特許第6281736号(P6281736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ノーリツの特許一覧

<>
  • 特許6281736-ヒートポンプ給湯装置 図000002
  • 特許6281736-ヒートポンプ給湯装置 図000003
  • 特許6281736-ヒートポンプ給湯装置 図000004
  • 特許6281736-ヒートポンプ給湯装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6281736
(24)【登録日】2018年2月2日
(45)【発行日】2018年2月21日
(54)【発明の名称】ヒートポンプ給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 4/02 20060101AFI20180208BHJP
   F24H 9/00 20060101ALI20180208BHJP
【FI】
   F24H4/02 G
   F24H9/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-108939(P2013-108939)
(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公開番号】特開2014-228214(P2014-228214A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】堀 紀弘
(72)【発明者】
【氏名】江田 秋人
(72)【発明者】
【氏名】中塚 悠介
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−360973(JP,A)
【文献】 特開2012−007752(JP,A)
【文献】 特開2011−027279(JP,A)
【文献】 特開2007−218551(JP,A)
【文献】 特開2008−002776(JP,A)
【文献】 特開2006−343011(JP,A)
【文献】 特開2004−218908(JP,A)
【文献】 特開2012−013350(JP,A)
【文献】 特開2004−251597(JP,A)
【文献】 特開2003−021428(JP,A)
【文献】 特開2013−007500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 4/02
F24H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と湯水加熱用熱交換器と膨張手段と蒸発熱交換器とを冷媒回路で接続したヒートポンプ式熱源機を備えたヒートポンプ給湯装置において、
前記湯水加熱用熱交換器は、前記冷媒回路の一部を構成する冷媒通路と湯水通路とを有する単一の液々熱交換器で構成され、
前記湯水加熱用熱交換器内の前記冷媒通路の途中の分岐点から分岐して前記湯水加熱用熱交換器と前記膨張手段との間において前記冷媒回路に接続した分岐冷媒通路を備え、
前記冷媒通路に冷媒を流し且つ前記分岐冷媒通路に冷媒を流さない状態と、前記分岐冷媒通路に冷媒を流し且つ前記分岐点より下流の冷媒通路部分に冷媒を流さない状態とに択一的に選択可能な選択手段を設けたことを特徴とするヒートポンプ給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒートポンプ給湯装置に関し、特に冷媒回路を流れる冷媒量を調整するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冷媒を利用した熱交換式のヒートポンプ給湯装置が一般に広く普及している。この種のヒートポンプ給湯装置は、ヒートポンプ式熱源機、湯水を貯留する貯湯タンク、ヒートポンプ式熱源機と貯湯タンクとの間に湯水を循環する為の加熱循環回路等を備え、夜間割引の安価な電力を利用して、貯湯タンク内の湯水を加熱循環回路に循環させてヒートポンプ式熱源機で加熱して、その加熱された湯水を貯湯タンク内に戻して貯留しておき、蛇口や風呂等の所望の給湯先に給湯するものである。
【0003】
