【実施例】
【0068】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、部及び%は、特に断りがない限り、重量基準である。
【0069】
以下に特性の測定法を示す。
(1)体積抵抗率
透明樹脂及び加熱架橋させた封止材を厚さ0.9〜1.2mmの試験片にして、JIS C2139に従って、25℃での値を測定した。
(2)PID試験
表面透明ガラス(厚さ3mmの白板ガラス、又は、ソーダガラス)の上に、透明樹脂からなる層、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材層、該封止材に埋設された結晶型シリコン太陽電池素子及び裏面保護層が一体に積層固定された太陽電池モジュールを作製した。
この試験用の太陽電池モジュールを、60℃、85%RH(相対湿度)の高温高湿環境下で、ガラス表面に水を張った状態にし、アルミニウム製フレームをアースに接続して、プラス端子とマイナス端子間に1000Vの直流電圧を印加して96時間保持した。高温高湿環境から取り出した太陽電池モジュールの出力を、ソーラーシミュレータ(PVS1116i、日清紡メカトロニクス社製)によりI−V特性を測定し、最大出力(Pm)を評価した。
試験後の最大出力電力(Pm)と初期値(Pm
0)との比(Pm/Pm
0)を保持率として算出した。
【0070】
[参考例1]
(変性ポリエチレンのシート)
市販の低密度ポリエチレン(製品名「ノバテック(登録商標) LF342M1」、融点113℃、日本ポリエチレン社製)のペレット100重量部に対して、ビニルトリメトキシシラン1.5部及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.15部を添加し、混合した。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度200℃、樹脂の滞留時間80〜90秒で混練しながら、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーで細かく切断して、変性ポリエチレン(PE−S)のペレット97部を得た。
ペレットのFT−IRスペクトルでは、1090cm
−1にSi−OCH
3基及び825、739cm
−1にSi−CH
2基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075、808、766cm
−1と異なる位置に観察された。このことから、得られた変性ポリエチレン(PE−S)はメトキシシリル基を有することが確認された。
【0071】
得られた変性ポリエチレン(PE−S)のペレット100重量部に、紫外線吸収剤である2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(製品名「Tinuvin(登録商標) 329」、BASFジャパン社製)0.4部を添加し、混合した後、40mmφのスクリューを備えた樹脂溶融押出し機を有するTダイ式フィルム成形機(Tダイ幅600mm)及びエンボスロールを備えたフィルム引取り機を使用し、溶融樹脂温度200℃、Tダイ温度200℃、エンボスロール温度50℃の成形条件にて、押出しシートの片面はタッチロールでエンボスロールに押し当て、エンボス形状を付与しながら、厚さ50μm、幅500mmのシート(PE−S−F5)を押出し成形した。押出しシートはロールに巻き取り、回収した。
【0072】
また、同様の条件で押出しながらフィルムの引取り速度を変え、厚さ75μmのPETフィルムを間紙として供給しながら、厚さ20μm、幅500mmのシート(PE−S−F2)を押出し成形して得た。
【0073】
得られた変性ポリエチレンのシート(PE−S−F5)を20枚積層して、真空ラミネータを使用して、150℃で真空成形して厚さ約1mmの試験板を作製した。この試験板を用いて測定した体積抵抗率は、1×10
16Ω・cm以上であった。
【0074】
[参考例2]
(変性エチレン・α−オレフィン共重合体のシート)
市販のエチレン・オクテン共重合体(製品名「アフィニティー(登録商標) PL1880」、融点100℃、ダウ・ケミカル日本社製)のペレットを使用し、樹脂温度190℃、滞留時間170〜180秒とする以外は参考例1と同様にして混練し、変性エチレン・1−オクテン共重合体(EOC−S)のペレット90部を得た。
ペレットのFT−IRスペクトルでは、1090cm
−1にSi−OCH
3基及び825、739cm
−1にSi−CH
2基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075、808、766cm
−1と異なる位置に観察された。このことから、得られた変性エチレン・1−オクテン共重合体(EOC−S)はメトキシシリル基を有することが確認された。
【0075】
得られた変性エチレン・1−オクテン共重合体(PEO−S)のペレットを使用し、溶融樹脂温度190℃、Tダイ温度190℃とする以外は参考例1と同様にして、厚さ50μm、幅500mmのシート(EOC−S−F)を押出し成形して得た。
【0076】
得られた変性エチレン・1−オクテン共重合体のシート(EOC−S―F)を20枚積層して、真空ラミネータを使用して、150℃で真空成形して厚さ約1mmの試験板を作製した。この試験板を用いて測定した体積抵抗率は、1×10
16Ω・cm以上であった。
【0077】
[参考例3]
(変性ブロック共重合体水素化物のシート)
国際公開WO2012/043708号に開示されているのと同様の方法で変性ブロック共重合体水素化物を合成した。
