(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自然エネルギーを用いて発電する主発電装置から出力される主発電電力が入力される主受電部を備えて当該主受電部に入力される主入力電力を最大化するようにその主受電部への入力電圧である主入力電圧を調節すると共に、前記主入力電力の上限を規定する電力上限値が予め設定された変換装置の前記主受電部に接続されるための電力管理装置であって、
自然エネルギーを用いて発電する発電装置の発電電力に基づく入力電力が入力される受電部と、
前記電力上限値を記憶する記憶部と、
前記主入力電力を示す情報を取得する主電力情報取得部と、
前記主入力電力が前記電力上限値に満たないときに前記主入力電力が前記電力上限値を超えないように前記入力電力に基づく出力電力を前記主受電部へ出力する出力調節処理を実行する出力制御部とを備える電力管理装置。
前記出力制御部は、前記出力調節処理において、前記出力電力を変更可能なタイミングを予め設定された設定時間間隔とし、当該タイミング以外では前記出力電力を一定に維持する請求項1又は2に記載の電力管理装置。
前記設定時間は、前記主入力電力を最大化できる主入力電圧をピーク点として、前記変換装置が、前記主入力電力の変化に応じて変化する前記ピーク点を探索して当該主入力電圧を調節するのにかかる処理時間以上である請求項3記載の電力管理装置。
前記基準電圧は、前記主入力電力を最大化できる主入力電圧をピーク点として、前記主発電装置が自然エネルギーから発電可能な最大の主発電電力に対応した前記ピーク点よりも低い請求項6記載の電力管理装置。
前記受電部の電圧が予め設定された充電開始電圧以上になると、前記発電装置の発電電力を前記蓄電池に充電し、前記受電部の電圧が前記充電開始電圧より低い電圧に予め設定された放電開始電圧以下になると、前記蓄電池を放電させて、その蓄電池に蓄電されていた前記発電電力を前記受電部へ供給する充放電装置と、
前記発電装置の発電電力を、前記充電開始電圧より高い目標出力電圧を目標に調節して前記受電部へ出力する発電制御装置とをさらに備える請求項9記載の増設用発電システム。
前記充放電装置は、前記受電部の電圧が前記充電開始電圧以上になると、前記充電開始電圧を目標にして前記受電部の電圧を一定に維持するように前記発電装置の発電電力を前記蓄電池に充電し、前記受電部の電圧が前記放電開始電圧以下になると、前記放電開始電圧を目標にして前記受電部の電圧を一定に維持するように前記蓄電池を放電させる請求項10記載の増設用発電システム。
前記出力制御部は、前記出力調節処理において、前記放電開始電圧より低い電圧に予め設定された設定電圧を目標にして前記受電部の電圧を一定に維持するように前記出力電力を調節する請求項11に記載の増設用発電システム。
自然エネルギーを用いて発電する主発電装置から出力される主発電電力が入力される主受電部を備えて当該主受電部に入力される主入力電力を最大化するようにその主受電部への入力電圧である主入力電圧を調節すると共に、前記主入力電力の上限を規定する電力上限値が予め設定された変換装置の前記主受電部への電力供給を行うための電力管理方法であって、
自然エネルギーを用いて発電する発電装置の発電電力に基づく入力電力を受け付ける受電工程と、
前記主入力電力を示す情報を取得する主電力取得工程と、
前記主入力電力が前記電力上限値に満たない場合、前記主入力電力が前記電力上限値を超えないように前記入力電力に基づく出力電力を前記主受電部へ出力する出力調節処理を実行する出力制御工程とを含む電力管理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述の変換装置は、上述したように自然エネルギーによる発電電力の変動を吸収できるように電力上限値が設定されている。そのため、自然エネルギーによる発電電力が小さいときは、変換装置の能力が一部しか活用されず、変換装置の能力を充分に活用することができない。
【0009】
本発明の目的は、自然エネルギーによる発電電力を電力線に供給するための変換装置の能力を効率よく活用することが可能な電力管理装置、増設用発電システム、発電システム、及び電力管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電力管理装置は、自然エネルギーを用いて発電する主発電装置から出力される主発電電力が入力される主受電部を備えて当該主受電部に入力される主入力電力を最大化するようにその主受電部への入力電圧である主入力電圧を調節すると共に、前記主入力電力の上限を規定する電力上限値が予め設定された変換装置の前記主受電部に接続されるための電力管理装置であって、自然エネルギーを用いて発電する発電装置の発電電力に基づく入力電力が入力される受電部と、前記電力上限値を記憶する記憶部と、前記主入力電力を示す情報を取得する主電力情報取得部と、前記主入力電力が前記電力上限値に満たないときに前記主入力電力が前記電力上限値を超えないように前記入力電力に基づく出力電力を前記主受電部へ出力する出力調節処理を実行する出力制御部とを備える。
【0011】
また、本発明に係る電力管理方法は、自然エネルギーを用いて発電する主発電装置から出力される主発電電力が入力される主受電部を備えて当該主受電部に入力される主入力電力を最大化するようにその主受電部への入力電圧である主入力電圧を調節すると共に、前記主入力電力の上限を規定する電力上限値が予め設定された変換装置の前記主受電部への電力供給を行うための電力管理方法であって、自然エネルギーを用いて発電する発電装置の発電電力に基づく入力電力を受け付ける受電工程と、前記主入力電力を示す情報を取得する主電力取得工程と、前記主入力電力が前記電力上限値に満たない場合、前記主入力電力が前記電力上限値を超えないように前記入力電力に基づく出力電力を前記主受電部へ出力する出力調節処理を実行する出力制御工程とを含む。
【0012】
これらの構成によれば、変換装置に入力される主入力電力が変換装置の電力上限値に満たない場合、すなわち変換装置の能力に余裕がある場合、主入力電力が電力上限値を超えないように、自然エネルギーを用いて発電する発電装置の発電電力に基づき得られた入力電力に基づく出力電力が、変換装置の主受電部へ出力されて変換装置に入力される。その結果、変換装置の能力の余裕分が活用されることになるので、自然エネルギーによる発電電力を電力線に供給するための変換装置の能力を効率よく活用することが可能となる。
【0013】
