特許第6281563号(P6281563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281563
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20180208BHJP
【FI】
   H01L31/04 560
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-502953(P2015-502953)
(86)(22)【出願日】2014年2月26日
(86)【国際出願番号】JP2014054681
(87)【国際公開番号】WO2014133003
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2016年9月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-36722(P2013-36722)
(32)【優先日】2013年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】小出 洋平
(72)【発明者】
【氏名】千葉 大道
(72)【発明者】
【氏名】小原 禎二
【審査官】 河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−159711(JP,A)
【文献】 特開平08−064852(JP,A)
【文献】 特開平11−054767(JP,A)
【文献】 特開2011−077172(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/070915(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/042−31/056
B32B 1/00 −43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面側より、少なくとも表面透明ガラス、酢酸ビニル含有量が20〜35重量%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材層、該封止材に埋設された結晶型シリコン太陽電池素子、及び樹脂シートもしくはガラスからなる裏面保護層が積層されてなる太陽電池モジュールにおいて、前記表面透明ガラスと封止材層との間に、表面透明ガラスに接着した透明樹脂からなる層が形成されてなる太陽電池モジュールであって、
前記透明樹脂が、下記(1)〜(6)から選ばれる少なくとも1種の重合体に、アルコキシシリル基が導入されてなる変性重合体からなる透明樹脂であることを特徴とする太陽電池モジュール。
(1) ポリオレフィン
(2) 芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体の、全不飽和結合の90%以上が水素化されたブロック共重合体水素化物
(3) エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体
(4) エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体を金属化合物と反応させて得られたアイオノマー
(5) メタクリル酸エステル(共)重合体
(6) 酢酸ビニル含有量が20重量%未満であるエチレン・酢酸ビニル共重合体
【請求項2】
透明樹脂からなる層の厚さが5〜200μmである請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
透明樹脂の25℃における体積抵抗率が1×1014Ω・cm以上である請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
透明樹脂が、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体の、全不飽和結合の90%以上が水素化されたブロック共重合体水素化物に、アルコキシシリル基が導入されてなる変性重合体からなる透明樹脂である請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
表面透明ガラスに透明樹脂からなる層を積層固定した後、透明樹脂層を積層した表面透明ガラスに、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材シート、結晶型シリコン太陽電池素子、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材シート、及び樹脂シート又はガラスからなる裏面保護材をこの順に積層し、加熱しながら加圧することにより当該積層物を一体に積層固定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、結晶型シリコン素子を使用した太陽電池モジュールにおいて、電圧誘起出力低下(Potential Induced Degradation、以下、「PID」と略して表記する。
)を起こし難い太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電はクリーンエネルギーとして注目され、近年、太陽電池を用いたメガソーラー等、発電システムの大規模化が進んでいる。大規模発電システムでは、伝送損失を下げるためシステム電圧は600〜1000Vに高電圧化している。高電圧化に伴い、結晶型シリコン太陽電池を使用した大規模発電システムでは、長期使用期間中にPIDが発生する場合があることが問題となっている。
結晶型シリコン太陽電池モジュールは、図1に示すような結晶型シリコン素子3がエチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材2で埋設された状態で表面透明ガラス1に接着固定され、反対側は樹脂シート又はガラスからなる裏面保護層4が積層された構造が一般的である。PIDは、高温多湿の環境下、太陽電池モジュール内部回路(結晶型シリコン素子)と表面透明ガラスを介して接地されたフレームとの間に高電圧がかけられた状態で使用された場合に発生し易い現象であり、これを防止する技術が望まれている。
【0003】
PIDの発生を抑制するための方法として、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分とする封止材に代えて、エチレン・α−オレフィン共重合体を封止材に使用する方法(例えば、特許文献1〜3)や、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を封止材に使用する方法((例えば、特許文献4、5)等が提案されている。
【0004】
従来より太陽電池封止材としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体が汎用的に広く使用されており、エチレン・酢酸ビニル共重合体からなる封止材を用いる太陽電池モジュールの製造技術、製造設備等も普及している。
そのため、新規な封止材を使用することなく、汎用のエチレン・酢酸ビニル共重合体を使用した封止材を用いてPID発生を防止する技術開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−238857号公報
【特許文献2】国際公開WO2012/046456号
【特許文献3】国際公開WO2012/060086号
【特許文献4】国際公開WO2012/066783号
【特許文献5】国際公開WO2012/070245号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、結晶型シリコン素子を使用した太陽電池モジュールにおいて、汎用のエチレン・酢酸ビニル共重合体を使用した封止材を用いた場合にもPID発生を抑制できる太陽電池モジュールを提供すべく鋭意検討を進めた。その結果、透明ガラスとエチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材との間に、ガラスに接着した透明樹脂からなる層を形成することにより、PID発生を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かくして本発明の第1によれば、受光面側より、少なくとも表面透明ガラス、酢酸ビニル含有量が20〜35重量%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材層、該封止材に埋設された結晶型シリコン太陽電池素子、及び樹脂シートもしくはガラスからなる裏面保護層が積層されてなる太陽電池モジュールにおいて、前記表面透明ガラスと封止材層との間に、表面透明ガラスに接着した透明樹脂からなる層が形成されてなる太陽電池モジュールが提供される。
前記透明樹脂からなる層の厚さは、5〜200μmであることが好ましい。
前記透明樹脂は、25℃における体積抵抗率が1×1014Ω・cm以上であることが好ましい。
前記透明樹脂は、下記(1)〜(7)から選ばれる少なくとも1種からなる透明樹脂であることが好ましい。
(1) ポリオレフィン、
(2) 芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体の、全不飽和結合の90%以上が水素化されたブロック共重合体水素化物、
(3) エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、
(4) エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体を金属化合物と反応させて得られたアイオノマー、
(5) メタクリル酸エステル(共)重合体、
(6) 酢酸ビニル含有量が20重量%未満であるエチレン・酢酸ビニル共重合体、
(7) (1)〜(6)から選ばれた少なくとも1種の重合体にアルコキシシリル基が導入されてなる変性重合体。
また本発明の第2によれば、表面透明ガラス、透明樹脂からなるシート、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材シート、結晶型シリコン太陽電池素子、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材シート、及び樹脂シート又はガラスからなる裏面保護材をこの順に積層し、加熱しながら加圧することにより当該積層物を一体に積層固定することを特徴とする前記太陽電池モジュールの製造方法が提供される。
