特許第6281574号(P6281574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281574
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ヘッドホン装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20180208BHJP
【FI】
   H04R1/10 103
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-552259(P2015-552259)
(86)(22)【出願日】2013年12月12日
(86)【国際出願番号】JP2013083366
(87)【国際公開番号】WO2015087431
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】710014351
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白田 敦
(72)【発明者】
【氏名】大類 拓也
【審査官】 渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−028375(JP,A)
【文献】 特開2008−066977(JP,A)
【文献】 特開2009−105554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドバンドと、
前記ヘッドバンドの内部にその一部が挿入され、挿入長を調整可能な調整部材と、
前記ヘッドバンドの内部から該ヘッドバンドの外部へと前記調整部材を介して引き出される信号ケーブルと、
前記ヘッドバンド内部に設けられ、前記信号ケーブルを前記ヘッドバンドに固定する固定部と、
前記調整部材に接続され、前記ヘッドバンドの頂部に向かって延びている保持部材と、
前記保持部材に設けられ、前記ヘッドバンド内部における前記信号ケーブルを保持する保持部と、
前記ヘッドバンド内部に、前記調整部材と接触する凹部又は凸部が形成されている領域と、
を有し、
前記保持部材の、前記ヘッドバンドの長手方向に直交する方向の長さが、前記領域の、前記ヘッドバンドの長手方向に直交する方向の長さより、長いことを特徴とするヘッドホン装置。
【請求項2】
ヘッドバンドと、
前記ヘッドバンドの内部にその一部が挿入され、挿入長を調整可能な調整部材と、
前記ヘッドバンドの内部から該ヘッドバンドの外部へと前記調整部材を介して引き出される信号ケーブルと、
前記ヘッドバンド内部に設けられ、前記信号ケーブルを前記ヘッドバンドに固定する固定部と、
前記調整部材に接続され、前記ヘッドバンドの頂部に向かって延びている保持部材と、
前記保持部材に設けられ、前記ヘッドバンド内部における前記信号ケーブルを保持する保持部と、
前記ヘッドバンド内部に、前記調整部材と接触する凹部又は凸部が形成されている領域と、
を有し、
前記保持部材の、前記ヘッドバンドの長手方向の長さが、前記領域の、前記ヘッドバンドの長手方向の長さより、長いことを特徴とするヘッドホン装置。
【請求項3】
前記固定部が前記調整部材よりも前記ヘッドバンドの頂部の近くに位置することを特徴とする請求項1または2に記載のヘッドホン装置。
【請求項4】
前記調整部材が前記ヘッドバンド内部から引き出された状態で、前記保持部は前記固定部よりも前記ヘッドバンドの頂部から遠くに位置し、
前記調整部材が前記ヘッドバンド内部に挿入された状態で、前記保持部は前記固定部よりも前記ヘッドバンドの頂部の近くに位置するようになっていることを特徴とする請求項に記載のヘッドホン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右一対の放音部を湾曲形状のヘッドバンドで連結したヘッドホン装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような構造のヘッドホン装置の中には、一方の放音部に音声信号が外部ケーブルによって入力され、他方の放音部には、ヘッドバンド内部を通された信号ケーブルを介して、上記の一方の放音部から音声信号が供給されるタイプのものがある。また、このようなヘッドホン装置として、ユーザの耳に放音部の位置を合わせるために、放音部が、次のような調整部材を介してヘッドバンドに取り付けられている構造のものが知られている。
