(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281441
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】プロセスガスクロマトグラフ、および昇温槽の温度調整方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/54 20060101AFI20180208BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
G01N30/54 F
G01N30/54 A
G01N30/86 T
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-164228(P2014-164228)
(22)【出願日】2014年8月12日
(65)【公開番号】特開2016-40526(P2016-40526A)
(43)【公開日】2016年3月24日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 健一
【審査官】
高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−145560(JP,U)
【文献】
特開平6−102266(JP,A)
【文献】
特開平7−103960(JP,A)
【文献】
特開平8−086781(JP,A)
【文献】
特開平3−018756(JP,A)
【文献】
米国特許第4994096(US,A)
【文献】
特開2012−078192(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/090759(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
G01N 35/00−37/00
B01D 15/00−15/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析サイクル毎に所定の温調パターンに基づいて昇温槽の昇温と冷却を行なって試料の成分分析を行うプロセスガスクロマトグラフであって、
前記昇温槽の温度を測定するセンサ部と、
前記温調パターンに基づく昇温制御の終了を契機に経過時間を測定するタイマ部と、
前記タイマ部が、次の分析サイクルの開始時間を検出したときに、前記センサ部で測定された前記昇温槽の温度が前記次の分析サイクルの実行に必要な初期制御温度に到達していなかった場合に、アラーム報知後、前記次の分析サイクルの実行を所定の許容待ち時間だけ遅延させるように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするプロセスガスクロマトグラフ。
【請求項2】
前記制御部は、
前記温調パターンに基づく昇温の制御終了後に前記冷却が開始され、前記センサ部が前記次の分析サイクルに必要な初期制御温度を超えて冷却された冷却完了を検出すると再度温調制御を開始させ、前記タイマ部が、再度の温調制御により前記初期制御温度に至る安定待ち期間中に前記次の分析サイクルの開始時間を検出した場合に、前記安定待ち期間が終了するまでの第1の許容待ち時間だけ前記次の分析サイクルの実行を遅延させるように制御することを特徴とする請求項1記載のプロセスガスクロマトグラフ。
【請求項3】
前記制御部は、
前記温調パターンに基づく昇温制御終了後に前記冷却が開始され、前記タイマ部が冷却期間中に前記次の分析サイクルの開始時間を検出した場合に、前記センサ部が前記次の分析サイクルに必要な初期制御温度を超えて冷却された冷却完了を検出して再度温調を開始させるまでの期間と、再度の温調により前記初期制御温度に至る安定待ち期間とを合計して得られる第2の許容待ち時間まで、前記次の分析サイクルの実行を遅延させるように制御することを特徴とする請求項1記載のプロセスガスクロマトグラフ。
【請求項4】
分析サイクル毎に所定の温調パターンに基づいて昇温槽の昇温と冷却を行なって試料の成分分析を行うプロセスガスクロマトグラフにおける前記昇温槽の温度調整方法であって、
前記昇温槽の温度を測定する第1のステップと、
前記温調パターンに基づく昇温制御の終了を契機に経過時間を測定する第2のステップと、
前記第2のステップで次の分析サイクルの開始時間を検出したときに、前記第1のステップで測定された前記昇温槽の温度が前記次の分析サイクルの実行に必要な初期制御温度に到達していなかった場合に、アラーム報知後、前記次の分析サイクルの実行を所定の許容待ち時間だけ遅延させるように制御する第3のステップと、
