(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1シート部材(10)と第2シート部材(20)の間に,複数の弾性伸縮部材(30)が,その伸縮方向に直交する直交方向に並べて配置された伸縮シート(100)を製造するための製造方法であって,
前記第1シート部材(10)が当接する周面に,その回転方向に沿って形成された複数の凹部(211)を有するスリットロール(210)を用いて行う位置決め工程であって,前記弾性伸縮部材(30)とともに,少なくとも前記第1シート部材(10)のうちの前記弾性伸縮部材(30)が重なる部位を押圧して,前記スリットロール(210)の前記凹部(211)の内部に押し込むことにより,前記第1シート部材(10)をその厚み方向に向かって凹状に湾曲させた複数の凹曲部(11)の中に,それぞれ,前記弾性伸縮部材(30)を配置する位置決め工程と,
前記位置決め工程後に,前記第1シート部材(10)と前記第2シート部材(20)を,前記弾性伸縮部材(30)が配置されていない部位において,前記伸縮方向及び前記直交方向に間欠的に接合する接合工程と,を含む
伸縮シートの製造方法。
第1シート部材(10)と第2シート部材(20)の間に,複数の弾性伸縮部材(30)が,その伸縮方向に直交する直交方向に並べて配置された伸縮シート(100)を製造するための製造装置であって,
スリットロール(210)と,
前記スリットロール(210)の周面に対向して配置された融着装置(220)と,
前記スリットロール(210)の周面に対向して配置されたプレスロール(230)を備え,
前記スリットロール(210)は,前記第1シート部材(10)が当接する周面に,その回転方向に沿って形成された複数の凹部(211)を有し,
前記スリットロール(210)又は前記融着装置(220)は,前記スリットロール(210)に前記凹部(211)が形成されていない領域において,前記スリットロール(210)の回転方向及び中心軸方向に間欠的に形成された複数の突起部(212)を有し,
前記凹部(211)は,前記弾性伸縮部材(30)と共に,少なくとも前記第1シート部材(10)のうちの前記弾性伸縮部材(30)の重なる部位が嵌り込むものであり,
前記プレスロール(230)は,
その周面に,回転方向に沿って形成された複数の凸部(231)を有し,
前記凸部(231)は,前記弾性伸縮部材(30)ととともに,少なくとも前記第1シート部材(10)のうちの前記弾性伸縮部材(30)が重なる部位を押圧して,前記スリットロール(210)の前記凹部(211)の内部に押し込むものであり,
前記融着装置(220)と前記スリットロール(210)は,前記突起部(212)において,前記第1シート部材(10)と前記第2シート部材(20)を挟み込むと共に両シート部材を互いに融着させる
製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献3の技術のように,シート部材同士の接合位置と弾性伸縮部材の配置位置をカメラで撮影し,画像の解析結果に基づいて弾性伸縮部材の配置位置を補正することにより,伸縮シートの製造の精度を高めることができる。しかし,このようにして伸縮シートを製造する場合,カメラや,画像解析装置,弾性伸縮部材の配置位置の制御機構などの精密機器を製造ラインに導入する必要があるため,その導入費用や保守費用などによって伸縮シートの製造コストが高くなるという問題があった。また,これらの精密機器を導入した場合であっても,これらの機器によって対応しきれないずれ量で,弾性伸縮部材の配置位置にずれが生じる場合もあり,このようなエラーが生じた場合には,伸縮シートを正しく製造することができなくなるという問題もある。
【0006】
このため,現在では,画像解析などを行う精密機器を利用することなく,単純な構成で,より確実に,フルート構造を持つ伸縮シートを製造するための製造方法及び製造装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで,本発明の発明者らは,従来技術の問題を解決する手段について鋭意検討した結果,2枚のシート部材のうちの少なくとも一方を厚み方向に湾曲させ,その凹曲部の中に弾性伸縮部材を配置した後に,2枚のシート部材を間欠的に接合するという知見を得た。このようにすることで,弾性伸縮部材と重ならない領域において,2枚のシート部材を,弾性伸縮部材の伸縮方向及びそれと直交する方向に間欠的に接合しやすくなる。従って,画像解析装置などの精密機器を利用しなくても,単純な構成で,より確実に,フルート構造を持つ伸縮シートすることが可能になる。そして,本発明者らは,上記知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。