さらに、本発明の第3によれば、表面透明ガラスに透明樹脂からなる層を積層固定した後、透明樹脂層を積層した表面透明ガラスに、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材シート、結晶型シリコン太陽電池素子、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材シート、及び樹脂シート又はガラスからなる裏面保護材をこの順に積層し、加熱しながら加圧することにより当該積層物を一体に積層固定することを特徴とする前記太陽電池モジュールの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】太陽電池モジュールの例を示す模式図である。
図2】本発明に係る太陽電池モジュールの第1の実施形態の例を示す模式図である。
図3】本発明に係る太陽電池モジュールの第2の実施形態の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(I)太陽電池モジュール
本発明の太陽電池モジュールは、受光面側より、少なくとも表面透明ガラス、酢酸ビニル含有量が20〜35重量%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材層、該封止材に埋設された結晶型シリコン太陽電池素子、及び樹脂シートもしくはガラスからなる裏面保護層が積層されてなる太陽電池モジュールにおいて、前記表面透明ガラスと封止材層との間に、表面透明ガラスに接着した透明樹脂からなる層が形成されてなるものである。
【0010】
(透明樹脂)
本発明で、表面透明ガラスと封止材との間に層を形成するために使用される透明樹脂は、太陽電池に望まれる透明性、耐光性、耐熱性を有し、かつ良好な電気絶縁性を有する樹脂である。透明樹脂の全光線透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。透明樹脂の電気絶縁性は、その指標として25℃での体積抵抗率が1014Ω・cm以上、好ましくは1015Ω・cm以上を有するものが望ましい。
【0011】
透明樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチルペンテン等のオレフィン単独重合体; エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・4−メチルペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・1−ブテン・1−オクテン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体; エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5一エチリデンー2一ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・1一ブテン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・1一ブテン・5一エチリデンー2一ノルボルネン共重合体、エチレン・1一ブテン・ビニルノルボルネン共重合体等のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体;等のポリオレフィン; エチレン・ノルボルネン共重合体、エチレン・テトラシクロドデセン共重合体、ノルボルネン誘導体の開環メタセシス重合体水素化物、シクロヘキサジエン重合体等のシクロオレフィンポリマー; 芳香族ビニル化合物・共役ジエンのランダム共重合体又はブロック共重合体のジエン及び芳香族由来の二重結合を水素した芳香族ビニル化合物・共役ジエン共重合体水素化物; エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体; エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体及びエチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体を金属化合物と反応させて得られたアイオノマー;
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル; ポリカーボネート; ポリスチレン、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体等のスチレン系ポリマー; ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、メタクリル酸メチル・メタクリル酸トリシクロデシル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体; 酢酸ビニル含有量が20重量%以下であるエチレン・酢酸ビニル共重合体; ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体等のハロゲン系ポリマー; ポリウレタン; エポキシ樹脂; シリコン樹脂; ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリアリレート等の芳香族ポリマー; ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6T等のポリアミド; 硬化性ポリイソブチレンオリゴマー; 及び、これらのポリマーに、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エチレン性不飽和シラン化合物等によりカルボキシル基、酸無水物基、アルコキシシリル基等が導入されてなる変性ポリマー等が挙げられる。
【0012】
なかでも、透明性、耐光性の観点から、(1)ポリオレフィン、(2)芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体の、全不飽和結合の90%以上が水素化されたブロック共重合体水素化物(以下、「特定ブロック共重合体水素化物」ということがある)、(3)エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(4)エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体を金属化合物と反応させて得られたアイオノマー、(5)メタクリル酸エステル(共)重合体、(6)酢酸ビニル含有量が20重量%以下であるエチレン・酢酸ビニル共重合体及び、(7)これらの重合体にアルコキシシリル基が導入されてなる変性重合体が好ましい。
【0013】
本発明で好適に用いられる透明樹脂(1)〜(7)を以下に、より具体的に説明する。
(1)ポリオレフィン
本発明で好ましく用いられるポリオレフィンは、エチレン由来の構造単位を有するエチレン系ポリオレフィンである。なかでも、エチレン由来の構造単位が全構造単位に対し30重量%以上が好ましく、50重量%以上有するものがさらに好ましい。
【0014】
このようなポリオレフィンとしては、エチレンの単独重合体やエチレン・α−オレフィン共重合体が具体的には例示される。
本発明で好ましく使用されるエチレンの単独重合体は、エチレンにより導入される構成単位からなり、線状もしくは分岐状のポリエチレンである。透明性の観点から低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
本発明で好ましく使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンにより導入される構成単位を有するものである。
【0015】
α−オレフィンには特に制限はなく、エチレンと共重合が可能なα−オレフィンを適宜使用することができる。通常は、単素数が3〜20のα−オレフィンを、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用する。なかでも、炭素数が4以上のα−オレフィンが好ましく、炭素数4〜8のα−オレフィンがより好ましい。
このようなα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。入手の容易さ及び透明性が良い共重合体が得られることから、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
また、エチレン・α−オレフィン共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、透明性の観点からランダム共重合体が好ましい。
本発明において使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体は、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0016】
本発明で好ましく使用されるエチレン・α−オレフィン共重合体におけるエチレンとα−オレフィンの割合は特に制限されず、エチレンにより導入される構成単位が通常30〜99重量%、好ましくは50〜90重量%、炭素数3以上のα−オレフィンにより導入される構成単位が通常70〜10重量%、好ましくは50〜20重量%である。このような範囲にある場合は、透明性、耐光性等が良好である。また、本発明の目的を損なわない範囲において、α−オレフィン以外の共重合成分を含んでいても良い。
【0017】
(2)特定ブロック共重合体水素化物
本発明で好ましく使用される特定芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体の、全不飽和結合の90%以上が水素化されたブロック共重合体水素化物は、芳香族環に直接結合したビニル基を有する炭素数8〜20の芳香族ビニル化合物及び炭素数4〜10の鎖状共役ジエン化合物により導入される構成単位を有する高分子である。
【0018】
