(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被除染物が収容されるチャンバの内部に所定量の除染蒸気を供給する供給工程と、当該供給工程の後でチャンバ内を換気して除染成分を除去する除去工程とが設定された除染処理方法において、
上記供給工程を複数回繰り返すとともに、これら供給工程と供給工程との間に、給気と排気とによりチャンバ内を換気してチャンバ内に生じた除染蒸気の凝縮液を蒸発させる乾燥工程を設定し、
当該乾燥工程は、上記除去工程よりも短時間であって、当該乾燥工程中は換気のための給排気量を調節することにより、チャンバ内の圧力を上記供給工程から低下させながらも陽圧に維持し、
さらに、当該乾燥工程から上記供給工程に移行する際に、給気によりチャンバ内の圧力を昇圧させる昇圧工程を設定したことを特徴とする除染処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような除染処理方法では、チャンバ内に供給した除染蒸気が被除染物の表面で凝縮してしまい、それ以降、除染蒸気の供給を繰り返しても被除染物の内部構造にまで十分に到達させることができず、特許文献2で除染の対象とするような複雑な形状を有する被除染物を十分に除染することができないという問題がある。
一方、特許文献2の除染処理方法では、減圧に対応可能なチャンバを用意しなければならず、また減圧することによってチャンバ外の空気がチャンバ内に流入して、外気中の細菌やウイルス等の微生物によって被除染物が汚染されてしまう恐れがあった。
このような問題に鑑み、本発明は複雑な形状を有する被除染物の除染を行うことが可能であるとともに、除染中にチャンバ内への細菌等の侵入を防止することが可能な除染処理装置および除染処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明にかかる除染処理装置は、被除染物が収容されるチャンバと、除染剤を蒸発させる加熱手段と、蒸発した除染蒸気をチャンバ内に送気する送気手段と、チャンバ内を
給気と排気とにより換気する給排気手段と、これらの作動を制御する制御手段とを備え、
上記制御手段に、上記加熱手段および送気手段を作動させて所定量の除染蒸気をチャンバ内に供給する供給工程と、当該供給工程の後で上記給排気手段を作動させて
、換気によりチャンバ内の除染成分を除去する除去工程とが設定された除染処理装置において、
上記給排気手段は、給気手段と排気手段とを備えて給排気量を調節可能に構成され、
上記制御手段は、上記供給工程を複数回繰り返すよう設定されるとともに、これら供給工程と供給工程との間に、上記給排気手段
を作動させてチャンバ内に生じた除染蒸気の凝縮液を
換気により蒸発させる乾燥工程が設定され、
当該乾燥工程は、上記除去工程よりも短時間であって、当該乾燥工程中は
上記給排気手段の給排気量を調節して
、チャンバ内
の圧力を上記供給工程から低下させながらも陽圧に維持
し、
さらに制御手段に、当該乾燥工程から上記供給工程に移行する際に、給気によりチャンバ内の圧力を昇圧させる昇圧工程が設定されていることを特徴としている。
【0006】
また
請求項2の発明にかかる除染処理方法は、被除染物が収容されるチャンバの内部に所定量の除染蒸気を供給する供給工程と、当該供給工程の後でチャンバ内を換気して除染成分を除去する除去工程とが設定された除染処理方法において、
上記供給工程を複数回繰り返すとともに、これら供給工程と供給工程との間に、
給気と排気とによりチャンバ内を換気してチャンバ内に生じた除染蒸気の凝縮液を蒸発させる乾燥工
程を設定し、
当該乾燥工程は、上記除去工程よりも短時間であって、当該乾燥工程中は換気のための給排気量を調節することにより
、チャンバ内
の圧力を上記供給工程から低下させながらも陽圧に維持
し、
さらに、当該乾燥工程から上記供給工程に移行する際に、給気によりチャンバ内の圧力を昇圧させる昇圧工程を設定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によれば、チャンバ内に除染蒸気を供給する供給工程と供給工程との間に乾燥工程を設けたことにより、当該乾燥工程においてチャンバ内に生じた除染蒸気の凝縮液を蒸発させるため、複雑な形状を有する被除染物の内部構造まで除染蒸気を到達させて除染することが可能となる。