上記のヒートポンプ式熱源機は、圧縮機、湯水加熱用熱交換器(凝縮熱交換器)、膨張手段(膨張弁、膨張装置)、外気熱吸収用熱交換器(蒸発熱交換器)が冷媒回路を介して接続されることで構成され、冷媒回路に封入された冷媒を利用して湯水加熱運転が行われる。この湯水加熱運転では、圧縮機と蒸発熱交換器用の送風ファンとが夫々駆動され、湯水加熱用熱交換器により冷媒と湯水との間で熱交換が行われて湯水が加熱される。
【0004】
上記の湯水加熱用熱交換器においては、圧縮機から高温高圧の気相状態の冷媒が送り込まれ、この気相状態の冷媒は湯水と熱交換することで温度が低下して凝縮し、液相状態の冷媒となって膨張手段に送り込まれる。
【0005】
ところで、湯水加熱運転としては、貯湯槽の下部の低温の湯水を加熱して貯湯槽の上部に戻す給湯運転モード、暖房端末から戻された湯水を加熱して暖房端末に戻す暖房運転モード等がある。給湯運転モードでは、湯水加熱用熱交換器には低温の湯水が流入し、この低温の湯水は、先ずは冷媒通路の下流側を流れる液相状態の冷媒と熱交換され、次に、冷媒通路の上流側を流れる気相状態の冷媒と熱交換される。給湯運転モードでは、一般的に液相状態の冷媒温度より湯水の入水温度が低いので、液相状態の冷媒から熱を吸熱して過冷却度を大きくとることで熱交換効率を向上させている。
【0006】
一方、暖房運転モードでは、暖房端末から比較的高温の湯水が湯水加熱用熱交換器に流入する。このため、湯水の入水温度は液相状態の冷媒温度より高い場合が多いので、液相状態の冷媒とは熱交換できず、過冷却度をとることができない。
【0007】
このように、給湯運転モードと暖房運転モードでは、湯水加熱用熱交換器に要求される加熱負荷が相違する為に、湯水加熱用熱交換器の必要熱交換性能及び適正な冷媒流量が異なるので、湯水加熱用熱交換器に最適な冷媒流量を供給しない場合には、無駄な冷媒流量が生じてしまい、ヒートポンプ給湯装置の運転効率が悪化するという問題がある。
【0008】
上記の問題を解決する為に、例えば、特許文献1の冷蔵庫では、複数の径の異なる毛細管と、複数の冷媒流路と、この複数の冷媒流路を切換可能であり、複数の冷媒流路のうちの少なくとも1つの冷媒流路の流路面積を変更可能な電子式三方弁等を備えた減圧装置(電子膨張弁)が設けられ、加熱負荷に応じて電子式三方弁を制御することで冷媒流量を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−42628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1の冷蔵庫のように、複数の毛細管や電子式三方弁等を組み合わせて構成された減圧装置を採用すると、従来の膨張弁と比較して部品点数が増加し、構造も複雑化してコスト高となる上、減圧装置の制御には負荷が大きくなるという問題がある。また、湯水の加熱は湯水加熱用熱交換器の伝熱面積にも依存するので、湯水加熱運転の運転モードや要求加熱負荷に応じて伝熱面積を変更することが望ましい。
【0011】
本発明の目的は、冷媒流量の調整を低コストで且つ容易に実現可能なヒートポンプ給湯装置を提供すること、湯水加熱用熱交換器の伝熱面積を調整可能なヒートポンプ給湯装置を提供すること、等である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項のヒートポンプ給湯装置は、圧縮機と湯水加熱用熱交換器と膨張手段と蒸発熱交換器とを冷媒回路で接続したヒートポンプ式熱源機を備えたヒートポンプ給湯装置において、前記湯水加熱用熱交換器は、前記冷媒回路の一部を構成する冷媒通路と湯水通路とを有する単一の液々熱交換器で構成され、前記湯水加熱用熱交換器内の前記冷媒通路の途中の分岐点から分岐して前記湯水加熱用熱交換器と前記膨張手段との間において前記冷媒回路に接続した分岐冷媒通路を備え、前記冷媒通路に冷媒を流し且つ前記分岐冷媒通路に冷媒を流さない状態と、前記分岐冷媒通路に冷媒を流し且つ前記分岐点より下流の冷媒通路部分に冷媒を流さない状態とに択一的に選択可能な選択手段を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
請求項の発明によれば、湯水加熱用熱交換器は、冷媒回路の一部を構成する冷媒通路と湯水通路とを有する単一の液々熱交換器で構成され、湯水加熱用熱交換器内の冷媒通路の途中の分岐点から分岐して湯水加熱用熱交換器と膨張手段との間において冷媒回路に接続した分岐冷媒通路を備え、前記冷媒通路に冷媒を流し且つ前記分岐冷媒通路に冷媒を流さない状態と、前記分岐冷媒通路に冷媒を流し且つ前記分岐点より下流の冷媒通路部分に冷媒を流さない状態とに択一的に選択可能な選択手段を設けたので、選択手段によって分岐冷媒通路に冷媒を流すことを選択すると、分岐冷媒通路が分岐した分岐部(分岐点)から下流側において冷媒通路に冷媒が強制的に滞留され、湯水加熱用熱交換器の伝熱面積が低減する。
