【実施例】
【0071】
以下の実施例では、ビタミンDを測定する免疫学的方法として、25OHビタミンD2および25OHビタミンD3(以下、必要に応じて、25OHビタミンD2および25OHビタミンD3を包括して25OHビタミンDと略記する)を認識する1次抗体を用いた。したがって、以下の実施例で測定された値は、25OHビタミンD2および25OHビタミンD3の総量に対応し得る。
【0072】
【化2】
【0073】
実施例1:界面活性剤で処理されたサンプルにおける25OHビタミンDの測定
ヒト血清を、界面活性剤を含む前処理液、および界面活性剤または有機溶媒(エタノール)を含む希釈液を併用して経時的に処理し、次いで、免疫学的方法によりヒト血清中の25OHビタミンDを測定した。
【0074】
方法は、以下のとおりに行った。
1)同一のヒトから採取された同一血清(10μl)に、4倍量(40μl)の各種前処理液〔0.3%(w/v) SDS/0.1M Tris−HCl緩衝液(pH7.6)+0.1%(w/v) 下記界面活性剤〕を加えて、血清と前処理液との第1混合液(50μl)を調製した。第1混合液中の各成分の濃度は、次のとおりである:0.24%(w/v) SDS/0.1M トリス−HCl緩衝液+0.08%(w/v) 下記界面活性剤。
2)第1混合液を、室温(25℃)にて10分間インキュベートした。
3)インキュベートした第1混合液に、3倍量(150μl)の各種希釈液〔0.1%(w/v) BSA/0.1M トリス緩衝液(pH7.6)、0.1%(w/v) 下記界面活性剤または10%(v/v)エタノール〕を加えて、第1混合液と希釈液との第2混合液(200μl)を調製した。第2混合液中の下記界面活性剤の濃度は、0.095%(w/v)であった。
4)第2混合液と抗25OHビタミンD抗体結合磁性粒子液を等量、混合した。
5)上記4)で得られた溶液を、37℃にて10分間インキュベートした。
6)インキュベート後、磁性プレート上にてサンプル中の磁性粒子を集め、磁性粒子を3回洗浄した。
7)洗浄液を除いた磁性粒子に、アルカリホスファターゼ標識抗体(25OHビタミンDおよび抗25OHビタミンD抗体の免疫複合体に対する抗体)溶液を加えた。
8)上記7)で得られた溶液を、37℃にて10分間インキュベートした。
9)インキュベート後、磁性プレート上にて溶液中の磁性粒子を集め、磁性粒子を3回洗浄した。
10)磁性粒子を含む溶液に、発色基質(AMPPD)を加えた。
11)上記10)で得られた溶液を、37℃にて5分間インキュベートした。
12)発光カウントを、ラベルリーダー(ARVO;Perkin Elmer)で測定した。
【0075】
結果は、以下の表1に示すとおりであった。なお、表1では、界面活性剤を含まない前処理液および界面活性剤を含まない希釈液の双方で処理されたヒト血清の発光カウントを100(コントロール)とし、各種条件下で測定された発光カウントを、コントロールに対するパーセントで表示した。
【0076】
【表1】
【0077】
その結果、ステロイド骨格を有する界面活性剤であるCHAPSまたはデオキシコール酸ナトリウム(DC Na)を含む前処理液を用いて測定されたシグナル強度(発光カウント)は、ステロイド骨格を有しない界面活性剤(前処理液)を用いて測定されたものよりも高い傾向が認められた(表1)。また、ステロイド骨格を有する界面活性剤であるCHAPSまたはデオキシコール酸ナトリウム(DC Na)を含む希釈液を用いて測定されたシグナル強度(発光カウント)は、ステロイド骨格を有しない界面活性剤および有機溶媒(希釈液)を用いて測定されたものよりも顕著に高かった(表1)。したがって、ビタミンDの測定において、ステロイド骨格を有する界面活性剤を含む試薬を用いることで、標的物質を高感度に検出できること、特に、ステロイド骨格を有する界面活性剤を含む希釈液を用いることで、標的物質を高感度に検出できることが示された。
【0078】
実施例2:カオトロピック剤を含む前処理液、およびステロイド骨格を有する界面活性剤を含む希釈液を併用して経時的に処理されたサンプルにおける25OHビタミンDの測定
