(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連接截頭円錐体は、先端の第1截頭円錐体と後端の第2截頭円錐体とを連接して成り、前記第1截頭円錐体の後端の径大外径をD2、先端の径小外径をD1、長手方向の長さをL1とし、前記第2截頭円錐体の後端の径大外径をD3、先端の径小外径はD2となり、長手方向の長さをL2とした場合に、
前記第2截頭円錐体の長手方向の長さL2と前記第1截頭円錐体の長手方向の長さL1とは、
L2<{(D3−D2)/(D2−D1)}×L1
の関係式を満たすことを特徴とする請求項1〜2のいずれか一つに記載の医療用ガイドワイヤ。
前記連接截頭円錐体は、1個の截頭円錐体の先端の前記節部の断面二次モーメントに対する後端の前記節部の断面二次モーメントとの、前記節部での断面二次モーメント比(後端の前記節部の断面二次モーメント/先端の前記節部の断面二次モーメント)が、後端側から先端側へ徐変減少して成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の医療用ガイドワイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明のガイドワイヤの実施形態について説明する。
【0024】
図1、2は、本発明の第1実施形態のガイドワイヤ1を示し、
図1は全体図を示し、
図2は、先端部の要部を示している。
ガイドワイヤ1は、芯線2と、外側コイル3と、潤滑性被膜5と、親水性被膜6とを有する。芯線2は、芯線後端径大部21を有する芯線後端部2Aと、後端側から先端側へ外径が徐変減少する截頭円錐体を2個以上連接した連接截頭円錐体を有する芯線先端部2Bとを備える。
外側コイル3は、芯線先端部2Bの先端側を貫挿し、接合部材を用いて外側コイル3の先端と芯線先端部2Bの先端とを接合した先丸形状の先端接合部4Aを有し、外側コイル3の後端と芯線先端部2Bとを接合した外側コイル後端接合部4Bを有する。
潤滑性被膜5は、ふっ素樹脂等を用いて芯線先端部2Bの後端側の外周と芯線後端部2Aの外周に形成されている。
親水性被膜6は、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸等の親水性物質を用いて外側コイル3の外周に形成されている。尚、本発明のガイドワイヤ1は、長さに比べて直径が極めて小さな値となっている。この為、本発明のガイドワイヤ1は、縦横の縮尺率を同じにすると所定のエリアに図示することが困難となる為、一部を誇張したり、省略したりして図示している。
【0025】
芯線2は、後端側の芯線後端部2Aと先端側の芯線先端部2Bとを備える。芯線後端部2Aは、外径Doが0.3556mm(0.014インチ)の等径で、長手方向の長さLbは概ね1600mmの芯線後端径大部21を有する。
芯線2の全長(概ね1740mm)をさらに延長させる為の接続具としての径小凸部22(長手方向の長さが概ね20mm、外径が0.25mm)は、設けても設けなくてもよく、用途による。
芯線先端部2Bは、後端側から先端側へ向かって、後端の第3截頭円錐体24C、第2截頭円錐体24B、先端の第1截頭円錐体24Aの3個の截頭円錐体を連接し、長手方向の長さLaが60mmから180mm(本実施例では120mm)で、外径が後端側から先端側へ徐変減少する連接截頭円錐体24を備える。
【0026】
芯線2は、ステンレス鋼線、Ni−Ti合金線等が用いる。例えば、特開2002−69586に示すような伸線加工と焼きなまし処理を繰り返して製造される高強度のステンレス鋼線を用いる。又は、特開2002−69555に示すように、所定条件下で熱処理を施して製造するNi−Ti合金線等を用いる。
さらに、特開2009−60858に示すような高強度のタングステン線、ドープタングステン線等を用いてもよい。好ましくは、引張強さが2200MPa以上3500MPa以下のオーステナイト系ステンレス鋼線、2000MPa以上5000MPa以下のドープタングステン線等を用いる。
この理由は、縮径伸線加工により、又、縮径伸線加工と熱処理との繰り返しにより引張強さを容易に向上させ、かつ、耐座屈性を向上させることができるからである。
又、芯線先端部2Bと芯線後端部2Aとは、異なる線材を溶接接合した芯線2としてもよく、例えば前記芯線の材質等の組合せである。
【0027】
外側コイル3は、外径B1が0.3556mmの等径で、長手方向の長さB2が概ね45mmから120mm(第1〜3実施形態は45mm、第4実施形態は99mm)、コイル線の線直径t1は0.070mm、1本又は複数本の線材を巻回成形したコイルである。
外側コイル3は、金、白金、タングステン等の放射線不透過性の線材を巻回成形して用いる。又、先端側が放射線不透過性の線材で、後端側がステンレス鋼線等の放射線透過性の線材どうしを接合して用いてもよい。好ましくは、引張強さが1200MPa以上2000MPa以下の白金が90重量%以上99重量%以下で、残部がニッケルの、白金とニッケルとの合金であり、より好ましくは初張力が作用する密巻きコイルである。
この理由は、高強度の引張強さを有する放射線不透過性のコイル線を密巻き状に巻回成形することにより、高いねじり応力と高い初張力により、血管閉塞病変部における通過性の向上を補完することができるからである。
【0028】
図2は、第1実施形態のガイドワイヤ1の先端部の要部を示し、芯線先端部2Bは、後端側から先端側へ外径が徐変減少する截頭円錐体を3個備え、先端から第1截頭円錐体24A、第2截頭円錐体24B、第3截頭円錐体24Cの連接截頭円錐体24を備える。尚、潤滑性被膜5、親水性被膜6は省略している。
【0029】
