特許第6281714号(P6281714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6281714遠心ファン及び遠心ファンを備えた空気調和機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281714
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】遠心ファン及び遠心ファンを備えた空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20180208BHJP
   F04D 29/62 20060101ALI20180208BHJP
   F24F 1/00 20110101ALI20180208BHJP
【FI】
   F04D29/28 J
   F04D29/62 C
   F24F1/00 306
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-7187(P2016-7187)
(22)【出願日】2016年1月18日
(65)【公開番号】特開2017-129025(P2017-129025A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柏原 貴士
(72)【発明者】
【氏名】山崎 登博
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−220389(JP,A)
【文献】 特開2015−086827(JP,A)
【文献】 特開2002−240105(JP,A)
【文献】 特開2014−009788(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/054175(WO,A1)
【文献】 特開2014−077380(JP,A)
【文献】 特開2008−215324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/28
F04D 29/62
F24F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型を用いて樹脂により成形され、回転軸線(O)方向から見て環状の主板(60)と、
前記主板の主面(63)に連結され、前記回転軸線周りに環状に配置される複数の翼(70)と、
を備え、
前記主板は、成形時に樹脂を注入される部分である複数のゲート(68)と、対応する前記ゲートに注入された樹脂の流路として機能する部分である複数のフローリーダ(69)と、を含み、
各前記フローリーダは、前記回転軸線方向から見て、対応する前記ゲートから最も近い前記翼の中央部分(70a)まで延びる、
遠心ファン(4)。
【請求項2】
各前記フローリーダは、他の前記フローリーダとともに放射状を呈するように前記主板の内側から外側に向かって延び、
前記ゲートは、前記回転軸線方向から見て、対応する前記フローリーダの中央付近に位置する、
請求項1に記載の遠心ファン(4)。
【請求項3】
前記翼の前記中央部分は、前記回転軸線方向から見て、前記翼の重心と重畳する部分である、
請求項1又は2に記載の遠心ファン(4)。
【請求項4】
ターボファンである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の遠心ファン(4)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の遠心ファン(4)を備えた、
空気調和機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ファン及び遠心ファンを備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1(特開2010−216486号公報)に開示されるように、空気調和機等において、空気流を生成するための送風機として遠心ファンが用いられている。遠心ファンを構成する羽根車は、主として、回転軸線周りに環状に配置される複数の翼と、翼の回転軸線方向側の両端部である2つの翼軸端部を挟んで対向して配置される主板及びシュラウドと、を有している。
【0003】
特許文献1では、主板と翼とが樹脂で一体成形されており、成形時に樹脂が注入される樹脂注入口及び樹脂注入口から注入された樹脂の流路であるフローリーダが、主板に形成されている。フローリーダは、他の部分よりも肉厚が大きいリブとして成形されるため、主板の強度向上の役割も担っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、遠心ファンの運転時には、モータに連動して回転する翼に遠心力が作用するため、主板において翼との接続部分と連続する部分において応力が生じ、係る部分に亀裂等が生じ破損することが想定される。また、輸送時等に、回転軸に平行な方向に対する衝撃が付加された場合にも、係る部分において破損が生じることも考えられる。
【0005】
この点、特許文献1の遠心ファンでは、中空構造の翼が主板と一体成形されており、回転軸線方向から見た場合、主板の強度向上の役割を担うフローリーダが翼の外郭部分を囲うように形成されている。すなわち、主板において、回転軸線方向から見て翼の中央部分と重畳する部分の肉厚は、他の部分と比較して特に大きく構成されていない。つまり、特許文献1では、主板において、運転時等に応力が大きく生じると想定される部分の強度が十分に確保されないことが考えられる。
【0006】
このことから、特許文献1の遠心ファンでは、運転時や運搬時等に荷重がかかった場合に、係る部分が破損する事態が生じうる。つまり、主板の強度が十分に確保されておらず信頼性が十分に確保されていない。
【0007】
一方で、強度を向上させるために主板の大部分において肉厚を大きくすると、成形時に使用される樹脂量が増大し、製造に係るコスト増大を招く。
【0008】