また、前記出力制御部は、前記主入力電力が前記電力上限値と略等しくなるように、前記出力電力を調節することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、変換装置の能力の略すべてを活用することができる。
【0015】
また、前記出力制御部は、前記出力調節処理において、前記出力電力を変更可能なタイミングを予め設定された設定時間間隔とし、当該タイミング以外では前記出力電力を一定に維持することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、出力電力が変更される可能性のあるタイミングが設定時間間隔とされ、設定時間間隔の間の期間は電力管理装置の出力電力が一定に維持されるので、電力管理装置の出力電力が一定になっている期間内に、変換装置がピーク探索を行うことが可能となる。その結果、電力管理装置の出力調節処理によって、変換装置のピーク探索が阻害されるおそれが低減される。
【0017】
また、前記設定時間は、前記主入力電力を最大化できる主入力電圧をピーク点として、前記変換装置が、前記主入力電力の変化に応じて変化する前記ピーク点を探索して当該主入力電圧を調節するのにかかる処理時間以上であることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、設定時間間隔の間における電力管理装置の出力電力が一定になっている期間内に、変換装置が主入力電圧を調節する処理が完了する確実性が増大する。その結果、変換装置がピークを検出できなくなるおそれを低減できる確実性が増大する。
【0019】
また、前記主入力電圧の値である主電圧値を取得する主電圧取得部をさらに備え、前記主電力情報取得部は、前記主発電電力を示す情報をさらに取得し、前記出力制御部は、前記設定時間間隔の間の期間において前記主発電電力が略ゼロとなった場合、前記主電圧取得部によって取得された主電圧値が当該略ゼロとなった時点の主電圧値よりも大きくなるほど前記出力電力を減少させることが好ましい。
【0020】
主発電電力が略ゼロとなった場合に、設定時間間隔の間の期間において出力制御部による出力電力が一定に維持されると、変換装置から見ると、主発電装置の出力特性が平坦に見えるため、変換装置はピークを検出できなくなってしまう。この構成によれば、設定時間間隔の間の期間において主発電電力が略ゼロとなった場合は、主電圧取得部によって取得された主電圧値が当該略ゼロとなった時点の主電圧値よりも大きくなるほど出力電力が減少されるので、変換装置から主発電装置の出力特性が平坦に見えることがなくなる。その結果、変換装置がピークを検出できなくなるおそれが低減される。
【0021】
また、前記主電力情報取得部は、前記主発電電力を示す情報をさらに取得し、前記出力制御部は、前記主発電電力が予め設定された基準電力に満たないとき、予め設定された基準電圧と前記主入力電圧との差が増大するほど前記出力電力を減少させるように、当該出力電力を調節することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、主発電装置の主発電電力が予め設定された基準電力に満たず、略ゼロに近い場合、発電装置の発電電力に基づく出力電力が、基準電圧と前記主入力電圧との差が増大するほど前記出力電力を減少させるように変換装置へ出力されるので、変換装置からは、主入力電圧が基準電圧となるときにピークがあるようにみえる。その結果、変換装置がピークを検出することができるので、変換装置の動作が安定化される。
【0023】
また、前記基準電圧は、前記主入力電力を最大化できる主入力電圧をピーク点として、前記主発電装置が自然エネルギーから発電可能な最大の主発電電力に対応した前記ピーク点よりも低いことが好ましい。
【0024】
主発電電力が予め設定された基準電力に満たない状態、例えば太陽光発電であれば夜間や日が陰っている状態、風力発電であれば風が止んでいる状態から、主発電電力が増大するときは、主発電電力は、低電力から徐々に増大して基準電力に達する。ここで、主発電装置が自然エネルギーから発電可能な最大の主発電電力に対応したピーク点の電圧に基準電圧が設定されていると、変換装置からは最大の主発電電力に応じた主入力電圧にピークがあるようにみえる。そうすると、主発電電力が低電力から徐々に増大して基準電力に達したとき、それ以前に変換装置からみえていたピーク点と、本来のピーク点との差が大きいために変換装置によるピーク探索が困難になるおそれがある。そこで、この構成によれば、基準電圧が、最大の主発電電力に応じた主入力電圧よりも低い電圧となる。その結果、主発電電力が低電力から徐々に増大して基準電力に達したとき、それ以前に変換装置からみえていたピーク点と、本来のピーク点との差が、最大の主発電電力に対応したピーク点の電圧に基準電圧が設定されているときよりも小さくなるため、変換装置によるピーク探索が困難になるおそれが低減される。
【0025】
また、前記主電力情報取得部は、前記主発電電力を示す情報をさらに取得し、前記出力制御部は、前記主発電電力が予め設定された基準電力に満たない場合、前記主入力電圧が予め設定された基準電圧範囲内のとき前記出力電力を一定に維持し、前記主入力電圧が前記基準電圧範囲外のとき当該主入力電圧が前記基準電圧範囲から遠ざかるほど前記出力電力を減少させることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、主発電装置の主発電電力が予め設定された基準電力に満たず、略ゼロに近い場合、主入力電圧が基準電圧範囲内のとき発電装置の発電電力に基づく出力電力が一定に維持され、主入力電圧が基準電圧範囲外のとき当該主入力電圧が前記基準電圧範囲から遠ざかるほど出力電力が減少される。これにより、変換装置から主発電装置の出力特性が平坦にみえる主入力電圧の領域が、基準電圧範囲内に限られるので、変換装置がピークを検出しにくくなる領域が狭い範囲に限られる。その結果、変換装置がピークを検出できなくなるおそれを低減できる。
【0027】
また、本発明に係る増設用発電システムは、上述の電力管理装置と、前記発電装置と、前記発電電力を充電する蓄電池とを備え、前記入力電力は、前記発電電力及び前記蓄電池の放電電力のうち少なくとも一方である。
【0028】
この構成によれば、発電装置の発電電力を蓄電池に充電しておき、発電装置の発電電力及び蓄電池の放電電力のうち少なくとも一方を変換装置に供給することができるので、主入力電力が電力上限値に満たなくなるタイミングに合わせて発電装置の発電電力を変換装置に供給することができる。
【0029】
