(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、本発明に係るMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)100の上面図である。
図1は、MOSFET100のX‐Y平面図でもある。本例において、X軸方向とY軸方向とは互いに垂直な方向であり、Z軸方向はX‐Y平面に垂直な方向である。X、YおよびZ軸は、いわゆる右手系を成す。
【0022】
本例においては、Z軸方向の正方向を「上」と称し、Z軸方向の負方向を「下」と称する場合がある。ただし、「上」および「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」および「下」の方向は、重力方向に限定されない。「上」および「下」は、領域、層、膜および基板等における相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎない。
【0023】
MOSFET100は、半導体装置の一例である。本例のMOSFET100はいわゆる縦型MOSFETであるが、他の例において、MOSFET100は横型MOSFETであってもよい。本例のMOSFET100は、活性部110とエッジ終端部130とを有する。本例の活性部110は、ゲートパッド112およびソースパッド114を有する。ゲートパッド112およびソースパッド114は、MOSFET100におけるゲート電極およびソース電極に各々電気的に接続された電極パッドであってよい。ゲートパッド112およびソースパッド114は、各々AlまたはAl‐Siの合金で形成されてよい。
【0024】
エッジ終端部130は、上面視において活性部110の周囲を囲んで設けられる。エッジ終端部130は、ガードリング構造、フィールドプレート構造およびJTE(Junction Termination Extension)構造の一以上を有してよい。なお、本例のエッジ終端部130は、ガードリング構造を有する。エッジ終端部130は、活性部110で発生した空乏層をエッジ終端部130まで広げることにより、活性部110での電界集中を防ぐ機能を有してよい。
【0025】
なお、本例の半導体装置はMOSFET100であるが、他の例において半導体装置はダイオードであってもよい。つまり、他の例の半導体装置は、本例の活性部110に位置するpn接合領域と、当該pn接合領域を囲むエッジ終端部130とを有してもよい。半導体装置がダイオードである場合に、ソースパッド114に代えてアノード電極を設けてよく、また、後述のドレイン電極に代えてカソード電極を設けてよい。
【0026】
図2は、第1実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。A‐A断面は活性部110およびエッジ終端部130を通るY‐Z平面に平行な断面である。なお、A‐A断面では、主としてエッジ終端部130を示す。本例のエッジ終端部130は、GaN基板10、n型GaN層16、電荷補償層20、p型GaN層40、絶縁膜70およびドレイン電極96を有する。なお、活性部110は、GaN基板10、n型GaN層16、p型GaN層40、ソース電極94およびドレイン電極96を有する。本例の活性部110およびエッジ終端部130は、GaN基板10およびn型GaN層16に一体形成される。p型GaN層40は、活性部110におけるベース領域またはアノード領域として用いられてもよい。本例のp型GaN層40は、活性部110におけるベース領域として用いられる。
【0027】
GaN基板10は、GaN単結晶基板であってよい。GaN基板10は、第1導電型のGaN基板であってよい。本例のGaN基板10は、n
+型のGaN基板である。n型GaN層16は、GaN基板10上に設けられてよい。n型GaN層16は、第1導電型の第1の三族窒化物半導体層の一例である。n型GaN層16は、GaN基板10上にエピタキシャル形成されてよい。
【0028】