そこで、本発明の課題は、コスト増大を抑制しつつ信頼性に優れる遠心ファン、又は係る遠心ファンを備えた空気調和機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1観点に係る遠心ファンは、主板と、複数の翼と、を備える。主板は、成形型を用いて樹脂により成形される。主板は、回転軸線方向から見て環状である。複数の翼は、主板の主面に連結される。複数の翼は、回転軸線周りに環状に配置される。主板は、複数のゲートと、複数のフローリーダと、を含む。ゲートは、成形時に樹脂を注入される部分である。フローリーダは、対応するゲートに注入された樹脂の流路として機能する部分である。各フローリーダは、回転軸線方向から見て、対応するゲートから最も近い翼の中央部分まで延びる。
【0010】
本発明の第1観点に係る遠心ファンでは、各フローリーダは、回転軸線方向から見て、対応するゲートから最も近い翼の中央部分まで延びる。これにより、主板において、回転軸線方向から見て翼の中央部分と重畳する部分の肉厚が他の部分と比較して大きく構成される。その結果、主板において、運転時等に応力が大きく生じると想定される、回転軸線方向から見て翼の中央部分と重畳する部分の強度が向上する。このことから、運転時や運搬時等に荷重がかかった場合に、係る部分の破損が抑制される。
【0011】
また、主板において、運転時等に応力が大きく生じると想定される部分に限って、強度を高めることが可能となる。すなわち、強度向上の観点から肉厚を大きく構成する必要のない部分に関しては肉厚を小さく構成することが可能である。よって、成形時に使用される樹脂量を抑制しコスト増加を抑制することが可能となる。
【0012】
したがって、コスト増大が抑制されつつ、主板の強度が向上し信頼性が向上する。
【0013】
なお、ここでの「翼の中央部分」は、回転軸線方向から見て翼の外郭より内側と重畳する部分、特に翼の重心と重畳する部分又は翼の重心の周囲の部分を指す。
【0014】
また、ここでの「遠心ファン」には、例えばターボファンやシロッコファンが含まれる。
【0015】
本発明の第2観点に係る遠心ファンは、第1観点に係る遠心ファンであって、各フローリーダは、他のフローリーダとともに放射状を呈するように、主板の内側から外側に向かって延びる。ゲートは、回転軸線方向から見て、対応するフローリーダの中央付近に位置する。
【0016】
これにより、ゲートがフローリーダの中央付近外に配置される場合と比較して、樹脂がフローリーダ全体に均一に流れやすくなり、成形性が向上する。
【0017】
なお、ここでの「フローリーダの中央付近」は、回転軸線方向から見て、フローリーダの内側端部及び外側端部よりも、両端部間の中間位置に近い部分を指す。
【0018】
本発明の第3観点に係る遠心ファンは、第1観点又は第2観点に係る遠心ファンであって、翼の中央部分は、回転軸線方向から見て、翼の重心と重畳する部分である。
【0019】
これにより、主板において、回転軸線方向から見て翼の重心と重畳する部分の肉厚が他の部分と比較して大きく構成される。その結果、主板において、運転時等に応力が特に大きく生じると想定される、回転軸線方向から見て翼の重心と重畳する部分の強度が向上する。このことから、運転時や運搬時等に荷重がかかった場合に、係る部分の破損が抑制される。
【0020】
また、主板において、運転時等に応力が特に大きく生じると想定される部分に限って、強度を高めることが可能となる。よって、成形時に使用される樹脂量をさらに抑制することが可能である。
【0021】
よって、コスト増加がさらに抑制され主板の強度がさらに向上し信頼性がさらに向上する。
【0022】
本発明の第4観点に係る遠心ファンは、第1観点から第3観点のいずれかに係る遠心ファンであって、ターボファンである。
【0023】
これにより、空気調和機等において一般的に使用されるターボファンにおいて、コスト増大が抑制されつつ、主板の強度が向上し信頼性が向上する。
【0024】
本発明の第5観点に係る空気調和機は、第1観点から第4観点のいずれかに係る遠心ファンを備える。これにより、空気調和機において、コスト増大が抑制されつつ信頼性が向上する。
【0025】
なお、ここでの「空気調和機」には、エアコンの室内ユニット、室外ユニット、空気清浄機、換気装置、及び除湿機等、対象空間に設置され空気調和を行う各種装置が含まれる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の第1観点に係る遠心ファンでは、主板において、運転時等に応力が大きく生じると想定される、回転軸線方向から見て翼の中央部分と重畳する部分の強度が向上する。このことから、運転時や運搬時等に荷重がかかった場合に、係る部分の破損が抑制される。また、強度向上の観点から肉厚を大きく構成する必要のない部分に関しては肉厚を小さく構成することが可能である。よって、成形時に使用される樹脂量を抑制しコスト増加を抑制することが可能となる。したがって、コスト増大が抑制されつつ、主板の強度が向上し信頼性が向上する。
【0027】
本発明の第2観点に係る遠心ファンでは、ゲートがフローリーダの中央付近外に配置される場合と比較して、樹脂がフローリーダ全体に均一に流れやすくなり、成形性が向上する。
【0028】
本発明の第3観点に係る遠心ファンでは、主板において、運転時等に応力が特に大きく生じると想定される、回転軸線方向から見て翼の重心と重畳する部分の強度が向上する。このことから、運転時や運搬時等に荷重がかかった場合に、係る部分の破損が抑制される。また、主板において、運転時等に応力が特に大きく生じると想定される部分に限って、強度を高めることが可能となる。よって、成形時に使用される樹脂量をさらに抑制することが可能である。
【0029】
本発明の第4観点に係る遠心ファンでは、空気調和機等において一般的に使用されるターボファンにおいて、コスト増大が抑制されつつ、主板の強度が向上し信頼性が向上する。
【0030】
本発明の第5観点に係る空気調和機では、空気調和機において、コスト増大が抑制されつつ信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る空調室内機の外観斜視図(天井については図示省略)。