【0021】
従って、一部の冷媒通路に冷媒を強制的に封止することで、湯水加熱用熱交換器を流れる冷媒量が低減すると共に冷媒通路の一部が熱交換されなくなるので、湯水加熱用熱交換器の熱交換性能を調整することができる。既存の湯水加熱用熱交換器の冷媒通路を利用することができるので、湯水加熱用熱交換器の冷媒流量の調整を低コストで且つ容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1に係るヒートポンプ給湯装置の概略構成図である。
図2】湯水加熱運転制御に係るフローチャートである。
図3】実施例2に係る湯水加熱運転制御に係るフローチャートである。
図4】実施例3に係るヒートポンプ給湯装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0024】
先ず、ヒートポンプ給湯装置1の全体構成について説明する。
図1に示すように、ヒートポンプ給湯装置1は、湯水を貯留する貯湯タンク5を備えた貯湯ユニット2、ヒートポンプ式熱源機30を備えたヒートポンプユニット3、貯湯タンク5の下部から取り出した低温水をヒートポンプユニット3の湯水加熱用熱交換器32によって加熱して貯湯タンク5の上部に戻す加熱循環回路4等から構成されている。
【0025】
次に、貯湯ユニット2について説明する。
図1に示すように、貯湯ユニット2は、貯湯、給湯、床暖房パネル等の温水暖房端末への温水の供給、風呂の追い焚き等の機能を有するものであり、貯湯タンク5、燃焼式の補助熱源機6、第1,第2熱交換器7,8、加熱循環回路4、給水通路11、出湯通路12、風呂給湯追焚回路13、温水暖房回路14、熱利用循環回路15、主制御ユニット16等を備え、これら大部分は外装ケース17内に一体的に収納されて構成されている。
【0026】
貯湯タンク5は、ヒートポンプユニット3で加熱された高温の温水(例えば、80〜90℃)を貯留可能な密閉タンクで構成され、貯留された湯水の放熱を防ぐ為にタンク周囲は断熱材で覆われている。貯湯タンク5内の複数の貯留層の湯水の温度が複数の貯湯水温度センサ5a〜5dにより検出される。
【0027】
補助熱源機6は、バーナー6aや熱交換器6b等を内蔵した公知のガス給湯器で構成されている。補助熱源機6は、貯湯タンク5内の湯水温度が設定温度以下の場合等の特別な場合に限り、主制御ユニット16から指令が送信されて燃焼作動され、湯水を加熱するものである。
【0028】
第1熱交換器7は、風呂給湯追焚回路13を流れる浴槽水を加熱するものであり、熱利用循環回路15の一部となる熱交換通路部7aと、風呂給湯追焚回路13の一部となる熱交換通路部7bとを有している。
【0029】
第2熱交換器8は、温水暖房回路14を流れる暖房水を加熱するものであり、熱利用循環回路15の一部となる熱交換通路部8aと、温水暖房回路14の一部となる熱交換通路部8bとを有している。
【0030】
次に、加熱循環回路4について説明する。
図1に示すように、加熱循環回路4は、貯湯タンク5と湯水加熱用熱交換器32との間に湯水を循環させる閉回路であり、往き側通路部4a、上流戻り側通路部4b、下流戻り側通路部4cを有し、貯湯タンク5の下部に上流端が接続され、湯水加熱用熱交換器32を経由して、貯湯タンク5の上部に下流端が接続されている。往き側通路部4aには、湯水循環ポンプ18と熱交換器入口センサ4dが設置され、上流戻り側通路部4bには、熱交換器出口センサ4eが設置されている。
【0031】
次に、給水通路11と出湯通路12について説明する。
給水通路11は、上水源から低温の上水を貯湯タンク5に供給するものであり、上水源に上流端が接続され、貯湯タンク5の下部に下流端が接続されている。給水通路11には、逆止弁11aが設置されている。
【0032】
出湯通路12は、貯湯タンク5内に貯湯された湯水を風呂等の所望の給湯先に供給するものであり、高温の湯水が流れる上流出湯通路部12a及び中間出湯通路部12b、水と高温の湯水が混合された混合湯水が流れる下流出湯通路部12cを有し、貯湯タンク5の上部に上流端が接続され、給湯栓に下流端が接続されている。
