特許第6281632号(P6281632)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6281632ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281632
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20180208BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20180208BHJP
   C08L 83/08 20060101ALI20180208BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20180208BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K3/36
   C08L83/08
   C08K5/103
   B60C1/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-510557(P2016-510557)
(86)(22)【出願日】2015年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2015059665
(87)【国際公開番号】WO2015147274
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2016年7月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-64964(P2014-64964)
(32)【優先日】2014年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】築島 新
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−130908(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/098155(WO,A1)
【文献】 特開2013−133401(JP,A)
【文献】 国際公開第95/031888(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/002750(WO,A1)
【文献】 特開2009−126907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L7/00−21/02
C08L83/08
C08K3/00−13/08
B60C1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを5〜200質量部、メルカプト基を有するシランカップリング剤を前記シリカの質量に対し1〜20質量%および炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステルを前記シリカの質量に対し1〜20質量%配合してなり、
前記メルカプト基を有するシランカップリング剤が、下記式(1)で表される構成単位と、下記式(2)および/または式(3)で表される構成単位との共重合体である
ことを特徴とするゴム組成物。
【化1】
(前記式(1)〜(3)において、R1、R6は、炭素数1〜10のアルキレン基であり、R2、R3、R5、R7、R9、R10、R11は、炭素数1〜30のアルキル基であり、R4、R8は、炭素数1〜10の直鎖アルキル基である。)
【請求項2】
前記シリカのBET比表面積が、150m/g以上であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
【請求項5】
請求項1に記載のゴム組成物をキャップトレッドに使用した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、高い硬度を有し、加工性を悪化させることなく反発弾性を高め、操縦安定性および燃費性能を向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の環境意識の高まりに伴い、タイヤの低燃費性を向上させることが求められている。
この要求を解決するために、例えばタイヤにシリカを配合する手法が知られている。しかしながらシリカは、その粒子表面に存在するシラノール基による水素結合の形成のために凝集する傾向を有し、混練時にゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、加工性を悪化させるという問題点があった。
そこで、プロセスオイル等の軟化剤の配合量を増加することにより、粘度の低減が図れるが、この場合、反発弾性が低下し、所望の低燃費性が得られない。このように、反発弾性と加工性とは二律背反の関係にあり、両者を共に向上させることは困難とされていた。
【0003】
一方、シリカはゴム中での親和性が低く、分散しにくいことが知られている。シリカの分散性を高めるためには、メルカプト基のような高反応性基を有するシランカップリング剤を添加するのが有利である。しかし、シリカの分散性を高め過ぎると加硫ゴムの硬度を低下させ、操縦安定性を低下させるという問題点があり、また、高反応性基を有するシランカップリング剤を添加すると、スコーチ性を悪化させるという問題点もある。
【0004】
なおシリカ配合ゴム組成物の加工性を高める従来技術として、例えば下記特許文献1には、添加剤として脂肪酸およびトリメチロールプロパンをゴムに添加する技術が開示されている。しかしながら従来技術ではいずれも、硬度、加工性、反発弾性を同時に改善することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−52407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、高い硬度を有し、加工性を悪化させることなく反発弾性を高め、操縦安定性および燃費性能を向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ジエン系ゴム、シリカおよびメルカプト基を有するシランカップリング剤を特定量で配合してなるゴム組成物に、特定のグリセリンモノ脂肪酸エステルを特定量でもって配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0008】
1.ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを5〜200質量部、メルカプト基を有するシランカップリング剤を前記シリカの質量に対し1〜20質量%および炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステルを前記シリカの質量に対し1〜20質量%配合してなることを特徴とするゴム組成物。
2.前記シリカのBET比表面積が、150m/g以上であることを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
3.前記脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸であることを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
