【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0024】
標準例1〜6、実施例1〜12、比較例1〜9
サンプルの調製
表1および2に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で未加硫のゴム組成物および加硫ゴム試験片の物性を測定した。
【0025】
ムーニービス:上記ゴム組成物を用い、JIS K6300に従い、100℃における未加硫ゴムの粘度を測定した。結果は標準例1の値を100として指数表示した。この値が低いほど粘度が低く、加工性が良好であることを示す。
デュロメーター硬度:JIS K6253に従い、20℃における硬度を測定した。結果は標準例1の値を100として指数表示した。この値が高いほど、硬度が高いことを示す。
反発弾性:JIS K 6255に従い、温度40℃のときの反発弾性を測定した。結果は標準例1の値を100として指数表示した。この値が高いほど、反発弾性が大きく低燃費性が得られることを示す。
ムーニースコーチ:JIS K6300に従い、125℃で測定した。結果は標準例1の値を100として指数表示した。この値が高いほどヤケ性に優れることを示す。
結果を表1および2に併せて示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
*1:SBR(旭化成(株)製E581、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部)
*2:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220)
*3:シリカ−1(ソルベイ社製Zeosil 1165MP、BET比表面積=165m
2/g)
*4:シリカ−2(ソルベイ社製Zeosil Premium200MP、BET比表面積=200m
2/g)
*5:シリカ−3(Evonik社製Ultrasil 9000GR、BET比表面積=235m
2/g)
*6:シリカ−4(ソルベイ社製Zeosil 115GR、BET比表面積=115m
2/g)
*7:カーボンブラック(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN339、窒素吸着比表面積(N
2SA)=90m
2/g)
*8:シランカップリング剤(エボニックデグッサジャパン(株)製Si69、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
*9:メルカプト基を有するシランカップリング剤−1 Si363(前記式(1)で表される構成単位を有する)
*10:シランカップリング剤−2(国際公開番号WO2014/002750、合成例1(p17下段)に従って製造し、前記式(1)および(3)で表される構成単位を有する)
*11:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*12:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸YR)
*13:老化防止剤(Solutia Europe社製Santoflex 6PPD)
*14:プロセスオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*15:硫黄(軽井沢精錬所社製油処理イオウ)
*16:加硫促進剤−1(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G)
*17:加硫促進剤−2(Flexsys社製Perkacit DPG)
*18:グリセリンモノ脂肪酸エステル−1(シグマアルドリッチ製モノステアリン酸グリセロール)
*19:グリセリンモノ脂肪酸エステル−2(シグマアルドリッチ製モノオレイン酸グリセロール)
*20:比較脂肪酸エステル(シグマアルドリッチ製モノ酪酸グリセロール)
*21: グリセリンモノ脂肪酸エステル−3(モノラウリン酸グリセロール)
*22: グリセリンモノ脂肪酸エステル−4(モノベヘン酸グリセロール)
*23: グリセリンモノ脂肪酸エステル−5(モノリノレン酸グリセロール)
*24: グリセリンジ脂肪酸エステル(ジステアリン酸グリセロール)
*25: グリセリントリ脂肪酸エステル(トリステアリン酸グリセロール)
*26: グリセリン
【0029】
上記の表1および2の結果から明らかなように、標準例1と比較例1とを比較すると、同じ配合処方において、比較例1ではグリセリンモノ脂肪酸エステルを配合しているが、両例ではシランカップリング剤がSH基を持たないので、ムーニービス、硬度、反発弾性、ムーニースコーチにそれほど変化が見られない。
これに対し、標準例1、標準例2および実施例1を比較すると、標準例1のシランカップリング剤をメルカプト基を有するシランカップリング剤に変更した標準例2は、ムーニービスおよびスコーチ性が悪化し、また硬度も低下しているが、グリセリンモノ脂肪酸エステルを配合した実施例1では、標準例2に対し、ムーニービスおよびスコーチ性が良化し、また硬度および反発弾性が改善された。したがって、メルカプト基を有するシランカップリング剤とグリセリンモノ脂肪酸エステルとの併用系が、ムーニービス、硬度、反発弾性、ムーニースコーチに特異な効果を奏することが分かる。また、標準例1、標準例3および実施例2の比較でも同様のことが言える。
標準例3、標準例4および実施例3を比較すると、標準例3のシリカを高い比表面積を有するシリカに変更した標準例4は、ムーニービスおよびスコーチ性が悪化し、また硬度も低下しているが、グリセリンモノ脂肪酸エステルを配合した実施例3では、標準例4に対し、ムーニービスおよびスコーチ性が良化し、また硬度および反発弾性が改善された。したがって、高い比表面積を有するシリカは従来、分散性が悪化していたが、本発明ではグリセリンモノ脂肪酸エステルを配合していることから、高い比表面積を有するシリカを使用した場合でも、ムーニービス、硬度、反発弾性、スコーチ性を同時に改善できることが分かる。また、標準例3、標準例5および実施例4の比較でも同様のことが言える。
なお実施例5では、シリカのBET比表面積が本発明の好ましい範囲の下限未満であるので、グリセリンモノ脂肪酸エステル配合による効果が小さくなっている。
なお実施例6〜9は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの種類を変更した例であるが、他の実施例と同等の効果を示した。
実施例10〜12は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量を変更した例であるが、他の実施例と同等の効果を示した。
比較例2は、メルカプト基を有するシランカップリング剤の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、スコーチ性が悪化した。
比較例3は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、硬度が悪化した。
比較例4は、グリセリンモノ脂肪酸エステルが本発明で規定する範囲外の化合物であるので、スコーチ性が悪化した。
比較例5および6は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの替わりにグリセリンジ脂肪酸エステルまたはグリセリントリ脂肪酸エステルを配合した例であり、硬度、反発弾性、ムーニースコーチが悪化した。
比較例7は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの替わりにグリセリンを配合した例であり、ムーニービス、ムーニースコーチが悪化した。
比較例8は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、ムーニービス、反発弾性、ムーニースコーチが悪化した。
比較例9は、グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、反発弾性、ムーニースコーチが悪化した。