(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレームレート設定手段は、前記ユーザから前記虚像までの距離の増加に応じてフレームレートが徐々に低くなるように設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
前記フレームレート設定手段は、前記ユーザから前記虚像生成手段により生成される前記虚像までの距離が長くなる程、該距離の変化量に対するフレームレートの変化量の比率が大きくなるようにフレームレートを変更して設定することを特徴とする請求項3に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置について具体化した一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
先ず、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUDという)1の構成について
図1を用いて説明する。
図1は本実施形態に係るHUD1の車両2への設置態様を示した図である。
【0014】
図1に示すようにHUD1は、車両2のダッシュボード3内部に設置されており、内部にプロジェクタ4やプロジェクタ4からの映像が投射されるスクリーン5を有する。そして、スクリーン5に投射された映像を、後述のようにHUD1が備えるミラーやフレネルレンズを介し、更に運転席の前方のフロントウィンドウ6に反射させて車両2の乗員7に視認させるように構成されている。尚、スクリーン5に投射される映像としては、車両2に関する情報や乗員7の運転の支援の為に用いられる各種情報がある。例えば障害物(他車両や歩行者)に対する警告、ナビゲーション装置で設定された案内経路や案内経路に基づく案内情報(右左折方向を示す矢印等)、現在車速、案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面、テレビ番組等がある。
【0015】
また、本実施形態のHUD1では、フロントウィンドウ6を反射して乗員7がスクリーン5に投射された映像を視認した場合に、乗員7にはフロントウィンドウ6の位置ではなく、フロントウィンドウ6の先の遠方の位置にスクリーン5に投射された映像が虚像8として視認されるように構成される。尚、乗員7が視認できる虚像8はスクリーン5に投射された映像であるが、ミラーを介するので上下方向は反転する。また、フレネルレンズを介することによってサイズも変更する。
【0016】
ここで、虚像8を生成する位置、より具体的には乗員7から虚像8までの距離(以下、生成距離という)Lについては、HUD1が備えるミラーやフレネルレンズの形状や位置、光路に対するスクリーン5の位置等によって適宜設定することが可能である。特に、本実施形態では後述のようにスクリーン5の位置を光路に沿って前後方向に移動可能に構成する。その結果、生成距離Lを適宜変更することが可能となる。例えば生成距離Lを2.5m〜20mの間で変更することが可能である。
【0017】
次に、
図2を用いてHUD1のより具体的な構成について説明する。
図2は、本実施形態に係るHUD1の内部構成を示した図である。
【0018】
図2に示すようにHUD1は、プロジェクタ4と、スクリーン5と、反射ミラー10と、ミラー11と、フレネルレンズ12と、制御回路部13と、CANインターフェース14とから基本的に構成されている。
【0019】
ここで、プロジェクタ4は光源としてLED光源やレーザー光源を用いた映像投射装置であり、例えばDLPプロジェクタとする。尚、プロジェクタ4としては液晶プロジェクタやLCOSプロジェクタやレーザー走査式プロジェクタを用いても良い。尚、レーザー走査式プロジェクタを用いた場合には後述の投射レンズは不要となる。また、プロジェクタ4は出力する映像のフレームレートを変更可能に構成されており、例えば15fps〜30fpsの間でフレームレートを任意に変更可能に構成されている。また、プロジェクタ4は映像を投射する為の投射レンズ15を備える。ここで、
図3はプロジェクタ4が備える投射レンズ15を示した図である。
【0020】
図3に示すように投射レンズ15は、円形状のレンズであり、光路に沿って前後方向に移動可能に構成されている。具体的には、投射レンズ15の背面側にあるレンズ駆動モータ18を駆動させることによって、