【0008】
本発明の第1の側面は,伸縮シートの製造方法に関する。すなわち,本発明に係る製造方法は,第1シート部材10と第2シート部材20の間に,複数の弾性伸縮部材30が,その伸縮方向と直交する方向(以下,「直交方向」という)に並べて配置された伸縮シート100を製造するための方法である。
本発明の製造方法は,位置決め工程と接合工程を含む。
位置決め工程は,第1シート部材10をその厚み方向に向かって凹状に湾曲させた複数の凹曲部11の中に,それぞれ,1又は複数本ずつ弾性伸縮部材30を配置する工程である。位置決め工程では,第1シート部材10に凹曲部11を形成すると同時に,その中に弾性伸縮部材30を配置することとしてもよいし,第1シート部材10に凹曲部11を形成した後に,その中に弾性伸縮部材30を配置することとしてもよい。例えば,第1シート部材10の凹曲部11の中に弾性伸縮部材30を配置するにあたり,押圧装置を利用して第1シート部材10と弾性伸縮部材30を押圧することとしてもよいし,弾性伸縮部材30自体によって第1シート部材10を押圧するようにしてもよい。
接合工程は,上記の位置決め工程後に,第1シート部材10と第2シート部材20を,弾性伸縮部材30が配置されていない部位において,伸縮方向及び直交方向に間欠的に接合する工程である。
【0009】
上記のように,第1シート部材10の凹曲部11の中に弾性伸縮部材30を配置した後に,第1シート部材10と第2シート部材20とを間欠的に接合することで,弾性伸縮部材30が重なる領域を避けて両シート部材を接合することが容易になる。つまり,第1シート部材10と第2シート部材20を接合するときには,両者を重ね合わせることとなる。このとき,第1シート部材10を厚み方向に部分的に凹状に湾曲させ,その凹曲部11の中に弾性伸縮部材30を配置しておくことで,この弾性伸縮部材30を,第1シート部材10と第2シート部材20を接合するレベル(高さ)から逃すことができる。これにより,第1シート部材10と第2シート部材20を間欠的に接合する際に,誤って,両シート部材を弾性伸縮部材30と共に接合してしまうようなエラーを防ぐことができる。従って,弾性伸縮部材の配置位置を画像解析するような精密機器を利用する必要がなくなり,単純な構成で,より確実に,伸縮シートを製造することができる。
【0010】
本発明の製造方法において,位置決め工程では,少なくとも第1シート部材10と弾性伸縮部材30を,厚み方向に押圧することが好ましい。具体的には,第1シート部材10と第2シート部材20の間に弾性伸縮部材30を配置した後に,弾性伸縮部材30が存在する部位を,第2シート部材20側から第1シート部材10側に向かって押圧することとしてもよい。若しくは,第1シート部材10の上に弾性伸縮部材30を重ねた後に,弾性伸縮部材30が存在する部位を,弾性伸縮部材30側から第1シート部材10側に向かって押圧することとしてもよい。このようにすることで,第1シート部材10に凹曲部11が形成されると同時に,その凹曲部11の中に弾性伸縮部材30を位置させることができる。
【0011】
上記のように,少なくとも第1シート部材10と弾性伸縮部材30を厚み方向に押圧することで,確実に,弾性伸縮部材30の位置決めを行うことができる。つまり,より確実に,弾性伸縮部材30を,第1シート部材10と第2シート部材20を接合するレベル(高さ)から逃すことができる。これにより,伸縮シートの製造の生産効率が良くなる。
【0012】
本発明の第2の側面は,伸縮シートの製造装置に関する。第2の側面の製造装置は,上記した第1の側面の製造方法を実現するための装置として利用することができる。
本発明の製造装置は,スリットロール210と,このスリットロール210の周面に対向して配置された融着装置220を含む。
スリットロール210は,第1シート部材10が当接する周面に,その回転方向に沿って形成された複数の凹部211を有する。この凹部211は,弾性伸縮部材30と共に,少なくとも第1シート部材10のうちの弾性伸縮部材30が重なる部位が嵌り込むものとなっている。