そして、減圧工程を備えておらず、外部からの細菌等の侵入の恐れがない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図示実施例について説明すると、
図1は被除染物としての包装容器1を、除染蒸気としての過酸化水素蒸気によって細菌やウイルス等の微生物を除染処理する除染処理装置2を示している。
上記包装容器1は、注射器3を収容する透明な容器本体1aと、該容器本体1aの開口部を覆う蓋体1bとから構成されている。
上記容器本体1aはポリエチレンテレフタレートなどの細菌等が透過できない素材からなり、また透明であることから収納した注射器3を外部より目視することが可能となっている。
上記蓋体1bは細菌等の通過を防止しつつ、過酸化水素蒸気を含む気体は通過させる素材からなり、このような性質を有する素材として高密度のポリエチレン製のシートを用いることができる。具体的にはデュポン社製の「タイベック」(登録商標)が知られている。
このような包装容器1を上記除染処理装置2で除染処理すると、上記蓋体1bを介して包装容器1の内部に過酸化水素蒸気が浸透し、注射器3の表面が除染されるようになっている。
そして、その後包装容器1を除染処理されていない環境下に移動させても、上記蓋体1bにより細菌等の侵入が防止されるため、包装容器1の内部の無菌状態を維持することができる。
なおこのような包装容器1は従来公知であるのでこれ以上の詳細な説明は省略し、また本実施例では被除染物として、上記包装容器1のほか、シリンジを多数収納した包装容器や、複雑な内部構造を有する医療用のハンドピースなども除染処理することが可能である。
【0010】
除染処理装置2は、上記包装容器1を複数収容するチャンバ11と、当該チャンバ11の内部に所定量の過酸化水素蒸気を供給する除染蒸気供給手段12と、チャンバ11内を換気する給排気手段13とを備え、これらの作動は制御手段14によって制御されるようになっている。
上記チャンバ11はクリーンルーム内に設置され、包装容器1を搬出入するための図示しない扉と、チャンバ11内の圧力を測定する圧力センサ15と、天井に設けられた第1、第2フィルタ16、17とを備えている。
上記チャンバ11の内部は、給排気手段13によって陽圧に維持され、また上記扉を閉鎖することでチャンバ11の内部の気密が保たれるようになっている。
上記第1、第2フィルタ16、17はいわゆるHEPAフィルタとなっており、これらには上記除染蒸気供給手段12および給排気手段13が接続され、第1フィルタ16はチャンバ11内への給気側に、第2フィルタ17はチャンバ11からの排気側にそれぞれ配置されている。
【0011】
除染蒸気供給手段12は、流出側が上記第1フィルタ16に、流入側が第2フィルタ17に接続された循環通路21と、当該循環通路21に設けられたファン等の送気手段22と、当該送気手段22の下流側に設けられて除染剤としての過酸化水素水溶液を蒸発させる加熱手段としての蒸発器23とを備えている。
上記送気手段22は、上記循環通路21において気体を図示反時計回りに流通させ、送気された気体は上記第1フィルタ16よりチャンバ11内に供給され、またチャンバ11内の気体は第2フィルタ17より吸引されて送気手段22へと循環するようになっている。
また上記循環通路21における第2フィルタ17と上記送気手段22との間には分岐通路が形成されるとともに制御手段14によって制御される第1開閉弁24が設けられ、また上記蒸発器23と第1フィルタ16との間にも分岐通路が形成されるとともに制御手段14によって制御される第2開閉弁25および触媒26が設けられている。
上記第1開閉弁24を開放することで外気が取り込むことができ、また第2開閉弁25を開放することで循環する気体の一部を外部に放出することができることから、制御手段14はこれらの開閉を制御することにより給排気量を調節することができる。
【0012】
上記蒸発器23には、所定濃度の過酸化水素水溶液を貯溜するタンク27と、上記タンク27から所定量の過酸化水素水溶液を送液する送液ポンプ28とが配管29を介して接続されている。