4.前記1に記載のゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
5.前記1に記載のゴム組成物をキャップトレッドに使用した空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ジエン系ゴム、シリカおよびメルカプト基を有するシランカップリング剤を特定量で配合してなるゴム組成物に、特定のグリセリンモノ脂肪酸エステルを特定量でもって配合したので、高い硬度を有し、加工性を悪化させることなく反発弾性を高め、操縦安定性および燃費性能を向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、ゴム組成物に配合することができる任意のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
これらのジエン系ゴムの中でも、本発明の効果の点からジエン系ゴムはSBRおよびBRがとくに好ましい。
【0012】
(シリカ)
本発明で使用するシリカはとくに制限されず、通常タイヤ用ゴム組成物に配合されるシリカ、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは表面処理シリカ等を使用することができる。
なお、本発明の効果が向上するという観点から、シリカのBET比表面積は、150m/g以上であることが好ましく、155〜300m/gであるのがさらに好ましい。
なお、BET比表面積は、ISO5794/1に準拠して求めた値である。
【0013】
(メルカプト基を有するシランカップリング剤)
本発明で使用されるメルカプト基を有するシランカップリング剤は、メルカプト基を有すれば所望の効果を奏するものであるが、例えば下記式(1)で表される構成単位を少なくとも1つ以上含むシランカップリング剤が挙げられ、該シランカップリング剤は、下記式(2)および/または式(3)で表される構成単位と共重合していてもよい。
【0014】
【化1】
【0015】
式(1)〜(3)において、R1、R6は、炭素数1以上の2価の有機基を表し、例えば炭素数1〜10のアルキレン基が例示される。
2、R3、R5、R7、R9、R10、R11は、炭素数1以上の1価の有機基を表し、例えば炭素数1〜30のアルキル基が例示される。
4、R8は、炭素数1以上の1価の有機基を表し、例えば炭素数1〜10の直鎖アルキル基が例示される。
【0016】
メルカプト基は、ジエン系ゴムとシリカの両方に結合し、ジエン系ゴム中のシリカの分散性を高める機能を有するものであると推測される。
【0017】
(グリセリンモノ脂肪酸エステル)
本発明で使用されるグリセリンモノ脂肪酸エステルは、炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするモノグリセリドである。
脂肪酸としては、具体的には、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の直鎖脂肪酸類が挙げられる。
グリセリンモノ脂肪酸エステルは、一種類を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の効果が向上するという観点から、前記脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が好ましい。
本発明で使用されるグリセリンモノ脂肪酸エステルは、グリセリン由来の2つの−OH基がシリカ表面のシラノール基に吸着すると同時に、脂肪酸由来の炭素鎖が疎水化部位として作用し、ゴム組成物の粘度が低下させる作用を有する。この効果は、とくに反応性および分散性の高いメルカプト基を有するシランカップリング剤と併用するときに特に高まる。また、硬度を低下させずに反発弾性を高めるという効果も同時に奏する。
【0018】
本発明で使用されるグリセリンモノ脂肪酸エステルは、グリセリンジ脂肪酸エステルおよび/またはグリセリントリ脂肪酸エステルとの混合物であってもよいが、-OH基を2つ有するモノエステルに対して1つしか有さないジエステル、全く有さないトリエステルはシリカ表面への吸着能が低く、分散性を発揮することができず、このようなジエステルおよび/またはトリエステルの存在は本発明の効果に悪影響を及ぼすため、該混合物を使用する場合、モノエステルの比率は80質量%以上が好ましい。
【0019】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを5〜200質量部、メルカプト基を有するシランカップリング剤を前記シリカの質量に対し1〜20質量%および炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステルを前記シリカの質量に対し1〜20質量%配合してなることを特徴とする。
シリカの配合量が5質量部未満であると、反発弾性を向上することができない。逆に200質量部を超えると加工性が悪化する。
メルカプト基を有するシランカップリング剤の配合量がシリカの質量に対し1質量%未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量%を超えるとスコーチ性が悪化する。
グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量がシリカの質量に対し1質量%未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量%を超えると硬度が悪化する。
【0020】
また、本発明のゴム組成物において、シリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、10〜200質量部であることが好ましい。
メルカプト基を有するシランカップリング剤の配合量は、シリカの質量に対し3〜10質量%であることが好ましい。
グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量は、シリカの質量に対し1〜8質量%であることが好ましい。
【0021】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0022】
また本発明のゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに適しており、反発弾性が高められるという点から、トレッド、とくにキャップトレッドに適用するのがよい。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0024】
標準例1〜6、実施例1〜12、比較例1〜9
サンプルの調製
表1および2に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で未加硫のゴム組成物および加硫ゴム試験片の物性を測定した。
【0025】
ムーニービス:上記ゴム組成物を用い、JIS K6300に従い、100℃における未加硫ゴムの粘度を測定した。結果は標準例1の値を100として指数表示した。この値が低いほど粘度が低く、加工性が良好であることを示す。