また,スリットロール210又は融着装置220は,このスリットロール210に凹部211が形成されていない領域において,スリットロール210の回転方向及び中心軸方向に間欠的に形成された複数の突起部212を有する。突起部212は,融着装置220に形成されていてもよいが,スリットロール210の周面に形成されていることが好ましい。
そして,融着装置220とスリットロール210は,突起部212において,第1シート部材10と第2シート部材20を挟み込んで,両シート部材を互いに融着させる。
【0013】
上記構成のように,第1シート部材10の一部と弾性伸縮部材30とをスリットロール210の凹部211に嵌め込んだ状態で,第1シート部材10と第2シート部材20とを間欠的に接合する。このように,弾性伸縮部材30をスリットロール210の凹部211の中に逃しておくことで,第1シート部材10と第2シート部材20を,この弾性伸縮部材30が存在しない領域において間欠的に接合することができる。これにより,弾性伸縮部材30が存在する領域で,第1シート部材10と第2シート部材20を誤って接合してしまうといったエラーを,ほぼ確実になくすことができる。
【0014】
本発明の製造装置は,さらに,スリットロール210の周面に対向して配置されたプレスロール230を備えていることが好ましい。
プレスロール230は,その周面に,回転方向に沿って形成された複数の凸部231を有している。この凸部231は,弾性伸縮部材30ととともに,少なくとも第1シート部材10のうちの弾性伸縮部材30が重なる部位を押圧して,スリットロール210の凹部211の内部に押し込むものである。なお,プレスロール230の凸部231は,弾性伸縮部材30の重なる位置において,第1シート部材10と第2シート部材20の両方を,スリットロール210の凹部211の中に押し込むものであってもよい。
【0015】
上記構成のように,プレスロール230は,スリットロール210の凹部211に対応する凸部231を有している。このため,このプレスロール230の凸部231によって,弾性伸縮部材30と第1シート部材10(第2シート部材20)を,スリットロール210の凹部211に確実に押し込むことができる。
【0016】
本発明の第3の側面は,伸縮シートに関する。本発明の伸縮シートは,上記した第1の側面に係る製造方法や,第2の側面に係る製造装置を利用して製造することができる構成を有する。
本発明の伸縮シートは,第1シート部材10と第2シート部材20の間に,複数の弾性伸縮部材30が,その伸縮方向に直交する方向(直交方向)に並べて配置されている。
前記第1シート部材10は,伸縮方向に沿って延びる複数の凹曲部11を有する。
また,複数の弾性伸縮部材30のそれぞれは,第1シート部材10の凹曲部11の中に,一又は複数本ずつ配置されている。
そして,第1シート部材10と第2シート部材20は,弾性伸縮部材30が配置されていない部位において,伸縮方向及び直交方向に間欠的に接合されている。
【0017】
上記構成のように,第1シート部材10の凹曲部11の中に弾性伸縮部材30を配置した伸縮シートは,画像解析などを行う精密機器を利用することなく,単純な構成で,より確実に製造することができる。また,第1シート部材10の凹曲部11は,他の部位と比べて,第2シート部材20との間が多少離れている。このため,この凹曲部11に弾性伸縮部材30を配置することで,弾性伸縮部材30が伸縮しやすくなるため,伸縮シートにより形成されるギャザーの肌触りがさらに柔らかくなる。また,第1シート部材10及び/又は第2シート部材に凹曲部を形成して,両シート部材を接合することで,この凹曲部において両者の間隔が多少離れるため,伸縮シートの通気性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,弾性伸縮部材が配置されていない領域において2枚のシートが間欠的に接合された伸縮シートを,単純な構成で,より確実に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0021】
図1は,いわゆるフルート構造を有する伸縮シート100の例を模式的に示した斜視図である。本発明は,このような伸縮シート100を製造するための製造方法や製造装置に関する。また,本発明は,これらの製造方法や製造装置によって製造可能な伸縮シート100に関するものである。
【0022】