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の繰返し単位を主成分とするものであり、重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の繰返し単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。また、重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の繰返し単位以外の成分としては、鎖状共役ジエン由来の繰返し単位及び/又はその他のエチレン性不飽和化合物由来の繰返し単位を含むことができ、その含有量は通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の繰返し単位がこの範囲にあると、成形体は良好な耐熱性を有する。
【0019】
複数の重合体ブロック[A]は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、異なっていても良い。
【0020】
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の繰返し単位を主成分とするものであり、重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の繰返し単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。鎖状共役ジエン化合物由来の繰返し単位がこの範囲にあると、成形体は良好な柔軟性と耐衝撃性を有す。
【0021】
また、重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の繰返し単位以外の成分としては、芳香族ビニル化合物由来の繰返し単位及び/又はその他のエチレン性不飽和化合物由来の繰返し単位を含むことができ、その含有量は、重合体ブロック[B]に対し、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。重合体ブロック[B]中の芳香族ビニル化合物由来の繰返し単位及び/又はその他のエチレン性化合物由来の繰返し単位の含有量が増加すると、成形体の柔軟性や耐衝撃性が低下するおそれがある。
【0022】
ブロック共重合体が、複数個の重合体ブロック[B]を有する場合、複数個の重合体ブロック[B]は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、異なっていても良い。
【0023】
芳香族ビニル化合物としては、炭素数が8〜20の芳香族ビニル化合物の1種又は2種以上を組み合わせて使用することができ、炭素数が8〜12の芳香族ビニル化合物が好ましい。その具体例としては、スチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等が挙げられる。吸湿性の観点から、極性基を含有しない芳香族ビニル化合物が好ましく、工業的な入手し易さの観点から、スチレンが特に好ましい。
【0024】
鎖状共役ジエン系化合物としては、炭素数が4〜10の鎖状共役ジエン化合物の1種又は2種以上を組合せて使用することができ、炭素数が4〜6の鎖状共役ジエンが好ましい。その具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。吸湿性の観点から、極性基を含有しない鎖状共役ジエン系化合物が好ましく、重合制御性に優れる観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0025】
その他のエチレン性不飽和化合物としては、鎖状エチレン性不飽和化合物や環状エチレン性不飽和化合物が挙げられる。これらのエチレン性不飽和化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、酸無水物基又はハロゲン基を有しても良い。その他のエチレン性不飽和化合物としては、吸湿性の観点から、極性基を含有しないものが好ましく、鎖状オレフィン、環状オレフィンがより好ましく、鎖状オレフィンがさらに好ましい。鎖状オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等が、環状オレフィンとしては、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
【0026】
ブロック共重合体中の重合体ブロック[A]の数は、通常4個以下、好ましくは3個以下、より好ましくは2個である。また、重合体ブロック[B]の数は、通常3個以下、好ましくは2個以下、より好ましくは1個である。重合体ブロック[A]が複数存在する場合、重合体ブロック[A]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(A1)及びMw(A2)としたとき、該Mw(A1)とMw(A2)との比〔Mw(A1)/Mw(A2)〕は、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.2以下がさらに好ましい。また、重合体ブロック[B]が複数存在する場合、重合体ブロック[B]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(B1)及びMw(B2)としたとき、該Mw(B1)とMw(B2)との比〔Mw(B1)/Mw(B2)〕は、2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.2以下がさらに好ましい。
【0027】
ブロック共重合体[1]のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでも良いが、鎖状型ブロックであるものが、機械的強度に優れ好ましい。ブロック共重合体[1]の最も好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体である。
【0028】
ブロック共重合体中の、全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)は、20:80〜65:35が好ましく、30:70〜60:40がより好ましく、40:60〜55:45がさらに好ましい。(wA:wB)がこの範囲にあると、成形体の耐熱性、柔軟性等が良好である。
【0029】
本発明で好ましく使用される特定ブロック共重合体水素化物は、上記のブロック共重合体の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化したものである。その水素化率は通常90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、成形体の耐候性、耐熱性が良好である。
【0030】
不飽和結合の水素化方法や反応形態等は特に限定されず、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような水素化方法としては、例えば、国際公開WO2011/096389号、国際公開WO2012/043708号等に記載された方法を挙げることができる。
【0031】
(3)エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体
本発明で好ましく使用されるエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、エチレンとアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルにより導入される構成単位を有する高分子である。
【0032】
使用されるアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルには特に制限はなく、エチレンと共重合が可能なアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを適宜使用することができる。通常は、単素数が4〜20のアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用する。なかでも好ましいのは、炭素数が4〜10のアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルある。このようなアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルα−オレフィンの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ベンジル等が挙げられる。入手の容易さ、及び、透明性、耐熱性が高い共重合体が得られることから、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルが特に好ましい。
また、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、透明性の観点からランダム共重合体が好ましい。これらのエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
本発明で好ましく使用するエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体における、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルの割合は、エチレンにより導入される構成単位が全構成単位に対して、通常70〜99重量%、好ましくは80〜95重量%である。また、(メタ)アクリル酸エステルにより導入される構成単位が全構成単位に対して、通常30〜1重量%、好ましくは20〜5重量%である。このような範囲にある場合、成形品の透明性、耐熱性が良好である。
【0034】
(4)エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体を金属化合物と反応させて得られたアイオノマー
本発明で好ましく使用されるアイオノマーは、スクリュー押出機中で、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体を溶融混練しながらイオン源となる金属化合物と反応させて得られるアイオノマーである。
【0035】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体における不飽和カルボン酸の具体的としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が用いられる。なかでも、反応性が高いアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0036】
