(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、脳の活動状況を観察するために、光を用いて簡便に非侵襲で測定する光脳機能イメージング装置が開発されている。このような光脳機能イメージング装置では、被検者の頭皮表面上に配置した送光プローブにより、異なる3種類の波長λ
1、λ
2、λ
3(例えば、780nmと805nmと830nm)の近赤外光を脳に照射するとともに、頭皮表面上に配置した受光プローブにより、脳から放出された各波長λ
1、λ
2、λ
3の近赤外光の強度変化(受光量情報)ΔA(λ
1)、ΔA(λ
2)、ΔA(λ
3)をそれぞれ検出する。
そして、このようにして得られた受光量情報ΔA(λ
1)、ΔA(λ
2)、ΔA(λ
3)から、脳血流中のオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]と、デオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[deoxyHb]とを求めるために、例えば、Modified Beer Lambert則を用いて関係式(1)(2)(3)に示す連立方程式を作成して、この連立方程式を解いている。さらには、オキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]と、デオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[deoxyHb]とから総ヘモグロビンの濃度変化・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を算出している。
ΔA(λ
1)=E
O(λ
1)×[oxyHb]+E
d(λ
1)×[deoxyHb]・・・(1)
ΔA(λ
2)=E
O(λ
2)×[oxyHb]+E
d(λ
2)×[deoxyHb]・・・(2)
ΔA(λ
3)=E
O(λ
3)×[oxyHb]+E
d(λ
3)×[deoxyHb]・・・(3)
なお、E
O(λm)は、波長λmの光におけるオキシヘモグロビンの吸光度係数であり、E
d(λm)は、波長λmの光におけるデオキシヘモグロビンの吸光度係数である。
【0003】
ここで、送光プローブと受光プローブとの間の距離(チャンネル)と、測定部位との関係について説明する。
図10(a)は、一対の送光プローブ及び受光プローブと、測定部位との関係を示す断面図であり、
図10(b)は、
図10(a)の平面図である。
送光プローブ12が被検者の頭皮表面の送光点Tに押し当てられるとともに、受光プローブ13が被検者の頭皮表面の受光点Rに押し当てられる。そして、送光プローブ12から光を照射させるとともに、受光プローブ13に頭皮表面から放出される光を入射させる。このとき、頭皮表面の送光点Tから照射された光のうちで、バナナ形状(測定領域)を通過した光が、頭皮表面の受光点Rに到達する。これにより、測定領域の中でも、特に送光点Tと受光点Rとを被検者の頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の中点Mから、送光点Tと受光点Rとを被検者の頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の距離の半分の深さLである被検者の測定部位Sに関する受光量情報ΔA(λ
1)、ΔA(λ
2)、ΔA(λ
3)が得られるとしている。
【0004】
また、光脳機能イメージング装置では、脳の複数箇所の測定部位に関するオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度変化・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])をそれぞれ測定するために、例えば、近赤外分光分析計等が利用されている(例えば、特許文献1参照)。
図11は、従来の近赤外分光分析計の概略構成の一例を示すブロック図である。近赤外分光分析計101は、光を出射する光源2と、光源2を駆動する光源駆動機構4と、光を検出する光検出器3と、A/D(A/Dコンバータ)5と、送受光用制御部121と、解析用制御部122と、メモリ(記憶部)123とを備えるとともに、16個の送光プローブ12と、16個の受光プローブ13と、モニタ画面26a等を有する表示装置26と、キーボード(入力装置)27とを備える。
【0005】
光源駆動機構4は、送受光用制御部121から入力された駆動信号により光源2を駆動する。光源2は、例えば異なる3種類の波長λ
1、λ
2、λ
3の近赤外光を出射することができる半導体レーザLD1、LD2、LD3等である。
