(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1装飾部が有する前記リッジと前記第2装飾部が有する前記リッジとは、タイヤ径方向に対してタイヤ周方向に傾斜する方向が、互いに反対方向になっている請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
前記タイヤサイド部に設けられる共に、タイヤ径方向における少なくとも一部の位置が前記第3装飾部のタイヤ径方向における位置と同じ位置で、且つ、タイヤ周方向において前記第3装飾部よりも前記第1装飾部側で前記第1装飾部のタイヤ径方向における外方側の位置に、前記第1装飾部と前記第3装飾部とから離間して配置され、前記第1装飾部が有する前記リッジのタイヤ径方向に対する角度とは異なる角度のリッジを複数配列してなる第4装飾部を備える請求項2または3に記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内方とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向、タイヤ幅方向外方とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内方とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう方向、タイヤ径方向外方とは、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる方向をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
【0017】
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。
図1に示す空気入りタイヤ1は、子午面断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド面3として形成されている。トレッド部2が有するトレッド面3には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝25が複数形成されており、この周方向主溝25により、トレッド面3には複数の陸部20が画成されている。トレッド面3に形成される溝は周方向主溝25以外が形成されていてもよく、タイヤ幅方向に延びるラグ溝(図示省略)や、周方向主溝25とは異なる細溝(図示省略)等が形成されていてもよい。
【0018】
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両端にはショルダー部8が位置しており、ショルダー部8のタイヤ径方向内方側には、サイドウォール部30が配設されている。つまり、サイドウォール部30は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されている。サイドウォール部30の表面はタイヤサイド部31として形成されており、タイヤサイド部31は、タイヤ幅方向における両側に位置している。2箇所のタイヤサイド部31は、それぞれタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面5が位置する側の反対側に面している。
【0019】
この場合におけるタイヤサイド部31とは、トレッド部2の接地端Tからタイヤ幅方向外方側であってリムチェックラインRからタイヤ径方向外方側の範囲で一様に連続する面をいう。また、接地端Tとは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、且つ、正規内圧を充填すると共に正規荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1のトレッド部2のトレッド面3が路面と接地する領域において、タイヤ幅方向の両最外端をいい、タイヤ周方向に連続する。また、リムチェックラインRとは、タイヤのリム組みが正常に行われているか否かを確認するためのラインであり、一般には、ビード部10の表側面において、リムフランジ(図示省略)よりもタイヤ径方向外方側であってリムフランジ近傍となる部分に沿ってタイヤ周方向に連続する環状の凸線として示されている。
【0020】
なお、正規リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、正規内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、正規荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
【0021】
タイヤ幅方向における両側に位置するそれぞれのサイドウォール部30のタイヤ径方向内方側には、ビード部10が位置している。ビード部10は、サイドウォール部30と同様に、タイヤ赤道面5の両側2箇所に配設されている。各ビード部10にはビードコア11が設けられており、ビードコア11のタイヤ径方向外方にはビードフィラー12が設けられている。