すなわち、ポリスチレンブロック[1]−ポリイソプレンブロック[2]−ポリスチレンブロック[3]からなり、ブロック[1]:ブロック[2]:ブロック[3]の重量比が25:50:25であるブロック共重合体の、全不飽和結合のほぼ100%が水素化されたブロック共重合体水素化物100重量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.2部を添加し、混合した。この混合物を、参考例1と同様にして混練し、変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)のペレット95部を得た。
ペレットのFT−IRスペクトルには、1090cm
−1にSi−OCH
3基及び825、739cm
−1にSi−CH
2基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075、808、766cm
−1と異なる位置に観察された。このことから、得られた変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)はメトキシシリル基を有することが確認された。
【0078】
得られた変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)のペレットを使用し、溶融樹脂温度220℃、Tダイ温度200℃、エンボスロール温度80℃のとする以外は参考例1と同様にして、厚さ50μm、幅500mmのシート(HBC−S−F)を押出し成形して得た。
【0079】
得られた変性ブロック共重合体水素化物のシート(HBC−S−F)を20枚積層して、真空ラミネータを使用して、150℃で真空成形して厚さ約1mmの試験板を作製した。この試験板を用いて測定した体積抵抗率は、1×10
16Ω・cm以上であった。
【0080】
[参考例4]
(変性エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体のシート)
市販のエチレン・アクリル酸エチル共重合体(NUC−6221、アクリル酸エチル含有量10重量%、融点96℃、日本ユニカー社製)のペレットを使用し、樹脂温度190℃、滞留時間170〜180秒とする以外は参考例1と同様にして混練し、変性エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEAC−S)のペレット93部を得た。
ペレットのFT−IRスペクトルでは、1090cm
−1にSi−OCH
3基及び825、739cm
−1にSi−CH
2基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075、808、766cm
−1と異なる位置に観察された。このことから、得られた変性エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEAC−S)はメトキシシリル基を有することが確認された。
【0081】
得られた変性エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEAC−S)のペレットを使用し、溶融樹脂温度190℃、Tダイ温度190℃とする以外は参考例1と同様にして、厚さ50μm、幅500mmのシート(EEAC−S−F)を押出し成形して得た。
【0082】
得られた変性エチレン・アクリル酸エチル共重合体のシート(EEAC−S−F)を20枚積層して、真空ラミネータを使用して、150℃で真空成形して厚さ約1mmの試験板を作製した。この試験板を用いて測定した体積抵抗率は、9.2×10
15Ω・cmであった。
【0083】
[参考例5]
(アイオノマー樹脂のシート)
Znを対イオンとするエチレン・メタクリル酸共重合体である市販のアイオノマー樹脂(製品名「ハイミラン(登録商標) 1652」、融点98℃、三井・デュポンポリケミカル社製)のペレット100重量部に、参考例1で使用したのと同じ2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール0.4部を添加し、混合した。この混合物を、参考例1で使用したのと同じTダイ式フィルム成形機及びフィルム引取り機を使用し、溶融樹脂温度175℃、Tダイ温度175℃、エンボスロール温度50℃の成形条件にて、エンボス形状を付与しながら、厚さ50μm、幅500mmのシート(EMAI−F)を押出し成形して得た。
【0084】
得られたアイオノマー樹脂のシート(EMAI−F)を20枚積層して、真空ラミネータを使用して、150℃で真空成形して厚さ約1mmの試験板を作製した。この試験板を用いて測定した体積抵抗率は、1×10
16Ω・cm以上であった。
【0085】
[参考例6]
(メタクリル酸エステル(共)重合体のプラスチゾル)
ステンレス製反応機に、メタクリル酸メチル50重量部、アクリル酸n−ブチル20重量部、炭素数12〜18のアルキル基を有するソジウムアルキルサルフェート1重量部、過硫酸カリウム0.1重量部及び蒸留水150重量部を添加し、撹拌しつつ重合温度50℃にて乳化重合を行った。得られたラテックス(一次粒子平均粒径0.40μm)をシード重合のシードとして更にメタクリル酸メチル35重量部、メタクリル酸グリシジル5重量部、t−ドデシルメルカプタン0.1重量部を追加して引続き50℃にて重合し、重合率92%で反応を終え、一次粒子の平均粒径が0.45μmの固形分濃度が39.8重量%であるラテックスを得た。