光検出器3は、近赤外光をそれぞれ検出することにより、受光信号(受光量情報)ΔA(λ
1)、ΔA(λ
2)、ΔA(λ
3)をA/D5を介して送受光用制御部121に出力する検出器であり、例えば光電子増倍管等である。
【0006】
このような近赤外分光分析計101においては、16個の送光プローブ12と16個の受光プローブ13とを所定の配列で被検者の頭皮表面に接触させるために、ホルダ(送受光部)30が使用される。
図2は、16個の送光プローブと16個の受光プローブとが挿入されるホルダ30の一例を示す平面図である。
送光プローブ12
T1〜12
T8と受光プローブ13
R1〜13
R8とは、縦方向に4個と横方向に4個とに交互となるように配置されるとともに、送光プローブ12
T9〜12
T16と受光プローブ13
R9〜13
R16とは、縦方向に4個と横方向に4個とに交互となるように配置されることになる。これにより、送光プローブ12と受光プローブ13とのプローブ間隔が一定となり、頭皮表面から特定の深度となる受光量情報ΔA(λ
1)、ΔA(λ
2)、ΔA(λ
3)を得ている。なお、一般的にチャンネルを30mmとしたものが用いられ、チャンネルが30mmである場合には、チャンネルの中点からの深度15mm〜20mmの受光量情報ΔA(λ
1)、ΔA(λ
2)、ΔA(λ
3)が得られると考えられている。すなわち、頭皮表面から深度15mm〜20mmの位置は脳表部位にほぼ対応し、脳活動に関係した受光量情報ΔA(λ
1)、ΔA(λ
2)、ΔA(λ
3)を得ている。
【0007】
ところで、このような8個の送光プローブ12
T1〜12
T8と8個の受光プローブ13
R1〜13
R8との位置関係(8個の送光プローブ12
T9〜12
T16と8個の受光プローブ13
R9〜13
R16との位置関係)では、1個の受光プローブ13で、複数個の送光プローブ12から照射された光を同時に受光せず、1個の送光プローブ12から照射された光のみを受光するように、送光プローブ12から光を照射するタイミングと、受光プローブ13で光を受光するタイミングとを調整する必要がある。このため、メモリ123の制御テーブル記憶領域123aには、光源2で光を出射するタイミングと光検出器3で光を検出するタイミングとを示す制御テーブルが記憶されている。
送受光用制御部121は、制御テーブル記憶領域123aに記憶された制御テーブルに基づいて、所定の時間に1個の送光プローブ12に光を送光する駆動信号を光源駆動機構4に出力するとともに、受光プローブ13で受光された受光信号(受光量情報)を光検出器3で検出してデータ記憶領域123bに記憶させている。
【0008】
ここで、
図3は、制御テーブルの一例を説明するための図である。このような制御テーブルによれば、まず5ミリ秒間、送光プローブ12
T1に波長780nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12
T1に波長805nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12
T1に波長830nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12
T2に波長780nmの光を送光させるように、所定のタイミングで1個の送光プローブ12
T1〜12
T8に光を順番に送光させていく。このとき、いずれか1個の送光プローブ12
T1〜12
T8に光を送光させるごとに、8個の受光プローブ13
R1〜13
R8で受光信号を検出することになるが、所定のタイミングで検出した所定の受光プローブ13
R1〜13
R8の受光信号をメモリ123のデータ記憶領域123bに記憶させる。具体的には、送光プローブ12
T1からの光を検出した受光プローブ13
R1と受光プローブ13
R3との受光信号をデータ記憶領域123bに記憶させ、送光プローブ12
T2からの光を検出した受光プローブ13
R1と受光プローブ13
R2と受光プローブ13
R4との受光信号をデータ記憶領域123bに記憶させるように、所定のタイミングで検出した所定の受光プローブ13
R1〜13
R8の受光信号をデータ記憶領域123bに記憶させる。
なお、8個の送光プローブ12
T9〜12
T16と8個の受光プローブ13
R9〜13
R16とも、8個の送光プローブ12
T1〜12
T8と8個の受光プローブ13
R1〜13
R8と同様であるので、説明を省略する。これにより、
図4に示すように平面視すると、合計48個の受光量情報ΔA(λ
1)、ΔA(λ
2)、ΔA(λ
3)の収集が行われる。
【0009】