【0003】
図6は、従来のヘッドホン装置における、ヘッドバンドへの放音部の取付構造の一例を示す図である。この図6には、ヘッドホン装置5が備えている2つの放音部51のうちの1つの近傍におけるヘッドバンド52の内部構造が示されている。図6の例では、ヘッドホン装置5が次のような調整部材53を備えている。調整部材53は、帯状の板部材であり、ヘッドバンド52の内部にその一部が挿入され、矢印D5方向に出し入れ自在となっている。放音部51は、この調整部材53の一端に取り付けられ、調整部材53は、その他端からヘッドバンド52の内部に挿入されている。この調整部材53の出し入れにより、放音部51の位置が調整されることとなる。図6には、調整部材53がヘッドバンド52の内部に最も奥まで挿入された状態が示されている。
【0004】
図7は、図6に示されているヘッドホン装置において、調整部材がヘッドバンドの内部から引き出された状態を示す図である。このヘッドホン装置5では、調整部材53は、ヘッドバンド52の内部の摺擦面52aを摺擦しながら出し入れされる。この摺擦面52aには、矢印D5が示す出し入れ方向と直交する複数の溝52bが、この出し入れ方向に沿って配列されている。そして、調整部材53には、この溝52bに嵌る凸部53aが設けられており、調整部材53の出し入れに、いわゆるクリック感が持たされている。
【0005】
ここで、ヘッドバンド52の内部には、放音部51に音声信号を供給する信号ケーブル54が通っており、この信号ケーブル54をヘッドバンド52に固定する固定部52cがヘッドバンド52の内部に設けられている。また、調整部材53には信号ケーブル54が保持されている。信号ケーブル54は、調整部材53が引き出されるとこの調整部材53と一緒に引き出される。このため、信号ケーブル54は、この引出しに応じるためにその長さに余裕を持たされている。調整部材53がヘッドバンド52の内部に挿入された状態では、信号ケーブル54は、図6に示されるように固定部52cの近傍で折り畳まれた状態にある。そして、調整部材53がヘッドバンド52から引き出されると、信号ケーブル54は、図7に示されるように延びた状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2509212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヘッドホン装置5において、一旦引き出された調整部材53がヘッドバンド52の内部に再度挿入されるときには、信号ケーブル54の状態は、図6に示されているように折り畳まれた状態となることが望ましい。しかしながら、このヘッドホン装置5では、信号ケーブル54において、固定部52cから調整部材53までの間で自由に動き回ることができる部分の長さが、上記の余裕を見込んで長くなっている。そして、調整部材53の出し入れ時におけるこの自由な部分の形状は、調整部材53による被保持部分が調整部材53で押し引きされるときの信号ケーブル54の自由な移動と変形に任されている。このため、調整部材53の挿入の際に、信号ケーブル54が次のような状態となることがある。
【0008】
図8は、一旦引き出された調整部材がヘッドバンドの内部に再度挿入されるときに、信号ケーブルに起こり得る状態を示す図である。この図8に示されているように、調整部材53がヘッドバンド52の内部に挿入される際に、信号ケーブル54が固定部52c側へと入っていかず、調整部材53の挿入方向先端の近傍で縺れてしまうことがある。このような縺れの原因としては、例えば調整部材53出し入れ時のクリック感のための溝52bに信号ケーブル54が引っ掛かること等が挙げられる。ヘッドバンドの中には、このような溝が設けられていないものもあるが、そのようなヘッドバンドにあっても、例えばヘッドバンドの内面と信号ケーブルとの摩擦等に起因して上記のような縺れが生じることがある。
【0009】
そして、図8に示されているような縺れが生じた状態で調整部材53がヘッドバンド52の内部にさらに挿入されると、信号ケーブル54が、調整部材53と摺擦面52aとの間に挟まってしまい、場合によっては信号ケーブル54が断線することがある。このような事態に至ると、それ以降の調整部材53の出し入れのスムーズさが損なわれ、場合によっては信号ケーブル54が断線する恐れがある。このように、放音部51の調整部材53とともに信号ケーブル54が出し入れされるタイプのヘッドホン装置5では、信号ケーブル54の縺れによって調整部材53の出し入れのスムーズさが損なわれ、場合によっては信号ケーブル54が断線する恐れがあるという問題が一例として挙げられる。