得られたラテックス100重量部を60℃に加熱し、これを凝固槽中で60℃に加熱した1.0%の硫酸アルミニウム水溶液300重量部からなる凝固液に攪拌下でフィードして凝固を行った。その後スラリーを20℃に冷却し、脱水してから真空乾燥して、核部がメタクリル酸メチル・アクリル酸n−ブチル共重合体から成り、外殻部がメタクリル酸メチル・メタクリル酸グリシジル共重合体から成る平均粒径0.45μmのメタクリル酸エステル共重合体の樹脂粉末(MGMC−P)を得た。
【0086】
得られた樹脂粉末(MGMC−P)100重量部に対して、ナフテニックプロセスオイル(製品名「SUNTHENE(登録商標) 450」、ナフテン類42重量%、芳香族類15重量%、パラフィン類43重量%、日本サン石油社製)40部、テトラ−2−エチルヘキシルピロメリテート30部、2,2’−メチレンビス−4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール10部を配合した材料を、真空式高速脱泡混合機に入れ、混合、脱泡してプラスチゾルを得た。
【0087】
得られたプラスチゾルを150×150mmのSUS−316製板の上に、ロールコーターを使用して塗布し、140℃で10分間加熱して固着させる操作を繰返し、約0.9mm厚みの塗膜を固着させた。この塗膜の体積抵抗率を測定したところ、7.5×10
14Ω・cmであった。
【0088】
[参考例7]
(変性エチレン・酢酸ビニル共重合体のシート)
市販のエチレン・酢酸ビニル共重合体(製品名「V206」、酢酸ビニル含有量6重量%、宇部丸善ポリエチレン社製)のペレットを使用し、樹脂温度190℃、滞留時間170〜180秒とする以外は参考例1と同様にして混練し、変性エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA6−S)のペレット97部を得た。
ペレットのFT−IRスペクトルでは、1090cm
−1にSi−OCH
3基及び825、739cm
−1にSi−CH
2基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075、808、766cm
−1と異なる位置に観察された。このことから、得られた変性エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA6−S)はメトキシシリル基を有することが確認された。
【0089】
得られた変性エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA−S)のペレットを使用し、溶融樹脂温度190℃、Tダイ温度190℃とする以外は参考例1と同様にして、厚さ50μm、幅500mmのシート(EVA6−S−F)を押出し成形して得た。
【0090】
得られた変性エチレン・酢酸ビニル共重合体のシート(EVA6−S−F)を20枚積層して、真空ラミネータを使用して、150℃で真空成形して厚さ約1mmの試験板を作製した。この試験板を用いて測定した体積抵抗率は、3.5×10
15Ω・cmであった。
【0091】
[参考例8]
(エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材)
エチレン・酢酸ビニル共重合体(製品名「エバフレックス(登録商標) EV150」、酢酸ビニル含有量33重量%、三井・デュポンポリケミカル社製)のペレット95重量部に、トリアリルイソシアヌレート5重量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM−503」、信越化学工業社製)0.5重量部、ジクミルパーオキサイド(商品名「パークミルD」、日油社製)1.0重量部及び2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール0.4部を添加し、混合した。この混合物を、参考例1で使用したのと同じTダイ式フィルム成形機及びフィルム引取り機を使用し、溶融樹脂温度90℃、Tダイ温度90℃、エンボスロール温度50℃の成形条件にて、押出しシートの片面はタッチロールでエンボスロールに押し当て、エンボス形状を付与しながら、厚さ500μm、幅500mmの封止材シート(EVA33−F)を押出し成形して得た。
【0092】
得られたエチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材シート(EVA33−F)を2枚積層して、真空ラミネータを使用して、150℃、圧力0.06MPaで30分間加熱架橋させて、厚さ約1mmの試験板を作製した。この試験板を用いて測定した体積抵抗率は、2.7×10
13Ω・cmであった。
【0093】
[実施例1]
白板ガラス(450×360mm×厚さ3.2mm)に、参考例1で作成した変性ポリエチレンの厚さ50μmのシート(PE−S−F5)及び離形用のPETフィルム(厚さ100μm)を積層した。この積層物を真空ラミネータ(PVL0505S、日清紡メカトロニクス社製)を使用して、温度120℃で5分間予熱した後、温度120℃、圧力0.1MPaで5分間加圧した。冷却した後、PETフィルムを除去して、変性ポリエチレン(PE−S)が積層固定されたガラス板を得た。
変性ポリエチレン(PE−S)が積層固定されたガラス板に、更に参考例8で作成した封止材シート(EVA33−F)、結晶型シリコン太陽電池素子(多結晶シリコンセル、155×155mm×厚さ200μm、アドバンテック社製、セル4枚をタブ線で直列に連結)、封止材シート(EVA33−F)及び裏面保護シート(ポリフッ化ビニル/ポリエチレンテレフタレート/ポリフッ化ビニル:37/250/37μm多層シート)をこの順に積層した。裏面側の封止材シート及び裏面保護シートからは、あらかじめ一部の切り込みヵ所からセルに連結したプラス端子とマイナス端子を取り出しておいた。