また、 前記受電部の電圧が予め設定された充電開始電圧以上になると、前記発電装置の発電電力を前記蓄電池に充電し、前記受電部の電圧が前記充電開始電圧より低い電圧に予め設定された放電開始電圧以下になると、前記蓄電池を放電させて、その蓄電池に蓄電されていた前記発電電力を前記受電部へ供給する充放電装置と、前記発電装置の発電電力を、前記充電開始電圧より高い目標出力電圧を目標に調節して前記受電部へ出力する発電制御装置とをさらに備えることが好ましい。
【0030】
受電部へ供給される電力が、受電部から電力管理装置へ引き込まれて出力電力に変換される電力を上回って余剰となると、受電部の電圧が上昇して充電開始電圧以上になる。受電部の電圧が充電開始電圧以上になると、充放電装置は、余剰電力を蓄電池に充電する。また、受電部へ供給される電力が受電部から電力管理装置へ引き込まれて出力電力に変換される電力を下回って不足すると、受電部の電圧が低下して放電開始電圧以下になる。受電部の電圧が放電開始電圧以下になると、充放電装置は、蓄電されていた電力を蓄電池から放電する。これにより、発電電力の過不足を蓄電池の充放電により補うことができる。
【0031】
また、前記充放電装置は、前記受電部の電圧が前記充電開始電圧以上になると、前記充電開始電圧を目標にして前記受電部の電圧を一定に維持するように前記発電装置の発電電力を前記蓄電池に充電し、前記受電部の電圧が前記放電開始電圧以下になると、前記放電開始電圧を目標にして前記受電部の電圧を一定に維持するように前記蓄電池を放電させることが好ましい。
【0032】
この構成によれば、受電部の電圧を一定に維持するように蓄電池の充放電が行われるので、受電部の電圧が変動することが抑制される。その結果、受電部の電圧が安定化され、電力管理装置の動作が不安定になるおそれが低減される。
【0033】
また、前記出力制御部は、前記出力調節処理において、前記放電開始電圧より低い電圧に予め設定された設定電圧を目標にして前記受電部の電圧を一定に維持するように前記出力電力を調節することが好ましい。
【0034】
外部から受電部へ供給される電力が、受電部から取り込まれる入力電力より多く余剰となれば受電部の電圧は上昇し、少なく不足すれば低下する。出力制御部は、入力電力に基づく出力電力を調節することによって受電部から取り込まれる入力電力を調節し、ひいては受電部の電圧を、設定電圧を目標にして受電部の電圧を一定に維持するように調節する。設定電圧は、蓄電池の放電開始電圧よりも低くされているので、蓄電池が充電された状態であって空でなければ、受電部の電圧が設定電圧になれば、蓄電池が放電されて受電部へ供給される。蓄電池は満充電になると余剰電力を充電することができず、発電電力が無駄になるおそれがある。しかしながらこの構成によれば、設定電圧が蓄電池の放電開始電圧よりも低くされ、優先的に蓄電池が放電されるようにされているので、蓄電池が満充電になるおそれが低減され、ひいては発電電力が無駄になるおそれが低減される。
【0035】
また、本発明に係る発電システムは、上述の増設用発電システムと、前記変換装置とを備える。
【0036】
この構成によれば、上述の増設用発電システムによって、変換装置の能力の余裕分が活用されることになるので、自然エネルギーによる発電電力を電力線に供給するための変換装置の能力を効率よく活用することが可能となる。
【0037】
また、前記増設用発電システムを複数備え、前記複数の増設用発電システムにおける各受電部が並列接続されていることが好ましい。
【0038】
この構成によれば、各増設用発電システムの発電装置の発電電力に差が生じた場合であっても、各増設用発電システムの各受電部が並列接続されていることによって、各増設用発電システムの各蓄電池をバランスよく充放電させることができる。
【発明の効果】
【0039】
このような構成の電力管理装置、増設用発電システム、発電システム、及び電力管理方法は、自然エネルギーによる発電電力を電力線に供給するための変換装置の能力を効率よく活用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る発電システムの構成の一例を示すブロック図である。
図1に示す発電システム1は、太陽電池4(主発電装置)と、変換装置5と、電流計6と、増設用発電システム2,3とを備えている。
【0042】
太陽電池4は、自然エネルギーである太陽光によって発電を行う主発電装置の一例に相当している。変換装置5は、いわゆるパワーコンディショナ(Power Conditioning System:PCS)である。変換装置5は、太陽電池4を接続するための入力端子51,51(主受電部)を備えている。入力端子51,51は、主配線MLを介して太陽電池4と接続されている。太陽電池4で発電された主発電電力は、入力端子51,51によって受け付けられて、変換装置5に入力される。
【0043】
また、変換装置5には、電気事業者等の商用の電力線PLが接続されている。変換装置5は、入力端子51,51によって受け付けられた主発電電力を、電力線PLの交流周波数、電圧に変換して電力線PLへ出力する。これにより、太陽電池4で発電された主発電電力を、電気事業者へ売電することができるようになっている。
【0044】
変換装置5は、上述の最大電力点追従制御(Maximum power point tracking:MPPT)を実行することによって、入力端子51,51に入力される主入力電力Pを最大化するようにその入力端子51,51への入力電圧である主入力電圧Vを調節する。変換装置5が入力端子51,51から変換装置5へ流入する電流を増大させると、変換装置5の見かけの入力インピーダンスが低下し、主入力電圧Vが低下する。変換装置5が入力端子51,51から変換装置5へ流入する電流を減少させると、変換装置5の見かけの入力インピーダンスが増大し、主入力電圧Vが上昇する。このようにして、変換装置5は、主入力電圧Vを調節可能にされている。
【0045】
また、変換装置5は、主入力電圧Vと、主配線MLから変換装置5へ流入する主入力電流Iとを検出し、主入力電圧V及び主入力電流Iを示す信号を増設用発電システム2,3へ出力する。
【0046】
変換装置5は、主入力電力P、すなわち電力線PLへ出力されて電気事業者へ売電される電力、の上限が、電力上限値Pmとして予め設定されている。電力上限値Pmは、変換装置5の定格電力容量に相当する。なお、変換装置5の電力変換効率により、主入力電力Pと変換装置5の出力電力とは必ずしも一致せず、電力上限値Pmと定格電力容量とは必ずしも一致しない場合があるが、実質的に電力上限値Pmが定格電力容量に相当するものとして説明する。
