特許第6281345号(P6281345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281345
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】アゾ顔料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 29/20 20060101AFI20180208BHJP
   C09B 41/00 20060101ALI20180208BHJP
   C09B 67/48 20060101ALI20180208BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C09B29/20
   C09B41/00 B
   C09B67/48 B
   C09B67/20 E
   C09B67/20 L
   C09B67/20 K
【請求項の数】4
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-54652(P2014-54652)
(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-208778(P2014-208778A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2016年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-60019(P2013-60019)
(32)【優先日】2013年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古林 龍作
(72)【発明者】
【氏名】巣鴨 等
(72)【発明者】
【氏名】古澤 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】野田 和秀
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−174527(JP,A)
【文献】 特開2006−267741(JP,A)
【文献】 特開2011−252044(JP,A)
【文献】 特開2004−045523(JP,A)
【文献】 特開2008−013472(JP,A)
【文献】 特開2013−032410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 29/00
C09B 41/00
C09B 67/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuKα線によって測定される回折角2θに対する回折強度で示される粉末X線回折図において、
2θ=13.0±0.5°の範囲内で最大回折強度を示すピークをA、
Aにおける2θをAx、
2θがAx以下、Ax−1.5°以上の範囲内で最小回折強度を示す点をB、
2θがAx以上、Ax+1.5°以下の範囲内で最小回折強度を示す点をC、
BとCとを結ぶ直線をベースライン、
Aから2θ軸に下ろした垂線とベースラインとの交点をD、
AとDの中点を通りベースラインと平行な線と、曲線ABの交点をE、
AとDの中点を通りベースラインと平行な線と、曲線ACの交点をF、
Eにおける2θをEx、Fにおける2θをFx、
Fx−ExをAの半価幅としたとき、
Aの半価幅が0.45以上0.69以下であることを特徴とするC.I.ピグメントレッド269。
【請求項2】
C.I.ピグメントレッド269の製造方法であって、カップリング反応時に水溶性有機溶剤で処理する工程を含む請求項記載のC.I.ピグメントレッド269の製造方法。
【請求項3】
C.I.ピグメントレッド269の製造方法であって、ソルベントソルトミリング処理する工程を含む請求項記載のC.I.ピグメントレッド269の製造方法。
【請求項4】
少なくとも、請求項記載のC.I.ピグメントレッド269と、分散媒を含んでなる着色組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゾ顔料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アゾ系顔料は、ベース成分である芳香族アミンのジアゾ化物とカップラー成分とを反応
させることで得られる化合物であり、中でもナフトールAS系顔料は、その着色力、鮮明
性から、印刷インキ、プラスチック、捺染、電子写真印刷、カラートナー、インクジェッ
トインキ、カラーフィルター等様々な分野の着色剤として用いられている。
【0003】
ナフトールAS系顔料の中でもC.I.ピグメントレッド269はジャパンカラーを満たす青味の赤の色相と高い着色力、鮮明性、耐水性等から、カラートナー、インクジェットインキ用顔料として特に着目を浴びている。カラートナー用途、インクジェットインキ用途の顔料としては、着色力、鮮明性、耐水性、耐光性、高純度、高収率で生産できることなどが求められるが、特に印刷時シアン、イエローなどと多色重ねを行う際に鮮明な色調を再現するため、顔料の高い透明性が求められている。
C.I.ピグメントレッド269の合成法としては、特許文献1や特許文献2に記載されるような方法が知られている。
しかし、これら公知の方法で製造したC.I.ピグメントレッド269の粉末X線回折による回折角2θ=13.0°付近にあるピークの半価幅は大きく、またこの顔料を用いてカラートナーの原料となるマスターバッチを作成すると、マスターバッチ化の加熱混練の際に不透明化したり、この顔料を用いて作成したインクジェットインクは長期保存した際に分散粒度が肥大化、不安定化したりする傾向があった。これはC.I.ピグメントレッド269の結晶が熱に対して不安定であり、熱履歴を受けることや長期間の保存で結晶が成長することが原因であるとわかっている。そこで、これらの欠点が解消されたC.I.ピグメントレッド269が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−123866号公報
【特許文献2】特開平11−272014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、係る従来技術の問題点を解決し、結晶の熱安定性が高く、加熱時に結晶成長
して不透明化することのないC.I.ピグメントレッド269とその製造方法を提供する
ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の粉末X線回折を示すC.I.ピグメントレッド269が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の実施態様は、CuKα線によって測定される回折角2θに対する回折強度で示される粉末X線回折図において、
2θ=13.0±0.5°の範囲内で最大回折強度を示すピークをA、
Aにおける2θをAx、
2θがAx以下、Ax−1.5°以上の範囲内で最小回折強度を示す点をB、
2θがAx以上、Ax+1.5°以下の範囲内で最小回折強度を示す点をC、
BとCとを結ぶ直線をベースライン、
Aから2θ軸に下ろした垂線とベースラインとの交点をD、
AとDの中点を通りベースラインと平行な線と、曲線ABの交点をE、
AとDの中点を通りベースラインと平行な線と、曲線ACの交点をF、
Eにおける2θをEx、Fにおける2θをFx、
Fx−ExをAの半価幅としたとき、
Aの半価幅が0.45以上0.69以下であることを特徴とするC.I.ピグメントレッド269に関する。
【0008】
また、本発明の実施態様は、C.I.ピグメントレッド269の製造方法であって、カ
ップリング反応時に水溶性有機溶剤で処理する工程を含む前記C.I.ピグメントレッド
269の製造方法に関する。
【0009】
また、本発明の実施態様は、C.I.ピグメントレッド269の製造方法であって、ソ
ルベントソルトミリング処理する工程を含む前記C.I.ピグメントレッド269の製造
方法に関する。
【0010】
また、本発明の実施態様は、少なくとも前記C.I.ピグメントレッド269と、分散
媒を含んでなる着色組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、顔料の結晶の熱安定性が高まることにより、高い透明性を有するカラ
ートナーや分散安定性の良好なインクジェットインキ等を製造可能なC.I.ピグメント
レッド269とその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例8で製造したC.I.ピグメントレッド269(顔料H)の粉末X線回折図である。
図2図2は、本発明に係る粉末X線回折図の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書における「C.I.」とは、カラーイ
ンデックス(C.I.)を意味する。
【0014】
<C.I.ピグメントレッド269>
本発明におけるC.I.ピグメントレッド269はCuKα線によって測定される回折角2θに対する回折強度で示される粉末X線回折図において、
2θ=13.0±0.5°の範囲内で最大回折強度を示すピークをA、
Aにおける2θをAx、
2θがAx以下、Ax−1.5°以上の範囲内で最小回折強度を示す点をB、
2θがAx以上、Ax+1.5°以下の範囲内で最小回折強度を示す点をC、
BとCとを結ぶ直線をベースライン、
Aから2θ軸に下ろした垂線とベースラインとの交点をD、
AとDの中点を通りベースラインと平行な線と、曲線ABの交点をE、
AとDの中点を通りベースラインと平行な線と、曲線ACの交点をF、
Eにおける2θをEx、Fにおける2θをFx、
Fx−ExをAの半価幅としたとき、
Aの半価幅が0.96以下であることを特徴とする。
【0015】
X線回折スペクトル測定の方法は以下の通りである。
装置:Rigaku MiniFlex II
X線源:CuKα
電圧:30kV
電流:15mA
測定範囲:3.0°から35.0°
ステップ角:0.02°
【0016】
[半価幅]
この測定結果より、下記条件でデータ処理を行うことでピーク半価幅を求めた。ここで
半価幅とは、ある2θのピークにおいて、そのX線回折強度の1/2強度となる強度位置
でのピーク幅で定義されるブラッグ角値である。
【0017】
半価幅は以下のように求めた。得られた回折データをBスプライン方式により平滑化(
x閾値=1.5)した。対象とするピーク値(2θ=13.0±0.5°)付近において
、最大回折強度を示すピークをA、
Aにおける2θをAx、
2θがAx以下、Ax−1.5°以上の範囲内で最小回折強度を示す点をB、
2θがAx以上、Ax+1.5°以下の範囲内で最小回折強度を示す点をC、
BとCとを結ぶ直線をベースライン、
Aから2θ軸に下ろした垂線とベースラインとの交点をD、
AとDの中点を通りベースラインと平行な線と、曲線ABの交点をE、
AとDの中点を通りベースラインと平行な線と、曲線ACの交点をF、
Eにおける2θをEx、Fにおける2θをFx、
Fx−ExをAの半価幅(△2θ)とした。
【0018】
なおここで求めた半価幅(△2θ)は、結晶子の大きさ(=結晶性)に対応するもので
あり、結晶子が大きく、結晶性が高いほど半価幅は小さい値となる。
【0019】
発明者らはこの半価幅が0.96以下であれば、顔料の結晶の熱安定性が高く、高い透