第1截頭円錐体24Aは、先端の径小外径D1(先端接合部4Aの後端端面と接合する芯線2の外径、符号240の位置)が0.166mm、後端側の径大外径D2が0.200mm、長手方向の長さL1が45mm、第2截頭円錐体24Bは径小外径D2が第1截頭円錐体24Aの径大外径D2と同じ0.200mmとなり、径大外径D3が0.265mm、長手方向の長さL2が40mm、第3截頭円錐体24Cは径小外径D3が第2截頭円錐体24Bの径大外径D3と同じ0.265mmとなり、径大外径D4が芯線後端部2Aの芯線後端径大部21の外径Doと同じ0.3556mm(0.014インチ)、長手方向の長さL3が35mmで、長手方向の長さLaが120mmの連接截頭円錐体24である。
【0030】
ガイドワイヤ1の芯線後端径大部21を把持して先端側を血管内へ挿入した場合、病変部へ到達した芯線先端部2Bは、挿入力(押込み力)に対する反作用として血管閉塞病変部からの抵抗力(軸圧縮力等)を、先端接合部4Aと連動して受ける。特に、石灰化した完全閉塞病変部では、この軸圧縮力が大きく、大きな軸圧縮力を受けて芯線先端部2Bの、断面二次モーメントの最も低い部位で座屈変形する。
従って、石灰化した完全閉塞病変部をガイドワイヤ1で穿孔させる為には、断面二次モーメントの値が最も低い部位での座屈応力を高める必要がある。
【0031】
芯線の座屈荷重をW、横断面積をA、座屈応力をσとすると、芯線の座屈応力は、
σ=W/A ・・・(1)
関係式(1)で表すことができる。
ここで、一般に、座屈荷重Wは、長柱の強さを求めるオイラーの式を用いれば、芯線(長柱)の、縦弾性係数をE、最小断面二次モーメントをIa、長さをl、比例定数をkとすると、座屈荷重Wは、
W=(k×E×Ia)/l
2 ・・・(2)
関係式(2)で表すことができる。尚、比例定数kは、端末係数Nと円周率πの2乗との積の一定値である。
【0032】
把持する芯線後端径大部21を固定端とし、芯線先端部2Bの第1截頭円錐体24Aを自由端として考えると、石灰化した完全閉塞病変部から受ける軸圧縮力は、自由端である第1截頭円錐体24Aで受けることになる。かかる場合に、第1截頭円錐体24Aの、断面二次モーメントの値が最も低い部位(第1截頭円錐体24Aの先端、符号240の位置)で、座屈変形を起こし易い。
従って、芯線先端部2Bの座屈強度(座屈応力)を高める為には、この部位(符号240)の座屈応力を高める必要がある。
【0033】
第1截頭円錐体24Aの断面二次モーメントが最も低い部位の、座屈応力をσa、横断面積をAa、最小断面二次モーメントをIa、長手方向の長さをlとすると、座屈応力σaは、
σa=(k×E/l
2)×(Ia/Aa) ・・・(3)
関係式(3)で表すことができる。
又、芯線後端部2Aの、最大外径の芯線後端径大部21の座屈応力をσb、横断面積をAb、断面二次モーメントをIb、長手方向の長さをlとすると、座屈応力σbは、前記関係式(3)と同様に、
σb=(k×E/l
2)×(Ib/Ab) ・・・(4)
関係式(4)で表すことができる。
そして、芯線後端径大部21の座屈応力σbに対する芯線先端部2Bにおける最小の座屈応力σaとの最小座屈応力比(芯線先端部2Bにおける最小の座屈応力σa/芯線後端径大部21の座屈応力σb)J(σa/σb)は、
J=(Ia/Aa)×(Ab/Ib) ・・・(5)
関係式(5)で表すことができる。
尚、ここでいう座屈応力とは、単位面積当たりの座屈荷重のことをいい、最小座屈応力比とは、単位長さ当りの芯線後端径大部21の座屈応力(最大の座屈応力)に対する芯線先端部2Bにおける最小の座屈応力との比(芯線先端部2Bにおける最小の座屈応力/芯線後端径大部21の座屈応力)のことをいう。
従って、最小座屈応力比の値が高いほど、芯線は座屈変形し難くなる。
【0034】
第1截頭円錐体24Aの先端(符号240の位置)の外径D1が0.166mm、芯線後端径大部21の外径Doが外径D4と同じ0.3556mmであることから、前記関係式(5)を用いて、第1実施形態の芯線2の前記最小座屈応力比Jを求めると、Jの値は、約0.2179となる。
【0035】
図3は、第2実施形態のガイドワイヤ20の先端部の要部を示す。第1截頭円錐体24AAは、先端の径小外径D1が0.166mm、後端の径大外径D2が0.200mm、長手方向の長さL1が30mmである。
第1截頭円錐体24AAの先端側に、第1截頭円錐体24AAの先端(径小外径D1)と同一外径で、外径D1が0.166mm(横断面積が第1截頭円錐体24AAの先端と同一)、長手方向の長さl1が15mm、横断面が円形で、横断面積が一定の先端細径体23Aを備える。他の仕様は、第1実施形態と同様であり、同一構成部材には同一符号が付してある。
【0036】
第2実施形態の芯線先端部2Bにおける最小の座屈応力を、先端細径体23Aが有する。先端細径体23Aの先端の位置(符号240A)の外径D1が0.166mm、外径D4が芯線後端径大部21の外径Do(0.3556mm)と同じであることから、前記関係式(5)を用いて第2実施形態の芯線2の前記最小座屈応力比Jを求めると、Jの値は約0.2179となる。この値は、前記第1実施形態と同じである。
この理由は、前記第1実施形態の第1截頭円錐体24Aの最小の座屈応力をもつ部位の断面二次モーメントと横断面積が、第2実施形態の先端細径体23Aの断面二次モーメントと横断面積が同じである為、芯線先端部2Bにおける最小の座屈応力が共に同じとなるからである。
【0037】
図4は、第3実施形態のガイドワイヤ30の先端部の要部を示す。第2実施形態と異なるところは、第2実施形態の第1截頭円錐体24AAの先端側に、横断面が矩形の先端細径体23Bを備える。
第1截頭円錐体24AAは、先端の径小外径D1が0.166mm、後端の径大外径D2が0.200mm、長手方向の長さL1が30mmである。第1截頭円錐体24AAの先端側に、外径が第1截頭円錐体24AAの先端の径小外径D1と同じ外径D1の0.166mm(横断面積が第1截頭円錐体24AAの先端と同じ)の芯線に押圧加工等を行い、長手方向の長さl1が15mm、横断面が矩形の先端細径体23Bを備える。尚、長手方向の長さl2は、円形の横断面から矩形の横断面へ遷移する遷移部23Cの長さ(約0.2mm)である。
【0038】
図5は、第3実施形態の先端細径体23Bの横断面図(
図4、符号C−C)で、短辺の長さbが0.135mm、長辺の長さaが約0.160mm、横断面積が一定の矩形形状を示す。