この積層物を、上記と同じ真空ラミネータを使用して、温度150℃で5分間予熱した後、温度150℃、圧力0.06MPaで25分間加圧した。冷却して取り出した後、ガラスからはみ出した封止材、裏面保護シートを切削除去し、モジュールの端面にブチルゴムを付与してアルミニウム製フレームに固定した。その後、端子を取り出した裏面保護層の切れ込み部位はRTVシリコーンを付与して硬化させ、絶縁封止して、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0094】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm
0)13.95Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.88W(保持率99.5%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0095】
[比較例1]
白板ガラスにあらかじめ変性ポリエチレンの層を積層しないこと以外は実施例1と同様にして、白板ガラス、参考例8で作成した封止材シート(EVA33−F)、結晶型シリコン太陽電池素子、封止材シート(EVA33−F)及び裏面保護シートをこの順に積層し、実施例1と同様の条件にて真空ラミネートして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0096】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm
0)13.94Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は10.33W(保持率74.1%)で、大きな出力低下が認められた。EL画像測定の結果、4枚のセルの内1枚のセルはEL発光が非常に弱く、PIDが発生していることが確認された。
【0097】
[実施例2]
変性ポリエチレンの厚さ50μmのシート(PE−S−F5)に代えて、参考例1で作成した変性ポリエチレンの厚さ20μmのシート(PE−S−F2)を使用する以外は実施例1と同様にして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0098】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm
0)13.97Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.86W(保持率99.2%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0099】
[実施例3]
変性ポリエチレンの厚さ50μmのシート(PE−S−F5)に代えて、参考例2で作成した変性エチレン・1−オクテン共重合体の厚さ50μmのシート(EOC−S−F)を使用する以外は実施例1と同様にして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0100】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm
0)13.96Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.87W(保持率99.4%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0101】
[実施例4]
変性ポリエチレンの厚さ50μmのシート(PE−S−F5)に代えて、参考例3で作成した変性ブロック共重合体水素化物の厚さ50μmのシート(HBC−S−F)を使用する以外は実施例1と同様にして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0102】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm
0)13.98Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.94W(保持率99.7%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PIDの発生は認められなかった。
【0103】
[実施例5]
参考例3で得た変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)の100重量部をトルエン300重量部に溶解させた。この溶液を、実施例1で使用したのと同様の白板ガラスの上にバーコーターを使用して塗布し、乾燥させた。ガラス上に形成された塗膜の厚さは8μmであった。
変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)の塗膜が形成された白板ガラス、参考例8で作成した封止材シート(EVA33−F)、結晶型シリコン太陽電池素子、封止材シート(EVA33−F)及び裏面保護シートをこの順に積層し、実施例1と同様の条件にて真空ラミネートして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0104】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm
0)13.96Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.59W(保持率97.3%)で、出力の低下は少なかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0105】
[実施例6]
実施例5と同様に、参考例3で得た変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)の溶液を、白板ガラスの上にバーコーターを使用して塗布し、乾燥させて厚さ3μmの塗膜を形成させた。
得られた変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)の塗膜が形成された白板ガラスに、参考例8で作成した封止材シート(EVA33−F)、結晶型シリコン太陽電池素子、封止材シート(EVA33−F)及び裏面保護シートをこの順に積層し、実施例1と同様の条件にて真空ラミネートして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0106】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm
0)13.97Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は12.74W(保持率91.1%)で、比較例1より出力の低下はかなり少なかった。EL画像測定の結果、顕著なEL発光の弱化は見られず、明白なPIDの発生は確認できなかった。
【0107】
[実施例7]
白板ガラスに代えて、ソーダガラス(450×360mm×厚さ3.2mm)を使用し、変性ポリエチレンの厚さ50μmシート(PE−S−F5)に代えて、参考例3で作成した変性ブロック共重合体水素化物の厚さ50μmのシート(HBC−S−F)を使用する以外は実施例1と同様にして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0108】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。ソーダガラスの光吸収により初期の最大出力(Pm
0)は13.14Wで、白板ガラスを使用した場合に比較して出力は約6%低かったが、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.10W(保持率99.7%)で、出力の低下は無かった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0109】
[実施例8]
変性ポリエチレンの厚さ50μmのシート(PE−S−F5)に代えて、参考例4で作成した変性エチレン・アクリル酸エチル共重合体の厚さ50μmのシート(EEAC−S―F)を使用する以外は実施例1と同様にして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0110】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm
0)13.94Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.82W(保持率99.1%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0111】
[実施例9]
変性ポリエチレンの厚さ50μmのシート(PE−S−F5)に代えて、参考例5で作成したアイオノマー樹脂の厚さ50μmのシート(EMAI−F)を使用する以外は実施例1と同様にして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0112】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm
0)13.93Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.84W(保持率99.4%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0113】
[実施例10]
参考例6で得たメタクリル酸エステル共重合体(MGMC)の樹脂粉末を含んだプラスチゾルを、実施例1で使用したのと同様の白板ガラスの上にロールコーターを使用して塗布し、140℃で10分間加熱して固着させた。ガラス上に形成された塗膜の厚さは12μmであった。
メタクリル酸エステル共重合体(MGMC)の塗膜が形成された白板ガラス、参考例8で作成した封止材シート(EVA33−F)、結晶型シリコン太陽電池素子、封止材シート(EVA33−F)及び裏面保護シートをこの順に積層し、実施例1と同様の条件にて真空ラミネートして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0114】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm
0)13.39Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は12.75W(保持率95.2%)で、大幅な出力の低下はなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と大きな差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0115】
[実施例11]