明性を有するカラートナーや分散安定性の良好なインクジェットインキ等を製造可能なC
.I.ピグメントレッド269となることを見出した。また、この半価幅が0.70以下
であれば、より顔料の結晶の熱安定性が高く、より高い透明性を有するカラートナーやよ
り分散安定性の良好なインクジェットインキを製造可能なC.I.ピグメントレッド26
9を得ることができる。
【0020】
[C.I.ピグメントレッド269の製造]
C.I.ピグメントレッド269(化学式(1))は公知のアゾ顔料の合成方法で製造
することができる。具体的には、カップラー成分であるN−(5−クロロ−2−メトキシ
フェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド(化学式(2))と、ベース成分である
3−アミノ−4−メトキシベンズアニリド(化学式(3))をジアゾ化したジアゾニウム
塩をカップリング反応させることで製造することができる。本発明のC.I.ピグメント
レッド269の製造方法はこのカップリング反応時に水溶性有機溶剤で処理することで得
ることができる。
化学式(1)
【0021】
【化1】
【0022】
化学式(2)
【化2】
【0023】
化学式(3)
【化3】
【0024】
具体的には、カップラー成分であるN−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−
ヒドロキシ−2−ナフトアミドを含む塩基性溶液またはカップラー成分を含む塩基性溶液
を酸で中和した酸析スラリーと、ベース成分である3−アミノ−4−メトキシベンズアニ
リドをジアゾ化することで得られるジアゾ成分を含む溶液をカップリングさせる。この際
にカップラー成分を含む溶液、それを中和する酸、ジアゾ成分を含む溶液のいずれか一つ
以上に水溶性有機溶剤を加えることで製造することができる。本発明者らの研究によれば
、C.I.ピグメントレッド269の結晶の形は結晶が生成する際に決定されると考えら
れ、有機溶剤を含まない系では水への溶解度の低いC.I.ピグメントレッド269は微
細で不安定な結晶が多数生成して強く凝集し、これが熱を受ける際に急激に成長して低耐
熱性の原因となる。仮にカップリング終了後に溶剤処理を行っても、凝集した顔料中心部
の不安定な結晶は残り、耐熱性の改善は難しい。一方、本発明の水溶性有機溶剤を含む系
でカップリング反応を行うと結晶が生成する際にわずかではあるが系に顔料溶解能があり
、それが安定なC.I.ピグメントレッド269の結晶を生成させ、耐熱性の高いC.I
.ピグメントレッド269を得ることができる。
【0025】
カップラー成分を含む溶液は、加熱した塩基性水溶液中に、カップラー成分であるN−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミドを加えることで調製することができる。また、室温(10℃〜30℃程度)で、水、水溶性有機溶剤、カップラー成分、塩基を混合することで溶解しても良い。溶解温度は、添加する水溶性有機溶剤の量、種類、水の量、塩基の種類、量により異なるが、水溶性有機溶剤を含む場合は15〜50℃程度となる。水溶性有機溶剤を含まない場合は80〜95℃となる。
【0026】
塩基としては、水に溶解し、N−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミドを溶解させることができ、後述の酸水溶液またはジアゾ成分を含む溶液中の酸と中和した際に不溶の塩を作らなければどのような塩基でも構わないが、水酸化ナトリウムないし水酸化カリウムを用いるのが、コスト、カップラー成分の溶解力、廃液処理等の面から好ましい。
【0027】
(水溶性有機溶剤)
使用可能な水溶性有機溶剤としては、水と自由に混合できる範囲であればどのような水溶性有機溶剤を用いても構わないが、具体的には、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の2価アルコール類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の1価アルコール類などが好適に用いられる。
特に、上記の水溶性有機溶剤の中でも、ジメチルスルホキシド、環状エーテル類、ケトン類、2価アルコール類が好ましく、ケトン類、2価アルコール類がより好ましい。ケトン類を用いると純度良く、2価アルコール類を用いると収率良く顔料が得られる。沸点の高い溶剤を用いると多少顔料中に溶剤が残留することがあるが、使用目的に悪影響を及ぼさない限り問題とはならない。
【0028】
水溶性有機溶剤の添加量は水溶性有機溶剤の種類によるが、カップラー成分を含む溶液、酸水溶液、ジアゾ成分を含む溶液のいずれに添加する場合も、カップリング後のスラリー全体の重量に対して1%〜50%となるように加えるのが望ましく、2〜40%となるように加えるのがより望ましく、3〜30%となるように加えるのがさらに望ましい。溶剤添加量が1%より少ないと溶剤添加による効果が得られない場合がある。また、50%を超えると顔料の一次粒子は成長し耐熱性は向上するものの、過度の結晶成長が透明性の低下を招く場合がある。
【0029】
また、この溶液を酸水溶液と反応させてカップラー成分を酸析したものをカップリング
に用いても良い。酸水溶液に用いられる酸は、水に溶解する酸であれば、どのような酸で
も構わないが、塩酸、酢酸のいずれか、または塩酸と酢酸を混合して用いることが好まし
い。また、酸水溶液中に水溶性有機溶剤を加えて酸析を行っても構わない。水溶性有機溶
剤としては、水と自由に混合できる範囲であればどのような有機溶剤を用いても良く、上
記カップラー成分を含む溶液に使用可能な有機溶剤が好適に用いられる。
【0030】
ジアゾ成分を含む溶液は、ベース成分である3−アミノ−4−メトキシベンズアニリド
をジアゾ化することで得られる。ジアゾ化の方法は公知の方法を用いることができる。例
えば、ベース成分を氷水にリスラリーしたものに塩酸を加えて溶かし、亜硝酸ナトリウム
を加えることでジアゾ化を行うことができる。また、ジアゾ成分を含む溶液に水溶性有機
溶剤を添加しても構わない。水溶性有機溶剤としては、水と自由に混合できる範囲であれ
ばどのような有機溶剤を用いても良く、上記カップラー成分を含む溶液に使用可能な有機
溶剤が好適に用いられる。
【0031】
カップリングの方法としては、逆カップリング、正カップリング、酸析正カップリング等が挙げられ、いずれの方法も用いることができる。少量の溶剤量でも効果が得られる酸析正カップリングが特に望ましい。
【0032】
逆カップリングの方法としては公知の方法を用いることができ、ジアゾ成分を含む溶液
にカップラー成分を含む溶液を加える方法が挙げられる。カップリング時の温度は0〜5
0℃が望ましく、ジアゾ成分の変質、分解の抑制と反応速度の観点から、特に10〜30
℃が望ましい。ジアゾ成分を含む溶液にはあらかじめ緩衝液を加えても良い。緩衝液の種
類としては緩衝能を持つものであれば何を用いても構わないが、酢酸−酢酸ナトリウム水
溶液を用いるのが好ましい。緩衝液を加える場合はジアゾ成分を含む溶液のpHは3.0
〜6.5以下が望ましい。反応速度向上と耐熱性向上の観点から、必要に応じてカップリング後のスラリーを加熱することが好ましい。
【0033】
酸析正カップリングの方法としては、公知の方法を用いることができ、カップラー成分を含む溶液を酸水溶液と反応させることで酸析カップラースラリーを得、その後、ジアゾ成分を含む溶液とカップリング反応させる方法が挙げられる。酸析中の酸水溶液の温度は任意の温度を選ぶことができるが反応速度の観点から、0〜10℃で行うことが好ましい。反応速度向上と耐熱性向上の観点から、酸析カップラースラリーは、ジアゾ成分を含む溶液を加える前に、必要に応じて加熱することが好ましい。ただし、温度が高くなりすぎるとジアゾ成分が、変質、分解し易くなるため、カップリング反応時の酸析カップラースラリーの温度は、50℃以下であることが好ましい。ジアゾ成分を含む溶液を加える前の酸析カップラースラリーのpHは、2〜6であることが好ましい。
pHが2未満の場合は、ジアゾ成分を含む溶液を添加した後の反応速度が極端に遅くなり、pHが6を越える場合には、ジアゾ成分が変質し易くなるため好ましくない。pHの調整のために用いる酸は、水に溶解する酸であれば、どのような酸でも用いることができるが、塩酸または酢酸のいずれか、または塩酸と酢酸を混合して用いることが好ましい。酸の添加方法は、あらかじめ酸析に用いる酸をカップラー成分を含む溶液の塩基の当量よりも過剰にしてもよいし、ベースの溶解時にあらかじめ添加しても良いし、ジアゾ溶液に添加しても良いし、酸析後のカップラースラリーに、後から必要な量を添加しても構わない。また、反応速度向上と耐熱性向上の観点から、必要に応じてカップリング後のスラリーを加熱することが好ましい。
【0034】
(異種原料)
また、C.I.ピグメントレッド269を製造する際に、C.I.ピグメントレッド2
69とは異なるアゾ化合物を生成するための異種原料を加えても良い。異種成分となるア
ゾ化合物は、特に限定されないが、主成分となるC.I.ピグメントレッド269とベー
ス部分またはカップラー部分の構造が共通であることが透明性の点で好ましい。
【0035】
異種成分を生成するための異種原料としては、ジアゾ成分またはカップラー成分と反応
してアゾ化合物となるものであれば、いずれも使用できる。
【0036】
《異種カップラー》
ジアゾ成分と反応してアゾ化合物となる異種カップラー成分の例としては、一般式(1
)に表わされる化合物の他、β−ナフトール、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒ
ドロキシ−6−スルホン酸等のナフトール誘導体が挙げられる。
【0037】
一般式(1)
【化4】
【0038】
一般式(2)
【化5】
【0039】
(一般式(1)中、R1は、水素原子、ベンズイミダゾロン基、アルキルアミノアルキル
基、または、一般式(2)で表わされる基を表わす)
(一般式(2)中、R2〜R6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基
、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、カルボニル基、スルホン基、カルバ
モイル基、スルファモイル基、ニトリル基、または、ベンゾイルアミノ基を表す。また、
2〜R6は、隣接した基が互いに結合して環を形成しても良い。)
【0040】
《異種ベース》
カップラー成分と反応してアゾ化合物となる異種ベース成分の例としては、一般式(3
)に表わされる化合物が挙げられる。
【0041】
一般式(3)
【化6】
【0042】
(一般式(3)中、R7〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ
基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、カルボニル基、スルホン基、カル
バモイル基、スルファモイル基、ニトリル基、または、ベンゾイルアミノ基を表す。また
、R7〜R11は、隣接した基が互いに結合して環を形成しても良い。)
【0043】
異種成分となるアゾ顔料を生成させる順序は、主成分となるアゾ顔料の生成前、同時、
生成後のいずれでも構わない。主成分となるアゾ顔料と異種成分となるアゾ顔料を同時に