本例においては、第1導電型をn型とし、第2導電型をp型とする。ただし、他の例においては第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としてもよい。なお、nまたはpは、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。nまたはpの右肩に記載した+または−について、+はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が高く、−はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が低いことを意味する。
【0029】
GaNに対する第1導電型(n型)不純物は、Si(シリコン)、Ge(ゲルマニウム)、およびO(酸素)の一種類以上の元素であってよい。本例においては、n型不純物としてSiを用いる。また、GaNに対する第1導電型(p型)不純物は、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Be(ベリリウム)およびZn(亜鉛)の一種類以上の元素であってよい。本例においては、p型不純物としてMgを用いる。
【0030】
本例のMOSFET100に用いられる三族窒化物半導体材料は、GaN材料である。ただし、三族窒化物半導体材料は、アルミニウム(Al)およびインジウム(In)の一以上の元素をさらに含んでもよい。つまり、三族窒化物半導体材料は、AlおよびInを微量に含んだ混晶半導体、即ちAl
xIn
yGa
1−x−yN(0≦x<1、0≦y<1)であってもよい。ただし、本例の三族窒化物半導体材料は、Al
xIn
yGa
1−x−yNにおいてx=y=0としたGaNである。
【0031】
n型GaN層16は、上面14および下面12を有する。本例において、n型GaN層16とGaN基板10との界面を、n型GaN層16の下面12とする。また、Z軸方向の正方向において、下面12と反対側に位置するn型GaN層16の面を上面14とする。なお、上面14は、n型GaN層16の表(おもて)面でもある。また、Z軸方向の負方向において、下面12と反対側に位置するGaN基板10の面を裏面18とする。
【0032】
エッジ終端部130において、n型GaN層16は、複数のトレンチ部30を有してよい。本例のn型GaN層16は、Y軸方向の異なる位置に2つのトレンチ部30を有するが、Y軸方向の異なる位置に3つ以上のトレンチ部30を有してもよい。トレンチ部30は、上面14から下面12に向かって突出してよい。A‐A断面の各トレンチ部30は、底部32と、Y軸方向において互いに対向する2つの側壁35とを有する。
【0033】
エッジ終端部130において、n型GaN層16は、2つのトレンチ部30の間に位置する凸部50を有してよい。本例のn型GaN層16は、Y軸方向の異なる位置に3つの凸部50を有するが、トレンチ部30の数に応じてY軸方向の異なる位置に4つ以上の凸部50を有してもよい。1つの凸部50は、n型GaN層16の上面14と複数のトレンチ部30の側壁35とにより規定されてよい。例えば、Y軸方向において3つ並んだ凸部50のうち、中央の凸部50は、トレンチ部30‐1の外側の側壁35と、トレンチ部30‐2の内側の側壁35と、上面14とにより規定される。なお、A‐A断面においては、Y軸方向の正方向を外側と称し、Y軸方向の負方向を内側と称する。
【0034】
本例において、最も内側の凸部50は、活性部110とエッジ終端部130との境界135と、トレンチ部30‐1の内側の側壁35と、上面14とにより規定される。なお、本例の活性部110は凹部60を有し、凹部60の側壁65はY軸方向において境界135に一致する。また、凹部60の底部62のZ軸方向の位置は、トレンチ部30の底部32のZ軸方向の位置と一致する。さらに、本例において、最も外側の凸部50は、n型GaN層16の側面端部と、トレンチ部30‐2の外側の側壁35と、上面14とにより規定される。
【0035】
p型GaN層40は、第2導電型の三族窒化物半導体層の一例である。p型GaN層40は、トレンチ部30に設けられてよい。本例のp型GaN層40は、少なくともトレンチ部30における複数の側壁35と、トレンチ部30の底部32とに接して設けられる。p型GaN層40は、トレンチ部30に接してエピタキシャル形成されてよい。本例においては、エピタキシャル成長によりp型GaN層40を形成するので、イオン注入または選択成長によりp型のGaN層を形成する困難性を回避し、かつ、トレンチ部30に確実にp型GaN層40を設けることができる。
