特許第6281406号(P6281406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281406
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】厚み検出装置及び媒体取引装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/164 20160101AFI20180208BHJP
   G07D 7/00 20160101ALI20180208BHJP
   B65H 7/02 20060101ALI20180208BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   G07D7/164
   G07D7/00 D
   B65H7/02
   B65H5/06 D
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-99684(P2014-99684)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-215845(P2015-215845A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082740
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 恵基
(72)【発明者】
【氏名】栗原 仁世
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−084274(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/042407(WO,A1)
【文献】 特開2009−003746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/00, 7/16−7/164
B65H 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送路を搬送される紙葉状の媒体に当接すると共に、当該媒体の搬送方向と直交する幅方向に沿った基準軸を中心に回転する基準ローラと、
前記搬送路を挟んで前記基準ローラに対向して配され前記基準ローラに接触することにより前記基準軸と略平行なシャフトを中心に回転する検知ローラと、
前記検知ローラを前記基準ローラに離接可能に支持すると共に、前記媒体の前記搬送方向及び前記幅方向に直交する厚み方向に沿って前記検知ローラを前記基準ローラの中心に向けて付勢する付勢部材と、
前記検知ローラが前記基準ローラに離接する方向に関する前記検知ローラの変位量を検出する変位センサと
前記検知ローラの前記搬送方向への移動を規制し、前記厚み方向への移動を許容する移動規制部材と
を有する厚み検出装置。
【請求項2】
前記変位センサは、前記検知ローラの外周面の変位量を検出する
請求項に記載の厚み検出装置。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記検知ローラの前記シャフトに当接し前記検知ローラを支持するプレートと、当該プレートにおける前記シャフトに対し前記搬送方向の上流側及び下流側の両側に設けられ当該プレートを付勢する弾性部材とにより構成される
請求項に記載の厚み検出装置。
【請求項4】
前記付勢部材は、前記プレートにおける、前記シャフトから前記搬送方向の上流側及び下流側に対し等間隔となる位置に設けられた弾性部材により前記プレートを付勢する
請求項に記載の厚み検出装置。
【請求項5】
前記移動規制部材は、前記プレートにおける前記搬送方向への移動を規制し、前記厚み方向への移動を許容する
請求項に記載の厚み検出装置。
【請求項6】
前記プレートは、前記幅方向に突出するピンが形成されており、
前記移動規制部材は、前記プレートにおける前記ピンが前記厚み方向に摺動し且つ前記搬送方向には移動しない溝である
請求項に記載の厚み検出装置。
【請求項7】
前記移動規制部材は、前記プレートと、前記プレートに対する前記搬送方向の上流側及び下流側に設けられたガイドとの間に配された弾性部材である
請求項に記載の厚み検出装置。
【請求項8】
前記移動規制部材は、前記シャフトにおける前記搬送方向への移動を規制し、前記厚み方向への移動を許容する
請求項に記載の厚み検出装置。
【請求項9】
前記移動規制部材は、前記シャフトが前記厚み方向に摺動し且つ前記搬送方向には移動しない溝である
請求項に記載の厚み検出装置。
【請求項10】
前記付勢部材は、前記基準ローラの中心に対し前記厚み方向に沿った方向から前記検知ローラの前記シャフトを付勢する
請求項に記載の厚み検出装置。
【請求項11】
前記付勢部材は、トーションバースプリングである
請求項1に記載の厚み検出装置。
【請求項12】
紙葉状の媒体に関する操作を受け付ける操作部と、
前記媒体を搬送する搬送部と、
所定の搬送路を搬送される前記媒体に当接すると共に、当該媒体の搬送方向と直交する幅方向に沿った基準軸を中心に回転する基準ローラと、
前記搬送路を挟んで前記基準ローラに対向して配され前記基準ローラに接触することにより前記基準軸と略平行なシャフトを中心に回転する検知ローラと、
前記検知ローラを前記基準ローラに離接可能に支持すると共に、前記媒体の前記搬送方向及び前記幅方向に直交する厚み方向に沿って前記検知ローラを前記基準ローラの中心に向けて付勢する付勢部材と、
前記検知ローラが前記基準ローラに離接する方向に関する前記検知ローラの変位量を検出する変位センサと
前記検知ローラの前記搬送方向への移動を規制し、前記厚み方向への移動を許容する移動規制部材と
を有する媒体取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は厚み検出装置及び媒体取引装置に関し、例えば紙幣等の媒体を投入して所望の取引を行う現金自動取引装置(ATM:Automatic Teller Machine)等に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関や店舗等で使用される現金自動取引装置等においては、顧客との取引内容に応じて、例えば顧客に紙幣や硬貨等の現金を入金させ、また顧客へ現金を出金するようになされている。現金自動取引装置としては、例えば顧客との間で紙幣の授受を行う紙幣入出金部と、投入された紙幣の金種及び真偽を鑑別する鑑別部と、投入された紙幣を一時的に保留する一時保留部と、紙幣を搬送する搬送部と、金種毎に紙幣を格納する紙幣収納庫とを有するものがある。
【0003】
ところで紙幣のなかには、一部が折り曲げられ、或いは粘着テープ等の異物が貼り付けられる等により、厚さが異なるものがある。そこで鑑別部として、光学センサや磁気センサ等により各種特性を検出すると共に厚みを検出した上で、それぞれの検出結果を総合して紙幣の種類や真偽等を判別するようになされたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