本発明で好ましく使用されるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体におけるエチレンと不飽和カルボン酸の割合は、エチレンにより導入される構成単位が全構成単位に対して、通常60〜96重量%、好ましくは70〜90重量%であり、不飽和カルボン酸により導入される構成単位が全構成単位に対して、通常40〜4重量%、好ましくは30〜10重量%である。このような範囲にある場合は、透明性、機械強度、加工性等が良好である。また、該共重合体には本発明の目的を損なわない範囲において他の重合成分、例えばアクリル酸やメタクリル酸のエステル、具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等共重合されたものであってもよい。
【0037】
イオン源となる金属化合物としては、各種金属の、酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、酢酸塩、ギ酸塩等が挙げられる。金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属; マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属;亜鉛、コバルト、クロム、銅等の遷移金属;アルミニウム等の典型金属;が挙げられる。イオン源となる金属化合物の使用量は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基を所望の中和度にするための化学量論的量であればよい。例えば、中和度が10〜90%になるような量である。
【0038】
(5)メタクリル酸エステル(共)重合体
本発明で好ましく使用されるメタクリル酸エステル(共)重合体は、メタクリル酸メチルと、必要に応じてメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルにより導入される構成単位を有する高分子である。
【0039】
必要に応じて使用されるメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルには、特に制限はなく、要求される特性に合わせて適宜使用することができる。通常は、炭素数が4〜20のメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルを、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用する。このようなメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0040】
本発明で好ましく使用されるメタクリル酸エステル(共)重合体における、メタクリル酸メチルと必要に応じて使用されるメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルの割合は、メタクリル酸メチルにより導入される構成単位が、全構成単位に対して通常60重量%以上であり、必要に応じて使用されるメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルにより導入される構成単位が、全構成単位に対して通常40%以下である。このような範囲にある場合は、透明性、耐熱性等が良好である。
【0041】
(6)エチレン・酢酸ビニル重合体
本発明で好ましく使用されるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、分子内に、エチレン由来の繰り返し単位と、酢酸ビニル由来の繰り返し単位を有し、酢酸ビニル由来の繰り返し単位の含有量が20重量%未満のものである。酢酸ビニル由来の繰り返し単位の含有量が少ないほど耐熱性、電気絶縁性に優れるが、透明性が低下し易い。酢酸ビニル由来の繰り返し単位の含有量は、通常1〜19重量%、好ましくは5〜10重量%である。このような範囲にある場合は、透明性、耐熱性、電気絶縁性等が良好である。
【0042】
(7)前記(1)〜(6)から選ばれた少なくとも1種の重合体にアルコキシシリル基が導入されてなる変性重合体
本発明で好ましく使用される変性重合体は、前記(1)〜(6)から選ばれた少なくとも1種の重合体にアルコキシシリル基が導入されたものである。アルコキシシリル基を導入することにより重合体のガラスとの接着性が高められる。アルコキシシリル基は、上記(1)〜(6)から選ばれた少なくとも1種の重合体に直接結合していても、アルキレン基等の2価の有機基を介して結合していても良い。
【0043】
アルコキシシリル基の導入方法としては、前記(1)〜(6)から選ばれた少なくとも1種の重合体とエチレン性不飽和シラン化合物とを、過酸化物の存在下で反応させる方法が好ましい。
【0044】
アルコキシシリル基の導入量は、前記(1)〜(6)から選ばれた少なくとも1種の重合体100重量部に対し、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部である。アルコキシシリル基の導入量が多過ぎると、所望のシート形状に溶融成形する前に微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋度が高くなり、ゲルが発生したり、溶融時の流動性が低下して成形性が低下する等の問題を生じる。アルコキシシリル基の導入量が少な過ぎると、ガラスとの接着性の向上が顕著でない。
【0045】
エチレン性不飽和シラン化合物としては、前記(1)〜(6)から選ばれた少なくとも1種の重合体とグラフト重合することで、前記(1)〜(6)から選ばれた少なくとも1種の重合体にアルコキシシリル基を導入することができるものであれば特に限定されない。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシランが好適に用いられる。
【0046】
これらのエチレン性不飽和シラン化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。エチレン性不飽和シラン化合物の使用量は、前記(1)〜(6)から選ばれた少なくとも1種の重合体100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部である。
【0047】
過酸化物としては、1分間半減期温度が170〜190℃のものが好ましく使用され、例えば、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド等が好適に用いられる。
【0048】
これらの過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。過酸化物の使用量は、前記(1)〜(6)から選ばれた少なくとも1種の重合体100重量部に対して、通常0.05〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部、より好ましくは0.2〜0.5重量である。
【0049】
前記(1)〜(6)から選ばれた少なくとも1種の重合体とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法は特に限定されない。例えば、二軸混練機にて所望の温度で所望の時間混練することによりアルコキシシリル基を導入する方法が挙げられる。混練温度は、通常180〜220℃、好ましくは185〜210℃、より好ましくは190〜200℃である。加熱混練時間は、通常0.1〜10分、好ましくは0.2〜5分、より好ましくは0.3〜2分程度である。温度、滞留時間が上記範囲になるようにして、連続的に混練、押出しをすればよい。
【0050】
(太陽電池モジュール)
本発明の太陽電池モジュールは、受光面側より、少なくとも表面透明ガラス、ガラスに接着した透明樹脂からなる層、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材層、該封止材に埋設された結晶型シリコン太陽電池素子、及び樹脂シート又はガラスからなる裏面保護層が積層されてなる。
以下、本発明で提供される太陽電池モジュールの実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0051】
本発明の太陽電池モジュールの好適な実施形態を図2に示す。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であり、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られない。
図2に示す太陽電池モジュールは、太陽光入射面側から、表面透明ガラス1、透明樹脂層5、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材層2、該封止材に埋設された結晶型シリコン太陽電池素子3及び裏面保護層4が積層された構造を有する。
【0052】
結晶型シリコン太陽電池素子3としては、単結晶シリコン太陽電池素子、多結晶シリコン太陽電池素子が挙げられる。
【0053】
表面透明ガラス1としては、透光性のものであれば、特に限定されない。その具体例としては、白板ガラス、ソーダガラス、シリカガラス、溶融石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。本発明によれば、安価で工業的に有利なソーダガラスを使用した場合にも、PIDの発生を抑止できる。
【0054】
透明樹脂層5は、前述した透明樹脂で形成された層である。層の厚さは、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μmである。厚さが5μmを下回る場合は、PIDを抑制する効果が小さく、200μmを超える場合は、光透過性が低下し、また、経済性に劣るため好ましくない。
【0055】
透明樹脂層5を形成する透明樹脂は、耐光性やガラスとの接着性を高めるために、耐光安定剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を配合されたものでも良い。
【0056】
また、透明樹脂層5は、図3に示すように、接着剤層6を介して表面透明ガラスと接着されていても良い。接着剤としては、耐光性、耐熱性に優れたものが好ましい。例えば、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、エチレン・酢酸ビニル共重合体系接着剤等が使用できる。