【0047】
電気事業者による再生可能エネルギー電気の買い取り価格は、経済産業省が定める固定価格買取制度によって、規定されている。また、電気事業者へ電力を売電するためには、電気事業者と接続契約を締結する必要がある。接続契約は、変換装置5(PCS)の定格電力容量(電力上限値Pm)を規定して定められる。そのため、もし仮に、太陽電池4を増設して変換装置5の定格電力容量(電力上限値Pm)を増大させると、接続契約を締結し直す必要がある。
【0048】
一方、固定価格買取制度の電力買い取り価格は、接続契約の締結時期の価格が適用される。また、電力買い取り価格は、年々低額化しており、接続契約を新たに締結し直すと、電力買い取り価格が安くなってしまうという不都合があった。
【0049】
また、太陽光、風力、水力等の自然エネルギーによる発電電力量は、昼夜の時間帯や気象条件等に左右され、変動が大きい。そのため、変換装置5の電力上限値Pmは、自然エネルギーによる発電電力の変動を吸収可能なように、太陽電池4の最大発電電力以上にされている。従って、太陽電池4の発電電力が最大発電電力に満たないときは、変換装置5の能力に余裕がある状態となっている。変換装置5は、電力上限値Pmが大きいものほど高価になるので、変換装置5を、主発電電力が電力上限値Pmに満たない、その能力に余裕がある状態で運用することは、設備の有効利用の観点で無駄が生じることになる。
【0050】
太陽光発電の場合、朝、夕、曇天時などの日射が弱くなり、太陽電池の発電電力がPCSの定格電力を下回る時間帯においては、PCSの定格電力に対して太陽電池の発電電力が小さくなるため、PCSの定格電力に対して余力が生じる。このような場合、PCSの定格電力を超える太陽電池を増設接続(過積載)することで、日射が低下する時間帯において、PCSの余力を有効活用することができるようになる。
【0051】
しかし、従来、太陽電池を増設することにより、日射が強くなる時間帯においては、PCSの定格電力を超える過剰な電力がPCSに入力されたり、PCSの入力電圧が上昇してしまったりする等により、PCSの動作の安定性や信頼性を低下させてしまう可能性があった。
【0052】
また、従来、上記のようにPCSの定格電力を超える太陽電池をPCSに接続する場合、日射の強くなる時間帯においては、PCSの定格電力に対して、太陽電池の発電能力に余剰が生じ、電力の無駄が発生する。
【0053】
増設用発電システム2,3は、変換装置5の能力を有効利用して変換装置5(PCS)の定格電力を超えないように、変換装置5へ増設された太陽電池の発電電力を供給する。これにより、増設用発電システム2,3は、変換装置5の定格電力を超える太陽電池を接続する場合に発生する変換装置5への過電力あるいは入力電圧の上昇等に起因する安定性や信頼性の低下が発生するおそれを低減することが可能にされている。
【0054】
また、増設用発電システム2,3は、変換装置5の定格電力を超過しないように、変換装置5への電力供給量を調節し、変換装置5の能力を有効利用することによって、変換装置5の定格電力容量(電力上限値Pm)を変更することなく太陽電池を増設可能にされている。これにより、接続契約を新たに締結し直す必要がなく、電力買い取り価格が安くなってしまうおそれを低減することができる。なお、増設用発電システムは、二つに限らず、一つであってもよく、三つ以上であってもよい。
【0055】
電流計6は、主配線MLにおける、増設用発電システム2,3が接続される位置よりも上流側(太陽電池4側)に配設されている。これにより、電流計6は、太陽電池4の主発電電流Igを検出し、検出された主発電電流Igを示す信号を増設用発電システム2,3へ出力する。なお、発電システム1は、必ずしも電流計6を備えていなくてもよい。
【0056】
増設用発電システム2は、電力管理装置21、太陽電池22(発電装置)、太陽電池制御装置23(発電制御装置)、蓄電池24、及び充放電装置25を備えている。増設用発電システム3は、増設用発電システム2と同様に構成されているのでその説明を省略する。
【0057】
太陽電池22は、既存の太陽電池4に対して増設される太陽電池である。太陽電池22は、その発電電力を太陽電池制御装置23へ出力する。太陽電池制御装置23は、配線Lを介して電力管理装置21及び充放電装置25と接続されている。なお、主発電装置及び発電装置の一例として太陽電池を示したが、主発電装置及び発電装置は、自然エネルギーを用いて発電するものであればよく、例えば風力発電機や水力発電機等であってもよい。
【0058】
充放電装置25は、配線Lの電圧VLを監視する。充放電装置25は、電圧VLが予め設定された充電開始電圧Vc以上になると、太陽電池制御装置23から配線Lへ出力された発電電力を蓄電池24に充電する。充放電装置25は、電圧VLが充電開始電圧Vcで一定になるように蓄電池24への充電電力を調節することがより好ましい。
【0059】
また、充放電装置25は、電圧VLが充電開始電圧Vcより低い電圧に予め設定された放電開始電圧Vd以下になると、蓄電池24を放電させて、蓄電池24に蓄電されていた太陽電池22の発電電力を、主配線MLを介して変換装置5へ供給する。充放電装置25は、電圧VLが一定になるように蓄電池24からの放電電力を調節することがより好ましい。
【0060】
充電開始電圧Vcを例えば850V、放電開始電圧Vdを例えば750Vとすることができる。
【0061】
太陽電池制御装置23は、太陽電池22の発電電力を最大にするように最大電力点追従制御(Maximum power point tracking:MPPT)を実行し、その発電電力を配線Lへ出力する。太陽電池制御装置23は、昇圧回路を備え、太陽電池22の発電電力を、充電開始電圧Vc以上の目標出力電圧Vtを目標に昇圧して配線Lへ出力する。目標出力電圧Vtは、例えば900Vとすることができる。
【0062】
図2は、
図1に示す電力管理装置21の構成の一例を示すブロック図である。
図2に示す電力管理装置21は、入力端子211,211(受電部)、出力端子212,212、DC/DCコンバータ213(出力部)、制御部214、記憶部215、通信I/F回路216、電圧検出部217、電流検出部218、及び電圧検出部219を備えている。
【0063】
入力端子211,211は、配線Lに接続されている。これにより、入力端子211,211には、太陽電池制御装置23の出力電力及び充放電装置25の放電電力、すなわち太陽電池22の発電電力に基づく入力電力Piを、配線Lを介して受電する受電工程を実行する。入力端子211,211は、受電部の一例に相当している。出力端子212,212は、主配線MLに分岐配線等を介して接続されている。