例えば図20に示すように、従来の鑑別部では、厚み検出部560により紙幣の厚みを検出するようになされている。この厚み検出部560は、互いに同様に構成された所定個数の厚み検出ユニット562が左右方向に並べて配置された構成となっている。
【0005】
この厚み検出ユニット562は、前後方向に沿う搬送路32の下側に基準ローラ軸64を中心に回転する基準ローラ56が配置され、その上側に検知ローラシャフト68を中心に回転する厚み検知ローラ58と、当該検知ローラシャフト68を介して当該厚み検知ローラ58を支持するブラケット90とが配置されている。ブラケット90は、厚み検知ローラ58から前方へ離隔した位置に設けられたブラケット回動軸91を中心に回動し得るようになされており、またその上側において厚み検知ローラ58から後方へ離隔した位置に下端が取り付けられ上端が当接部材94に取り付けられたスプリング92により、下方向へ付勢されている。さらにブラケット90の上方には、当該ブラケット90における平坦な上端面である検出面90Aの変位量を検出する変位センサ59が配置されている。
【0006】
この鑑別部は、搬送される紙幣を厚み検出ユニット562の基準ローラ56と厚み検知ローラ58との間に挟み込み、当該紙幣の厚さに応じて厚み検知ローラ58が上下方向に変位する際に、変位センサ59によりブラケット90の検出面90Aの変位量を厚み検知ローラ58の変位量として検出する。そして鑑別部は、厚み検知ローラ58の変位量を紙幣の厚さとして検出し、検出した厚さを予め記憶している厚さの基準値と比較することにより、折れ曲がりや異物の貼り付け等の有無を判断する。
【0007】
この厚み検出部560は、ブラケット回動軸91を中心に回動するブラケット90の検出面90Aの変位を検出するため、当該ブラケット回動軸91は、厚み検知ローラ58から離隔した位置に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−62160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように従来の厚み検出部560は、ブラケット回動軸91を中心に回動するブラケット90の検出面90Aの変位を検出するため、ブラケット90は厚み検知ローラ58の変位量に応じて上下方向へ移動すると共に前後方向へも移動してしまうこととなり、正確な厚みが検出できず、信頼性が低下してしまうおそれがあった。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、信頼性を高め得る厚み検出装置及び媒体取引装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明の厚み検出装置においては、所定の搬送路を搬送される紙葉状の媒体に当接すると共に、当該媒体の搬送方向と直交する幅方向に沿った基準軸を中心に回転する基準ローラと、搬送路を挟んで基準ローラに対向して配され基準ローラに接触することにより基準軸と略平行なシャフトを中心に回転する検知ローラと、検知ローラを基準ローラに離接可能に支持すると共に、媒体の搬送方向及び幅方向に直交する厚み方向に沿って検知ローラを基準ローラの中心に向けて付勢する付勢部材と、検知ローラが基準ローラに離接する方向に関する検知ローラの変位量を検出する変位センサと、検知ローラの搬送方向への移動を規制し、厚み方向への移動を許容する移動規制部材とを設けるようにした。
【0012】
この厚み検出装置は、検知ローラの搬送方向への移動を抑制し、厚み方向へのみ移動する検知ローラの変位量を検出でき、正確な厚みを検出できる。
【0013】
また本発明の媒体取引装置においては、紙葉状の媒体に関する操作を受け付ける操作部と、媒体を搬送する搬送部と、所定の搬送路を搬送される媒体に当接すると共に、当該媒体の搬送方向と直交する幅方向に沿った基準軸を中心に回転する基準ローラと、搬送路を挟んで基準ローラに対向して配され基準ローラに接触することにより基準軸と略平行なシャフトを中心に回転する検知ローラと、検知ローラを基準ローラに離接可能に支持すると共に、媒体の搬送方向及び幅方向に直交する厚み方向に沿って検知ローラを基準ローラの中心に向けて付勢する付勢部材と、検知ローラが基準ローラに離接する方向に関する検知ローラの変位量を検出する変位センサと、検知ローラの搬送方向への移動を規制し、厚み方向への移動を許容する移動規制部材とを設けるようにした。
【0014】
この媒体取引装置は、検知ローラの搬送方向への移動を抑制し、厚み方向へのみ移動する検知ローラの変位量を検出でき、正確な厚みを検出できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検知ローラの搬送方向への移動を抑制し、厚み方向へのみ移動する検知ローラの変位量を検出でき、正確な厚みを検出できる。かくして本発明は、信頼性を高め得る厚み検出装置及び媒体取引装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】現金自動取引装置の構成を示す斜視図である。
図2】紙幣入出金機の構成を示す左側面図である。
図3】鑑別部の構成を示す左側面図である。
図4】第1の実施の形態による厚み検出部の構成(1)を示す左側面図である。
図5】第1の実施の形態による厚み検出部の構成(2)を示す正面図である。
図6】第1の実施の形態による厚み検出部の構成(3)を示す平面図である。
図7】第1の実施の形態による厚み検出部の構成(4)を示し、図5におけるX−X矢視断面図である。
図8】第1の実施の形態による厚み検出部の構成(5)を示し、図6におけるY−Y矢視断面図である。
図9】第1の実施の形態による紙幣搬送時の厚み検出部の構成(1)を示す左側面図である。
図10】第1の実施の形態による紙幣搬送時の厚み検出部の構成(2)を示す正面図である。
図11】第1の実施の形態による紙幣搬送時の厚み検出部の構成(3)を示す正面図である。
図12】第2の実施の形態による厚み検出部の構成(1)を示す平面図である。
図13】第2の実施の形態による厚み検出部の構成(2)を示し、図12におけるY−Y矢視断面図である。
図14】第3の実施の形態による厚み検出部の構成(1)を示す平面図である。
図15】第3の実施の形態による厚み検出部の構成(2)を示し、図14におけるY−Y矢視断面図である。
図16】第4の実施の形態による厚み検出部の構成(1)を示す平面図である。
図17】第4の実施の形態による厚み検出部の構成(2)を示し、図16におけるY−Y矢視断面図である。
図18】他の実施の形態による厚み検出部の構成を示す平面図である。
図19】他の実施の形態による紙幣搬送時の厚み検出部の構成を示す正面図である。
図20】従来の厚み検出部の構成を示す左側面図である。