接着剤層は長期の光照射により黄変し易いため、その厚みは薄い方が好ましい。接着剤層の厚みは、通常20μm以下、好ましくは10μm以下である。
【0057】
エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材層2は、エチレン・酢酸ビニル共重合体に、シランカップリング剤、パーオキサイド、架橋助剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤等を配合した封止材シートを、加熱、加圧下で架橋させて形成されたものである。
【0058】
太陽電池封止材に使用されるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレンにより導入される構成単位の含有量が65〜80重量%、酢酸ビニルにより導入される構成単位の含有量は35〜20重量%である。
【0059】
太陽電池封止材に配合されるシランカップリング剤は、ガラス基材や結晶型シリコン太陽電池素子等に対する接着性を向上させるのに有用である。具体的な例としては、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を例示することができる。シランカップリング剤は、エチレン・酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、通常0.01〜5重量部程度配合される。
【0060】
太陽電池封止材に配合されるパーオキサイドは、分解温度(半減期が1時間である温度)が90〜180℃、とくに110〜160℃の有機過酸化物を用いるのが好ましい。
このような有機過酸化物の具体例としては、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、第3ブチルパーオキシアセテート、第3ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ第3ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、第3ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロルベンゾイルパーオキサイド、第3ブチルパーオキシイソブチレート、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、ジクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。パーオキサイドの好適な配合量は、種類によっても異なるが、エチレン・酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、通常0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部程度配合される。
【0061】
太陽電池封止材に配合される架橋助剤は、封止材の架橋度を高めて耐熱性を付与するために使用される。使用される架橋助剤としては、ポリアリル化合物やポリ(メタ)アクリロキシ化合物のような多不飽和化合物が挙げられる。その具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエートのようなポリアリル化合物、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートのようなポリ(メタ)アクリロキシ化合物、ジビニルベンゼン等を挙げることができる。架橋助剤はエチレン系共重合体100重量部に対し、0.5〜5重量部程度の割合で配合するのが効果的である。
【0062】
太陽電池封止材に配合される耐光安定剤や紫外線吸収剤は、長期耐久性を改善するために重要である。このような耐光安定剤や紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリチル酸エステル系化合物等が挙げられる。耐光安定剤や紫外線吸収剤の好適な配合量は、種類によっても異なるが、エチレン・酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜1重量部程度配合される。
【0063】
裏面保護層4は、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニル、ポリオレフィン、ナイロン等の樹脂からなるシート;や、それらを多層に積層したシート;防湿性を高めるために樹脂のシートに無機化合物が蒸着されたシート;樹脂シートとアルミニウム箔を積層したシート;光を反射させるために白色顔料が配合された樹脂シート;等で形成されたものである。裏面保護層5の厚さは、通常100〜600μm、好ましくは200〜400μmである。厚さが100μmを下回る場合は、部分放電電圧が小さくなり易く、600μmを超える場合は経済性に劣るため好ましくない。
【0064】
また、裏面保護層4は、透明なガラスであっても良い。裏面保護層4にガラスを使用する場合は、結晶型シリコン素子が配置されてない箇所は全体として透明となり、透光性のある屋根材や壁材として使用することができる。裏面保護層4にガラスを使用した場合も、裏面側のガラスには透明樹脂層を形成しなくても良い。
【0065】
(太陽電池モジュールの製造方法)
本発明の太陽電池モジュールの製造方法としては、例えば、(α)表面透明ガラス、透明樹脂からなるシート、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材シート、結晶型シリコン太陽電池素子、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材シート、及び裏面保護シート又は裏面保護ガラスをこの順に積層し、真空ラミネータ等を使用して、加熱しながら加圧することにより、一体に積層固定する方法、(β)表面透明ガラスに透明樹脂からなる層をあらかじめ積層固定した後、透明樹脂層を積層した面に、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材シート、結晶型シリコン太陽電池素子、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材シート、及び裏面保護シート又は裏面保護ガラスをこの順に積層し、加熱しながら加圧することにより当該積層物を一体に積層固定する方法等が挙げられる。
【0066】
(α)の方法では、透明樹脂からなるシートとして、厚さが40〜200μm程度の厚いシートを使用すると各部材を重ね合わせる際の操作性が良い。(β)の方法では、表面透明ガラスに透明樹脂からなる層を形成させる方法として、透明樹脂からなるシートを積層する方法の他に、透明樹脂を溶解させた溶液や透明樹脂を細かく分散させた水系エマルジョンを使用して、ガラス表面に塗布、乾燥して、厚さが5〜50μm程度の薄い透明樹脂層を形成する方法も適用できる。
【0067】
真空ラミネータ等を使用して、本発明の太陽電池モジュールを形成する積層物を一体に積層固定する場合の加熱温度は、通常120〜180℃、好ましくは140〜160℃である。加圧条件は、通常0.1MPa以下、封止材の流動性が高い場合は適宜圧力を下げて実施することができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、部及び%は、特に断りがない限り、重量基準である。
【0069】
以下に特性の測定法を示す。
(1)体積抵抗率
透明樹脂及び加熱架橋させた封止材を厚さ0.9〜1.2mmの試験片にして、JIS C2139に従って、25℃での値を測定した。
(2)PID試験
表面透明ガラス(厚さ3mmの白板ガラス、又は、ソーダガラス)の上に、透明樹脂からなる層、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材層、該封止材に埋設された結晶型シリコン太陽電池素子及び裏面保護層が一体に積層固定された太陽電池モジュールを作製した。
この試験用の太陽電池モジュールを、60℃、85%RH(相対湿度)の高温高湿環境下で、ガラス表面に水を張った状態にし、アルミニウム製フレームをアースに接続して、プラス端子とマイナス端子間に1000Vの直流電圧を印加して96時間保持した。高温高湿環境から取り出した太陽電池モジュールの出力を、ソーラーシミュレータ(PVS1116i、日清紡メカトロニクス社製)によりI−V特性を測定し、最大出力(Pm)を評価した。
試験後の最大出力電力(Pm)と初期値(Pm)との比(Pm/Pm)を保持率として算出した。
【0070】
[参考例1]
(変性ポリエチレンのシート)
市販の低密度ポリエチレン(製品名「ノバテック(登録商標) LF342M1」、融点113℃、日本ポリエチレン社製)のペレット100重量部に対して、ビニルトリメトキシシラン1.5部及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.15部を添加し、混合した。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度200℃、樹脂の滞留時間80〜90秒で混練しながら、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーで細かく切断して、変性ポリエチレン(PE−S)のペレット97部を得た。
ペレットのFT−IRスペクトルでは、1090cm−1にSi−OCH基及び825、739cm−1にSi−CH基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075、808、766cm−1と異なる位置に観察された。このことから、得られた変性ポリエチレン(PE−S)はメトキシシリル基を有することが確認された。
【0071】
得られた変性ポリエチレン(PE−S)のペレット100重量部に、紫外線吸収剤である2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(製品名「Tinuvin(登録商標) 329」、BASFジャパン社製)0.4部を添加し、混合した後、40mmφのスクリューを備えた樹脂溶融押出し機を有するTダイ式フィルム成形機(Tダイ幅600mm)及びエンボスロールを備えたフィルム引取り機を使用し、溶融樹脂温度200℃、Tダイ温度200℃、エンボスロール温度50℃の成形条件にて、押出しシートの片面はタッチロールでエンボスロールに押し当て、エンボス形状を付与しながら、厚さ50μm、幅500mmのシート(PE−S−F5)を押出し成形した。押出しシートはロールに巻き取り、回収した。