【0022】
また、トレッド部2のタイヤ径方向内方には、複数のベルト層14が設けられている。ベルト層14は、複数の交差ベルト141、142とベルトカバー143とが積層されることによって設けられている。このうち、交差ベルト141、142は、スチール或いは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20°以上55°以下のベルト角度を有して構成される。また、複数の交差ベルト141、142は、タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角として定義されるベルトコードが互いに異なっており、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成される。また、ベルトカバー143は、コートゴムで被覆されたスチール、或いは有機繊維材から成る複数のコードを圧延加工して構成され、絶対値で0°以上10°以下のベルト角度を有する。このベルトカバー143は、交差ベルト141、142のタイヤ径方向外方側に積層されて配置される。
【0023】
このベルト層14のタイヤ径方向内方、及びサイドウォール部30のタイヤ赤道面5側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス13が連続して設けられている。このカーカス13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設されるビードコア11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。詳しくは、カーカス13は、タイヤ幅方向における両側に位置するビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外方に巻き返されている。また、カーカス13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されており、タイヤ周方向に対するカーカスコードの繊維方向の傾斜角であるカーカス角度が、絶対値で80°以上95°以下となって形成されている。
【0024】
ビード部10における、ビードコア11及びカーカス13の巻き返し部のタイヤ径方向内方側やタイヤ幅方向外方側には、リムフランジに対するビード部10の接触面を構成するリムクッションゴム17が配設されている。また、カーカス13の内方側、或いは、当該カーカス13の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ15がカーカス13に沿って形成されている。
【0025】
図2は、
図1のA−A矢視図である。タイヤサイド部31には、空気入りタイヤ1の外観の向上や各種情報の表示を目的として装飾部40が設けられている。装飾部40は、情報表示部41と、第1装飾部50と、第2装飾部60と、第3装飾部70と、第4装飾部75と、を有している。このうち、情報表示部41は、ブランド名やロゴマーク、製品名等、空気入りタイヤ1を識別するため、或いはユーザに対して示すための各種情報が表示されている。また、第1装飾部50は、タイヤ周方向において情報表示部41が設けられる位置とは異なる位置に配置されている。
【0026】
本実施形態では、情報表示部41は、1つのタイヤサイド部31のタイヤ周方向上における2箇所に設けられており、第1装飾部50は、タイヤ周方向上における2箇所の情報表示部41同士の間の位置の2箇所に設けられている。また、第2装飾部60は、タイヤ周方向における長さが第1装飾部50のタイヤ周方向における長さよりも短い長さで、タイヤ周方向における情報表示部41と第1装飾部50との間の位置に配置されている。つまり、第2装飾部60は、タイヤ周方向いおいて第1装飾部50の両側に位置する2箇所の情報表示部41と、第1装飾部50のタイヤ周方向における両端部分との間に配置されている。このため、本実施形態では、第2装飾部60は、1つの第1装飾部50のタイヤ周方向における両側2箇所に配置されており、1つのタイヤサイド部31に対して4箇所に配置されている。
【0027】
図3は、
図2のB部詳細図である。タイヤ周方向における第1装飾部50の両端に配置される第2装飾部60は、タイヤ径方向における少なくとも一部の位置が、第1装飾部50のタイヤ径方向における位置と同じ位置になっている。詳しくは、第1装飾部50は、タイヤ周方向における両端付近に、外径が小さくなった部分である縮径部52が設けられている。縮径部52は、第1装飾部50のタイヤ径方向における外周部分が、第1装飾部50の、タイヤ周方向において縮径部52同士の間に位置する部分の外周部分よりも、タイヤ径方向内方側に位置することにより、縮径部52同士の間に位置する部分よりも外径が小さくなって形成されている。
【0028】