図1に示されるように,伸縮シート100は,基本的に,第1シート部材10と,第2シート部材20と,複数の弾性伸縮部材30によって構成されている。第1シート部材10と第2シート部材20は,互いに対面して重ね合わされている。また,複数の弾性伸縮部材30は,一定方向に伸張した状態で,第1シート部材10と第2シート部材20の間に配置されている。複数の弾性伸縮部材30は,それぞれ,その伸縮方向が一致するように平行に並べられている。つまり,複数の弾性伸縮部材30は,その伸縮方向と直交する方向(直交方向)に間隔をあけて配置されている。なお,弾性伸縮部材30を第1シート部材10と第2シート部材20の間に配置するときの伸長率や,直交方向の間隔,弾性伸縮部材30の本数などについては,適宜調整することができる。
【0023】
なお,本願の図では,弾性伸縮部材30の伸縮方向をX軸で示し,この伸縮方向に直交する直交方向をY軸で示している。また,各シート部材10,20の厚み方向を,Z軸で示している。X軸,Y軸,Z軸は,直交座標系をなす。
【0024】
また,
図1に示されるように,第1シート部材10と第2シート部材20は,弾性伸縮部材30の伸縮方向と直交方向において,互いに間欠的に接合されている。伸縮方向と直交方向における間欠的な接合とは,複数の接合部40が,伸縮方向と直交方向に間隔をおいて形成されていることを意味する。本実施形態において,複数の接合部40は,直交方向に沿った直線上に配置されており,これにより,接合部列40aが形成されている。このため,接合部列40aが形成された領域において,第1シート部材10と第2シート部材20は,直線的に接合されている。また,この接合部列40aは,弾性伸縮部材30の伸縮方向に間隔をおいて,複数列形成されている。
【0025】
また,
図1に示されるように,複数の接合部40は,複数の弾性伸縮部材30と重ならない部位に形成されている。言い換えると,弾性伸縮部材30は,2枚のシート部材10,20同士の接合部40を通らないように配置されている。すなわち,弾性伸縮部材30は,接合部40の直交方向の隙間を通るように配置されたものである。このように,本発明の伸縮シート100を製造するためには,第1シート部材10と第2シート部材20の間欠的な接合部40が,弾性伸縮部材30と重ならないように注意する必要がある。
【0026】
他方,弾性伸縮部材30は,伸縮方向の一方側と他方側において,第1シート部材10及び第2シート部材20に対して固定されている。つまり,
図1に示されるように,第1シート部材10と第2シート部材20には,直交方向に連続的に延びる固定部50が形成されており,この固定部50は,複数の弾性伸縮部材30に重なっている。特に,固定部50は,複数の弾性伸縮部材30に跨ぐようにして,伸縮シート100の幅方向全体に亘って形成されたものであることが好ましい。弾性伸縮部材30は,間欠的な接合部40においては第1シート部材10に第2シート部材20には固定されていない。このため,連続的な固定部50を設けて,弾性伸縮部材30の両端部側を第1シート部材10と第2シート部材20に固定することで,弾性伸縮部材30が両シート部材10,20の間から抜け出すことを防止している。なお,
図1に示されるように,2条の固定部50の間には,複数の接合部列40aが設けられている必要がある。
【0027】
このように伸縮シート100を構成することで,
図1に示されるように,複数の弾性伸縮部材30が収縮したときに,接合部列40aの間の領域において,第1シート部材10と第2シート部材20が離れて,両シート部材10,20の間に筒状の空間が形成される。この空間は,2つのシート部材10,20の間の通気路として機能するため,伸縮シート100の通気性を向上させることができる。また,筒状の空間を形成するよう2つのシート部材10,20によって襞(ギャザー)を形成することで,伸縮シート100のその肌触りを良くすることができる。このような,弾性伸縮部材30の伸縮性を利用して第1シート部材10と第2シート部材20の間に筒状の空間を形成した構造を,本願明細書では,「フルート構造」と称している。このようなフルート構造を有する伸縮シート100は,使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品を構成するシート部材として,好適に用いることができる。例えば,本発明の伸縮シート100は,肌触りが柔らかく,また通気性に優れているため,パンツ型の使い捨ておむつの腹周り部分にギャザーを形成するシート部材として用いることが,特に好ましい。
【0028】