【0036】
p型GaN層40は、トレンチ部30とY軸方向に隣接する2つの電荷補償層20とにより規定される空間にも設けられてよい。ただし、本例のp型GaN層40は、当該空間を完全には充填しない。なお、本例の電荷補償層20は、凸部50上に位置し、凸部50に接して設けられたGaN層である。
【0037】
トレンチ部30に設けられたp型GaN層40は、2つの側壁45と、底部42とを含む。本例において、p型GaN層40の底部42は、トレンチ部30の底部32に接する。また、本例のp型GaN層40の側壁45は、トレンチ部30の側壁35と、電荷補償層20の側壁25とに接する。これにより、n型GaN層16とp型GaN層40とのpn接合により形成される空乏層は、隣接するトレンチ部30の底部32間に加えて、隣接するトレンチ部30の側壁35間(即ち、凸部50を挟むp型GaN層40の側壁45間)においても広がる。それゆえ、空乏層が外側へ広がり易くなるという利点がある。
【0038】
本例においては、トレンチ部30および電荷補償層20に接して、エッジ終端部130の全体にp型GaN層40をエピタキシャル形成した後に、電荷補償層20上のp型GaN層40を部分的に除去する。それゆえ、p型GaN層40は、電荷補償層20上において分断されている。つまり、p型GaN層40は、各トレンチ部30において電気的にフローティング状態にある。このように、p型GaN層40を分離することにより、活性部110からエッジ終端部130の最も外側までp型GaN層40を一つながりにする場合に比べて、リーク電流を低減することができる。
【0039】
電荷補償層20は、第1導電型のGaN層であってよい。本例の電荷補償層20は、n型GaN層16のドーピング濃度よりも低いn型のドーピング濃度を有する。電荷補償層20は、n型GaN層16よりも低濃度のn型のGaN層であってよい。なお、A‐A断面においては、電荷補償層20がn型GaN層16よりも低いn型のドーピング濃度を有することを明示するべく、電荷補償層20をn
−型として示す。電荷補償層20は、絶縁膜70とn型GaN層16の上面14との間に形成される界面電荷の影響を補償する機能を有してよい。
【0040】
界面電荷は、絶縁膜70(例えば、二酸化シリコン)をプラズマCVD(Plasma‐Enhanced Chemical Vapor Deposition:PECVD)により形成する過程において、被成膜対象である半導体層と絶縁膜70との界面に形成され得る。また、界面電荷は、絶縁膜70の形成後に半導体層を熱処理することによっても形成され得る。なお、界面電荷が正電荷であるか負電荷であるかは、絶縁膜70の材料および製法ならびに絶縁膜70の形成後の処理工程に応じて予測可能である。
【0041】
本例において、電荷補償層20の絶縁膜70との界面近傍は、界面電荷により空乏化されてよい。例えば、界面電荷が正電荷である場合に、n
−型の電荷補償層20の上面近傍は空乏化する。これにより、電荷補償層20は、界面電荷を相殺または中和することができる。また、界面電荷が正電荷である場合に、電荷補償層20はn型のドーピング濃度がn型GaN層16よりも低いので、電荷補償層20は完全に空乏化してもよい。電荷補償層20の空乏化に伴い、凸部50の上部およびトレンチ部30の側壁35近傍においても空乏化が進み易くなる。それゆえ、隣接するトレンチ部30の底部32間において空乏層がつながり、その結果、空乏層が外側に広がりやすくなるという利点がある。
【0042】
また、例えば、界面電荷が負電荷である場合に、n
−型の電荷補償層20におけるn型のドーピング濃度は、n型GaN層16よりも十分に低くなるよう調整してよい。具体的には、界面電荷の負電荷(cm
−2)と電荷補償層20の単位面積当たりのn型のドーピング濃度(cm
−2)との和を電荷補償層20の厚み(cm)で除した単位体積当たりの電荷量(cm
−3)が、n型GaN層16のn型のドーピング濃度(cm
−3)以下となってよい。これにより、電荷補償層20に対応する部分をn型GaN層16に代替した場合に比べて、凸部50における空乏層の広がりをより確実にすることができ、加えて、凸部50および電荷補償層20に対応する部分における電界集中を防ぐことができる。また、凸部50において空乏層が広がりやすくなれば、トレンチ部30の底部32間において空乏層がつながり、その結果、空乏層が外側にさらに広がりやすくなる。