【0010】
そこで、本発明は、放音部の調整部材をヘッドバンド内部に出し入れする際の、ヘッドバンド内部での信号ケーブルの縺れが抑制されるヘッドホン装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、ヘッドバンドと、前記ヘッドバンドの内部にその一部が挿入され、挿入長を調整可能な調整部材と、前記ヘッドバンドの内部から該ヘッドバンドの外部へと前記調整部材を介して引き出される信号ケーブルと、前記ヘッドバンド内部に設けられ、前記信号ケーブルを前記ヘッドバンドに固定する固定部と、前記調整部材に接続され、前記ヘッドバンドの頂部に向かって延びている保持部材と、前記保持部材に設けられ、前記ヘッドバンド内部における前記信号ケーブルを保持する保持部と、前記ヘッドバンド内部に、前記調整部材と接触する凹部又は凸部が形成されている領域と、を有し、前記保持部材の、前記ヘッドバンドの長手方向に直交する方向の長さが、前記領域の、前記ヘッドバンドの長手方向に直交する方向の長さより、長いことを特徴とするヘッドホン装置。尚、ここでいうヘッドホン装置には、ヘッドバンドを備え、放音部の位置が上記の様に調整されるものであれば、いわゆるヘッドホンに限らず、イヤホンや補聴器等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施例にかかるヘッドホン装置を示す斜視図である。
図2図1における左側の放音部のヘッドバンドへの取付構造を示す図である。
図3図2に示されているヘッドホン装置において、調整部材がヘッドバンドの内部から引き出された状態を示す図である。
図4】保持部材の形状を、その長手方向に沿った断面図と、上方から見た平面図とで示す図である。
図5】第2実施例にかかるヘッドホン装置において、調整部材の出し入れにクリック感を持たせるための構造を示す図である。
図6】従来のヘッドホン装置における、ヘッドバンドへの放音部の取付構造の一例を示す図である。
図7図6に示されているヘッドホン装置において、調整部材がヘッドバンドの内部から引き出された状態を示す図である。
図8】一旦引き出された調整部材がヘッドバンドの内部に再度挿入されるときに、信号ケーブルに起こり得る状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態にかかるヘッドホン装置を説明する。本発明の一実施形態にかかるヘッドホン装置は、ヘッドバンドと、このヘッドバンドの内部にその一部が挿入され、挿入長を調整可能な調整部材と、を備えている。さらに、このヘッドホン装置は、次のような固定部と保持部とを備えている。固定部は、ヘッドバンド内部に設けられ、信号ケーブルをヘッドバンドに固定するものである。また、保持部は、調整部材に設けられ、ヘッドバンド内部における信号ケーブルを保持するものである。固定部は調整部材よりもヘッドバンドの頂部の近くに位置する。そして、調整部材が引き出された状態で、保持部は固定部よりもヘッドバンドの頂部から遠くに位置し、調整部材が挿入された状態で、保持部は固定部よりもヘッドバンドの頂部の近くに位置するようになっている。すなわちこのヘッドホン装置は、保持部が固定部よりもヘッドバンドの頂部から遠くに位置するように調整部材をヘッドバンド内部から引出し、保持部が固定部よりもヘッドバンドの頂部の近くに位置するように調整部材をヘッドバンド内部に挿入するように構成されている。このヘッドホン装置では、信号ケーブルの保持部が、常に固定部よりもヘッドバンドの頂部から遠い位置にある図6から図8に示されている保持構造に比べて、固定部から保持部に至る部分の長さが短くなる。また、調整部材の出し入れ時には、信号ケーブルにおける保持部による被保持部分は、固定部よりもヘッドバンドの頂部から遠い位置と固定部よりもヘッドバンドの頂部に近い位置との間で、保持部によって運ばれる。このため、信号ケーブルにおける、固定部から保持部に至る部分の形状は、その部分の上記のような短さとも相まって、保持部と固定部との相対的な位置関係によって略規定される。従って、このヘッドホン装置によれば、上述した従来のヘッドホン装置のように、調整部材の出し入れ時の信号ケーブルの形状が信号ケーブルの自由な移動と変形に任されている場合と比べて、その出し入れ時の信号ケーブルの縺れが抑制されることとなる。