その他,第1シート部材10,第2シート部材20,及び弾性伸縮部材30を形成する素材としては,使い捨ておむつなどの吸収性物品に用いられる公知の素材を採用することができる。例えば,第1シート部材10及び第2シート部材20としては,それぞれ,エアースルー不織布や,ヒートロール不織布,スパンレース不織布,スパンボンド不織布,メルトブローン不織布等の各種製法による不織布を用いることが好ましい。また,これらのシート部材10,20としては,不織布の他に,織布や,編布,樹脂フィルム等を採用することとしてもよいし,これらの2以上を積層一体化させたシート材を用いることもできる。また,弾性伸縮部材30の素材としては,例えば,スチレン−ブタジエン,ブタジエン,イソプレン,又はネオプレン等の合成ゴムや,天然ゴム,EVA,伸縮性ポリオレフィン,ポリウレタン等を採用することができる。弾性伸縮部材30は,糸ゴムであってもよいし,平ゴムであってもよい。また,弾性伸縮部材30としては,その断面が,矩形,正方形,円形,多角形状等のものを用いればよい。
【0029】
続いて,上記したフルート構造を持つ伸縮シート100の製造方法及び製造装置の第1の実施形態について,
図2から
図4を参照して説明する。
【0030】
図2は,伸縮シート100の製造装置200の構成を模式図である。
図2に示されるように,本実施形態に係る製造装置200は,スリットロール210と,融着装置220と,プレスロール230を備える。また,製造装置200は,接着剤を塗布するための塗布装置240を備えていてもよい。
図2に示されるように,製造装置200は,これらの構成によって,第1シート部材10と第2のシートの間に複数の弾性伸縮部材30が配置された伸縮シート100を製造するものである。
【0031】
本実施形態においては,まず,長尺の第1シート部材10が,原反(図示省略)から繰り出されて,接着剤の塗布装置240に導入される。接着剤の塗布装置240は,第1シート部材10に対して,接着剤を塗布する。ここでの接着剤としては,ホットメルト接着剤などの公知の接着剤を用いることができる。塗布装置240によって塗布される接着剤は,
図1に示した伸縮シート100の固定部50を形成するためのものである。このため,塗布装置240は,第1シート部材10の流れ方向に間隔をおいて,第1シート部材10の幅方向全体に亘る直線状に,接着剤を塗布することが好ましい。
【0032】
続いて,接着剤が塗布された第1シート部材10の上に,それぞれ原反(図示省略)から繰り出された,複数の長尺の弾性伸縮部材30と,長尺の第2シートが重ねられる。第1シート部材10には,流れ方向に沿って間欠的に接着剤が塗布されているため,この接着剤によって弾性伸縮部材30が部分的に第1シート部材10に固定され,さらにその上に第2シートが重なって固定される。これにより,第1シート部材10と第2シート部材20の間に,複数の弾性伸縮部材30が配置される。
【0033】
その後,
図2に示されるように,第1シート部材10,複数の弾性伸縮部材30,及び第2シート部材20の積層体は,互いに対向して配置されたスリットロール210とプレスロール230の間に導入される。スリットロール210とプレスロール230は,ほぼ円柱状のドラム型であり,その周面に積層体が当接する。つまり,第1シート部材10がスリットロール210に当接し,第2シート部材20がプレスロール130に当接する。スリットロール210とプレスロール230は,積層体に圧力をかけながら回転し,その回転方向に沿って積層体を搬送する。ここで,
図3では,スリットロール210とプレスロール230の外観斜視図を模式的に示している。また,
図4(a)は,
図2に示したA1−A1線における断面形状を模式的に示している。
【0034】
図3及び
図4(a)に示されるように,スリットロール210は,その周面に,複数の凹部211を有している。複数の凹部211は,それぞれ,スリットロール210の回転方向(周方向)の全体にわたって形成されている。この凹部211は,それぞれ,弾性伸縮部材30とともに,第1シート部材10と第2シート部材20のうちの弾性伸縮部材30の重なる部位が部分的に嵌り込む溝として形成されている。このため,スリットロール210の周面には,伸縮シート100を構成する弾性伸縮部材30の数に対応した数の凹部211が設けられる。例えば,凹部211には,それぞれ,一又は複数本ずつ弾性伸縮部材30を嵌め込むことが可能である。また,複数の凹部211は,弾性伸縮部材30を配置する位置に対応する位置に設けられる。すなわち,