より詳しくは、第1装飾部50の、タイヤ周方向において縮径部52同士の間に位置する部分の外周部分は、空気入りタイヤ1の回転軸を中心とする円弧状に形成されており、縮径部52は、タイヤ周方向における端部に向かうに従って、タイヤ径方向における外周部分の径が小さくなる方向に湾曲して形成されている。一方、縮径部52のタイヤ径方向における内周部分の径は、第1装飾部50における、タイヤ周方向において縮径部52同士の間に位置する部分の内周部分の径と同じ大きさになっている。このため、第1装飾部50のタイヤ周方向において内周部分は、空気入りタイヤ1の回転軸を中心とする円弧状に形成されている。
【0029】
第2装飾部60は、第1装飾部50の縮径部52のタイヤ周方向における情報表示部41側の端部に隣り合って配置されており、タイヤ径方向における外周側の部分と内周側の部分とが、共に第1装飾部50における縮径部52の外周部分及び内周部分から延長した形状になっている。このため、第2装飾部60は、タイヤ径方向における外周側の部分は、タイヤ周方向における第1装飾部50側の部分では、タイヤ径方向における径が、縮径部52における第2装飾部60側の端部のタイヤ径方向における経と同程度の大きさになっており、情報表示部41側に向かうに従って、タイヤ径方向における径が小さくなっている。換言すると、第1装飾部50の縮径部52と第2装飾部60は、タイヤ周方向において情報表示部41側に向かうに従って、タイヤ径方向における幅が狭くなって形成されている。
【0030】
第2装飾部60は、このように第1装飾部50の縮径部52から延長された形状で形成されているため、タイヤ径方向における少なくとも一部の位置が、第1装飾部50のタイヤ径方向における位置と同じ位置となって形成されている。また、第2装飾部60は、情報表示部41と第1装飾部50とから離間して配置されている。つまり、情報表示部41と第2装飾部60との間、及び第1装飾部50と第2装飾部60との間に空隙部35が形成されており、情報表示部41と第2装飾部60、及び第1装飾部50と第2装飾部60とは、空隙部35を介して隣接することにより、互いに離間して配置されている。この空隙部35は、タイヤサイド部31において装飾部40が形成されておらず、タイヤサイド部31の平面部分が露出した部分になっている。情報表示部41と第1装飾部50の縮径部52と第2装飾部60とは、それぞれの間に空隙部35が形成されることにより、タイヤ周方向に離間して一列に配置されている。なお、空隙部35の幅は、第1装飾部50が有するリッジ51同士の間隔の150%以上250%以下であるのが好ましい。
【0031】
また、第1装飾部50は、山稜状に突出した凸部であるリッジ51が複数配列されることにより形成されている。このリッジ51は、互いに交差することなく配列されており、第1装飾部50は、多数のリッジ51が配列されることにより形成されている。同様に、第2装飾部60も、複数のリッジ61が交差することなく配列されることにより形成されている。第2装飾部60のリッジ61は、第1装飾部50が有するリッジ51のタイヤ径方向に対する角度とは異なる角度で形成されている。
【0032】
図4は、第1装飾部のリッジの説明図である。
図5は、第2装飾部のリッジの説明図である。第1装飾部50が有するリッジ51と第2装飾部60が有するリッジ61とは、タイヤ径方向に対してタイヤ周方向に傾斜する方向が、互いに反対方向になっている。例えば、第1装飾部50が有するリッジ51が、タイヤ径方向における内方側から外方側に向かうに従って、時計周りの方向に向かう方向に傾斜している場合には、第2装飾部60が有するリッジ61は、タイヤ径方向における内方側から外方側に向かうに従って、反時計周りの方向に向かう方向に傾斜している。これらのようにタイヤ径方向に対する傾斜方向が互いに反対方向になって形成される第1装飾部50のリッジ51と第2装飾部60のリッジ61とは、タイヤサイド部31を正面から見た場合において、それぞれ直線状に形成されている。
【0033】
また、第1装飾部50は、第1装飾部50が有する複数のリッジ51の、タイヤ径方向における同じ位置同士でのタイヤ径方向に対する角度θ1が、全て同じ角度になっている。例えば、第1装飾部50が有する複数のリッジ51は、第1装飾部50のタイヤ周方向における内周部分であり空気入りタイヤ1の回転軸を中心とする円弧状に形成されている部分である内側端縁53の位置での、タイヤ径方向に対する角度θ1が、全て同じ角度になっている。第2装飾部60が有する複数のリッジ61も同様に、第2装飾部60のタイヤ周方向における内周部分であり空気入りタイヤ1の回転軸を中心とする円弧状に形成されている部分である内側端縁63の位置での、タイヤ径方向に対する角度θ2が、全て同じ角度になっている。
【0034】
なお、第1装飾部50が有するリッジ51の、内側端縁53の位置でのタイヤ径方向に対する角度θ1は、30°以上90°以下であるのが好ましい。また、第2装飾部60が有するリッジ61の、内側端縁63の位置でのタイヤ径方向に対する角度θ2は、タイヤ径方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が、第1装飾部50が有するリッジ51のタイヤ径方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向と反対方向で、30°以上90°以下であるのが好ましい。