【0072】
また、同様の条件で押出しながらフィルムの引取り速度を変え、厚さ75μmのPETフィルムを間紙として供給しながら、厚さ20μm、幅500mmのシート(PE−S−F2)を押出し成形して得た。
【0073】
得られた変性ポリエチレンのシート(PE−S−F5)を20枚積層して、真空ラミネータを使用して、150℃で真空成形して厚さ約1mmの試験板を作製した。この試験板を用いて測定した体積抵抗率は、1×1016Ω・cm以上であった。
【0074】
[参考例2]
(変性エチレン・α−オレフィン共重合体のシート)
市販のエチレン・オクテン共重合体(製品名「アフィニティー(登録商標) PL1880」、融点100℃、ダウ・ケミカル日本社製)のペレットを使用し、樹脂温度190℃、滞留時間170〜180秒とする以外は参考例1と同様にして混練し、変性エチレン・1−オクテン共重合体(EOC−S)のペレット90部を得た。
ペレットのFT−IRスペクトルでは、1090cm−1にSi−OCH基及び825、739cm−1にSi−CH基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075、808、766cm−1と異なる位置に観察された。このことから、得られた変性エチレン・1−オクテン共重合体(EOC−S)はメトキシシリル基を有することが確認された。
【0075】
得られた変性エチレン・1−オクテン共重合体(PEO−S)のペレットを使用し、溶融樹脂温度190℃、Tダイ温度190℃とする以外は参考例1と同様にして、厚さ50μm、幅500mmのシート(EOC−S−F)を押出し成形して得た。
【0076】
得られた変性エチレン・1−オクテン共重合体のシート(EOC−S―F)を20枚積層して、真空ラミネータを使用して、150℃で真空成形して厚さ約1mmの試験板を作製した。この試験板を用いて測定した体積抵抗率は、1×1016Ω・cm以上であった。
【0077】
[参考例3]
(変性ブロック共重合体水素化物のシート)
国際公開WO2012/043708号に開示されているのと同様の方法で変性ブロック共重合体水素化物を合成した。
すなわち、ポリスチレンブロック[1]−ポリイソプレンブロック[2]−ポリスチレンブロック[3]からなり、ブロック[1]:ブロック[2]:ブロック[3]の重量比が25:50:25であるブロック共重合体の、全不飽和結合のほぼ100%が水素化されたブロック共重合体水素化物100重量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.2部を添加し、混合した。この混合物を、参考例1と同様にして混練し、変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)のペレット95部を得た。
ペレットのFT−IRスペクトルには、1090cm−1にSi−OCH基及び825、739cm−1にSi−CH基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075、808、766cm−1と異なる位置に観察された。このことから、得られた変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)はメトキシシリル基を有することが確認された。
【0078】
得られた変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)のペレットを使用し、溶融樹脂温度220℃、Tダイ温度200℃、エンボスロール温度80℃のとする以外は参考例1と同様にして、厚さ50μm、幅500mmのシート(HBC−S−F)を押出し成形して得た。
【0079】
得られた変性ブロック共重合体水素化物のシート(HBC−S−F)を20枚積層して、真空ラミネータを使用して、150℃で真空成形して厚さ約1mmの試験板を作製した。この試験板を用いて測定した体積抵抗率は、1×1016Ω・cm以上であった。
【0080】
[参考例4]
(変性エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体のシート)
市販のエチレン・アクリル酸エチル共重合体(NUC−6221、アクリル酸エチル含有量10重量%、融点96℃、日本ユニカー社製)のペレットを使用し、樹脂温度190℃、滞留時間170〜180秒とする以外は参考例1と同様にして混練し、変性エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEAC−S)のペレット93部を得た。
ペレットのFT−IRスペクトルでは、1090cm−1にSi−OCH基及び825、739cm−1にSi−CH基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075、808、766cm−1と異なる位置に観察された。このことから、得られた変性エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEAC−S)はメトキシシリル基を有することが確認された。
【0081】
得られた変性エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEAC−S)のペレットを使用し、溶融樹脂温度190℃、Tダイ温度190℃とする以外は参考例1と同様にして、厚さ50μm、幅500mmのシート(EEAC−S−F)を押出し成形して得た。
【0082】
得られた変性エチレン・アクリル酸エチル共重合体のシート(EEAC−S−F)を20枚積層して、真空ラミネータを使用して、150℃で真空成形して厚さ約1mmの試験板を作製した。この試験板を用いて測定した体積抵抗率は、9.2×1015Ω・cmであった。
【0083】
[参考例5]
(アイオノマー樹脂のシート)
Znを対イオンとするエチレン・メタクリル酸共重合体である市販のアイオノマー樹脂(製品名「ハイミラン(登録商標) 1652」、融点98℃、三井・デュポンポリケミカル社製)のペレット100重量部に、参考例1で使用したのと同じ2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール0.4部を添加し、混合した。この混合物を、参考例1で使用したのと同じTダイ式フィルム成形機及びフィルム引取り機を使用し、溶融樹脂温度175℃、Tダイ温度175℃、エンボスロール温度50℃の成形条件にて、エンボス形状を付与しながら、厚さ50μm、幅500mmのシート(EMAI−F)を押出し成形して得た。
【0084】
得られたアイオノマー樹脂のシート(EMAI−F)を20枚積層して、真空ラミネータを使用して、150℃で真空成形して厚さ約1mmの試験板を作製した。この試験板を用いて測定した体積抵抗率は、1×1016Ω・cm以上であった。
【0085】
[参考例6]
(メタクリル酸エステル(共)重合体のプラスチゾル)
ステンレス製反応機に、メタクリル酸メチル50重量部、アクリル酸n−ブチル20重量部、炭素数12〜18のアルキル基を有するソジウムアルキルサルフェート1重量部、過硫酸カリウム0.1重量部及び蒸留水150重量部を添加し、撹拌しつつ重合温度50℃にて乳化重合を行った。得られたラテックス(一次粒子平均粒径0.40μm)をシード重合のシードとして更にメタクリル酸メチル35重量部、メタクリル酸グリシジル5重量部、t−ドデシルメルカプタン0.1重量部を追加して引続き50℃にて重合し、重合率92%で反応を終え、一次粒子の平均粒径が0.45μmの固形分濃度が39.8重量%であるラテックスを得た。
得られたラテックス100重量部を60℃に加熱し、これを凝固槽中で60℃に加熱した1.0%の硫酸アルミニウム水溶液300重量部からなる凝固液に攪拌下でフィードして凝固を行った。その後スラリーを20℃に冷却し、脱水してから真空乾燥して、核部がメタクリル酸メチル・アクリル酸n−ブチル共重合体から成り、外殻部がメタクリル酸メチル・メタクリル酸グリシジル共重合体から成る平均粒径0.45μmのメタクリル酸エステル共重合体の樹脂粉末(MGMC−P)を得た。
【0086】
得られた樹脂粉末(MGMC−P)100重量部に対して、ナフテニックプロセスオイル(製品名「SUNTHENE(登録商標) 450」、ナフテン類42重量%、芳香族類15重量%、パラフィン類43重量%、日本サン石油社製)40部、テトラ−2−エチルヘキシルピロメリテート30部、2,2’−メチレンビス−4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール10部を配合した材料を、真空式高速脱泡混合機に入れ、混合、脱泡してプラスチゾルを得た。
【0087】
得られたプラスチゾルを150×150mmのSUS−316製板の上に、ロールコーターを使用して塗布し、140℃で10分間加熱して固着させる操作を繰返し、約0.9mm厚みの塗膜を固着させた。この塗膜の体積抵抗率を測定したところ、7.5×1014Ω・cmであった。
【0088】
[参考例7]
(変性エチレン・酢酸ビニル共重合体のシート)
市販のエチレン・酢酸ビニル共重合体(製品名「V206」、酢酸ビニル含有量6重量%、宇部丸善ポリエチレン社製)のペレットを使用し、樹脂温度190℃、滞留時間170〜180秒とする以外は参考例1と同様にして混練し、変性エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA6−S)のペレット97部を得た。
ペレットのFT−IRスペクトルでは、1090cm−1にSi−OCH基及び825、739cm−1にSi−CH基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075、808、766cm−1と異なる位置に観察された。このことから、得られた変性エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA6−S)はメトキシシリル基を有することが確認された。
【0089】
得られた変性エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA−S)のペレットを使用し、溶融樹脂温度190℃、Tダイ温度190℃とする以外は参考例1と同様にして、厚さ50μm、幅500mmのシート(EVA6−S−F)を押出し成形して得た。
