特許第6281374号(P6281374)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281374
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】遠心送風機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20180208BHJP
   F04D 29/16 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   F04D29/28 C
   F04D29/16
   F04D29/28 P
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-69622(P2014-69622)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-190415(P2015-190415A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100123733
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 大樹
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100170346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 望
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 淳
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−003899(JP,A)
【文献】 特開平09−014194(JP,A)
【文献】 特開平10−002299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/28
F04D 29/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の周りに回転し、同回転軸を中心として円形に開口する空気吸込口を有するシュラウドと、前記空気吸込口の周方向に沿って配列された複数の羽根とを備えた羽根車と、
前記空気吸込口の周縁部の内周面との間に所定の間隙を設けた状態で前記空気吸込口の側から前記周縁部に一端部が嵌め込まれて配置されたベルマウスと、
を具備し、
前記シュラウドの、前記周縁部の内周面に周方向に間隔をあけて設けられ、前記周縁部の吸入側の端から前記回転軸の軸方向の前記空気吸込口と反対方向に向かうにつれて前記羽根車の回転方向に傾く複数の第1の溝、前記ベルマウスの前記一端部の外周面に周方向に間隔をあけて設けられ、前記一端部の端から前記回転軸の軸方向の前記一端部と反対方向に向かうにつれて前記羽根車の回転方向に傾く複数の第2の溝、が設けられた遠心送風機。
【請求項2】
請求項1に記載の遠心送風機であって、
前記複数の第1の溝は、前記シュラウドの内周面に不均一な間隔で設けられ、
前記複数の第2の溝は、前記ベルマウスの外周面に不均一な間隔で設けられた、
遠心送風機。
【請求項3】
請求項1に記載の遠心送風機であって、
前記複数の第1の溝は、前記周縁部の吸入側の端から各々不均一な長さで設けられ、
前記複数の第2の溝は、前記一端部の端から各々不均一な長さで設けられた、
遠心送風機。
【請求項4】
請求項1に記載の遠心送風機であって、
前記第1の溝の長さと前記第2の溝の長さとが異なる長さである、
遠心送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、空気調和機の室内機などに用いられる遠心送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の室内機に用いられる遠心送風機では、ハブとシュラウドと複数の羽根からなる羽根車とベルマウスとを有する。シュラウドは、ハブに対して羽根車を回転させるファンモータの回転軸の軸方向に対向配置され、ハブとシュラウドの間に所定の間隔をあけて羽根が配列される。そして、シュラウドのファンモータの回転軸の軸方向における前方(ハブと反対側)にベルマウスが配置される。
【0003】
このような遠心送風機において、ファンモータの駆動によって羽根車が回転すると、室内機の吸込口から室内機の内部に空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、主流として、ベルマウスによってシュラウドの空気吸込口に案内される。
【0004】
主流の空気は、ハブとシュラウドとの間に周方向に沿って配列された複数の羽根により半径方向の外側に送られ、その大半は室内熱交換器において冷媒と熱交換を行った後室内機の吹出口を通じて室内に吹き出されるが、一部は室内機内においてシュラウドの外周面側の空間を通ってベルマウスに向かって環流し、ベルマウスとシュラウドとの隙間を通じて再吸入される。
【0005】
このような再吸入が生じると、その分だけ室内に吹き出される空気量が減少し、ファンの送風効率が低下する。
【0006】
上述した問題を解決する方法として、ベルマウスとシュラウドとの間隙を小さくすることによって再吸入される空気量を減らす方法が考えられるが、ベルマウスとシュラウドとの干渉を避けるために、ベルマウスとシュラウドとの間隙は少なくとも10mm程度は確保する必要があるため、これ以上間隙を小さくすることができない。また、ベルマウスとシュラウドとの間隙を小さくすると、その間隙を通過する空気の速度が速くなって空気の流れに起因する騒音が発生するおそれもある。
【0007】