を有することを特徴とする昇温槽の温度調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスガスクロマトグラフ、および昇温槽の温度調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフは、多成分の混合気体および揮発性の液体を単一成分毎に分離して検出するガス分析計であり、測定範囲が広く、干渉がない多成分を同時測定できることから、ガス分析を代表する分析計になっている。この利点を生かし、プロセスガスクロマトグラフは、石油化学、石油精製、金属精錬、無機化学等の産業分野で幅広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に、上記したカラム恒温槽の迅速冷却を目的とし、分析構造の大幅な向上をはかったプロセスガスクロマトグラフの技術が開示されている。恒温槽に限らず、昇温槽においても分析後の槽内の温度を分析前の低い温度に迅速に冷却することは分析のスループットを改善する意味で重要である。
【0004】
上記したプロセスガスクロマトグラフにおける昇温槽の分析サイクル毎の昇温パターンの一例が従来例として
図5に示されている。
図5は、横軸に時間軸を、縦軸に温度を目盛って分析サイクル(周期)毎の昇温槽の温度変化パターン(OT01)を示す。
図5によれば、プロセスガスクロマトグラフは、温度調整による昇温パターン終了後(t01)、昇温槽は急速冷却を開始し、昇温槽の温度を、次の流路の分析サイクルにおける次流路初期制御温度T01まで急激に下降させている。このとき、昇温槽の温度は、次流路の分析開始時間t02までに、次流路初期制御温度T01になっていなければならない。
【0005】
次流路分析開始時間t02において、昇温槽の温度が次流路初期制御温度T01まで下降していなければ、A01で示すポイントでアラームを発生させ、分析を強制停止する。一方、昇温槽の温度が次流路初期制御温度T01まで到達していれば次流路の分析サイクルの実行を行う。
【0006】
図6にそのための温度調整(以下、単に温調という)プログラムの処理手順が示されている。
図6によれば、あらかじめ規定された昇温パターンによる温度制御が終了後(ステップS201“YES”)、経過時間を確認し(ステップS202)次流路分析開始時間になっていなければ(ステップS203“NO”)、再び経過時間を確認する(ステップS202)。次流路分析開始時間まで経過したら(ステップS203“YES”)、再度昇温槽の温度を確認し(ステップS204)、昇温槽温度と次流路初期温度との差が一定範囲であれば(ステップS205“YES”)、次流路の分析を開始する(ステップS206)。一方、その差が一定範囲内でなければ(ステップS205“NO”)、アラームを発生させ(ステップS207)、分析を強制停止する(ステップS208)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−086781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来の温調プログラムによれば、次流路の分析開始時間t02までに次流路の分析実行に必要な初期制御温度に到達しなかった場合、プロセスガスクロマトグラフは分析を強制終了するため、オペレータは、冷却終了時間t03まで待ち、再度、分析開始のための操作を行う必要がある。
【0009】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、次の分析サイクルの開始時間までに次の分析サイクルの実行に必要な初期制御温度に到達していなかった場合に、分析を強制停止させることなく、分析のスループットの向上をはかったプロセスガスクロマトグラフ、および昇温槽の温度調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために本発明は、分析サイクル毎に所定の温調パターンに基づいて昇温槽の昇温と冷却を行なって試料の成分分析を行うプロセスガスクロマトグラフであって、前記昇温槽の温度を測定するセンサ部と、前記温調パターンに基づく昇温制御の終了を契機に経過時間を測定するタイマ部と、前記タイマ部が、次の分析サイクルの開始時間を検出したときに、前記センサ部で測定された前記昇温槽の温度が前記次の分析サイクルの実行に必要な初期制御温度に到達していなかった場合に、アラーム報知後、前記次の分析サイクルの実行を所定の許容待ち時間だけ遅延させるように制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明において、前記制御部は、前記温調パターンに基づく昇温制御の終了後に前記冷却が開始され、前記センサ部が前記次の分析サイクルに必要な初期制御温度を超えて冷却された冷却完了を検出すると、再度温調制御を開始させ、前記タイマ部が、再度の温調制御により前記初期制御温度に至る安定待ち期間中に前記次の分析サイクルの開始時間を検出した場合に、前記安定待ち期間が終了するまでの第1の許容待ち時間だけ前記次の分析サイクルの実行を遅延させるように制御することを特徴とする。
【0012】
本発明において、前記制御部は、前記温調パターンに基づく昇温制御終了後に前記冷却が開始され、前記タイマ部が冷却期間中に前記次の分析サイクルの開始時間を検出した場合に、前記センサ部が前記次の分析サイクルに必要な初期制御温度を超えて冷却された冷却完了を検出して再度温調を開始させるまでの期間と、再度の温調により前記初期制御温度に至る安定待ち期間とを合計して得られる第2の許容待ち時間まで、前記次の分析サイクルの実行を遅延させるように制御することを特徴とする。