第3実施形態の芯線先端部2Bにおける最小の座屈応力を、先端細径体23Bが有する。先端細径体23Bは、横断面形状が矩形であり、長さaは長さbよりも長く、X−X軸方向に平行である為、X−X軸に関する断面二次モーメントは、Y−Y軸に関する断面二次モーメントよりも小さい。
従って、芯線先端部2Bが軸圧縮力を受けた場合に、先端細径体23BはX−X軸と直角な方向に曲がり易く、座屈変形し易くなる。
先端細径体23Bの横断面積は一定(第1截頭円錐体24AAの径小外径D1の位置の横断面積と同じ)で、矩形形状の短辺の長さbが0.135mmであることから、長辺の長さaは約0.160mmとなる。
外径D4が芯線後端径大部21の外径Doと同じ0.3556mmであることから、前記関係式(5)を用いて、第3実施形態の芯線2の前記最小座屈応力比Jを求めると、Jの値は、約0.1922となる。
【0039】
そして、芯線先端部2Bの先端側を外側コイル3内へ貫挿する場合に、外側コイル3の内径と、芯線先端部2Bの第1截頭円錐体24A、24AAの外径と、先端細径体23A、23Bの先端形状と外径との組付性、並びに、芯線2の、石灰化完全閉塞病変部から受ける軸圧縮力と耐座屈性と穿孔性能とを併せ考慮すると、芯線2の最小座屈応力比Jは、0.1138以上0.3163以下である。
この理由は、前記上限値を上回れば、外側コイル3内へ芯線先端部2Bの先端側を挿入して組付けすることは困難となり、前記下限値を下回れば、石灰化完全閉塞病変部からの軸圧縮力に屈して座屈変形し易くなり、そして、石灰化完全閉塞病変部内を穿孔してガイドワイヤを通過させることが困難となるからである。
尚、補足すれば、前記下限値は、後述する第4実施形態のガイドワイヤ40において、最小の座屈応力を第1截頭円錐体25Aが有し、第1截頭円錐体25Aの径小外径D1(0.120mm)を考慮したものであり、前記上限値は、後述する第4実施形態のガイドワイヤ40において、最小の座屈応力を芯線先端部2Bの截頭円錐体が有し、外側コイル3内へ貫挿できる截頭円錐体の径大外径(0.200mm)を考慮したものである。
【0040】
次に、本発明の第1〜3実施形態のガイドワイヤ1、20、30と先行技術特許文献のガイドワイヤとの、芯線の最小座屈応力比を比較して、以下に説明する。尚、本発明の第4実施形態のガイドワイヤ40については、芯線先端部2Bの連接截頭円錐体25の構造と併せて、後述する。
前記特許文献2の特開2016−154821では、第4等径部27の外径が0.06mm(本発明の芯線先端部2Bの先端外径D1に相当)で、第1等径部21の外径が0.3556mm(本発明の芯線後端径大部21の外径Doに相当)であることから、芯線の最小座屈応力比を算出すると、約0.02847である。
本発明と前記特許文献2の特開2016−154821とを比較すると、本発明の第1実施形態のほうが約7.7倍高い値となる。
先行技術特許文献の特開2013−162920では、最先端部35の外径が約0.05mm(本発明の芯線先端部2Bの先端外径D1に相当)で、本体部20の外径が約0.33mm(本発明の芯線後端径大部21の外径Doに相当)であることから、芯線の最小座屈応力比を算出すると、約0.02296である。
本発明と特許文献特開2013−162920とを比較すると、本発明の第1実施形態のほうが約9.5倍高い値となる。
前記特許文献1の特開2014−136047では、第2小径部111の外径が0.05mm(本発明の芯線先端部2Bの先端外径D1に相当)で、近位端側大径部13の外径が0.36mm(本発明の芯線後端径大部21の外径Doに相当)であることから、芯線の最小座屈応力比を算出すると、約0.01929である。
本発明と前記特許文献1の特開2014−136047とを比較すると、本発明の第1実施形態のほうが約11.3倍高い値となる。
先行技術特許文献の特開2012−34922では、第2柱状柔軟部44の外径が約0.03mm(本発明の芯線先端部2Bの先端外径D1に相当)で、本体部20の外径が約0.35mm(本発明の芯線後端径大部21の外径Doに相当)であることから、芯線の最小座屈応力比を算出すると、約0.007346である。
本発明と特許文献特開2012−34922とを比較すると、本発明の第1実施形態のほうが約29.7倍高い値となる。
【0041】
図6は、後述する第4実施形態を含む本発明のガイドワイヤと前記先行技術特許文献のガイドワイヤとの芯線の最小座屈応力比とを併せて示す。横軸に、芯線の各部位の長手方向の位置を示し、縦軸に、芯線の最小座屈応力比を示す。尚、本発明の第1〜4実施形態については、芯線2の全長に亘る部位で座屈応力比を示し、前記特許文献2の特開2016−154821については、寸法が記載されている芯線先端部の一部について座屈応力比を示した。他の先行技術特許文献については、各部位の明確な位置が明細書内に見当たらず、芯線の最小座屈応力比のみを記載した。
【0042】
本発明の芯線の座屈応力比を、第1実施形態は符号イ、第2実施形態は符号ロ、第3実施形態は符号ハ、第4実施形態は符号ニで示す。
前記特許文献2の特開2016−154821の座屈応力比を符号ホで示し、特許文献特開2013−162920の最小座屈応力比を符号ヘ、前記特許文献1の特開2014−136047の最小座屈応力比を符号ト、特許文献特開2012−34922の最小座屈応力比を符号チで示す。
本発明の芯線の最小座屈応力比の上限値は、0.3163(符号X2)、下限値は0.1138(符号X1)で、符号X1から符号X2が上下限値の範囲を示す。尚、後述する本発明の第4実施形態は、最小座屈応力比が下限値に近い0.1139の場合である。
【0043】
芯線の長手方向と座屈応力比との傾向は、例えば、前記特許文献2の特開2016−154821の符号ホの場合には、座屈応力比が、後端側から先端側へ徐々に減少しながら先端側になるほど傾斜が急(下降)となる。