一方、空気の再吸入によるファンの送風効率の低下を抑制する方法として、ベルマウスの外周面に周方向に沿って所定の間隔で複数の壁部を設け、これらの壁部を、間隙を流れる空気に対する抵抗とすることで、再吸入される空気量を低減させる方法が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−36444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ベルマウスに複数の壁部を設けるなど、遠心送風機に構造体を追加する方法は、遠心送風機の構造が複雑となって製造コストの増大や重量の増大を招くなどの問題がある。
【0010】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、ベルマウスとシュラウドとの隙間からの空気の再吸入量を、簡単な構造で低減することのできる遠心送風機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る遠心送風機は、ファンモータの回転軸を中心として円形に開口する空気吸込口を有するシュラウドと空気吸込口の周方向に沿って配列された複数の羽根とを備えた羽根車と、空気吸込口の周縁部の内周面との間に間隙を設けた状態で空気吸込口の側から周縁部に一端部が嵌め込まれて配置されたベルマウスとを具備し、シュラウドの周縁部の内周面に周方向に間隔をあけて設けられ、周縁部の吸入側の端から回転軸の軸方向の空気吸込口と反対方向に向かうにつれて羽根車の回転方向に傾く複数の第1の溝、あるいは、ベルマウスの一端部の外周面に周方向に間隔をあけて設けられ、一端部の端から回転軸の軸方向の一端部と反対方向に向かうにつれて羽根車の回転方向の逆方向に傾く複数の第2の溝のうち、少なくとも一方が設けられたものである。
【0012】
本発明の一形態に係る遠心送風機において、複数の第1の溝は、シュラウドの内周面に不均一な間隔で設けられ、複数の第2の溝は、ベルマウスの外周面に不均一な間隔で設けられたものであってもよい。
【0013】
また、本発明の一形態に係る遠心送風機において、複数の第1の溝は、周縁部の吸入側の端から各々不均一な長さで設けられ、複数の第2の溝は、一端部の端から各々不均一な長さで設けられたものであってもよい。
【0014】
さらには、本発明の一形態に係る遠心送風機において、第1の溝の長さと第2の溝の長さとが異なる長さであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、ベルマウスとシュラウドとの間隙からの空気の再吸入量を、簡単な構造で低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る遠心送風機10及びこれを備えた室内機1の構成を示す縦断面図である。
図2図1の室内機1の遠心送風機10におけるベルマウスとシュラウドの側面断面図である。
図3図1の遠心送風機10の構成からベルマウスとシュラウドを取り出して示す斜視図である。
図4図3のベルマウス16とシュラウド19とを分解して示す斜視図である。
図5A】シュラウド19の第1の溝19fおよびベルマウス16の第2の溝16cの形状を示す平面図である。
図5B図5AのC−C'断面図である。
図5C図5AのD−D'断面図である。
図6】シュラウド19の第1の溝19fおよびベルマウス16の第2の溝16cの形状の変形例を示す図である。
図7】シュラウド19の複数の第1の溝19fの変形例を示す斜視図である。
図8】シュラウド19の複数の第1の溝19fの別の変形例を示す斜視図である。
図9】ベルマウス16の変形例を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る遠心送風機10及びこれを備えた室内機1の構成を示す縦断面図である。
【0018】
同図に示すように、この室内機1は、天井埋込型のカセット室内機である。この室内機1は、天井35に設けられた開口に埋め込まれる略直方体の筐体21と、筐体21の下部に取り付けられた化粧パネル22とを備えている。
【0019】
化粧パネル22は、矩形状の吸込グリル23と、この吸込グリル23の各辺に沿って設けられた複数の吹出口24とを有している。
【0020】
筐体21内には、遠心送風機10、ファンモータ11、熱交換器12、ドレンパン13、エアフィルタ14などが配置されている。
【0021】
遠心送風機10は、羽根車15とベルマウス16とを含む。
【0022】
羽根車15は、ハブ17と、シュラウド19と、複数の羽根18とを含む。
【0023】
シュラウド19は、ハブ17に対してファンモータ11の回転軸11aの軸方向Aの前側Fに対向配置されている。シュラウド19は、回転軸11aを中心として円形に開口する空気吸込口19aを有している。シュラウド19の外径は、後側Rに向かうにつれて大きくなっている。
【0024】
複数の羽根18は、ハブ17とシュラウド19との間に空気吸込口19aの周方向に沿って所定の間隔をあけて配列されている。各羽根18の前側Fの端部はシュラウド19の内面に接合されている。各羽根18の後側Rの端部はハブ17に接合されている。各羽根18は、ハブ17の半径方向に対して回転方向の反対向き(後ろ向き)に傾斜した後ろ向き羽根である。
【0025】
ベルマウス16は、シュラウド19に対して軸方向Aの前側Fに対向配置されている。
ベルマウス16は、前後方向に貫通する貫通口16aを有している。ベルマウス16は、外径が後側Rに向かうにつれて小さくなる湾曲形状を有している。
【0026】
ベルマウス16の後側Rの一部は、シュラウド19の空気吸込口19aの周縁部19eとの間に所定の間隙25を設けた状態で空気吸込口19aからシュラウド19内に挿入されている。これにより、ベルマウス16は、貫通口16aを通じて後側Rに向かって吸い込まれる空気をシュラウド19の空気吸込口19aに案内する。
【0027】
[ベルマウス16とシュラウド19との間隙25からの空気の再吸入の抑制について]