図2】空調室内機の側面断面を示した概略図。
図3】本発明の一実施形態に係る遠心ファンの羽根車の外観斜視図。
図4図3のA矢視図。
図5図3のB矢視図。
図6図4の一点鎖線で囲われた部分Cを拡大した図。
図7図5の一点鎖線で囲われた部分Dを拡大した図。
図8図6及び図7のVIII−VIII線断面を示す図。
図9図7のIX−IX線断面及びIX´−IX´線断面を示す図。
図10図7のX−X線断面及びX´−X´線断面を示す図。
図11図7の一点鎖線で囲われた部分Eを正圧面側から見た拡大断面図。
図12図6のXII−XII線断面を示す図。
図13】ブレード内の空間において流入した空気が旋回する様子を示した模式図。
図14図3の二点鎖線XIV部分の拡大図。
図15図14の二点鎖線XV部分の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態に係る遠心ファン4及び空調室内機1(空気調和機)について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0033】
(1)空調室内機1
図1は、本発明の一実施形態に係る空調室内機1の外観斜視図である(天井C1については図示省略)。図2は、空調室内機1の側面断面を示した概略図である。
【0034】
空調室内機1は、ここでは、天井埋込型の空気調和装置であり、主として、内部に各種構成機器を収納するケーシング2と、ケーシング2の下側に配置された化粧パネル3と、を有している。なお、空調室内機1は、天井設置型のものに限定されず他の型式であってもよく、例えば、天井C1に埋め込まれずに吊り下げられる天吊型、床面上に載置して設置される床置型、又は内壁に固定されて設置される壁掛型等であってもよい。
【0035】
空調室内機1のケーシング2は、下面が開口した箱状の部材である。ケーシング2は、図2に示されるように、空調室内機1が設置される対象空間SP1の天井C1に形成された開口に挿入されて設置されている。
【0036】
化粧パネル3は、天井C1の開口に嵌め込まれるように設置されている。化粧パネル3には、対象空間SP1の空気をケーシング2に吸入するための吸入口3aが中央部分に形成され、ケーシング2から対象空間SP1に空気を吹き出すための吹出口3bが吸入口3aの外周を囲むように形成されている。
【0037】
空調室内機1は、ケーシング2内に、主として、化粧パネル3の吸入口3aを通じて対象空間SP1の空気をケーシング2内に吸入して外周方向に吹き出す遠心ファン4と、遠心ファン4の外周を囲む熱交換器5と、吸入口3aから吸入される空気を遠心ファン4に案内するためのベルマウス6と、を有している。
【0038】
本実施形態において、遠心ファン4は、回転軸線方向から見た主板の径に対する翼の翼長の割合がシロッコファンよりも大きいターボファンである。遠心ファン4は、ケーシング2の天板2aの略中央に設けられたファンモータ7と、ファンモータ7に連結されて回転駆動される羽根車8と、を有している。
【0039】
(2)遠心ファン4の羽根車8の構成
図3は、本発明の一実施形態に係る遠心ファン4の羽根車8の外観斜視図である。図4は、図3のA矢視図である。図5は、図3のB矢視図である。図6は、図4の一点鎖線で囲われた部分Cを拡大した図である。図7は、図5の一点鎖線で囲われた部分Dを拡大した図である。図8は、図6及び図7のVIII−VIII線断面を示す図である。図9は、図7のIX−IX線断面及びIX´−IX´線断面を示す図である。図10は、図7のX−X線断面及びX´−X´線断面を示す図である。図11は、図7の一点鎖線で囲われた部分Eを正圧面側から見た拡大断面図である。図12は、図6のXII−XII線断面を示す図である。なお、図4及び図5における矢印「R」は、羽根車8の回転方向を示している。また、図4から図7においてハッチング部分「70a」は、ブレード70の重心を示している。
【0040】
羽根車8は、主として、ファンモータ7に連結される主板60と、主板60のファンモータ7とは反対側において回転軸線O周りに環状に配置された複数(ここでは、7枚)のブレード70(翼)と、複数のブレード70を挟むように主板60と対向して配置された環状のシュラウド80と、を有している。
【0041】
(2−1)主板60
主板60は、成形型を用いて成形される樹脂製の板状部材である。なお、主板60を構成する樹脂素材は、例えばABSやASG等の熱可塑性樹脂が用いられるが、その他の樹脂を用いて構成されてもよい。
【0042】
主板60は、その中央部に、ハブ部61が設けられている。ハブ部61は、吸入口3a側に向かって突出する略円錐形状の部位である。主板60は、回転軸線Oに交差する方向から見てハット状を呈しており、回転軸線O方向から見て環状を呈している。
【0043】
主板60のハブ部61には、ファンモータ7を冷却する空気を取り入れる冷却用空気孔62が複数(ここでは、3個)形成されている(図5参照)。冷却用空気孔62は、主板60の同心円上に並んで配置されている。なお、冷却用空気孔62の数は設計仕様に応じて適宜変更が可能である。
【0044】
主板60は、ブレード70側の主面(シュラウド80に対向する面)であるブレード側主板面63と、ブレード側主板面63の回転軸線O方向の反対側の主面である反ブレード側主板面64と、を有している(図8及び図9参照)。
【0045】
(2−2)ブレード70
ブレード70は、主板60及びシュラウド80とは別に成形型を用いて成形された樹脂製の部材である。ブレード70を構成する樹脂素材は、特に限定されるものではないが、ここでは主板60やシュラウド80と同じ樹脂素材が使用されている。ブレード70の回転軸線O方向側の一端部は、主板60に対向して配置される主板側ブレード軸端部71であり、主板60に固定(連結)されている。ブレード70の回転軸線O方向側の他端部は、シュラウド80に対向して配置されるシュラウド側ブレード軸端部72であり、シュラウド80に固定(連結)されている。
【0046】