これに対して本発明の場合には、座屈応力比が後端側から先端側へ徐々に減少し、先端側になるほど傾斜が緩やかとなる。この点、本発明と前記特許文献2とは、座屈応力比の先端側への傾斜傾向が大きく異なる。
そして、本発明の芯線の座屈応力比は、先端部位(第1截頭円錐体24A、25Aの先端、及び、先端細径体23A、23B)で最小座屈応力比を示す。
本発明の芯線2の最小座屈応力比は、第1実施形態の場合で約0.2179、第2実施形態の場合で第1実施形態と同じ約0.2179、第3実施形態の場合で約0.1922、後述する第4実施形態の場合で約0.1139である。
前記特許文献2符号ホの芯線の最小座屈応力比は、約0.02847で、最小の座屈応力を第4等径部27が有する。
特許文献符号ヘの芯線の最小座屈応力比は、約0.02296で、最小の座屈応力を最先端部35が有する。
前記特許文献1符号トの芯線の最小座屈応力比は、約0.01929で、最小の座屈応力を第2小径部111が有する。
特許文献符号チの芯線の最小座屈応力比は、約0.007346で、最小の座屈応力を第2柱状柔軟部44が有する。
【0044】
本発明のガイドワイヤと前記特許文献のガイドワイヤ(符号ホ〜チ)との芯線の最小座屈応力比を比較すると、本発明の第1実施形態では、前記特許文献符号ホ、ヘよりも約7.7倍から約9.5倍高い値であり、前記特許文献1符号トに対しては、約11.3倍高く、前記特許文献符号チに至っては約29.7倍高い値となる。
さらに、本発明の芯線2の上限値の最小座屈応力比と前記特許文献符号チの最小座屈応力比とを比較すると、本発明のほうが約43.1倍高い値となる。
このように、本発明の芯線2の最小座屈応力比は、前記特許文献(符号ホ〜チ)よりも数倍から数十倍高い値となり、本発明の芯線先端部2Bは、前記特許文献(符号ホ〜チ)よりも数倍から数十倍座屈応力が高く、座屈変形し難い構造である。
これにより、本発明のガイドワイヤは、血管閉塞病変部での通過性を飛躍的に向上させ、特に石灰化完全閉塞病変部での穿孔性能を向上させることができる。
【0045】
次に、本発明のガイドワイヤの、芯線先端部2Bの連接截頭円錐体の構造について、
図7を用いて、以下説明する。
【0046】
図7は、第4実施形態のガイドワイヤ40の先端部の要部を示す。第1〜3実施形態と異なるところは、芯線先端部2Bの先端側の外側コイル3内に、外径(一部)と長手方向の長さの異なる2個の截頭円錐体を備える。第4実施形態においては、外側コイル3内の2個の截頭円錐体と外側コイル3の後端側(外側コイル後端接合部4Bの後端側)の2個の截頭円錐体との4個の截頭円錐体を連接した連接截頭円錐体25を備える。
【0047】
連接截頭円錐体25は、先端から後端へ第1截頭円錐体25A、第2截頭円錐体25B、第3截頭円錐体25C、第4截頭円錐体25Dから成る。
第1截頭円錐体25Aは、先端の径小外径D1が0.120mm、後端の径大外径D2が0.153mm、長手方向の長さL1が54mm、第2截頭円錐体25Bは、先端の径小外径D2が第1截頭円錐体25Aの径大外径D2と同じ0.153mmとなり、後端の径大外径D3が0.200mm、長手方向の長さL2が45mm、第3截頭円錐体25Cは、先端の径小外径D3が第2截頭円錐体25Bの径大外径D3と同じ0.200mmとなり、後端の径大外径D3が0.265mm、長手方向の長さL3が40mm、第4截頭円錐体25Dは、先端の径小外径D4が第3截頭円錐体25Cの径大外径D4と同じ0.265mmとなり、後端の径大外径D5が芯線後端部2Aの芯線後端径大部21の外径Doと同じ0.3556mm(0.014インチ)、長手方向の長さL4が35mm、長手方向の長さLaが174mmの連接截頭円錐体25である。
他の仕様については、第1〜3実施形態と同様であり、同一構成部材には同一符号が付してある。尚、第1截頭円錐体25Aの先端側に、第2、第3実施形態と同様に横断面が円形の先端細径体23A、又は、横断面が矩形の先端細径体23Bを設けてもよい。
【0048】
第4実施形態のガイドワイヤ40の芯線先端部2Bにおける最小の座屈応力は、第1実施形態と同様に、第1截頭円錐体25Aが有し、断面二次モーメントの値が最も低い部位は、先端の位置(符号240)である。
第1截頭円錐体25Aの先端の位置(符号240)の外径D1が0.120mm、外径D5が芯線後端径大部21の外径Do(0.3556mm)と同じであることから、前記関係式(5)を用いて第4実施形態の芯線2の前記最小座屈応力比Jの値を求めると、Jの値は、約0.1139となる。この値は、前記最小座屈応力比の範囲内で、第4実施形態は、下限値に近い実施例である。
そして、第4実施形態の芯線2の各部位における座屈応力比を、
図6符号ニで示す。
第4実施形態の芯線2の長手方向と座屈応力比との傾向は、前記第1〜3実施形態と同様に、後端側から先端側へ徐々に減少し、先端側になるほど傾斜が緩やかとなる。
【0049】
次に、座屈応力比と曲げ剛性比との関係について、以下説明する。
関係式(5)において、(Ab/Aa)をk1とし、縦弾性係数Eを分子と分母にそれぞれ乗ずると、座屈応力比J(σa/σb)の関係式(5)は、
J=k1×{(E×Ia)/(E×Ib)} ・・・(6)
関係式(6)で表すことができる。
つまり、座屈応力比は、曲げ剛性比の関係として表すことができる為、
図6で示す芯線の長手方向と座屈応力比との傾向は、芯線の長手方向と曲げ剛性比との傾向についても同様と考えられる。
従って、第1〜3実施形態の連接截頭円錐体24を含めて、本発明の連接截頭円錐体24,25は、
図6で示す長手方向と座屈応力比との傾向と同様に、長手方向と曲げ剛性比との傾向についても、後端側から先端側へ徐々に減少し、先端側になるほど傾斜が緩やかとなる先端側徐変低柔軟特性を有する、と考えられる。
これに対して、前記特許文献2の場合(符号ホ)には、曲げ剛性が、後端側から先端側へ徐々に減少しながら先端側になるほど傾斜が急(下降)となり、先端側急変高柔軟特性と考えることができる。
従って、芯線先端部2Bの柔軟特性が、本発明の連接截頭円錐体24、25と前記特許文献2の連接截頭円錐体26とは、大きく相違する、と考えられる。