【0014】
また、本発明の一実施形態にかかるヘッドホン装置において、調整部材に接続され、ヘッドバンドの頂部に向かって延びている保持部材を更に備え、上記の保持部が、保持部材に備えられることは好適である。この好適な形態によれば、調整部材から保持部に至るまでの区間に亘って信号ケーブルが保持部材の表面上に保持された状態で、調整部材が出し入れされる。その結果、この区間については、信号ケーブルの縺れの抑制について確実を期することができる。
【0015】
また、上記の保持部材を更に備えた好適な形態において、この保持部材が、ヘッドバンドと略同じ曲率で湾曲している板形状であることは更に好適である。この更に好適な形態によれば、調整部材が出し入れされる際に、保持部材がヘッドバンドの曲率に沿って滑らかに移動でき、調整部材の出し入れを一層スムーズなものとすることができる。
【0016】
また、上記の保持部材を更に備えた好適な形態において、保持部材の先端近傍に保持部を有することも更に好適である。この更に好適な形態によれば、保持部材上に信号ケーブルを保持できる区間を、この保持部材の略全長とすることができ、縺れの抑制について確実を期することができる区間を長くすることができる。
【0017】
また、本発明の一実施形態にかかるヘッドホン装置において、ヘッドバンド内部には、前記調整部材と接触する凹部又は凸部が形成されている領域を有することは好適である。この好適な形態によれば、調整部材の出し入れに、いわゆるクリック感を持たすことができる。
【0018】
また、ヘッドバンド内部に上記の凹部又は凸部が形成されている好適な形態において、上記の保持部が上記の保持部材に備えられており、保持部材が、次のような構成を有していることは更に好適である。この好適な保持部材は、その短手の長さがこの領域の短手の長さより大きい。この更に好適な形態によれば、凹部又は凸部が形成されている箇所の幅方向について、信号ケーブルと凹部又は凸部との接触が抑えられ、一層縺れが抑制されることとなる。
【0019】
また、ヘッドバンド内部に上記の凹部又は凸部が形成されている好適な形態において、上記の保持部が上記の保持部材に備えられており、保持部材が、次のような構成を有していることも更に好適である。この好適な保持部材は、その長手の長さがこの領域の長手の長さより大きいこの更に好適な形態によれば、凹部又は凸部が形成されている箇所の長さ方向について、信号ケーブルと凹部又は凸部との接触が抑えられ、一層縺れが抑制されることとなる。
【実施例】
【0020】
本発明の第1実施例にかかるヘッドホン装置1を図1図4を参照して説明する。
【0021】
図1は、第1実施例にかかるヘッドホン装置を示す斜視図である。この図1に示すように、ヘッドホン装置1は、各々が耳当て状となった左右一対の放音部11,12を湾曲形状のヘッドバンド13で連結したいわゆるヘッドホンである。そして、一対の放音部11,12のうち、図1における右側の放音部12に、外部ケーブル14が接続されている。右側の放音部12には、この外部ケーブル14を介して音声信号が入力される。一対の放音部11,12は、ヘッドバンド13の内部を通された後述の信号ケーブルによって電気的に接続されている。そして、右側の放音部12から、この信号ケーブルを介して、左側の放音部11に音声信号が供給される。また、このヘッドホン装置1では、ユーザの耳に各放音部11,12の位置を合わせるために、各放音部11,12が、次のような調整部材を介してヘッドバンド13に取り付けられている。各放音部11,12の取付構造は同等であるので、以下、この取付構造について、図1における左側の放音部11の取付構造を例に挙げて説明を行う。
【0022】
図2は、図1における左側の放音部のヘッドバンドへの取付構造を示す図である。この図2に示されているように、ヘッドホン装置1が次のような調整部材14を備えている。調整部材14は、帯状の板部材であり、その長手方向に、湾曲形状のヘッドバンド13と略同じ曲率で湾曲している。調整部材14は、ヘッドバンド13の内部にその一部が挿入され、矢印D1方向に出し入れ自在となっている。放音部11は、この調整部材14の一端に取り付けられ、調整部材14は、その他端からヘッドバンド13の内部に挿入されている。この調整部材14の出し入れにより、放音部11の位置が調整されることとなる。図2には、調整部材14がヘッドバンド13の内部に最も奥まで挿入された状態が示されている。