【0043】
なお、本例とは異なる従来のシリコン半導体の例においては、トレンチ部30を設けずに、エッジ終端部にp型のガードリングを形成することがある。つまり、シリコン半導体層の上面から所定の深さ位置まで埋め込まれたp型のガードリングが設けられることがある。このシリコン半導体の例においても、シリコン半導体層の上面上に絶縁膜が設けられることに起因して、シリコン半導体層の上面と絶縁膜との間に界面電荷が発生し得る。通常、界面電荷が負電荷である場合にガードリングの間隔を相対的に狭め、界面電荷が正電荷である場合にガードリングの間隔を相対的に広げるよう、ガードリングの間隔は調整される。しかしながら、ガードリングの間隔を狭める場合にはフォトリソグラフィー工程の微細化に伴うプロセス不良が頻発し、ガードリングの間隔を広げる場合にはデバイスにおいてエッジ終端部が占める面積が増大するという問題がある。
【0044】
これに対して本例においては、電荷補償層20のn型のドーピング濃度を調節することにより界面電荷の影響を補償するので、界面電荷の正負に応じてトレンチ部30間の間隔(即ち、本例における凸部50のY軸方向の幅)を調整しなくてよい。それゆえ、上述のフォトリソグラフィー工程の微細化の問題およびエッジ終端部の占有面積が増大する問題を解消することができる。なお、本例において、1つのガードリングは、トレンチ部30に設けられたp型GaN層40である。本例のガードリング構造は、複数のガードリングを有する。
【0045】
ソース電極94は、活性部110に設けられてよい。本例のソース電極94は、凹部60に接するp型GaN層40と絶縁膜70の一部とに接する。ソース電極94は、上述のソースパッド114と同一の材料で形成されてよい。AlまたはAl‐Siの合金からなるソース電極94は、ソースパッド114も兼ねてよい。
【0046】
ソース電極94は、上面14とAl層またはAl‐Si層との間にバリアメタル層を有してもよい。バリアメタル層の材料としてチタン(Ti)を使用してもよい。つまり、ソース電極94は、Ti層およびAl層の積層、または、Ti層およびAl‐Siの合金層の積層であってもよい。本例のドレイン電極96は、裏面18に接して裏面18の下に設けられる。ドレイン電極96もソース電極94と同様の材料で構成されてよい。
【0047】
図3は、
図2のトレンチ部30近傍の部分拡大図である。
図3のトレンチ部30は、
図2のトレンチ部30‐1に対応する。
図3においては、電荷補償層20、トレンチ部30および絶縁膜70について主に述べる。なお、絶縁膜70と電荷補償層20およびp型GaN層40との間に形成される界面電荷を、簡略的に白丸で示す。
【0048】
(電荷補償層20)電荷補償層20は、1.5μmより大きく3.5μm以下の厚みT
Cを有してよい。なお、本例において電荷補償層20の厚みT
Cは、Z軸方向と平行な方向における電荷補償層20の長さである。電荷補償層20の厚みT
Cは、Y軸方向における電荷補償層20の厚みT
Cの平均値であってもよい。本例において、トレンチ部30の底部32の幅W
Tは0.5μm以上3μm以下であり、トレンチ部30の側壁35の高さH
Tは0.3μm以上3μm以下である。
【0049】
トレンチ部30および電荷補償層20により形成されるアスペクト比((T
C+H
T)/W
T)は、0.6以上13以下であってよい。アスペクト比((T
C+H
T)/W
T)の下限値は、1.3、1.5または2.2であってもよく、上限値は、3.6、7.6または9.0であってもよい。アスペクト比が13以下であれば、トレンチ部30および電荷補償層20により形成される空間に対して共形(conformal)に(即ち、当該空間を充填することなく、トレンチ部30の底部32および側壁35ならびに電荷補償層20の側壁25に沿って)、p型GaN層40を形成することが可能である。アスペクト比を考慮した電荷補償層20の厚みT
Cの一例は、3.0μmである。
【0050】
これに代えて、電荷補償層20は、0.5μm以上1.5μm以下の厚みT
Cを有してもよい。電荷補償層20における電界集中を緩和させるためには、電荷補償層20の厚みT
Cはできるだけ厚い方がよい。そこで、電荷補償層20の厚みT