【0050】
次に、本発明の芯線先端部2Bが示す先端側徐変低柔軟特性について、第4実施形態のガイドワイヤ40を示す
図7、
図8を用いて、以下説明する。
【0051】
図7の連接截頭円錐体25において、截頭円錐体の傾斜角が変化する位置を、節部といい、径大外径の位置を後端節部、径小外径の位置を先端節部という。尚、截頭円錐体を連接した連接截頭円錐体の場合には、後端節部と先端節部とが重複する場合がある為、説明の都合上これらを含めて「節部」と総称する。
ここでいう連接截頭円錐体の節部での先端側への傾斜角(又は単に、節部での傾斜角という)とは、1個の截頭円錐体の後端節部(又は単に、節部という)で、芯線の長手方向の中心軸に平行な線と截頭円錐体の外形線とが成す先端側への鋭角を示す傾斜角のことをいう。
連接截頭円錐体25の先端側から、節部240(第1截頭円錐体25Aの先端節部で径小外径D1の位置)、節部241(第1截頭円錐体25Aの後端節部で径大外径D2の位置、第2截頭円錐体25Bの先端節部で径小外径D2と同じ位置)、節部242(第2截頭円錐体25Bの後端節部で径大外径D3の位置、第3截頭円錐体25Cの先端節部で径小外径D3と同じ位置)、節部243(第3截頭円錐体25Cの後端節部で径大外径D4の位置、第4截頭円錐体25Dの先端節部で径小外径D4と同じ位置)、節部244(第4截頭円錐体25Dの後端節部で径大外径D5の位置)とする。
節部241で、芯線の長手方向の中心軸に平行な線と第1截頭円錐体25Aの外形線とが成す先端側への鋭角を示す傾斜角を、第1截頭円錐体25Aの節部(又は後端節部)241での傾斜角をθ1とし、前記同様に、第2截頭円錐体25Bの節部(又は後端節部)242での傾斜角をθ2、第3截頭円錐体25Cの節部(又は後端節部)243での傾斜角をθ3、第4截頭円錐体25Dの節部(又は後端節部)244での傾斜角をθ4とする。
【0052】
外側コイル3内の、第1截頭円錐体25Aの後端節部241での傾斜角θ1は、
tanθ1=(D2−D1)/(2×L1) ・・・(7)
関係式(7)で表すことができる。
前記同様に、第2截頭円錐体25Bの後端節部242での傾斜角θ2、第3截頭円錐体25Cの後端節部243での傾斜角θ3、第4截頭円錐体25Dの後端節部244での傾斜角θ4は、それぞれ、
tanθ2=(D3−D2)/(2×L2) ・・・(8)
tanθ3=(D4−D3)/(2×L3) ・・・(9)
tanθ4=(D5−D4)/(2×L4) ・・・(10)
関係式(8)、(9)、(10)で表すことができる。
そして、連接截頭円錐体25の、4個の截頭円錐体の後端節部での傾斜角を、前記関係式(7)〜(10)に基いて算出し、算出した値を前記関係式(7)〜(10)の順(後端側の第4截頭円錐体25Dから先端側の第1截頭円錐体25Aの順)に、下記の左側から右側へ並べて比較すると、傾斜角の値(tanθ)は、
約1.294×10
−3(tanθ4)>約0.813×10
−3(tanθ3)>
約0.522×10
−3(tanθ2)>約0.306×10
−3(tanθ1)・・(11)
関係式(11)で表すことができる。
関係式(11)は、連接截頭円錐体25を構成する第1〜4截頭円錐体25A、25B、25C、25Dの後端節部241、242、243、244での先端側への傾斜角(θ1、θ2、θ3、θ4)が、後端側(傾斜角θ4)から先端側(傾斜角θ1)へ徐々に減少している。
このように、本発明の実施形態の連接截頭円錐体25は、節部での先端側への傾斜角が後端側から先端側へ向かって徐変減少して成る。
この理由は、
図6で前記特許文献2符号ホで示すような、先端側へ急激に柔軟性が高められる先端側急変高柔軟特性とは異なり、後端側から先端側へ外径が徐変減少する傾斜構造の太径の芯線を備えながら、後端側から先端側へ徐々に傾斜が緩やかとなる低柔軟性を有する先端側徐変低柔軟特性を備えた連接截頭円錐体25から成る芯線先端部2Bを得る為である。尚、前記第1〜3実施形態も同様である。
【0053】
一般に、芯線の最小座屈応力比を高い値をする為には、座屈応力は断面二次モーメントに比例する為、最小の座屈応力を有する芯線先端部2Bの断面二次モーメントを大きくし、断面二次モーメントを大きくする為には、例えば、最小の座屈応力を有する芯線先端部2Bの先端側の外径を大きくすればよいことになる。
第4実施形態のように、外側コイル3内に2個の截頭円錐体を連接した連接截頭円錐体25の場合には、外側コイルの内径の大きさにより、第1截頭円錐体25Aと第2截頭円錐体25Bの外径の大きさが制限を受ける。
そして、第4実施形態の外側コイル3内の第1截頭円錐体25Aの最小の座屈応力は、第1截頭円錐体25Aが有し、断面二次モーメントの低い位置は外径の小さい部位(符号240)であり、外径の小さい部位である径小外径D1を大きくすれば、第1截頭円錐体25Aにおける最小の座屈応力の値を高めることができる。
そして又、第1截頭円錐体25Aの先端の径小外径D1を大きくする為には、各截頭円錐体の節部での先端側への傾斜角を後端側から先端側へ徐々に小さくさせて、第1截頭円錐体25Aの先端の径小外径D1を大きくすればよい。
このようにすれば、外側コイル3の内径の大きさに制限を受ける連接截頭円錐体25であっても、第1截頭円錐体25Aの先端の径小外径D1を大きく確保することができる。
【0054】
従って、第1截頭円錐体25Aの節部での傾斜角θ1と第2截頭円錐体25Bの節部での傾斜角θ2とを、前記関係式(11)で示す「tanθ2>tanθ1」の関係にすればよい。前記関係式(7)、(8)を用いて、第2截頭円錐体25Bの長手方向の長さL2と第1截頭円錐体25Aの長手方向の長さL1との関係式を求めると、
L2<{(D3−D2)/(D2−D1)}×L1 ・・・(12)
関係式(12)で表すことができる。
関係式(12)を満たすことにより、第1截頭円錐体25Aと第2截頭円錐体25Bとは、外径が先端側へ徐変減少する傾斜構造でありながら、第1截頭円錐体25Aの先端の径小外径D1を大きくして、芯線先端部2Bにおける最小の座屈応力比を高めることができる。この結果、芯線2の最小座屈応力比を高めることができる。