ヒト血清を、カオトロピック剤を含む前処理液、および界面活性剤または有機溶媒(エタノール)を含む希釈液を併用して経時的に処理し、次いで、免疫学的方法によりヒト血清中の25OHビタミンDを測定した。
【0079】
方法は、以下のとおりに行った。
1)同一のヒトから採取された同一血清(10μl)に、4倍量(40μl)の各種前処理液〔7.5M グアニジン塩酸塩/PB(リン酸緩衝液)(pH7.6)、0.1%(w/v)下記界面活性剤〕を加えて、血清と前処理液との第1混合液(50μl)を調製した。第1混合液中の各成分の濃度は、次のとおりである:6M グアニジン塩酸塩;0.08%(w/v)下記界面活性剤。
2)第1混合液を、室温(25℃)にて10分間インキュベートした。
3)インキュベートした第1混合液に、3倍量(150μl)の各種希釈液〔0.1%(w/v) BSA/0.1M トリス緩衝液(pH7.6)、0.1%(w/v)下記界面活性剤または10%(v/v)エタノール〕を加えて、第1混合液と希釈液との第2混合液(200μl)を調製した。第2混合液中の下記界面活性剤の濃度は、0.095%(w/v)であった。
4)以降の操作は、実施例1の4)〜12)と同じ方法により行った。
【0080】
結果は、以下の表2に示すとおりであった。なお、表2では、カオトロピック剤(グアニジン塩酸塩)を含み、かつ界面活性剤を含まない前処理液、および界面活性剤を含まない希釈液の双方で処理されたヒト血清の発光カウントを100(コントロール)とし、各種条件下で測定された発光カウントを、コントロールに対するパーセントで表示した。
【0081】
【表2】
【0082】
表2に示されるように、カオトロピック剤を含む前処理液を使用した場合であっても、デオキシコール酸ナトリウムを含む希釈液を用いて測定されたシグナル強度(発光カウント)は、有機溶媒または他の界面活性剤(Tween20)を含む希釈液を用いて測定されたものよりも高かった。したがって、本発明の方法は、前処理液の種類に特に制限されることなく、標的物質を高感度に検出できることが確認された。
【0083】
実施例3:前処理液および希釈液を併用する本発明の方法による標的物質の測定値と、既存の方法による測定値との相関係数の比較
本発明の方法による標的物質の測定精度を検証するため、前処理液および希釈液を併用する本発明の方法による標的物質の測定値と、異なる方法論を利用する既存の方法により得られた測定値との相関係数を比較した。
【0084】
3−1)本発明の方法による測定
方法は、以下のとおりに行った。なお、測定サンプルとしては、ヒト血清14サンプル、チャコール処理血清強化サンプルが1サンプルの計15サンプルを用いた。
1)血清(10μl)に、4倍量(40μl)の各種前処理液〔7.5M グアニジン塩酸塩および4mM DTT/0.1M トリス緩衝液(pH7.6) + 0.1%(w/v)デオキシコール酸ナトリウム、または5%(v/v)エタノールおよび5%(v/v)DMSO〕を加えて、第1混合液を調製した。
2)第1混合液を、室温(25℃)にて10分間インキュベートした。
3)インキュベートした第1混合液に、3倍量(150μl)の希釈液〔0.1%(w/v) BSA/0.1M リン酸緩衝液(pH7.6) + 0.1%(w/v)デオキシコール酸ナトリウムまたは5%(v/v)エタノールおよび0.5%(v/v) DMSO〕を3倍量加えて、第1混合液と希釈液との第2混合液を調製した。
4)以降の操作は、実施例1の4)〜12)と同じ方法により行った。
【0085】
3−2)既存の方法による測定
異なる方法論を利用する既存の方法としては、後述するとおり、放射性物質を用いるDiaSorin−RIAを用いた。DiaSorin−RIAは、市販のキット(25−Hydroxyvitamin D
125I RIA KIT,DiaSorin製)を用いて行った。
【0086】
具体的には、DiaSorin−RIAは、以下I)およびII)のとおり行った。なお、測定サンプルとしては、上記3−1)と同じく、ヒト血清14サンプル、チャコール処理血清強化サンプルが1サンプルの計15サンプルを用いた。