蒸発器23の内部には上記送気手段22によって供給された気体が通過するようになっており、この蒸発器23で蒸発した所定量の過酸化水素蒸気はこの送気手段22によってチャンバ11へと供給されるようになっている。
上記タンク27には35重量%濃度の過酸化水素水溶液が貯溜され、上記送液ポンプ28はタンク27の過酸化水素水溶液を図示しない計量器によって計測しながら一回分を上記蒸発器23に滴下するようになっている。
そして上記蒸発器23に上記送液ポンプ28から過酸化水素水溶液が滴下されると、過酸化水素水溶液は瞬時に蒸発して過酸化水素蒸気となり、上記送気手段22によってチャンバ11の内部に供給されるようになっている。
【0013】
上記給排気手段13は、上記第1フィルタ16に接続された給気通路31と、第2フィルタ17に接続された排気通路32とを備え、給気通路31を介して外気をチャンバ11に供給し、チャンバ11内の気体を上記排気通路32を介して排出することにより、チャンバ11内を換気するようになっている。
上記給気通路31には、外気をチャンバ11へと供給する給気ブロア33と、制御手段14によってその開度が制御される第1調整弁34とが設けられており、また排気通路32には排気ブロア35と第2調整弁36とが設けられ、これら排気ブロア35と第2調整弁36との間には触媒37が設けられている。
上記給気通路31を介してチャンバ11内に供給される外気は、第1フィルタ16によって清浄にされ、またチャンバ11内の気体は第2フィルタ17を介して排気通路32より排出され、その際上記触媒37によって過酸化水素成分が分解されるようになっている。
そして上記構成を有する給排気手段13によれば、上記給気ブロア33および第1調整弁34による給気通路31からの給気量と、上記排気ブロア35および第2調整弁36による排気通路32からの排気量とを調整することで、給排気量を調節可能に構成され、チャンバ11内の圧力を可変制御することが可能となっている。
具体的には、制御手段14の制御により、上記給気通路31からの給気量を、上記排気通路32からの排気量よりも多めに設定することで、チャンバ11の内部を陽圧にすることができ、またこれらの差を増減することでチャンバ11内の圧力を増減することもできる。
そして、上記給気ブロア33および排気ブロア35は、ともに上記除染蒸気供給手段12の送気手段22よりも送風量が大きく、大風量で換気することが可能となっている。
【0014】
以下、
図2を用いて上記除染処理装置2を用いた包装容器1の除染処理方法を説明する。
図2において縦軸はチャンバ11内の圧力(Pa)を、横軸は時間経過を示している。
除染処理を行う際、チャンバ11の内部には予め複数の包装容器1が収容されており、また扉によってチャンバ11が密閉されている。このとき、包装容器1の蓋体1bがチャンバ11の内部に露出するように載置する。
本実施例では、従来の除染処理方法と同様、上記除染蒸気供給手段12により所定量の過酸化水素蒸気をチャンバ11内に供給する供給工程と、上記給排気手段13を作動させて過酸化水素成分を除去する除去工程とが制御手段14に設定されており、さらに本実施例では、供給工程を複数回繰り返すように供給工程S1、S3が設定されており、これら供給工程S1と供給工程S3との間に、チャンバ11内に生じた除染蒸気の凝縮液を蒸発させる乾燥工程S2が設定されるとともに、供給工程S3の後に除去工程S4を設定したものとなっている。
ここで、上記過酸化水素成分とは、包装容器1等に付着した過酸化水素蒸気が凝縮したものや、当該凝縮した過酸化水素蒸気の凝縮液が蒸発したものや、過酸化水素蒸気や凝縮液が被除染物に浸透したものをいう。
【0015】
上記供給工程S1について説明すると、この供給工程S1は、一回分に相当する所定量の過酸化水素蒸気をチャンバ11に供給してチャンバ11内の包装容器1および包装容器1内部の注射器3を除染する工程となっている。
そして本実施例の供給工程S1は、さらに細かく昇温工程S1a、蒸発工程S1b、保持工程S1cの各工程によって構成され、このうち上記昇温工程S1aは、上記蒸発器23および、循環通路21における蒸発器23からチャンバ11に至る部分を昇温させる工程となっている。
