐えないことがわかる。
【0176】
比較例8は、実施例2のPPB−1の代わりに、本発明の規定の範囲外にあるPPB−7を用いた系である。本発明に係るプロピレン−エチレン共重合体(B)のMFRは0.5〜20g/10分であるのに対して、PPB−7のMFRは0.3g/10分であり、本発明の規定の範囲より小さい。このような共重合体をプロピレン−エチレン共重合体(B)の代わりに用いると、透明性、ウェルド白化性は良好なものの、白点がきわめて多発し、実用に耐えないことがわかる。
【0177】
比較例9は、実施例2のPPB−1の代わりに、本発明の規定の範囲外にあるPPB−8を用いた系である。本発明に係るプロピレン−エチレン共重合体(B)のMFRは0.5〜20g/10分であるのに対して、PPB−8のMFRは22g/10分であり、本発明の規定の範囲より大きい。このような共重合体をプロピレン−エチレン共重合体(B)の代わりに用いると、透明性、ウェルド白化性は良好なものの、白点がきわめて多発し、実用に耐えないことがわかる。
【0178】
さらに、比較例10は、実施例2の透明化核剤(C)に該当するNX8000Jの代わりに、本発明の規定の範囲外にあるGAMDを用いた系である。このような透明化核剤を透明化核剤(C)の代わりに用いると、ウェルド白化や白点は生じないものの、透明性が著しく低下し、実用に耐えないことがわかる。