C=0.5μmは、電荷補償層20において電界集中が許容される最小の厚みであってよい。また、フォトリソグラフィー工程等を考慮すると、製造工程においては上面14近傍の段差はできるだけ小さいことが望ましい。電荷補償層20の厚みT
C=1.5μmは、製造工程における段差の影響を考慮した最大の厚みであってもよい。電界集中および製造工程を考慮した電荷補償層20の厚みT
Cの一例は、1.0μmである。電荷補償層20の厚みT
Cは、電界集中の緩和と製造工程とのバランスを考慮して決定してよい。
【0051】
(絶縁膜70)トレンチ部30は、p型GaN層40の2つの側壁45と底部42とによって規定される内部空間47を有してよい。内部空間47は、トレンチ部30および電荷補償層20により形成される空間に対して共形に設けられたp型GaN層40の2つの側壁45および底部42により規定されてよい。絶縁膜70は、内部空間47を充填しないように内部空間47内に設けられてよい。
図3においては、Y軸方向における内部空間47の端部を示す、なお、Z軸方向における内部空間47の端部は、内部空間47の底部における電荷補償層20と絶縁膜70との境界であってよい。
【0052】
本例の絶縁膜70は、電荷補償層20およびp型GaN層40に接する。より具体的には、絶縁膜70は、電荷補償層20の上面と、p型GaN層40における2つの側壁45および底部42とに接する。本例においては、内部空間47がp型GaN層40で完全に充填される場合と比べて、p型GaN層40上における絶縁膜70の沿面距離を長くすることができる。これにより、絶縁膜70の沿面放電を抑制することができる点が有利である。なお、絶縁膜70における沿面放電を抑制するために、内部空間47は絶縁膜70で完全に充填されない方が望ましい。内部空間47において絶縁膜70で充填されていない部分は、絶縁膜70とは異なる材料(例えば、樹脂材料)で充填される方が好ましい。内部空間47において絶縁膜70で充填されていない部分が絶縁膜70とは異なる材料で充填される場合、内部空間47が絶縁膜70で完全に充填される場合と比べて、絶縁膜70の沿面距離を長くすることができる。
【0053】
電荷補償層20におけるn型のドーピング濃度であるC
d[cm
−3]と、電荷補償層20の厚みであるT
C[cm]と、電荷補償層20と絶縁膜70との界面に生じる、単位面積当たりの界面電荷量であるX[cm
−2]と、n型GaN層16におけるn型のドーピング濃度であるN
d[cm
−3]とは、0.5・N
d≦(X+T
C・C
d)/T
C≦1.0・N
d[数1]を満たしてよい。なお、「・」は、積を意味する。なお、積を、「×」と表記する場合もある。
【0054】
単位面積当たりの界面電荷量Xは、例えば、1E+12[cm
−2]以上1E+13[cm
−2]以下である。なお、Eは10の冪であり、1E+12は1.0×10
12を意味する。界面電荷は、上述のように正電荷または負電荷である。電荷補償層20がn型であることを考慮し、界面電荷が負電荷である場合には、Xを正の値として[数1]に代入してよい。これに対して、界面電荷が正電荷である場合には、Xを負の値として[数1]に代入してよい。
【0055】
n型GaN層16のN
d[cm
−3]は、MOSFET100の耐圧が3kVクラスの場合には5E+15[cm
−3]であってよい。また、n型GaN層16のN
d[cm
−3]は、MOSFET100の耐圧が1.2kVクラスの場合には1.5E+16[cm
−3]であってよい。
【0056】
[数1]における「(X+T
C・C
d)/T
C」は、界面電荷を考慮した上での電荷補償層20における実効的なドーピング濃度であるとみなすこともできる。電荷補償層20における実効的なドーパント濃度を1.0・N
d以下とすれば、電荷補償層20に対応する部分をn型GaN層16とした場合に比べて、凸部50における空乏層の広がりをより確実にすることができる。電荷補償層20における実効的なドーパント濃度を0.5・N
d以上とすることにより、電荷補償層20を適正な厚さとし、かつ、電荷補償層20の濃度ばらつきをエピタキシャル成長装置の能力に応じて定まる濃度ばらつきの許容上限内に抑えることができる。なお、空乏層幅は電荷補償層20の実効的なドーパント濃度の1/2乗に逆比例する。それゆえ、電荷補償層20の濃度がばらつくと、空乏層幅のばらつきが大きくなり、これに起因してMOSFET100の耐圧値がばらつく可能性がある。従って、電荷補償層20の濃度を一定の値以上(本例では、0.5・N