ブレード70は、羽根車8を回転軸線O方向に沿って見た際に、主板側ブレード軸端部71がシュラウド側ブレード軸端部72よりも後傾した翼形状を有しており、主板側ブレード軸端部71及びシュラウド側ブレード軸端部72同士が交差するように成形されている。つまり、ブレード70は、主板60とシュラウド80との間をねじれながら回転軸線O方向に延びる三次元翼形状を呈している。
【0047】
ブレード70は、中空構造を有している。より詳細には、ブレード70は、ブレード本体73と、ブレード蓋体74と、が合体されることにより構成されており、内部に中空の空間Sを形成されている(図8及び図9参照)。このように中空に構成されることで、ブレード70は軽量化が図られている。なお、ブレード70の中空化は、2つの部材(ブレード本体73及びブレード蓋体74)の嵌め込み構造によるものではなく、ブロー成形等によるものであってもよい。
【0048】
(2−3)シュラウド80
シュラウド80は、その外周部から中央部の開口に向かうにつれて吸入口3a側に湾曲しながら突出するベル形状の樹脂製の部材である。シュラウド80を構成する樹脂素材は、特に限定されるものではないが、ここでは、主板60と同じ樹脂素材が使用されている。ここでは、シュラウド80のベル形状をなす部分をシュラウド曲板部81と称する。
【0049】
シュラウド80は、ブレード70側の面(すなわち主板60に対向する面)であるブレード側シュラウド面84と、ブレード側シュラウド面84の回転軸線O方向の反対側の面である反ブレード側シュラウド面85と、を有している(図8及び図12参照)。
【0050】
(2−4)主板60とブレード70の接続態様
ブレード70の主板側ブレード軸端部71の主板60への固定(連結)は、主板側ブレード軸端部71と主板60との相互間を溶着させることによって行われる。
【0051】
主板60及びブレード70には、主板60と主板側ブレード軸端部71との溶着部分である第1主板側溶着部8a及び第2主板側溶着部8bが設けられている(図7参照)。第1主板側溶着部8aは、主板側ブレード軸端部71の翼長方向の翼後縁寄りの部分に対応して配置されている。第2主板側溶着部8bは、主板側ブレード軸端部71の翼長方向の翼前縁寄りの部分に対応して配置されている。
【0052】
第1主板側溶着部8a及び第2主板側溶着部8bにはそれぞれ、主板60を貫通して主板側ブレード軸端部71の一部まで達する凹みである主板側溶着穴8dが形成されている(図7参照)。主板側溶着穴8dは、第1主板側溶着部8a及び第2主板側溶着部8bのそれぞれに対して、主板側ブレード軸端部71の翼長方向に沿って複数個(ここでは、3個)ずつ形成されている。なお、主板60及びブレード70には、第1主板側溶着部8a及び第2主板側溶着部8b以外にも主板側ブレード軸端部71と主板60との溶着部分が構成されてもよい。また、主板側溶着穴8dの個数は、3個に限定されるものではなく、設計仕様に応じて適宜変更が可能である。
【0053】
主板60の反ブレード側主板面64には、主板側ブレード軸端部71に対応して凸状のリブ651が形成されている(図8図10参照)。主板60において、リブ651(すなわち、主板60の主板側ブレード軸端部71に対応する部分)の厚み(板厚)t1は、その周囲の薄肉部652の厚みt2よりも大きい。なお、第1主板側溶着部8a及び第2主板側溶着部8bは、薄肉部652に配置されている。
【0054】
主板側ブレード軸端部71には、第1主板側溶着部8aよりもブレード70の翼後縁側の部分に、主板側ブレード軸端部71と主板60との間に隙間を確保するための非溶着部8fが形成されている(図11参照)。
【0055】
また、主板60の主板側ブレード軸端部71に対向する部分には、主板60のブレード側主板面63からシュラウド80側に向かって突出する主板突起67が形成されている(図6図7及び図9参照)。ブレード70の主板側ブレード軸端部71には、主板突起67に挿入可能な主板側ブレード孔75が形成されている。
【0056】
ここでは、主板突起67及び主板側ブレード孔75は2組あり、一方は第2主板側溶着部8bよりもブレード70の翼前縁側の部分に配置され、他方は第1主板側溶着部8aと第2主板側溶着部8bとの翼長方向間の部分に配置されている。すなわち、主板突起67及び主板側ブレード孔75によって、主板60の所定位置にブレード70が位置決めされるようになっている。なお、主板突起67及び主板側ブレード孔75の組数は2組に限定されるものではない。
【0057】
(2−5)シュラウド80とブレード70の接続態様
ブレード70のシュラウド側ブレード軸端部72のシュラウド80への固定(連結)は、主板側ブレード軸端部71の主板60への固定と同様に、シュラウド側ブレード軸端部72とシュラウド80との相互間を溶着させることによって行われ、その溶着部分がシュラウド側溶着部8cを構成している。シュラウド側溶着部8cには、第1主板側溶着部8a及び第2主板側溶着部8bと同様に、シュラウド80を貫通してシュラウド側ブレード軸端部72まで達する凹みであるシュラウド側溶着穴8eが形成されている(図6及び図12参照)。
【0058】
シュラウド側溶着穴8eは、シュラウド側ブレード軸端部72の翼長方向に沿って複数個(ここでは、3個)形成されている。なお、ブレード70及びシュラウド80には、シュラウド側溶着部8c以外にもシュラウド80との溶着部分が構成されてもよい。また、シュラウド側溶着穴8eの個数は、3個に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0059】
シュラウド80には、シュラウド側ブレード軸端部72に対応して平板状のシュラウド平板部82が構成されており、シュラウド側溶着部8cがシュラウド平板部82に配置されている。すなわち、シュラウド80の大部分は、ベル形状をなすシュラウド曲板部81によって構成されているところ、シュラウド曲板部81のうちシュラウド側ブレード軸端部72に対応する部分に回転軸線O方向に垂直な平板形状のシュラウド平板部82が形成されている。
【0060】
