(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電流は、パルス電流、所定のパターンで反復的に変化する電流、もしくはこれらが重畳された電流であること、を特徴とする請求項1または2に記載の磁気計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の磁気計測装置10の概要を説明する図である。磁気計測装置10は磁気を検出するためのプローブ部12とそのプローブ部12を駆動するための回路部14とを含んで構成されている。本実施例においては、プローブ部12は磁気グラジオセンサを構成しており、後述するように2つの磁気センサを含んで構成されている。プローブ部12の構成は後述する。
【0023】
回路部14は、後述するプローブ部12の導体部42、44に電流を供給するために設けられたクロック部20、電源供給部21およびパルスジェネレータ(パルス生成器)22を有している。クロック部20は例えばCMOS ICなどであり、所定の間隔でパルス信号を出力する。パルスジェネレータ22は該クロック部20から出力されるパルス信号および電源供給部21から供給される電源電圧に基づいて、周期的に変化する電流Ieをプローブ部12の導体部42、44に電流を供給する。周期的に変化する電流Ieとは、例えばパルス状に変化する方形波である。
【0024】
また、回路部14は、後述するプローブ部12のコイル50、52の誘導起電力Ecoil1、Ecoil2を検出するために設けられたサンプルホールド回路24、26、差動アンプ28、フィルタ30、アンプ32、フィルタ34を有している。サンプルホールド回路24、26は、それぞれコイル50、52の起電力Ecoil1、Ecoil2の振幅のピーク(ピーク値)を検出する。なお、前記クロック部20からは、これらサンプルホールド回路24、26にトリガ信号が供給されるようになっており、サンプルホールド回路24、26におけるピーク値の検出はこのトリガ信号に同期して所定の位相ごとに行われる。差動アンプ28は、サンプルホールド回路24、26の出力値の差分を出力する。これにより、プローブ部12の2つの磁気センサを作動させたグラジオセンサが実現される。フィルタ30は差動アンプ28の出力から高周波成分および低周波成分を除去(ハイカットおよびローカット)し、所望の周波数成分のみを取り出す。アンプ32は、フィルタ30の出力信号を、所定のオフセット電圧Offsetにより例えば1000倍程度に増幅を行う。フィルタ34はアンプ32の出力から再度高周波成分および低周波成分を除去し、所望の周波数成分のみを取り出す。このようにして出力された信号が、図示しないモニタなどの表示装置に表示されたり、記録装置に記録されたり、他の装置に送信されるようになっている。
【0025】
図2はプローブ部12の基本構成を概念的に説明する図である。本実施例においてはプローブ部12にはセンサ36、38を含んで構成されている。前述のように、本実施例の磁気計測装置10はグラジオセンサを構成しているので、センサ36、38のうち一方は検出対象となる磁気Bmesを計測するためのセンサとして用いられ、他方は参照用のセンサとして用いられる。そのため、センサ36、38は同様の構成を有している。センサ36、38はそれぞれ、磁性材料としてのアモルファス材料46、48、導電体としての導線42、44、コイル50、52を有して構成されている。このうち、アモルファス材料46、48は長手状の形状を有するアモルファスワイヤである。導線42、44はそれぞれアモルファス材料46、48に近接して設けられており、アモルファス材料46、48の長手方向に平行となるように伸びている。コイル50、52はそれぞれ、アモルファス材料46、48および導線42、44をそれぞれその内部に含むようなソレノイド状のコイルとして設けられている。なお、アモルファス材料46、48と導線42、44とは例えば空間が設けられたり、絶縁体が介在させられることなどによりそれぞれ電気的に接合していない状態とされている。後述するように、センサの構成としてはこのようなものに限られず、例えばアモルファス材料46、48の形状は長手方向に延びるものであれば、
図2に示すような棒状のものに限定されるものではない。また、コイル50、52とアモルファス材料46、48および導線42、44との位置関係は、コイル50、52の内部にアモルファス材料46、48および導線42、44を含むものに限られず、アモルファス材料46、48によって誘導される電流を発生することができるようにコイル50、52が配置されればよい。なお、センサ36、38は、その一方が検出対象となる磁気Bmesを検出する一方、他方は検出しないように、両者が離れた位置とされている。