【0013】
本発明は、分析サイクル毎に所定の温度調整パターンに基づいて昇温槽の昇温と冷却を行なって試料の成分分析を行うプロセスガスクロマトグラフにおける前記昇温槽の温度調整方法であって、前記昇温槽の温度を測定する第1のステップと、前記温度調整パターンに基づく昇温終了を契機に経過時間を測定する第2のステップと、前記第2のステップで次の分析サイクルの開始時間を検出したときに、前記第1のステップで測定された前記昇温槽の温度が前記次の分析サイクルの実行に必要な初期制御温度に到達していなかった場合に、アラーム報知後、前記次の分析サイクルの実行を所定の許容待ち時間だけ遅延させるように制御する第3のステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、次の分析サイクルの開始時間までに次の分析サイクルの実行に必要な初期制御温度に到達していなかった場合に、分析を強制停止させることなく、分析のスループットの向上をはかったプロセスガスクロマトグラフ、および昇温槽の温度調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るプロセスガスクロマトグラフの外観構造を示す図である。
【
図2】
図1の電気回路部の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るプロセスガスクロマトグラフの動作を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施の形態に係るプロセスガスクロマトグラフにおける昇温槽の分析サイクル毎の昇温パターンの一例を示す図である。
【
図5】従来のガスクロマトグラフにおける昇温槽の分析サイクル毎の昇温パターンの一例を示す図である。
【
図6】従来の温調プログラムによる温調制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0017】
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態に係るプロセスガスクロマトグラフ1の外観構造を示す図であり、各装置が収納された容器の前面の扉を開放した状態を示している。
【0018】
図1によれば、符号10は電気回路部を示し、例えば、マイクロプロセッサが搭載され、信号増幅、波形処理、後述する温調制御、及び外部との通信処理などが行われる。電気回路部10の内部構成等詳細は
図2を用いて後述する。
【0019】
符号11はターミナル部を示し、ガスクロマトグラフ本体と外部との配線による接続部分である。符号12は恒温槽を示し、槽内の温度は、定値設定されており、温度調整は、PID(Proportional Integral Derivative)制御により設定温度±0.03度程度に制御されている。槽内には、各種検出器、カラム、切換えバルブが配置されている。
【0020】
符号13は昇温槽を示し、槽内は、広い温度範囲にわたり温調プログラムで制御されている。エアバスと攪拌ファン方式で槽内温度は均一に維持されている。符号14は、流量調節弁を示し、キャリアガス用の減圧弁、圧力計およびパージ空気用減圧弁を内蔵している。
【0021】
符号15はアナライザサンプリング部を示す。アナライザサンプリング部15には、フィルタ、サンプリング減圧弁、流量計、流路切換え弁等が収納されている。
【0022】
電気回路部10の内部構成が
図2に示されている。
図2によれば、電気回路部10は、分析実行制御部100と、温調制御部101と、センサ部102と、タイマ部103と、報知部104と、を含み構成される。
【0023】
センサ部102は、外部接続される熱電対等の温度センサにより測定される昇温槽13の温度情報を取得して分析実行制御部100へ出力する。タイマ部103は、時間監視を行い、温調制御部101による温調パターンに基づく昇温制御終了を契機に経過時間を測定して分析実行制御部100へ出力する。
【0024】
分析実行制御部100は、タイマ部103が、次の分析サイクルの開始時間を検出したときに、センサ部102で測定された昇温槽13の温度が次の分析サイクルの実行に必要な初期制御温度に到達していなかった場合に、報知部104を制御してアラーム報知する。そして、次の分析サイクルの実行を所定の許容待ち時間だけ遅延させるように制御する。なお、報知部104は、アラームを報知する他に、メッセージを表示するLCD(Liquid Crystal Display)等を含むことも可能である。
【0025】
このため、分析実行制御部100と温調制御部101は、協働して機能することにより、「タイマ部が、次の分析サイクルの開始時間を検出したときに、センサ部で測定された昇温槽の温度が次の分析サイクルの実行に必要な初期制御温度に到達していなかった場合に、アラーム報知後、次の分析サイクルの実行を所定の許容待ち時間だけ遅延させるように制御する制御部」として動作する。
【0026】