I)前処理操作
a)ガラス試験管を準備する。
b)アセトニトリルを各試験管に500μlずつ分注する。
c)キャリブレーター、コントロール、またはサンプル(血清など)を50μlずつ各試験管に加える。
d)サンプル溶液を10秒間攪拌する。
e)サンプル溶液を、室温にて1200×gで10分間遠心分離する。
f)上清をサンプルとして用いる。
【0087】
II)測定操作
a)上記サンプル25μl、
125I 25OHビタミンD50μlおよび抗25OHビタミンD抗体液1mlを混合する。
a)混合液を、室温にて90分インキュベートする。
b)インキュベートした混合液に、ロバ由来抗ヤギ抗体を500μl加える。
c)得られた溶液を、室温にて25分インキュベートする。
d)インキュベートした溶液に、NSB/添加緩衝液を500μl加える。
e)得られた溶液を、室温にて1800×gで20分間遠心分離する。
f)遠心分離した溶液から完全に上清を除く。
g)ガンマシンチレーションカウンターを用いて測定を行う。
【0088】
3−3)結果
デオキシコール酸ナトリウムを含む希釈液を用いる本発明の方法により得られた測定値は、Diasorin RIA法による測定値との相関性が高かった(
図1、R
2=0.8993)。一方、エタノールおよびDMSOを含む希釈液を用いて得られた測定値は、Diasorin RIA法による測定値との相関性が低かった(
図1、R
2=0.8327)。したがって、本発明の方法は、ビタミンDの測定に有用と考えられる。
【0089】
実施例4:界面活性剤による処理時間の検討
25OHビタミンDの高感度測定に必要とされる、界面活性剤による処理時間について検討した。
【0090】
方法は、以下のとおりに行った。
1)同一のヒトから採取された同一血清10μlに、前処理液〔Tris−HCl緩衝液(pH7.6)に、1%(w/v) デオキシコール酸ナトリウム〕を40μl加えて、攪拌による混合により血清と前処理液との第1混合液(50μl)を調製した。第1混合液中の各成分の濃度は、次のとおりである:0.8%(w/v) デオキシコール酸ナトリウム。攪拌による混合に要した時間は、約3秒であった。
2)第1混合液を、室温(25℃)にてインキュベートした(10分、5分または1分)。また、攪拌による混合のみにより調製された第1混合液を、インキュベートすることなく、次の操作に供した(インキュベート時間:0分)。
3)上記2)で得られた溶液に、希釈液〔PBS(pH7.6)に、0.1%(w/v)デオキシコール酸ナトリウムおよび0.1%(w/v) BSA〕を150μl加えて、第1混合液と希釈液との第2混合液(200μl)を調製した。第2混合液中のデオキシコール酸ナトリウムの濃度は、0.28%(w/v)であった。
4)以降の操作は、実施例1の4)〜12)と同じ方法により行った。
【0091】
結果は、以下の表3に示すとおりであった。なお、表3では、0.14%(w/v) デオキシコール酸ナトリウムを含む前処理液による10分のインキュベート時間の条件下で測定された発光カウントを100(コントロール)とし、0分、1分および5分のインキュベート時間の条件下で測定された発光カウントを、コントロールに対する割合で表示した。
【0092】
【表3】
【0093】
その結果、混合のみ(インキュベート時間:0分)でも、10分間のインキュベートした場合とほぼ同程度の相対発光カウントが得られた。このことは、上記工程1)のインキュベート操作は必ずしも必要でなく、血清と前処理液とを混合するだけで、25OHビタミンDが、血清中のDBPから解離することを示す。したがって、本発明の方法により、標的物質の測定に要する時間が短縮できることが示された。
【0094】
参考例1:既存製品を用いた前処理に要する時間
既存製品では、血清サンプルの前処理に必要とされる時間は、その使用説明書によれば、以下のとおりである。既存製品として、DiaSorin−RIA(DiaSorin社製)、DiaSorin−Liaison(DiaSorin社製)を用いた。
【0095】
【表4】
【0096】