【0026】
図3は、センサ36、38の電気的な構成を説明する図である。導線42、44には
図1に示すパルスジェネレータ22から供給されるパルス電流Ieが流れる。また、コイル50、52の起電力Ecoil1,Ecoil2はそれぞれサンプルホールド回路24、26に出力される。なお、本実施例においてはセンサ36、38のように構成されるセンサをiPAセンサ(induced para−magnetization alignment sensor)もしくはiPAセンサ素子と呼ぶ。
【0027】
図4を用いて、センサ36、38、すなわちiPAセンサの動作原理の概要を説明する。
図4は、iPAセンサのうち、アモルファス材料46、48および導線42、44のみを記載したものであり、アモルファス材料46、48中の磁荷の分布を説明する図である。アモルファス材料46、48中の矢印のそれぞれが磁荷の向きを概念的に示している。
図4のうち、(a)はiPAセンサに外部磁界が加わっていない無磁界状態、あるいは環境磁界のみが印加されているいわゆるコントロール状態S(0)を示している。
図4の(b)は、計測対象からの磁界Bmesが印加された状態S(1)を示しており、(c)は導線42、44に十分な励起電流Ieが印加された際の状態S(e)を示している。
【0028】
図4の(a)および(b)に示すように、アモルファス材料46、48における磁化は、外部から印加される微小な磁界により、例えば
図4(a)のS(0)から
図4(b)のS(1)のように変化させられる。すなわち、前記コントロール状態S(0)では、アモルファス材料46、48の磁化(Mam)は例えばその長手方向に直交する方向を向いている。一方、磁界Bmesが印加された状態S(1)では、一部の容易磁化方向を形成する磁気モーメントの配向が変化する。一方、
図4(c)に示すように、アモルファス材料46、48に近接して配設された導線42、44に十分な励起電流Ieが流された場合には、その励起電流Ieが
図4(c)における点線で示されるような磁界Beを発生する。そして、アモルファス材料46、48中の磁化の一定量は、その磁界Beの方向に整列した状態S(e)となる。このように、励起電流Ieが流されることにより磁化が整列するため、一過性の磁界を発生することとなる。ここで、励起電流Ieを流す前の磁界、より詳細にはその磁界の下でのアモルファス材料46、48の磁化の状態により、磁化の整列に伴って生ずる前記一過性の磁界の大きさが異なる。具体的には、アモルファスワイヤ46、48が状態S(0)から状態S(e)に変化する際の一過性の磁界と、状態S(1)から状態S(e)に変化する際の一過性の磁界とはその大きさが異なる。
【0029】
このようにしてアモルファスワイヤ46、48が生ずる一過性の磁界を、コイル50、52(
図2、3参照)のそれぞれにより、それらコイル50、52における起電力の変化Ecoil1、Ecoil2として検出する。この起電力の変化は、励起電流Ieの通電前後のアモルファス材料46、48における磁化の変化に対応するものとなる。具体的には、励起電流Ieの通電前におけるアモルファスワイヤ46、48が受けていた磁界に応じて異なり、通電前におけるアモルファスワイヤ46、48の状態がS(0)であった場合には、
{ Mam(S(e))−Mam(S(0))}/Δt
となり、通電前におけるアモルファスワイヤ46、48の状態がS(1)であった場合には、
{ Mam(S(e))−Mam(S(1))}/Δt
となる。このように、コイル50、52における起電力の変化Ecoil1、Ecoil2は、計測対象の磁界Bmesを反映したものとなり、起電力の変化Ecoil1、Ecoil2に基づいて磁界Bmesの大きさを算出し得ることとなる。なお、前記Δtは磁化が整列するのに要する時間であり、例えばナノ秒単位の時間である。
【0030】
本実施例においては、励起電流Ieはパルス電流であるので、電流が通電されアモルファス材料46、48の磁化が整列される励起状態期間と、通電が停止され、磁化が元の状態に戻る弛緩状態期間とが高周波で繰り返される。そのため、コイル50、52における誘導起電力の前記励起状態期間と弛緩状態期間とにおける差を検出することができる。また、これを複数回くり返して平均値などを算出することもできる。