すなわち、供給工程S1を行う際、上記除染蒸気供給手段12が作動していないことから、上記蒸発器23および上記循環通路21における蒸発器23からチャンバ11に至る配管部分が十分に加熱されていない。
そこで、当該昇温工程S1aに続く蒸発工程S1bにおいて過酸化水素蒸気が上記配管内において凝縮してしまうことを防止するよう、この昇温工程S1aによって上記配管部分を予め加熱するものとなっている。
具体的に説明すると、制御手段14が上記送気手段22を作動させて空気を循環通路21に流通させ、当該送気手段22による風量が所定風量に達したら、上記送液ポンプ28を停止したまま上記蒸発器23を作動させる。
これにより、蒸発器23では過酸化水素蒸気を発生させずに、上記送気手段22によって送気された空気だけが加熱され、当該加熱された空気が循環通路21を流通しながら、上記循環通路21における蒸発器23からチャンバ11に至る配管部分を加熱するようになっている。
【0016】
また上記昇温工程S1aでは、制御手段14が上記循環通路21に設けた送気手段22の上流側に位置する第1開閉弁24を開放し、これによりチャンバ11内へと外気を追加供給するようになっている。
その結果、チャンバ11内は供給された外気によって徐々に加圧され、その後上記圧力センサ15が所定の陽圧に達したことを検出すると、制御手段14は蒸発器23の下流側の第2開閉弁25を開放して循環通路21を流通する空気の一部を排出し、外気の流入量と排出量とを調節することで、チャンバ11内を所定の陽圧に維持する。
なお昇温工程S1aでは、上記給排気手段13の給気ブロア33および排気ブロア35は停止され、上記除染蒸気供給手段12の送気手段22だけが作動するようになっており、当該送気手段22の作動によってチャンバ11内を陽圧に維持するようになっている。
そして上記昇温工程S1aは、蒸発器23からチャンバ11に至る循環通路21の温度が所定温度に達し、かつチャンバ11内が所定の陽圧に制御されるまで継続され、例えば20分間継続される。
【0017】
上記供給工程S1における昇温工程S1aに続く蒸発工程S1bは、上記除染蒸気供給手段12において過酸化水素蒸気を蒸発させて、所定量の過酸化水素蒸気をチャンバ11に供給する工程となっている。
具体的には、上記制御手段14が上記除染蒸気供給手段12の送液ポンプ28が過酸化水素水溶液を計量しながら所定量を蒸発器23に滴下し、これにより所定量の過酸化水素蒸気を発生させる。過酸化水素蒸気が循環通路21を流通してチャンバ11内に供給されると、急激に圧力が上昇することとなる。
しかしながら、過酸化水素蒸気がチャンバ11に飽和状態となるまで供給されると、チャンバ11の内壁や包装容器1の表面で過酸化水素蒸気が凝縮し、チャンバ11の圧力が徐々に低下することとなる。
一方、制御手段14は上記圧力センサ15を監視しながら、圧力の変動に応じて上記送気手段22および循環通路21の第1、第2開閉弁24、25を制御することで、チャンバ11内を所定圧力範囲の陽圧に維持するようになっている。なお上記第2開閉弁25を介して排出される過酸化水素蒸気は上記触媒26によって分解されるようになっている。
この蒸発工程S1bは例えば16分間継続される。
【0018】
上記供給工程S1における蒸発工程S1bに続く保持工程S1cは、過酸化水素蒸気がチャンバ11内に充満した状態を維持する工程となっている。
具体的には、上記蒸発工程S1bの状態から、上記制御手段14は上記送液ポンプ28を停止させるとともに蒸発器23の加熱を停止して過酸化水素蒸気の供給を停止させ、一方、上記送気手段22の作動は継続させて循環通路21の第1、第2開閉弁24、25を制御して、チャンバ11内を陽圧に維持する。
この間に、上記蒸発工程S1bで供給された過酸化水素蒸気の除染作用が十分に発揮される。
この保持工程S1cは例えば30分間継続される。
なお、一回目の供給工程S1が終了し、当該一回分の除染蒸気の供給で十分な除染効果が得られる場合には、続いて除染成分を除去する除去工程に移行することができる。