【0035】
図6は、
図3に示すリッジを、リッジが延びる方向に見た断面図である。第1装飾部50と第2装飾部60のリッジ51,61は、それぞれ深さDが0.1mm以上0.8mm以下の範囲内、幅Wが0.1mm以上0.8mm以下の範囲内、隣り合うリッジ51,61同士の間隔Pが0.3mm以上1.0mm以下の範囲内となって形成されている。
【0036】
また、第1装飾部50と第2装飾部60とは、トレッド面3上の位置での第1装飾部50の両端部同士のタイヤ周方向における距離L1(
図2参照)と、第2装飾部60の両端部同士のタイヤ周方向における距離L2(
図2参照)とが、0.05≦(L2/L1)≦0.30の関係を有している。
【0037】
図7は、
図2に示す距離L1,L2についての説明図である。トレッド面3上の位置での第1装飾部50の両端部54同士のタイヤ周方向における距離L1は、タイヤ周方向における第1装飾部50の両端部54の位置と、タイヤ周方向における位置が同じ位置となる、トレッド面3上の位置同士のタイヤ周方向における距離になっている。つまり、距離L1は、タイヤ周方向における第1装飾部50の両端部54の位置から、トレッド面3に向けてタイヤ径方向に引いた垂線55とトレッド面3との交差部56同士のタイヤ周方向における距離になっている。この場合における、トレッド面3において垂線55と交差する部分は、例えば、トレッド面3におけるタイヤ幅方向の端部となる部分になっている。
【0038】
また、トレッド面3上の位置での第2装飾部60の両端部同士のタイヤ周方向における距離L2は、タイヤ周方向における第2装飾部60の両端部64の位置と、タイヤ周方向における位置が同じ位置となる、トレッド面3上の位置同士のタイヤ周方向における距離になっている。つまり、距離L2は、タイヤ周方向における第2装飾部60の両端部64の位置から、トレッド面3に向けてタイヤ径方向に引いた垂線65とトレッド面3との交差部66同士のタイヤ周方向における距離になっている。この場合における、トレッド面3において垂線65と交差する部分は、距離L1と同様に、例えばトレッド面3におけるタイヤ幅方向の端部となる部分になっている。第1装飾部50と第2装飾部60とは、これらの距離L1と距離L2との関係が、0.05≦(L2/L1)≦0.30の範囲内となって形成されている。
【0039】
なお、トレッド面3上の位置での第1装飾部50の両端部54同士のタイヤ周方向における距離L1は、トレッド面3における距離L1を測定する部分のタイヤ径方向における半径をRとする場合に、R×(1/2)πrad以下であるのが望ましい。つまり、距離L1や距離L2を、トレッド面3におけるタイヤ幅方向における端部の位置で測定する場合には、トレッド面3のタイヤ幅方向における端部の半径をRとして、距離L1が、R×(1/2)πrad以下になるように、第1装飾部50は形成されるのが望ましい。換言すると、第1装飾部50は、タイヤサイド部31のタイヤ周方向における90°以下の範囲に形成されるのが望ましい。
【0040】
また、タイヤサイド部31には、第1装飾部50の縮径部52や第2装飾部60の近傍に第3装飾部70と第4装飾部75とが設けられている。このうち、第3装飾部70は、タイヤ周方向における少なくとも一部の位置が第2装飾部60のタイヤ周方向における位置と同じ位置で、且つ、第2装飾部60のタイヤ径方向における外方側の位置に、第2装飾部60から離間して配置されている。
【0041】
詳しくは、第3装飾部70は、タイヤ周方向における第1装飾部50側の端部が、第2装飾部60のタイヤ周方向における第1装飾部50側の端部よりも第1装飾部50側に突出しており、タイヤ周方向における情報表示部41側の端部が、第2装飾部60のタイヤ周方向における情報表示部41側の端部よりも情報表示部41側に突出している。また、第3装飾部70は、タイヤ径方向における内周側の部分が、第1装飾部50の縮径部52の外周部分や、第1装飾部50の縮径部52の外周部分から延長した形状になっている第2装飾部60の外周部分と平行に形成されている。第3装飾部70は、これらの第1装飾部50の縮径部52や第2装飾部60に対して、空隙部35を介して離間している。
【0042】
また、第3装飾部70のタイヤ径方向における外周部分は、空気入りタイヤ1の回転軸を中心とする円弧状に形成されており、第1装飾部50の、タイヤ周方向において縮径部52同士の間に位置する部分の外周部分の径と同程度の大きさになっている。このように形成される第3装飾部70は、第1装飾部50が有するリッジ51のタイヤ径方向に対する角度とは異なる角度のリッジ71を複数配列して構成されている。具体的には、第3装飾部70が有するリッジ71は、向きと角度が、第2装飾部60が有するリッジ61の、タイヤ径方向に対する向き及び角度と、同じ向き及び角度になっている。
【0043】