ブレード70のシュラウド側ブレード軸端部72には、シュラウド平板部82に対応して回転軸線O方向に垂直なシュラウド側ブレード平板部76が形成されている。係るシュラウド側ブレード平板部76とシュラウド平板部82とが回転軸線O方向に重なるとともに、この重なり部分において、シュラウド側溶着穴8eがシュラウド平板部82を貫通してシュラウド側ブレード平板部76まで達するように形成されている。
【0061】
ここでは、シュラウド平板部82は、シュラウド側ブレード軸端部72の翼長方向の中央付近に対応するように配置されている。このため、シュラウド側ブレード平板部76もシュラウド側ブレード軸端部72の翼長方向の中央付近に配置されている。
【0062】
また、シュラウド平板部82は、第1主板側溶着部8aの回転軸線O方向に対向して配置されている。すなわち、シュラウド平板部82は、第1主板側溶着部8aを回転軸線O方向に沿って見た際に、シュラウド平板部82のシュラウド側ブレード軸端部72と回転軸線O方向に重なる部分のうち、第1主板側溶着部8aに最も近い位置、ここでは、シュラウド側ブレード軸端部72の翼長方向の中央付近に対応する位置に配置されている。
【0063】
なお、ここでは、シュラウド平板部82を第1主板側溶着部8aの回転軸線O方向に対向して配置しているが、これに限定されず、第1主板側溶着部8a及び第2主板側溶着部8bの配置に応じて、第2主板側溶着部8bの回転軸線O方向に対向して配置してもよい。
【0064】
シュラウド80の反ブレード側シュラウド面85には、第2主板側溶着部8bの回転軸線O方向に対向して平坦面からなるシュラウド平坦面86aが形成されている(図6参照)。シュラウド平坦面86aは、第2主板側溶着部8bを回転軸線O方向に沿って見た際に、シュラウド80のシュラウド側ブレード軸端部72と回転軸線O方向に重なる部分のうち、第2主板側溶着部8bに最も近い位置、ここでは、シュラウド側ブレード軸端部72の翼長方向の翼前縁部に対応する位置に配置されている。シュラウド平坦面86aは、シュラウド曲板部81のうちシュラウド側ブレード軸端部72の翼長方向の翼前縁部に対応する位置から回転軸線O方向に突出するシュラウド突起86の回転軸線O方向の端面であり、回転軸線O方向に垂直な平坦面をなしている。
【0065】
なお、シュラウド平坦面86aは、第2主板側溶着部8bの回転軸線O方向に対向して配置されているが、これに限定されず、第1主板側溶着部8a及び第2主板側溶着部8bの配置に応じて、第1主板側溶着部8aの回転軸線O方向に対向して配置してもよい。
【0066】
シュラウド80には、シュラウド平板部82の周囲部分にシュラウド曲板部81との間を繋ぐシュラウド段差部83が形成されており、シュラウド側ブレード軸端部72には、シュラウド側ブレード平板部76の周囲部分にシュラウド段差部83に嵌合可能なブレード段差部77が形成されている(図8及び図12参照)。ブレード段差部77は、シュラウド平板部82とシュラウド側ブレード平板部76とが回転軸線O方向に重なった状態で、シュラウド段差部83に嵌り合っている。すなわち、シュラウド段差部83及びブレード段差部77によって、シュラウド80の所定位置にブレード70が位置決めされるようになっている。
【0067】
(3)羽根車8の製造工程
まず、樹脂成形されたブレード本体73及びブレード蓋体74を嵌め込みにより合体してブレード70を組み立てる。樹脂成形された主板60及びシュラウド80と、複数のブレード70と、の仮組みを行う。ここでは、ブレード70の主板側ブレード軸端部71の主板側ブレード孔75に主板60の主板突起67を挿入することによって、ブレード70を主板60の所定位置に配置する。また、ブレード70のシュラウド側ブレード軸端部72のブレード段差部77をシュラウド80のシュラウド段差部83に嵌合することによって、ブレード70をシュラウド80の所定位置に配置する。
【0068】
次に、仮組みされた複数のブレード70、主板60及びシュラウド80(ワーク)を羽根車支持装置(図示省略)の回転テーブル上に配置する。
【0069】
次に、複数のブレード70の2つのブレード軸端部(すなわち主板側ブレード軸端部71及びシュラウド側ブレード軸端部72)と、主板60及びシュラウド80と、の相互間を溶着させる。ここでは、主板側ブレード軸端部71と主板60との相互間、及び、シュラウド側ブレード軸端部72とシュラウド80との相互間の溶着を、複数のブレード70の1つずつに対して順次行う。
【0070】
例えば、超音波ホーン(図示省略)により、ブレード70及び主板60に対して超音波振動を付与することで、主板側溶着穴8dを含む第1主板側溶着部8a、及び主板側溶着穴8dを有する第2主板側溶着部8bが形成される。また、超音波ホーンにより、ブレード70及びシュラウド80に対して超音波振動を付与することで、シュラウド側溶着穴8eを含むシュラウド側溶着部8cが形成される。なお、この際(すなわち、複数のブレード70のいずれか1つと主板60及びシュラウド80との相互間の溶着を行う際)には、シュラウド80を主板60側に押圧する複数の押圧ピンを有するシュラウド押圧装置を用いて、シュラウド80のシュラウド平板部82及びシュラウド平坦面86a(シュラウド突起86)を主板60方向(回転軸線O方向)に押圧する。
【0071】
次に、すべてのブレード70と主板60及びシュラウド80との相互間の溶着が完了していない場合には、羽根車支持装置の回転テーブルを回転させて、周方向に隣り合うブレード70に対応する位置まで移動させる。そして、すべてのブレード70と主板60及びシュラウド80との相互間の溶着が完了するまで、上記工程を繰り返す。
【0072】
(4)主板60の成形性向上及び強度向上について
遠心ファン4では、従来の遠心ファンと比較して主板60の成形性及び強度が向上している。以下、これに関して説明する。
【0073】