【0031】
前記励起電流Ieは、環境磁界、すなわち通常の室内環境において受ける地磁気中においてアモルファスワイヤ46、48の内部磁化を整列させることができる程度の電流となるようにその大きさが定められる。具体的には、
図2乃至
図4に示すように導線42、44が直線上のものである場合には、励起電流Ieの通電時におけるその近傍の誘導磁界Beの大きさは、アンペールの法則より
Be=μ
0I/2πr
のように近似される。ここでμ
0は真空の透磁率(=4π×10
−7(T/A/m)であり、rは導線42、44の中心からの距離である。ここで、励起電流Ieの大きさIを200mAとすると、導線42、44の中心から1000μm(10
−3m)の距離におけるアモルファス材料46、48にも4×10
−5Tの誘導磁界Beを加えることができる。この値は地磁気に匹敵するものであるから、地磁気の下においてアモルファス材料46、48の磁化を整列するのに十分であると考えられる。
【0032】
前述の実施例によれば、本実施例の磁気計測装置10は、
長手状に形成され、磁気異方性を有する固体、液体のいずれかまたはその複合物からなる磁性材料であるアモルファス材料46、48と、アモルファスワイヤ46、48に近接して、該磁性材料
に該磁性材料の長手方向に直交する方向に成分を有する電流誘起磁界ベクトルを与えられるように配置された導線42、44と、
アモルファスワイヤ46、48が生ずる磁界を検出するためのコイル50、52と、を有し、
前記アモルファスワイヤ46、48は、外部磁界が印加されない、もしくは、該磁性材料の長手方向に成分を有しない磁界のみが印加された状態においてその磁化がアモルファスワイヤ46、48の長手方向に直交する方向とされる一方、前記磁性材料の長手方向に成分を有する外部磁界が印加された場合に該長手方向成分を有する方向とされるものであり、さらにアモルファスワイヤ46、48は、前記電流誘起磁界ベクトルが十分に与えられた場合に、その磁化がアモルファスワイヤ46、48の長手方向に直交する特定の方向に揃うものであり、磁気計測装置10は、導線42、44に電流を反復
的に流し、
該電流の通電時および非通電時におけるコイル50、52に生じさせられた起電力を検出
することができる
。そしてコイル50、52の起電力を測定することにより磁気検出を行うことができるので、アモルファス材料46、48に積極的に通電する必要がない。また、アモルファス材料46、48に通電する必要がないことから、そのアモルファス材料46、48を電気的に接続する必要がなく、半田づけ等の加工による変性の影響を受けずに磁気計測装置10を構成することができる。
【0033】
また、前述の実施例においては、磁性材料としてアモルファス材料46、48が用いられるので、測定しようとする磁気、および導線42、44を流れる電流により発生する磁界によってアモルファス材料46、48の磁化が容易に変化するので、その磁界によりコイル50、52に起電力を生じさせやすい。そのため、磁気の測定を容易かつ精度よく行うことができる。
【0034】
また、前述の実施例においては、導線42、44を流れる電流は、パルス電流、所定のパターンで反復的に変化する電流、もしくはこれらが重畳された電流であるので、導線42、44を流れる電流の大きさが反復して変化し、その変化する電流に同期したコイル50、52の起電力の変化に基づいて磁気を計測し得る。
【0035】
また、前述の実施例においては、磁性材料は、少なくとも1本
のアモルファスワイヤ46、48であり、導電体は、少なくとも1本の導線42、44であるので、磁性材料と導電体とを好適に配置した磁気測定装置10を構成しうる。
【0036】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0037】
図5は、本発明の別の実施例における、磁気計測装置10を構成するセンサ(iPAセンサ)136の概要を説明する図である。
図5(a)はその構造を説明するための図であり、
図5(b)はその長手方向に垂直な面における断面図である。このセンサ136は、前述の実施例におけるセンサ36、38に代えて用いられ得る。
【0038】
図5に示すセンサ136においては、前述の実施例1におけるセンサ36、38とほぼ同様の構成を有する。具体的には、センサ136は、磁性材料としてのアモルファス材料146、導電体としての導線42、コイル50を有して構成されており、アモルファス材料146は長手状の形状を有するアモルファスワイヤである。導線42はそれぞれアモルファス材料146に近接して設けられており、アモルファス材料146の長手方向に平行となるように伸びている。コイル50は、アモルファス材料146および導線42をそれぞれその内部に含むようなソレノイド状のコイルとして設けられている。