【0064】
増設用発電システム2,3の各配線Lは、並列配線Lhによって並列接続されている。すなわち、増設用発電システム2,3における各入力端子211,211が、並列配線Lhによって並列接続されている。
【0065】
DC/DCコンバータ213は、制御部214からの制御信号に応じて、入力端子211,211によって受け付けられた入力電力Piを、出力端子212,212及び主配線MLを介して変換装置5へ出力する。
【0066】
電圧検出部219は、入力端子211,211間の電圧すなわち受電部の電圧VLを検出し、電圧VLを示す信号を制御部214へ出力する。電圧検出部217は、出力端子212,212間の電圧すなわち主入力電圧Vを検出し、主入力電圧Vを示す信号を制御部214へ出力する。電流検出部218は、DC/DCコンバータ213の出力電流を検出し、その出力電流値を示す信号を制御部214へ出力する。
【0067】
通信I/F回路216は、変換装置5から出力された、主入力電圧V及び主入力電流Iを示す信号、及び電流計6から出力された主発電電流Igを受信する通信インターフェイス回路である。
【0068】
記憶部215は、例えばフラッシュメモリやEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性の記憶部である。記憶部215には、変換装置5の電力上限値Pmが記憶されている。電力上限値Pmは、予め記憶部215に記憶されていてもよく、変換装置5から通信I/F回路216へ電力上限値Pmを送信し、通信I/F回路216で受信された電力上限値Pmを記憶部215に記憶させてもよく、図略の操作端末やキースイッチ等を用いて電力上限値Pmを入力して記憶部215に記憶させるようにしてもよい。
【0069】
制御部214は、例えば、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、所定の制御プログラムを記憶するフラッシュメモリやROM(Read Only Memory)等の不揮発性記憶部、タイマ回路、及びこれらの周辺回路等を含んで構成されている。制御部214は、例えば不揮発性記憶部に記憶された制御プログラムを実行することにより、主電力情報取得部41、主電圧取得部42、及び出力制御部43として機能する。
【0070】
主電力情報取得部41は、通信I/F回路216によって受信された、主入力電圧Vと主入力電流Iとを乗算することによって変換装置5に入力される主入力電力Pを算出し、主入力電力Pを取得する主電力取得工程を実行する。また、主電力情報取得部41は、通信I/F回路216によって受信された主入力電圧Vと主発電電流Igとを乗算することによって、太陽電池4から出力された主発電電力Pgを算出し、主発電電力Pgを取得する。
【0071】
なお、変換装置5は、主入力電力Pを示す信号又は主発電電力Pgを示す信号を通信I/F回路216へ送信し、主電力情報取得部41は、通信I/F回路216で受信された主入力電力P又は主発電電力Pgを示す情報をそのまま取得してもよい。また、変換装置5は、主入力電圧V、主入力電流I、主入力電力P、及び主発電電力Pg等の情報を送信せず、主配線MLに、主入力電圧V及び主入力電流Iを検出する検出回路を設け、その検出回路で検出された検出値が増設用発電システム2,3へ送信される構成としてもよい。
【0072】
また、発電システム1は、増設用発電システム3を備えず、増設用発電システム2のみであった場合、変換装置5は主入力電圧V及び主入力電流Iを送信せず、主入力電圧V及び主入力電流Iを検出する検出回路も備えず、主電力情報取得部41は、主発電電力Pgに電力管理装置21の出力電力を加算することによって、主入力電力Pを算出し、取得する構成としてもよい。
【0073】
また、発電システム1は、増設用発電システム3を備えず、増設用発電システム2のみであった場合、電流計6を備えず、主電力情報取得部41は、主入力電力Pから、電力管理装置21の出力電力を減算することによって、主発電電力Pgを算出し、取得する構成としてもよい。また、主電力情報取得部41は、主発電電力Pgを取得しなくてもよい。
【0074】
主電圧取得部42は、電圧検出部217によって検出された主入力電圧Vを取得する。なお、電力管理装置21は、電圧検出部217を備えず、主電圧取得部42は、変換装置5又は図略の検出回路で検出された主入力電圧Vを受信する構成であってもよい。
【0075】
出力制御部43は、主入力電力Pが電力上限値Pmに満たない場合、主入力電力Pが電力上限値Pmを超えないように、DC/DCコンバータ213によって、入力電力Piに基づく出力電力Poを、主配線MLを介して変換装置5の入力端子51,51へ出力させる出力調節処理(出力制御工程)を実行する。
【0076】
出力制御部43は、出力調節処理において、出力電力Poを変更可能なタイミングTを予め設定された設定時間ts間隔とし、当該タイミングT以外では出力電力Poを一定に維持する。設定時間tsは、変換装置5が、主入力電力Pの変化に応じて変化するピーク点を探索して当該主入力電圧Vを調節するのにかかる処理時間以上にされている。
【0077】
なお、出力制御部43は、電圧VLが予め設定された設定電圧Vsを超え、かつ主入力電力Pが電力上限値Pmに満たない場合に、出力調節処理において、予め設定された設定電圧Vsを目標にして電圧VLを一定に維持するように、DC/DCコンバータ213によって、入力電力Piに基づく出力電力Poを、主配線MLを介して変換装置5の入力端子51,51へ出力させてもよい。設定電圧Vsは、例えば放電開始電圧Vdに満たない電圧、例えば700Vとされている。
【0078】
電圧VLが設定電圧Vsに満たない、すなわち出力制御部43が電圧VLを目標の設定電圧Vsにしようとしてもできないときは、蓄電池24の蓄電量が空の状態でかつ太陽電池22の発電電力が、電力管理装置21が変換装置5へ出力しようとする電力量に対して不足している(例えば発電電力が略ゼロである)ことになる。従って、出力制御部43は、電圧VLが設定電圧Vsに満たないときは、DC/DCコンバータ213による出力電力Poの出力を停止する。
【0079】
また、蓄電池24の蓄電量が空の状態でかつ太陽電池22の発電電力が、主入力電力Pが電力上限値Pmを超えない範囲内で電力管理装置21が出力可能な出力電力Poに対応する入力電力Pi以下であれば、出力制御部43は、出力電力Poすなわち入力電力Piを調節することによって、設定電圧Vsを目標にして電圧VLを一定に維持することができる。このとき、太陽電池22の発電電力と入力電力Piとが略等しい状態に維持される。