解析用制御部122は、48個の受光量情報ΔA(λ
1)、ΔA(λ
2)、ΔA(λ
3)に基づき、関係式(1)(2)(3)を用いて、各波長(オキシヘモグロビンの吸収波長及びデオキシヘモグロビンの吸収波長)の通過光強度から、オキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度変化・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を48個の測定データとして求めている。その48個の測定データ結果は、医師や検査技師等によって観察されるために、モニタ画面26aに表示される。
図5は、48個の測定データが表示されたモニタ画面の一例を示す図である。モニタ画面には48個の測定データが表示されている。このとき、送光プローブ12と受光プローブ13とを最短距離で結んだ線の各中点M(
図10参照)に、送光プローブ12から照射させた光を、受光プローブ13で検出させたときに得られた測定データが配置されるように整列して表示されている。具体的には、送光プローブ12
T1から照射させた光を受光プローブ13
R1で検出させたときの測定データ#1が、左上に配置され、送光プローブ12
T1から照射させた光を受光プローブ13
R3で検出させたときの測定データ#4が、測定データ#1の左下に配置され、送光プローブ12
T2から照射させた光を受光プローブ13
R1で検出させたときの測定データ#2が、測定データ#1の右に配置されるように、48個の測定データ#1〜#48が整列して配置されている。
なお、各測定データにおける縦軸を被検者がホルダ30を装着した時点のオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb](デオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[deoxyHb]、総ヘモグロビンの濃度変化・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb]))からのオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb](デオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[deoxyHb]、総ヘモグロビンの濃度変化・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb]))の変化量とし、横軸を時間tとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、被検者の生体組織が正常であるか否かを診断するために、医師や検査技師等が、被検者へ刺激(以下、「負荷」や「タスク」という)を与えて、被検者の脳を活動させたときに得られる被検者の脳活動の時間変化に関する測定データを観察する検査がある。このとき、医師や検査技師等が、時間を計りながら、まず、被検者をある一定時間(例えば、20秒間)、指の運動をさせる課題遂行状態にさせ(以下、「タスク期間」という)、その後、被検者をある一定時間、安静な定常状態にさせる(以下、「レスト期間」という)。その後、再度、被検者を一定時間、指の運動をさせる課題遂行状態にさせた後、一定時間、安静な定常状態にさせるというように、レスト期間とタスク期間とを交互に複数回繰り返している。
【0012】
しかしながら、
図3に示すような制御テーブルを用いて得られた測定データでは、タスク期間の開始時間の前後の時間帯(例えば、4秒間)に現れる血流変化を検出することができないことがあった。つまり、
図3に示すような制御テーブルでは、被検者の脳全体の脳活動に関する測定データを得る測定時間間隔が、125ミリ秒間(送光プローブの数×波長数×5ミリ秒+DARK時間)と長くなるという問題点があった。
なお、互いに光がほとんど干渉しない遠く離れた送光プローブ12どうしであれば、複数の送光プローブ12に同時に送光して、測定の能率を高めることもできるが、そのようにしても、タスク期間の開始時間の前後の時間帯に現れる血流変化を観察することができないという問題点があった。
【0013】
さらに、48個の測定データをメモリ123のデータ記憶領域123bに記憶させていくと、データ量が多くなるという問題点があった。