【0039】
図5のセンサ136においては、アモルファス材料146として複数の(
図5においては4本の)アモルファス材料146として146a乃至146dが設けられている。前述の実施例1における
図2に図示するセンサ36、38では一本のアモルファス材料46、48が設けられており、両者はこの点について異なる。
【0040】
図5に示すようにアモルファスワイヤの本数を複数設けることができ、また、その形状を異ならせることもできる。ここで、その本数や形状は磁気計測装置10に要求される検出感度に応じて変化させればよい。具体的には、
図5においては、断面が円のアモルファス材料146a、146cと断面が四角形のアモルファス材料146b、146dとがそれぞれ二本ずつ設けられているが、このような態様に限定されるものでない。すなわち、断面が円あるいは四角形以外の形状のアモルファス材料であってもよいし、その本数や組み合わせも
図5のものに限定されるものではない。すなわち、本発明においては、アモルファス材料46、146a〜146dに積極的に電流を流すものではないので、アモルファス材料の本数、断面積が変化したとしても励起電流が減少したり、総電流量が増加したりすることがないという利点がある。
【0041】
実施例2のセンサ136によれば、実施例1と同様の効果が得られるとともに、センサ136の感度をアモルファス材料146の本数や形状などによって設定することができる。
【実施例3】
【0042】
図6は、本発明のさらに別の実施例における、磁気計測装置10を構成するセンサ(iPAセンサ)236の概要を説明する図である。
図6(a)はその構造を説明するための図であり、
図6(b)はその長手方向に垂直な面における断面図である。このセンサ236は、前述の実施例におけるセンサ36、38に代えて用いられ得る。
【0043】
図6に示すセンサ236においては、前述の実施例1におけるセンサ36、38とほぼ同様の構成を有する。具体的には、センサ136は、磁性材料としてのアモルファス材料246、導電体としての導線42、コイル50を有して構成されている。アモルファス材料246は薄膜状の磁気異方性アモルファス材料を円筒状に巻くことによって作製されている。そして円筒状とされたアモルファス材料246の中心部分を導線42が貫いている。あるいは、アモルファス材料246が導線42に巻き付けられるようにして作製されてもよい。このとき、好適にはアモルファス材料246とそれによって囲まれる導線42とは絶縁されるが、導電体42に必要十分な量の電流が流れるのであれば、アモルファス材料246に導電体42から一部の電流が分流しても差し支えなく、アモルファス材料246および導線42とが必ずしも絶縁される必要はない。
【0044】
なお、円筒状とされるアモルファス材料246は少なくとも1層で巻かれればよいが、複数層巻かれるものであっても差し支えない。その層の数は、磁気計測装置10に要求される検出感度に応じて変化させればよい。
【0045】
本実施例においても導線42はアモルファス材料246に近接するとともに、アモルファス材料246の長手方向に平行となるようにされている。コイル50は、アモルファス材料246および導線42をその内部に含むようなソレノイド状のコイルとして設けられている。
【0046】
実施例3のセンサ236およびそれを用いた磁気計測装置10によれば、磁性材料はシート状の磁気異方性を有するアモルファス材料246であり、シート状のアモルファス材料246は、導線42を少なくとも1層で囲むように巻きつけられ、または一層以上重ねられているので、実施例1と同様の効果が得られるとともに、アモルファス材料246と導線42とが近接した状態として磁気計測装置10を構成することができる。
【実施例4】
【0047】
図7は、本発明のさらに別の実施例における、磁気計測装置10を構成するセンサ(iPAセンサ)336の概要を説明する図である。
図7(a)はその構造を説明するための図であり、
図7(b)はその長手方向に垂直な面における断面図である。このセンサ336は、前述の実施例におけるセンサ36、38に代えて用いられ得る。
【0048】