図4に示すように投射レンズ15を光路に沿って前後方向に移動させることが可能となる。特に、本実施形態では、後述のようにスクリーン5を光路に沿って前後方向に移動させる場合において、投射レンズ15から投射される映像の焦点を移動後のスクリーン5の位置に一致させる為に、投射レンズ15も追従して移動させる構成とする。
【0021】
また、レンズ駆動モータ18はステッピングモータからなる。そして、HUD1は、制御回路部13から送信されるパルス信号に基づいてレンズ駆動モータ18を制御し、投射レンズ15の位置を設定位置に対して適切に位置決めすることが可能となる。
【0022】
また、スクリーン5は、プロジェクタ4から投射された映像が投射される被投射媒体であり、例えばフレネルスクリーンや拡散型スクリーン等が用いられる。ここで、
図5はスクリーン5を示した図である。
【0023】
図5に示すようにスクリーン5は、映像が投射される被投射エリア22を有しており、プロジェクタ4の投射レンズ15から投射された映像が表示される。また、スクリーン5は、光路に沿って前後方向に移動可能に構成されている。具体的には、スクリーン5の背面側にあるスクリーン前後駆動モータ24を駆動させることによって、
図6に示すようにスクリーン5を光路に沿って前後方向に移動させることが可能となる。その結果、
図7に示すようにスクリーン5に投射された映像の虚像8が生成される位置(具体的には乗員7から虚像8までの距離である生成距離L)を変更することが可能である。尚、生成距離Lは、ミラー11からスクリーン5までの距離に依存する。即ち、生成距離Lは、ミラー11からスクリーン5までの距離に応じて長短を変更される。例えば、ミラー11からスクリーン5までの距離が長くなると生成距離Lが長くなり、ミラー11からスクリーン5までの距離が短くなると生成距離Lが短くなる。
【0024】
例えば、スクリーン5をプロジェクタ4側(ミラー11までの距離が長くなる側)に移動させると、生成距離Lが長くなる(即ち、乗員7からはより遠くに虚像8が視認されるようになる)。一方、スクリーン5をプロジェクタ4と反対側(ミラー11までの距離が短くなる側)に移動させると、生成距離Lが短くなる(即ち、乗員7からはより近くに虚像8が視認されるようになる)。
【0025】
一方、反射ミラー10は、
図2に示すようにプロジェクタ4から投射された映像を反射して光路を変更し、スクリーン5へと投射する反射板である。
【0026】
また、ミラー11は、
図2に示すようにスクリーン5からの映像光を反射させて、フロントウィンドウ6を介して、乗員7の前方に虚像8(
図1参照)を投影する投影手段である。ミラー11としては、球面凹面鏡や、非球面凹面鏡、若しくは投影映像の歪みを補正するための自由曲面鏡が用いられる。尚、スクリーン5に対して投射された映像は、反射ミラー10やミラー11によって反射されるので、生成される虚像はスクリーン5に対して投射された映像と上下左右がそれぞれ反転した像となる。
【0027】
また、フレネルレンズ12は、
図2に示すようにスクリーン5に投射された映像を拡大して虚像8を生成する為の拡大鏡である。そして、本実施形態に係るHUD1では、スクリーン5に投射された映像を、ミラー11やフレネルレンズ12を介し、更にフロントウィンドウ6に反射させて乗員7に視認させることによって、フロントウィンドウ6の先の遠方の位置にスクリーン5に投射された映像が拡大され、虚像8として乗員に視認される(
図1参照)。
【0028】
また、制御回路部13は、HUD1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。ここで、
図8は本実施形態に係るHUD1の構成を示したブロック図である。
【0029】
図8に示すように制御回路部13は、演算装置及び制御装置としてのCPU31、並びにCPU31が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるRAM32、制御用のプログラムのほか、後述の虚像生成処理プログラム(
図9参照)等が記録されたROM33、ROM33から読み出したプログラムや後述の位置設定テーブルを記憶するフラッシュメモリ34等の内部記憶装置を備えている。また、制御回路部13は、プロジェクタ4、レンズ駆動モータ18、スクリーン前後駆動モータ24とそれぞれ接続され、プロジェクタ4や各種モータの駆動制御を行う。