そこで、少数の送光プローブ12と少数の受光プローブ13とを有するホルダを用いて、測定時間間隔を短くすることも考えられるが、そのようにすると、被検者の脳の一部の脳活動の時間変化に関する測定データしか得ることができなくなり、必要な脳の部位の脳活動の時間変化に関する測定データを取り逃すという問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本件発明者は、上記課題を解決するために、タスク期間の開始時間の前後の時間帯に現れる血流変化を、被検者の脳の関心領域で観察する方法について検討を行った。そこで、まず多数の送光プローブ12から被検者に光を順番に照射していくことにより、被検者の脳全体の脳活動の時間変化に関する測定データを得て、その測定データを観察しながら少数の送光プローブ12を選択した後、少数の送光プローブ12から被検者に光を順番に照射していくことにより、被検者の脳の一部(関心領域)の脳活動の時間変化に関する測定データを得ることにした
。
【0015】
すなわち、本発明の光計測システムは、被検者に光を照射するN個の送光プローブと、当該被検者から放出される光を受光するM個の受光プローブとを有する送受光部と、N個の送光プローブを用いて被検者に光を
順番に照射することでM個の受光プローブで光を検出させることにより、前記被検者の脳活動の時間変化に関するS個の測定データを得る制御部とを備える光計測システムであって、
プリスキャンが実行された
ことにより取得されたS個の測定データを、脳表面画像又は頭皮表面画像上の各測定関連位置に表示する表示装置と、前記表示装置に前記S個の測定データを表示した状態で、N個の送光プローブ及びM個の受光プローブのうちからY個(ただし、Y<N)の送光プローブ及びX個(ただし、X<M)の受光プローブを
入力操作によって選択することのできる入力装置と、前記入力装置を入力操作することで選択されたY個の送光プローブ及びX個の受光プローブの個数と配置位置を記憶する記憶部とを備え、前記制御部は
、選択されたY個の送光プローブ及びX個の受光プローブを用いて、前記被検者の脳の特定領域における脳活動の時間変化に関するT個
(ただし、T<S)の測定データを得るようにしている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光計測システムによれば、被検者の広範囲の脳における脳活動の時間変化に関する測定データを得て、その測定データを観察しながらY個の送光プローブを選択した後、Y個の送光プローブを用いて被検者に光を照射していくため、測定時間間隔を短くすることができ、タスク期間の開始時間の前後の時間帯に現れる血流変化を、被検者の脳の関心領域で観察することができる。また、M個の受光プローブのうちから選択されたX個の受光プローブで光を検出させて記憶部に記憶させるため、記憶部に記憶させるデータ量を少なくすることができる。
【0017】
ここで、「脳表面画像上の測定関連位置」とは、例えば、送光点Tと受光点Rとを被検者の頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の中点Mから、送光点Tと受光点Rとを被検者の頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の距離の半分の深さLである位置のことをいう
。
【0018】
また、
「頭皮表面画像上の測定関連位置」とは、例えば、送光点Tと受光点Rとを被検者の頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の中点Mの位置のことをいう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれる。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態である光計測装置の概略構成を示すブロック図である。また、
図2は、16個の送光プローブと16個の受光プローブとが挿入されるホルダの一例を示す平面図である。なお、近赤外分光分析計101と同様のものについては、同じ符号を付している。
光計測装置(光計測システム)1は、光を出射する光源2と、光源2を駆動する光源駆動機構4と、光を検出する光検出器3と、A/D(A/Dコンバータ)5と、送受光用制御部21と、解析用制御部22と、制御テーブル作成部(選択手段)24と、メモリ(記憶部)23とを備えるとともに、16個(N個)の送光プローブ12と、16個(M個)の受光プローブ13と、モニタ画面26a等を有する表示装置26と、キーボード(入力装置)27とを備える。
【0022】
メモリ23には、ホルダ30に対して光の送受光を制御する制御形態を定める広範囲制御テーブルを予め記憶するとともに、狭範囲制御テーブルを記憶するための制御テーブル記憶領域23aと、受光信号(測定データ)等を記憶するデータ記憶領域23bとが形成されている。
図3は、広範囲制御テーブルの一例を説明するための図であり、