生成させる場合は、異種ベース成分を用いる場合は主ベース成分と同時にジアゾ化するこ
とで、異種カップラー成分を用いる場合は主カップラー成分と混合しておいて同時に溶解
することで実施できる。
これら異種原料は、異種成分となるアゾ顔料がアゾ顔料全体に対して、1〜30モル%
の範囲で生成するように加えることが好ましく、特に5〜20%の範囲で生成するように
加えることが好ましい。
【0044】
(添加剤)
アゾ顔料を製造する際、必要に応じて種々の添加剤を加えることができる。使用できる
添加剤の種類は特に限定されないが、界面活性剤、顔料誘導体のいずれかを加えることが
好ましく、界面活性剤を加えることが透明性の点で特に好ましい。
【0045】
アゾ顔料を製造する際に添加剤を使用する場合、添加剤はあらかじめカップラー成分を
含む溶液、ジアゾ成分を含む溶液または酸析用の酸液に加えて使用してもよく、カップリ
ング反応後のスラリー中に加えて使用してもよい。カップラー成分を含む溶液に加える場
合はカップラーを溶解する前に加えても良く、また酸析を行った後に加えても構わない。
【0046】
《界面活性剤》
界面活性剤としては、アニオン性、ノニオン性または両性の界面活性剤が好適に使用す
ることができる。界面活性剤をカップラー成分を含む溶液に加える場合は、アニオン性ま
たは両性界面活性剤が好ましい。界面活性剤を酸析用の酸液または酸析カップラースラリ
ーに添加する場合は、ノニオン性界面活性剤も好適に使用することができる。
【0047】
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリー
ルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ジアルキルスルホ
ン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ア
ルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアル
キルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチ
レンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセ
ロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等を挙
げることができる。
【0048】
両性界面活性剤としては、ベタイン、スルホベタイン、アルキルベタイン、アルキルア
ミンオキサイド等を挙げることができる。
【0049】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエ
チレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリ
マー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリ
オキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエ
チレン脂肪酸エステルポリオキシエチレンアルキルアミン等を挙げることができる。
【0050】
これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤を組
み合わせる場合は上記から選ばれる界面活性剤を自由に選択することができるが、両性界
面活性剤とアニオン性界面活性剤の組み合わせが好適に用いられる。またこれらは、顔料
組成物の全重量に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の範囲で使用
することができる。
【0051】
《顔料誘導体》
顔料誘導体の例としては、下記一般式(4)〜(6)で表わされる化合物が挙げられる
【0052】
一般式(4)

P−[X1−(Y1k]m
【0053】
(式中、Pは有機色素残基を表す。
1は、PとY1を結ぶ直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−NR12−、
−CONR12−、−SO2NR12−、−NR12CO−、−NR12SO2−、炭素数1〜12
個の直鎖または枝分かれしたアルキレン基、もしくはアルキル基、アミノ基、ニトロ基、
水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、のいずれかで置換されていてもよいベンゼン残基
もしくはトリアジン残基、または、これら結合基が2個以上連結してなる結合基を表す(
ここでR12は、水素原子、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を表す)。
1は、−NR1314、−SO3・M/j、または、−COO・M/jを表し、
13とR14は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換され
ていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、またはR13とR14とで一
体となって窒素、酸素もしくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環基を表し、M
は水素イオン、1〜3価の金属イオン、または少なくとも1つがアルキル基で置換されて
いるアンモニウムイオンを表し、jは、Mの価数を表す。
kは、1または2の整数を表し、mは、1〜4の整数を表す。)
【0054】
一般式(5)

Q−[X2−(Y2k]m
【0055】
(式中、Qはアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、またはハロゲン
原子、で置換されていてもよいアントラキノン残基を表す。
2は、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−NR12−、−CONR12
、−SO2NR12−、−NR12CO−、−NR12SO2−、炭素数1〜12個の直鎖または
枝分かれしたアルキレン基、もしくはアルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコ
キシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、のいずれかで置換されていてもよいベン
ゼン残基もしくはトリアジン残基、または、これら結合基が2個以上連結してなる結合基
を表す(ここでR12は、水素原子、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を表す)。
2は、−NR1314、−SO3・M/j、または、−COO・M/jを表し、
13とR14は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換され
ていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、またはR13とR14とで一
体となって窒素、酸素もしくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環基を表し、
Mは、水素イオン、1〜3価の金属イオン、または少なくとも1つがアルキル基で置換さ
れているアンモニウムイオンを表し、jは、Mの価数を表す。kは、1または2の整数を
表し、mは、1〜4の整数を表す。)
【0056】
一般式(6)
【化7】
【0057】
(式中、Rは、トリアジン残基を表す。
3からX5は、それぞれ独立に、RとY3からY5のいずれかを結ぶ直接結合、−O−、−
S−、−CO−、−SO2−、−NR12−、−CONR12−、−SO2NR12−、−NR12
CO−、−NR12SO2−、炭素数1〜12個の直鎖または枝分かれしたアルキレン基、
もしくは、アルキル基、アミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、の
いずれかで置換されていてもよいベンゼン残基、または、これら結合基が2個以上連結し
てなる結合基を表す(ここでR12は、水素原子、アルキル基、またはヒドロキシアルキル
基を表す)。
3は、−NR1314、−SO3・M/j、または−COO・M/jを表し、R13とR14
、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい
アルケニル基、置換されていてもよいフェニル基、またはR13とR14とで一体となって窒
素、酸素もしくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環基を表し、
Mは、水素イオン、1〜3価の金属イオン、または少なくとも1つがアルキル基で置換さ
れているアンモニウムイオンを表し、jはMの価数を表す。
4とY5は、それぞれ独立に、Y3と同じであるか、または、アルキル基、アミノ基、ニ
トロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、または置換され
ていてもよいフェニル基のいずれかを表す。
p、q、rは、それぞれ独立に、1または2の整数を表す。)
【0058】
ここで、Pにおける有機色素残基としては、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジス
アゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラ
バントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のア
ントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ペリノン系色素、ペリ
レン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キ
ノフタロン系色素、スレン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、金属錯
体系色素等が挙げられる。
【0059】
また、X1〜X3における炭素数1〜12個の直鎖または枝分かれしたアルキレン基とし
ては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン
基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デキレン基、ウンデキレン基、ドデキレ
ン基とその異性体等が挙げられる。
【0060】
また、R13〜R14における置換されていてもよいアルキル基としては、メチル基、エチ
ル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル
基、を骨格とし、それらの1つの水素がアミノ基、水酸基、塩素、臭素、スルホン基、ニ
トロ基のいずれかに置換されていてもよいもの等が挙げられる。
【0061】
また、R13〜R14における置換されていてもよいアルケニル基としては、ビニル基、2
−プロペニル基、を骨格とし、それらの1つの水素がアミノ基、水酸基、塩素、臭素、ス
ルホン基、ニトロ基のいずれかに置換されていてもよいもの等が挙げられる。
【0062】
また、R13〜R14における置換されていてもよいフェニル基としては、フェニル基、メ