主板60は、成形型に樹脂を注入されることにより成形される。主板60の反ブレード側主板面64には、成形型に樹脂を注入された際の注入口(注入口跡)に相当する部分(すなわち、成形時に樹脂を注入される部分)であるゲート68が複数含まれている(図5及び図7参照)。また、主板60の反ブレード側主板面64には、いずれかのゲート68に注入された樹脂の流路として機能する部分であるフローリーダ69が複数含まれている(図5図7参照)。本実施形態において、反ブレード側主板面64に含まれるゲート68及びフローリーダ69の数は、ブレード70の数と同数(すなわち、7個)である。
【0074】
各フローリーダ69は、いずれかのゲート68と1対1に対応しており、対応するゲート68に注入された樹脂の流路として機能する部位である。各フローリーダ69は、回転軸線O方向から見て、他のフローリーダ69とともに放射状を呈するように、主板60の内側から外側に向かって延びている。ここでは、各フローリーダ69の内側の端部(回転軸線O側の端部)を内側端部691と称し、外側の端部(外周側の端部)を外側端部692と称する(図5及び図7参照)
内側端部691は、回転軸線O方向から見て、ハブ部61において冷却用空気孔62の外側(主板60の外周側)に位置している。外側端部692は、回転軸線O方向から見て、ブレード70の主板側ブレード軸端部71と重畳する部分(より詳細にはブレード70の重心70aよりも外周側の部分)に位置している。
【0075】
ゲート68は、回転軸線O方向から見た場合に、対応するフローリーダ69の内側端部691と外側端部692の中間部分に位置している。より詳細には、ゲート68は、対応するフローリーダ69の中央部分(具体的には、回転軸線O方向から見て、フローリーダ69の内側端部691及び外側端部692よりも、両端部間の中間位置に近い部分)に位置している。
【0076】
ゲート68及びフローリーダ69が上述のような態様で配置されることで、ゲート68に注入された樹脂が、主板60全体に均等に流れるようになっており、成形性が向上している。
【0077】
ここで、フローリーダ69は、厚みt1を有するリブ651として成形される部位である。すなわち、フローリーダ69は、他の部分(薄肉部652)の厚みt2よりも肉厚が大きいリブ651として成形される部分であり、主板60の強度向上の役割も担っている。
【0078】
図5及び図7に示すように、各フローリーダ69は、回転軸線O方向から見て、内側端部691から、対応するゲート68から最も近いブレード70の翼長方向の中央部分全体(具体的には、重心70aと重畳する部分、及びその周囲の第1主板側溶着部8aと第2主板側溶着部8bの外周部分)に延びている。見方を変えると、フローリーダ69は、主板60において、複数のブレード70のそれぞれに対応して放射状に構成されており、フローリーダ69の外側端部692が主板60のブレード70が配置される部分の翼長方向の中央部分(又は、その延長線上の部分)に達するように配置されている、ともいえる。
【0079】
各フローリーダ69(リブ651)が係る態様で構成されることで、ハブ部61の外周付近からブレード70の重心70aまでの肉厚が厚みt1に構成され、主板60の他の部分(薄肉部652)の肉厚(厚みt2)よりも大きく構成されるようになっている。
【0080】
その結果、主板60全体の強度が向上している。特に、遠心ファン4の運転時には、ファンモータ7に連動して回転するブレード70に遠心力が作用するため、主板60においてブレード70との接続部分と連続する部分において応力が生じ、係る部分に亀裂等が生じ破損することが想定される。また、輸送時等に、回転軸線Oに平行な方向に対する衝撃が付加された場合にも、係る部分において破損が生じることも考えられる。
【0081】
この点、主板60においては、運転時等に応力が大きく生じると想定される、回転軸線O方向から見てブレード70の中央部分全体と重畳する部分(特に重心70aと重畳する部分)の肉厚が他の部分と比較して大きく構成されており、係る部分の強度が向上している。このことから、運転時や運搬時等に荷重がかかった場合に、係る部分の破損が抑制されるようになっており強度が向上している。
【0082】
また、主板60においては、強度確保が必要な最低限の部分(運転時等に応力が大きく生じると想定される部分)に限って、強度が高められている。すなわち、強度向上の観点から肉厚を大きく構成する必要のない部分に関しては肉厚が小さく構成されており、成形時に使用される樹脂量が抑制されている。すなわち、成形に要する樹脂使用量が抑制されつつも主板60の強度が向上されている。
【0083】
(5)特徴
(5−1)
上記実施形態に係る遠心ファン4では、コスト増大が抑制されつつ、主板60の強度が向上し信頼性が向上している。
【0084】
すなわち、一般的に、遠心ファンの運転時には、モータに連動して回転する翼(ブレード)に遠心力が作用するため、主板において翼との接続部分と連続する部分において応力が生じ、係る部分に亀裂等が生じ破損することが想定される。また、輸送時等に、回転軸に平行な方向に対する衝撃が付加された場合にも、係る部分において破損が生じることも考えられる。
【0085】
この点、従来の遠心ファンでは、主板において、回転軸線方向から見て翼の中央部分と重畳する部分の肉厚は、他の部分と比較して特に大きく構成されておらず、主板において、運転時等に応力が大きく生じると想定される部分の強度が十分に確保されない。このことから、運転時や運搬時等に荷重がかかった場合に、係る部分が破損する事態が生じうる。つまり、従来の遠心ファンによると、主板の強度が十分に確保されず信頼性が十分に確保されない。
【0086】
一方で、強度向上のために主板の大部分において肉厚を大きくすると、成形時に使用される樹脂量が増大し、遠心ファンの製造に係るコスト増大を招く。
【0087】
上記実施形態に係る遠心ファン4では、各フローリーダ69は、回転軸線O方向から見て、対応するゲート68から最も近いブレード70の中央部分全体(具体的には回転軸線O方向から見てブレード70の外郭より内側と重畳する部分、特にブレード70の重心70aと重畳する部分及びブレード70の重心70aの周囲の部分)に延びるように構成されている。これにより、主板60において、回転軸線O方向から見てブレード70の中央部分と重畳する部分の肉厚(厚みt1)が他の部分の肉厚(厚みt2)と比較して大きく構成されるようになっている。その結果、主板60において、運転時等に応力が大きく生じると想定される、回転軸線O方向から見てブレード70の中央部分と重畳する部分の強度が向上している。このことから、運転時や運搬時等に荷重がかかった場合に、係る部分の破損が抑制されるようになっている。