【0090】
得られた変性エチレン・酢酸ビニル共重合体のシート(EVA6−S−F)を20枚積層して、真空ラミネータを使用して、150℃で真空成形して厚さ約1mmの試験板を作製した。この試験板を用いて測定した体積抵抗率は、3.5×1015Ω・cmであった。
【0091】
[参考例8]
(エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材)
エチレン・酢酸ビニル共重合体(製品名「エバフレックス(登録商標) EV150」、酢酸ビニル含有量33重量%、三井・デュポンポリケミカル社製)のペレット95重量部に、トリアリルイソシアヌレート5重量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM−503」、信越化学工業社製)0.5重量部、ジクミルパーオキサイド(商品名「パークミルD」、日油社製)1.0重量部及び2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール0.4部を添加し、混合した。この混合物を、参考例1で使用したのと同じTダイ式フィルム成形機及びフィルム引取り機を使用し、溶融樹脂温度90℃、Tダイ温度90℃、エンボスロール温度50℃の成形条件にて、押出しシートの片面はタッチロールでエンボスロールに押し当て、エンボス形状を付与しながら、厚さ500μm、幅500mmの封止材シート(EVA33−F)を押出し成形して得た。
【0092】
得られたエチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材シート(EVA33−F)を2枚積層して、真空ラミネータを使用して、150℃、圧力0.06MPaで30分間加熱架橋させて、厚さ約1mmの試験板を作製した。この試験板を用いて測定した体積抵抗率は、2.7×1013Ω・cmであった。
【0093】
[実施例1]
白板ガラス(450×360mm×厚さ3.2mm)に、参考例1で作成した変性ポリエチレンの厚さ50μmのシート(PE−S−F5)及び離形用のPETフィルム(厚さ100μm)を積層した。この積層物を真空ラミネータ(PVL0505S、日清紡メカトロニクス社製)を使用して、温度120℃で5分間予熱した後、温度120℃、圧力0.1MPaで5分間加圧した。冷却した後、PETフィルムを除去して、変性ポリエチレン(PE−S)が積層固定されたガラス板を得た。
変性ポリエチレン(PE−S)が積層固定されたガラス板に、更に参考例8で作成した封止材シート(EVA33−F)、結晶型シリコン太陽電池素子(多結晶シリコンセル、155×155mm×厚さ200μm、アドバンテック社製、セル4枚をタブ線で直列に連結)、封止材シート(EVA33−F)及び裏面保護シート(ポリフッ化ビニル/ポリエチレンテレフタレート/ポリフッ化ビニル:37/250/37μm多層シート)をこの順に積層した。裏面側の封止材シート及び裏面保護シートからは、あらかじめ一部の切り込みヵ所からセルに連結したプラス端子とマイナス端子を取り出しておいた。
この積層物を、上記と同じ真空ラミネータを使用して、温度150℃で5分間予熱した後、温度150℃、圧力0.06MPaで25分間加圧した。冷却して取り出した後、ガラスからはみ出した封止材、裏面保護シートを切削除去し、モジュールの端面にブチルゴムを付与してアルミニウム製フレームに固定した。その後、端子を取り出した裏面保護層の切れ込み部位はRTVシリコーンを付与して硬化させ、絶縁封止して、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0094】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm)13.95Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.88W(保持率99.5%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0095】
[比較例1]
白板ガラスにあらかじめ変性ポリエチレンの層を積層しないこと以外は実施例1と同様にして、白板ガラス、参考例8で作成した封止材シート(EVA33−F)、結晶型シリコン太陽電池素子、封止材シート(EVA33−F)及び裏面保護シートをこの順に積層し、実施例1と同様の条件にて真空ラミネートして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0096】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm)13.94Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は10.33W(保持率74.1%)で、大きな出力低下が認められた。EL画像測定の結果、4枚のセルの内1枚のセルはEL発光が非常に弱く、PIDが発生していることが確認された。
【0097】
[実施例2]
変性ポリエチレンの厚さ50μmのシート(PE−S−F5)に代えて、参考例1で作成した変性ポリエチレンの厚さ20μmのシート(PE−S−F2)を使用する以外は実施例1と同様にして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0098】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm)13.97Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.86W(保持率99.2%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0099】
[実施例3]
変性ポリエチレンの厚さ50μmのシート(PE−S−F5)に代えて、参考例2で作成した変性エチレン・1−オクテン共重合体の厚さ50μmのシート(EOC−S−F)を使用する以外は実施例1と同様にして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0100】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm)13.96Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.87W(保持率99.4%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0101】
[実施例4]
変性ポリエチレンの厚さ50μmのシート(PE−S−F5)に代えて、参考例3で作成した変性ブロック共重合体水素化物の厚さ50μmのシート(HBC−S−F)を使用する以外は実施例1と同様にして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0102】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm)13.98Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.94W(保持率99.7%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PIDの発生は認められなかった。
【0103】
[実施例5]
参考例3で得た変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)の100重量部をトルエン300重量部に溶解させた。この溶液を、実施例1で使用したのと同様の白板ガラスの上にバーコーターを使用して塗布し、乾燥させた。ガラス上に形成された塗膜の厚さは8μmであった。
変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)の塗膜が形成された白板ガラス、参考例8で作成した封止材シート(EVA33−F)、結晶型シリコン太陽電池素子、封止材シート(EVA33−F)及び裏面保護シートをこの順に積層し、実施例1と同様の条件にて真空ラミネートして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0104】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm)13.96Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.59W(保持率97.3%)で、出力の低下は少なかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0105】
[実施例6]
実施例5と同様に、参考例3で得た変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)の溶液を、白板ガラスの上にバーコーターを使用して塗布し、乾燥させて厚さ3μmの塗膜を形成させた。
得られた変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)の塗膜が形成された白板ガラスに、参考例8で作成した封止材シート(EVA33−F)、結晶型シリコン太陽電池素子、封止材シート(EVA33−F)及び裏面保護シートをこの順に積層し、実施例1と同様の条件にて真空ラミネートして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0106】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm)13.97Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は12.74W(保持率91.1%)で、比較例1より出力の低下はかなり少なかった。EL画像測定の結果、顕著なEL発光の弱化は見られず、明白なPIDの発生は確認できなかった。
【0107】
[実施例7]