また、第4装飾部75は、第1装飾部50が有する縮径部52のタイヤ径方向における外方側の位置に、第1装飾部50と第3装飾部70とから離間して配置されている。また、第4装飾部75は、タイヤ周方向において第3装飾部70よりも第1装飾部50側に位置しており、タイヤ径方向における少なくとも一部の位置が、第3装飾部70のタイヤ径方向における位置と同じ位置になっている。
【0044】
詳しくは、第4装飾部75は、タイヤ周方向における両端部が、タイヤ周方向において、第1装飾部50が有する一方の縮径部52における両端部の間の範囲内に位置するように形成されている。また、第4装飾部75は、タイヤ径方向における内周側の部分が、第1装飾部50の縮径部52の外周部分と平行に形成されており、第4装飾部75は、第1装飾部50の縮径部52に対して、空隙部35を介して離間している。また、第4装飾部75のタイヤ径方向における外周部分は、空気入りタイヤ1の回転軸を中心とする円弧状に形成されており、第1装飾部50の、タイヤ周方向において縮径部52同士の間に位置する部分の外周部分の径と同程度の大きさになっている。
【0045】
このように形成される第4装飾部75は、第1装飾部50が有するリッジ51のタイヤ径方向に対する角度とは異なる角度のリッジ76を複数配列して構成されている。具体的には、第4装飾部75が有するリッジ76は、向きと角度が、第2装飾部60が有するリッジ61や第3装飾部70が有するリッジ71の、タイヤ径方向に対する向き及び角度と、同じ向き及び角度になっている。
【0046】
図8は、
図2のC部詳細図である。情報表示部41には、ブランド等が表示される標章42が設けられている。標章42は、文字や図形等を模した形状の凸部や凹部が形成されることにより、所望の情報を表示することが可能になっている。この情報表示部41が有する標章42には、表面に複数のリッジ43が形成されている。本実施形態では、標章42は、所望の文字の縁取り形状で凸部44が形成されることによって文字が表示されており、この文字が複数形成されることにより、ブランドの表示等をおこなっている。複数のリッジ43は、この標章42を形成する縁取り形状の凸部44の内側に形成されている。標章42に設けられる複数のリッジ43は、タイヤ径方向における同じ位置同士でのタイヤ径方向に対する角度が全て同じ角度になっており、複数のリッジ43は、例えば、全てタイヤ径方向に沿った方向に形成されている。
【0047】
これらのように構成される空気入りタイヤ1を車両に装着して走行すると、トレッド面3のうち下方に位置するトレッド面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。
【0048】
また、車両の走行時には、空気入りタイヤ1は常に撓みながら回転しており、また、加減速やコーナリング、路面の凹凸等に起因して、空気入りタイヤ1に作用する荷重は刻々と変化し、撓み方も変化する。具体的には、リムホイール(図示省略)が嵌合されるビード部10と、路面に接地するトレッド面3を有するトレッド部2との間で荷重を伝達するサイドウォール部30で、撓みが発生し易くなっており、この撓みは、車両の走行時には時々刻々と変化する。つまり、車両の走行中にサイドウォール部30に作用する荷重は、空気入りタイヤ1に作用する荷重の大きさの変化や、空気入りタイヤ1の回転によって、荷重の大きさや向きが時々刻々と変化する。このため、サイドウォール部30の撓みは、この荷重の大きさの変化や向きの変化によって、車両の走行時には時々刻々と変化する。
【0049】
これにより、空気入りタイヤ1の部位によっては、応力集中が発生することがある。応力集中が発生した場合、応力が大きかったり、撓みが繰り返されたりすると、これらに起因してクラックが発生することがある。応力集中は、形状が変化している部分に発生し易いため、例えば、タイヤサイド部31に形成される装飾部40において、タイヤ径方向に対する傾斜角度が同じ角度になるリッジ51を最も多く有している、第1装飾部50のタイヤ周方向における端部で発生し易くなっている。
【0050】
つまり、第1装飾部50は、多くのリッジ51が配列されることにより形成されているため、タイヤサイド部31における第1装飾部50が形成されている領域では、この領域で発生する応力の分布は、リッジ51に沿って一様な分布になる。第1装飾部50の端部では、このように応力の分布を一様にするリッジ51が途切れるため、応力が集中し易くなり、リッジ51が形成されている方向に、第1装飾部50の端部に位置するリッジ51の端部付近からクラックが発生し易くなる。
【0051】
ここで、タイヤ周方向における第1装飾部50の両端には、空隙部35を挟んで第2装飾部60が配置されている。第2装飾部60は、タイヤ径方向に対するリッジ61の角度が、第1装飾部50が有するリッジ51の、タイヤ径方向に対する角度とは異なっている。このため、第1装飾部50のタイヤ周方向における端部付近で発生したクラックは、第2装飾部60のリッジ61で止められ、それ以上成長し難くなっている。また、第2装飾部60は、タイヤ周方向における長さが、第1装飾部50のタイヤ周方向における長さよりも短くなっているため、各リッジ61の長さも、第1装飾部50のリッジ51の長さと比較して、比較的短くなっている。このため、第2装飾部60では、第1装飾部50と比較して、リッジ61に沿って発生する応力の発生範囲が狭くなっており、大きな応力集中が発生し難くなっているため、第2装飾部60のタイヤ周方向における端部付近に応力集中が発生することに起因するクラックが発生し難くなっている。従って、装飾部40は、リッジ51,61を設けることに起因するクラックの発生を抑えることができ、耐久性を向上させることができる。