【0023】
ヘッドバンド13の内部には、信号ケーブル15が通っており、この信号ケーブル15をヘッドバンド13に固定する固定部13aがヘッドバンド13の内部に設けられている。固定部は調整部材よりもヘッドバンドの頂部の近くに位置する。尚、図2に示されている左側の放音部11の取付構造にあっては、信号ケーブル15は、右側の放音部12から来て、末端の放音部11に音声信号を送るケーブルとなっている。一方、右側の放音部12の不図示の取付構造にあっては、信号ケーブル15は、左側の放音部11に音声信号を供給するケーブルとなっている。固定部13aは、ヘッドバンド13の内面から突出した2つの突起からなり、それらの突起間に信号ケーブル15を挟んで係止する。
【0024】
そして、調整部材14における、ヘッドバンド13への挿入方向先端には、信号ケーブル15を保持する保持部材16が固定されている。保持部材16は、調整部材14よりも幅が狭く厚みが薄い帯状の板部材であり、調整部材14の挿入方向先端から湾曲形状のヘッドバンド13の頂部に向かって延びている。また、保持部材16は、ヘッドバンド13と略同じ曲率で湾曲している。そして、その先端近傍の表面上に、信号ケーブル15を保持する保持部17が形成されている。保持部17は、保持部材16の表面から突出した2つの係止爪からなり、両者間に信号ケーブル15を挟んで保持する。
【0025】
保持部材16は、調整部材14が矢印D1方向に出し入れされると、固定部13aの横を通って、この調整部材14と一緒に矢印D1方向に移動する。図2に示されているように調整部材14が挿入されると、保持部材16において保持部17が形成されている先端部が、固定部13aの横を通って、固定部13aよりもヘッドバンド13の頂部に近い位置に達する。つまり、調整部材14が挿入された状態では、保持部17は、固定部13aよりもヘッドバンド13の頂部に近い位置に達する。これにより、信号ケーブル15における保持部17による被保持部分がこの位置まで運ばれ、信号ケーブル15は、この被保持部分の先で固定部13aに向かって折り畳まれることとなる。
【0026】
また、調整部材14がヘッドバンド13から引き出されると、保持部材16における上記の先端部が、固定部13aの横を通って、次のような位置まで移動する。
【0027】
図3は、図2に示されているヘッドホン装置において、調整部材がヘッドバンドの内部から引き出された状態を示す図である。この図3に示されているように、保持部17が形成されている先端部が、固定部13aの横を通って、固定部13aよりもヘッドバンド13の頂部から遠い位置に達する。つまり、調整部材14が引き出された状態では、保持部17は、固定部13aよりもヘッドバンド13の頂部から遠い位置に達する。これにより、信号ケーブル15における保持部17による被保持部分がこの位置まで運ばれ、信号ケーブル15は、固定部13aから延ばされる。
【0028】
保持部材16の長さは、調整部材14の挿入時の保持部17の位置が図2示されている位置になり、引出し時の保持部17の位置が図3示されている位置になる長さとなっている。
【0029】
本実施例のヘッドホン装置1では、信号ケーブルの保持部が、常に固定部よりもヘッドバンドの頂部から遠い位置にある図6から図8に示されている保持構造に比べて、固定部13aから保持部17に至る部分の長さが短くなる。また、調整部材14の出し入れ時には、信号ケーブル15の保持部17による被保持部分は、固定部13aよりもヘッドバンド13の頂部から遠い位置と固定部13aよりもヘッドバンド13の頂部に近い位置との間で、保持部17によって運ばれる。このため、信号ケーブル15における、固定部13aから保持部17に至る部分の形状は、その部分の上記のような短さとも相まって、保持部17と固定部13aとの相対的な位置関係によって略規定される。従って、このヘッドホン装置1によれば、上述した従来のヘッドホン装置5のように、調整部材の出し入れ時の信号ケーブルの形状が信号ケーブルの自由な移動と変形に任されている場合と比べて、その出し入れ時の信号ケーブル15の縺れが抑制されることとなる。
【0030】
また、本実施例のヘッドホン装置1では、保持部17が、上記のように長く延びた保持部材16に備えられている。これにより、調整部材14の一端から保持部17に至るまでの区間に亘って信号ケーブル15が保持部材16の表面上に保持された状態で、調整部材14が出し入れされる。その結果、この区間については、信号ケーブル15の縺れの抑制について確実を期することができる。