なお、分析実行制御部100は、温調制御部101による温調パターンに基づく温調制御終了後に冷却が開始され、センサ部102が次の分析サイクルに必要な初期制御温度を超えて冷却された冷却完了を検出すると再度温調を開始させ、タイマ部103が、再度の温調により初期制御温度に至る安定待ち期間中に次の分析サイクルの開始時間を検出した場合に、安定待ち期間が終了するまでの第1の許容待ち時間(後述する
図4(a)の時間Ta)だけ次の分析サイクルの実行を遅延させるように制御してもよい。
【0027】
また、分析実行制御部100は、温調制御部101による温調パターンに基づく昇温制御終了後に冷却が開始され、タイマ部103が、冷却期間中に次の分析サイクルの開始時間を検出した場合に、センサ部102が次の分析サイクルに必要な初期制御温度を超えて冷却された冷却完了を検出して再度温調を開始させるまでの期間と、再度の温調により初期制御温度に至る安定待ち期間とを合計して得られる第2の許容待ち時間(後述する
図4(b)の時間Tb+Tc)まで、次の分析サイクルの実行を遅延させるように制御してもよい。
【0028】
(実施形態の動作)
以下、
図3のフローチャートを参照しながら本実施形態に係るプロセスガスクロマトグラフ1の動作説明を行う。
図3によれば、温調制御部101による昇温パターンの制御が終了後(ステップS101“YES”)、分析実行制御部100は、タイマ部103による経過時間を確認する(ステップS102)。ここで、次流路の分析開始時間(次の分析サイクル)に到達していなければ(ステップS103“NO”)、分析実行制御部100は、再びタイマ部103により監視される経過時間を確認する(ステップS102)。
【0029】
タイマ部103が次流路分析開始時間を検出すると(ステップS103“YES”)、分析実行制御部100は、センサ部102による昇温槽13の温度を確認し(ステップS104)、昇温槽13の温度と次流路の初期制御温度との差が一定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS105)。分析実行制御部100は、その差が一定範囲内であれば(ステップS105“YES”)、そのまま次流路の分析を開始し(ステップS106)、一定範囲外であれば(ステップS105“NO”)、報知部104を駆動してアラームを発生させる(ステップS107)。
【0030】
続いて分析実行制御部100は、センサ部102により測定される昇温槽13の温度を確認し(ステップS108)、昇温槽13の温度と次流路の初期制御温度との差が一定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS109)。分析実行制御部100は、その差が一定範囲内であれば(ステップS109“YES”)、その時点から次流路の分析を開始し(ステップS106)、一定範囲外であれば(ステップS109“NO”)、タイマ部103により監視される経過時間を確認する(ステップS110)。
【0031】
そして、分析実行制御部100は、経過時間が1分析サイクル(周期)に相当する時間の最大許容待ち時間監視を行う(ステップS111)。ここで、1分析サイクル分の時間が経過していなければ(ステップS111“NO”)、再び昇温槽13の温度を確認する処理を実行し(ステップS108)、1分析サイクル分の時間の最大許容待ち時間が経過していれば(ステップS111“YES”)、報知部104を駆動してアラームを発生させ(ステップS112)、分析を強制停止させる制御を行う(ステップS113)。
【0032】
(実施形態の効果)
以上説明のように、本実施形態に係るプロセスガスクロマトグラフ1によれば、次の分析サイクルの開始時間を検出したときに、測定された昇温槽13の温度が次の分析サイクルの実行に必要な初期制御温度に到達していなかった場合に、アラーム報知後、次の分析サイクルの実行を許容待ち時間だけ遅延させるように制御する構成とすることで、昇温槽13の冷却が次の分析サイクルの実行に必要な初期制御温度を満たすことなく分析処理が停止してしまうという事象が発生しにくくなる。したがって、分析のためのスループットが向上する。
【0033】
なお、上記した実施形態によれば、昇温槽13の温度と次流路の初期制御温度との差が一定範囲内になるまでの時間で示される許容待ち時間を、アラーム発生から最大1分析周期までと規定したが、この長さは任意でかまわない。また、分析開始の遅延を初回分析開始時に適用することにより、オペレータは、プロセスガスクロマトグラフ1の電源投入直後等、昇温槽13の温度安定を待たずに直ちに分析開始操作を行うことが可能になる。
【0034】
(変形例)
ところで、プロセスガスクロマトグラフ1において、外気温が大きく変化する動作環境下では、温調パターンに基づく制御が終了後の冷却開始から冷却終了に至る次の分析サイクルのための準備期間(
図5の冷却待ち時間C01)も異なってくる。したがって、分析のスループットを更に向上させるためには、天候等の動作環境を考慮して運転状態を最適にチューニングする必要がある。
図4(a)(b)にその場合の昇温槽13の分析サイクル毎の昇温パターンの一例が示されている。