実施例5:ステロイド骨格を有する界面活性剤、およびアニオン性、カチオン性または両性界面活性剤を用いたビタミンDの測定
ステロイド骨格を有する界面活性剤(デオキシコール酸ナトリウム)およびビタミンDに対する抗体を含む反応液で血清を処理し、次いで、免疫学的方法により血清中の25OHビタミンDを測定した。また、ステロイド骨格を有する界面活性剤および他の界面活性剤の併用効果も検討した。
【0097】
具体的には、方法は、以下のとおりであった。
1)100ng/ml強化ウマ血清3.75μlに、反応液〔Tris−HCl緩衝液(pH7.6)、0.03%(w/v)または0.1%(w/v) 下記の界面活性剤、0.04%(w/v)デオキシコール酸ナトリウム、0.04%(w/v)BSA、抗25OHビタミンD抗体結合粒子液〕146.25μlを加えて、血清と反応液との混合液(150μl)を調製した。混合液中の各成分の濃度は、次のとおりである:約0.03%(w/v)または約0.1%(w/v) 下記の界面活性剤;約0.04%(w/v)デオキシコール酸ナトリウム;約0.04%(w/v)BSA。
2)混合液を、37℃にて10分間インキュベートした。
3)インキュベート後、磁性プレート上にてサンプル中の磁性粒子を集め、磁性粒子を3回洗浄した。
4)洗浄液を除いた磁性粒子に、MES緩衝液中に懸濁したアルカリホスファターゼ標識抗体(25OHビタミンD−抗25OHビタミンD抗体免疫複合体に対する抗体)を加えた。
5)上記4)で得られた溶液を、37℃にて10分間インキュベートした。
6)インキュベート後、磁性プレート上にてサンプル中の磁性粒子を集め、磁性粒子を3回洗浄した。
7)洗浄液を除いた磁性粒子に、発光基質(AMPPD)液を加えた。
8)磁性粒子および発光基質を含む溶液を、37℃にて5分間インキュベートした。
9)発光カウントを、ラベルリーダー(ARVO;Perkin Elmer)で測定した。
【0098】
結果は、以下の表5に示すとおりであった。なお、表5では、上述した界面活性剤〔0.03%(w/v)または0.1%(w/v)〕を加えない条件下で測定された血清の発光カウントを100(コントロール)とし、ステロイド骨格を有する界面活性剤を加えた条件下で測定された血清の発光カウントを、コントロールに対する割合で表示した。
【0099】
【表5】
【0100】
その結果、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤のいずれもが、ステロイド骨格を有する界面活性剤(デオキシコール酸ナトリウム)との組み合わせにおいて、発光カウントを向上させる傾向が認められた。また、アニオン性界面活性剤であるデオキシコール酸ナトリウム、SDS、n−ラウロイルサルコシン、およびドデカノイルサルコシン酸、ならびにカチオン性界面活性剤であるセチルジメチルエチルアンモニウムブロミドが、発光カウントを向上させた。特に、デオキシコール酸ナトリウムが、発光カウントの顕著な向上を示した。
【0101】
また、ステロイド骨格を有する界面活性剤(デオキシコール酸ナトリウム)およびビタミンDに対する抗体の双方を含む反応液で処理されたサンプルにおいて、ビタミンDの測定に成功した(上記工程1)を参照)。このことは、ステロイド骨格を有する界面活性剤が、血清中に含まれるビタミンD結合性タンパク質からビタミンDを解離させることができるにもかかわらず、抗体によるビタミンDの検出を阻害し得ないことを示す。したがって、本発明によれば、ステロイド骨格を有する界面活性剤、およびビタミンDに対する抗体で別々にサンプルを処理するという煩雑な手法を利用するのではなく、ステロイド骨格を有する界面活性剤およびビタミンDに対する抗体の双方を含む反応液を用いて、簡便にビタミンDを測定できることが示された。
【0102】
実施例6:ビタミンDの測定に対する、ステロイド骨格の7位にヒドロキシル基を有するおよび有しない界面活性剤によるサンプル処理の影響の検討