【0030】
また、CAN(コントローラエリアネットワーク)インターフェース14は、車両内に設置された各種車載器や車両機器の制御装置間で多重通信を行う車載ネットワーク規格であるCANに対して、データの入出力を行うインターフェースである。そして、HUD1は、CANを介して、各種車載器や車両機器の制御装置(例えば、ナビゲーション装置48、AV装置49等)と相互通信可能に接続される。それによって、HUD1は、ナビゲーション装置48やAV装置49等の出力画面を投影可能に構成する。
【0031】
続いて、前記構成を有するHUD1においてCPU31が実行する虚像生成処理プログラムについて
図9に基づき説明する。
図9は本実施形態に係る虚像生成処理プログラムのフローチャートである。ここで、虚像生成処理プログラムは車両のACCがONされた後に実行され、必要に応じて虚像を生成する位置やフレームレートを変化させつつ車両の乗員に視認可能な虚像8を生成するプログラムである。尚、以下の
図9にフローチャートで示されるプログラムは、HUD1が備えているRAM32やROM33に記憶されており、CPU31により実行される。また、本実施形態では車両のACCがONされた時点では、乗員7から虚像8までの距離である生成距離Lが最も短い距離である2.5mとなるように、スクリーン5や投射レンズ15の位置が設定されていると仮定して説明する。
【0032】
先ず、ステップ(以下、Sと略記する)1においてCPU31は、プロジェクタ4に制御信号を送信し、プロジェクタ4のフレームレートを最大値に設定する。尚、本実施形態では15fps〜30fpsの間でプロジェクタ4のフレームレートを設定可能であるので、前記S1では30fpsにフレームレートを設定する。
【0033】
次に、S2においてCPU31は、プロジェクタ4によるスクリーン5への映像の投射を開始する。ここで、プロジェクタ4により投射される映像としては、車両2に関する情報や乗員7の運転の支援の為に用いられる各種情報がある。例えば障害物(他車両や歩行者)に対する警告、ナビゲーション装置で設定された案内経路や案内経路に基づく案内情報(右左折方向を示す矢印等)、現在車速、案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面、テレビ番組等がある。特に本実施形態では通常の走行状態では、上記映像の内、車両の現在車速の映像を投射する構成とする。
【0034】
その結果、
図10に示すように、フロントウィンドウ6の下縁付近で且つフロントウィンドウ6の前方2.5m先に、虚像8として現在車速を示す数値が生成され、乗員から視認可能となる。尚、
図10に示す例では虚像8として現在車速の映像を表示させる構成としているが、それ以外の情報、例えば案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面、テレビ番組、近距離にある緊急性のある障害物への警告等の生成距離Lを近距離で固定して表示した方が良い映像についても表示させる構成としても良い。
【0035】
次に、S3においてCPU31は、最短距離である2.5mよりも遠方の位置に虚像を生成する必要が生じたか否かを判定する。ここで、遠距離の位置に虚像を生成する必要がある場合としては、例えば、案内交差点等の走行案内を行う必要がある地点が接近した場合や、割り込み車両等の障害物が車両の前方に新たに出現した場合等がある。
【0036】
そして、遠距離の位置に虚像を生成する必要が生じたと判定された場合(S3:YES)には、S4へと移行する。それに対して、遠距離の位置に虚像を生成する必要が生じていないと判定された場合(S3:NO)にはS2へと戻り、プロジェクタ4によるスクリーン5への近距離用の映像の投射を継続して行う。
【0037】
S4においてCPU31は、プロジェクタ4へと信号を送信し、前記S2で投射が開始された近距離用の映像の投射を一旦中断する。
【0038】
次に、S5においてCPU31は、虚像を生成する必要のある位置へと虚像を生成する為のスクリーン5の位置(以下、目標スクリーン移動位置という)を決定する。ここで、虚像を生成する必要のある位置とは、例えば、案内交差点等の走行案内を行う必要がある地点が接近した場合には該地点の位置であり、割り込み車両等の障害物が車両の前方に新たに出現した場合には該障害物の位置となる。更に、S5においてCPU31は、虚像を生成する必要のある位置へと虚像を生成する為の投射レンズ15の位置(以下、目標レンズ移動位置という)についても決定する。