【0033】
中間出湯通路部12bと下流出湯通路部12cとの間には混合弁21が設置され、この混合弁21に給水通路11から分岐したバイパス通路22が接続されている。混合弁21は、出湯温度が指令温度になるように水と高温の湯水の混合比を制御するものである。バイパス通路22には、逆止弁22aが設置されている。
【0034】
バイパス通路22から混合弁21を介さずに下流出湯通路部12cへ直接接続する高温回避通路23が分岐され、この高温回避通路23には、高温回避電磁弁23aが設置されている。この高温回避通路23によって、下流出湯通路部12cに上水源から低温の上水を直接供給することができる。
【0035】
次に、風呂給湯追焚回路13と温水暖房回路14について説明する。
図1に示すように、風呂給湯追焚回路13は、風呂の浴槽水を追い焚きする回路であり、戻り側通路部13a、往き側通路部13bを有している。往き側通路部13bには、第1熱交換器7の熱交換通路部7bが設置されている。戻り側通路部13aと往き側通路部13bの間には、風呂循環ポンプ13cが設置されている。
【0036】
温水暖房回路14は、床暖房パネルや浴室乾燥機等に供給される暖房水を循環させる回路であり、戻り側通路部14a、往き側共通通路部14b、往き側高温通路部14c、往き側低温通路部14dを有している。往き側共通通路部14bには、第2熱交換器8の熱交換通路部8bが設置されている。戻り側通路部14aと往き側共通通路部14bの間には、暖房循環ポンプ14eが設置されている。尚、往き側高温通路部14cは、浴室乾燥機等に高温の暖房水を供給するものであり、往き側低温通路部14dは、床暖房パネル等に低温の暖房水を供給するものである。
【0037】
次に、熱利用循環回路15について説明する。
図1に示すように、熱利用循環回路15は、湯水を循環させて風呂給湯追焚回路13や温水暖房回路14との間で熱交換を行う閉回路であり、加熱循環回路4の往き側通路部4a及び上流戻り側通路部4b、湯水往き側通路部15a、追焚回路側通路部15b、暖房回路側通路部15c、湯水戻り側通路部15dを有している。湯水往き側通路部15aに、補助熱源機6が設置されている。
【0038】
上流戻り側通路部4bの下流端と下流戻り側通路部4cの上流端と湯水往き側通路部15aの上流端との合流部には、第1三方弁25が設置され、この第1三方弁25は、上流戻り側通路部4bと下流戻り側通路部4cとの間の接続・遮断及び上流戻り側通路部4bと湯水往き側通路部15aとの間の接続・遮断を切換可能なものである。
【0039】
追焚回路側通路部15bの途中部には、第1熱交換器7の熱交換通路部7aが介装され、暖房回路側通路部15cの途中部には、第2熱交換器8の熱交換通路部8aが介装されている。追焚回路側通路部15bの下流端と暖房回路側通路部15cの下流端と湯水戻り側通路部15dとの合流部には、第2三方弁26が設置され、この第2三方弁26は、追焚回路側通路部15bと湯水戻り側通路部15dとの間の接続・遮断及び暖房回路側通路部15cと湯水戻り側通路部15dとの間の接続・遮断を切換可能なものである。
【0040】
湯水循環ポンプ18を介して湯水が、往き側通路部4aから湯水加熱用熱交換器32に流入し、熱交換後の高温の湯水が、上流戻り側通路部4bと湯水往き側通路部15aを通り、追焚回路側通路部15b又は暖房回路側通路部15cを流れて第1,第2熱交換器7,8に送られ、この第1,第2熱交換器7,8で熱交換された湯水は、湯水戻り側通路部15dを通って往き側通路部4aに戻される。
【0041】
湯水往き側通路部15aから分岐した分岐通路部15eが、出湯通路12の上流出湯通路部12aと中間出湯通路部12bとの間に接続されている。この合流部には、第3三方弁19が設置されている。この分岐通路部15eによって補助熱源機6で加熱した湯水を出湯通路12に供給することができる。
【0042】
次に、ヒートポンプユニット3について説明する。
図1に示すように、ヒートポンプユニット3は、圧縮機31と、湯水加熱用熱交換器32と、膨張弁33と、外気熱吸収用熱交換器34とを有し、これら機器が冷媒回路35を介して接続されヒートポンプ式熱源機30を構成し、冷媒回路35に収容された冷媒を利用して湯水加熱運転を行う。
【0043】