実施例5において、デオキシコール酸ナトリウムは、コール酸ナトリウムおよびCHAPSよりもシグナル強度が顕著に向上することが確認されている(表5)。ここで、デオキシコール酸ナトリウムは、ステロイド骨格の7位にヒドロキシル基を有しない界面活性剤である一方で、コール酸ナトリウムおよびCHAPSは、ステロイド骨格の7位にヒドロキシル基を有する界面活性剤である。このことより、ステロイド骨格の7位のヒドロキシル基の有無がシグナル強度に影響を与えている可能性が考えられた。そこで、ビタミンDの測定に対する、ステロイド骨格の7位にヒドロキシル基を有するおよび有しない界面活性剤によるサンプル処理の影響について検討した。
【0103】
具体的には、方法は、以下のとおりであった。
1)100ng/ml強化ウマ血清3.75μlに、反応液〔Tris−HCl緩衝液(pH7.6)、0%(w/v)、0.1%(w/v)、0.2%(w/v)または0.4%(w/v)のステロイド骨格を有する下記の界面活性剤、0.04%(w/v)BSA、抗25OHビタミンD抗体結合粒子液〕146.25μlを加えて、血清と反応液との混合液(150μl)を調製した。混合液中の各成分の濃度は、次のとおりである:0%(w/v)、約0.1%(w/v)、約0.2%(w/v)または約0.4%(w/v)のステロイド骨格を有する下記の界面活性剤;約0.04%(w/v)BSA。ステロイド骨格の7位にヒドロキシル基を有しない界面活性剤としては、デオキシコール酸ナトリウムおよびタウロデオキシコール酸ナトリウムを用いた。一方、ステロイド骨格の7位にヒドロキシル基を有する界面活性剤としては、タウロコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、CHAPSを用いた。
2)以降の工程は、実施例5の工程2)〜9)と同じ方法により行った。
【0104】
結果は、以下の表6に示すとおりであった。なお、表6では、上述した界面活性剤〔0.1%(w/v)、0.2%(w/v)、0.4%(w/v)〕を加えない条件下で測定された血清の発光カウントを100(コントロール)とし、ステロイド骨格の7位にヒドロキシル基を有する、または有しない界面活性剤を加えた条件下で測定された血清の発光カウントを、コントロールに対する割合で表示した。
【0105】
【表6】
【0106】
その結果、ステロイド骨格の7位にヒドロキシル基を有しないデオキシコール酸ナトリウムおよびタウロデオキシコール酸ナトリウムで処理されたサンプルで測定されたシグナル強度は、ステロイド骨格の7位にヒドロキシル基を有するコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウムで処理されたサンプルで測定されたものに比し、顕著に向上した。したがって、本実施例および実施例1より、ステロイド骨格を有する界面活性剤はビタミンDの測定に有効であり、ステロイド骨格の7位にヒドロキシル基を有しない界面活性剤は、ビタミンDの測定に特に有用であることが示された。
【0107】
実施例7:ステロイド骨格を有する界面活性剤、SDSおよび抗体を含む反応液を用いたビタミンDの測定
ビタミンDの測定に対する、ステロイド骨格を有する界面活性剤およびSDSを含む反応液を用いて、ヒト血清サンプル中の25OHビタミンDを測定した。
【0108】
具体的には、方法は、以下のとおりであった。
1)異なる由来のヒト血清(#1〜16)またはチャコール処理ヒト血清(コントロール)3.75μlに、反応液〔Tris−HCl緩衝液(pH7.6)、0.14%(w/v) デオキシコール酸ナトリウム、0.015%(w/v)SDS、0.04%(w/v)BSA、および抗25OHビタミンD抗体結合粒子液〕146.25μlを加えて、血清と反応液との混合液を調製した。
2)以降の工程は、実施例5の工程2)〜9)と同じ方法により行った。また、得られた測定値を、DiaSorin−RIA法による測定値と比較した。DiaSorin−RIA法は、実施例3−2)に記載の方法により行った。
【0109】
結果は、表7および
図3に示すとおりであった。なお、表7では、チャコール処理ヒト血清の発光カウントを100(コントロール)とし、測定された血清の発光カウントを、コントロールに対する割合で表示した。
【0110】