【0039】
例えば、
図11に示すように右左折対象となる交差点60が接近し、虚像8として右左折を示す案内矢印を表示する場合について説明する。先ず、乗員7から右左折対象となる交差点60までの距離をナビゲーション装置から取得した車両位置や地図情報に基づいて算出し、算出した距離を生成距離Lに設定する。本実施形態に係るHUD1は、前記したようにスクリーン5を光路に沿って前後方向に移動させることによって生成距離Lを変更することが可能である(
図6参照)。従って、CPU31は乗員7から生成距離Lだけ離れた位置に虚像8が生成されるようにスクリーン5の位置を制御する。その結果、虚像8が生成される位置は、乗員7から設定された生成距離L前方の位置(
図11に示す例では右折対象となる交差点60の位置)となる。従って、乗員7が視認する前方の風景と虚像8の位置を対応させることが可能となり、乗員7は、虚像8を視認する際にも視線移動を極力少なくすることが可能である。尚、その後に車両が移動することによって乗員7から右左折対象となる交差点までの距離が変化すれば、それに伴って生成距離Lも変更するように構成する。
【0040】
次に、
図12を用いてスクリーン5及び投射レンズ15の位置の制御についてより詳細に説明する。ここで、スクリーン5及び投射レンズ15の位置は、
図12に示すようにプロジェクタ4の光源51の光路52に沿って移動可能に構成される。そして、ミラー11からスクリーン5までの距離に生成距離Lが依存するので、スクリーン5の位置は、ミラー11からスクリーン5までの距離が設定された生成距離Lに対応する距離となるように決定される。尚、スクリーン5の位置の決定にはフラッシュメモリ34に記憶された位置設定テーブルが用いられる。位置設定テーブルは、
図13に示すように生成距離L毎に、該生成距離Lに虚像8を生成する為のスクリーン5の位置が規定されている。
【0041】
一方、投射レンズ15の位置は、投射レンズ15から投射された映像の焦点をスクリーン5上に合わせる位置に決定される。即ち、生成距離Lを長くする為にスクリーン5が光路に沿ってミラー11から離間する方向(即ち投射レンズ15に近づく方向)に移動すれば、投射レンズ15は光路に沿ってその逆方向であるスクリーン5に近づく方向へと移動することとなる。一方、生成距離Lを短くする為にスクリーン5が光路に沿ってミラー11へ近づく方向(即ち投射レンズ15から離間する方向)に移動すれば、投射レンズ15は光路に沿ってその逆方向であるスクリーン5から離間する方向へと移動することとなる。即ち、設定された生成距離Lに基づいて、光路52におけるスクリーン5の位置が先ず決定され、決定されたスクリーン5の位置に基づいて、光路52における投射レンズ15の位置が決定されることとなる。また、投射レンズ15とスクリーン5は、光路52に沿って互いに異なる方向に移動することとなる。尚、位置設定テーブルには、
図13に示すようにスクリーン5の位置に対応付けて投射レンズ15の位置についても予め規定されており、投射レンズ15の位置の決定には位置設定テーブルが用いられる。
【0042】
その結果、例えば生成距離Lを長く変更する為に、スクリーン5を投射レンズ15側に移動させた場合であっても、スクリーン5の移動に伴って投射レンズ15もスクリーン5側に移動することにより投射される映像の焦点をスクリーン5上に合わせた状態を維持できる。それによって、スクリーン5を移動させた後においても鮮明な映像を投射することが可能となる。
【0043】
次に、S6においてCPU31は、スクリーン5を現在位置から前記S5で特定された目標スクリーン移動位置まで移動させるのに必要なスクリーン前後駆動モータ24の駆動量(パルス数)を決定する。同じく、S6においてCPU31は、投射レンズ15を現在位置から前記S5で特定された目標レンズ移動位置まで移動させるのに必要なレンズ駆動モータ18の駆動量(パルス数)を決定する。
【0044】