チルフェニル基、ジメチルフェニル基、メトキシフェニル基、ニトロフェニル基、ヒドロ
キシフェニル基、クロロフェニル基、アミノフェニル基等が挙げられる。
【0063】
また、R13とR14とで一体となって窒素、酸素もしくは硫黄原子を含む置換されていて
もよい複素環基としては、アゾリジン環、オキソラン環、チオラン環、アゾール環、オキ
ソール環、チオール環、アジナン環、オキサン環、チアン環、ピリジン環、ラクタム環、
ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、ベンズイミダゾロン環等が挙げられる
【0064】
また、Mにおける1〜3価の金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、
マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、バナジウム、銅
、鉄等が挙げられる。
【0065】
また、Mにおける少なくとも1つがアルキル基で置換されているアンモニウムイオンと
しては、ジメチルアンモニウム、エチルメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ト
リメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジメチルプロピルアンモニウム、ジエ
チルプロピルアンモニウム等が挙げられる。
【0066】
これらは単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。またこれらは、
顔料組成物の全重量に対して0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲で使
用することができる。
【0067】
一般式(4)の例としては、下記化合物等が挙げられる。
【0068】
【化8】
【0069】
【化9】
【0070】
一般式(5)の例としては、下記化合物等が挙げられる。
【0071】
【化10】
【0072】
一般式(6)の例としては、下記化合物等が挙げられる。
【0073】
【化11】
【0074】
上記の化合物(1)〜(8)は、業界公知の方法、例えば、特開2010−19590
6に開示される方法で製造することができる。
【0075】
(ソルベントソルトミリング処理)
前記の製造方法により製造したC.I.ピグメントレッド269をソルベントソルトミ
リング処理することで、さらに耐熱性に優れたC.I.ピグメントレッド269を得るこ
とができる。
【0076】
本発明のソルベントソルトミリング処理顔料の製造方法は、前記の製造方法により製造
したC.I.ピグメントレッド269、磨砕助剤、及び水溶性有機溶剤を含む混合物をニ
ーダー等で機械的に混練した後、水中に投入し撹拌してスラリー状とし、次いでこのスラ
リーを濾過、水洗、乾燥することで製造される。
【0077】
混練時に用いられる磨砕助剤としては、水溶性無機塩が望ましく、水に溶解するもので
あれば特に限定されるものではないが、例えば、金属塩化物である、食塩(塩化ナトリウ
ム)、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化亜鉛、塩化カルシウム、塩化マグネシウムま
たはこれらの混合物等を挙げることができ、価格面から塩化ナトリウムを用いることが好
ましい。
【0078】
本発明で使用する水溶性無機塩の粒子径は、特に限定されるものではないが、体積基準
のメディアン粒子径(D50)が1〜50μm、95%粒子径(D95)が80μm以下
の水溶性無機塩が望ましい。水溶性無機塩の粒子径は、乾式仕様のレーザー回折式粒度分
布測定機を用いて求めることが可能である。
【0079】
水溶性無機塩の品質としては、水分含有量も重要である。工業用並塩では通常1.0重
量%以上の水分が含まれており、水分含有量が1.0重量%以上の食塩を乾燥せずにその
まま粉砕すると、粉砕された水溶性無機塩の付着性が強く、放置するとすぐに固まってし
まうことが多い。水溶性無機塩の水分含有量が0.5重量%以下まで乾燥することが好ま
しく、より好ましくは0.3重量%以下まで乾燥する。特に好ましくは、水溶性無機塩を
高温で焼結して、水分含有量を0.2重量%以下にする。
【0080】
水溶性無機塩の使用量は、C.I.ピグメントレッド269 1部に対し、水溶性無機
塩1〜30重量部であることが好ましく、水溶性無機塩5〜15重量部がより好ましい。
【0081】
本発明で使用する水溶性有機溶剤は、粗製有機顔料及び水溶性無機塩の混合物を湿潤さ
せ適度な固さのドウにすることで磨砕効果を増大させ、顔料の結晶安定化を促進させるた
めのものであれば特に制限はないが、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコ
ール、ポリエチレングリコール等の粘性の高い水溶性有機溶剤である。
【0082】
水溶性有機溶剤の使用量は、水溶性無機塩の量によって異なるが、C.I.ピグメント
レッド269 1重量部に対して、一般的に0.1〜5重量部であり、好ましくは1〜2
重量部である。
【0083】
水溶性有機溶剤としては、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノ
ール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジ
エチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール
モノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコー
ル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メ
トキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール
、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエー
テル、低分子量ポリプロピレングリコール、アニリン、ピリジン、テトラヒドロフラン、
ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタ
ノール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリ
コールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の水酸基、カルボニル基、カルオボキシル基、アミド基、へテロ原子を有する溶剤を挙げることができる。また必要に応じてこれらの水溶性有機溶剤を2種類以上混合して使用してもよい。
【0084】
混練混合物を機械的に混練する装置としては、ニーダー、プラネタリーミキサー、トリ
ミックス(井上製作所社製)、2本ロール、3本ロール、多軸ロール、エクストルーダー
、KRCニーダー(栗本鐵工所社製)、ミラクルKCK(浅田鉄工社製)等が挙げられる
が、特に限定されるものではなく、混練物に効率よく機械的剪断力が与えられるものであ
れば、バッチ式および連続式に関わらず使用できる。
【0085】
混練混合物を機械的に混練するときの温度は、特に限定されるものではないが、40〜
120℃で処理することが好ましく、70〜90℃で処理することがより好ましい。12
0℃を超えた場合には、C.I.ピグメントレッド269の結晶成長が促進され、一次粒
子径が粗大になり、着色組成物が不透明化する。また、40℃より低い場合には混練時に
発生する熱エネルギーの除去が困難となり、与える機械エネルギーを低減する、混練混合
物の処理量を低減する、もしくは混練混合物の粘度を低減する等の所作、もしくはこれら
の所作の組み合わせが必要となり、生産性が低下する。
【0086】
混練後のC.I.ピグメントレッド269は、常法により処理される。すなわち、混練
組成物を水または鉱酸水溶液で処理し、濾過、水洗し顔料を単離、乾燥・粉砕により、よ
り熱安定性の高いC.I.ピグメントレッド269を得ることができる。
【0087】
<着色組成物>
本発明の製造方法により製造したアゾ顔料は、結晶の熱安定性に優れ、着色力、鮮明性
に優れた特性を備えたものである。従って、印刷インキ、プラスチック、捺染、インクジ
ェットインキ、電子写真印刷、カラートナー、カラーフィルター等に好適に使用可能であ
る。
【0088】
本発明に記載の、少なくともC.I.ピグメントレッド269と、分散媒を含んでなる
着色組成物とは、具体的には印刷インキ、塗料組成物、プラスチック着色組成物、トナー
等の各種分散体のことであるが、本発明の着色組成物はそれに限定されるものではない。
ここで、印刷インキとはオフセットインキ、グラビアインキ、フレキソインキ、インクジ
ェット用インキ等の印刷インキ全般を表わす。
【0089】
オフセットインキには用途や乾燥方式に応じて枚葉インキ、オフセット輪転用インキ、
新聞インキ、UVインキ等が主なものとして挙げられるが、本発明はこれらに限定されな
い。
【0090】
本発明のオフセットインキは、本発明のC.I.ピグメントレッド269と分散媒としてオフセットインキ用ビヒクルを混合、分散することで製造できる。オフセットインキ用ビヒクルとは、例えば、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂またはこれら乾性油変成樹脂等の樹脂と、必要に応じて、アマニ油、桐油、大豆油等の植物油と、n−パラフィン、イソパラフィン、アロマテック、ナフテン、α−オレフィン等の溶剤から成るものであって、それらの混合割合は、ビヒクル成分の合計重量を基準(100重量%)として、樹脂:植物油:溶剤=10〜50重量%:0〜30重量%:20〜60重量%の範囲が好ましい。オフセットインキには、必要に応じて、インキ溶剤、ドライヤー、レベリング改良剤、増粘剤、顔料分散剤等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
【0091】
本発明のグラビアインキまたはフレキソインキは、本発明のC.I.ピグメントレッド
269、分散媒としてグラビアインキ用ビヒクルまたはフレキソインキ法ビヒクルを混合
、分散することで製造できる。ビヒクルは樹脂と溶剤から成るものであって、それらの混
合割合は、ビヒクル成分の合計重量を基準(100重量%)として、樹脂:溶剤=5〜5
0重量%:50〜95重量%の範囲が好ましい。
【0092】
樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、石灰化ロジン、
ライムロジン、ロジンエステル、マレイン酸樹脂、ギルソナイト、ダンマル、セラック、
ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ニトロセルロース、環化ゴム、塩化ゴム、エチルセルロー
ス、酢酸セルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂
、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、スチレンアクリル樹脂、アルキッ
ド樹脂等が挙げられる。溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、トルエン、クロルベンゾ