図21】従来の紙幣搬送時の厚み検出部の構成を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0018】
[1.第1の実施の形態]
[1−1.現金自動取引装置の構成]
図1に外観を示すように、現金自動取引装置1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関等に設置され、顧客との間で入金取引や出金取引等の現金に関する取引を行うようになされている。筐体2は、その前側に顧客が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に接客部3が設けられている。
【0019】
接客部3は、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7及びレシート発行口8が設けられており、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行う。カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入又は排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。入出金口5は、顧客が入金する紙幣が投入されると共に、顧客へ出金する紙幣が排出される部分である。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉鎖するようになされている。操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチパネルとが一体化されている。テンキー7は、「0」〜「9」の数字等の入力を受け付ける物理的なキーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。因みにレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
【0020】
筐体2内には、現金自動取引装置1全体を統括制御する主制御部9や、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部(図示せず)から所定のプログラムを読み出して実行することにより、各部を制御して入金取引や出金取引等の種々の処理を行う。
【0021】
以下では、現金自動取引装置1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した顧客から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0022】
[1−2.紙幣入出金機の内部構成]
紙幣入出金機10は、図2に示すように、制御部12が各部(紙幣入出金部16、搬送部24、鑑別部18、一時保留部20、紙幣収納庫26、リジェクト庫28及び取忘れ回収庫22)を統括制御する。制御部12は、図示しないCPUを中心に構成されており、ROM、RAM、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部から所定のプログラムを読み出して実行することにより、各部を制御して入金取引や出金取引等の種々の処理を行う。
【0023】
紙幣入出金機10の内部には、上側に紙幣入出金部16、紙幣の金種や真偽を判定する鑑別部18、入金紙幣等を一時的に保留する一時保留部20及び取引時に顧客が紙幣入出金部16から取り忘れた紙幣を回収して格納する取忘れ回収庫22等が設けられている。
【0024】
紙幣入出金部16は、顧客から投入された紙幣を1枚ずつ分離し搬送部24へ繰り出す。搬送部24は、図示しないローラやベルト等により、図中太線で示す搬送路に沿って長方形の紙幣を短手方向に搬送する。搬送部24は、鑑別部18を前後方向に挿通させるように紙幣を搬送し、当該鑑別部18の後側と一時保留部20、取忘れ回収庫22及び紙幣入出金部16とをそれぞれ接続している。また搬送部24は、鑑別部18の前側と紙幣入出金部16、紙幣収納庫26及びリジェクト庫28とを接続している。
【0025】
鑑別部18は、その内部で紙幣を搬送しながら、光学素子や磁気検出素子等を用いて当該紙幣の金種及び真偽、並びに損傷の程度等(正損)を鑑別し、その鑑別結果を制御部12へ通知する。これに応じて制御部12は、取得した鑑別結果に基づいて当該紙幣の搬送先を決定する。
【0026】
一時保留部20は、入金時に顧客が紙幣入出金部16へ投入した紙幣を一時的に保留し、鑑別部18で入金可能と鑑別された正常紙幣を入金が確定するまで一時的に保留する一方、入金不可と鑑別されたリジェクト紙幣を、所謂後入れ先出しで紙幣入出金部16へ排出する。
【0027】
また紙幣入出金機10の内部には、下側に金種別の紙幣収納庫26と、鑑別部18において破損した紙幣(いわゆる損券)と鑑別された紙幣及び5千券や2千券等の還流されない金種の紙幣を格納するリジェクト庫28とが設けられている。紙幣収納庫26は、収納排出機構により、搬送部24から搬送されてきた紙幣を取り込んで収納すると共に、収納されている紙幣を排出して搬送部24へ供給するようになされている。
【0028】
かかる構成において現金自動取引装置1は、鑑別部18による紙幣の鑑別結果等をもとに主制御部9及び制御部12が各部を制御して、紙幣の入金処理、収納処理及び出金処理を行う。
【0029】
すなわち現金自動取引装置1は、入金取引時、利用者により操作表示部6を介して入金取引が選択され、さらに入出金口5に紙幣が投入されると、投入された紙幣を紙幣入出金部16から1枚ずつ鑑別部18に搬送する。ここで現金自動取引装置1は、鑑別部18の鑑別結果に基づき入金可能と判定された紙幣については一時保留部20に搬送して一時的に収納する。一方で現金自動取引装置1は、入金に適さないと判定された紙幣については紙幣入出金部16へ戻して、シャッタを開くことで利用者に返却する。その後利用者により入金金額が確定されると、現金自動取引装置1は、一時保留部20に収納している紙幣を鑑別部18に搬送して鑑別結果を得る。ここで現金自動取引装置1は、鑑別部18の鑑別結果に基づき収納可能と判定された紙幣については、その金種に応じて各紙幣収納庫26へ搬送して保管する。一方で現金自動取引装置1は、収納に適さないと判定された紙幣については、リジェクト庫28へ搬送する。
【0030】
一方出金取引時、現金自動取引装置1は、利用者により操作表示部6を介して出金取引が選択され出金金額が入力されると、出金金額に応じて必要な金種毎の紙幣枚数を認識し、この金種毎の紙幣枚数に応じて各紙幣収納庫26から紙幣を繰り出して鑑別部18に搬送して鑑別結果の識別結果を得る。ここで現金自動取引装置1は、鑑別部18の鑑別結果に基づき出金可能と判定された紙幣については紙幣入出金部16に搬送する。一方で現金自動取引装置1は、出金に適さないと判定された紙幣については一時保留部20に搬送して一時的に収納する。そして出金金額分の紙幣が紙幣入出金部16へ集積されると、現金自動取引装置1は、シャッタを開ける。これにより紙幣入出金部16内に集積されている紙幣の受け取りが可能な状態となり、利用者がこの紙幣を受け取る。その後現金自動取引装置1は、一時保留部20に収納している紙幣をリジェクト庫28へと搬送して保管する。