その後、S7においてCPU31は、前記S6で決定された駆動量だけスクリーン前後駆動モータ24を駆動させる為のパルス信号をスクリーン前後駆動モータ24へと送信する。同じく、前記S6で決定された駆動量だけレンズ駆動モータ18を駆動させる為のパルス信号をレンズ駆動モータ18へと送信する。そして、パルス信号を受信したスクリーン前後駆動モータ24やレンズ駆動モータ18は、受信したパルス信号に基づいて駆動を行う。その結果、スクリーン5は目標スクリーン移動位置に移動し、投射レンズ15は目標スクリーン移動位置にあるスクリーン5上に焦点を合わせた位置に移動する。
【0045】
次に、S8においてCPU31は、スクリーン5及び投射レンズ15の移動が完了したか否かを判定する。具体的には、前記S7でパルス信号を送信したスクリーン前後駆動モータ24やレンズ駆動モータ18から駆動を完了したことを示す信号を受信した場合に、スクリーン5及び投射レンズ15の移動が完了したと判定する。
【0046】
そして、スクリーン5及び投射レンズ15の移動が完了したと判定された場合(S8:YES)には、S9へと移行する。それに対して、スクリーン5及び投射レンズ15の移動が完了していないと判定された場合(S8:NO)には、移動が完了するまで待機する。
【0047】
S9においてCPU31は、プロジェクタ4に制御信号を送信し、プロジェクタ4のフレームレートを現在の生成距離Lに応じた値に設定する。ここで、本実施形態では前記したように15fps〜30fpsの間でプロジェクタ4のフレームレートを設定可能である。そして、乗員7から虚像8までの距離である生成距離Lが長い程、フレームレートが低くなるように設定する。例えば、
図14に示す例では生成距離Lが最も短い2.5mでフレームレートを最も高い30fpsに設定し、生成距離Lの増加に応じてフレームレートを徐々に低くし、生成距離Lが最も長い20mではフレームレートを最も低い15fpsに設定する。また、
図14に示す例では、特に生成距離Lが長くなる程、該距離の変化量に対するフレームレートの変化量の比率が大きくなるようにフレームレートを変更して設定する。
【0048】
尚、生成距離Lに対するフレームレートは、
図15に示すように生成距離Lに応じて複数段階に設定するように構成しても良い。例えば
図15に示す例では、生成距離LがXm以下ではフレームレートを最も高い30fpsに設定し、生成距離LがXmより長い場合にはフレームレートを最も低い15fpsに設定する。尚、Xmは虚像と前方車両とが重複する虞の無い最大距離とし、例えば4mとする。
【0049】
そして、前記S9においてCPU31は、
図14や
図15に従って現在の生成距離Lに対応するフレームレートの値を特定し、特定した値にプロジェクタ4のフレームレートを設定するようにプロジェクタ4に対して制御信号を送信する。
【0050】
次に、S10においてCPU31は、プロジェクタ4によるスクリーン5への映像の投射を開始する。ここで、プロジェクタ4により投射される映像は、現在の車両の状況によって異なる。例えば案内交差点等の走行案内を行う必要がある地点が接近した状況では走行案内情報(交差点の右左折を示す矢印等)に関する映像を投射する(
図11参照)。また、割り込み車両等の障害物が車両の前方に新たに出現した状況では障害物への警告情報(障害物を囲む枠等)に関する映像を投射する。
【0051】
続いて、S11においてCPU31は、遠距離の位置へ虚像を生成する必要が無くなったか否かを判定する。ここで、遠距離の位置へ虚像を生成する必要が無くなった場合としては、例えば、案内交差点等の走行案内を行う必要がある地点が接近していた状況では、該地点を通り過ぎた場合である。また、割り込み車両等の障害物が車両の前方に新たに出現した状況では、該障害物が車両から一定距離以上に遠ざかった場合である。
【0052】
そして、遠距離の位置へ虚像を生成する必要が無くなったと判定された場合(S11:YES)には、S12へと移行する。それに対して、継続して遠距離の位置へ虚像を生成する必要があると判定された場合(S11:NO)にはS10へと戻り、プロジェクタ4によるスクリーン5への遠距離用の映像の投射を継続して行う。
【0053】
S12においてCPU31は、プロジェクタ4へと信号を送信し、前記S10で投射が開始された遠距離用の映像の投射を終了する。
【0054】
次に、S13においてCPU31は、スクリーン5を現在位置から前記S7の移動を行う前の位置、即ち生成距離Lが最も短い距離である2.5mとなる位置まで移動させるのに必要なスクリーン前後駆動モータ24の駆動量(パルス数)を決定する。同じく、S13においてCPU31は、投射レンズ15を現在位置から前記S7の移動を行う前の位置まで移動させるのに必要なレンズ駆動モータ18の駆動量(パルス数)を決定する。