これにより、ガイドワイヤの前進の際の、直線的前進性を高めることができる。
【0055】
次に、連接截頭円錐体において、節部間の、曲げ剛性比と断面二次モーメント比との関係について、前記特許文献2と比較して、以下説明する。
連接截頭円錐体の、1個の截頭円錐体の先端節部の断面二次モーメントをIa1、後端節部の断面二次モーメントをIb1とし、縦弾性係数をEとすると、先端節部の曲げ剛性は(E×Ia1)、後端節部の曲げ剛性は(E×Ib1)で表すことができ、先端節部の曲げ剛性(E×Ia1)に対する後端節部の曲げ剛性(E×Ib1)の、節部での曲げ剛性比は「(E×Ib1)/(E×Ia1)」の関係式で表すことができる。この関係式の値が大きければ大きいほど、後端節部の曲げ剛性が先端節部の曲げ剛性よりも高くなる。逆に、曲げ剛性を柔軟性に置き換えて言えば、後端節部よりも先端節部での柔軟性が高くなることを示している。
そして、連接截頭円錐体を構成する芯線は同一材質であることから、縦弾性係数Eは同一値であり、前記関係式は、「(Ib1)/(Ia1)」として表すことができる。これは、先端節部の断面二次モーメントIa1に対する後端節部の断面二次モーメントIb1との、節部での断面二次モーメント比「(Ib1)/(Ia1)」として表すことができる。この関係式の値が大きければ大きいほど、前記同様に、後端節部よりも先端節部の柔軟性が高くなることを示している。
【0056】
次に、本発明の連接截頭円錐体25において、節部間における節部での断面二次モーメント比について、以下説明する。
本発明の連接截頭円錐体25において、連接截頭円錐体25の、第1截頭円錐体25Aの先端節部240の断面二次モーメントをIo、後端節部241の断面二次モーメントをI1とし、先端節部240の断面二次モーメントIoに対する後端節部241の断面二次モーメントI1との断面二次モーメント比をIs1(後端節部241の断面二次モーメントI1/先端節部240に断面二次モーメントIo)とする。
前記同様に、第2截頭円錐体25Bの先端節部241の断面二次モーメントはI1となり、後端節部242の断面二次モーメントがI2で、断面二次モーメント比をIs2(I2/I1)とし、第3截頭円錐体25Cの先端節部242の断面二次モーメントはI2となり、後端節部243の断面二次モーメントがI3で、断面二次モーメント比をIs3(I3/I2)とし、第4截頭円錐体25Dの先端節部243の断面二次モーメントはI3となり、後端節部244の断面二次モーメントがI4で、断面二次モーメント比をIs4(I4/I3)とする。
【0057】
第1截頭円錐体25Aは、先端節部240の径小外径D1が0.120mm、後端節部241の径大外径D2が0.153mmであり、断面二次モーメント比Is1(I1/Io)は、前記外径の4乗(D2/D1)
4であらわすことができることから、第1截頭円錐体25の節部での断面二次モーメント比Is1(I1/Io)は、約2.643となる。
前記同様に、
第4截頭円錐体25Dの節部での断面二次モーメント比Is4(I4/I3)と、
第3截頭円錐体25Cの節部での断面二次モーメント比Is3(I3/I2)と、
第2截頭円錐体25Bの節部での断面二次モーメント比Is2(I2/I1)とを算出し、算出した値を後端側から先端側へ順に(I4/I3からI1/Ioへ)並べて比較すると、節部での断面二次モーメント比の値は、
約3.242(Is4)>約3.082(Is3)>約2.920(Is2)
>約2.643(Is1) ・・・(13)
関係式(13)で表すことができる。
関係式(13)は、連接截頭円錐体25を構成する第1〜4截頭円錐体の節部(241、241、242、243、244)での断面二次モーメント比(Is1、Is2、Is3、Is4)が、後端側(Is4)から先端側(Is1)へ徐変減少していることを意味している。
【0058】
そして、前記特許文献2の連接截頭円錐体26は、後端側の第1截頭円錐体26Aの径大外径Doが0.180mm、径小外径D2が0.125mm、先端側の第2截頭円錐体26Bの径大外径D2が0.125mmとなって、径小外径D1が0.060mmである(特許文献2段落[0030])。
前記同様に、前記特許文献2の連接截頭円錐体26における節部での断面二次モーメント比を算出すると、後端側の第1截頭円錐体26Aの、先端節部の断面二次モーメントに対する後端節部の、節部での断面二次モーメント比は、約4.300(0.180/0.125)
4となる。又、先端側の第2截頭円錐体26Bの、先端節部の断面二次モーメントに対する後端節部の、節部での断面二次モーメント比は、約18.838(0.125/0.060)
4となる。
これは、連接截頭円錐体26を構成する後端側の第1截頭円錐体26Aと先端側の第2截頭円錐体26Bの、節部での断面二次モーメント比が、後端側から先端側へ大きく増大(節部での断面二次モーメント比が約4.300から約18.838へ増大)していることを意味している。
【0059】
このように、前記特許文献2の連接截頭円錐体26は、節部での断面二次モーメント比が後端側から先端側へ大きく増大しているのに対して、本発明の連接截頭円錐体24、25は、節部での断面二次モーメント比が後端側から先端側へ徐変減少している。
従って、前記特許文献2の連接截頭円錐体26は、先端側の第2截頭円錐体26Aの先端節部(径小外径D1)で柔軟性が大きく増大し、先端側急変高柔軟特性を示している。
これに対して、本発明の連接截頭円錐体24、25は、後端側から先端側へ徐々に減少する先端側徐変低柔軟特性を示している、と考えることができる。
【0060】
次に、本発明の連接截頭円錐体の節部での断面二次モーメント比の上下限値について、以下説明する。
本発明の連接截頭円錐体24、25の節部での断面二次モーメント比の上下限値は、前記最小座屈応力比の上下限値の範囲を満たしながら、連接截頭円錐体24、25の節部での断面二次モーメント比を考慮する必要がある。