【0080】
また、蓄電池24の蓄電量が空ではなく放電可能な場合には、設定電圧Vsが放電開始電圧Vdに満たない電圧にされているので、充放電装置25によって蓄電池24が放電される。蓄電池24は満充電になると余剰電力を充電することができず、太陽電池22の発電電力が無駄になるおそれがある。しかしながら、設定電圧Vsが放電開始電圧Vdよりも低くされ、優先的に蓄電池24が放電されるようにされているので、蓄電池24が満充電になるおそれが低減され、ひいては発電電力が無駄になるおそれが低減される。
【0081】
太陽電池22の発電電力が、主入力電力Pが電力上限値Pmを超えない範囲内で電力管理装置21が出力可能な出力電力Poに対応する入力電力Piを超えたとき、発電電力が余剰となる。そうすると、出力制御部43は、電圧VLを設定電圧Vsに維持することができなくなって電圧VLが上昇し、充電開始電圧Vcに到達する。そうすると、充放電装置25が余剰分の発電電力を蓄電池24に充電することで、電圧VLが充電開始電圧Vcで一定に維持される。
【0082】
以下、
図3〜
図8を参照しつつ、発電システム1の動作について説明する。
図3は、
図1に示す太陽電池4の出力特性の一例を示すグラフである。横軸は太陽電池4の出力電圧Vo、縦軸は太陽電池4の主発電電力Pgを示している。グラフG1は日照強度が最大の場合の太陽電池4の出力特性を示し、グラフG2は日照強度が中程度の場合の太陽電池4の出力特性を示し、グラフG3は日照強度が弱い場合の太陽電池4の出力特性を示している。
【0083】
図3に示すように、太陽電池4の主発電電力Pgは、日照強度に応じて変化すると共に、同じ日照強度であっても、出力電圧Voに応じて主発電電力Pgが変化し、所定の出力電圧Voで主発電電力Pgが最大(ピーク)になる特性を有している。
【0084】
変換装置5は、最大電力点追従制御によって、常時出力電圧Voすなわち主入力電圧Vを変動させ、主発電電力Pgが最大になる主入力電圧Vを探索することによって、最大の主発電電力Pgが得られるように、出力電圧Voを制御する。変換装置5の電力上限値Pmは、例えば、日照強度が最強であって、かつ太陽電池4の主発電電力Pgがピークになるときの動作点p1の電力値とされている。
【0085】
動作点p1のとき、主発電電力Pgすなわち主入力電力Pは電力上限値Pmに達しているから、出力制御部43は、DC/DCコンバータ213を停止させ、出力電力Poを出力しない。これにより、変換装置5の主入力電力Pは、電力上限値Pmを超えない状態に維持される。このとき、DC/DCコンバータ213には電流が流入しないので、入力端子211,211の見かけの入力インピーダンスはハイインピーダンスになる。
【0086】
この状態で、太陽電池22で発電され、その発電電力が太陽電池制御装置23に入力されると、その発電電力に基づき太陽電池制御装置23によって、配線Lへ電力が出力される。そうすると、即座に電圧VLが上昇し、太陽電池制御装置23によって、電圧VLを、目標の目標出力電圧Vtとするべく出力電力Poが調節される。
【0087】
電圧VLが目標出力電圧Vtになると、目標出力電圧Vtは充電開始電圧Vc以上なので、電圧VLが充電開始電圧Vc以上になる。そうすると、充放電装置25は、太陽電池制御装置23から配線Lへ出力された発電電力を蓄電池24に充電する。充放電装置25は、電圧VLを充電開始電圧Vcで一定に維持するように蓄電池24の充電電力を制御する。これにより、電力上限値Pmに余裕がなく、電力管理装置21から変換装置5へ電力を供給できない場合であっても、太陽電池22の発電電力を無駄にすることなく蓄電池24に充電することができる。
【0088】
このとき、増設用発電システム2,3における各太陽電池22の発電電力に差が生じている場合であっても、増設用発電システム2,3の各配線Lが並列配線Lhによって並列接続されていることによって、増設用発電システム2,3の各蓄電池24をバランスよく充放電させることができる。
【0089】
図4は、日照強度が中程度であって、グラフG2で示す出力特性が得られているときの発電システム1の動作を説明するための説明図である。横軸は主入力電圧V、縦軸は主入力電力Pを示している。
図4は、タイミングTとその次のタイミングTとの間の期間Twにおける発電システム1の動作を示している。
図4に示すように、期間Twの間は、主発電電力Pgがゼロを超えている範囲では、出力電力Poが一定に維持される。
【0090】
グラフG2で示す出力特性で太陽電池4が発電を行っているとき、変換装置5の最大電力点追従制御によって、動作点p2で動作している。このとき、主入力電力Pは電力上限値Pmに満たないから、出力制御部43は、例えば主入力電力Pが電力上限値Pmと略等しくなるように、すなわち主入力電力Pの電力上限値Pmに対する不足分を補うように、DC/DCコンバータ213によって電力値Po1の出力電力Poを出力させる。なお、「略等しく」とは、検出誤差や制御精度等を考慮して、その差が−5%〜+5%程度の範囲を意味する。
【0091】
なお、出力制御部43は、必ずしも主入力電力Pが電力上限値Pmと略等しくなるように出力電力Poを出力する例に限らない。出力制御部43は、主入力電力Pが電力上限値Pmに満たないとき、主入力電力Pが電力上限値Pmを超えない範囲で出力電力Poを出力することによって、主入力電力Pの電力上限値Pmに対する不足分を減少させることができればよい。
【0092】
これにより、変換装置5の電力上限値Pmに余裕がある場合、増設された太陽電池22の発電電力を変換装置5へ供給することができるので、変換装置5の能力を効率よく活用することができる。また、変換装置5の電力上限値Pmを変更することなく増設用発電システム2,3を増設することができるので、接続契約を締結し直す必要がなく、電力買い取り価格が安くなってしまうおそれを低減することができる。
【0093】
変換装置5は、太陽電池4の出力変化に応じた最大電力点に追従し、最大の主発電電力Pgを維持するために、ピーク点の移動を見つけるように常時小刻みに主入力電圧Vを変化させ、主入力電力Pが最大になるピーク点を探索し、見つかったピーク点に動作点を移動させることを繰り返す。このピーク探索によって例えば動作点が
図4に示す動作点p2から動作点p3に移動した場合、主入力電力Pが電力上限値Pmを下回る。
【0094】