しかしながら、本実施例のような包装容器1のように、除染効果が十分に作用しない被除染物を除染する場合には、供給工程を複数回繰り返す必要があり、その際本実施例では一回目の供給工程S1と二回目の供給工程S3との間に乾燥工程S2を実行するようになっている。
【0019】
この乾燥工程S2では、給排気手段13を作動させてチャンバ11内を換気し、チャンバ11の内部や包装容器1の表面に付着した凝縮液を蒸発させるようになっている。
そして本実施例の乾燥工程S2は、低速エアレーション工程S2aと、高速エアレーション工程S2bと、昇圧工程S2cとから構成されている。
まず上記低速エアレーション工程S2aでは、上記供給工程S1の保持工程S1cから継続して、上記除染除染蒸気供給手段12における上記送気手段22および第1、第2開閉弁24、25による陽圧制御が維持されており、この状態から上記給排気手段13を構成する給気通路31の給気ブロア33を低速運転で作動させ、その後さらに第1調整弁34を開放して、給気通路31よりチャンバ11内に外気を供給する。
そして上記給気ブロア33が低速エアレーションとしての所定風量に到達したら、上記給排気手段13を構成する排気通路32の第2調整弁36を開放するとともに排気ブロア35も低速エアレーションとしての低速運転による所定風量で作動させ、チャンバ11内の気体を外部に排出する。
制御手段14は、上記給気ブロア33および第1調整弁34による給気通路31からの給気量と、上記排気ブロア35および第2調整弁36による排気通路32からの排気量とを調節して、チャンバ11内を陽圧に維持するが、換気効率を上げるために積極的に排気を行うことから、
チャンバ11内の圧力は低下することとなる。
このように、上記低速エアレーション工程S2aでは、上記除染蒸気供給手段12の送気手段22と、上記給排気手段13の給気ブロア33および排気ブロア35との作動を重複させており、これによりチャンバ11内の陽圧を確実に維持するようになっている。
そしてこの低速エアレーション工程S2aは例えば10分継続される。
【0020】
上記低速エアレーション工程S2aによってチャンバ11内の陽圧が確実に維持されたら、上記高速エアレーション工程S2bへと移行する。
制御手段14は、高速エアレーション工程S2bでは、給気ブロア33および排気ブロア35を高速運転させて、低速エアレーション工程S2aよりも大風量で大量に換気を行うとともに、給気量と排気量とを調節することで陽圧に維持するようになっている。なお、風圧によりチャンバ1内の圧力は若干上昇する。
そしてこの高速エアレーション工程S2bは例えば20分間継続される。
以上のように、上記乾燥工程S2では上記除染蒸気供給手段12の送気手段22よりも風量の大きい給気ブロア33および排気ブロア35を使用してチャンバ11の換気を行うことで、速やかに凝縮液を蒸発させることができる。
なお、この乾燥工程S2での換気は、チャンバ11の内部表面および包装容器1に収容された注射器3等の表面に付着した凝縮液を除去できればよいため、後で行う除去工程S4よりも短時間に設定されている。
【0021】
上記乾燥工程S2の高速エアレーション工程S2bに続く昇圧工程S2cは、さらに後に続く供給工程S3の昇温工程S3aのために、チャンバ11内を昇圧する工程となっている。
具体的には、高速エアレーション工程S2bが終了したら、制御手段14が上記給気通路31の給気ブロア33および第1調整弁34を制御して、給気通路31より最低風量で給気を行い、かつ排気通路32では排気ブロア35を停止させるとともに第2調整弁36を閉鎖して排気を停止させる。
これにより、排気が停止されて給気のみが行われ、チャンバ11内が加圧されることとなり、この昇圧工程S2cはチャンバ11内が所定の陽圧に達するまで行われる。
このように、上記乾燥工程S2に昇圧工程S2cを設定して、予め上記給気ブロア33の風量を送気手段22の風量に近似させるとともに、チャンバ11内を所定圧力まで加圧してから、上記供給工程S3へと移行するようにすることで、切り換わりによる急激な圧力変動の発生を回避するようになっている。
【0022】
上記乾燥工程S2が終了したら、制御手段14は二回目の供給工程S3を行い、一回目の供給工程S1と同様、所定量の過酸化水素蒸気をチャンバ11に供給してチャンバ11内の包装容器1および包装容器1内部の注射器3を除染する工程となっている。