第4実施形態の連接截頭円錐体25は、外側コイル3の後端側の2個の截頭円錐体と外側コイル3内の2個の連接截頭円錐体とが連接して成る。
本発明の連接截頭円錐体は、截頭円錐体が2個以上連接した構造であればよく、外側コイル3の後端側の1個の截頭円錐体(例えば、第3截頭円錐体25Cと第4截頭円錐体25Dとが結合して1個の截頭円錐体となる場合)と外側コイル3内の1個の截頭円錐体(例えば、第1截頭円錐体25Aと第2截頭円錐体25Bとが結合して1個の截頭円錐体となる場合)とが連接して2個の截頭円錐体から成る連接截頭円錐体が考えられる。
【0061】
かかる2個の截頭円錐体を連接した連接截頭円錐体の場合に、外側コイル3内の1個の截頭円錐体は、後端節部の外径D3が0.200mm、先端節部の外径D1が0.120mm(最小座屈応力比の下限値近傍)となることから、後端節部(又は節部)での断面二次モーメント比は、約7.72{(0.200/0.120)
4}となる。
外側コイル3の後端側の1個の截頭円錐体は、後端節部の外径D5が0.3556mm、先端節部の外径D3が0.200mmとなることから、節部での断面二次モーメント比は、約10.00{(0.3556/0.200)
4}となる。
従って、節部での断面二次モーメント比を加工性、組付性等の生産性を考慮すると、第1〜3実施形態も同様に、本発明の連接截頭円錐体24、25の節部での断面二次モーメント比の上下限値は、1を超え10.50以下である。好ましくは、1を超え10.00以下である。
この理由は、節部での断面二次モーメント比が、前記下限値を下回れば、先端節部の断面二次モーメントが後端節部の断面二次モーメントよりも大きくなり、先端節部での曲げ剛性が増大し、先端側になるほど傾斜が緩やかとなる、
図6で示すような先端側徐変低柔軟特性を有する芯線先端部を得ることはできなくなるからである。
又、節部での断面二次モーメント比が、前記上限値を上回れば、後端節部の断面二次モーメントと先端節部の断面二次モーメントとの差が拡大し、先端側になるほど傾斜が急(下降)となって柔軟性が増大し、先端側になるほど傾斜が緩やかとなる、
図6で示すような先端側徐変低柔軟特性を有する芯線先端部を得ることは困難となるからである。
【0062】
次に、
図8を用いて、本発明の第4実施形態のガイドワイヤ40の連接截頭円錐体25と、前記特許文献2の連接截頭円錐体26とを比較して、以下説明する。
図8において、径大外径D5(節部244)と径小外径D3(節部242)との外形を直線で結んだ1個の截頭円錐体を仮想単一截頭円錐体261とし、2点鎖線で示す。
本発明の第3截頭円錐体25Cの節部243の位置での仮想単一截頭円錐体261の外径をD40とし、比例配分の考えに基いて外径D40を算出すると、約0.283mmとなる。
前記特許文献2に記載の連接截頭円錐体26は、長手方向の同一位置における外径が、仮想単一截頭円錐体260の外径よりも大きいことから(特許文献2、段落[0041]等)、節部243と同一位置において、仮想単一截頭円錐体261の外径D40よりも大きくすれば前記特許文献2の連接截頭円錐体26と類似した形状となる。
例えば、節部243と同一位置において、外径D40よりも大きな外径をD41とし、先端外径がD3で後端外径がD41の先端側の截頭円錐体と、先端外径がD41で後端外径がD5の後端側の截頭円錐体とを連接した、3点鎖線で示す連接截頭円錐体とすれば、前記特許文献2に類似した連接截頭円錐体(以下、類似連接截頭円錐体262という)を構成することができる。
【0063】
そして、外径D40(約0.283mm)よりも大きな外径D41を、例えば0.310mm(外径D5と外径D4との中間の大きさの外径をD41とする場合)とし、長手方向の長さ(L3、L4)は同一(第3截頭円錐体25Cの長さL3、第4截頭円錐体25Dの長さL4とそれぞれ同一)として、本発明の連接截頭円錐体25と類似連接截頭円錐体262との、節部243でのねじり抵抗モーメントを比較する。
ねじり抵抗モーメントは極断面係数に比例し、極断面係数は外径の3乗に比例することから、節部243において、類似連接截頭円錐体262のねじり抵抗モーメントRに対する本発明の連接截頭円錐体25のねじり抵抗モーメントrとの、節部243でのねじり抵抗モーメント比(r/R)を求めると、約0.625{(0.265/0.310)
3}となる。
このことは、節部243において、本発明の連接截頭円錐体25のほうが、類似連接截頭円錐体262よりも約38%ねじり抵抗モーメントが低いことを意味する。
【0064】
類似連接截頭円錐体262は、節部243の位置において、外径D41(0.310mm)が本発明の連接截頭円錐体25の外径D4(0.265mm)よりも大きく、さらに、仮想単一截頭円錐体261の外径(0.283mm)よりも大きく、節部での傾斜角が先端側へ大きく変化(増大)している
類似連接截頭円錐体262は、外径D41が大きい為、節部243の位置で先端側への傾斜角が増大し、かつ、節部243の位置近傍で外径が径大化している為、手元側(後端側)をねじり回転させた場合に、生体組織等と接触する節部243の位置、及び、節部243の位置近傍で、生体組織等からねじり回転に対する大きな抵抗を受ける。さらに又、ガイドワイヤ40を前進させた場合に、生体組織等から軸圧縮力のみならず、先端部の外周を覆っている生体組織等によるラジアル方向からの大きな圧力抵抗を受ける。
特に、血管閉塞病変長が長い下肢血管閉塞病変部(病変長が100mmから200mmで、例えば石灰化病変部等)においては、外側コイル3の外周部のみならず芯線先端部2Bの全長に亘って生体組織等で覆われる為、ガイドワイヤ40を回転させた場合に、生体組織等から大きな抵抗を受ける。
【0065】
そして、外径が大きく、かつ、先端側への傾斜角が大きな節部をもつ類似連接截頭円錐体262の場合には、先端側へ傾斜角が急変する節部の位置(節部243に相当する位置)、及び、径大化した節部243の近傍の位置で「スティックスリップ現象(生体組織等との接触による静摩擦から動摩擦への変動が繰り返し発生して操作力が変化する現象)」が発生し易い。