しかしながら、もし仮に、ただちに出力制御部43が、主入力電力Pが電力上限値Pmと略等しくなるようにDC/DCコンバータ213から出力電力Poを出力させると、変換装置5から見ると、太陽電池4の出力特性が平坦に見えるため、ピークを検出することができなくなってしまう。そうすると、変換装置5が最大電力点追従制御を正常に実行することができず、その結果、太陽電池4の発電効率が低下してしまうおそれがある。
【0095】
そこで、出力制御部43は、主発電電力Pgの変化に応じてDC/DCコンバータ213の出力電力Poを変更しようとする場合であっても、設定時間ts間隔のタイミングTでのみ、出力電力Poを変更する。設定時間tsは、変換装置5が、主入力電力Pの変化に応じて変化するピーク点を探索して当該主入力電圧Vを調節するのにかかる処理時間tc以上にされているので、期間Twの間における出力電力Poが一定の期間内に、変換装置5が主入力電圧Pを調節する処理が完了する確実性が増大する。その結果、変換装置5がピークを検出できなくなるおそれを低減できる確実性が増大する。
【0096】
設定時間tsは、処理時間tcより充分長い時間にされている。設定時間tsは、処理時間tcの5倍以上の時間、例えば10秒〜20秒程度の時間とされている。
【0097】
これにより、期間Tw内は、太陽電池4の主発電電力Pgがピークになる主入力電圧Vと、主入力電力Pがピークになる主入力電圧Vとが一致しているので、変換装置5は正常に最大電力点追従制御を実行することができる。その結果、太陽電池4の発電効率が低下してしまうおそれが低減される。
【0098】
また、ピーク探索において、例えば変換装置5が動作点を動作点p2から動作点p4へ移動させた場合、動作点p4では主発電電力Pgはゼロである。この状態からさらにピーク探索で主入力電圧Vが上昇された場合に、期間Twの間出力電力Poの電力値がPo1のまま一定に維持されると、変換装置5から見ると、太陽電池4の出力特性が平坦に見えるため、ピークを検出することができなくなってしまう。そうすると、変換装置5が最大電力点追従制御を正常に実行することができず、その結果、太陽電池4の発電効率が低下してしまうおそれがある。
【0099】
そこで、出力制御部43は、期間Twの間に主発電電力Pgが略ゼロとなった場合は、主電圧取得部42によって取得された現在の主入力電圧Vの値(主電圧値)が当該略ゼロとなった時点の主入力電圧Vの値(主電圧値)である電圧V1よりも大きくなるほど出力電力Poを減少させる(矢示Px)。これにより、変換装置5から太陽電池4の出力特性が平坦に見えることが防止されるので、変換装置5は正常に最大電力点追従制御を実行することができる。その結果、太陽電池4の発電効率が低下してしまうおそれが低減される。なお、略ゼロとは、主電力情報取得部41によって取得される主発電電力Pgの測定誤差等の範囲もゼロに含む意味であり、実質的にゼロであることを意味する。
【0100】
なお、
図4では、主入力電圧Vが0の位置で電力値Po1が出力されるように図示されているが、主入力電圧Vが0では電力値は出ない。しかしながら、実際の最大電力点追従制御では、主入力電圧Vが0の範囲までピーク探索しても意味が無く、主入力電圧Vが0の範囲までピーク探索が行われることはないので、グラフG2を破線で示しているように、主入力電圧Vが0付近については考慮しなくてもよい。また、主入力電圧Vが0に近い側で期間Twの間に主発電電力Pgが略ゼロになることも通常ないが、出力制御部43は、変換装置5のピーク探索に伴う主入力電圧Vの増大の過程で期間Twの間に主発電電力Pgが略ゼロとなった場合に、主電圧取得部42によって取得された現在の主入力電圧Vの値(主電圧値)が電圧V1よりも大きくなるほど出力電力Poを減少させるようにしてもよい。
【0101】
次に、太陽電池4の主発電電力Pgが変化した場合の発電システム1の動作について説明する。日照量が減少して主発電電力Pgが減少した場合、太陽電池4の出力特性は、例えば
図3のグラフG3に示すように変化し、変換装置5は、最大電力点追従制御によって、グラフG3のピーク位置の動作点p5で動作する。
【0102】
このとき、電力管理装置21から見ると、主入力電力Pが電力上限値Pmを下回るのであるが、電力管理装置21からは、日照量(自然エネルギー)の減少により主発電電力Pgが低下したのか、変換装置5の最大電力点追従制御によるピーク探索により主発電電力Pgが低下したのか区別できない。
【0103】
そこで、出力制御部43は、主入力電力Pが減少した場合であっても、期間Twの間は、変換装置5のピーク点の移動を見つけるためのピーク探索を阻害しないようにDC/DCコンバータ213の出力電力Poを変化させない。出力制御部43は、設定時間ts間隔のタイミングTで、
図5に示すように、主入力電力Pが電力上限値Pmと略等しくなるように出力電力Poを増大させる。
【0104】
以後、出力制御部43は、上述の
図4で示した場合と同様の動作を実行する。これにより、変換装置5のピーク探索を阻害することなく、変換装置5による最大電力点追従制御を正常に実行可能にしつつ、変換装置5の能力を効率よく活用することができる。
【0105】
ところで、太陽電池4は、夜間は太陽光発電できないため、主発電電力Pgがゼロになる。自然エネルギーを用いて発電する主発電装置は、例えば風力発電であれば風が止むと主発電電力Pgがゼロになり、水力発電であれば水量がゼロになると主発電電力Pgがゼロになる。このように、自然エネルギーを用いて発電する主発電装置は、主発電電力Pgがゼロになるときがある。
【0106】
主発電電力Pgがゼロのときは、電力上限値Pmと主発電電力Pgとの差が最大になるので、電力管理装置21が出力可能な出力電力Poも最大になる。しかしながら、主発電電力Pgがゼロのときに、もし仮に電力管理装置21が主入力電圧Vに関わらず一定の出力電力Poを出力すると、主入力電力Pもまた主入力電圧Vに関わらず一定の値になるため、変換装置5がピーク点の移動を見つけるためのピーク探索を実行することができなくなる結果、変換装置5の動作が不安定になるおそれがある。
【0107】
図6は、主発電電力Pgがゼロのときの発電システム1の動作の一例を説明するための説明図である。出力制御部43は、主発電電力Pgが予め設定された基準電力Prefに満たない状態が設定時間tsを超えて継続したとき、予め設定された基準電圧Vrefと主入力電圧Vとの差が増大するほど出力電力Poを減少させるように、出力電力Poを調節する。基準電力Prefとしては、主発電電力Pgが略ゼロであることを判定するための電力値が適宜設定されている。