【0031】
また、本実施例のヘッドホン装置1では、保持部材16が、次のような板形状となっている。
【0032】
図4は、保持部材の形状を、その長手方向に沿った断面図と、上方から見た平面図とで示す図である。図4(a)に保持部材16の断面図が示され、図4(b)に保持部材16の平面図が示されている。
【0033】
図4(a)に示されているように、保持部材16は湾曲形状を有しており、その曲率半径Rは、湾曲状態のヘッドバンド13の曲率半径rと略同じとなっている。これにより、調整部材14が出し入れされる際に、保持部材16がヘッドバンド13の曲率に沿って滑らかに移動でき、調整部材14の出し入れを一層スムーズなものとすることができる。
【0034】
また、本実施例のヘッドホン装置1では、保持部材16の先端近傍に保持部17が設けられている。これにより、図4(a)に示されているように、保持部材16の表面上に信号ケーブル15を保持できる区間を、この保持部材16の略全長とすることができ、縺れの抑制について確実を期することができる区間を長くすることができる。
【0035】
また、本実施例のヘッドホン装置1では、調整部材14は、ヘッドバンド13の内部の摺擦面13b(図3も参照)を摺擦しながら出し入れされる。この摺擦面13bには、図4(a)と図4(b)との双方に示されているように、矢印D1が示す出し入れ方向と直交する複数の溝13c(凹部)が出し入れ方向に沿って配列されている。そして、調整部材14には、溝13cに嵌る凸部14aが設けられており、調整部材14の出し入れに、いわゆるクリック感が持たされている。
【0036】
そして、本実施例のヘッドホン装置1では、図4(b)に示されているように、保持部材16の幅Wは、上記の溝13cが形成されている箇所の幅wよりも広い。さらに、この保持部材16は、その長手方向と直交する幅方向について溝13cを覆うように溝13cと重なって延びている。すなわち、この保持部材16は、その長手方向と直交する幅が、ヘッドバンド13において凹部13cが形成されている領域の幅よりも広く、且つ、少なくともその長手方向と直交する幅方向について凹部13cを覆うように凹部13cと重なって延びている。これにより、溝13cが形成されている箇所の幅方向について、信号ケーブル15と溝13cとの接触が抑えられ、一層縺れが抑制されることとなる。
【0037】
また、本実施例のヘッドホン装置1では、図4(a)に示されているように、保持部材16の長さLは、溝13cが形成されている箇所の長さlよりも長い。すなわちこの保持部材16は、その長さが、ヘッドバンド13において凹部13cが形成されている箇所の長さよりも長く、且つ、少なくともその長手方向について凹部13cを覆うように凹部13cと重なって延びている。これにより、溝13cが形成されている箇所の長さ方向について、信号ケーブル15と溝13cとの接触が抑えられ、一層縺れが抑制されることとなる。
【0038】
また、本実施例のヘッドホン装置1では、図4(a)に示されているように、保持部材16の厚みTは、調整部材14の厚みtよりも薄い。これにより、保持部材16と摺擦面13bとの密着性が高まっている。その結果、調整部材14の出し入れに際し、保持部材16と摺擦面13bとの間への信号ケーブル15の入り込み等が抑えられ、一層縺れが抑制されることとなる。
【0039】
次に、本発明の第2実施例にかかるヘッドホン装置について説明する。第2実施例にかかるヘッドホン装置は、調整部材の出し入れにクリック感を持たせるための構造を除いて、上述の第1実施例にかかるヘッドホン装置1と同等である。そこで、以下では、第2実施例にかかるヘッドホン装置について、図5を参照し、第1実施例にかかるヘッドホン装置1との相違点に注目して説明を行う。
【0040】
図5は、第2実施例にかかるヘッドホン装置において、調整部材の出し入れにクリック感を持たせるための構造を示す図である。尚、この図5では、図1から図4に示されている第1実施例にかかるヘッドホン装置1の構成要素と同等な構成要素については、図1から図4における符号と同じ符号が付されている。以下では、これら同等な構成要素については重複説明を省略する。
【0041】