図2に示すように、ベルマウス16によってシュラウド19の空気吸込口19aに案内される主流Sの空気は、空気吸込口19aの近傍においては、主にシュラウド19の回転軸11aの軸方向Aに沿った方向に流れるが、一部は室内機1内においてシュラウド19の外周面側の空間を通ってベルマウス16に向かって環流(符号M)し、シュラウド19の周縁部19eとベルマウス16との間隙25からシュラウド19の内面側に再吸入される。このような空気の再吸入が生じると、その分だけ室内に吹き出される空気量が減少し、ファンの送風効率が低下する
【0028】
本実施形態の遠心送風機10では、シュラウド19の内面側への空気の再吸入を低減するために、次のような構成を採用した。
【0029】
図3は、図1の室内機1の構成から遠心送風機10の構成を取り出して示す斜視図である。
図4は、図3の遠心送風機10をベルマウス16と、シュラウド19を有する羽根車15とに分解して示す斜視図であり、ベルマウス16は静止している状態を、シュラウド19は回転している状態を、それぞれ示している。
【0030】
図4に示すように、シュラウド19のベルマウス16と嵌め合わされた周縁部19eの内周面には、周縁部19eの吸入側の端19gから軸方向Aの後側Rに向かうにつれて羽根車15の回転方向Kに傾く複数の第1の溝19fが設けられている。これら複数の第1の溝19fは、例えば、周方向に等間隔で配置されている。複数の第1の溝19fの形状、深さ、間隔は全て同じであってよい。
【0031】
また、ベルマウス16のシュラウド19と嵌め合わされる嵌合部16bの外周面には、嵌合部16bの端16dから軸方向Aの前側Fに向かうにつれて羽根車15の回転方向Kに傾く複数の第2の溝16cが設けられている。これら複数の第2の溝16cは、例えば、周方向に等間隔に配置されている。複数の第2の溝16cの形状、深さ、間隔は全て同じであってよい。
【0032】
ここで、図3に示す環流Mによって間隙25に侵入してくる空気の流れは、図4に示す空気の流れ33のように、回転している羽根車15から見て軸方向Aの後側Rに向かうにつれて回転方向Kと逆向きに傾く。これに対して、シュラウド19の周縁部19eの内周面には、上述したように、周縁部19eの吸入側の端19gから軸方向Aの後側Rに向かうにつれて回転方向Kに傾く複数の第1の溝19fが設けられているので、上記の間隙25に浸入してきた空気の流れ33は、第1の溝19fによって、浸入時とは逆方向つまり軸方向Aの前側Fの方へ導かれる。これにより、間隙25からシュラウド19内へ再吸入される空気量が低減される。
【0033】
一方、ベルマウス16は静止しているので、ベルマウス16から見て、上記の間隙25に浸入してくる空気の流れ36は、軸方向Aの後側Rに向かうにつれて回転方向Kに傾く。これに対して、ベルマウス16の嵌合部16bの外周面には、上述したように、嵌合部16bの端16dから軸方向Aの前側Fに向かうにつれて回転方向Kに傾く複数の第2の溝16cが設けられているので、上記の間隙25に浸入してきた空気の流れ36は、第2の溝16cによって、浸入時とは逆方向つまり軸方向Aの前側Fの方へに導かれる。このことによっても、間隙25からシュラウド19内へ再吸入される空気量が低減される。
【0034】
なお、本発明は、シュラウド19の第1の溝19f、あるいはベルマウス16の第2の溝16cのいずれかによって、間隙25からシュラウド19内へ再吸入される空気量が低減される効果が得られることは言うまでもない。
【0035】
図5Aはシュラウド19の第1の溝19f、およびベルマウス16の第2の溝16cの平面図、図5B図5AのC−C'断面図、図5C図5AのD−D'断面図である。これらの図に示すように、シュラウド19の第1の溝19f、およびベルマウス16の第2の溝16cは、角が曲率面41となっていることが望ましい。これにより、第1の溝19fおよび第2の溝16cに対して流入出する空気の流れが円滑になり、再吸入量を低減する効果を高めることができる。
【0036】
また、図6に示すように、シュラウド19の第1の溝19f、およびベルマウス16の第2の溝16cは、回転軸11aの軸方向Aに沿った方向A'に対して所定の傾斜角度で設けてもよいが、端16d、19gから軸方向Aに沿って離間するにつれて傾斜角度が変化するように設けてもよい。
【0037】
また、図7に示すように、シュラウド19の複数の第1の溝19fは、不均一に長さを変えてもよい。さらに、図8に示すように、シュラウド19の複数の第1の溝19fは、周方向に不均一な間隔で配置してもよい。これらにより、第1の溝19fによる風切り音が同調(共鳴)により大きくなるのを回避できる。これは、ベルマウス16の第2の溝16cについても同様である。
【0038】
さらに、シュラウド19の厚さ寸法に比較してベルマウス16の厚さ寸法が小さく、ベルマウス16に十分な深さの第2の溝16cを設けることが難しい場合には、図9に示すように、シュラウド19とベルマウス16との間の必要な間隙25の幅Wを確保できる範囲で、ベルマウス16の内面に第2の溝16cに代えて突起部34を、例えば成形や板状部材の取り付けなどにより設けてもよい。この突起部34は、第2の溝16cに相当する部分を突出させるように設ければよい。あるいは、第2の溝16cに相当する部分が凹むように設けてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…遠心送風機
11…ファンモータ
11a…回転軸
15…羽根車
16…ベルマウス
16c…第2の溝
16a…貫通口
16b…嵌合部
16d…嵌合部の端
19…シュラウド
19a…空気吸込口
19e…周縁部
19g…周縁部の吸入側の端
19f…第1の溝
25…間隙
34…突起部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9