ール等の炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレン
グリコール、グリセリン等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケト
ン系溶剤、酢酸エチル、乳酸エチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、エチレング
リコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコ
ールモノブチルエーテル、エチルエーテル等のエーテル系溶剤、あるいは水等が挙げられ
る。
【0093】
グラビアインキまたはフレキソインキには、必要に応じて、例えば硫酸バリウム、炭酸
バリウム、炭酸カルシウム、石膏、アルミナホワイト、クレー、シリカ、シリカホワイト
、タルク、珪酸カルシウム、沈降性炭酸マグネシウム等の体質顔料の他、補助剤として、
可塑剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料分散剤等の公知の添加剤を適宜配
合することができる。
【0094】
本発明のインクジェットインキは、本発明のC.I.ピグメントレッド269、分散媒
としてインクジェットインキ用ビヒクルを混合、分散することで製造できる。インクジェ
ットインキ用ビヒクルは、樹脂や活性剤と溶剤から成るものであって、それらの混合割合
は、ビヒクル成分の合計重量を基準(100重量%)として、樹脂:溶剤=1〜10重量
%:90〜99重量%の範囲が好ましい。樹脂としては、アクリル、スチレン−アクリル
、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、フッ素樹脂等の水に溶解する樹脂および水
に分散性のエマルションないしコロイダルディスパージョン樹脂が挙げられる。これらの
樹脂には、必要に応じアンモニア、アミン、無機アルカリ等の中和剤が加えられる。また
、溶剤としては、例えば、水、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレン
グリコールモノメチルエーテル、置換ピロリドン等が挙げられる。また、インクジェット
インキの乾燥性を速める目的で、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の
アルコール類も使用できる。またヘッドでの乾燥を抑制するためにグリセリン等のアルコ
ール類も使用できる。さらに、インクジェットインキには、防腐剤、浸透剤、キレート剤
や、顔料の分散安定性を向上させるためにアニオン、非イオン、カチオン、両性イオン活
性剤、顔料分散剤を配合することができる。
【0095】
本発明の塗料は、本発明のC.I.ピグメントレッド269、分散媒として塗料用ビヒ
クルを混合、分散することで製造できる。塗料用ビヒクルは、樹脂と溶剤から成るもので
あって、それらの混合割合は、ビヒクル成分の合計重量を基準(100重量%)として、
樹脂:溶剤=5〜45重量%:55〜95重量%の範囲が好ましい。
【0096】
樹脂としては、例えば、ニトロセルロース、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、アク
リル樹脂、アミノアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹
脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、ポ
リエーテルスルホン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。溶剤としては、脂肪族炭化水
素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、アルコール系、ケトン系、エステル系
、エーテル系、エーテル・アルコール系、エーテル・エステル系の有機溶剤、水等が挙げ
られる。
【0097】
塗料には本発明の効果を阻害しない範囲内で他の有機顔料、硫酸バリウム、炭酸バリウ
ム、炭酸カルシウム、石膏、アルミナホワイト、クレー、シリカ、シリカホワイト、タル
ク、珪酸カルシウム、沈降性炭酸マグネシウム等の体質顔料の他、補助剤として硬化剤、
硬化促進剤、難燃剤、沈降防止剤、たれ防止剤、造膜助剤、防腐剤、塗膜の付着性向上の
ためのシランカップリング剤、防黴剤、消泡剤、粘性調整剤、レベリング剤、紫外線吸収
剤、赤外線吸収剤、凍結防止剤、可塑剤、pH調整剤、抗菌剤、光安定剤、つや消し剤、
酸化防止剤、顔料分散剤、顔料誘導体等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
【0098】
本発明のプラスチック組成物は、本発明のC.I.ピグメントレッド269、分散媒と
してプラスチック用樹脂を混合、分散することで製造できる。プラスチック用樹脂として
は、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、αオレフィンとア
クリル酸またはマレイン酸との共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレンとア
クリル酸または無水マレイン酸との共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル
、ポリ酢酸ビニル等のビニル樹脂、ホルマル樹脂やブチラール樹脂等のアセタール樹脂、
ポリアクリロニトリルやメタクリル樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレンやアクリロニト
リル・ブタジエン・スチレン共重合体等のスチロール樹脂、ポリエチレンテレフタレート
やポリカーボネート等のポリエステル樹脂、6−ナイロン等のナイロン、不飽和ポリエス
テル樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、セルロース樹脂等がある。
【0099】
プラスチックには本発明の効果を阻害しない範囲内で他の有機顔料、無機顔料、ワック
ス、又その誘導体、重金属不活性剤、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または亜鉛の金
属石けん、ハイドロタルサイト、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオ
ン系界面活性剤、両性界面活性剤等からなる帯電防止剤、ハロゲン系、リン系または金属
酸化物などの難燃剤、エチレンビスアルキルアマイド等の滑剤、酸化防止剤や紫外線吸収
剤、加工助剤、充填剤、顔料分散剤、顔料誘導体等、公知のポリマー用の各種添加剤を包
含することができる。要求される品質、着色作業性を満足するために、あらかじめ顔料を
これらの成分と分散処理し、粉体状のドライカラー、顆粒状のビーズカラー、液状のペー
ストカラー等とした後に樹脂と混合してもよい。また顔料とプラスチック、その他の上記
の添加剤から構成され、顔料を高濃度に含有する、いわゆるマスターバッチを製造し、マ
スターバッチを使用して樹脂を着色してもよい。また本発明のプラスチック分散体をトナ
ーとして用いてもよい。
【0100】
本発明のトナーは、本発明のC.I.ピグメントレッド269、分散媒として結着樹脂
をふくむものである。結着樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル樹脂等のビニル系
樹脂やポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、あるいはそれらを結合させたハイブリッド樹脂
等が使用可能である。またトナーには他にワックス成分、帯電制御材、流動化剤等の成分
を含んでいてもよい。
【0101】
ワックス成分としては、具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワッ
クス及びペトロラタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘
導体、フィッシャー・トロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、及び、ポリ
エチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス及びキ
ャンデリラワックス等の天然ワックス及びそれらの誘導体等が挙げられ、該誘導体には酸
化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物及びグラフト変性物も含まれる。又、高級
脂肪族アルコール等のアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、脂肪酸アミ
ド、脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、及び、動物ワックス
が挙げられる。これらは単独、もしくは併せて用いることができる。
【0102】
荷電制御剤としては、例えば、モノアゾ金属化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム
塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、芳香族ヒドロキシカルボン酸、その金属塩、無
水物、及び、エステル体等が挙げられる。流動化剤としては、例えば、シリカ、チタニア
、アルミナ等が挙げられる。
【0103】
トナーの製法としては溶融した結着樹脂と顔料を混練して分散し、その後所望の粒径まで
粉砕する粉砕法と呼ばれる方法や、懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法、エステル
伸長重合法等に代表される、湿式下で化学的手法によってトナー粒子を製造するケミカル
トナー方式が挙げられる。
【実施例】
【0104】
以下、本発明の製造方法を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。実施例、比較例において、特に断りの無い限り、「部」は「質量部」を表す。
【0105】
<顔料/顔料組成物の製造>
(実施例1)顔料Aの製造方法
ベース成分として3−アミノ−4−メトキシベンズアニリド24.2部を水294部に
添加、攪拌して懸濁液を調製し、さらに氷137部を加えて温度を5℃以下に調整した。
その中に35%−塩酸を31.6部添加し、30分攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウム
7.1部を水14部に加えて調整した水溶液を添加して1時間攪拌することによりジアゾ
化を行った。反応混合物にスルファミン酸2部を加え、亜硝酸を消失させた。これに25
%−水酸化ナトリウム水溶液36.5部、氷36.5部、80%−酢酸37.7部の混合
液からなる緩衝液を加えて、ジアゾ成分を含む溶液とした。
【0106】
一方、水66.8部とジメチルスルホキシド66.8部の混合液にカップラー成分とし
てN−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド33.
4部を加えて15分間撹拌、懸濁させた。そこに25%−水酸化ナトリウム水溶液32.