図1に示したように,複数の弾性伸縮部材30は,その伸縮方向に直交する方向に間隔をあけて配置される。このため,複数の凹部211も同様に,スリットロール210の中心軸方向(中心軸が延びる方向)に間隔をあけて形成されている。また,凹部211の幅や溝の深さは,弾性伸縮部材30の直径やシート部材10,20の厚みに合わせて,適宜調節すればよい。凹部211の幅と深さは,少なくとも,弾性伸縮部材30の直径以上であることが好ましく,特に,弾性伸縮部材30の直径にシート部材10,20の厚みを加えた値以上であることが好ましい。
【0035】
また,
図3及び
図4(a)に示されるように,本実施形態において,スリットロール210は,その周面に,複数の突起部212を有している。複数の突起部212は,スリットロール210の周面のうち,上記した凹部211が形成されていない平坦な領域に部分的に形成されている。このため,突起部212は,スリットロール210の周面のうちの平坦な領域から上方に向かって突出した形状となっている。突起部212は,後述する融着装置220との間で第1シート部材10と第2シート部材20を挟み込み,両シート部材10,20を押圧しながら融着させるための部位である。この突起部212によって融着される部位が,
図1に示した伸縮シート100の間欠的な接合部40に相当する。このため,複数の突起部212は,伸縮シート100の接合部40のパターンに合わせて,スリットロール210の周面に設けられる。具体的に説明すると,本実施形態において,複数の突起部212は,スリットロール210の中心軸方向に沿った直線上に配置されており,これにより突起部列212aが形成されている。また,この突起部列212aは,スリットロール210の回転方向に間隔をおいて,複数列形成されている。そして,スリットロール210の周面には,その中心軸方向における突起部212の隙間を通るようにして,凹部211が形成されている。これにより,凹部211の存在しない領域に,複数の突起部212が間欠的に設けられることとなる。
【0036】
他方,
図3及び
図4(a)に示されるように,プレスロール230は,その周面に,複数の凸部231を有している。
図3に示されるように,複数の凸部231は,プレスロール230の中心軸方向(中心軸が延びる方向)に間隔をあけて形成されている。また,複数の凸部231は,それぞれ,プレスロール230の回転方向(周方向)に全体にわたって形成されている。
図4(a)に示されるように,プレスロール230の凸部231は,スリットロール210の凹部211の中に差し込まれる部位となる。このため,プレスロール230の凸部231は,スリットロール210の凹部211に対応する位置に,この凹部211に対応する形状で形成される。このように,プレスロール230の周面に凸部231を設けることで,弾性伸縮部材30と共に,第1シート部材10と第2シート部材20のうちの弾性伸縮部材30が重なる部位を,スリットロール210の凹部211の中に押し込むことができる。凸部231の幅や高さは,凹部211の幅や深さに合わせて,適宜調整すればよい。少なくとも,凸部231は,凹部211の中に,弾性伸縮部材30全体を押し込むことのできる高さを有していればよい。なお,
図4(a)に示されるように,プレスロール230の周面は,スリットロール210の周面に形成された突起部212と接触しないことが好ましい。
【0037】
図4(a)に示されるように,スリットロール210に形成された凹部211の中に,弾性伸縮部材30と共に,少なくとも第1シート部材10を押し込むことで,この第1シート部材10は,その厚み方向に向かって部分的に凹状に湾曲する。このようにして,第1シート部材10には,スリットロール210の凹部211に対応した位置に,凹曲部11が形成される。そして,この第1シート部材10の凹曲部11には,弾性伸縮部材30が配置された状態となる。また,本実施形態では,第2シート部材20にも,第1シート部材10と同様に,スリットロール210の凹部211の中に部分的に押し込まれている。このため,第2シート部材20にも,その厚み方向に向かって部分的に凹状に湾曲した凹曲部21が形成されている。本実施形態では,第1シート部材10の凹曲部11と第2シート部材20の凹曲部21との間に,弾性伸縮部材30が介在することとなる。第1シート部材10の凹曲部11と第2シート部材20の凹曲部21は,基本的に,スリットロール210の凹部211に対応した形状に成形される。