【0031】
[1−3.鑑別部の構成]
鑑別部18は、図3に示すように、直方体形状の鑑別部筐体30内において、ほぼ水平な搬送路32に沿って紙幣を前方向又は後方向へ走行させながら、制御部12の制御に基づき当該紙幣の鑑別処理を行う。因みに図3は、説明の都合上、鑑別部筐体30の左側板等を省略して内部の各部品を模式的に表している。
【0032】
搬送路32は、上側搬送ガイド34U及び下側搬送ガイド34Dと、駆動ローラ38、40及び42と、従動ローラ44、46及び48と、基準ローラ56と、厚み検知ローラ58と、磁気ギャップローラ54とにより構成されている。駆動ローラ38、40及び42と磁気ギャップローラ54とは、ゴム系の弾性部材により構成されており、紙幣に対し高い摩擦力を有している。従動ローラ44、46及び48と厚み検知ローラ58とは、金属、樹脂、ゴム系弾性部材、又はこれらを組み合わせたものにより構成されている。また基準ローラ56は、所定の金属材料により形成されている。上側搬送ガイド34U及び下側搬送ガイド34Dは、紙幣BLの紙面と対向する平面状の上側搬送面34AU及び下側搬送面34ADをそれぞれ有しており、互いの搬送面の間に紙幣の搬送路32を形成している。また鑑別部18には、鑑別部筐体30内を後側から前側へ向かうように、磁気検出部50、光学検出部53及び厚み検出部60といった各モジュールが順次配置されている。
【0033】
下側搬送ガイド34Dには、駆動ローラ38、40及び42と基準ローラ56と磁気ギャップローラ54とが、中心軸を左右方向に、すなわち紙幣BLの搬送方向(面方向)と直交する方向に向けるよう、回転可能に取り付けられている。また駆動ローラ38、40及び42と基準ローラ56と磁気ギャップローラ54とは、下側搬送ガイド34Dに対し下側搬送面34ADに穿設された孔部からその周側面の一部を搬送路32側に露出させている。さらに駆動ローラ38、40及び42と基準ローラ56と磁気ギャップローラ54は、図示しないアクチュエータから駆動力が伝達されることにより、能動的に回転する。
【0034】
一方、上側搬送ガイド34Uにおける駆動ローラ38、40及び42と基準ローラ56と対向する箇所には、従動ローラ44、46及び48と厚み検知ローラ58とが、中心軸を左右方向に向けて回転可能に取り付けられている。また従動ローラ44、46及び48と厚み検知ローラ58とは、図示しない圧縮ばねによりそれぞれ駆動ローラ38、40及び42と基準ローラ56とに押し付けられている。このため従動ローラ44、46及び48と厚み検知ローラ58とは、搬送路32に沿って紙幣BLが搬送されてきた場合、当該紙幣BLをそれぞれ駆動ローラ38、40及び42と基準ローラ56とに押し付ける。駆動ローラ38、40及び42と磁気ギャップローラ54と基準ローラ56とは、回転力を紙幣BLに伝達することにより、当該紙幣BLを搬送路32に沿って前後方向へ搬送する。
【0035】
磁気検出部50は、搬送路32の上側に磁気センサ52が配置されている。紙幣BLは、局所的に磁性を帯びた磁気インクを用いて印刷されている。そこで磁気検出部50は、磁気センサ52により、搬送路32を搬送される紙幣BLの磁気を検出し、その検出結果を制御部12へ送出する。これに応じて制御部12は、磁気センサ52から取得した紙幣BLの磁気検出結果を用いて当該紙幣の真偽や金種等を判定する。
【0036】
光学検出部53は、上側に位置する上側反射透過センサユニット53Uと下側に位置する下側反射透過センサユニット53Dとにより構成されている。光学検出部53は、紙幣BLの反射パターン及び透過パターンを検出し、その検出結果を制御部12へ送出する。これに応じて制御部12は、光学検出部53から取得した紙幣BLの反射パターン及び透過パターンを用いて当該紙幣BLの真偽や金種、或いは損傷の程度(正損)等を判定する。
【0037】
厚み検出部60は、厚み検知ローラ58が基準ローラ56へ当接するときの位置を基準とし、厚み検知ローラ58の相対的な変位量を変位センサ59により検出して、その検出結果を制御部12へ送出する。これに応じて制御部12は、この検出結果と予め記憶している厚さの基準値とを比較することにより、変位量が紙幣1枚分又は複数枚分の何れに相当するかを判定し、折れ曲がりや異物の貼り付け等の有無を判断する。
【0038】
[1−4.厚み検出部の構成]
図4乃至図8に示すように、厚み検出部60は、互いに同様に構成された複数個の厚み検出ユニット62が左右方向に沿って、すなわち紙幣の搬送方向と直交する幅方向である左右方向に沿って、一列に並べて配置された構成となっている。これらの厚み検出ユニット62同士の間には、図6に示すように上側搬送ガイド34Uにリブ70が形成されており、厚み検出ユニット62同士の間に紙幣が入り込むことを防止している。
【0039】
厚み検出ユニット62は、搬送路32の下側に配置された基準ローラ56と、当該搬送路32の上側に配置された厚み検知ローラ58(58R及び58L)とを中心に構成されている。
【0040】
基準ローラ56は、所定の金属材料でなり、厚み検知ローラ58R及び58Lに対向して円筒形状に形成され、細長い円柱状の基準ローラ軸64により左右方向に貫通されている。この基準ローラ軸64は、箱型の厚み検出部筐体66(図3)により図示しないベアリングを介して回転自在に支持されている。また基準ローラ軸64は、図示しない駆動手段により回転駆動され、基準ローラ56と一体に回転する。
【0041】
基準ローラ56の上部には、左右方向に所定の間隔を空けて、厚み検知ローラ58R及び58Lが検知ローラシャフト68に貫通されている。厚み検知ローラ58(58R及び58L)は、円筒形状でなり、いわゆるボールベアリングと同様に構成されており、検知ローラシャフト68に固定された内輪に対し外輪を円滑に回転させる。
【0042】
厚み検知ローラ58Rと厚み検知ローラ58Lとの間には、板状のプレート69が検知ローラシャフト68の上側の外周面に当接している。これにより厚み検知ローラ58R及び58Lは、間隔を保ちつつ互いに接触することなく滑らかに回転する。
【0043】
プレート69は、側面視において前後方向の長さが厚み検知ローラ58よりも大きい長方形状であり、前後方向の中央において、検知ローラシャフト68を押圧する略V字形状に切り欠かれたシャフト押付部69Aが形成されている。またプレート69の天板における前端及び後端には、それぞれスプリング74F及び74B(以下ではまとめてスプリング74とも呼ぶ)の下端が嵌め込まれるスプリング嵌込部69BF及び69BB(以下ではまとめてスプリング嵌込部69Bとも呼ぶ)が形成されている。このスプリング嵌込部69BF及び69BBは、検知ローラシャフト68の中心から互いに同じ間隔を空けた位置に形成されている。またプレート69の前端部分に設けられた孔部には円筒形状の位置拘束用ピン76が左右方向に沿って貫通しており、当該プレート69の左右側面からそれぞれ左方向及び右方向に突出している。この位置拘束用ピン76は、上側搬送ガイド34Uに形成された溝であるプレート移動規制溝72に摺動可能に嵌め込まれている。なお図4及び図5においてプレート移動規制溝72は図示せず省略している。