図4は、48個の受光量情報が得られる脳の位置を説明するための図である。なお、広範囲制御テーブルは、近赤外分光分析計101の制御テーブルと同様に用いられるので、説明を省略する。
【0023】
また、狭範囲制御テーブルの作成方法についての詳細は後述するが、
図6は、狭範囲制御テーブルの一例を説明するための図であり、
図7は、24個の受光量情報が得られる脳の位置を説明するための図である。
このような狭範囲制御テーブルによれば、まず5ミリ秒間、送光プローブ12
T2に波長780nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12
T2に波長805nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12
T2に波長830nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12
T3に波長780nmの光を送光させるように、所定のタイミングで1個の送光プローブ12に光を順番に送光させていく。このとき、いずれか1個の送光プローブ12に光を送光させるごとに、8個の受光プローブ13
R1〜13
R8で受光信号を検出することになるが、所定のタイミングで検出した所定の受光プローブ13の受光信号をメモリ23のデータ記憶領域23bに記憶させる。具体的には、送光プローブ12
T2からの光を検出した受光プローブ13
R1と受光プローブ13
R2と受光プローブ13
R4との受光信号をデータ記憶領域23bに記憶させ、送光プローブ12
T3からの光を検出した受光プローブ13
R1と受光プローブ13
R4と受光プローブ13
R5との受光信号をデータ記憶領域23bに記憶させるように、所定のタイミングで検出した所定の受光プローブ13の受光信号をデータ記憶領域23bに記憶させる。このとき、被検者の脳の一部の脳活動に関する測定データを得る測定時間間隔は、80ミリ秒間(送光プローブの数×波長数×5ミリ秒+DARK時間)となる。
なお、5個の送光プローブ12と4個の受光プローブ13とも、4個の送光プローブ12と5個の受光プローブ13と同様であるので、説明を省略する。これにより、
図7に示すように平面視すると、合計24個(T個<S個)の受光量情報ΔA(λ
1)、ΔA(λ
2)、ΔA(λ
3)の収集が行われる。
【0024】
送受光用制御部21は、制御テーブル記憶領域23aに記憶された制御テーブルに基づいて、所定の時間に1個の送光プローブ12に光を送光する駆動信号を光源駆動機構4に出力するとともに、受光プローブ13で受光された受光信号(受光量情報)を光検出器3で検出する。このとき、制御テーブル記憶領域23aに狭範囲制御テーブルが記憶される前には、送受光用制御部21は、広範囲制御テーブルに基づいて、まず5ミリ秒間、送光プローブ12
T1に波長780nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12
T1に波長805nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12
T1に波長830nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12
T2に波長780nmの光を送光させるように、所定のタイミングで1個の送光プローブ12
T1〜12
T8に光を順番に送光させていく。このとき、いずれか1個の送光プローブ12
T1〜12
T8に光を送光させるごとに、8個の受光プローブ13
R1〜13
R8で受光信号を検出することになるが、所定のタイミングで検出した所定の受光プローブ13
R1〜13
R8の受光信号をメモリ23のデータ記憶領域23bに記憶させる。なお、8個の送光プローブ12
T9〜12
T16と8個の受光プローブ13
R9〜13
R16とも、8個の送光プローブ12
T1〜12
T8と8個の受光プローブ13
R1〜13
R8と同様であるので、説明を省略することとする。これにより、
図4に示すように平面視すると、合計48個(S個)の受光量情報ΔA(λ
1)、ΔA(λ
2)、ΔA(λ
3)の収集が行われる。
【0025】
また、制御テーブル記憶領域23aに狭範囲制御テーブルが記憶された後には、送受光用制御部21は、狭範囲制御テーブルに基づいて、まず5ミリ秒間、送光プローブ12
T2に波長780nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12
T2に波長805nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12