図7に示すセンサ336においては、前述の実施例1におけるセンサ36、38とほぼ同様の構成を有する。具体的には、センサ136は、磁性材料としてのアモルファス材料346、導電体としての導線42、コイル50を有して構成されている。アモルファス材料346は、例えばワイヤ状、あるいは幅広の紐状などの長手状の磁気異方性アモルファス材料を導線42を囲むように少なくとも一層でコイル状に巻かれたものである。このとき、アモルファス材料346を導線42に巻き付けられるようにして作製されてもよいし、円筒状になるように中心に空間を設けるようにして巻いた後、その中心に生じた空間に導線42を配置するようにしてもよい。このとき、アモルファス材料346とそれによって囲まれる導線42とは、前述の実施例3の場合と同様に絶縁されてもよいし、されなくてもよい。
【0049】
なお、アモルファス材料346を巻き付ける際の間隔や巻き重ねる層の数は、例えば、磁気計測装置10に要求される検出感度に応じて変化させればよい。具体的には間隔が生じないように隣接するアモルファス材料が接するように巻いても良いし、所定の間隔により巻いてもよい。また巻き重ねる際は少なくとも1層で巻かれればよいが、複数層巻かれるものであっても差し支えない。
【0050】
本実施例のように、導線42はアモルファス材料346に近接する一方、アモルファス材料346の長手方向と導線42の長手方向とは平行となるものではない構成であっても一定の効果を生ずる。また、コイル50は、アモルファス材料346および導線42をその内部に含むようなソレノイド状のコイルとして設けられている。
【0051】
実施例4のセンサ336およびそれを用いた磁気計測装置10によれば、磁性材料は長手状の磁気異方性を有するアモルファス材料346であり、アモルファス材料346は、導線42を少なくとも1層で囲むように巻きつけられているので、実施例1乃至3と同様の効果が得られるとともに、アモルファス材料346と導線42とが近接した状態として磁気計測装置10を構成することができる。
【実施例5】
【0052】
図8は、本発明の別の実施例におけるプローブ部12の構成を説明する図であって、
図3に対応する図である。すなわち、本実施例のプローブ部12は
図3のプローブ部12に代えて用いられる。
図3のプローブ部12においては、2つのセンサ36、38はそれぞれアモルファス材料46、48および導線42、44を有していたが、
図8に示す本実施例のプローブ部12は、2つのセンサ36、38は共通するアモルファス材料446および1つの導線442を有する点において異なる。ここで、共通するアモルファス材料446とは、2つのセンサ36、38が磁気回路的に直列に結合されたアモルファス材料446を共有することを意味している。
【0053】
図8において、アモルファス材料446は、そ
の長手方向における中点を通り、
その長手方向に対して直角な直線を対称線として対称の形状を有している。そして、一対のセンサ36、38における一対のコイル50、52は、その対称線または対称面に対して対称となる位置に設けられている。このようにすれば、本願発明者らの知見に基づけば、例えば環境磁界のように2つのセンサ36、38に共通して加わる磁界は、アモルファス材料446においてその中点あるいは対称線に対して対称となる。従って、これら2つのセンサ36、38を用いてグラジオセンサを構成する場合に、環境磁界の影響を好適に打ち消すことが可能になり、より精度のよい磁気計測装置10を提供することができる。なお、このことは特許文献5にも記載されている。
【0054】
本実施例によれば、アモルファス材料446は、その
長手方向における中点を通り、
長手方向に対して直角な直線を対称線として対称の形状を有し、センサ36、38における一対のコイル50、52は、その対称線に対して対称となるように一対設けられ、それらセンサ36、38によりグラジオセンサが構成されるので、地磁気などの環境磁界の影響をこれら一対のセンサ36、38を差動させることにより好適に相殺することができ、グラジオセンサを用いて構成した磁気計測装置10の精度が向上し得る。
【実施例6】
【0055】
図9は、本発明の別の実施例における磁気計測装置10の構成を説明する図である。
図9の磁気計測装置10においては、プローブ部12を含む磁気計測装置10の一部をセンサプローブ212としている。このセンサプローブ212は磁気計測装置10の本体と分離された形態とされ、両者がケーブルで接続されることにより、本体と離れた場所の磁気の計測が可能にされている。