【0044】
プレート移動規制溝72は、位置拘束用ピン76の直径とほぼ同じ間隔を空けて前後に対向する前壁面72F及び後壁面72Bと、位置拘束用ピン76の左端部から右端部までの長さよりも僅かに長い間隔を空けて左右に対向する左壁面72L及び右壁面72Rとが上下方向に延設されている。これによりプレート69は、前後方向へ移動する力を受けても、位置拘束用ピン76が前壁面72F及び後壁面72Bに当接しているため、前後方向へは移動しない。一方プレート69は、正面視において時計回り又は反時計回りに回動する力を受けると、位置拘束用ピン76が右壁面72R及び左壁面72Lと僅かに隙間を空けているため、時計回り又は反時計回りに回動する。またプレート69は、上下方向へ移動する力を受けると、プレート移動規制溝72は位置拘束用ピン76よりも上下方向に延設されているため、上下方向へ移動する。
【0045】
このようにプレート69は、プレート移動規制溝72及び位置拘束用ピン76により、前後方向へは移動しないよう規制されるものの、左右方向へは僅かに移動可能(すなわち正面視において回動可能)にされると共に、上下方向へも移動可能となっている。これにより厚み検知ローラ58は、検知ローラシャフト68がプレート69に当接しているため、前後方向へは移動しないよう規制されるものの、左右方向へは僅かに移動可能(すなわち正面視において回動可能)にされると共に、変位センサ59と基準ローラ軸64の中心とを結んだ仮想的な線上を、検知ローラシャフト68の中心が通るように上下方向へも移動可能(すなわち変位可能)となっている。
【0046】
プレート69の天板におけるスプリング嵌込部69Bと厚み検出部筐体66(図3)の天板部分との間には、コイルばねでなるスプリング74が自然状態から圧縮された状態で取り付けられている。スプリング74は、自然状態への復元力が作用することにより、厚み検出部筐体66に対しプレート69の天板を下方向へ押し付ける。これにより、厚み検知ローラ58の検知ローラシャフト68の中心に向かって、前後両端から等荷重が掛かることとなる。プレート69は、前後両端から等荷重が掛かると共に位置拘束用ピン76がプレート移動規制溝72に嵌め込まれているため、当該プレート69の天板が水平を保ったまま、すなわち側面視においてプレート69が回動しないよう、上下移動する。
【0047】
このようにスプリング74は、プレート69を介し、紙幣の搬送方向及び幅方向に直交する厚み方向(上下方向)に沿って厚み検知ローラ58の検知ローラシャフト68を付勢する。検知ローラシャフト68は、プレート69のシャフト押付部69Aにより基準ローラ軸64の中心に向かって押し付けられている。これにより厚み検知ローラ58は、下方向へ、すなわち基準ローラ56へ向けて押し付けられる。
【0048】
また厚み検出部筐体66内における厚み検知ローラ58R及び58Lの上方には、それぞれ渦電流式変位センサである変位センサ59R及び59L(以下ではまとめて変位センサ59とも呼ぶ)が設けられている。変位センサ59は、厚み検知ローラ58が基準ローラ56へ当接するときの位置を基準とし、厚み検知ローラ58の外周面58Aのうちの上側の曲面における所定箇所の表面積の相対的な変位量を検出して、その検出結果を制御部12へ送出する。
【0049】
制御部12は、この検出結果と予め記憶している厚さの基準値とを比較することにより、変位量が紙幣1枚分又は複数枚分の何れに相当するかを判定し、折れ曲がりや異物の貼り付け等の有無を判断する。
【0050】
かかる構成により厚み検出部60では、搬送路32に何も搬送されていない場合、スプリング74の作用により厚み検知ローラ58を基準ローラ56に当接させる。これにより厚み検知ローラ58は、基準ローラ56から回転駆動力を伝えられ、当該基準ローラ56の回転に合わせて回転する。このとき厚み検出部60は、変位センサ59により厚み検知ローラ58が基準となる高さに位置していることを検出し、その検出結果を制御部12へ送出する。その一方で厚み検出部60では、搬送路32に紙幣BLが搬送されている場合、図9及び図10に示すように、厚み検知ローラ58と基準ローラ56との間に当該紙幣BLを挟持するため、当該紙幣BLの厚さに応じて厚み検知ローラ58が上方向へ変位し、検知ローラシャフト68がプレート69を上方へ押し上げる。このとき厚み検出部60は、変位センサ59により厚み検知ローラ58の変位量を検出し、その検出結果を制御部12へ送出する。
【0051】
また、図11に示すようにテープTが貼り付けられた紙幣BLが搬送され、例えば厚み検知ローラ58Lのみが当該テープTに片乗りした場合、厚み検知ローラ58は正面視においてプレート移動規制溝72に対し回動可能に構成されているため、厚み検知ローラ58、検知ローラシャフト68及びプレート69は共にテープTの厚みの分だけ傾くこととなり、厚み検知ローラ58はテープTの厚みに追従することができる。このため厚み検出部60は、変位センサ59L及び59Rそれぞれが検出した外周面58Aの変位に基づくことにより、片乗り状態であってもテープTの厚みを正確に取得することができる。
【0052】
[1−5.効果]
以上の構成において、厚み検出部60は、厚み検知ローラ58の検知ローラシャフト68の中心に向かって紙幣の搬送方向の上流側及び下流側の両側から等荷重を掛けることにより厚み検知ローラ58を基準ローラ56に押し付けると共に、厚み検知ローラ58の前後方向への移動は規制しつつ、左右方向及び上下方向への移動は許容するようにした。これにより厚み検出部60は、厚み検知ローラ58の前後方向への移動が除かれた上下方向への変位のみを検出することができ、紙幣の厚みを安定的に検出することができる。
【0053】
ここで、従来の厚み検出部560(図20)においては、変位センサ59が検出する検出面90Aの変位は、厚み検知ローラ58からブラケット90を介し、ブラケット回動軸91を支点として増幅されたものであるため、紙幣の表面に貼られたテープ等の微小な厚みが、厚み検知ローラ58とブラケット90との間のガタや、ブラケット回動軸91のガタ等によって打ち消されてしまい、紙幣の厚みを正確に検知できない可能性があった。また一方、従来の厚み検出部560においては、小さなゴミ等による厚み検知ローラ58の変位がブラケット回動軸91を支点として増幅されてしまい、大きな変位として誤検知してしまい、紙幣の厚みを正確に検知できない可能性があった。
【0054】