T2に波長830nmの光を送光させ、次の5ミリ秒間、送光プローブ12
T3に波長780nmの光を送光させるように、所定のタイミングで1個の送光プローブ12に光を順番に送光させていく。このとき、いずれか1個の送光プローブ12に光を送光させるごとに、8個の受光プローブ13
R1〜13
R8で受光信号を検出することになるが、所定のタイミングで検出した所定の受光プローブ13の受光信号をメモリ23のデータ記憶領域23bに記憶させる。なお、8個の送光プローブ12
T9〜12
T16と8個の受光プローブ13
R9〜13
R16とも、8個の送光プローブ12
T1〜12
T8と8個の受光プローブ13
R1〜13
R8と同様であるので、説明を省略することとする。これにより、
図7に示すように平面視すると、合計24個(T個)の受光量情報ΔA(λ
1)、ΔA(λ
2)、ΔA(λ
3)の収集が行われる。
すなわち、送受光用制御部21は、狭範囲制御テーブルが記憶される前には、広範囲制御テーブルを用いて、狭範囲制御テーブルが記憶されると、狭範囲制御テーブルを用いるように切り替えることになる。
【0026】
解析用制御部22は、制御テーブル記憶領域23aに狭範囲制御テーブルが記憶される前には、広範囲制御テーブルと48個の受光量情報A(λ
1)、A(λ
2)、A(λ
3)とに基づいて、関係式(1)(2)(3)を用いて、各波長(オキシヘモグロビンの吸収波長及びデオキシヘモグロビンの吸収波長)の通過光強度から、オキシヘモグロビンの濃度・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を48個(S個)の測定データとして求める。これにより、モニタ画面26aには、
図5に示すような48個の測定データの表示が行われる。
また、解析用制御部22は、制御テーブル記憶領域23aに狭範囲制御テーブルが記憶された後には、狭範囲制御テーブルと24個の受光量情報A(λ
1)、A(λ
2)、A(λ
3)とに基づいて、関係式(1)(2)(3)を用いて、各波長(オキシヘモグロビンの吸収波長及びデオキシヘモグロビンの吸収波長)の通過光強度から、オキシヘモグロビンの濃度・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を24個(T個)の測定データとして求め、データ記憶領域23bに記憶させる。これにより、モニタ画面には、24個の測定データの表示と記憶とが行われる。
【0027】
制御テーブル作成部24は、48個(S個)の測定データをモニタ画面26aに表示させ、キーボード27による入力操作によって、T個の測定データが選択されることで、T個の測定データを取得するために16個(N個)の送光プローブ12のうちから所望個数(Y個<N個)とその配置位置の送光プローブ12や、16個(M個)の受光プローブ13のうちから選択された所望個数(X個<M個)とその配置位置の受光プローブ13を決定することにより、所望個数(Y個)とその配置位置の送光プローブ12と所望個数(X個)とその配置位置の受光プローブ13とを用いるための狭範囲制御テーブルを作成して制御テーブル記憶領域23aに記憶させる制御を行う。
このとき、16個の送光プローブ12のうちから所望個数とその配置位置の送光プローブ12が選択されたり、16個の受光プローブ13のうちから所望個数とその配置位置の受光プローブ13が選択されたりされるために、医師や検査技師等が、例えば、モニタ画面26aに表示された画像を用いてキーボード27で入力操作して設定することになるが、図
5に示すような頭皮表面画像上に48個の測定データ(トレンドグラフ)#1〜#48の表示が行われている際に、48個の測定データ(トレンドグラフ)#1〜#48のうちから
図8に示すように必要な測定データ(必要な送光プローブ12と受光プローブ13との組み合わせ)を四角で囲むように選択することにより設定する。これにより、必要な脳の部位の脳活動に関する測定データを取り逃すということがなくなる。
【0028】
ここで、光生体計測装置1により被検者の脳活動を計測する計測方法(使用方法)について説明する。図
9は、光生体計測装置1による計測方法の一例について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS101の処理において、ホルダ30を被検者の頭皮表面に配置する。
【0029】
次に、ステップS102の処理において、送受光用制御部21は、広範囲制御テーブルに基づいて、所定の時間に1個の送光プローブ12に光を送光する駆動信号を光源駆動機構4に出力するとともに、受光プローブ13で受光された受光信号(受光量情報)を光検出器3で検出する(広範囲測定データ取得ステップ、プリスキャン)。