ヒートポンプユニット3は、さらに送風モータ36aで駆動される外気熱吸収用熱交換器34用の送風ファン36と、主制御ユニット16に接続され且つヒートポンプユニット3を制御する補助制御ユニット37と、これらを収納する外装ケース38等を備えている。
【0044】
圧縮機31は、気相状態の冷媒を断熱圧縮して温度を上昇させる公知の密閉型圧縮機である。
【0045】
湯水加熱用熱交換器32は、冷媒回路35の一部を構成する冷媒通路41と湯水通路42とを有する単一の液々熱交換器で構成され、湯水加熱運転時には、冷媒通路41を流れる冷媒と加熱循環回路4から湯水通路42に供給される湯水との間で熱交換され、湯水は加熱され、冷媒は冷却され液化する。この湯水加熱用熱交換器32の具体的な構造については後述する。
【0046】
膨張弁33(膨張手段に相当する)は、液相状態の冷媒を断熱膨張させ温度低下させるものである。この膨張弁33は、絞り量が可変な制御弁からなる。
【0047】
外気熱吸収用熱交換器34(蒸発熱交換器に相当する)は、冷媒回路35に含まれる蒸発器冷媒通路34aを有し、この蒸発器冷媒通路34aは複数のフィンと伝熱管からなる。この外気熱吸収用熱交換器34において、蒸発器冷媒通路34aを流れる冷媒と外気との間で熱交換され、冷媒は外気から吸熱して気化する。
【0048】
冷媒回路35は、圧縮機31と湯水加熱用熱交換器32間を接続する冷媒配管35a、湯水加熱用熱交換器32と膨張弁33間を接続する冷媒配管35b、膨張弁33と外気熱吸収用熱交換器34間を接続する冷媒配管35c、外気熱吸収用熱交換器34と圧縮機31間を接続する冷媒配管35d等から構成されている。
【0049】
ヒートポンプユニット3の湯水加熱運転時において、圧縮機31により高圧に圧縮された加熱状態の冷媒は、湯水加熱用熱交換器32に送られ、湯水循環ポンプ18の駆動により貯湯タンク5から往き側通路部4aを経て熱交換器通路部33aに流入した水と熱交換してその水を暖め、温度が低下した冷媒は膨張弁33に送られる。加熱された湯水は、上流戻り側通路部4b、下流戻り側通路部4cを通って貯湯タンク5に貯留され、湯水加熱用熱交換器32を経由する加熱動作を繰り返すことで貯湯タンク5に高温の湯水が貯留される(図1参照)。
【0050】
次に、制御ユニット40について説明する。
図1に示すように、ヒートポンプ給湯装置1は、主制御ユニット16と補助制御ユニット37からなる制御ユニット40によって制御される。各種のセンサの検出信号が制御ユニット40に送信され、この制御ユニット40により、貯湯ユニット2とヒートポンプユニット3の動作、各種のポンプの作動・停止、各種の弁の開閉状態の切り換え及び開度調整等を制御し、各種運転(湯水加熱運転、風呂注湯運転、風呂追い焚き運転、暖房運転等)を実行する。
【0051】
主制御ユニット16は、ユーザーが操作可能な操作リモコン39との間でデータ通信可能であり、操作リモコン39のスイッチ操作により目標給湯温度が設定されると、その目標給湯温度データが操作リモコン39から主制御ユニット16に送信される。補助制御ユニット37は、主制御ユニット16との間でデータ通信可能であり、主制御ユニット16からの指令に従ってヒートポンプユニット3の各種機器(圧縮機31、送風モータ36a、開閉弁43等)の駆動制御を行う。
【0052】
次に、本発明に係る湯水加熱用熱交換器32の具体的な構造について説明する。
図1に示すように、湯水加熱用熱交換器32において、湯水通路42と伝熱可能な冷媒通路41は、並列状に配置された複数(例えば2つ)の冷媒通路部41a,41bを備えている。各冷媒通路部41a,41bの上流端は、冷媒配管35aの下流端に夫々接続され、各冷媒通路部41a,41bの下流端は、冷媒配管35bの上流端に夫々接続されている。前記湯水加熱用熱交換器32内の単一の湯水通路42の上流端は、往き側通路部4aの下流端に接続され、湯水通路42の下流端は、上流戻り側通路部4bの上流端に接続されている。
【0053】
複数の冷媒通路部41a,41bのうちの一部の冷媒通路部41aに電磁式の開閉弁43(閉止手段に相当する)が設けられている。この開閉弁43は、冷媒通路部41aにおいて熱交換されて気相状態から液相状態となった冷媒が流れる下流側部分に設けられ、補助制御ユニット37の指令に基づいて開閉駆動される。
【0054】
開閉弁43が閉止状態の場合、冷媒通路部41bにのみ冷媒が流れ(図1矢印参照)、冷媒通路部41aには冷媒が強制的に滞留される。この滞留される冷媒量は、冷媒回路35に封止された冷媒の総量が例えば200gの場合、20〜40g程度であるが、特にこの冷媒量に限定する必要はない。