d以上)とすることで、MOSFET100の耐圧ばらつきを抑えることができる。
【0057】
2つのトレンチ部30と凸部50とが隣接して配置される予め定められた方向において、凸部50の幅W
Pは、トレンチ部30の幅W
Tの設計範囲における下限値の2倍以上、設計範囲における上限値の1倍以下であってよい。
図3の例において、予め定められた方向は、Y軸方向である。トレンチ部30の幅W
Tの設計範囲は、0.5μm以上3μm以下であってよく、より好ましくは0.5μm以上2μm以下であってよい。なお、トレンチ部30の幅W
Tの設計範囲の値うち特定の幅W
Tが、MOSFET100におけるトレンチ部30の幅W
Tに反映されてよい。これに対して、凸部50の幅W
Pは、幅W
Tの設計範囲における下限値の2倍に対応する1μm以上、幅W
Tの設計範囲における上限値の1倍に対応する3μm以下であってよく、より好ましくは1μm以上2μm以下であってよい。
【0058】
p型GaN層40の厚みT
pGaNは、Y軸方向におけるトレンチ部30の幅W
Tの半分よりも小さくてよい。なお、エピタキシャル形成に起因して、p型GaN層40の厚みT
pGaNは、側壁45および底部42において同じであってよい。これにより、内部空間47を充填することなく、内部空間47にp型GaN層40を設けることができる。なお、p型GaN層40の厚みT
pGaNと絶縁膜70のトレンチ部30における厚みT
Iとの和が、Y軸方向におけるトレンチ部30の幅W
Tの半分よりも小さいことがより望ましい。これにより、絶縁膜70の沿面距離を確保することができる。
【0059】
図4は、第1実施形態におけるMOSFET100の製造方法を示すフロー図である。本例の製造方法は、段階S100からS150の順に(即ち、番号の小さい順に)行われる。なお、本例においては、エッジ終端部130における各段階について説明するが、当業者であれば活性部110の製造方法における各段階を本例の各段階に適宜追加することを理解できる。
【0060】
図5の(a)〜(f)は、第1実施形態におけるMOSFET100の製造方法の各段階を示す図である。
図5の(a)は、段階S100を示す図である。段階S100においては、まず、GaN基板10上にn型GaN層16をエピタキシャル形成し、その後、n型GaN層16上に電荷補償層20をエピタキシャル形成する。有機金属成長法(MOCVD)またはハライド気相成長法(HVPE)等により、各エピタキシャル形成を実行してよい。
【0061】
本例においては、トリメチルガリウム(Ga(CH
3)
3)、アンモニア(NH
3)およびモノシラン(SiH
4)を含む原料ガスと、窒素(N
2)および水素(H
2)を含む押圧ガスとをGaN基板10上に流す。モノシランのSiは、n型GaN層16および電荷補償層20におけるn型不純物として機能し得る。n型のドーピング濃度に応じて、n型GaN層16を形成するときのモノシランの単位時間当たりの流量を、電荷補償層20を形成するときのモノシランの単位時間当たりの流量よりも高くしてよい。n型GaN層16の厚み(即ち、下面12から上面14までの長さ)は、耐圧に応じて変えてよいが、例えば1μm以上50μm以下である。
【0062】
図5の(b)は、段階S110を示す図である。段階S110においては、n型GaN層16および電荷補償層20をエッチングする。これにより、電荷補償層20を分離し、かつ、n型GaN層16にトレンチ部30を形成する。なお、本例においては、トレンチ部30を形成するときに、同時に凹部60も形成する。段階S110においては、二酸化シリコンおよびフォトレジストの一以上を有するマスク層をトレンチ部30のX‐Y平面パターンに応じてパターニングし、その後、マスク層を介して、電荷補償層20およびn型GaN層16をドライエッチングしてよい。エッチング後に、マスク層は除去する。
【0063】
