(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281363
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】空気調和機の室外機
(51)【国際特許分類】
F24F 1/12 20110101AFI20180208BHJP
【FI】
F24F1/12
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-64275(P2014-64275)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-187507(P2015-187507A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100123733
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 大樹
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100170346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 望
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 健
【審査官】
佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−158112(JP,A)
【文献】
特開平06−185462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、
前記底板の上に配置され、冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機の側面に巻き付けられる防音性を有するシート部材と、
前記圧縮機に巻き付けられた前記シート部材の上端に形成される開口の内側に嵌め込まれる防音性を有する蓋体とを具備し、
前記圧縮機に巻き付けられた前記シート部材の内面に、前記開口の内側に嵌め込まれた前記蓋体の上面の周縁部を上から押さえる突出部が設けられている
空気調和機の室外機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機の室外機であって、
前記シート部材は、左右の端部同士が重なるように巻き付けられ、
前記左右の端部同士の重なりにおいて外側にくる一方の端部の重ね代の部分を少なくとも除いて前記突出部が前記シート部材の前記内周に設けられている
空気調和機の室外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の室外機に係り、特に圧縮機の防音構造を備える室外機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の室外機内の圧縮機の騒音対策として、圧縮機を防音材で覆うことが行われている。
【0003】
図9は、かかる従来の防音材による圧縮機の防音構造を示す図である。
圧縮機60には防音材シート61が巻き付けられる。防音材シート61は圧縮機60の全側面を取り囲むように巻き付けられるため、圧縮機60の上方は同じ防音材からなる蓋体62によって塞がれる。この蓋体62は、圧縮機60に巻き付けられた防音材シートの上端面に載るようにして配置される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−72559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる従来の防音材シートを用いた圧縮機の騒音対策では、防音材シートの上端が水平となるように巻き付けないと、防音材シートの上端面と蓋体の縁端部の下面との間に隙間が生じ、防音性能が低下するという問題がある。
【0006】
また、蓋体は、圧縮機に巻き付けられた防音材シートの上端面で支持されているだけであるため、防音材シートの上端が水平となっていても、室外機の輸送中や運転中の振動などにより蓋体がずれて隙間が発生してしまうことがあった。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、圧縮機の防音性能の低下を抑止することのできる空気調和機の室外機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る空気調和機の室外機は、底板と、前記底板の上に配置され、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機の側面に巻き付けられる防音性を有するシート部材と、前記圧縮機に巻き付けられた前記シート部材の上端に形成される開口の内側に嵌め込まれる防音性を有する蓋体とを具備し、前記圧縮機に巻き付けられた前記シート部材の内面に、前記開口の内側に嵌め込まれた前記蓋体の上面の周縁部を上から押さえる突出部が設けられている。
【0009】
本発明では、圧縮機に巻き付けられた防音性を有するシート部材の内側に設けられた突出部によって、蓋体の上面の周縁部が上から押さえているので、蓋体の浮き上がりを抑止することができる。これによって、室外機の輸送中や運転中の振動などによって蓋体がずれることがなくなり、蓋体とシート部材との隙間の発生を防止でき、防音性能の低下を防止できる。
【0010】
また、本発明において、前記シート部材は、左右の端部同士が重なるように巻き付けられ、前記左右の端部同士の重なりにおいて外側にくる一方の端部の重ね代の部分を少なくとも除いて前記突出部が前記シート部材の前記内周に設けられていてもよい。
【0011】
これにより、蓋体の周端面とシート部材の突出部の内面との間の隙間を解消できる
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧縮機の防音性能の低下を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態である空気調和機の室外機の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す空気調和機の室外機の内部構造を示す斜視図である。
【
図4】
図1の室外機における圧縮機の防音構造を示す断面図である。
【
図5】
図5の圧縮機の防音構造における防音材シートの展開図である。
【
図6】
図5の防音材シートの巻き付け方法の例とその課題を説明する図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態を説明するための防音材シートの展開図である。
【
図8】
図7の防音材シートの巻き付け状態を示す図である。
【
図9】従来の室外機における圧縮機の防音構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態である空気調和機の室外機の外観を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す空気調和機の室外機の内部構造を示す斜視図である。
図3は、
図2の平面図である。
【0016】