【0055】
次に、要求加熱負荷の低下に応じて冷媒流量の調整を行う湯水加熱運転制御について、図2のフローチャートに基づいて説明する。尚、図中の符号Si(i=1,2,・・)は各ステップを示す。この湯水加熱運転制御の制御プログラムは、制御ユニット40に予め格納されている。
【0056】
図2のフローチャートにおいて、この制御が開始されると、最初にS1において、操作リモコン39の操作や各種のセンサの検出信号に基づいて湯水加熱開始条件成立か否か判定される。湯水加熱運転を開始する為の条件が成立している場合は、つまり、S1の判定がYesの場合、S2に移行し、S1の判定がNoのうちはS1を繰り返す。
【0057】
次に、S2において、ヒートポンプ式熱源機30に対する要求加熱負荷が設定値以上か否か判定する。尚、要求加熱負荷の設定値としては、例えば、湯水加熱用熱交換器32に流入する湯水温度を30℃とした場合、この湯水を80℃まで加熱する為に必要な加熱量を基準値として設定する。
【0058】
つまり、湯水加熱用熱交換器32に流入する湯水温度が30℃未満の場合(加熱前後の温度差が大きくなる場合)、80℃まで加熱する為に必要な加熱量が多くなるので、要求加熱負荷が設定値を上回り、湯水温度が30℃以上の場合(加熱前後の温度差が小さくなる場合)、80℃まで加熱する為に必要な加熱量が少なくなるので、要求加熱量が設定値を下回ることになる。
【0059】
具体的には、熱交換器入口センサ4dの検出信号を読み込み、湯水加熱用熱交換器32に流入する湯水の温度を検出する。湯水の温度が例えば15℃の場合、80℃まで加熱する為の加熱量は多く必要となるので、要求加熱負荷が設定値以上となってS2の判定がYesとなり、S3に移行し、湯水の温度が例えば40℃の場合、80℃まで加熱する為の加熱量は少ないので、要求加熱負荷が設定値以下となってS2の判定がNoとなり、S4に移行する。
【0060】
次に、S3において、湯水加熱運転を強湯水加熱モードに設定する。この強湯水加熱モードでは、補助制御ユニット37によって、開閉弁43を開放状態に設定し、S5に移行する。このS3では、湯水加熱用熱交換器32の複数の冷媒通路部41a,41bの全てに冷媒を流すように設定して、湯水加熱用熱交換器32の伝熱面積を増加させる。
【0061】
一方、S4において、湯水加熱運転を弱湯水加熱モードに設定する。この弱湯水加熱モードでは、補助制御ユニット37によって、開閉弁43を閉止状態に設定し、S5に移行する。このS4では、湯水加熱用熱交換器32の2つの冷媒通路部41a,41bのうちの一方の冷媒通路部41aに冷媒を滞留させるように設定して、湯水加熱用熱交換器32の伝熱面積を低減させる。
【0062】
尚、要求加熱負荷が設定値以上か否かの判定を熱交換器入口センサ4dの検出信号に基づいて行っているが、特にこれに限定する必要はなく、貯湯タンク5や熱利用循環回路15に設置された各種のセンサの検出信号に基づいて、要求加熱負荷が設定値以上か否かの判定を行い、湯水加熱用熱交換器32の伝熱面積(熱交換性能)を調整しても良い。
【0063】
そして、S5において、補助制御ユニット33によって、送風ファン36を駆動し、圧縮機31を駆動することで、S3で設定された強湯水加熱モード又はS4で設定された弱湯水加熱モードで湯水加熱運転を開始し、湯水加熱用熱交換器32において流れる冷媒と湯水との間で熱交換し、湯水を加熱する。
【0064】
次に、本発明のヒートポンプ給湯装置1の作用及び効果について説明する。
湯水加熱運転における要求加熱負荷の低下に応じて開閉弁43を閉止すると、湯水加熱用熱交換器32の一部の冷媒通路部41aに冷媒を強制的に封じ込めることができる。冷媒を封止した場合、冷媒回路35を流れる冷媒量が低減し、湯水加熱用熱交換器32の伝熱面積が減少するので、圧縮機31及び膨張弁33の設定を変更せずとも、湯水加熱用熱交換器32の熱交換性能が低減する。
【0065】
以上説明したように、湯水加熱用熱交換器32は、冷媒回路35の一部を構成する冷媒通路41と湯水通路42とを有する液々熱交換器で構成され、冷媒通路41は、複数の冷媒通路部41a,41bを備え、複数の冷媒通路部41a,41bのうちの一部の冷媒通路部41aに開閉弁43を設けたので、開閉弁43によって一部の冷媒通路部41aを閉止すると、この冷媒通路部41aに冷媒が強制的に滞留され、湯水加熱用熱交換器32の伝熱面積が低減する。