【表7】
【0111】
その結果、ステロイド骨格を有する界面活性剤、SDSおよび抗体を含む反応液を用いる本発明の方法により得られた測定値は、Diasorin RIA法による測定値との相関性が高かった(
図3、R
2=0.9881)。したがって、本発明は、ビタミンDの測定に有用と考えられる。
【0112】
実施例8:ステロイド骨格を有する界面活性剤での処理によりビタミンD結合タンパク質およびヒト血清から放出された25OHビタミンDの測定
8−1)ステロイド骨格を有する界面活性剤による画分の処理
コントロール緩衝液(Tris−HCl)で処理したヒト血清をゲルろ過クロマトグラフィーにより溶出させて得られた画分(コントロール画分)を、抗25OHビタミンD抗体による測定に付した。また、コントロール画分をデオキシコール酸ナトリウムで処理し、抗25OHビタミンD抗体による測定に付した。
【0113】
具体的には、方法は、以下のとおりであった。
1)ヒト血清(50μl)に4倍量(200μl)の0.1M Tris−HCl緩衝液(pH7.8)を加えて、混合液を調製した。なお、混合液は、攪拌による混合のみ(約3秒)により調製した(即ち、インキュベート無し)。
2)ゲルろ過クロマトグラフ(GEヘルスケア:AKTA explorer)およびゲルろ過クロマトグラフィーカラム(superdex200 10/30)を用いて、0.1M Tris−HClにより混合液を溶出(0.25−1カラム容量)することで、分子量依存的な画分を得た。
3)上記2)で得られた画分と、0.4%(w/v)デオキシコール酸Na塩を含む抗25OHビタミンD抗体結合磁性粒子液とを等量、混合した(デオキシコール酸Na存在下の条件)。一方、デオキシコール酸Naの非存在下の条件については、0.4%(w/v)デオキシコール酸Na塩を含まない抗25OHビタミンD抗体結合磁性粒子液と等量、混合した。
4)以降の操作は、実施例1の5)〜12)と同じ方法により行った。
【0114】
その結果、デオキシコール酸で処理しない場合、有意な発光カウントは検出されず、25OHビタミンDを測定できなかった(
図4)。一方、デオキシコール酸で処理し、25OHビタミンDを測定した場合、画分#15−#17において強い発光カウントが検出された。
【0115】
8−2)ウエスタンブロッティングによるコントロール画分中のビタミンD結合タンパク質の検出
ビタミンDの検出画分が、ビタミンD結合タンパク質の検出画分と一致するかどうかについて検討した。
【0116】
具体的には、方法は、以下のとおりであった。
1)コントロール画分(上記8−1で得られた画分)、30μl)に、その1/3倍量 (10μl)のNuPAGE LSDサンプルバッファー(invitrogen)、終濃度1mMのDTTを加えて、混合液を調製した。
2)混合液を、100℃の超純水にて、5分間ボイルした。
3)得られた溶液を4−10%アクリルアミドゲルにアプライした。
4)200Vの電圧を25分間かけ、SDS−PAGEを実施した。
5)得られたゲルを、iBlot(invitrogen)を利用してPVDF膜へ転写した。
6)転写膜を5%スキムミルク溶液中へ入れ、室温で1時間振とうした。
7)溶液をPBStに交換し、転写膜を5分間振とうし、洗浄を行った。
8)上記洗浄操作を、さらに二回繰り返した。その後、溶液を5%スキムミルク溶液に交換した。
9)一次抗体として抗ヒトビタミンD結合タンパク質抗体(Abcam)を1μg/mlになるよう5%スキムミルク溶液に加え、転写膜を4℃で一晩振とうした。
10)溶液をPBStに交換し、転写膜を5分間振とうし、洗浄を行った。
11)上記洗浄操作を、さらに二回繰り返した。その後、溶液を5%スキムミルク溶液に交換した。
12)二次抗体として抗マウスIg抗体−HRPを1000倍希釈になるように5%スキムミルク溶液に加え、室温で1時間振とうした。
13)溶液をPBStに交換し、5分間振とうし、洗浄を行った。
14)上記洗浄操作を、さらに二回繰り返した。その後、PBStを超純水に交換した。
15)転写膜を、超純水にて1回すすいだ。