図5の(c)は、段階S120を示す図である。段階S120においては、p型GaN層40をエピタキシャル形成する。本例のp型GaN層40は、トレンチ部30、凹部60、ならびに、電荷補償層20の側壁25および上面に接して、設けられる。本例においては、トリメチルガリウム、アンモニアおよびビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp
2Mg)を含む原料ガスと、窒素(N
2)および水素(H
2)を含む押圧ガスとを高温のn型GaN層16上に流す。Cp
2MgのMgは、p型不純物として機能し得る。
【0064】
図5の(d)は、段階S130を示す図である。段階S130においては、凸部50上の電荷補償層20の上面よりも上に位置するp型GaN層40を除去する。なお、本例においては、電荷補償層20の上面よりも下に位置するp型GaN層40はエッチングすることなく残す。エッチングは、段階S110と同様の手法を用いてよい。
【0065】
図5の(e)は、段階S140を示す図である。段階S140においては、絶縁膜70を形成する。本例においては、PECVDにより電荷補償層20およびp型GaN層40上に絶縁膜70を形成する。その後、活性部110における絶縁膜70を部分的に除去する。
【0066】
図5の(f)は、段階S150を示す図である。段階S150においては、スパッタリング等によりソース電極94およびドレイン電極96を各々形成する。なお、電極材料をスパッタリングにより形成した後に、エッジ終端部130の電極材料を除去することによりソース電極94を形成してよい。これにより、MOSFET100を製造してよい。
【0067】
図6は、第2実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。本例においては、電荷補償層20の底部の下端22は、p型GaN層40の底部42の上端44と、トレンチ部30の底部32との間に位置する。本例は、係る点において、第1実施形態と異なる。他の点は、第1実施形態と同じであってよい。それゆえ、本例においても第1実施形態と同じ有利な効果を享受することができる。
【0068】
本例のp型GaN層40の厚みT
pGaNは、第1実施形態に比べて厚くてよい。ただし、本例においても内部空間47を完全に充填しないように、電荷補償層20および絶縁膜70を形成する。これにより、第1実施形態と同様に絶縁膜70の沿面距離を確保することができる。
【0069】
図7は、第3実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。本例の電荷補償層20は、第1実施形態の電荷補償層20に比べてY軸方向に長い。また、電荷補償層20のY軸方向の側壁25とp型GaN層40の側壁45の内側とが面一となる。本例においては、p型GaN層40の側壁45の上端46とn型GaN層16の上面14とのZ軸方向の位置が一致する。また、p型GaN層40の側壁45の上端46は、電荷補償層20の下端22に接する。係る点において、本例は、第1実施形態と異なる。ただし、他の点は、第1実施形態と同じであってよい。それゆえ、本例においても第1実施形態と同じ有利な効果を享受することができる。
【0070】
図8は、第3実施形態におけるMOSFET100の製造方法を示すフロー図である。本例においては、段階S102においてn型GaN層16をエピタキシャル形成するが、電荷補償層20はエピタキシャル形成しない。また、本例においては、段階S132において電荷補償層20をエピタキシャル形成し、段階S134において電荷補償層20を部分的に除去する。係る点において第1実施形態と異なる。
【0071】
図9の(a)〜(h)は、第3実施形態におけるMOSFET100の製造方法の各段階を示す図である。
図9の(a)は、段階S102を示す図である。段階S102においては、GaN基板10上にn型GaN層16をエピタキシャル形成する。ただし、第1実施形態と異なり、電荷補償層20は形成しない。
【0072】
図9の(b)は、段階S110を示す図である。段階S110においては、n型GaN層16をエッチングする。これにより、n型GaN層16にトレンチ部30を形成する。
図9の(c)は、段階S120を示す図である。段階S120においては、n型GaN層16上の全体にp型GaN層40をエピタキシャル形成する。つまり、凸部50の上部、ならびに、トレンチ部30の側壁35および底部32に接するp型GaN層40を形成する。