6部を加えてさらに30分撹拌し、水66.8部を加えてカップラー溶液とした。この溶
液を、ジアゾ成分を含む溶液に20分掛けて加え、カップリング反応を行った。
【0107】
1時間撹拌後スラリーを30℃まで加熱し、さらに30分撹拌した。このスラリーをさらに50℃まで加熱し30分間撹拌した後、濾過、水洗することにより、顔料のプレスケーキを得た。このプレスケーキを、90℃、18時間の条件下で乾燥した後、粉砕して、顔料A 55.5部を得た。
実施例1は参考例である。
【0108】
(実施例2)顔料Bの製造方法
カップリングを行う前に、ジアゾ成分を含む溶液にジメチルスルホキシド33.4部を加える以外は、実施例1と同様の方法で、顔料B 55.0部を得た。
実施例2は参考例である。
【0109】
(実施例3)顔料組成物Cの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とジメチルスルホキシド66.8部の混合液)にジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム2.3部を加えること以外は、実施例1と同様の方法で、顔料組成物C 57.9部を得た。
実施例3は参考例である。
【0110】
(実施例4)顔料Dの製造方法
ジメチルスルホキシドを加える代わりにアセトン120部を加えること以外は、実施例1と同様の方法で、顔料D 55.8部を得た。
【0111】
(実施例5)顔料Eの製造方法
カップリングを行う前に、ジアゾ成分を含む溶液にアセトン80部を加える以外は、実施例4と同様の方法で、顔料E 54.7部を得た。
【0112】
(実施例6)顔料組成物Fの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とアセトン120部の混合液)にジメチルドデシルベタイン0.6部とアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(株式会社テイカ製:テイカパワーBN2060) 2.9部を加えること以外は、実施例4と同様の方法で、顔料組成物F 56.8部を得た。
【0113】
(実施例7)顔料Gの製造方法
ジメチルスルホキシドを加える代わりにメチルエチルケトン66.8部を加えること以外は、実施例1と同様の方法で、顔料G 54.1部を得た。
【0114】
(実施例8)顔料Hの製造方法
カップリングを行う前に、ジアゾ成分を含む溶液にメチルエチルケトン33.4部を加える以外は、実施例7と同様の方法で、顔料H 54.2部を得た。
【0115】
(実施例9)顔料組成物Iの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とメチルエチルケトン66.8部の混合液)にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(株式会社テイカ製:テイカパワーBN2060) 3.9部を加えること以外は、実施例7と同様の方法で、顔料組成物I 56.4部を得た。
【0116】
(実施例10)顔料Jの製造方法
ジメチルスルホキシドを加える代わりにテトラヒドロフラン66.8部を加えること以外は、実施例1と同様の方法で、顔料J 55.8部を得た。
実施例10は参考例である。
【0117】
(実施例11)顔料Kの製造方法
ジアゾ成分を含む溶液にテトラヒドロフラン33.4部を加える以外は、実施例10と同様の方法で、顔料K 54.9部を得た。
実施例11は参考例である。
【0118】
(実施例12)顔料組成物Lの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液にジメチルドデシルベタイン0.6部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.7部を加えること以外は、実施例10と同様の方法で、顔料組成物L 56.9部を得た。
実施例12は参考例である。
【0119】
(実施例13)顔料Mの製造方法
ジメチルスルホキシドを加える代わりにジエチレングリコール66.8部を加えること以外は、実施例1と同様の方法で、顔料M 57.6部を得た。
【0120】
(実施例14)顔料Nの製造方法
カップリングを行う前に、ジアゾ成分を含む溶液にジエチレングリコール33.4部を加える以外は、実施例13と同様の方法で、顔料N 57.5部を得た。
【0121】
(実施例15)顔料組成物Oの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とジエチレングリコール66.8部の混合液)にジメチルドデシルベタイン2.3部を加えること以外は、実施例13と同様の方法で、顔料組成物O 59.7部を得た。
【0122】
(実施例16)顔料Pの製造方法
ジメチルスルホキシドを加える代わりにエチレングリコール170部を加えること以外は、実施例1と同様の方法で、顔料P 58.0部を得た。
【0123】
(実施例17)顔料Qの製造方法
酢酸水溶液にエチレングリコール130部を加える以外は、実施例16と同様の方法で、顔料Q 56.7部を得た。
【0124】
(実施例18)顔料組成物Rの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とエチレングリコール170部の混合液)にジメチルドデシルベタイン0.2部と70% ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸カリウム(花王株式会社製:エレクトロストリッパーF)3.0部を加えること以外は、実施例16と同様の方法で、顔料組成物R 60.3部を得た。
【0125】
(実施例19)顔料Sの製造方法
ジメチルスルホキシドを加える代わりに平均分子量300のポリエチレングリコール66.8部を加えること以外は、実施例1と同様の方法で、顔料S 54.5部を得た。
【0126】
(実施例20)顔料Tの製造方法
カップリングを行う前に、ジアゾ成分を含む溶液に平均分子量300のポリエチエレングリコール33.4部を加える以外は、実施例19と同様の方法で、顔料T 55.6部を
得た。
【0127】
(実施例21)顔料組成物Uの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部と平均分子量300のポリエチレングリコール66.8部の混合液)にジメチルドデシルベタイン0.2部とジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム2.1部を加えること以外は、実施例19と同様の方法で、顔料組成物U 57.6部を得た。
【0128】
(実施例22)顔料Vの製造方法
ベース成分として3−アミノ−4−メトキシベンズアニリド24.2部を水294部に添加、攪拌して懸濁液を調製し、さらに氷137部を加えて温度を5℃以下に調整した。その中に35%−塩酸を31.6部添加し、30分攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウム7.1部を水14部に加えて調整した水溶液を添加して1時間攪拌することによりジアゾ化を行った。反応混合物にスルファミン酸2部を加え、亜硝酸を消失させ、ジアゾ成分を含む溶液とした。
また、カップリング槽に80%−酢酸水溶液33.7部、水550部を入れて撹拌し酢酸水溶液とした。
【0129】
一方、水66.8部とジメチルスルホキシド66.8部の混合液にカップラー成分としてN−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド33.4部を加えて15分間撹拌、懸濁させた。そこに25%−水酸化ナトリウム水溶液32.6部を加えてさらに30分撹拌し、水66.8部を加えてカップラー溶液とした。この溶液を、酢酸水溶液を撹拌するカップリング槽に30分掛けて加えて酸析し、酸析カップラースラリーとした。酸析カップラースラリーを撹拌しながらジアゾ成分を含む溶液を20分掛けて添加した。
1時間撹拌後スラリーを30℃まで加熱し、さらに1時間撹拌した。このスラリーをさらに50℃まで加熱し30分間撹拌した後、濾過、水洗することにより、顔料のプレスケーキを得た。このプレスケーキを、90℃、18時間の条件下で乾燥した後、粉砕して顔料V 54.8部を得た。
実施例22は参考例である。
【0130】
(実施例23)顔料Wの製造方法
酢酸水溶液にジメチルスルホキシド33.4部を加える以外は、実施例22と同様の方法で、顔料W 54.9部を得た。
実施例23は参考例である。
【0131】
(実施例24)顔料組成物Xの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とジメチルスルホキシド66.8部の混合液)に、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム2.3部を加えること以外は、実施例22と同様の方法で、顔料組成物X 57.8部を得た。
実施例24は参考例である。
【0132】
(実施例43)顔料AQの製造方法
カップラー成分としてN−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド33.4部を用いる代わりに、N−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド31.8部とN−(4−クロロ−2,5−ジメトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド1.6部を用いること以外は実施例22と同様の方法で、顔料AQ 55.7部を得た。
実施例43は参考例である。
【0133】
(実施例44)顔料ARの製造方法
カップラー成分としてN−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2
−ナフトアミド33.4部を用いる代わりに、N−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)
−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド31.8部とN−[(2,3−ジヒドロ−2−オキ
ソ−1H−ベンゾイミダゾール)−5−イル]−3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボ
アミド1.6部を用いること以外は、実施例5と同様の方法で、顔料AR 54.1部を
得た。
【0134】
(実施例45)顔料ASの製造方法
カップラー成分としてN−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2
−ナフトアミド33.4部を用いる代わりに、N−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)
−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド31.8部とN−(2−メチル−5−クロロフェニ
ル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド1.6部を用いること以外は実施例8と同様の
方法で、顔料AS 55.1部を得た。
【0135】
(実施例46)顔料ATの製造方法
カップラー成分としてN−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド33.4部を用いる代わりに、N−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド31.8部とN−(2−メチル−5−クロロフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド1.6部を用いること以外は実施例11と同様の方法で、顔料AT 54.9部を得た。