これに対して、本発明の連接截頭円錐体25は、類似連接截頭円錐体262よりも節部の外径が小さく、さらに、類似連接截頭円錐体262よりも節部243でのねじり抵抗モーメントが約38%低い為、生体組織等との接触により発生する「スティックスリップ現象」の発生を抑制することができる。
そして又、血管の収縮等によりガイドワイヤ40が血管内で捕捉される「スタック現象」が発生した場合も前記同様である。スタック現象が発生した場合には、本発明のガイドワイヤ40のねじり抵抗モーメントの低さを利用して、術者は、手元側を回転させながらガイドワイヤ40を後退させることにより、捕捉された血管閉塞病変部からの解放を容易にすることができる。
【0066】
第4実施形態の連接截頭円錐体25は、外側コイル3内で第1截頭円錐体25Aと第2截頭円錐体25Bとの2個の截頭円錐体を構成する。
本発明の連接截頭円錐体25は、節部での傾斜角が先端側へ増大する前記特許文献2の連接截頭円錐体26とは異なり、節部での先端側への傾斜角が徐変減少する。特に、芯線先端部2Bの先端側で外径の大きさに制限を受ける外側コイル3内の連接截頭円錐体(第1截頭円錐体25Aと第2截頭円錐体25B)は、節部での傾斜角が先端側へ徐々に減少する構造である為、芯線先端部2Bの先端側での外径を比較的大きく確保することができる。
従って、本発明の連接截頭円錐体25(第1截頭円錐体25Aと第2截頭円錐体25B)の構造は、外径の大きさに制限を受ける外側コイル3内の芯線先端部2Bの外径(特に、先端外径D1)を、前記特許文献2の連接截頭円錐体26の構造よりも大きく確保することができる。
【0067】
このように、外側コイル3の後端側の、外径が大きな芯線先端部2Bは、節部での傾斜角が先端側へ徐変減少することにより、「スティックスリップ現象」等の発生を抑制し、先端側への円滑な回転伝達性を向上させることができる。
又、外側コイル3内の芯線先端部2Bの先端側は、節部での傾斜角が先端側へ徐変減少することにより、外側コイル3の内径の大きさに制限を受けながら、比較的大きな外径から成る芯線先端部2Bの先端側を備えることができる。
これにより、ガイドワイヤの先端側への円滑な回転伝達性を高めると共に、直線的前進性を高めることができ、特に、病変長が長い下肢血管閉塞病変部内での通過性を飛躍的に向上させることができる。
【0068】
そして、前記第4実施形態のガイドワイヤ40の連接截頭円錐体25の構造について、4個の截頭円錐体の全ての節部での先端側への傾斜角が、後端側から先端側へ徐変減少(θ4>θ3>θ2>θ1)する構造として説明した。
外側コイル3の、後端側の2個の連接截頭円錐体の節部での先端側への傾斜角と、外側コイル3内の、2個の連接截頭円錐体の節部での先端側への傾斜角とが、必ずしも連動して先端側へ徐変減少している必要はない。
外側コイル3の、後端側の2個以上の截頭円錐体を連接した連接截頭円錐体の、節部での傾斜角が先端側へ徐変減少していればよく、又、外側コイル3内の2個以上の截頭円錐体を連接した連接截頭円錐体の、節部での傾斜角が先端側へ徐変減少していればよい。
【0069】
そして又、連接截頭円錐体を構成する截頭円錐体が外側コイル3の後端端部(外側コイル後端接合部4B)で、後端側と先端側とに跨る場合には、外側コイル3の後端端部(外側コイル後端接合部4B)を境にして跨っている截頭円錐体の体積の多い側を外側コイル3内の連接截頭円錐体の一部、又は、外側コイル3の後端側の連接截頭円錐体の一部として節部での先端側への傾斜角の大小関係等を判断する。
又、本発明の芯線先端部2Bの連接截頭円錐体を構成する截頭円錐体の個数は、加工性経済性の観点から30個以下(長手方向の長さが180mm)が好ましい。尚、長手方向の長さが180mmを超える場合には、前記関係に基く比例配分による個数以下とする。
【0070】
本発明の芯線先端部2Bの連接截頭円錐体24、25の構造は、後端の節部を先端の節部との間における節部での断面二次モーメントの関係は、以下となる。
後端側から先端側へ外径が徐変減少する部分を有する芯線の芯線先端部の先端側を外側コイルへ貫挿し、
前記外側コイルの先端と前記芯線先端部の先端とを接合した先端接合部と、前記外側コイルの後端と前記芯線先端部とを接合した外側コイル後端接合部とを有し、前記芯線先端部の後端側に芯線後端径大部を有する芯線後端部を備えた医療用ガイドワイヤであって、
前記芯線先端部は、後端側から先端側へ外径が徐変減少する截頭円錐体を2個以上連接した連接截頭円錐体を有し、
前記連接截頭円錐体は、1個の截頭円錐体の後端と先端に節部を有し、先端の前記節部の断面二次モーメントに対する後端の前記節部の断面二次モーメントとの、前記節部での断面二次モーメント比(後端の前記節部の断面二次モーメント/先端の前記節部の断面二次モーメント)が、後端側から先端側へ徐変減少して成ることを特徴とする。
【0071】
又、連接截頭円錐体の節部での前記断面二次モーメント比の最大値が10.50で最小値が1を超えることを特徴とする。好ましくは、最小値が1を超え最大値が10.00以下である。又、連接截頭円錐体が、前記外側コイルの後端側の芯線先端部、又は、前記外側コイル内の芯線先端部のいずれか一方、又は、双方に備えて成ることを特徴とする。
【課題】ガイドワイヤの芯線先端部の外側に、線径の大きな外側コイルを用い、又は、外側コイル内に内側コイルを設けた二層構造からなるコイルを用いて、病変部治療を行っているが、特に、血管閉塞病変部の拡径治療に際して、芯線先端部の先端側徐変低柔軟特性を備えながら、血管閉塞病変部での通過性を向上させる為の技術課題が存在する。
【解決手段】ガイドワイヤ40の芯線先端部2Bに、後端側2Aから先端側2Bへ外径が徐変減少する截頭円錐体25A〜25Dを2個以上連接した連接截頭円錐体25A〜25Dを有し、連接截頭円錐体25A〜25Dは、1個の截頭円錐体の後端と先端に、傾斜角を有する節部を備え、各節部での先端側への傾斜角が一定の関係を有することにより、血管閉塞病変部での通過性を飛躍的に向上させることができる。