図9の実施例においては、センサプローブ212はプローブ部12に加え、回路部14の一部であるパルスジェネレータ22、ACカップリング器224、インスツルメンテーションアンプ228を含んで構成されているが、このような態様に限定されるものではなく、これらのうち一部はセンサプローブ212に含まれなくても良いし、逆に回路部14の他の構成部分がセンサプローブ212に含まれてもよい。
【0056】
本実施例における回路部14は、クロック部20、電源供給部21、パルスジェネレータ22、ACカップル器224、インスツルメンテーションアンプ228、ACカップル器260、ロックインアンプ262、およびローパスフィルタ264などを含んで構成されている。このうち、クロック部20、電源供給部21、パルスジェネレータ22は前述の実施例1におけるものと同様であるので説明を省略する。なお、クロック部20が出力するクロック信号は、精度のよい、例えば5桁以上の精度を有するクロック信号であることが好ましい。また、クロック部20は回路部14に設けられる必要がなく、例えば、磁気計測装置10の外に設けられ、磁気計測信号10にクロック信号を供給するものであってもよい。
【0057】
センサ36、38からの出力は、ACカップル器224を介してインスツルメンタルアンプに入力される。このとき、雑音の除去のため、センサ36、38からの出力は、例えば10kHzから100MHzを通過させる図示しないバンドパスフィルタを介してACカップル器224に入力されてもよい。そして、ACカップル器224によりカップリングが、またインスツルメンテーションアンプ228によりそれらの差分が算出されて、さらに所定の増幅率で増幅される。
【0058】
インスツルメンテーションアンプ228の出力はさらに、ACカップル器260に入力されカップリングが行われる。また、必要に応じてハイパスフィルタにより、クロック信号の周波数に対応した高周波成分が除去される。そしてロックインアンプ262に入力される。ロックインアンプ262においては、クロック部20から供給されるクロック信号に基づいて、差分されたセンサ36、38の誘導起電力である出力の振幅を検出する。検出された振幅は連続値とされた後、予め設定されたオフセット電圧分だけオフセットされて、例えば1000倍などの所定の増幅率で増幅される。さらに、ローパスフィルタ264により所定周波数より低周波側の成分を除去した後、出力がなされる。このとき、増幅した信号に加え、オフセット電圧や検出位相(ディレイ時間)も合わせて出力されるようにしてもよい。
【0059】
本実施例の磁気計測装置10によれば、前述の実施例1と同様の効果に加え、センサプローブ212が磁気計測装置10の本体と分離して構成されるので、本体部と離れた位置の磁気の計測が可能となる。
【実施例7】
【0060】
図10は、本発明の更に別の実施例における磁気計測装置10の構成を説明する図であって、
図9に対応するものである。
図10においては、回路部14にデジタル処理部280が用いられている点において異なる。このデジタル処理部280は、信号のAD変換を行う機能を有している。
【0061】
電源供給部21、パルスジェネレータ22の差動は前述の実施例と共通するものであるので説明を省略する。なお、前述の実施例においては、
図9に示すようにクロック部20が回路部14に設けられていたが、本実施例においては
図10に示すようにクロック部282としてデジタル処理部280内部のクロックが用いられている。具体的にはデジタル処理部280の内部に設けられたクロック部282から出力されるデジタル信号としてのクロック信号を第1DA変換部283を介してアナログデータに変換し、パルスジェネレータ22に供給する。なお、実施例6と同様に、クロック信号は磁気計測装置10以外から供給されてもよい。
【0062】
センサ36、38からの信号を処理するACカップル部224およびインスツルメンテーションアンプ228の差動も前述の実施例と同様であるため説明を省略する。インスツルメンテーションアンプ228の出力はACカップル部270に入力されカップリングが行われる。また、必要に応じてバンドパスフィルタにより、クロック信号の周波数に対応した所定周波数帯域の成分のみが通過させられる。
【0063】
ACカップル部270の出力はデジタル処理部280に入力され、第1AD変換部284においてデジタル信号に高速AD変換される。この第1AD変換部284には前述の第1DA変換部283を介してクロック部282からのクロック信号が供給されており、第1AD変換部284はこのクロック信号に同期して動作する。第1AD変換部284により変換されたデジタルデータは後述するデータ処理部286に伝達されて処理が行われるのに加え、例えば、図示しないデジタル処理部280内の記憶装置などに記憶されてもよいし、デジタル信号のまま他の機器のために出力されてもよい。