デュロメーター硬度:JIS K6253に従い、20℃における硬度を測定した。結果は標準例1の値を100として指数表示した。この値が高いほど、硬度が高いことを示す。
反発弾性:JIS K 6255に従い、温度40℃のときの反発弾性を測定した。結果は標準例1の値を100として指数表示した。この値が高いほど、反発弾性が大きく低燃費性が得られることを示す。
ムーニースコーチ:JIS K6300に従い、125℃で測定した。結果は標準例1の値を100として指数表示した。この値が高いほどヤケ性に優れることを示す。
結果を表1および2に併せて示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
*1:SBR(旭化成(株)製E581、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部)
*2:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220)
*3:シリカ−1(ソルベイ社製Zeosil 1165MP、BET比表面積=165m/g)
*4:シリカ−2(ソルベイ社製Zeosil Premium200MP、BET比表面積=200m/g)
*5:シリカ−3(Evonik社製Ultrasil 9000GR、BET比表面積=235m/g)
*6:シリカ−4(ソルベイ社製Zeosil 115GR、BET比表面積=115m/g)
*7:カーボンブラック(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN339、窒素吸着比表面積(NSA)=90m/g)
*8:シランカップリング剤(エボニックデグッサジャパン(株)製Si69、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
*9:メルカプト基を有するシランカップリング剤−1 Si363(前記式(1)で表される構成単位を有する)
*10:シランカップリング剤−2(国際公開番号WO2014/002750、合成例1(p17下段)に従って製造し、前記式(1)および(3)で表される構成単位を有する)
*11:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*12:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸YR)
*13:老化防止剤(Solutia Europe社製Santoflex 6PPD)
*14:プロセスオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*15:硫黄(軽井沢精錬所社製油処理イオウ)
*16:加硫促進剤−1(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G)
*17:加硫促進剤−2(Flexsys社製Perkacit DPG)
*18:グリセリンモノ脂肪酸エステル−1(シグマアルドリッチ製モノステアリン酸グリセロール)
*19:グリセリンモノ脂肪酸エステル−2(シグマアルドリッチ製モノオレイン酸グリセロール)
*20:比較脂肪酸エステル(シグマアルドリッチ製モノ酪酸グリセロール)
*21: グリセリンモノ脂肪酸エステル−3(モノラウリン酸グリセロール)
*22: グリセリンモノ脂肪酸エステル−4(モノベヘン酸グリセロール)
*23: グリセリンモノ脂肪酸エステル−5(モノリノレン酸グリセロール)
*24: グリセリンジ脂肪酸エステル(ジステアリン酸グリセロール)
*25: グリセリントリ脂肪酸エステル(トリステアリン酸グリセロール)
*26: グリセリン
【0029】
上記の表1および2の結果から明らかなように、標準例1と比較例1とを比較すると、同じ配合処方において、比較例1ではグリセリンモノ脂肪酸エステルを配合しているが、両例ではシランカップリング剤がSH基を持たないので、ムーニービス、硬度、反発弾性、ムーニースコーチにそれほど変化が見られない。
これに対し、標準例1、標準例2および実施例1を比較すると、標準例1のシランカップリング剤をメルカプト基を有するシランカップリング剤に変更した標準例2は、ムーニービスおよびスコーチ性が悪化し、また硬度も低下しているが、グリセリンモノ脂肪酸エステルを配合した実施例1では、標準例2に対し、ムーニービスおよびスコーチ性が良化し、また硬度および反発弾性が改善された。したがって、メルカプト基を有するシランカップリング剤とグリセリンモノ脂肪酸エステルとの併用系が、ムーニービス、硬度、反発弾性、ムーニースコーチに特異な効果を奏することが分かる。また、標準例1、標準例3および実施例2の比較でも同様のことが言える。
標準例3、標準例4および実施例3を比較すると、標準例3のシリカを高い比表面積を有するシリカに変更した標準例4は、ムーニービスおよびスコーチ性が悪化し、また硬度も低下しているが、グリセリンモノ脂肪酸エステルを配合した実施例3では、標準例4に対し、ムーニービスおよびスコーチ性が良化し、また硬度および反発弾性が改善された。したがって、高い比表面積を有するシリカは従来、分散性が悪化していたが、本発明ではグリセリンモノ脂肪酸エステルを配合していることから、高い比表面積を有するシリカを使用した場合でも、ムーニービス、硬度、反発弾性、スコーチ性を同時に改善できることが分かる。また、標準例3、標準例5および実施例4の比較でも同様のことが言える。
なお実施例5では、シリカのBET比表面積が本発明の好ましい範囲の下限未満であるので、グリセリンモノ脂肪酸エステル配合による効果が小さくなっている。
なお実施例6〜9は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの種類を変更した例であるが、他の実施例と同等の効果を示した。
実施例10〜12は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量を変更した例であるが、他の実施例と同等の効果を示した。
比較例2は、メルカプト基を有するシランカップリング剤の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、スコーチ性が悪化した。
比較例3は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、硬度が悪化した。
比較例4は、グリセリンモノ脂肪酸エステルが本発明で規定する範囲外の化合物であるので、スコーチ性が悪化した。
比較例5および6は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの替わりにグリセリンジ脂肪酸エステルまたはグリセリントリ脂肪酸エステルを配合した例であり、硬度、反発弾性、ムーニースコーチが悪化した。
比較例7は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの替わりにグリセリンを配合した例であり、ムーニービス、ムーニースコーチが悪化した。
比較例8は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、ムーニービス、反発弾性、ムーニースコーチが悪化した。
比較例9は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、反発弾性、ムーニースコーチが悪化した。