白板ガラスに代えて、ソーダガラス(450×360mm×厚さ3.2mm)を使用し、変性ポリエチレンの厚さ50μmシート(PE−S−F5)に代えて、参考例3で作成した変性ブロック共重合体水素化物の厚さ50μmのシート(HBC−S−F)を使用する以外は実施例1と同様にして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0108】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。ソーダガラスの光吸収により初期の最大出力(Pm)は13.14Wで、白板ガラスを使用した場合に比較して出力は約6%低かったが、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.10W(保持率99.7%)で、出力の低下は無かった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0109】
[実施例8]
変性ポリエチレンの厚さ50μmのシート(PE−S−F5)に代えて、参考例4で作成した変性エチレン・アクリル酸エチル共重合体の厚さ50μmのシート(EEAC−S―F)を使用する以外は実施例1と同様にして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0110】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm)13.94Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.82W(保持率99.1%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0111】
[実施例9]
変性ポリエチレンの厚さ50μmのシート(PE−S−F5)に代えて、参考例5で作成したアイオノマー樹脂の厚さ50μmのシート(EMAI−F)を使用する以外は実施例1と同様にして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0112】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm)13.93Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.84W(保持率99.4%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0113】
[実施例10]
参考例6で得たメタクリル酸エステル共重合体(MGMC)の樹脂粉末を含んだプラスチゾルを、実施例1で使用したのと同様の白板ガラスの上にロールコーターを使用して塗布し、140℃で10分間加熱して固着させた。ガラス上に形成された塗膜の厚さは12μmであった。
メタクリル酸エステル共重合体(MGMC)の塗膜が形成された白板ガラス、参考例8で作成した封止材シート(EVA33−F)、結晶型シリコン太陽電池素子、封止材シート(EVA33−F)及び裏面保護シートをこの順に積層し、実施例1と同様の条件にて真空ラミネートして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0114】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm)13.39Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は12.75W(保持率95.2%)で、大幅な出力の低下はなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と大きな差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0115】
[実施例11]
変性ポリエチレンの厚さ50μmのシート(PE−S−F5)に代えて、参考例7で作成した変性エチレン・酢酸ビニル共重合体の厚さ50μmのシート(EVA6−S−F)を使用する以外は実施例1と同様にして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0116】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm)13.95Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.81W(保持率99.0%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0117】
[参考例9]
(接着層を有するポリエチレンのシート)
参考例1で使用したのと同じ市販の低密度ポリエチレンのペレット100重量部に、参考例1で使用したのと同じ2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール0.4部を添加し、混合した後、参考例1で使用したのと同じTダイ式フィルム成形機及びフィルム引取り機を使用し、溶融樹脂温度200℃、Tダイ温度200℃、エンボスロール温度50℃の成形条件にて、厚さ50μm、幅500mmのシート(PE−F)を押出し成形して得た。
【0118】
得られたポリエチレンのシート上に、実施例5で調整した変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)のトルエン溶液を、バーコーターを使用して塗布し、乾燥させた。ポリエチレンのシート上に形成された塗膜の厚さは8μmであった。
次に、ポリエチレンのシートを反転し、もう一方の面にも同様にして変性ブロック共重合体水素化物の塗膜を形成した。
【0119】
[実施例12]
実施例1で使用したのと同様の白板ガラスに、参考例8で作成した変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)の接着層を有するポリエチレンのシート、実施例1で使用したのと同様の参考例7で作成した封止材シート(EVA−F)、結晶型シリコン太陽電池素子、封止材シート(EVA−F)及び裏面保護シートをこの順に積層した。この積層物を、真空ラミネータを使用して、温度150℃で5分間予熱した後、温度150℃、圧力0.06MPaで25分間加圧した。冷却後、得られたモジュールを実施例1と同様にしてアルミニウム製フレームに固定して、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0120】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm)13.84Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.81W(保持率99.8%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0121】
[実施例13]
ポリマー末端にメトキシシリル基が導入されたポリイソブチレンオリゴマー(製品名「エピオン(登録商標) 303S」、カネカ社製)100重量部にトルエン100重量部及び参考例1で使用したのと同じ2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール0.4部を加えて溶解した。この溶液を実施例1で使用したのと同様の白板ガラスに、バーコーターにより塗布した。乾燥して揮発成分を除去した後、温度85℃、湿度85%の高温高湿槽内で24時間保持し、表面にポリイソブチレン硬化膜を形成した。ガラス上に形成された塗膜の厚さは25μmであった。
ポリイソブチレン硬化膜が形成された白板ガラス、参考例8で作成した封止材シート(EVA33−F)、結晶型シリコン太陽電池素子、封止材シート(EVA33−F)及び裏面保護シートをこの順に積層し、実施例1と同様の条件にて真空ラミネートして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0122】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm)13.95Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.85W(保持率99.3%)で、出力の低下は少なかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0123】
実施例及び比較例の結果から以下のことがわかる。
透明ガラスとエチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材との間に、ガラスに接着した本発明の透明樹脂からなる層を形成することにより、PID発生を抑制できる(実施例1〜13)。
透明樹脂層の厚さは5〜10μm以上あれば、PID発生の抑制効果は高い(実施例1〜5及び実施例7〜13)。
透明樹脂層の厚さが5μmに満たない場合も、PID発生の抑制効果が認められた(実施例6)。
白板ガラスに比べて金属含有量の多いソーダガラスを使用した場合でも、透明樹脂層を設置することにより、PID発生の抑制効果がある(実施例7)。
エチレン・酢酸ビニル共重合体であっても、封止材に使用するエチレン・酢酸ビニル共重合体よりも酢酸ビニル含有量が小さく、体積抵抗率が高いエチレン・酢酸ビニ共重合体からなる層を透明ガラスと封止材の間に形成することにより、PIDの発生を抑制できる(実施例11)。
一方、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分とした、体積抵抗率が1×1014Ω・cmを下回る封止材を使用した場合、結晶型シリコン太陽電池モジュールにおいて、高温高湿環境下で高電圧が印加されるとPIDが発生する場合がある(比較例1)。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の太陽電池モジュールは、汎用のエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる封止材を使用した場合にも、高温高湿環境下でPIDの発生を抑制し、安定した出力特性を維持することができるため、新規な封止材を導入する場合に比較して、供給量や経済性の面で有利であり、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0125】
1・・・表面透明ガラス
2・・・エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材層
3・・・結晶型シリコン太陽電池素子
4・・・裏面保護層
5・・・透明樹脂層裏面保護層
6・・・接着剤層
図1
図2
図3