【0038】
続いて,
図2に示されるように,積層体は,弾性伸縮部材30がスリットロール210の凹部211の嵌め込まれた状態のまま,スリットロール210と融着装置220の間に導入される。融着装置220は,スリットロール210の周面に形成された突起部212との間において第1シート部材10と第2シート部材20とを挟み込み,両シート部材10,20を融着させるための装置である。融着装置220は,加熱によってシート部材10,20同士を融着させる加熱装置であってもよいし,超音波振動によって摩擦熱を発生させることによりシート部材10,20同士を融着させる超音波振動装置であってもよい。融着装置220としては,より局所的にシート部材10,20同士を融着させることができることから,超音波振動装置を採用することが好ましい。このような融着装置220としては,熱エンボス加工や超音波エンボス加工において用いられる公知の装置を利用することができる。
【0039】
図4(b)は,
図2に示したB1−B1線における断面形状を模式的に示している。
図4(b)に示されるように,弾性伸縮部材30と共に,第1シート部材10及び第2シート部材20のうちの弾性伸縮部材30と重なる部位(凹曲部11,21)が,スリットロール210の凹部211に嵌め込まれている。このように嵌め込まれた状態において,第1シート部材10と第2シート部材20は,スリットロール210の突起部212と融着装置220との間に圧力をかけて挟み込まれる。融着装置220は,加熱又は超音波振動により,突起部212との間で挟み込んでいるシート部材を部分的に溶融させる。これにより,突起部212が接触した部位において,第1シート部材10と第2シート部材20は互いに融着して,間欠的な接合部40が形成される。
【0040】
図3及び
図4(b)に示されるように,スリットロール210の突起部212は,凹部211が存在しない領域に設けられている。このため,この凹部211の中に弾性伸縮部材30を収納しておくことで,弾性伸縮部材30が,突起部212と融着装置220の間に誤って挟み込まれてしまうという事態を回避できる。例えば,弾性伸縮部材30の配置位置にズレが生じ,弾性伸縮部材30がスリットロール210の突起部212と融着装置220の間に挟まれた場合,弾性伸縮部材30に熱が加わって切断されたり固定されたりするおそれがある。この点,本発明では,弾性伸縮部材30をスリットロール210の凹部211に収納した状態で,第1シート部材10と第2シート部材20の接合を行うため,弾性伸縮部材30が誤って切断されたり固定されるような事態を効果的に回避できる。特に,スリットロール210の凹部211に嵌め込まれた状態において,この弾性伸縮部材30は,第1シート部材10と第2シート部材20の接合が行われるレベルとは異なるレベルに位置している。このため,第1シート部材10と第2シート部材20を接合する際に,それらのシート部材10,20間に弾性伸縮部材30が誤って位置するような事態をほぼ確実に回避することができる。
【0041】
上記のようにして,複数の弾性伸縮部材30が配置されていない領域において第1シート部材10と第2シート部材20が間欠的に接合された伸縮シート100を製造することができる。
図4(c)は,
図2に示したC1−C1線における断面形状を模式的に示している。
図4(c)に示されるように,上記の装置及び方法によって製造された伸縮シート100は,第1シート部材10と第2シート部材20が,それぞれ,弾性伸縮部材30の伸縮方向に沿って延びる複数の凹曲部11,21を有する。また,複数の弾性伸縮部材30のそれぞれは,第1シート部材10の凹曲部11と第2シート部材20の凹曲部21の間に配置されている。そして,第1シート部材10と第2シート部材20には,複数の弾性伸縮部材30が配置されていない部位において,弾性伸縮部材30の伸縮方向及びこれに直交する方向(直交方向)に対して間欠的に接合部40が形成されている。
【0042】
その後の工程において,例えば
図1に示されるように,伸縮シート100に形成された固定部50に沿った位置,又は固定部50よりも外側の位置において,伸縮シート100を切断していく。これにより,2条の固定部50の間に複数の接合部列40aが形成された個別の伸縮シート100を得ることができる。このような個別の伸縮シート100は,弾性伸縮部材30が収縮することにより,接合部列40aの間の非接合領域において第1シート部材10と第2シート部材20が離間して,筒状の空間を形成する。これにより,上述したフルート構造を実現することができる。