【0055】
その後、S14においてCPU31は、前記S13で決定された駆動量だけスクリーン前後駆動モータ24を駆動させる為のパルス信号をスクリーン前後駆動モータ24へと送信する。同じく、前記S13で決定された駆動量だけレンズ駆動モータ18を駆動させる為のパルス信号をレンズ駆動モータ18へと送信する。そして、パルス信号を受信したスクリーン前後駆動モータ24やレンズ駆動モータ18は、受信したパルス信号に基づいて駆動を行う。その結果、スクリーン5は前記S7の移動を行う前の位置、即ち生成距離Lが最も短い距離である2.5mとなる位置に移動し、投射レンズ15は移動後のスクリーン5上に焦点を合わせた位置に移動する。
【0056】
次に、S15においてCPU31は、スクリーン5及び投射レンズ15の移動が完了したか否かを判定する。具体的には、前記S14でパルス信号を送信したスクリーン前後駆動モータ24やレンズ駆動モータ18から駆動を完了したことを示す信号を受信した場合に、スクリーン5及び投射レンズ15の移動が完了したと判定する。
【0057】
そして、スクリーン5及び投射レンズ15の移動が完了したと判定された場合(S15:YES)には、S1へと戻る。その後、フレームレートが再び最大値に設定され、近距離用の映像(例えば車両の現在車速の映像)の投射を行う。それに対して、スクリーン5及び投射レンズ15の移動が完了していないと判定された場合(S15:NO)には、移動が完了するまで待機する。
【0058】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るHUD1によれば、プロジェクタ4から出力した映像をスクリーン5に投射し、スクリーン5に投射された映像を車両2のフロントウィンドウ6に反射させて車両の乗員7に視認させることによって、車両の乗員7が視認する映像の虚像を生成する。また、プロジェクタ4から投射される映像のフレームレートを変更可能に構成し、虚像を視認するユーザから生成される虚像までの距離が長い程、フレームレートが低くなるように設定する(S9)ので、虚像を生成する位置に応じて出力する映像のフレームレートを変更することによって、出力する映像に最適なフレームレートを設定することが可能となる。例えば、ユーザから近い位置に生成されることが多いリアルタイムに変動する情報(例えば車速情報)の案内や、緊急性を要する情報の案内については、高いフレームレートで出力することにより適切に案内することが可能となる。一方で、特にユーザから遠い位置に生成されることが多い緊急性を有さず、変動も少ない情報(例えば走行案内に用いる案内矢印等)の案内についてはフレームレートを低くして出力することによって、ユーザの視線が該情報に固定されることを防止できる。また、プロジェクタの電力消費量や制御負荷についても削減することが可能となる。
【0059】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態ではHUD1によって車両2のフロントウィンドウ6の前方に虚像を生成する構成としているが、フロントウィンドウ6以外のウィンドウの前方に虚像を生成する構成としても良い。また、HUD1により映像を反射させる対象はフロントウィンドウ6自身ではなくフロントウィンドウ6の周辺に設置されたバイザー(コンバイナー)であっても良い。また、プロジェクタ4としてはLEDを光源とするプロジェクタ以外のプロジェクタを用いても良い。
【0060】
また、本実施形態では車両2に対してHUD1を設置する構成としているが、車両2以外の移動体に設置する構成としても良い。例えば、船舶や航空機等に対して設置することも可能である。また、アミューズメント施設に設置されるライド型アトラクションに設置しても良い。その場合には、ライドの周囲に虚像を生成し、ライドの乗員に対して虚像を視認させることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態では通常時では乗員7から虚像8までの距離である生成距離Lが最も短い距離である2.5mとなるように、スクリーン5や投射レンズ15の位置を設定しているが、2.5m以外としても良い。但し、生成距離Lを長くし過ぎると、虚像8が前方車両に埋め込まれることとなるので、2m〜4m程度であることが好ましい。