【0088】
また、主板60において、運転時等に応力が大きく生じると想定される部分に限って、強度が高められている。すなわち、強度向上の観点から肉厚を大きく構成する必要のない部分に関しては肉厚を小さく構成されている。よって、成形時に使用される樹脂量が抑制されコスト増加が抑制されている。
【0089】
このように、上記実施形態に係る遠心ファン4では、コスト増大が抑制されつつ、主板60の強度が向上し信頼性が向上している。
【0090】
(5−2)
上記実施形態に係る遠心ファン4では、各フローリーダ69は、他のフローリーダ69とともに放射状を呈するように、主板60の内側から外側に向かって延びている。また、ゲート68は、回転軸線O方向から見て、対応するフローリーダ69の中央付近(具体的には、回転軸線O方向から見て、フローリーダ69の内側端部691及び外側端部692よりも内側端部691及び外側端部692間の中間位置に近い部分)に位置している。
【0091】
これにより、ゲート68がフローリーダ69の中央付近外に配置される場合と比較して、ゲート68に注入された樹脂がフローリーダ69全体に均一に流れやすくなっている。その結果、成形時に、注入された樹脂が主板60にまんべんなく行き渡るようになっており、成形性が向上している。
【0092】
(5−3)
上記実施形態に係る遠心ファン4では、各フローリーダ69は、回転軸線O方向から見てブレード70の重心70aと重畳する部分まで延びている。これにより、主板60において、回転軸線O方向から見てブレード70の重心70aと重畳する部分の肉厚が他の部分と比較して大きく構成されている。その結果、主板60において、運転時等に応力が特に大きく生じると想定される、回転軸線O方向から見てブレード70の重心70aと重畳する部分の強度が向上している。このことから、運転時や運搬時等に荷重がかかった場合に、係る部分の破損が抑制されるようになっている。
【0093】
また、主板60において、運転時等に応力が特に大きく生じると想定される部分に限って、強度を高められている。よって、成形時に使用される樹脂量が特に抑制されている。
【0094】
(5−4)
上記実施形態に係る遠心ファン4は、回転軸線O方向から見た主板60の径に対するブレード70の翼長の割合が、シロッコファンよりも大きいターボファンである。これにより、空気調和機等において一般的に使用されるターボファンにおいて、コスト増大が抑制されつつ、主板60の強度が向上し信頼性が向上している。
【0095】
(5−5)
上記実施形態に係る遠心ファン4は、空調室内機1に採用されている。これにより、空調室内機1において、コスト増大が抑制されつつ信頼性が向上している。
【0096】
(6)変形例
上記実施形態は、以下の変形例に示すように適宜変形が可能である。なお、各変形例は、矛盾が生じない範囲で他の変形例と組み合わせて適用されてもよい。
【0097】
(6−1)変形例A
上記実施形態では、フローリーダ69は、ブレード70の中央部分全体(具体的には回転軸線O方向から見てブレード70の外郭より内側と重畳する部分、特にブレード70の重心70aと重畳する部分及びブレード70の重心70aの周囲の部分)に延びるように構成されていた。この点、主板60において、運転時等に応力が大きく生じると想定される、回転軸線O方向から見てブレード70の中央部分と重畳する部分全体の強度を向上する、という観点によれば、係る態様でフローリーダ69が配置されるのが好ましい。
【0098】
しかし、主板60において運転時等に応力が特に大きく生じると想定される部分に限って強度を高めるという観点によれば、フローリーダ69は、必ずしもブレード70の中央部分全体に延びるように構成される必要はない。すなわち、フローリーダ69がブレード70の中央部分全体に延びていなくても、回転軸線O方向から見てブレード70の重心70aと重畳する部分まで延びるように構成されていれば、主板60において運転時等に応力が特に大きく生じると想定される、回転軸線O方向から見てブレード70の重心70aと重畳する部分の肉厚が他の部分と比較して大きく構成され、係る部分の強度が向上する。係る場合、主板60において、運転時等に応力が特に大きく生じると想定される部分に限って強度を高めることが可能となるため、成形時に使用される樹脂量を特に抑制することが可能となる。
【0099】
(6−2)変形例B
上記実施形態では、ゲート68は、フローリーダ69の中央部分(すなわち、対応するフローリーダ69の中央付近(具体的には、回転軸線O方向から見て、フローリーダ69の内側端部691及び外側端部692よりも内側端部691及び外側端部692間の中間位置に近い部分)に位置していた。この点、ゲート68に注入された樹脂がフローリーダ69全体に均一に流れやすくさせる、という観点によれば、ゲート68は、フローリーダ69の中央付近に配置されるのが好ましい。しかし、設計仕様に応じて、成形性に著しい支障がない限り、ゲート68は必ずしもフローリーダ69の中央付近に配置される必要はなく、他の位置に配置されてもよい。特に、ゲート68は、回転軸線O方向から見てフローリーダ69と重畳する位置に必ずしも配置される必要はなく、回転軸線O方向から見てフローリーダ69から外れる位置に配置されてもよい。
【0100】
(6−3)変形例C
上記実施形態では、遠心ファン4としてターボファンが採用されていた。しかし、本発明に係る技術的思想を適用可能な遠心ファンは、必ずしもターボファンに限定されない。例えば、本発明に係る技術的思想は、シロッコファンにも適用可能である。
【0101】
(6−4)変形例D