【0043】
次に,フルート構造を持つ伸縮シート100の製造方法及び製造装置の第2の実施形態について,
図5及び
図6を参照して説明する。
図6(a),
図6(b),及び
図6(c)は,それぞれ,
図5に示したA2−A2線,B2−B2線,及びC2−C2線における断面図を示している。第2の実施形態については,上述した第1の実施形態と異なる点を中心に説明を行い,第1の実施形態と同様の点について説明を省略する。
【0044】
図5に示されるように,第2の実施形態に係る製造装置及び製造方法は,第2シート部材20を導入する位置が,第1の実施形態(
図2参照)とは異なっている。具体的に説明すると,まず,第2の実施形態では,
図5及び
図6(a)に示されるように,第1シート部材10と複数の弾性伸縮部材30を重ねて,スリットロール210とプレスロール230の間に導入する。この段階では,第2シート部材20は,まだ製造工程に導入されていない。そして,
図5及び
図6(b)に示されるように,弾性伸縮部材30と第1シート部材10の一部をスリットロール210の凹部211に押し込んだ後,第2シート部材20を製造工程に導入し,この第2シート部材20を弾性伸縮部材30の上に重ねる。この際,
図5に示されるように,第2シート部材20に対して,塗布装置240によって,固定部50を形成するための接着剤が塗布される。そして,第1シート部材10と第2シート部材20の間に複数の弾性伸縮部材30が挟み込まれた積層体を,スリットロール210と融着装置220の間に導入する。その後,スリットロール210の突起部212と融着装置220を利用して,第1シート部材10と第2シート部材20とを,弾性伸縮部材30が配置されていない領域において間欠的に接合する。この第2の実施形態のように,本発明では,スリットロール210とプレスロール230間に第2シート部材20を導入しないようにすることもできる。
【0045】
図6の断面図に示されるように,スリットロール210とプレスロール230間に第2シート部材20を導入しない場合,この第2シート部材20には凹曲部が形成されない。すなわち,第2の実施形態では,第1シート部材10のみが,弾性伸縮部材30と共に,プレスロール230の凸部231によって,スリットロール210の凹部211の中に押し込まれる。これにより,第1シート部材10にのみ凹曲部11が形成される。そして,この第1シート部材10内に,弾性伸縮部材30が配置されることとなる。このような実施形態によっても,複数の弾性伸縮部材30が配置されていない領域において,第1シート部材10と第2シート部材20を間欠的に接合した伸縮シート100を製造することができる。
【0046】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【0047】
例えば,上記した実施形態では,第1シート部材10をスリットロール210の凹部211内に押し込むために,プレスロール230を備え付けているが,このプレスロール230は省略することもできる。この場合,第1シート部材10の上に伸長状態の弾性伸縮部材30を配置した後,この弾性伸縮部材30自体によって,第1シート部材10をスリットロール210の凹部211の中に押し込むようにすればよい。ただし,弾性伸縮部材30と第1シート部材10とを確実にスリットロール210の凹部211の中に押し込むためには,プレスロール230を設けることが好ましいといえる。
【0048】
また,上記した実施形態では,第1シート部材10と第2シート部材20の接合パターンを形成するための複数の突起部212を,スリットロール210の周面に形成しているが,この突起部212は融着装置220に設けることも可能である。この場合,スリットロール210の周面の平坦な領域と融着装置220に設けられた突起部との間で,第1シート部材10と第2シート部材20を挟み込むようにすればよい。また,この場合,融着装置220を,スリットロール210と同じ様なドラム型の装置とすることもできる。ただし,より確実に,弾性伸縮部材30が配置されていない領域において第1シート部材10と第2シート部材20を接合するためには,スリットロール210の周面のうち,凹部211が形成されていない領域に突起部212を形成することが好ましいといえる。