【0062】
また、本実施形態では、スクリーン5を光路に沿って前後方向に移動可能に構成しているが、スクリーン5の位置は固定としても良い。また、スクリーン5のみを光路に沿って前後方向に移動可能に構成し、投射レンズ15については位置を固定する構成としても良い。
【0063】
また、本実施形態では、スクリーンを1枚のスクリーンから構成しているが、スクリーンの数は2枚以上としても良い。また、スクリーンを2枚以上とした場合には、全てのスクリーンを光路に沿って移動可能に構成しても良いし、一部のスクリーンのみを光路に沿って移動可能に構成しても良い。また、スクリーンを2枚以上とした場合には、プロジェクタの数もスクリーンの数に対応させることによって、スクリーン毎にフレームレートを変更することが可能となる。
【0064】
また、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置を具体化した実施例について上記に説明したが、ヘッドアップディスプレイ装置は以下の構成を有することも可能であり、その場合には以下の効果を奏する。
【0065】
例えば、第1の構成は以下のとおりである。
スクリーンを光源の光路に沿って移動させる移動手段と、
移動手段によってスクリーンを光源の光路に沿って移動させることにより、ユーザから虚像生成手段により生成される虚像までの距離を変更する虚像位置変更手段と、を有し、フレームレート設定手段は、虚像位置変更手段によって変更されたユーザから虚像までの距離に応じてフレームレートを設定することを特徴とする。
上記構成を有するヘッドアップディスプレイ装置によれば、スクリーンを移動させることによってユーザから虚像までの距離を調整できる。従って、ユーザからの距離が変位する障害物や交差点等の対象物に関する映像を虚像として表示させる場合に、ユーザから対象物までの距離に応じた適切な位置に虚像を生成することが可能となる。更に、調整後のユーザから虚像までの距離に応じて出力する映像のフレームレートを変更することによって、出力する映像に最適なフレームレートを設定することが可能となる。
【0066】
また、第2の構成は以下のとおりである。
フレームレート設定手段は、ユーザから虚像までの距離の増加に応じてフレームレートが徐々に低くなるように設定することを特徴とする。
上記構成を有するヘッドアップディスプレイ装置によれば、ユーザから虚像までの距離が遠くなればなるほどフレームレートが小さくなるので、ユーザから虚像までの距離に応じて出力する映像に適した適切な値にフレームレートを設定することが可能となる。
【0067】
また、第3の構成は以下のとおりである。
フレームレート設定手段は、ユーザから虚像生成手段により生成される虚像までの距離が長くなる程、該距離の変化量に対するフレームレートの変化量の比率が大きくなるようにフレームレートを変更して設定することを特徴とする。
上記構成を有するヘッドアップディスプレイ装置によれば、ユーザから虚像までの距離が遠くなればなるほど距離に対するフレームレートの減少割合が大きくなるので、ユーザから虚像までの距離に応じて出力する映像に適した適切な値にフレームレートを設定することが可能となる。
【0068】
また、第4の構成は以下のとおりである。
フレームレート設定手段は、ユーザから虚像までの距離が所定の閾値以下である場合には、フレームレートを所定の第1レート値に設定し、ユーザから虚像までの距離が閾値より長い場合には、フレームレートを第1レート値より低い第2レート値に設定することを特徴とする。
上記構成を有するヘッドアップディスプレイ装置によれば、ユーザから虚像までの距離が閾値より大きいか否かに応じて、フレームレートを段階的に設定することにより、出力する映像に適した適切な値にフレームレートを設定することが可能となる。また、フレームレートを段階的に変更するので変更に係る制御を簡略化することが可能となる。
【0069】
また、第5の構成は以下のとおりである。
車両に搭載され、閾値は、虚像と前方車両とが重複する虞の無い最大距離であることを特徴とする。
上記構成を有するヘッドアップディスプレイ装置によれば、前方車両と重複しない範囲において生成される虚像についてはフレームレートを高く設定するので、特に乗員から近い位置に生成されることが多いリアルタイムに変動する情報(例えば車速情報)の案内や、緊急性を要する情報の案内を適切に行うことが可能となる。