さらに従来の厚み検出部560は、図21(A)に示すように、前方から、すなわち検知ローラシャフト68に対するブラケット回動軸91側から厚み検出部560に対し紙幣が搬送された場合、厚み検知ローラ58と基準ローラ56との間に突入した紙幣から、厚み検知ローラ58を押し上げる力が検知ローラシャフト68に伝達する。この力はブラケット90を介してブラケット回動軸91に伝達し、当該力に対し、反力F1がブラケット回動軸91に発生する。この反力F1は、前方を向くと共に、厚み検知ローラ58を上方へ押し上げる方向である上方を向いているため、厚み検知ローラ58は持ち上がり易くなる。
【0055】
一方従来の厚み検出部560は、図21(B)に示すように、後方から、すなわち検知ローラシャフト68に対するブラケット回動軸91側とは逆側から厚み検出部560に対し紙幣が搬送された場合、厚み検知ローラ58と基準ローラ56との間に突入した紙幣から、厚み検知ローラ58を押し上げる力が検知ローラシャフト68、ブラケット90を介してブラケット回動軸91に伝達し、当該力に対し、反力F1よりも大きい反力F2がブラケット回動軸91に発生する。この反力F2は、後方を向くと共に、厚み検知ローラ58を下方へ押し付ける方向である下方を向いているため、厚み検知ローラ58は持ち上がり難くなり、検出面90Aの変位が不安定になり易い。
【0056】
このため厚み検出部560は、検知ローラシャフト68に対しブラケット回動軸91側とは逆側から紙幣が搬送された場合、検知ローラシャフト68に対しブラケット回動軸91側から紙幣が搬送された場合と比べ、厚み検出結果が安定しないと共に、再現性が不安定になるおそれがあった。このように従来の厚み検出部560は、紙幣の走行方向によって異なる方向及び大きさの反力が発生し、厚み検出結果の安定性が異なってしまう。
【0057】
これに対し厚み検出部60は、従来の厚み検出部560のような、ブラケット回動軸91を中心に回動するブラケット90の検出面90Aの変位を検出する構成ではなくなるため、紙幣走行方向による厚み検出結果の変動を抑制することができる。また厚み検出部60は、紙幣の表面に貼られたテープ等の微小な厚みが打ち消されてしまったり、小さなゴミ等による厚み検知ローラ58の変位が増幅されて大きな変位として誤検知してしまったりすることを抑制できる。
【0058】
また、厚み検知ローラ58の外周面58Aは湾曲しているため、仮に厚み検知ローラ58が前後方向に移動してしまうと、厚み検出結果は不安定になってしまう。このため、厚み検知ローラ58が前後方向に移動してしまう従来の厚み検出部560においては、平坦面である検出面90Aを変位センサ59が検知することにより、厚み検知ローラ58が前後方向に移動してしまっても厚み検出結果が不安定にならないようにしていた。しかしながらその場合、厚み検知ローラ58及び検知ローラシャフト68に追従してブラケット90が動くため、変位センサ59が検出する変位は精度が低くなってしまっていた。
【0059】
これに対し厚み検出部60は、厚み検知ローラ58が前後方向に移動せず、上下方向にしか移動しないため、厚み検知ローラ58の外周面58Aの変位を安定的に検知すると共に、ブラケット90の検出面90Aを検出する場合よりもさらに高精度に厚みを検出できる。
【0060】
また、従来の厚み検出部560において紙幣の厚みを正確に検知するためには、厚み検知ローラ58やブラケット回動軸91の構成部品のガタを小さくする必要があるため、部品数を増加させたり高精度に組み上げたりする必要があり、コストが高くなってしまっていた。
【0061】
これに対し厚み検出部560は、ブラケット90の検出面90Aではなく厚み検知ローラ58の外周面58Aの変位を検知するため、高精度が要求される箇所をなくすことができ、構造を簡素化し、部品数や製造工程を低減し、低コストとすることができる。
【0062】
以上の構成によれば厚み検出部60は、搬送路32を搬送される紙葉状の媒体としての紙幣に当接すると共に、当該紙幣の搬送方向と直交する幅方向に沿った基準軸としての基準ローラ軸64を中心に回転する基準ローラ56と、搬送路32を挟んで基準ローラ56に対向して配され基準ローラ56に接触することにより基準ローラ軸64と略平行な検知ローラシャフト68を中心に回転する厚み検知ローラ58と、厚み検知ローラ58を基準ローラ56に離接可能に支持すると共に、厚み検知ローラ58を基準ローラ56の中心に向けて付勢するプレート69及びスプリング74と、厚み検知ローラ58が基準ローラ56に離接する方向に関する厚み検知ローラ58の変位量を検出する変位センサ59とを設けるようにした。これにより厚み検出部60は、厚み検知ローラ58の搬送方向への移動を抑制し、厚み方向へのみ移動する厚み検知ローラ58の変位量を検出でき、正確な厚みを検出できる。
【0063】
[2.第2の実施の形態]
[2−1.紙幣入出金機及び鑑別部の構成]
図1及び図2に示すように、第2の実施の形態による現金自動取引装置101の紙幣入出金機110は、第1の実施の形態による現金自動取引装置1の紙幣入出金機10と比べて、鑑別部118が鑑別部18と異なっているものの、それ以外は同様に構成されている。図3に示すように、第2の実施の形態による鑑別部118は、第1の実施の形態による鑑別部18と比べて、厚み検出部160が厚み検出部60と異なっているものの、それ以外は同様に構成されている。
【0064】
[2−2.厚み検出部の構成]
図12及び図13に示すように、厚み検出部160の厚み検出ユニット162は、厚み検出部60の厚み検出ユニット62と比べて、位置拘束用ピン76が省略されている。また、プレート169の前端面及び後端面と上側搬送ガイド134Uとの間には、それぞれ例えばシリコンにより構成されたシーリング材78が充填されている。
【0065】
かかる構成において、プレート169と上側搬送ガイド134Uとの間には弾性部材としてのシーリング材78が充填されているため、プレート169は前後方向へは移動しないよう規制されるものの、上下方向へはシーリング材78の弾性力により僅かに移動可能となる。これにより厚み検知ローラ58は、前後方向へは移動しないよう規制されるものの、上下方向へは移動可能(すなわち変位可能)となる。
【0066】
このように厚み検出部160は、厚み検出部60と比べてプレート69の位置拘束用ピン76を省略し部材を簡素化できる。その他第2の実施の形態による鑑別部118は、第1の実施の形態による鑑別部18とほぼ同様の作用効果を奏する。
【0067】
[3.第3の実施の形態]
[3−1.紙幣入出金機及び鑑別部の構成]
図1及び図2に示すように、第3の実施の形態による現金自動取引装置201の紙幣入出金機210は、第1の実施の形態による現金自動取引装置1の紙幣入出金機10と比べて、鑑別部218が鑑別部18と異なっているものの、それ以外は同様に構成されている。図3に示すように、第3の実施の形態による鑑別部218は、第1の実施の形態による鑑別部18と比べて、厚み検出部260が厚み検出部60と異なっているものの、それ以外は同様に構成されている。
【0068】
[3−2.厚み検出部の構成]