次に、ステップS103の処理において、解析用制御部22は、広範囲制御テーブルと48個の受光量情報A(λ
1)、A(λ
2)、A(λ
3)とに基づいて、関係式(1)(2)(3)を用いて、各波長(オキシヘモグロビンの吸収波長及びデオキシヘモグロビンの吸収波長)の通過光強度から、オキシヘモグロビンの濃度・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を48個の測定データとして求めて、モニタ画面26aに表示する。
【0030】
次に、ステップS104の処理において、制御テーブル作成部24は、48個の測定データをモニタ画面26aに表示させ、医師や検査技師等は、モニタ画面23aに表示された画像を用いてキーボード27で入力操作することにより、48個の測定データのうちから24個(T個)の測定データを選択する(選択ステップ)。
次に、ステップS105の処理において、制御テーブル作成部24は、所望個数とその配置位置の送光プローブ12と、所望個数とその配置位置の受光プローブ13とを用いるための狭範囲制御テーブルを作成して、制御テーブル記憶領域23aに記憶させる。
【0031】
次に、ステップS106の処理において、送受光用制御部21は、狭範囲制御テーブルに基づいて、所定の時間に1個の送光プローブ12に光を送光する駆動信号を光源駆動機構4に出力するとともに、受光プローブ13で受光された受光信号(受光量情報)を光検出器3で検出する(狭範囲測定データ取得ステップ)。
次に、ステップS107の処理において、解析用制御部22は、狭範囲制御テーブルと24個の受光量情報A(λ
1)、A(λ
2)、A(λ
3)とに基づいて、関係式(1)(2)(3)を用いて、各波長(オキシヘモグロビンの吸収波長及びデオキシヘモグロビンの吸収波長)の通過光強度から、オキシヘモグロビンの濃度・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を24個の測定データとして求めて、モニタ画面26aに表示して、データ記憶領域23bに記憶させる。
そして、ステップS107の処理が終了したときには、本フローチャートを終了させる。
【0032】
以上のように、本発明の光計測装置1によれば、被検者の広範囲の脳における脳活動の時間変化に関する測定データを得て、その測定データを観察しながら9個(Y個)の送光プローブ12を選択した後、9個(Y個)の送光プローブ12を用いて被検者に光を順番に照射していくため、測定時間間隔を短くすることができ、タスク期間の開始時間の前後の時間帯に現れる血流変化を、被検者の脳の関心領域で観察することができる。また、16個(M個)の受光プローブ13のうちから選択された9個(X個)の受光プローブ13で光を検出させてデータ記憶領域23bに記憶させるため、データ記憶領域23bに記憶させるデータ量を少なくすることができる。
【0033】
<他の実施形態>
(1)上述した光生体測定装置1では、キーボード27による入力操作によって、T個の測定データが選択される構成を示したが、測定データの内容等によって閾値等を登録することで、制御テーブル作成部(選択手段)24がT個の測定データを自動的に選択するようにしてもよい。
【0034】
(2)上述した光生体測定装置1では、9個(Y個)の送光プローブ12と9個(X個)の受光プローブ13とを用いる狭範囲制御テーブルを作成する構成を示したが、さらに9個(Y個)の送光プローブのうちから選択された所望個数のY’個(例えば2個)の送光プローブと9個(X個)の受光プローブのうちから選択された所望個数のX’個(例えば2個)の受光プローブとを用いる狭範囲制御テーブルを作成するようにしてもよい。
(3)上述した光生体測定装置1では、制御テーブル作成部(選択手段)24は、キーボード27による入力操作によって選択されるために、図
5に示すような48個の測定データ(トレンドグラフ)#1〜#48を表示する構成を示したが、脳表面画像の48個の所定位置上に各測定データ#1〜#48の画像表示がそれぞれ行われており、各測定データ#1〜#48は、ある計測時間tでのオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]の数値に対応する色で表現されるようにしてもよい。
(4)上述した光生体測定装置1では、制御テーブル作成部(選択手段)24は、48個の測定データ#1〜#48のうちから必要な測定データを四角で囲むように選択されることで決定する構成を示したが、キーボード27に設けた番号等とプローブ番号等とを対応付けて登録することで、キーボード27に設けた番号が押圧されることにより決定するようにしてもよい。