供給工程S3も、一回目の供給工程S1と同様、昇温工程S3a、蒸発工程S3b、保持工程S3cによって構成され、これらはそれぞれ昇温工程S1a、蒸発工程S1b、保持工程S1cと同様の動作が行われるため、詳細な説明については省略する。
ただし、二回目の昇温工程S3aでは、すでに除染媒体供給手段12の循環通路21はそれまでの工程で温度が上昇していることから、一回目の昇温工程S1aよりも短時間で行うことが可能であり、この昇温工程S3aは例えば5分間に設定されている。
そして昇温工程S3aに続く上記蒸発工程S3bおよび保持工程S3cは、一回目の供給工程S1における蒸発工程S1bおよび保持工程S1cと同様、16分間および30分間にそれぞれ設定されている。
また
図2に示すように、この二回目の供給工程S3の蒸発工程S3bでは、チャンバ11内の温度も一回目より高いため、過酸化水素蒸気が急に凝縮せず圧力は一回目よりも上昇するものの、凝縮が発生することにより下降する。
そして保持工程S3cでは、圧力センサ15が圧力の設定下限値を検出すると、制御手段14が上記第1開閉弁24は開放し第2開閉弁25は閉鎖した状態として、チャンバ11内を加圧し、その後圧力が上昇して設定上限値が検出されると、第2開閉弁25を開放してチャンバ11内を減圧するように圧力を制御する。
【0023】
本実施例のように、供給工程S1、S3を複数回繰り返して実行するとともに、供給工程S1と供給工程S3との間に乾燥工程S2を実行することで、包装容器1の内部に収容された注射器3のような、複雑な内部構造を有する被除染物を除染することが可能となっている。
すなわち、過酸化水素水溶液を蒸気化した過酸化水素蒸気は、蒸気状態で除染対象に触れることで、水よりも先に過酸化水素成分が凝縮して高濃度で作用するため、高い除染効果が得ることができる。
しかしながら、被除染物の表面が凝縮液で濡れた状態となると、蒸気状態で維持させることができずに急激に凝縮が進行するため、除染効果が頭打ちとなる。
特に、本実施例のように包装容器1の内部の注射器3を除染する場合のように、複雑な形状を有する被除染物の内部構造まで除染しようとしても、過酸化水素蒸気が内部構造まで到達しないという問題がある。
そこで、本実施例における上記乾燥工程S2を設定することにより、チャンバ11の内部や被除染物の表面の凝縮液を蒸発させ、二回目の供給工程S3を行うことによって除染蒸気の供給を繰り返し、被除染物の内部構造まで過酸化水素蒸気を到達させて除染するようになっている。
【0024】
上記供給工程S3に続く除去工程S4は、上記給排気手段13による換気によって、チャンバ11内の過酸化水素成分を除去する工程となっており、低速エアレーション工程S4aおよび高速エアレーション工程S4bとから構成されている。
上記低速エアレーション工程S4aは、上記乾燥工程S2における低速エアレーション工程S2aと同様の動作が行われ、供給工程3Sに継続して作動する除染蒸気供給手段12の送気手段22と上記給排気手段13とが重複して作動して、チャンバ11内を陽圧に維持したまま、供給工程S3から除去工程S4へと移行させるようになっている。
この低速エアレーション工程S4aも乾燥工程S2の低速エアレーション工程S2aと同様、10分間に設定されている。
その後の高速エアレーション工程S4bは、乾燥工程S2における高速エアレーション工程S2bと同様、上記給排気手段13だけが動作するようになっている。
そして、この高速エアレーション工程S2bは、チャンバ11内の過酸化水素成分を除去するため、上記乾燥工程S2よりも十分に長い410分間に設定されている。
この除去工程S4を行うことにより、チャンバ11内の過酸化水素成分を除去することができ、特に包装容器1に収容された注射器3の内部構造に付着し、また素材に浸透している過酸化水素成分も蒸発されて排出されるようになっている。
【0025】
なお、上記実施例では上記乾燥工程S2および二回目の供給工程S3をそれぞれ一回ずつ行っているが、対象とする被除染物に応じてこれを1セットとして二回以上繰り返し、最後に上記除去工程S4を行うようにしてもよい。