実施例46は参考例である。
【0136】
(実施例50)顔料AXの製造方法
カップラー成分としてN−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド33.4部を用いる代わりに、N−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド31.8部とN−フェニル−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド1.3部を用いること以外は実施例22と同様の方法で、顔料AX 54.6部を得た。
実施例50は参考例である。
【0137】
(実施例53)顔料組成物BAの製造方法
カップラー成分を含む溶液を調製時に化合物(2)2.9部を加えること以外は実施例10と同様の方法で、顔料組成物BA 58.3部を得た。
実施例53は参考例である。
【0138】
(実施例55)顔料組成物BCの製造方法
カップラー成分を含む溶液を調製時に化合物(4)2.9部を加えること以外は実施例
16と同様の方法で、顔料組成物BC 59.5部を得た。
【0139】
(実施例57)顔料組成物BEの製造方法
カップラー成分を含む溶液を調製時に化合物(6)2.9部を加えること以外は実施例
4と同様の方法で、顔料組成物BE 57.8部を得た。
【0140】
(実施例58)顔料組成物BFの製造方法
カップリング後50℃に加熱する前のスラリーに化合物(7)2.9部を塩酸に溶かし
たものを加え、その後水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調整すること以外は実施例7
と同様の方法で、顔料組成物BF 57.8部を得た。
【0141】
(実施例59)顔料組成物BGの製造方法
カップリング後50℃に加熱する前のスラリーに化合物(8)2.9部を塩酸に溶かしたものを加え、その後水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調整すること以外は実施例10と同様の方法で、顔料組成物BG 58.0部を得た。
実施例59は参考例である。
【0142】
(実施例60)顔料BHの製造方法
下記組成の混練物を300容量部のニーダーに投入して、回転数60rpm、処理温度
50℃で7.5時間混練した。
実施例13で得られた顔料M 25部
塩化ナトリウム 220部
ジエチレングリコール 27部
ここで得られた混練物を70℃水1000部に取り出し、1時間保温撹拌後、濾過、水
洗、90℃で18時間乾燥、粉砕し、顔料BH 23.2部を得た。
【0143】
(実施例61)顔料BIの製造方法
カップラー成分を含む溶液に加えるアセトンの量を250部に変更し、ジアゾ成分を含む溶液に加えるアセトンの量を250部に変更すること以外は実施例5と同様の方法で、顔料BI 55.1部を得た。
【0144】
(実施例62)顔料BJの製造方法
ジメチルスルホキシドを加える代わりにアセトン120部を加えること以外は、実施例22と同様の方法で、顔料BJ 55.3部を得た。
【0145】
(実施例63)顔料BKの製造方法
カップリングを行う前に、ジアゾ成分を含む溶液にアセトン80部を加える以外は、実施例62と同様の方法で、顔料BK 55.4部を得た。
【0146】
(実施例64)顔料組成物BLの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とアセトン120部の混合液)にジメチルドデシルベタイン0.6部とアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(株式会社テイカ製:テイカパワーBN2060) 2.9部を加えること以外は、実施例62と同様の方法で、顔料組成物BL 56.4部を得た。
【0147】
(実施例65)顔料BMの製造方法
ジメチルスルホキシドを加える代わりにメチルエチルケトン66.8部を加えること以外は、実施例22と同様の方法で、顔料BM 55.3部を得た。
【0148】
(実施例66)顔料BNの製造方法
酢酸水溶液にメチルエチルケトン33.4部を加える以外は、実施例65と同様の方法で、顔料BN 55.3部を得た。
【0149】
(実施例67)顔料組成物BO製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とアセトン66.8部の混合液)にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(株式会社テイカ製:テイカパワーBN2060) 3.9部を加えること以外は、実施例65と同様の方法で、顔料組成物BO 57.7部を得た。
【0150】
(実施例68)顔料BPの製造方法
ジメチルスルホキシドを加える代わりにテトラヒドロフラン66.8部を加えること以外は、実施例22と同様の方法で、顔料BP 55.1部を得た。
実施例68は参考例である。
【0151】
(実施例69)顔料BQの製造方法
酢酸水溶液にテトラヒドロフラン33.4部を加える以外は、実施例68と同様の方法で、顔料BQ 55.2部を得た。
実施例69は参考例である。
【0152】
(実施例70)顔料組成物BRの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とテトラヒドロフラン66.8部の混合液)にジメチルドデシルベタイン0.6部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.7部を加えること以外は、実施例68と同様の方法で、顔料組成物BR 58.0部を得た。
実施例70は参考例である。
【0153】
(実施例71)顔料BSの製造方法
ジメチルスルホキシドを加える代わりにジエチレングリコール66.8部を加えること以外は、実施例22と同様の方法で、顔料BS 57.0部を得た。
【0154】
(実施例72)顔料BTの製造方法
酢酸水溶液にジエチレングリコール33.4部を加える以外は、実施例71と同様の方法で、顔料BT 57.9部を得た。
【0155】
(実施例73)顔料組成物BUの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とジエチレングリコール66.8部の混合液)にジメチルドデシルベタイン2.3部を加えること以外は、実施例71と同様の方法で、顔料組成物BU 59.8部を得た。
【0156】
(実施例74)顔料BVの製造方法
ジメチルスルホキシドを加える代わりにエチレングリコール170部を加えること以外は、実施例22と同様の方法で、顔料BV 57.7部を得た。
【0157】
(実施例75)顔料BWの製造方法
酢酸水溶液にエチレングリコール130部を加える以外は、実施例74と同様の方法で、顔料BW 57.3部を得た。
【0158】
(実施例76)顔料組成物BXの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とエチレングリコール170部の混合液)にジメチルドデシルベタイン0.2部と70% ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸カリウム(花王株式会社製:エレクトロストリッパーF)3.0部を加えること以外は、実施例74と同様の方法で、顔料組成物BX 60.1部を得た。
【0159】
(実施例77)顔料BYの製造方法
ジメチルスルホキシドを加える代わりに平均分子量300のポリエチレングリコール 66.8部を加えること以外は、実施例22と同様の方法で、顔料BY 54.9部を得た。
【0160】
(実施例78)顔料BZの製造方法
酢酸水溶液に平均分子量300のポリエチレングリコール 33.4部を加える以外は、実施例77と同様の方法で、顔料BZ 54.6部を得た。
【0161】
(実施例79)顔料組成物CAの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部と平均分子量300のポリエチレングリコール 66.8部の混合液)にジメチルドデシルベタイン0.2部とジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム2.1部を加えること以外は、実施例77と同様の方法で、顔料組成物CA 57.7部を得た。
【0162】
(実施例80)顔料CBの製造方法
カップラー成分としてN−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド33.4部を用いる代わりに、N−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド30.9部と3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボアミド1.5部を用いること以外は、実施例71と同様の方法で、顔料CB 57.1部を得た。
【0163】
(実施例81)顔料CCの製造方法
カップラー成分としてN−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2
−ナフトアミド33.4部を用いる代わりに、N−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)
−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド30.1部とN−(4−クロロ−2,5−ジメトキ
シフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド1.6部とN−(2−メチル−5−ク
ロロフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド1.6部を用いること以外は実施例
74と同様の方法で、顔料CC 58.1部を得た。
【0164】
(実施例82)顔料組成物CDの製造方法
カップラー成分としてN−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2
−ナフトアミド33.4部を用いる代わりに、N−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)
−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド32.4部とN−[3−(ジエチルアミノ)プロピ
ル]−3−ヒドロキシ−2−ナフトアミド 0.9部を用いること以外は実施例77と同
様の方法で、顔料組成物CD 54.1部を得た。
【0165】
(実施例83)顔料組成物CEの製造方法
ベース成分として3−アミノ−4−メトキシベンズアニリド24.2部を用いる代わり
に、3−アミノ−4−メトキシベンズアニリド23.5部とスルファニル酸0.5部を用
いること以外は実施例62と同様の方法で、顔料組成物CE 55.0部を得た。
【0166】
(実施例84)顔料組成物CFの製造方法
酸析後のカップラースラリーに化合物(1)2.9部を加えることと、カップリング後に8時間撹拌した後に水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調整すること以外は実施例65と同様の方法で、顔料組成物CF 58.5部を得た。
【0167】
(実施例85)顔料組成物CGの製造方法