図5に示されているように、第2実施例にかかるヘッドホン装置2では、ヘッドバンド21において、摺擦面13b上を移動する調整部材22の両側縁に沿って、鋸歯状の凹凸21aが形成されている。そして、調整部材22における、ヘッドバンド21への挿入方向先端部の2つの角に、上記の凹凸21aにおける凹部21bに嵌る凸部22aが形成されている。そして、両者が噛み合いながら調整部材22が出し入れされることにより、その出し入れにクリック感が生じることとなっている。
【0042】
尚、前述した2つの実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明のヘッドホン装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0043】
例えば、前述した2つの実施例では、本発明にいうヘッドホン装置の一例として、各々が耳当て状となった左右一対の放音部11,12を湾曲形状のヘッドバンド13で連結してなる、いわゆるヘッドホンとしてのヘッドホン装置1,2が例示されている。しかしながら、本発明にいうヘッドホン装置は、ヘッドバンドを備え、放音部の位置が前述のように調整されるものであれば、いわゆるヘッドホンに限らず、イヤホンや補聴器等であってもよい。
【0044】
また、例えば、前述した2つの実施例では、本発明にいうヘッドホン装置の一例として、一方の放音部12に外部ケーブル14が接続され、この外部ケーブル14を介して音声信号が入力されるヘッドホン装置1,2が例示されている。しかしながら、本発明にいうヘッドホン装置は、このような外部ケーブルは接続されず、音声信号が無線で入力されるワイヤレスタイプのものであってもよい。
【0045】
また、例えば、前述した2つの実施例では、本発明にいう保持部材の一例として、調整部材とは別体に作られ、この調整部材の先端に固定された保持部材16が例示されている。しかしながら、本発明にいう保持部材はこれに限るものではなく、調整部材と一体に形成されたもの等であってもよい。
【0046】
また、例えば、前述した2つの実施例では、本発明にいうヘッドホン装置の一例として、ヘッドバンド13,21の内部を信号ケーブル15が1本だけ通った形態のヘッドホン装置1,2が例示されている。しかしながら、本発明にいうヘッドホン装置は、ヘッドバンドの内部を信号ケーブルが複数本通ったものであってもよい。この場合、固定部に複数本の信号ケーブルを固定させ、保持部に複数本の信号ケーブルを保持させてもよく、あるいは、1本の信号ケーブルを固定する固定部や、1本の信号ケーブルを保持する保持部を複数設けてもよい。
【0047】
また、例えば、前述した2つの実施例では、本発明にいう固定部の一例として、2つの突起からなり、両者間に信号ケーブル15を挟んで係止する固定部13aが例示されている。また、本発明にいう保持部の一例として、2つの係止爪からなり、両者間に信号ケーブル15を挟んで保持する保持部17が例示されている。しかしながら、本発明にいう固定部や保持部はこれらの形態に限るものではなく、信号ケーブルを固定し保持できるものであればその具体的な形態を問うものではない。
【0048】
また、例えば、前述した2つの実施例では、本発明にいう保持部材の一例として帯状の保持部材16が例示され、本発明にいう保持部の一例としてその帯状の保持部材16の表面に形成された保持部17が例示されている。しかしながら、本発明にいう保持部材や保持部はこれらの形態に限るものではない。本発明にいう保持部材は、例えば棒状であってもよい。また、本発明にいう保持部は、長く延びた保持部材の先端から横方向に突出し、その突出した先で信号ケーブルを保持するもの等であってもよい。
【0049】
また、例えば、前述した2つの実施例では、本発明にいうヘッドホン装置の一例として、ヘッドバンド13,21の溝13cや凹凸21aと調整部材14,22の凸部14a,22aとでクリック感を生じさせる形態が例示されている。しかしながら、本発明にいうヘッドホン装置はこの形態に限るものではなく、例えば、ヘッドバンドに凸部を設け調整部材に溝や凹凸を設けることでクリック感を生じさせる形態であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1,2 ヘッドホン装置
11,12 放音部
13,21 ヘッドバンド
13a 固定部
13b 摺擦面
13c 溝
14,22 調整部材
14a 凸部
15 信号ケーブル
16 保持部材
17 保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8