【0066】
従って、冷媒通路部41aに冷媒を強制的に封止することで、湯水加熱用熱交換器32を流れる冷媒量が低減すると共に冷媒通路41の一部が熱交換されなくなるので、湯水加熱用熱交換器32の熱交換性能を調整することができる。既存の湯水加熱用熱交換器32の冷媒通路41を利用することができるので、湯水加熱用熱交換器32の冷媒流量の調整を低コストで且つ容易に実現することができる。
【0067】
また、湯水加熱運転における要求加熱負荷の低下に応じて開閉弁43を閉止させるので、要求加熱負荷が低い場合には、開閉弁43を閉止して湯水加熱用熱交換器32を流れる冷媒量及び熱交換性能を低減させる。故に、冷媒を無駄に供給するのを防いで加熱能力を必要以上に高めるのを防止することができるので、ヒートポンプ給湯装置1の運転効率が向上する。
【実施例2】
【0068】
次に、実施例1の湯水運転制御を部分的に変更した実施例2について説明する。尚、実施例1では、湯水加熱運転における要求加熱負荷の低下に応じて開閉弁43を閉止させているが、実施例2では、湯水加熱運転における貯湯槽5の下部の低温の湯水を加熱して貯湯槽5の上部に戻す給湯運転モードでは開閉弁43を開放し、第2熱交換器8から戻された湯水を加熱して第2熱交換器8に戻して暖房水を加熱する暖房運転モードでは開閉弁43を閉止するように制御する。
【0069】
ここで、給湯運転モード又は暖房運転モードに応じて冷媒流量の調整を行う湯水加熱運転制御について、図3のフローチャートに基づいて説明する。この湯水加熱運転制御の制御プログラムは、制御ユニット4に予め格納されている。尚、S1,S5は、実施例1と同様であるので、説明は省略する。
【0070】
先ずは、S10において、制御ユニット40からの指令が給湯運転モードか否かを判定する。給湯運転モードの場合、つまり、S10の判定がYesの場合では、S11に移行し、暖房運転モードの場合、つまり、S10の判定がNoの場合では、S12に移行する。
【0071】
次に、S11において、湯水加熱運転を給湯運転モードに設定する。この給湯運転モードでは、補助制御ユニット37によって、開閉弁43を開放状態に設定し、S5に移行する。このS11では、湯水加熱用熱交換器32の複数の冷媒通路部41a,41bの全てに冷媒を流すように設定して、湯水加熱用熱交換器32の伝熱面積を増加させる。
【0072】
一方、S12において、湯水加熱運転を暖房運転モードに設定する。この暖房運転モードでは、補助制御ユニット37によって、開閉弁43を閉止状態に設定し、S5に移行する。このS12では、湯水加熱用熱交換器32の2つの冷媒通路部41a,41bのうちの一方の冷媒通路部41aに冷媒を滞留させるように設定して、湯水加熱用熱交換器32の伝熱面積を低減させる。
【0073】
このように、この湯水加熱運転制御によれば、湯水加熱運転における給湯運転モードでは開閉弁43を開放し、暖房運転モードでは開閉弁43を閉止させるので、給湯運転モードでは、湯水加熱用熱交換器32の冷媒流量及び熱交換性能を増加させ、暖房運転モードでは、湯水加熱用熱交換器32の冷媒流量及び熱交換性能を低減させる。故に、冷媒を無駄に供給するのを防いで加熱能力を必要以上に高めるのを防止することができるので、ヒートポンプ給湯装置1の運転効率が向上する。その他の構成、作用及び効果は、前記実施例1と同様であるので説明は省略する。
【実施例3】
【0074】
次に、実施例1のヒートポンプ給湯装置1を部分的に変更した実施例3について図4に基づいて説明する。尚、実施例1では、湯水加熱用熱交換器32の冷媒通路41が、並列状に配置された複数の冷媒通路部41a,41bを備えた構造について説明したが、実施例3では、湯水加熱用熱交換器32Aの冷媒通路41Aの途中の分岐点Aから分岐する分岐冷媒通路51を備えた構造について説明する。
【0075】
図1に示すように、ヒートポンプ式熱源機20は、湯水通路42と伝熱可能な冷媒通路41Aから分岐して湯水加熱用熱交換器32Aと膨張弁33との間において冷媒回路35の冷媒配管35bに接続した分岐冷媒通路51を備えている。冷媒通路41Aは、分岐冷媒通路51が分岐した分岐部(分岐点A)より上流側の上流冷媒通路部41Aa,分岐部(分岐点A)より下流側の下流冷媒通路部41Abを有する。下流冷媒通路部41Abには、熱交換されて気相状態から液相状態となった冷媒が流れる。分岐点Aは、冷媒通路41Aの略中心部に位置するが、特にこの位置に限定する必要はない。