図14及び図15に示すように、厚み検出部260の厚み検出ユニット262は、厚み検出部60の厚み検出ユニット62と比べて、位置拘束用ピン76が省略されていると共に、上側搬送ガイド34Uにシャフト移動規制溝86が形成されている。
【0069】
プレート169の左側における、上側搬送ガイド34Uにおいて検知ローラシャフト68と対向する箇所には、略U字形状に切り欠かれたシャフト移動規制溝86が形成されている。検知ローラシャフト68は、シャフト移動規制溝86に摺動可能に嵌め込まれている。シャフト移動規制溝86は、検知ローラシャフト68の直径とほぼ同じ間隔を空けて前後に対向する前壁面86F及び後壁面86Bが形成されていると共に、上方が開口している。
【0070】
このため厚み検知ローラ58は、前後方向へ移動する力を受けても、検知ローラシャフト68が前壁面86F及び後壁面86Bに当接しているため、前後方向へは移動しない。また厚み検知ローラ58は、上下方向へ移動する力を受けると、シャフト移動規制溝86の上方が開口しているため、当該シャフト移動規制溝86から検知ローラシャフト68が外れない程度の範囲において上下方向へ移動する。これにより厚み検知ローラ58は、前後方向へは移動しないよう規制されるものの、上下方向へは移動可能(すなわち変位可能)となる。
【0071】
このように厚み検出部160は、厚み検出部60と比べてプレート69の位置拘束用ピン76を省略し部材を簡素化できる。その他第4の実施の形態による鑑別部318は、第1の実施の形態による鑑別部18とほぼ同様の作用効果を奏する。
【0072】
[4.第4の実施の形態]
[4−1.紙幣入出金機及び鑑別部の構成]
図1及び図2に示すように、第4の実施の形態による現金自動取引装置301の紙幣入出金機310は、第1の実施の形態による現金自動取引装置1の紙幣入出金機10と比べて、鑑別部318が鑑別部18と異なっているものの、それ以外は同様に構成されている。図3に示すように、第4の実施の形態による鑑別部318は、第1の実施の形態による鑑別部18と比べて、厚み検出部360が厚み検出部60と異なっているものの、それ以外は同様に構成されている。
【0073】
[4−2.厚み検出部の構成]
図16及び図17に示すように、厚み検出部360の厚み検出ユニット362は、厚み検出部60の厚み検出ユニット62と比べて、プレート69が省略され、スプリング80が追加されている。
【0074】
スプリング80は、トーションバースプリングであり、1本の金属棒の左右方向の中央部分である巻装部80Aが、厚み検知ローラ58の後方において上側搬送ガイド34U(図示せず)に固定され左右方向に延びるスプリング軸82に巻装されている。巻装部80Aの左端からはトーションバースプリングの一部分である前腕部80Fが前方向へ、巻装部80Aの右端からはトーションバースプリングの一部分である後腕部80Bが上方向へそれぞれ延びている。スプリング80は、前腕部80Fの前端部が自然状態よりも上方向に位置する状態で、後腕部80Bの上端部が自然状態よりも前方向に位置する状態で、それぞれ検知ローラシャフト68と、上側搬送ガイド34U(図示せず)に形成されたスプリング当接部材84とに当接し、巻装部80Aがスプリング軸82に固定されている。
【0075】
このためスプリング80は、自然状態に戻ろうとする反発力により、前腕部80Fは検知ローラシャフト68を基準ローラ軸64の中心に向かって下方へ押し付ける。これにより厚み検知ローラ58は、下方向へ、すなわち基準ローラ56へ向けて押し付けられる。
【0076】
このように厚み検出部360は、従来の厚み検出部560のような、ブラケット回動軸91を中心に回動するブラケット90の検出面90Aの変位を検出する構成ではなくなり、厚み検知ローラ58が基準ローラ軸64の中心に向かってのみ押し付けられるため、紙幣の通過に伴う厚み検知ローラ58の前後方向への移動がなくなり、安定的に厚みを検出できる。また厚み検出部360は、厚み検出部60と比べてプレート69及びスプリング74を省略し部材を簡素化できる。その他第4の実施の形態による鑑別部318は、第1の実施の形態による鑑別部18とほぼ同様の作用効果を奏する。
【0077】
[5.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、位置拘束用ピン76の左端部から右端部までの長さよりも僅かに長い間隔を空けて対向する左壁面72L及び右壁面72Rをプレート移動規制溝72に形成することにより、片乗り状態において、厚み検知ローラ58、検知ローラシャフト68及びプレート69が共にテープTの厚みの分だけ傾く場合について述べた。本発明はこれに限らず、厚み検知ローラ及び検知ローラシャフトが、正面視においてプレートに対し回動可能に構成されていても良い。
【0078】
具体的には図18及び図19に示す厚み検出部460の厚み検出ユニット462のように、検知ローラシャフト468には、プレート69の右側及び左側において、外径が大きくなる段差形状である段差部88(88R及び88L)が形成されており、この段差部88の間にプレート69が配置される。段差部88Rと段差部88Lとの間の距離である段差間距離d1は、プレート69の左右の幅であるプレート幅d2よりも僅かに長く形成されているため、プレート69と段差部88との間には僅かに隙間が形成されている。これにより厚み検知ローラ58及び検知ローラシャフト468は、正面視においてプレート69に対し回動可能に構成される。
【0079】
ここで図19に示すようにテープTが貼り付けられた紙幣BLが搬送され、例えば厚み検知ローラ58Lのみが当該テープTに片乗りした場合、厚み検知ローラ58及び検知ローラシャフト468は、正面視においてプレート69に対し回動可能に構成されているため、厚み検知ローラ58及び検知ローラシャフト468は共にテープTの厚みの分だけ傾き、厚み検知ローラ58はテープTの厚みに追従することができる。このため厚み検出部460は、変位センサ59L及び59Rそれぞれが検出した外周面58Aの変位に基づくことにより、片乗り状態であってもテープTの厚みを正確に取得することができる。
【0080】
さらに上述した実施の形態においては、厚み検知ローラ58の外周面58Aの変位を変位センサ59で検出するようにした。本発明はこれに限らず、例えばプレート69の天板の変位を変位センサ59で検出しても良い。この場合、従来の厚み検出部560のブラケット90の検出面90Aと比べて、プレート69の方が上下移動が安定しているため、厚み検知ローラ58及び検知ローラシャフト68に追従して動くプレート69の変位を検出するとしても、従来の厚み検出部560よりも精度良く厚みを検出できる。
【0081】
さらに上述した実施の形態においては、プレート69の前端部分に設けられた孔部に位置拘束用ピン76を挿入する場合について述べた。本発明はこれに限らず、円筒形状の位置拘束用ピンをプレート69の左右側面からそれぞれ左右方向に突出させても良い。また、上側搬送ガイド34Uから位置拘束用ピンを突出させ、当該位置拘束用ピンが嵌り込むプレート移動規制溝をプレート69に穿設しても良い。