【0064】
データ処理部286においては、前記デジタル信号に変換されたセンサ36、38の出力信号の差分を連続的に積算し、ノイズを低下させる。そして、任意の位相(ディレイ時間)における振幅を検出する。この振幅が測定しようとする磁界に対応するものとなる。データ処理部286において処理されて得られたデータは、第2DA変換部288によりアナログ信号に変換され、図示しないモニタなどに出力される。
【0065】
図11は、本実施例の磁気計測装置10を用いて行った磁気の計測実験の結果を示す図である。磁気計測装置10として
図1に示すものを用い、センサ36、38としては
図8に示すものを用いた。また、パルスジェネレータ22からセンサ36、38の導線42、44に供給される励起電流Ieは幅100ns、振幅5Vのパルス状の100mAの電流とした。センサ36、38において、導線42、44とアモルファス材料46、48との距離はそれぞれ300μmとした。計測対象となる磁界として、センサ36、38およびその周囲に、約2m四方の3方向ヘルムホルツコイルを通じて微弱な正弦波状に変化する磁界を印加した。このときの磁気計測装置10のセンサ36、38のうち、いずれか一方のセンサ(例えば36)の出力の時間変化を示したのが
図11である。このように印加磁界と相同の正弦波出力が得られている。なお、本実験においては差動アンプ228においては増幅を行っておらず、
図11の縦軸はセンサ(例えば36)の出力電圧に対応している。
【0066】
本実施例にの磁気計測装置10によれば、前述の実施例6における磁気計測装置10と同様の効果が得られるのに加え、デジタル処理部280が用いられることから演算やデータの記録、出力がデジタルデータとして行うことができる。
【0067】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【0068】
例えば、前述の実施例では2つのセンサ36、38によってグラジオセンサを構成する磁気検出装置10の例を示したが、これに限られず、1つのセンサを用いることによって磁気測定を行うことも可能である。この場合、2つのセンサの出力を作動させることを前提として設けられた回路部14の構成部分、すなわち差動アンプ28などは設けられる必要はない。
【0069】
また、前述の実施例においては、パルスジェネレータ22がプローブ部12の導体部42、44に供給する電流は、方形波とされたが、これに限られない。例えば正弦波、のこぎり波、三角波、交流波など波形の形状を問わず、所定のパターンで反復的に変化するものであればよく、さらに、その所定のパターンが一定値だけ正または負方向にオフセットされた、直流成分が重畳されたものであってもよい。また、電流が反復的に変化する際の周期は一定である必要はなく、また、例えば方形波において高出力の時間と低出力の時間とが均等である必要はない。
【0070】
また、前述の実施例においては、磁性材料としてワイヤ状もしくはシート状のアモルファス材料46、48、146、246、346、446が用いられたが、磁気異方性を有する材料であればこれに限定されない。具体的には、磁気異方性を有する粒子を含有するイオン液体などのように、磁気異方性を有する液体を所定の容器に含むような構成とすることも可能である。さらに、アモルファス材料と上記イオン液体との複合物として設けることも可能である。
【0071】
また、前述の実施例においては、回路部14において、サンプルホールド回路24、26は、それぞれコイル50、52の起電力Ecoil1、Ecoil2の振幅のピーク(ピーク値)を検出するものとされたが、この際、コイル50、52の起電力Ecoil1、Ecoil2の出力は、図示しないバンドパスフィルタによりACカップリングされた後、サンプルホールド回路24、26に入力されるようにしてもよい。
【0072】
また、前述の実施例においては、導線42、44とアモルファス材料46、48との間は絶縁するものとされたが、必ずしも必須ではなく、これらが接触することにより、導線42、44を流れる電流のうち微小な成分がアモルファス材料46、48を流れることとなっても差し支えない。
【0073】