【0076】
分岐冷媒通路51と冷媒配管35bとの合流部には、冷媒通路41Aの下流冷媒通路部41Abに冷媒を流し且つ分岐冷媒通路51に冷媒を流さない状態と、分岐冷媒通路51に冷媒を流し且つ下流冷媒通路部41Abに冷媒を流さない状態とを択一的に選択可能な三方切換弁52(選択手段に相当する)が設けられている。この三方切換弁52は、補助制御ユニット37の指令に基づいて切換駆動される。
【0077】
三方切換弁52が冷媒通路41Aの下流冷媒通路部41Abを閉止している場合、分岐冷媒通路51に冷媒が流れ(図4矢印参照)、冷媒配管35bの三方切換弁52から上流側部分と下流冷媒通路部41Abに冷媒が強制的に滞留される。この滞留される冷媒量は、冷媒回路35に封止された冷媒の総量が例えば200gの場合、20〜40g程度であるが、特にこの冷媒量に限定する必要はない。
【0078】
以上の説明によれば、ヒートポンプ式熱源機20は、冷媒通路41Aから分岐して湯水加熱用熱交換器32Aと膨張弁33との間において冷媒回路35に接続した分岐冷媒通路51を備え、冷媒通路41Aの下流冷媒通路部41Abに冷媒を流し且つ分岐冷媒通路51に冷媒を流さない状態と、分岐冷媒通路51に冷媒を流し且つ下流冷媒通路部41Abに冷媒を流さない状態とを択一的に選択可能な三方切換弁52(選択手段)を設けたので、三方切換弁52によって分岐冷媒通路51に冷媒を流すことを選択すると、冷媒通路41Aの下流冷媒通路部41Abに冷媒が強制的に滞留され、湯水加熱用熱交換器32Aの伝熱面積が低減する。
【0079】
従って、冷媒通路41Aの下流冷媒通路部41Abに冷媒を強制的に封止することで、湯水加熱用熱交換器32Aを流れる冷媒量が低減すると共に冷媒通路41Aの一部が熱交換されなくなるので、湯水加熱用熱交換器32Aの熱交換性能を調整することができる。既存の湯水加熱用熱交換器32Aの冷媒通路41Aを利用することができるので、湯水加熱用熱交換器32Aの冷媒流量の調整を低コストで且つ容易に実現することができる。
【0080】
尚、三方切換弁52の切換制御において、実施例1のように湯水加熱運転における要求加熱負荷の低下に応じて分岐冷媒通路51に冷媒を流すことを選択しても良いし、実施例2のように湯水加熱運転における給湯運転モードでは冷媒通路41Aの下流冷媒通路部41Abに冷媒を流すことを選択し、暖房運転モードでは分岐冷媒通路51に冷媒を流すことを選択するようにしても良い。その他の構成、作用及び効果は、前記実施例1と同様であるので説明は省略する。
【0081】
次に、前記実施例1〜3を部分的に変更する例について説明する。
[1]前記実施例1の湯水加熱用熱交換器32において、冷媒通路41は、並列状に配置された2つの冷媒通路部41a,41bを備え、複数の冷媒通路部のうちの1つの冷媒通路部41aに開閉弁43が設けられているが、この構造に限定する必要はなく、冷媒通路41が、3つ以上の複数の冷媒通路部を備えた構造であっても良い。この構造の場合、複数の冷媒通路部の一部(1又は複数の冷媒通路部)に開閉弁43を設けても良い。
【0082】
[2]前記実施例3において、分岐冷媒通路51と冷媒配管35bとの合流部に、選択手段として三方切換弁52が設置されているが、この構造に限定する必要はなく、選択手段として分岐冷媒通路51と冷媒配管35bの夫々に開閉弁を設け、分岐冷媒通路51に冷媒を流す又は冷媒配管35bに冷媒を流すかを選択可能な構造にしても良い。
【0083】
[3]前記実施例1〜3の湯水加熱運転制御は、ほんの1例を示したに過ぎず、要求加熱負荷や運転モードに応じて湯水加熱用熱交換器32,32Aの熱交換性能を調整する為であれば、種々の制御方法を採用可能である。
【0084】
[4]その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0085】
1 ヒートポンプ給湯装置
30 ヒートポンプ式熱源機
31 圧縮機
32,32A 湯水加熱用熱交換器
33 膨張弁
34 外気熱吸収用熱交換器
35 冷媒回路
41,41A 冷媒通路
41a,41b 冷媒通路部
42 湯水通路
43 開閉弁(閉止手段)
51 分岐冷媒通路
52 三方切換弁(選択手段)
図1
図2
図3
図4