【0082】
さらに上述した実施の形態においては、プレート69と検知ローラシャフト68とを別部品として構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、プレート69と検知ローラシャフト68とを一体成形等により一部品として構成しても良い。
【0083】
さらに上述した第4の実施の形態において、検知ローラシャフト68の前後方向への移動を規制する部材を追加しても良い。
【0084】
さらに上述した第4の実施の形態においては、トーションバースプリングでなるスプリング80により厚み検知ローラ58を付勢する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば板ばね等、種々の付勢手段により付勢して良い。
【0085】
さらに上述した第1乃至第3の実施の形態においては、プレート69の天板における、前端及び後端に設けられたスプリング嵌込部69BF及び69BBそれぞれにスプリング74の一端が嵌め込まれる場合について述べた。本発明はこれに限らず、プレート69の天板における、前後方向の中央部に設けられた1つのスプリング嵌込部に1つのスプリングの一端が嵌め込まれ、プレート69を介し厚み検知ローラ58を基準ローラ56に向けて押し付けても良い。
【0086】
さらに上述した実施の形態においては、プレート69が天板の水平を保ったまま上下移動する場合について述べた。本発明はこれに限らず、プレート69が天板の水平を保たずに上下移動しても良い。この場合においても変位センサ59は、厚み検知ローラ58の外周面58Aの変位を検出するため、たとえプレート69の天板の水平が保たれなかったとしても、紙幣の厚みを正確に検出できる。
【0087】
さらに上述した実施の形態においては、渦電流式変位センサを変位センサ59として用いる場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば静電容量式変位センサ、光学式変位センサ又は接触式変位センサ等、種々の方式の変位センサを用いても良い。
【0088】
さらに上述した実施の形態においては、ほぼ水平な搬送路32に沿って紙幣を前後方向へ走行させる鑑別部18、118、218及び318において本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、ほぼ鉛直な搬送路に沿って紙幣を上下方向へ走行させる等、種々の方向に沿って紙幣を走行させる鑑別部において本発明を適用しても良い。
【0089】
さらに上述した実施の形態においては、現金を取引する現金自動取引装置1、101、201及び301において、媒体としての紙幣を鑑別する鑑別部において本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば債権、証書、商品券、金券や入場券等のような薄い紙状の媒体を鑑別する種々の装置に適用しても良い。
【0090】
また、例えば紙幣を入出する紙幣入出金機や紙幣を所定枚数毎に施封する施封小束支払機等、紙幣や硬貨の取引に関する種々の処理を行う複数種類の装置の組み合わせにより構成された現金処理装置に本発明を適用してもよい。
【0091】
さらに上述した実施の形態においては、入金取引及び出金取引を行う現金自動取引装置に本発明を適用する場合について述べたが、入金取引又は出金取引の何れか一方のみを行う装置に本発明を適用しても良い。
【0092】
さらに上述した実施の形態においては、基準ローラとしての基準ローラ56と、検知ローラとしての厚み検知ローラ58と、付勢部材としてのプレート69及びスプリング74、又はスプリング80と、変位センサとしての変位センサ59とによって、厚み検出装置としての厚み検出部60、160、260又は360を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる基準ローラと、検知ローラと、付勢部材と、変位センサとによって厚み検出装置を構成しても良い。
【0093】
さらに上述した実施の形態においては、操作部としての接客部3と、搬送部としての搬送路32と、基準ローラとしての基準ローラ56と、検知ローラとしての厚み検知ローラ58と、付勢部材としてのプレート69及びスプリング74、又はスプリング80と、変位センサとしての変位センサ59とによって、媒体取引装置としての紙幣入出金機10、110、210及び310を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる操作部と、搬送部と、基準ローラと、検知ローラと、付勢部材と、変位センサとによって媒体取引装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、紙幣等の紙状の媒体を鑑別する種々の装置でも利用できる。
【符号の説明】
【0095】
1、101、201、301……現金自動取引装置、2……筐体、3……接客部、4……カード入出口、5……入出金口、6……操作表示部、7……テンキー、8……レシート発行口、9……主制御部、10、110、210……紙幣入出金機、12……制御部、16……紙幣入出金部、18、118、218、318……鑑別部、20……一時保留部、22……取忘れ回収庫、24……搬送部、26……紙幣収納庫、28……リジェクト庫、30……鑑別部筐体、32……搬送路、34U、134U……上側搬送ガイド、34D……下側搬送ガイド、34AU……上側搬送面、34AD……下側搬送面、38、40、42……駆動ローラ、44、46、48……従動ローラ、50……磁気検出部、52……磁気センサ、53……光学検出部、53U……上側反射透過センサユニット、53D……下側反射透過センサユニット、54……磁気ギャップローラ、56……基準ローラ、58……厚み検知ローラ、58A……外周面、59……変位センサ、60、160、260、360、460、560……厚み検出部、62、162、262、362、462、562……厚み検出ユニット、64……基準ローラ軸、66……厚み検出部筐体、68、168、468……検知ローラシャフト、69、169……プレート、69A……シャフト押付部、69B……スプリング嵌込部、70……リブ、72……プレート移動規制溝、72F……前壁面、72B……後壁面、72L……左壁面、72R……右壁面、74……スプリング、76……位置拘束用ピン、78……シーリング材、80……スプリング、80A……巻装部、80F……前腕部、80B……後腕部、82……スプリング軸、84……スプリング当接部材、86……シャフト移動規制溝、86F……前壁面、86B……後壁面、88……段差部、90……ブラケット、91……ブラケット回動軸、90A……検出面、92……スプリング、94……当接部材、F1、F2……反力、d1……段差間距離、d2……プレート幅。
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