【0052】
また、情報表示部41は、標章42が設けられているが、タイヤ周方向における情報表示部41の両側には、第1装飾部50の間に第2装飾部60が配置されている。第2装飾部60は、タイヤ径方向に対するリッジ61の角度が、第1装飾部50のリッジ51の角度とは異なっており、タイヤサイド部31において目立ち易い部位になっているため、タイヤ周方向における両側が第2装飾部60に挟まれる情報表示部41は、タイヤサイド部31において目立ち易くなっている。このため、標章42を有する情報表示部41は、視認性が高くなっている。これらの結果、装飾部40の視認性を確保しつつ耐久性を向上させることができる。
【0053】
また、第1装飾部50と第2装飾部60とは、トレッド面3上の位置での第1装飾部50の両端部同士のタイヤ周方向における距離L1と、トレッド面3上の位置での第2装飾部60の両端部同士のタイヤ周方向における距離L2とが、0.05≦(L2/L1)≦0.30の関係を有しているため、クラックの発生を、より確実に抑制することができる。つまり、(L2/L1)<0.05である場合には、タイヤ周方向おける第2装飾部60の長さが短過ぎるため、第1装飾部50の端部でクラックが発生した際に、クラックの成長を第2装飾部60によって止めることが困難になる可能性がある。また、(L2/L1)>0.30である場合には、タイヤ周方向における第2装飾部60の長さが長過ぎるため、サイドウォール部30が繰り返し撓んだ際に、第2装飾部60で大きな応力集中が発生し、タイヤ周方向における第2装飾部60の端部でクラックが発生する可能性がある。
【0054】
これに対し、本実施形態では、第1装飾部50と第2装飾部60とは、0.05≦(L2/L1)≦0.30の範囲内となって形成されているため、サイドウォール部30が繰り返し撓んだ場合でも、第1装飾部50や第2装飾部60の端部付近でクラックが発生することを抑制することができる。この結果、より確実に装飾部40の耐久性を向上させることができる。
【0055】
また、第1装飾部50は、第1装飾部50が有する複数のリッジ51の、タイヤ径方向における同じ位置同士でのタイヤ径方向に対する角度が全て同じ角度になっているため、第1装飾部50全体で見た際における統一感を向上させることができる。同様に、第2装飾部60は、第2装飾部60が有する複数のリッジ61の、タイヤ径方向における同じ位置同士でのタイヤ径方向に対する角度が全て同じ角度になっているため、第2装飾部60全体で見た際における統一感を向上させることができる。これにより、第1装飾部50や第2装飾部60の美観を向上させることができ、さらに、第2装飾部60同士の間に配置される情報表示部41を、より目立たせることができる。この結果、装飾部40の視認性を、より確実に向上させることができる。
【0056】
また、第1装飾部50が有するリッジ51と第2装飾部60が有するリッジ61とは、タイヤ径方向に対してタイヤ周方向に傾斜する方向が、互いに反対方向になっているため、タイヤ周方向における第1装飾部50の端部付近で発生するクラックを、第2装飾部60によってより確実に抑制することができる。また、双方のリッジ51,61で、タイヤ径方向に対する傾斜方向を互いに反対方向にすることにより、第2装飾部60を、より確実に目立たせることができる。これらの結果、より確実に、装飾部40の視認性を確保しつつ耐久性を向上させることができる。
【0057】
また、情報表示部41が有する標章42は、表面に複数のリッジ43が形成されているため、このリッジ43によって、標章42を目立たせることができる。この結果、装飾部40の視認性を、より確実に向上させることができる。
【0058】
また、第2装飾部60のタイヤ径方向における外方側の位置には、第2装飾部60との間に空隙部35を挟んで第3装飾部70が配置されている。この第3装飾部70は、第1装飾部50が有するリッジ51のタイヤ径方向に対する角度とは異なる角度のリッジ71を複数配列しているため、タイヤ周方向における第1装飾部50の両端付近で目立たせることができ、第1装飾部50の両端付近の美観を、より確実に向上させることができる。さらに、第1装飾部50のタイヤ周方向における端部付近で、タイヤ径方向における外方側に向かうクラックが発生した場合でも、このクラックの成長を第3装飾部70によって抑制することができる。また、第1装飾部50の両端付近の美観を向上させることにより、情報表示部41を、より確実に目立たせることができる。これらの結果、より確実に、装飾部40の視認性を確保しつつ耐久性を向上させることができる。
【0059】