【0035】
図4(a)(b)ともに、縦軸に、昇温槽13の温度変化パターンと初期制御温度とを目盛り、時間軸(横軸)上に、昇温中か準備中かを示す温調状態と、温調ON/OFFのステイタスとが示されている。
図4(a)は、冷却期間を経た温調ON後の安定待ち時間中に次の分析サイクルが到来した場合、
図4(b)は、冷却中の温調OFF状態にあるときに次の分析サイクルが到来した場合のそれぞれの運転タイミングを示す。
【0036】
図4(a)によれば、温調パターンに基づく昇温制御終了のタイミングT1で次の分析サイクルのための冷却期間(準備期間)が開始される。このとき温調はOFFである。タイミングT2で、次の分析サイクルに必要な初期制御温度を超えて冷却された冷却完了が検出される。このとき、再度温調制御を開始するため温調がONになる。分析実行制御部100は、再度の温調により初期制御温度に至る安定待ち時間Taが完了したタイミングT4で安定待ちを解除することによって次の分析サイクルの実行を行う。すなわち、分析実行制御部100は、タイミングT3で次の分析サイクルの開始時間が検出されても、安定待ち時間Ta(第1の許容待ち時間)が完了するタイミングT4まで次の分析サイクルの実行を遅延させる。つまり、安定待ち時間Taをチューニングすることにより天候等の動作環境を考慮した運転が可能になる。
【0037】
一方、
図4(b)によれば、温調パターンに基づく昇温制御終了のタイミングT5で次の分析サイクルのための冷却期間(準備期間)が開始される。このとき温調はOFFである。タイミングT6で、次の分析サイクルが検出され、タイミングT7でこの分析サイクルに必要な初期制御温度を超えて冷却された冷却完了が検出される。冷却完了が検出されると、分析実行制御部100は、次の分析サイクルが検出されたタイミングT6から、冷却完了が検出され、再度温調を開始させるタイミングT7までの期間Tbと、再度の温調により初期制御温度に至る安定待ち期間Tcとを合計して得られる許容待ち時間(第2の許容待ち時間Tb+Tc)、すなわち、タイミングT8まで次の分析サイクルの実行を遅延させるように制御する。つまり、許容待ち時間Tb+Tcをチューニングすることにより動作環境を考慮した運転が可能になる。
【0038】
(変形例の効果)
上記したように、本実施形態の変形例に係るプロセスガスクロマトグラフ1によれば、次の分析サイクル実行のための準備期間中における温調ON後の安定待ち時間中に次の分析サイクルが到来した場合に、安定待ち時間終了(第1の許容待ち時間)までその分析の実行を遅延させることにより、分析のスループットの向上がはかれ、かつ、その許容待ち時間を調整することにより天候等の動作環境に影響されない運転が可能になる。また、次の分析サイクルの準備期間中における温調OFF時に次の分析周期が到来した場合に、分析周期到来から温調ONに要した時間と安定待ち時間とを合計した時間(第2の許容待ち時間)だけその分析サイクルの実行を遅延させることにより分析のスループット向上が図れ、かつ、その許容待ち時間を調整することにより天候等の動作環境に影響されない運転が可能になる。
【0039】
(昇温槽の温度調整方法)
本実施形態に係る昇温槽の温度調整方法は、例えば、
図1に示すように、分析サイクル毎に所定の温調パターンに基づいて昇温槽13の昇温と冷却を行なって試料の成分分析を行うプロセスガスクロマトグラフ1における前記昇温槽の温度調整方法である。その温度調整方法は、例えば、
図3に示すように、前記昇温槽の温度を測定する第1のステップ(S104,S108)と、前記温調パターンに基づく昇温制御の終了を契機に経過時間を測定する第2のステップ(S102,S110)と、前記第2のステップで次の分析サイクルの開始時間を検出したときに、前記第1のステップで測定された前記昇温槽の温度が前記次の分析サイクルの実行に必要な初期制御温度に到達していなかった場合に、アラーム報知後、前記次の分析サイクルの実行を所定の許容待ち時間だけ遅延させるように制御する第3のステップ(S105〜S113)と、を有することを特徴とする。
【0040】
本実施形態に係るプロセスガスクロマトグラフ1における昇温槽13の温度調整方法によれば、電気回路部10(分析実行制御部100)が、次の分析サイクルの開始時間を検出したときに、測定された昇温槽の温度が次の分析サイクルの実行に必要な初期制御温度に到達していなかった場合に、アラーム報知後、次の分析サイクルの実行を所定の許容待ち時間だけ遅延させるように制御することで、分析のスループットを向上させることができる。
【0041】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またそのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0042】
1…プロセスガスクロマトグラフ、10…電気回路部、11…ターミナル部、12…恒温槽、13…昇温槽、14…流量調節弁、15…アナライザサンプリング部、100…分析実行制御部、101…温調制御部、102…センサ部、103…タイマ部、104…報知部