変性ポリエチレンの厚さ50μmのシート(PE−S−F5)に代えて、参考例7で作成した変性エチレン・酢酸ビニル共重合体の厚さ50μmのシート(EVA6−S−F)を使用する以外は実施例1と同様にして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0116】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm
0)13.95Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.81W(保持率99.0%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0117】
[参考例9]
(接着層を有するポリエチレンのシート)
参考例1で使用したのと同じ市販の低密度ポリエチレンのペレット100重量部に、参考例1で使用したのと同じ2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール0.4部を添加し、混合した後、参考例1で使用したのと同じTダイ式フィルム成形機及びフィルム引取り機を使用し、溶融樹脂温度200℃、Tダイ温度200℃、エンボスロール温度50℃の成形条件にて、厚さ50μm、幅500mmのシート(PE−F)を押出し成形して得た。
【0118】
得られたポリエチレンのシート上に、実施例5で調整した変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)のトルエン溶液を、バーコーターを使用して塗布し、乾燥させた。ポリエチレンのシート上に形成された塗膜の厚さは8μmであった。
次に、ポリエチレンのシートを反転し、もう一方の面にも同様にして変性ブロック共重合体水素化物の塗膜を形成した。
【0119】
[実施例12]
実施例1で使用したのと同様の白板ガラスに、参考例8で作成した変性ブロック共重合体水素化物(HBC−S)の接着層を有するポリエチレンのシート、実施例1で使用したのと同様の参考例7で作成した封止材シート(EVA−F)、結晶型シリコン太陽電池素子、封止材シート(EVA−F)及び裏面保護シートをこの順に積層した。この積層物を、真空ラミネータを使用して、温度150℃で5分間予熱した後、温度150℃、圧力0.06MPaで25分間加圧した。冷却後、得られたモジュールを実施例1と同様にしてアルミニウム製フレームに固定して、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0120】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm
0)13.84Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.81W(保持率99.8%)で、出力の低下は認められなかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0121】
[実施例13]
ポリマー末端にメトキシシリル基が導入されたポリイソブチレンオリゴマー(製品名「エピオン(登録商標) 303S」、カネカ社製)100重量部にトルエン100重量部及び参考例1で使用したのと同じ2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール0.4部を加えて溶解した。この溶液を実施例1で使用したのと同様の白板ガラスに、バーコーターにより塗布した。乾燥して揮発成分を除去した後、温度85℃、湿度85%の高温高湿槽内で24時間保持し、表面にポリイソブチレン硬化膜を形成した。ガラス上に形成された塗膜の厚さは25μmであった。
ポリイソブチレン硬化膜が形成された白板ガラス、参考例8で作成した封止材シート(EVA33−F)、結晶型シリコン太陽電池素子、封止材シート(EVA33−F)及び裏面保護シートをこの順に積層し、実施例1と同様の条件にて真空ラミネートして、試験用の太陽電池モジュールを作製した。
【0122】
作製した太陽電池モジュールを使用して、PID試験を実施した。初期の最大出力(Pm
0)13.95Wに対して、96時間の環境試験後の最大出力(Pm)は13.85W(保持率99.3%)で、出力の低下は少なかった。EL画像測定の結果、4枚のセルはいずれも発光は初期と差異は認められず、PID発生の抑制効果が確認された。
【0123】
実施例及び比較例の結果から以下のことがわかる。
透明ガラスとエチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる封止材との間に、ガラスに接着した本発明の透明樹脂からなる層を形成することにより、PID発生を抑制できる(実施例1〜13)。
透明樹脂層の厚さは5〜10μm以上あれば、PID発生の抑制効果は高い(実施例1〜5及び実施例7〜13)。
透明樹脂層の厚さが5μmに満たない場合も、PID発生の抑制効果が認められた(実施例6)。
白板ガラスに比べて金属含有量の多いソーダガラスを使用した場合でも、透明樹脂層を設置することにより、PID発生の抑制効果がある(実施例7)。
エチレン・酢酸ビニル共重合体であっても、封止材に使用するエチレン・酢酸ビニル共重合体よりも酢酸ビニル含有量が小さく、体積抵抗率が高いエチレン・酢酸ビニ共重合体からなる層を透明ガラスと封止材の間に形成することにより、PIDの発生を抑制できる(実施例11)。
一方、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分とした、体積抵抗率が1×10
14Ω・cmを下回る封止材を使用した場合、結晶型シリコン太陽電池モジュールにおいて、高温高湿環境下で高電圧が印加されるとPIDが発生する場合がある(比較例1)。