また、前述の実施例においてはソレノイド上のコイル50、52の内側に導体42、44、アモルファス材料46、48が設けられたが、これは必須の構成ではない。すなわち、コイル50、52は、アモルファス材料46、48における磁化の変化に基づいて起電力を生ずることができれば、実施例のような配置に限られず、例えば、ソレノイド状のコイル50、52の外側にアモルファス材料46、48および導体42、44、あるいはそれらの一方が設けられてもよい。
【0074】
また、前述の実施例3においては、円筒状のアモルファス材料246はシート状のアモルファス材料が巻かれることによって構成されたが、かかる方法に限られない。具体的には例えば、アモルファス材料の製造過程において引き延ばす際に円筒状あるいはチューブ状に引き延ばされたものがそのままアモルファス材料246として用いられてもよい。
【0075】
また、前述の実施例5においては、2つのセンサ36、38に共通するアモルファス材料446は一体により構成されても良いし、2以上の磁性体材料を磁気的に結合したものであってもよい。このとき、磁気回路的に直列に結合したものと同等なものであれば、それらが密着する必要がなく、それらの間に空間が介在していてもよい。
【0076】
また、前述の実施例5においては、アモルファス材料446は、その
長手方向に対して直角な直線を対称線として対称の形状を有していたが、これに限られず、例えばその
長手方向に対して直角な面を対称面として対称の形状を有していてもよい。すなわち、アモルファス材料446における磁界の分布が、
長手方向における中点に対して対象となるものであればよい。
【0077】
また、前述の実施例5においては、アモルファス材料446は一本のアモルファスワイヤとされたが、これに限られず、実施例2〜4のような構成であってもよい。すなわち、長手状のアモルファス材料(アモルファスワイヤ)446が一本でなく複数本であってもよいし、その断面形状が円に限られない。あるいは、長手状のアモルファス材料446に代えて、シート状のアモルファス材料を円筒状に巻き、あるいは、長手状のアモルファス材料をソレノイド状に巻いてコイル50、52を貫くようにしてもよい。
【0078】
また、前述の実施例6ではセンサプローブ212が磁気計測装置10の本体と分離されるとともに、回路部10の回路が実施例1のものとは異なるものとされたが、これに限られるものではなく、回路部10の構成は
図1のものと同様としつつセンサープローブ212を磁気計測装置10の本体と分離するようにしてもよい。逆に、実施例6あるいは7の回路部14を実施例1の回路部14と置き換えることも差し支えない。
【0079】
また、前述の実施例7においては、2つのセンサ36、38の出力信号はアナログ信号のままインスツルメンテーションアンプ228によって差分の算出および増幅が行われ、その後第1AD変換部284によりデジタル信号に変換されてデータ処理部286において処理が行われたが、このような態様に限定されるものではない。例えばセンサ36、38の出力信号がそれぞれ増幅アンプにより増幅された後、増幅された信号のそれぞれに対して設けられたAD変換部によりデジタル信号への変換が行われ、それらデジタル信号がデータ処理部286に入力される一方、データ処理部286における演算によりそれらデジタル信号の差分が算出されるようにしてもよい。
【0080】
また、前述の実施例7においては、データ処理部286の前述の作動に加えて、積算した時系列データをフーリエ変換することもできる。これにより、周波数ドメインでの対象ピークの振幅や面積からより正確な計算ができるほか、磁界変化以外の原因で見かけ上発生する時間ドメインでの信号変化も推定できる。
【0081】
また、前述の実施例7において、第1AD変換部284により励起電流の通電中および通電後のコイル起電力の少なくとも一部を高速AD変換して計測する場合には、回路部14にバンドパスフィルターを設け、通過させる帯域を調整することで回路部14を適度な共鳴・共振回路として使用すれば、センサ36、38の誘導起電力を効果的に検出することができる。すなわち、通電によって発生する直接の誘導起電力のピーク値だけでなく、通電後しばらくの間の共振波形が検出できるので、これをフーリエ変換し、この波形も含め周波数ドメインで対象とする周波数領域での信号強度を調整することで、磁気計測装置10の感度を向上することができる。
【0082】
また、前述の実施例において用いられたACカップル器224、260に代えて、DCカップル器が用いられてもよく、かかる場合においても同様の効果が得られる。