【0108】
これにより、出力電力Poすなわち主入力電力Pは、主入力電圧Vが基準電圧Vrefのときにピークとなるので、変換装置5がピークを探索することができ、変換装置5の動作が不安定になるおそれが低減される。
【0109】
基準電圧Vrefとしては、任意の電圧値を設定することができるが、太陽電池4の主発電電力Pgが、ピークとなり得る電圧値が設定されることが好ましい。これにより、変換装置5は、太陽電池4から発電電力が得られているときと同様のピーク位置で最大電力点追従制御を実行することができるので、変換装置5の動作が安定する。
【0110】
また、基準電圧Vrefとしては、太陽電池4が自然エネルギーから発電可能な最大の主発電電力Pgに対応したピーク点、すなわち日照強度が最大のときに太陽電池4の主発電電力Pgが最大となる動作点p1に対応する主入力電圧Vよりも低い電圧が、より好ましい。日照強度が弱いときのピーク点、例えば、
図3に示す動作点p5に対応する主入力電圧Vが基準電圧Vrefとして好ましい。
【0111】
主発電電力Pgが予め設定された基準電力に満たない状態、例えば太陽光発電であれば夜間や日が陰っている状態、風力発電であれば風が止んでいる状態から、主発電電力Pgが増大するときは、主発電電力Pgは、低電力から徐々に増大すると共に出力可能な電圧も徐々に上昇する。ここで、太陽電池4が自然エネルギーから発電可能な最大の主発電電力Pgに対応した高い電圧値のピーク点(動作点p1)の電圧に基準電圧Vrefが設定されていると、変換装置5からは最大の主発電電力Pgに応じた高い電圧値の主入力電圧Vにピークがあるようにみえる。そのため、変換装置5によるピーク探索により、変換装置5の入力電圧(動作点)は、この高い電圧値である基準電圧Vrefの主入力電圧Vに移動していることになる。
【0112】
一方、太陽電池22は、その発電により出力可能な電圧が基準電圧Vrefを上回らなければ主配線MLへ電流を出力することができず、従ってその主発電電力Pgを入力端子51,51へ出力することができない。従って、主発電電力Pgが低電力から徐々に増大すると共に出力可能な電圧が徐々に上昇しても、出力可能な電圧が基準電圧Vrefを超えなければ太陽電池4はその主発電電力Pgを出力することができないから、基準電圧Vrefが高い電圧に設定されていると、太陽電池4が主発電電力Pgを出力することができなくなるおそれが増大する。
【0113】
そこで、基準電圧Vrefを、最大の主発電電力Pgに応じた主入力電圧Vよりも低い電圧にすることによって、主発電電力Pgが低電力から徐々に増大すると共に出力可能な電圧が徐々に上昇したとき、変換装置5の入力電圧(動作点)が低い電圧に設定された基準電圧Vrefになっているため、出力可能な電圧が基準電圧Vrefを超えることが容易となり、従って太陽電池4が主発電電力Pgを出力することができなくなるおそれが低減される。
【0114】
変換装置5は、太陽電池4の主発電電力Pgが充分に得られているときは、主発電電力Pgが基準電力Prefに満たず、ほぼゼロに近くなるような主入力電圧Vの領域までピーク探索を行う必要はない。従って、変換装置5は、主入力電力Pが基準電力Prefに満たない主入力電圧Vの領域はピーク探索を実行しない構成としてもよい。
【0115】
このような構成では、太陽電池4の主発電電力Pgが充分に得られているときに、変換装置5のピーク探索によって主発電電力Pgが基準電力Prefに満たなくなることはない。従って、出力制御部43は、主発電電力Pgが基準電力Prefに満たない状態の継続時間にかかわらず、主発電電力Pgが基準電力Prefに満たないとき、基準電圧Vrefと主入力電圧Vとの差が増大するほど出力電力Poを減少させるように、出力電力Poを調節するようにしてもよい。
【0116】
また、出力制御部43は、
図3に示すグラフG5と同様の電圧−電力特性を示すように、出力電力Poを出力することが、より好ましい。グラフG5と同様の電圧−電力特性を示すように出力電力Poが出力されると、変換装置5からは、太陽電池4と同様の特性に見えるので、変換装置5は太陽電池4を対象にした場合と同様に最大電力点追従制御を実行することができる結果、変換装置5の動作が安定する。
【0117】
また、出力制御部43は、
図6に示すグラフG4のように、基準電圧Vrefで主入力電力Pがピークになり、例えば電力上限値Pmになるように、出力電力Poを直線的に変化させてもよい。
【0118】
図7は、主発電電力Pgがゼロのときの発電システム1の動作の別の一例を説明するための説明図である。
図7に示す例では、出力制御部43は、主発電電力Pgが基準電力Prefに満たず、かつ主入力電圧Vが予め設定された基準電圧範囲A内のとき出力電力Poを一定に維持し、主発電電力Pgが基準電力Prefに満たず、かつ主入力電圧Vが基準電圧範囲Aの範囲外のとき当該主入力電圧Vが基準電圧範囲Aから遠ざかるほど出力電力Poを減少させる。
【0119】
図7に示すような動作を行う場合、最大電力点となる主入力電圧Vの電圧範囲が基準電圧範囲A内に限られ、最大電力点追従制御(MPPT)動作により主入力電圧Vが上昇し過ぎたり低下し過ぎたりすることで、変換装置5あるいはDC/DCコンバータ213の動作が不安定になるおそれが低減される。また、基準電圧範囲A内のとき出力電力Poを一定に維持することは、
図6に示すグラフG3の場合と比べて出力電力Poの制御が単純化されるので、出力制御部43の構成を簡素化することが容易となる。
【0120】
なお、
図4では、主発電電力Pgが略ゼロでなければ、出力電力Poを一定に維持する例を示したが、
図8に示すように、出力制御部43は、主発電電力Pgに関わらず、主入力電圧Vが基準電圧範囲A内のとき出力電力Poを一定に維持し、主入力電圧Vが基準電圧範囲A外のとき当該主入力電圧Vが基準電圧範囲Aから遠ざかるほど出力電力Poを減少させるようにしてもよい。
【課題】自然エネルギーによる発電電力を電力線に供給するための変換装置の能力を効率よく活用することが可能な電力管理装置、増設用発電システム、発電システム、及び電力管理方法を提供する。
【解決手段】電力管理装置21は、太陽電池の発電電力に基づく入力電力が入力される受電部211と、電力上限値を記憶する記憶部215と、主入力電力を示す情報を取得する主電力情報取得部41と、主入力電力が電力上限値に満たないときに主入力電力が電力上限値を超えないように入力電力に基づく出力電力を主受電部へ出力する出力調節処理を実行する出力制御部43と、を備える。