【0073】
図9の(d)は、段階S130を示す図である。段階S130においては、凸部50上のp型GaN層40をエッチングにより除去する。ただし、第1実施形態と異なり、本例においては、p型GaN層40のうちn型GaN層16の上面14に接する部分が除去される。エッチング後において、トレンチ部30の側壁35に接するp型GaN層40の側壁45は残る。p型GaN層40の上端44とn型GaN層16の上面14とは一致してよい。
【0074】
図9の(e)は、段階S132を示す図である。段階S132においては、n型GaN層16およびp型GaN層40上に電荷補償層20をエピタキシャル形成する。
図9の(f)は、段階S134を示す図である。段階S134においては、電荷補償層20を部分的に除去する。本例においては、電荷補償層20のうち、p型GaN層40により規定される内部空間47に位置する部分と、当該内部空間47上に位置する部分とを除去する。
【0075】
図9の(g)は段階S140を示す図であり、
図9の(h)は段階S150を示す図である。段階S140および段階S150は、第1実施形態と同じであるので詳しい説明を省略する。
【0076】
図10は、第4実施形態における
図1のA‐A断面を示す図である。本例のn型GaN層16は、トレンチ部30を有しない。本例においては、電荷補償層20がn型GaN層16上に設けられ、電荷補償層20がn型GaN層16にまで達しないトレンチ部30を有する。また、p型GaN層40は、電荷補償層20に設けられたトレンチ部30において、トレンチ部30の複数の側壁35と、トレンチ部30の底部32とに接する。それゆえ、本例においては、トレンチ部30の側壁35および凹部60の側壁65は、電荷補償層20の側壁25でもある。係る点において、本例は、第1実施形態と異なる。ただし、他の点は、第1実施形態と同じであってよい。それゆえ、本例においても第1実施形態と同じ有利な効果を享受することができる。
【0077】
図11の(a)〜(f)は、第4実施形態におけるMOSFET100の製造方法の各段階を示す図である。第4実施形態においては、第1実施形態の段階S110に代えて、段階S112を有する。段階S112においては、n型GaN層16にまで達しないトレンチ部30を電荷補償層20に形成する。係る点が第1実施形態と異なるが、他の点は第1実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0078】
上述の例においては、エッジ終端部130について主に説明し、活性部110についての詳細な説明を省略した。しかしながら、当業者であれば活性部110にトランジスタ構造を適宜設けることができる。トランジスタ構造は、トレンチゲート型またはプレーナゲート型であってよい。例えば、活性部110において、上述の主接合領域を第2導電型のベース領域として用いる。第2導電型のベース領域は、p型GaN領域であってよい。トランジスタ構造は、ベース領域に接するゲート絶縁膜を有してよい。ゲート絶縁膜を介してゲート電極と隣接するベース領域が、チャネル形成領域として機能してよい。また、トランジスタ構造は、第1導電型のソース領域および第2導電型のコンタクト領域をさらに有してよい。第1導電型のソース領域はn
+型GaN領域であってよく、第2導電型のコンタクト領域はp
+型GaN領域であってよい。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0080】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。
【課題】GaN材料においては、イオン注入によりp型領域を形成すること、および、p型領域を選択成長させることがSiC材料に比べて困難である。それゆえ、トレンチ部を有するエッジ終端構造にp型領域を設けるためには、従来とは異なるエッジ終端構造が必要である。
【解決手段】エッジ終端部を有する半導体装置であって、エッジ終端部は、上面および下面を有する第1導電型の第1の三族窒化物半導体層であって、上面から下面に向かって突出するトレンチ部を有する第1の三族窒化物半導体層と、トレンチ部における複数の側壁と、トレンチ部の底部とに接して設けられた第2導電型の第2の三族窒化物半導体層とを備える半導体装置を提供する。