また、第1装飾部50が有する縮径部52のタイヤ径方向における外方側の位置には、縮径部52のとの間に空隙部35を挟んで第4装飾部75が配置されている。この第4装飾部75は、第1装飾部50が有するリッジ51のタイヤ径方向に対する角度とは異なる角度のリッジ76を複数配列しているため、縮径部52近傍で目立たせることができ、第1装飾部50の両端付近の美観を、より確実に向上させることができる。さらに、第4装飾部75は、第1装飾部50が有する縮径部52のタイヤ径方向における外方側に配置されているため、第1装飾部50のタイヤ周方向における端部付近のデザイン性を向上させることができ、美観を向上させることができる。また、第4装飾部75は、第1装飾部50が有する縮径部52のタイヤ径方向における外方側に配置されているため、縮径部52からタイヤ径方向外方側にクラックが発生した場合でも、このクラックを第4装飾部75によって抑制することができる。これらの結果、より確実に、装飾部40の視認性を確保しつつ耐久性を向上させることができる。
【0060】
〔実施例〕
図9は、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、比較例の空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、装飾部40の視認性とサイドウォール部30の耐久性とについて行った。
【0061】
これらの評価試験のうち、視認性については、試験を行う各空気入りタイヤ1のサイドウォール部30に設けられる情報表示部41の標章42がどの程度目立つかを評価者の目視によって評価した。視認性の評価結果は、後述する比較例の空気入りタイヤ1の情報表示部41の標章42の視認性を100とする指数で算出した。数値が大きいほど標章42の視認性が優れていることを示している。
【0062】
また、耐久性の評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが275/45R20 110Vサイズの空気入りタイヤ1を20×9.0JサイズのJATMA標準リムのリムホイールにリム組みし、空気圧を100kPaに調整した空気入りタイヤ1を用いて行った。耐久性の評価試験は、試験を行う各空気入りタイヤ1を、室内ドラム試験機により、4.5kNの荷重を負荷させて、サイドウォール部30の外表面から10mmの距離にて濃度100pphmのオゾンを照射し、速度80km/hで50時間にわたり連続走行させ、走行後の各空気入りタイヤ1について、それぞれクラックの発生個数を測定し評価した。本評価試験では、サイドウォール部30の第1装飾部50のタイヤ周方向の端部近傍、具体的には、端部より50mm以内の範囲におけるクラックの発生と成長を評価者の目視によって評価した。この場合におけるクラックは、幅1.5mm以上、長さ5mm以上のものを1つとしてカウントした。耐久性の評価結果は、後述する比較例の空気入りタイヤ1におけるクラックの発生個数を100とした指数値で算出した。数値が大きいほど耐久性が優れていることを示しており、具体的には、数値が大きいほどクラックの発生個数が少なく、クラック成長を抑制できていることを示している。
【0063】
評価試験は、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1〜5と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤ1である比較例との6種類の空気入りタイヤ1について行った。これらの空気入りタイヤ1は、全てタイヤサイド部31に標章42を有する情報表示部41と第1装飾部50とが設けられている。このうち、比較例の空気入りタイヤ1は、第2装飾部60が設けられていない。これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜5は、全て第2装飾部60が設けられている。さらに、実施例1〜5に係る空気入りタイヤ1は、第1装飾部50の両端部54のトレッド面3上における距離L1と第2装飾部60の両端部64のトレッド面3上における距離L2との比や、標章42のリッジ43の有無、第3装飾部70や第4装飾部75の有無が、それぞれ異なっている。なお、
図9では、第1装飾部50が有するリッジ51の配列角度θ1と、第2装飾部60が有するリッジ61の配列角度θ2とは、第1装飾部50が有するリッジ51の、タイヤ径方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向を+(プラス)とし、第1装飾部50が有するリッジ51の、タイヤ径方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向の反対側への傾斜方向を−(マイナス)としている。
【0064】
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、
図9に示すように、実施例1〜5の空気入りタイヤ1は、比較例に対して、視認性と耐久性とが共に向上することが分かった。つまり、実施例1〜5に係る空気入りタイヤ1は、装飾部40の視認性を確保しつつ耐久性を向上させることができる。