上記実施形態では、ゲート68及びフローリーダ69の数は、ブレード70の数と同数であった。観点を変えると、上記実施形態においては、対応する一組のゲート68及びフローリーダ69は、いずれかのブレード70と1対1に対応していた。しかし、ゲート68及びフローリーダ69の数は、強度向上の点において支障がない限り、必ずしもブレード70の数と同数である必要はなく、対応する一組のゲート68及びフローリーダ69が、いずれかのブレード70と1対多に対応するように構成されてもよい。特に本発明に係る技術的思想が、ターボファンと比較してブレードの数が多いシロッコファンにおいて適用される場合には、実現可能性という点において係る態様で構成されることが好ましい。
【0102】
(6−5)変形例E
上記実施形態では、主板60とブレード70、又はブレード70とシュラウド80は、別体に成形され、溶着されることによって互いに連結されることで遠心ファン4の羽根車8が構成されていた。しかし、羽根車8は、必ずしも係る態様で構成される必要はなく、主板60とブレード70、又はブレード70とシュラウド80は、成形時に一体に構成されてもよい。係る場合、フローリーダ69については、成形性の観点から、回転軸線O方向から見て主板側ブレード軸端部71に重畳する部分において幅広に構成されることが好ましい。
【0103】
(6−6)変形例F
上記実施形態では、ブレード70は、内部に空間Sが形成されるように、中空構造を有していた。この点、軽量化の観点からはブレード70は、係る態様で構成されることが好ましい。しかし、強度向上の観点上、ブレード70は、必ずしも中空に構成される必要はなく、中実構造を有するように構成されてもよい。
【0104】
(6−7)変形例G
上記実施形態では、本発明の技術的思想は、空調室内機1(エアコンの室内ユニット)に適用されていたが、これに限定されず、他の「空気調和機」にも適用可能である。例えば、本発明の技術的思想は、エアコンの室外ユニット、空気清浄機、換気装置、又は除湿機等に適用されてもよい。
【0105】
(6−8)変形例H
上記実施形態では、シュラウド突起86及びシュラウド平坦面86aは、反ブレード側シュラウド面85において、シュラウド平板部82を外れる位置に設けられていた。しかし、シュラウド突起86及びシュラウド平坦面86aは、シュラウド平板部82内においてシュラウド側溶着部8c及びシュラウド側溶着穴8eを外れる位置に設けられても良い。
【0106】
(6−9)変形例I
上記実施形態では、主板60に関して成形性向上及び強度向上の効果が実現されたが、運転時の騒音対策、特に中空のブレード70に関連して生じる騒音については特に明記していなかった。ここで、遠心ファン4においては、ブレード70が中空構造を有していることに関連して、運転時に、例えば非溶着部8fとブレード側主板面63との間に形成される隙間等を介してブレード70内の空間Sに空気が流入し、ブレード70内の空間Sに流入した空気が、例えば図13の二点鎖線AFに示すように、空間Sにおいて旋回することが想定される。そして、係る場合には、ブレード本体73又はブレード蓋体74が旋回する空気の流れに共鳴して騒音が生じうる。
【0107】
この点、係る事態が生じることを抑制する方法として、ブレード本体73又はブレード蓋体74において、空間Sに流入した空気の抜き穴を形成することが考えられる。例えば、図14及び図15に示すように、シュラウド突起86においてブレード70を貫通する貫通口86bを形成することが考えられる。なお、図14図3の二点鎖線XIV部分の拡大図、図15図14の二点鎖線XV部分の拡大図である。
【0108】
係る態様で貫通口86bが形成されることで、ブレード70内の空間Sに流入した空気が貫通口86bから流出する。すなわち、貫通口86bが、空間Sに流入した空気の抜き穴として機能する。これにより、空間Sにおいて空気が旋回することが抑制され、ブレード本体73又はブレード蓋体74が旋回する空気の流れに共鳴することも抑制される。その結果、遠心ファン4において、主板60の成形性向上及び強度向上の効果に加えて、騒音抑制の効果も実現される。
【0109】
なお、空間Sに流入した空気の抜き穴については、貫通口86b以外にも形成されてもよい。すなわち、羽根車8において、貫通口86bに代えて又は貫通口86bに加えて、係る抜き穴を形成してもよい。また、係る抜き穴は必ずしもシュラウド突起86において形成される必要はなく、他の位置(例えばシュラウド平板部82内においてシュラウド側溶着部8c及びシュラウド側溶着穴8eを外れる位置)において形成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、遠心ファン及び遠心ファンを備えた空気調和機に適用可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 :空調室内機(空気調和機)
2 :ケーシング
4 :遠心ファン
7 :ファンモータ
8 :羽根車
8a :第1主板側溶着部
8b :第2主板側溶着部
8c :シュラウド側溶着部
8d :主板側溶着穴
8e :シュラウド側溶着穴
8f :非溶着部
60 :主板
61 :ハブ部
62 :冷却用空気孔
63 :ブレード側主板面(主面)
64 :反ブレード側主板面
67 :主板突起
68 :ゲート
69 :フローリーダ
70 :ブレード(翼)
70a :重心
71 :主板側ブレード軸端部
72 :シュラウド側ブレード軸端部
73 :ブレード本体
74 :ブレード蓋体
75 :主板側ブレード孔
76 :シュラウド側ブレード平板部
77 :ブレード段差部
80 :シュラウド
81 :シュラウド曲板部
82 :シュラウド平板部
83 :シュラウド段差部
84 :ブレード側シュラウド面
85 :反ブレード側シュラウド面
86 :シュラウド突起
86a :シュラウド平坦面
651 :リブ
652 :薄肉部
691 :内側端部
692 :外側端部
C1 :天井
O :回転軸線
SP1 :対象空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特開2010−216486号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15