これらの図に示すように、本実施例の空気調和機の室外機1は、箱状の筐体10を有する。筐体10は、筐体10の下面を形成するベース11と、筐体10の前面を形成する前面パネル13と、筐体10の側面を形成する左側パネル14及び右側パネル15と、筐体10の上面を形成する天板16とで構成される。前面パネル13には、吹出口131が設けられる。吹出口131の外側にはファンガード17が取り付けられている。
【0017】
筐体10内には、圧縮機21、熱交換器23、送風ファン24および電装ユニット25などが収納されている。
【0018】
筐体10の内部空間は、仕切り板26によって主に圧縮機21、電装ユニット25などが配置された機械室31と、送風ファン24と、熱交換器23が配置された熱交換室32とに仕切られている。
【0019】
熱交換器23は、筐体10の背面から左側の側面に沿ってL字型に設けられる。熱交換器23は、互いに等間隔で平行に配置された複数のフィン231と、これらのフィン231に直交して配置される配管232を備える。
【0020】
[圧縮機の防音構造]
次に、本実施形態の空気調和機の室外機1における圧縮機21の防音構造について、
図3、
図4を用いて説明する。
【0021】
機械室31において、圧縮機21は、底板41に防振部材42を介して固定されている。圧縮機21には、保持部材43を介してアキュムレータ22が圧縮機21の横隣に保持されている。底板41は
図1のベース11であってよい。
【0022】
アキュムレータ22を含めた圧縮機21の配置空間は、防音対策のため、防音材50によって側面および上面が覆われている。
【0023】
防音材50は、アキュムレータ22を含めた圧縮機21を側面から覆うように巻き付けられた防音材シート51と、巻き付けられた防音材シート51の上端に形成される開口51Aの内側に嵌め込まれる蓋体52とで構成される。
【0024】
防音材シート51は、例えば、ガラス繊維等をシート状に形成した不織布の吸音材、遮音性を有する材料(ゴム等)から形成されたシート状の遮音材、あるいは吸音材と遮音材を積層したものであってよい。
【0025】
防音材シート51は、アキュムレータ22を含む圧縮機21に巻き付けられた一定の形態を保つため、左右の端部が図示しない固定手段によって互いに固定される。固定手段としては、例えば、
図9に示すような文化鋲や、両面テープ、面ファスナーなどが用いられる。
【0026】
圧縮機21およびアキュムレータ22は各々円筒形状の本体を有するので、これらに巻き付けられた防音材シート51は上から見て略楕円形状の状態になる。
【0027】
蓋体52は、巻き付けられた防音材シート51の上端に形成される開口51Aの略楕円形状に適合した外形を有する。蓋体52は防音材シート51と同じ防音材で作製されたものであってよいし、別の種類の防音材で作製されたものであってもよい。
【0028】
蓋体52には、圧縮機21の吐出管211が挿通される吐出管孔521、吸入管212が挿通される吸入管孔522が設けられている。また、蓋体52には、蓋体52の周端面から吐出管孔521の位置までスリット523、周端面から吸入管孔522の位置までスリット524がそれぞれ設けられている。蓋体52を取付ける際には、吐出管211及び吸入管212をスリット523及びスリット524にそれぞれ通過させて吐出管孔521及び吸入管孔522に位置させる。
【0029】
蓋体52は、巻き付けられた防音材シート51の上端に形成される開口51Aの内側に嵌め込まれる。このため蓋体52は、作業者が上から蓋体52を開口51A内に押し込むことによって、下から圧縮機21およびアキュムレータ22の上面により支えられる。
【0030】
なお、圧縮機21およびアキュムレータ22の各々の最上部の高さ位置はあまり差がないことが望ましい。両者の高さ位置に大きな差があると、蓋体52を上から押し込んだときに斜めの状態となり、蓋体52の端面と防音材シート51の内面との間に隙間ができやすくなるからである。また、上記の様な構成とすることで、蓋体52の位置決めが容易となり、作業性が向上する。
【0031】
一方、巻き付けられた防音材シート51の内面には、蓋体52の上面の周縁部を上から押さえることで、蓋体52の浮き上がりを抑止するための突出部511が、例えば、全周にわたって設けられている。なお、突出部511は、必ずしも防音材シート51の内面全周にわたって設けられる必要はない。内面全周において間隔を置いて設けられていてもよい。この突出部511は、蓋体52の上面に対して略平行な面で当接するものであることが望ましい。
【0032】
この突出部511は、巻き付けられた防音材シート51の内面に、例えば次のようにして設けることができる。
【0033】
図5は、防音材シート51の展開状態の内側面図および断面図である。
同図に示すように、防音材シート51の突出部511は、防音材シート51の上端から一定の長さの範囲である上端部53を、巻き付け状態において内側となる側に一回折り込み、縫い付けることによって得られる。
【0034】
なお、防音材シート51に突出部511を設ける方法は、上記のものに限定されない。例えば、独立して作製された帯状のシート部材を、防音材シート51に固定することによって突出部511を形成してもよい。
【0035】
以上、本実施形態によれば、アキュムレータ22を含む圧縮機21に巻き付けられた防音材シート51の内側に設けられた突出部511によって、蓋体52の上面の周縁部が上から押さえられることで、蓋体52の浮き上がりを抑止することができる。例えば、室外機1の輸送中や運転中の振動などによって防音材シート51が動いても、蓋体52がずれることにより蓋体52と防音材シート51との隙間ができるのを防止でき、防音性能が低下することがない。
【0036】
<第2の実施形態>
防音材シート51は、複数の種類の室外機に汎用的に用いられるようにするために、巻き付けの方向の長さに余裕をもたせて製作されてもよい。
【0037】
この場合、
図6に示すように、巻き付けた状態において側面に隙間が生じないように、左右端部同士が重なるように巻き付けられる。しかし、この場合、左右端部の重なりによって開口51Aの形状がいびつになり、蓋体52の周端面527と防音材シート51の突出部511の内面56との間に隙間55ができてしまう。
【0038】
その解決策として、
図7および
図8に示すように、防音材シート51の左右端部同士を重ねるときに外側に来る端部の重ね代部分57の突出部511を除去する方法がある。これにより、
図6に示されるような、蓋体52の周端面527と防音材シート51の突出部511の内面56との間の隙間55を解消できるとともに、蓋体52の押さえが効かない領域を減らすことができる。
【0039】
さらに、変形例として、
図6に示したように、防音材シート51の左右端部同士の重なりによっていびつになった開口51Aの形状に合せて蓋体52を作製してもよい。
【0040】
なお、上記の実施形態では、圧縮機21にアキュムレータ22が保持されている構造上、アキュムレータ22を含む圧縮機21を防音材50で被覆する防音構造としたが、圧縮機21のみを単独に防音材50で被覆する防音構造としてもよいことは言うまでもない。例えば圧縮機21にアキュムレータ22が直接保持されておらず、互いに十分離間している場合には、圧縮機21のみを単独に防音材50で被覆する防音構造を採用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…室外機
21…圧縮機
22…アキュムレータ
41…底板
50…防音材
51…防音材シート
51A…開口
52…蓋体
57…重ね代部分
511…突出部