16)溶液を発光基質(ECL select;GEヘルスケア)に交換した。
17)LAS3000 MINWIN(FUJIFILM)にて転写膜の撮影を実施した。
【0117】
その結果、ビタミンD結合タンパク質が検出された画分#15−17は実施例8−1において25OHビタミンDが検出された画分と一致していた(
図5)。したがって、0.1M Tris−HClで処理および溶出した場合、25OHビタミンDはビタミンD結合タンパク質と結合した状態で回収されることが示唆された。
【0118】
8−3)ステロイド骨格を有する界面活性剤によるビタミンD結合タンパク質からのビタミンDの解離
デオキシコール酸での処理により、ヒト血清中の25OHビタミンDが遊離するかどうかについて検討した。
【0119】
具体的には、方法は、以下のとおりであった。
1)ヒト血清または143ng/ml 25OHビタミンD添加1%BSA−PBS溶液(50μl)に、4倍量(200μl)の0.4%(w/v)デオキシコール酸溶液を加えて、混合液を調製した。なお、混合液は、攪拌による混合のみ(約3秒)により調製した(即ち、インキュベート無し)。
2)ゲルろ過クロマトグラフ(GEヘルスケア:AKTA explorer)およびゲルろ過クロマトグラフィーカラム(superdex200 10/30)を用いて、0.4%デオキシコール酸溶液により溶出することで、分子量依存的な画分を得た。次いで、カラム容量の0.25〜1を回収した。
3)上記処理を行ったサンプルとデオキシコール酸を含まない抗25OHビタミンD抗体結合磁性粒子液を等量、混合した。
4)以降の操作は、実施例1の5)〜12)と同じ方法により行った。
【0120】
その結果、実施例8−1)のビタミンD結合タンパクが検出された画分#15−17よりも分子量の小さい画分#22−28から25OHビタミンDが検出された(
図6)。デオキシコール酸で溶出した際に25OHビタミンDが検出された画分#22−28は、フリーの25OHビタミンDが溶出された画分#22−28と同じであったことから(
図6)、デオキシコール酸での処理により、ヒト血清中の25OHビタミンDが遊離することが示唆された。
【0121】
8−4)ステロイド骨格を有する界面活性剤での処理による、ビタミンD結合タンパク質および血清からの25OHビタミンDの放出
25OHビタミンDが、ステロイド骨格を有する界面活性剤での処理により、ビタミンD結合タンパク質および25OHビタミンD3の複合体から放出されるかどうかについて検討した。
【0122】
具体的には、方法は、以下のとおりであった。
1)表8に示されるとおり、サンプルを調製した。具体的には、精製ビタミンD結合タンパク質(Abcam) 1.64mg/ml(+または−) 17.2μlに25OHビタミンD3(Tronto chemical reagent) 1mg/ml(+または−)を2.82μl加えてサンプルを調製し、次いで得られたサンプルを10minインキュベートした。
2)上記サンプル3.75μlに、表8に示される溶液(pH7.6 Tris−HCl緩衝液、0.138%(w/v) デオキシコール酸ナトリウム塩+0.038% BSA+抗25OHビタミンD抗体結合粒子液)146.25μlを加えて、混合液を調製した。
3)以降の操作は、実施例1の5)〜12)と同じ方法により行った。
【0123】
【表8】
【0124】
その結果、市販の精製ビタミンD結合タンパク質および25OHビタミンD3を用いてビタミンD結合タンパク質および25OHビタミンD3の複合体が形成された場合、25OHビタミンD3は検出できなかった(
図7および表8の番号2を参照)。一方、デオキシコール酸で処理した場合、25OHビタミンD3を測定できた(
図7および表8の番号3を参照)。この場合の測定カウントは、番号1の測定カウントの88%であった(
図7および表8)。
【0125】
以上より、ステロイド骨格を有する界面活性剤での処理により、ビタミンD結合タンパク質および25OHビタミンDの複合体から25OHビタミンDが放出されること、および放出された25OHビタミンDを高感度に測定できることが実証された。