酸析後のカップラースラリーに化合物(3)2.9部を加えることと、カップリング後に8時間撹拌した後に水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調整すること以外は実施例71と同様の方法で、顔料組成物CG 59.3部を得た。
【0168】
(実施例86)顔料組成物CHの製造方法
酸析後のカップラースラリーに化合物(5)2.9部を加えることと、カップリング後に8時間撹拌した後に水酸化ナトリウム水溶液でpHを7に調整すること以外は実施例77と同様の方法で、顔料組成物CH 58.0部を得た。
【0169】
(実施例87)顔料組成物CIの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とジエチレングリコール66.8部の混合液)にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(株式会社テイカ製:テイカパワーBN2060)3.9部を加えること以外は実施例80と同様の方法で、顔料組成物CI 60.8部を得た。
【0170】
(実施例88)顔料組成物CJの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とジエチレングリコール66.8部の混合液)にジメチルドデシルベタイン0.8部を加えること以外は実施例80と同様の方法で、顔料組成物CJ 57.7部を得た。
【0171】
(実施例89)顔料組成物CKの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とジエチレングリコール66.8部の混合液)にジメチルドデシルベタイン0.8部を加えること以外は実施例87と同様の方法で、顔料組成物CK 61.6部を得た。
【0172】
(実施例90)顔料組成物CLの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とエチレングリコール170部の混合液)にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(株式会社テイカ製:テイカパワーBN2060)3.9部を加えること以外は実施例81と同様の方法で、顔料組成物CL 60.2部を得た。
【0173】
(実施例91)顔料組成物CMの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とエチレングリコール170部の混合液)にジメチルドデシルベタイン0.8部を加えること以外は実施例81と同様の方法で、顔料組成物CM 56.9部を得た。
【0174】
(実施例92)顔料組成物CNの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部とエチレングリコール170部の混合液)にジメチルドデシルベタイン0.8部を加えること以外は実施例90と同様の方法で、顔料組成物CN 61.1部を得た。
【0175】
(実施例93)顔料組成物COの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部と平均分子量300のポリエチレングリコール 66.8部の混合液)にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(株式会社テイカ製:テイカパワーBN2060)3.9部を加えること以外は実施例82と同様の方法で、顔料組成物CO 61.0部を得た。
【0176】
(実施例94)顔料組成物CPの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部と平均分子量300のポリエチレングリコール 66.8部の混合液)にジメチルドデシルベタイン0.8部を加えること以外は実施例82と同様の方法で、顔料組成物CP 58.1部を得た。
【0177】
(実施例95)顔料組成物CQの製造方法
カップラー成分を加える前の溶剤水溶液(水66.8部と平均分子量300のポリエチレングリコール 66.8部の混合液)にジメチルドデシルベタイン0.8部を加えること以外は実施例93と同様の方法で、顔料組成物CQ 63.1部を得た。
【0178】
(実施例96)顔料組成物CRの製造方法
酸析カップラースラリーを撹拌しながらジアゾ成分を含む溶液を加えて1時間撹拌したスラリーを、90℃まで加熱し30分間撹拌する以外は実施例89と同様の方法で、顔料組成物CR 61.8部を得た。
【0179】
(実施例97)顔料組成物CSの製造方法
酸析カップラースラリーを撹拌しながらジアゾ成分を含む溶液を加えて1時間撹拌したスラリーを、90℃まで加熱し30分間撹拌する以外は実施例92と同様の方法で、顔料組成物CS 61.5部を得た。
【0180】
(実施例98)顔料組成物CTの製造方法
酸析カップラースラリーを撹拌しながらジアゾ成分を含む溶液を加えて1時間撹拌したスラリーを、90℃まで加熱し30分間撹拌する以外は実施例95と同様の方法で、顔料組成物CT 63.7部を得た。
【0181】
(実施例99)顔料組成物CUの製造方法
カップラーを含む溶液に加えるメチルエチルケトンの量を20部にすること以外は実施例65と同様の方法で、顔料CU 54.3部を得た。
実施例99は参考例である。
【0182】
(実施例100)顔料組成物CVの製造方法
カップラーを含む溶液に加えるメチルエチルケトンの量を33部にすること以外は実施例65と同様の方法で、顔料CV 54.5部を得た。
【0183】
(実施例101)顔料組成物CWの製造方法
カップラーを含む溶液に加えるメチルエチルケトンの量を45部にすること以外は実施例65と同様の方法で、顔料CW 54.8部を得た。
【0184】
(比較例1)顔料aの製造方法
ベース成分として3−アミノ−4−メトキシベンズアニリド24.2部を水294部に
添加、攪拌して懸濁液を調製し、さらに氷137部を加えて温度を5℃以下に調整した。
その中に35%−塩酸を31.6部添加し、30分攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウム
7.1部を水14部に加えて調整した水溶液を添加して1時間攪拌することによりジアゾ
化を行った。反応混合物にスルファミン酸2部を加え、亜硝酸を消失させた。これに25
%−水酸化ナトリウム水溶液36.5部、氷36.5部、80%−酢酸37.7部の混合
液からなる緩衝液を加えて、ジアゾ成分を含む溶液とした
【0185】
一方、水133.6部と25%−水酸化ナトリウム水溶液32.6部の混合物を85℃
に加熱する中にカップラー成分としてN−(5−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−ヒ
ドロキシ−2−ナフトアミド33.4部を加えて溶かした。これに氷66.8部を加えて
冷却し、カップラー溶液とした。この溶液を、ジアゾ成分を含む溶液に20分掛けて加え
、カップリング反応を行った。
【0186】
1時間撹拌後スラリーを30℃まで加熱し、さらに30分撹拌した。このスラリーをさらに50℃まで加熱し30分間撹拌した後、濾過、水洗することにより、顔料のプレスケーキを得た。このプレスケーキを、90℃、18時間の条件下で乾燥した後、粉砕して、顔料a 55.7部を得た。
【0187】
(比較例2)顔料bの製造方法
カップラーを含む溶液に加えるジエチレングリコールの量を66.8部から6.7部に減らすこと以外は実施例13と同様の方法で、顔料b 54.9部を得た。
【0188】
<着色組成物の製造>
実施例1〜101、比較例1〜2で得られた顔料または顔料組成物A〜CW、a〜b 4
00部と分散媒としてポリエステル樹脂(商品名:ダイヤクロン、三菱レイヨン株式会社
製、ガラス転移温度55℃、軟化温度130℃)600部を事前に混合して容量1000
部のニーダーに仕込み、145℃で30分間溶融混練することで、着色組成物A〜CW、
a〜bを得た。
【0189】
顔料および顔料組成物について表1〜3にまとめて示す。
【0190】
【表1】
【0191】
【表2】
【0192】
【表3】
【0193】
<顔料または顔料組成物の評価>
[X線回折スペクトルの測定]
得られた顔料または顔料組成物について、下記条件でX線回折スペクトル測定を実施し
た。
装置:Rigaku MiniFlex II
X線源:CuKα
電圧:30kV
電流:15mA
測定範囲:3.0°から35.0°
ステップ角:0.02°
【0194】
[半価幅]
この測定結果より、下記条件でデータ処理を行うことでピーク半価幅を求めた。ここで半価幅とは、ある2θのピークにおいて、そのX線回折強度の1/2強度となる強度位置でのピーク幅で定義される回折角値である。
【0195】
半価幅は以下のように求めた。まず2θ=xのX線回折強度はBスプライン法により平
滑化を行った。対象とするピーク値(2θ=13.0±0.5°)付近において、最大回
折強度を示すピークをA、
Aにおける2θをAx、
2θがAx以下、Ax−1.5°以上の範囲内で最小回折強度を示す点をB、
2θがAx以上、Ax+1.5°以下の範囲内で最小回折強度を示す点をC、
BとCとを結ぶ直線をベースライン、
Aから2θ軸に下ろした垂線とベースラインとの交点をD、
AとDの中点を通りベースラインと平行な線と、曲線ABの交点をE、
AとDの中点を通りベースラインと平行な線と、曲線ACの交点をF、
Eにおける2θをEx、Fにおける2θをFx、
Fx−ExをAの半価幅(△2θ)とした。
【0196】
なおここで求めた半価幅(△2θ)は、結晶子の大きさ(=結晶性)に対応するもので
あり、結晶子が大きく、結晶性が高いほど半価幅は小さい値となる。
【0197】
[透明性の評価方法]
実施例、比較例で得られた顔料または顔料組成物を用いて、オフセットインキを調製し
た。オフセットインキは顔料または顔料組成物0.5g、オフセットインキ用ワニス(タ
マノール361(荒川化学工業株式会社製:ロジン変性フェノール樹脂)50重量部に対
し、アマニ油20重量部、5号ソルベント(日本石油株式会社:オフセットインキ用溶剤
)30重量部を加え、200℃にて加熱溶解したもの)2.0gを150ポンドの荷重を
掛けたフーバーマーラーで100×4回転して混練することでオフセットインキを得た。
【0198】
このオフセットインキをアート紙(三菱製紙製:特菱アート両面N)に展色して目視で
透明性を以下に示すA〜Cで評価した。比較例1を、C(基準)として、Cのものより高
透明な場合をB、顕著に高透明性な場合をAとした。
【0199】
<着色組成物の評価>
[耐熱性の評価方法]
得られた着色組成物について、耐熱性の評価を行った。
前記ポリエステル樹脂(商品名:ダイヤクロン、三菱レイヨン株式会社製、ガラス転移
温度55℃、軟化温度130℃)と高沸点エステル系溶剤(商品名:リックサイザーS4
、伊藤製油株式会社製)を同重量ずつ混合し、145℃で加熱溶解後室温まで冷却した希
釈ワニスに、得られた着色組成物を粉砕したものを1:1で混合し、150ポンドの荷重
を掛けたフーバーマーラーで100×4回転してインキ化することでマスターバッチイン
キを得た。このマスターバッチインキを前記オフセットインキと同様にアート紙に展色し
、前記オフセットインキに比べて透明性の変化が見られないものを◎、透明性の変化がほ
ぼ見られないものを○◎、わずかに不透明化したものを○、著しく不透明化したものを×
とした。
【0200】
評価結果を表4、5に示す。
【0201】
【表4】
【0202】
【表5】
【0203】
上記表4、表5に示す通り、比較例1〜2で得た顔料は、実施例1〜101で得た顔料または顔料組成物に比べて、X線回折による半価幅が大きく、着色組成物を作成した際に透明性低下が激しく、耐熱性に劣ることが明らかとなった。
図1
図2